JP2022185915A - 差動機構及び懸架機構 - Google Patents

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真琢 須藤
Masataku Suto
幸子 若林
Sachiko Wakabayashi
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Abstract

【課題】歯車のバックラッシュによる振動を抑制し、剛性を高めるとともに小型な差動機構を提供する。【解決手段】第1固定板19と、第1サーキュラスプライン211、第1フレクスプライン221及び第1ウェーブジェネレータ231を備え、第1固定板19に第1サーキュラスプライン211が固定された第1波動歯車装置1と、第1フレクスプライン221に接続された第1回転軸12と、第2サーキュラスプライン212、第2フレクスプライン222及び第2ウェーブジェネレータ232を備え、第1固定板19に第2フレクスプライン222が固定された第2波動歯車装置2と、第2サーキュラスプライン212に接続された第2回転軸13と、第1ウェーブジェネレータ231と第2ウェーブジェネレータ232とを接続する第3回転軸14と、を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、差動機構及び懸架機構に関する。
月や惑星の表面、あるいは砂漠等をはじめとする不整地環境を、探査機等の車両が走行するとき、軟弱な地表を走行したり、岩石や起伏の凹凸を乗り越えたりするためには、車両のすべての走行機構が地面と接した状態を保つことが重要である。
例えば、ロッカークローラを付加した走行機構に、差動ギアを用いた差動機構を付加した構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2008-302830号公報
上述の構造においては、差動ギアとして3枚のかさ歯車が用いられている。このとき、かさ歯車のバックラッシュが原因となり、車体の重心が車体中心と異なる場合、車体が前のめる、あるいは後部側が沈みこむといったピッチング、車体の走行に伴う前後の振動が生じる可能性がある。
このピッチング等の影響を低減するためには、差動機構に用いられる歯車の歯を小さくする、あるいは歯車のピッチ円直径を大きくすることが不可欠である。しかしながら、歯車を小さくした場合には差動機構の強度や剛性が低下し、歯車の直径を大きくした場合には差動機構全体が大きくなるという問題点がある。更に、かさ歯車による差動機構は構造上、少なくとも3つの回転軸を必要とする。よって、差動機構が大型となり、より小型な車両を必要とする需要に対応できないという課題があった。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、歯車のバックラッシュによる振動を抑制し、剛性を高めるとともに小型な差動機構を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る差動機構は、固定板と、第1サーキュラスプライン、第1フレクスプライン及び第1ウェーブジェネレータを備え、前記固定板に前記第1サーキュラスプラインが固定された第1波動歯車装置と、前記第1フレクスプラインに接続された第1回転軸と、第2サーキュラスプライン、第2フレクスプライン及び第2ウェーブジェネレータを備え、前記固定板に前記第2フレクスプラインが固定された第2波動歯車装置と、前記第2サーキュラスプラインに接続された第2回転軸と、前記第1ウェーブジェネレータと前記第2ウェーブジェネレータとを接続する第3回転軸と、を備えている。
この発明によれば、まず、第1回転軸に入力された回転が、第1フレクスプラインに伝達される。第1フレクスプラインに入力された回転は第1波動歯車装置によって増速され、かつ、逆方向の回転として第1ウェーブジェネレータに出力される。第1ウェーブジェネレータの回転は、第3回転軸で接続された第2ウェーブジェネレータへ伝達される。第2ウェーブジェネレータの回転は、第2波動歯車装置によって減速され、かつ、同じ方向の回転として第2サーキュラスプラインに出力される。第2サーキュラスプラインの回転は、第2回転軸に伝達される。なお、第2回転軸に入力された回転は、上述の過程を逆行して第1回転軸に伝達される。
このように、第3回転軸で接続された第1ウェーブジェネレータと第2ウェーブジェネレータとが同じ方向に回転するのに対し、上述の構成により第1波動歯車装置は、第1回転軸から入力された回転に対して逆方向の回転を第3回転軸に出力し、第2波動歯車装置は、第3回転軸から入力された回転に対して同じ方向の回転を第2回転軸に出力する。
このような構造とすることで、バックラッシュによる振動を抑えた差動機構を、より小型かつ高剛性にすることができる。
上述の構成は、例えば、産業用ロボット等の分野においてより振動を抑えた差動機構を必要とする場合に好適に用いることができる。
また、本発明に係る懸架機構は、長手方向の両端部に複数の走行機構を備えた第1ロッカーアーム及び第2ロッカーアームと、前記差動機構と、を備え、前記第1ロッカーアームにおける前記長手方向の中央が、前記長手方向に直交する前記第1回転軸に接続され、前記第2ロッカーアームにおける前記長手方向の中央が、前記長手方向に直交する前記第2回転軸に接続され、前記第1ロッカーアームと前記第2ロッカーアームとは、前記第1回転軸または前記第2回転軸を中心として受動的に、かつ逆方向に回転する。
この発明によれば、長手方向の両端部に複数の走行機構を備えた第1ロッカーアームと第2ロッカーアームとは、長手方向に直交する方向を回転軸として受動的に、かつ逆方向に回転する。
ここで、このような懸架機構を備えた車両が、第1ロッカーアーム及び第2ロッカーアームの長手方向を進行方向として走行機構により平地を移動しているとする。例えば、第1ロッカーアームにおける進行方向側の走行機構が段差に乗り上げたとき、ロッカーアームが接続された第1回転軸が、ロッカーアームの角度変化に伴い回転する。これに伴い、第2回転軸が第1回転軸と逆方向に回転する。これにより、第2ロッカーアームを長手方向に直交する方向に回転させる。
このような第2ロッカーアームの回転は、第2ロッカーアームの車両方向側の走行機構を支点としたとき、第2ロッカーアームの車両方向と反対の側の走行機構を地面に押し付けるように作用する。結果として、段差に乗り上げた走行機構以外の走行機構が、いずれも地面に接した状態を保つことができる。よって、路面状況が悪い場所においてより高い走破性を有する車両とすることができる。
また、上述のように本発明に係る差動機構は小型かつ高剛性とすることができ、更に振動を抑えることができる。よって、車体のピッチングや振動を抑制し安定した走行ができ、かつ小型な車両とすることができる。
上述の構成は、例えば、この懸架機構を、月面、あるいは砂漠といった不整地環境等を走行する車両に好適に用いることができる。具体的には、月面探査機や、砂漠における物資運搬車両等に好適に用いることができる。
本発明によれば、歯車のバックラッシュによる振動を抑制し、剛性を高めるとともに小型な差動機構を提供することができる。
本発明に係る差動機構の全体図である。 本発明に用いられる波動歯車装置の基礎構造を示す斜視図である。 図1に示す差動機構における第1波動歯車装置を含む構造の斜視図である。 図1に示す差動機構における第2波動歯車装置を含む構造の斜視図である。 本発明に係る差動機構を車両に適用した例を示す斜視図である。 図5に示す車両に車体本体を積載した例を示す斜視図である。 図6に示す車両が備える走行機構の1つが、岩石を乗り越える例である。
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る差動機構24を説明する。
図1は、本発明に係る差動機構24の実施例を示したものである。差動機構24は、第1波動歯車装置1と、第2波動歯車装置2と、第1固定部3と、第2固定部4と、第3固定部5と、第4固定部6と、第5固定部7と、第1フランジ8と、第2フランジ9と、第3フランジ10と、第4フランジ11と、第1回転軸12と、第2回転軸13と、第3回転軸14と、第1固定円板15と、第2固定円板16と、第1軸受ハウジング17と、第2軸受ハウジング18と、第1固定板19と、第2固定板20と、を備える。
第1波動歯車装置1及び第2波動歯車装置2は、図2に示すように、それぞれサーキュラスプライン21と、フレクスプライン22と、ウェーブジェネレータ23と、を備える、いわゆるハーモニックドライブ(登録商標)である。一般的な波動歯車装置は、ウェーブジェネレータ23から入力された回転を減速してフレクスプライン22から出力する構造を備える。
また、サーキュラスプライン21を基準としたとき、フレクスプライン22とウェーブジェネレータ23とが逆方向に回転する。これを言い換えると、フレクスプライン22を基準としたとき、サーキュラスプライン21とウェーブジェネレータ23とは同じ方向に回転する。
本発明に係る差動機構24の備え、第1波動歯車装置1及び第2波動歯車装置2はそれぞれ同一の波動歯車装置であるが、第1固定板19に対する固定の形態が異なる(詳細は後述する)。
以下において、第1波動歯車装置1の備える上述の各構成を、特に第1サーキュラスプライン211、第1フレクスプライン221、第1ウェーブジェネレータ231と呼称することがある。また、第2波動歯車装置2の備える上述の各構成を、特に第2サーキュラスプライン212、第2フレクスプライン222、第2ウェーブジェネレータ232と呼称することがある。
第1固定板19は、断面U字状の部材であり、その上には差動機構24の各構成部品が固定される。あるいは、差動機構24を外部の構造物に組み込む際、第1固定板19と外部の構造物とが接続される。このように、第1固定板19は、いわゆる差動機構24における骨格部品の役割を有する。
第1固定部3は、第1波動歯車装置1の第1サーキュラスプライン211を第1固定板19に固定する。これにより、第1波動歯車装置1は、第1フレクスプライン221と第1ウェーブジェネレータ231とが回転可能となる。
図3に示すように、第1固定部3は、上述の構造を担保するため、第1側面3a、第2側面3b、底面3cからなる断面U字状の形状を備える。第1側面3a及び第2側面3bには、第1固定板19に対して固定するためのボルト穴(不図示)を備えている。また、底面3cには第1サーキュラスプライン211をボルト固定するためのボルト穴(不図示)と、第1ウェーブジェネレータ231に第3回転軸14(後述する)を接続可能とするための貫通穴と、を備えている。
第2固定部4は、第1フレクスプライン221と第1フランジ8とを連結する。第2固定部4と第1フレクスプライン221との固定は、例えば、ボルトによる固定が好適に用いられる。第2固定部4と第1フランジ8の接続は、ボルトによる固定が好適に用いられる。
図3に示すように、第2固定部4は、上述の構造を担保するため、第1フレクスプライン221の外径と同等の外径を備えた円筒状であり、前記円筒状の軸方向における一方の端部に、第1フレクスプライン221と固定するためのボルト穴(不図示)を備え、他方の端部に第1フランジ8と固定するためのボルト穴(不図示)が備えられている。
第3固定部5は、第2フレクスプライン222を第1固定板19に固定する。これにより、第2波動歯車装置2は、第2サーキュラスプライン212と第2ウェーブジェネレータ232とが回転可能となる。図4に示すように、第3固定部5は、上述の機能を担保するため、上面5a、下面5b、中央部5cからなる断面I字状の形状を備える。上面5a及び下面5bには、第1固定板19に対して固定するためのボルト穴(不図示)を備えている。また、中央部5cには、第2フレクスプライン222を固定するためのボルト穴(不図示)を備えている。
第4固定部6は、第2サーキュラスプライン212と第3フランジ10とを連結する。第4固定部6と第2サーキュラスプライン212との固定は、例えば、ボルトによる固定が好適に用いられる。第4固定部6と第3フランジ10との接続は、ボルトによる固定が好適に用いられる。
図4に示すように、第4固定部6は、上述の構造を担保するため、第1面6aと、第2面6bと、連結部6cと、を備える。第1面6aは平板状であり、第2サーキュラスプライン212に対して固定するためのボルト穴(不図示)を備えている。第2面6bは平板状であり、第3フランジ10に対して固定するためのボルト穴(不図示)を備えている。第1面6aと、第2面6bとは、連結部6cによって固定されている。第2波動歯車装置2の回転軸の方向において、連結部6cのある部位には、第3固定部5の中央部5cが位置している。このような形状とすることで、第2フレクスプライン222の回転を、第3固定部5の中央部5cを避けて第3フランジ10に伝達する。
また、連結部6cは、図4における紙面手前側のみに備えられていてもよいし、紙面奥側において紙面手前側と対称に設けられていてもよい。
第5固定部7は、第3回転軸14を保持する第1軸受ハウジング17と、第2サーキュラスプライン212とを連結する。ここで、上述のように第2サーキュラスプライン212は、第3固定部5によって第1固定板19に固定されている。第5固定部7と、第1軸受ハウジング17及び第2サーキュラスプライン212との固定には、ボルトによる固定が好適に用いられる。
図4に示すように、第5固定部7は、上述の構造を担保するため、第2サーキュラスプライン212の外径に対応した部位と、第1軸受ハウジング17の外径に対応した部位と、を備える。また、両部位において、それぞれ第2サーキュラスプライン212及び第1軸受ハウジング17に固定するためのボルト穴(不図示)を備えている。
第1フランジ8は、第2固定部4と第1回転軸12とを連結する。このため、図3に示すように、第1フランジ8は、第2固定部4に固定するためのボルト穴(不図示)と、第1回転軸12を連結するための挿入穴と、を備える。第1フランジ8に連結された第1回転軸12は、例えば、ボルトにより固定されることが好ましい。
第2フランジ9は、第1回転軸12と第2固定円板16とを連結する。第2フランジ9は、例えば、第1フランジ8と同等の形状を備える。つまり、第2フランジ9と第1回転軸12とは挿入穴に第1回転軸12が挿入されることで固定され、第2フランジ9と第2固定円板16とはボルトによって固定される。
第3フランジ10は、第4固定部6と第2回転軸13とを連結する。このため、図4に示すように、第3フランジ10は、第4固定部6に固定するためのボルト穴(不図示)と、第2回転軸13を連結するための挿入穴と、を備える。第3フランジ10に連結された第2回転軸13は、例えば、ボルトによって固定されることが好ましい。
第4フランジ11は、第2回転軸13と第1固定円板15とを連結する。第4フランジ11は、例えば、第3フランジ10と同等の形状を備える。つまり、第4フランジ11と第2回転軸13とは挿入穴に第2回転軸13が挿入されることで固定され、第4フランジ11と第1固定円板15とはボルトによって固定される。
第1回転軸12は、上述の構成により、第1波動歯車装置1と第2固定円板16とを連結する。第1回転軸12は、第2固定円板16から入力された回転を、第1波動歯車装置1に伝達する。あるいは、第1波動歯車装置1から出力された回転を、第2固定円板16に伝達する。
第2回転軸13は、上述の構成により、第2波動歯車装置2と第1固定円板15とを連結する。第2回転軸13は、第1固定円板15から入力された回転を、第2波動歯車装置2に伝達する。あるいは、第2波動歯車装置2から出力された回転を、第1固定円板15に伝達する。
第3回転軸14は、第1ウェーブジェネレータ231と第2ウェーブジェネレータ232とを接続する。これにより、第1波動歯車装置1と第2波動歯車装置2が互いに連結される。つまり、上述の構成と合わせて、第1回転軸12と第2回転軸13とが第1波動歯車装置1及び第2波動歯車装置2を介して接続されることとなる。結果として、第2固定円板16からの回転入力が第1回転軸12を介して第2回転軸13に伝達されたり、第1固定円板15からの回転入力が第2回転軸13を介して第1回転軸12に伝達されたりする構造となる。
第1固定円板15は、差動機構24において、一方の側の端部に設けられる。第1固定円板15は、例えば、製品あるいは装置の一部品として差動機構24が組み込まれる際、他の構成部品に接続される部位である。第1固定円板15は、第2回転軸13の軸方向を中心軸として回転可能である。これにより、構成部品からの回転入力を第2回転軸13に伝達する。
第2固定円板16は、差動機構24において、他方の側の端部に設けられる。第2固定円板16は、例えば、製品あるいは装置の一部品として差動機構24が組み込まれる際、他の構成部品に接続される部位である。第2固定円板16は、第1回転軸12の軸方向を中心軸として回転可能である。これにより、構成部品からの回転入力を第1回転軸12に伝達する。
第1軸受ハウジング17は、第3回転軸14の周方向において摺動可能に接している。これにより、第3回転軸14が軸方向に回転する際に軸がぶれることのないように保持する役割を有する。第1軸受ハウジング17は、上述のように第5固定部7によって第2サーキュラスプライン212に連結されている。
第2軸受ハウジング18は第1固定板19に固定され、図1に示すように、第1回転軸12の軸方法の両端部及び第2回転軸13の軸方向の両端部を保持する。差動機構24の長手方向の両端部に設けられた第2軸受ハウジング18は、第2固定板20によって保持されている。
第2固定板20は、上述の第1固定板19の長手方向の両端に設けられる。第2固定板20は、第1固定板19の長手方向の両端における開口を閉塞することで、第1固定板19を箱状にする。これにより、第1固定板19を補強し、あるいは第1固定板19の両端に設けられた第2軸受ハウジング18を保持する役割を有する。このような構成により、第1回転軸12、第2回転軸13及び第3回転軸14は、差動機構24において第2軸受ハウジング18及び第1固定板19によって同一直線上に固定されている。
つぎに、上述の構成を備える差動機構24における第1回転軸12と第2回転軸13との間における、第1波動歯車装置1及び第2波動歯車装置2を介した回転の伝達について説明する。
まず、図1に示す第1波動歯車装置1のように、第1ウェーブジェネレータ231からの入力に対して、第1サーキュラスプライン211を固定し、第1フレクスプライン221を出力とした場合について考える。この場合、第1ウェーブジェネレータ231の回転は第1フレクスプライン221で減速され、第1フレクスプライン221は逆方向に回転する。
次に、第2波動歯車装置2のように、第2ウェーブジェネレータ232からの入力に対して、第2フレクスプライン222を固定し、第2サーキュラスプライン212を出力とした場合について考える。この場合、第2ウェーブジェネレータ232の回転は、第2サーキュラスプライン212で減速され、第2サーキュラスプライン212は同じ方向に回転する。
上述のように、第1波動歯車装置1の第1ウェーブジェネレータ231と第2波動歯車装置2の第2ウェーブジェネレータ232は、第3回転軸14によって接続されている。つまり、第3回転軸14によって、第1ウェーブジェネレータ231と第2ウェーブジェネレータ232とは、同じ方向に回転する。このとき、第3回転軸14から入力された回転に対して、第1波動歯車装置1は逆方向の回転を出力する。また、第3回転軸14から入力された回転に対して、第2波動歯車装置2は同じ方向の回転を出力する。よって、差動機構24において、第1回転軸12と第2回転軸13とは、上述の構成によって互いに逆方向に回転する。
このような構成により、例えば、第1回転軸12に入力された回転は、下記のように第2回転軸13に伝達される。すなわち、まず、第1回転軸12に入力された回転が、第1フレクスプライン221に伝達される。第1フレクスプライン221に入力された回転は第1波動歯車装置1によって増速され、かつ、逆方向の回転として第1ウェーブジェネレータ231に出力される。第1ウェーブジェネレータ231の回転は、第3回転軸14で接続された第2ウェーブジェネレータ232へ伝達される。第2ウェーブジェネレータ232の回転は、第2波動歯車装置2によって減速され、かつ、同じ方向の回転として第2サーキュラスプライン212に出力される。第2サーキュラスプライン212の回転は、第2回転軸13に伝達される。なお、第2回転軸13に入力された回転は、上述の過程を逆行して第1回転軸12に伝達される。
ここで、波動歯車装置において、上述のように、サーキュラスプライン21を固定した場合と、フレクスプライン22とを固定した場合においては、ウェーブジェネレータ23からの入力に対する減速比が異なる。具体的には、波動歯車装置の構造上、サーキュラスプライン21を固定した場合の減速比は、フレクスプライン22を固定した場合の減速比に対して1大きくなる。
このため、第1波動歯車装置1に接続された第1回転軸12と、第2波動歯車装置2に接続された第2回転軸13とでは、出力される回転数が等しくならない。これに対しては、第1波動歯車装置1及び第2波動歯車装置2に用いる波動歯車装置の減速比を大きくすることで、減速比の差による影響を無視できる程度に小さくすることができる。これにより、上述の影響によって実用上の問題が生じることを防ぐことができる。
上述の構成を備える差動機構24は、以下のような装置に用いられる。すなわち、例えば、産業用ロボットのアームに用いることができる。あるいは、車両Rの懸架機構において用いることができる。以下において、本実施形態に係る差動機構24の使用例として、車両Rの懸架機構として用いた場合について説明する。
図5に示す車両Rは、差動機構24と、第1ロッカーアーム25と、第2ロッカーアーム26と、第1走行機構27と、第2走行機構28と、第3走行機構29と、第4走行機構30と、を備える。車両Rは、例えば、月面探査機である。
第1ロッカーアーム25は、車両Rの進行方向の右側に設けられ、長手方向が進行方向と平行に設けられている。第1ロッカーアーム25において、進行方向の前方の端部には第1走行機構27、進行方向の後方の端部には第2走行機構28が設けられる。
第2ロッカーアーム26は、車両Rの進行方向の左側に設けられ、長手方向が進行方向と平行に設けられている。第2ロッカーアーム26において、進行方向の前方の端部には第3走行機構29、進行方向の後方の端部には第4走行機構30が設けられる。
第1走行機構27、第2走行機構28、第3走行機構29、第4走行機構30は、いずれも車両Rにおける車輪である。これらは、それぞれ第1ロッカーアーム25及び第2ロッカーアーム26との接続部に設けられたモータによって駆動する。
上述の構成を備える第1ロッカーアーム25及び第2ロッカーアーム26は次のように車両Rに組み込まれる。すなわち、図5に示すように、第1ロッカーアーム25の長手方向の中央は第1固定円板15に接続され、第2ロッカーアーム26の長手方向の中央は第2固定円板16に接続される。また、上述の構成を基礎として、図6に示すように、差動機構24の上に物資の貯蔵庫あるいは制御盤等を搭載した車体本体31を設けてもよい。
上述の車両Rにおいて、例えば、図7に示すように、第3走行機構29が岩石等の障害物を乗り越える場合について考える。第3走行機構29が取り付けられた第2ロッカーアーム26には、第2固定円板16との接続部を中心とした回転モーメントが発生する。この回転モーメントは、第2固定円板16、第2フランジ9、第1回転軸12、第1フランジ8、第2固定部4を介して、第1フレクスプライン221に伝達される。これにより、第1フレクスプライン221が回転し、第1ウェーブジェネレータ231、第1波動歯車装置1の減速比の分だけ増速されて逆方向に回転する。
次に、第1ウェーブジェネレータ231の回転は、第3回転軸14を介して、第2ウェーブジェネレータ232に伝達される。これにより、第1波動歯車装置1及び第2波動歯車装置2のウェーブジェネレータ23が同じ方向に同じ回転数だけ回転する。第2ウェーブジェネレータ232の回転は、第2サーキュラスプライン212に伝達される。第2サーキュラスプライン212は、第2波動歯車装置2の減速比+1の分だけ減速され、第2ウェーブジェネレータ232と同じ方向に回転する。
その後、第2サーキュラスプライン212の回転は、第4固定部6、第3フランジ10、第2回転軸13、第4フランジ11、第1固定円板15を介して、第1ロッカーアーム25に伝達される。これにより、第1ロッカーアーム25には第2ロッカーアーム26と逆方向に回転するモーメントが、第1固定円板15と第1ロッカーアーム25との接続部を中心に発生する。この回転モーメントは、図7に示す状態において、第2走行機構28を押し下げるようとする方向に作用する。このとき、第1ロッカーアーム25に取り付けられた第1走行機構27及び第2走行機構28が同一平面上に接地している場合には、差動機構24及び第4走行機構30が第2ロッカーアーム26と同じ方向に回転する。これにより、第1走行機構27、第2走行機構28、第3走行機構29、第4走行機構30のいずれもが、常に地面と接地することができる。よって、より高い走破性を確保することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る差動機構24によれば、まず、第1回転軸12に入力された回転が、第1フレクスプライン221に伝達される。第1フレクスプライン221に入力された回転は第1波動歯車装置1によって増速され、かつ、逆方向の回転として第1ウェーブジェネレータ231に出力される。第1ウェーブジェネレータ231の回転は、第3回転軸14で接続された第2ウェーブジェネレータ232へ伝達される。第2ウェーブジェネレータ232の回転は、第2波動歯車装置2によって減速され、かつ、同じ方向の回転として第2サーキュラスプライン212に出力される。第2サーキュラスプライン212の回転は、第2回転軸13に伝達される。なお、第2回転軸13に入力された回転は、上述の過程を逆行して第1回転軸12に伝達される。
このように、第3回転軸14で接続された第1ウェーブジェネレータ231と第2ウェーブジェネレータ232とが同じ方向に回転するのに対し、上述の構成により第1波動歯車装置1は、第1回転軸12から入力された回転に対して逆方向の回転を第3回転軸14に出力し、第2波動歯車装置2は、第3回転軸14から入力された回転に対して同じ方向の回転を第2回転軸13に出力する。
このような構造とすることで、バックラッシュによる振動を抑えた差動機構24を、より小型かつ高剛性にすることができる。
上述の構成は、例えば、産業用ロボット等の分野においてより振動を抑えた差動機構24を必要とする場合に好適に用いることができる。
また、長手方向の両端部に複数の走行機構を備えた第1ロッカーアーム25と第2ロッカーアーム26とは、長手方向に直交する方向を回転軸として受動的に、かつ逆方向に回転する。
ここで、このような懸架機構を備えた車両Rが、第1ロッカーアーム25及び第2ロッカーアーム26の長手方向を進行方向として走行機構により平地を移動しているとする。例えば、第1ロッカーアーム25における進行方向側の走行機構が段差に乗り上げたとき、ロッカーアームが接続された第1回転軸12が、ロッカーアームの角度変化に伴い回転する。これに伴い、第2回転軸13が第1回転軸12と逆方向に回転する。これにより、第2ロッカーアーム26を長手方向に直交する方向に回転させる。
このような第2ロッカーアーム26の回転は、第2ロッカーアーム26の車両方向側の走行機構を支点としたとき、第2ロッカーアーム26の車両方向と反対の側の走行機構を地面に押し付けるように作用する。結果として、段差に乗り上げた走行機構以外の走行機構が、いずれも地面に接した状態を保つことができる。よって、路面状況が悪い場所においてより高い走破性を有する車両Rとすることができる。
また、上述のように本発明に係る差動機構24は小型かつ高剛性とすることができ、更に振動を抑えることができる。よって、車体のピッチングや振動を抑制し安定した走行ができ、かつ小型な車両Rとすることができる。
上述の構成は、例えば、この懸架機構を、月面、あるいは砂漠といった不整地環境等を走行する車両Rに好適に用いることができる。具体的には、月面探査機や、砂漠における物資運搬車両等に好適に用いることができる。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1走行機構27、第2走行機構28、第3走行機構29、第4走行機構30は、通常の車輪に限らず、クローラ機構としてもよい。あるいは、通常の車輪とクローラ機構とが混在していてもよい。例えば、車両Rの進行方向前方の第1走行機構27と第3走行機構29とが通常のタイヤで、進行方向後方の第2走行機構28と第4走行機構30とがクローラとなるようにしてもよいし、その逆としてもよい。
また、上述の各構成において、ボルトによる固定と記載された部位については、いずれもボルトによる締結以外の方法により固定されてもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
1 第1波動歯車装置
2 第2波動歯車装置
3 第1固定部
3a 第1側面
3b 第2側面
3c 底面
4 第2固定部
5 第3固定部
5a 上面
5b 下面
5c 中央部
6 第4固定部
6a 第1面
6b 第2面
6c 連結部
7 第5固定部
8 第1フランジ
9 第2フランジ
10 第3フランジ
11 第4フランジ
12 第1回転軸
13 第2回転軸
14 第3回転軸
15 第1固定円板
16 第2固定円板
17 第1軸受ハウジング
18 第2軸受ハウジング
19 第1固定板
20 第2固定板
21 サーキュラスプライン
22 フレクスプライン
23 ウェーブジェネレータ
24 差動機構
25 第1ロッカーアーム
26 第2ロッカーアーム
27 第1走行機構
28 第2走行機構
29 第3走行機構
30 第4走行機構
31 車体本体
211 第1サーキュラスプライン
212 第2サーキュラスプライン
221 第1フレクスプライン
222 第2フレクスプライン
231 第1ウェーブジェネレータ
232 第2ウェーブジェネレータ
R 車両

Claims (2)

  1. 固定板と、
    第1サーキュラスプライン、第1フレクスプライン及び第1ウェーブジェネレータを備え、前記固定板に前記第1サーキュラスプラインが固定された第1波動歯車装置と、
    前記第1フレクスプラインに接続された第1回転軸と、
    第2サーキュラスプライン、第2フレクスプライン及び第2ウェーブジェネレータを備え、前記固定板に前記第2フレクスプラインが固定された第2波動歯車装置と、
    前記第2サーキュラスプラインに接続された第2回転軸と、
    前記第1ウェーブジェネレータと前記第2ウェーブジェネレータとを接続する第3回転軸と、
    を備えている、
    差動機構。
  2. 長手方向の両端部に複数の走行機構を備えた第1ロッカーアーム及び第2ロッカーアームと、
    請求項1に記載の差動機構と、
    を備え、
    前記第1ロッカーアームにおける前記長手方向の中央が、前記長手方向に直交する前記第1回転軸に接続され、
    前記第2ロッカーアームにおける前記長手方向の中央が、前記長手方向に直交する前記第2回転軸に接続され、
    前記第1ロッカーアームと前記第2ロッカーアームとは、前記第1回転軸または前記第2回転軸を中心として受動的に、かつ逆方向に回転する、
    懸架機構。
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