JP2022184338A - セメントミルク置換率推定方法及びソイルセメントの強度推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】養生期間を確保せずに、セメントミルク置換率を推定する。【解決手段】セメントミルク置換率推定方法は、セメントミルクと現場発生土とを混合して形成されたソイルセメントの未固結試料を乾燥させる工程と、乾燥した未固結試料を粉砕し、蛍光X線分析計を用いて、未固結試料の所定元素含有量を測定する工程と、未固結試料の所定元素含有量、現場発生土の所定元素含有量及びセメントミルクに用いられるセメントの所定元素含有量を用いて、前記ソイルセメントにおける土とセメントとの質量比を算出する工程と、算出された前記質量比、現場発生土の含水比、密度、前記セメントの密度及び前記セメントミルクにおける水とセメントとの質量比から、前記ソイルセメントにおける前記セメントミルクの割合を算出する工程と、を備える。【選択図】図2
Description
本発明は、セメントミルク置換率推定方法及びソイルセメントの強度推定方法に関する。
既製杭埋込み杭工法によって形成される杭など、ソイルセメントを用いて形成される地下構造物においては、施工管理や強度確認のために、ソイルセメントにおけるセメント量を推定する方法や、ソイルセメントにおけるセメントミルクの割合を推定する方法が求められている。
例えば、下記特許文献1には、杭穴根固め部におけるソイルセメントから未固結試料を取り出し、この未固結試料の温度変化からセメント量を推定する方法が記載されている。
上記特許文献1のセメント量の推定方法では、時間と温度との関係を示すグラフを作成するため、未固結試料を一定期間養生する必要がある。このため、セメント量を推定するまでに時間がかかる。また、温度を正確に測定するためには、断熱容器内で未固結試料を養生する必要があり、管理に手間がかかる。
本発明は、上記事実を考慮して、養生期間を確保せずに、ソイルセメントにおけるセメントミルクの割合、すなわちセメントミルク置換率を推定することを目的とする。
請求項1のセメントミルク置換率推定方法は、セメントミルクと現場発生土とを混合して形成されたソイルセメントの未固結試料を乾燥させる工程と、乾燥した前記未固結試料を粉砕し、蛍光X線分析計を用いて、前記未固結試料の所定元素含有量を測定する工程と、前記未固結試料の所定元素含有量、現場発生土の所定元素含有量及び前記セメントミルクに用いられるセメントの所定元素含有量を用いて、前記ソイルセメントにおける土とセメントとの質量比を算出する工程と、算出された前記質量比、現場発生土の含水比、密度、前記セメントの密度及び前記セメントミルクにおける水とセメントとの質量比から、前記ソイルセメントにおける前記セメントミルクの割合を算出する工程と、を備えている。
ソイルセメントは、セメントミルク(セメントと水の混合体)と現場発生土とを混合して形成されており、これらの混合割合を把握することは困難である。このため、ソイルセメントに含まれるセメントミルクの割合を把握することは難しい。
ここで、セメント及び現場発生土には、それぞれ様々な元素が含まれている。この様々ン元素のうち、特定の元素(所定元素、例えばカルシウムなど)に注目して、ソイルセメント、及び、現場発生土の所定元素含有量を把握することができれば、ソイルセメントに含まれるセメントミルクの割合を算出することができる。
そこで、請求項1のセメントミルク置換率推定方法では、ソイルセメントにおける未固結試料の所定元素含有量を、蛍光X線分析計を用いて測定する。このとき、未固結試料は乾燥及び粉砕されるため、セメント成分と現場発生土成分とが均一に混合され、所定元素含有量を精度よく測定できる。
そして、測定された未固結試料の所定元素含有量と、現場発生土の所定元素含有量と、セメントミルクに用いられるセメントの所定元素含有量と、を用いて、ソイルセメントにおける土とセメントとの質量比を算出する。
さらに、算出された質量比、現場発生土の含水比、密度、セメントの密度及びセメントミルクにおける水とセメントとの質量比から、ソイルセメントにおけるセメントミルクの割合を算出する。
このように、本態様のセメントミルク置換率推定方法では、養生期間を確保せずに、ソイルセメントにおけるセメントミルクの割合、すなわちセメントミルク置換率を推定することができる。
請求項2のセメントミルク置換率推定方法は、請求項1に記載のセメントミルク置換率推定方法において、前記現場発生土の所定元素含有量は、乾燥した現場発生土を粉砕し、蛍光X線分析計を用いて測定される。
請求項2のセメントミルク置換率推定方法では、現場発生土の所定元素含有量を乾燥及び粉砕して、蛍光X線分析計を用いて測定する。これにより、既往のデータに基づく現場発生土の所定元素含有量を用いる場合と比較して、現場発生土の所定元素含有量の精度が高い。
請求項3のセメントミルク置換率推定方法は、請求項1又は2に記載のセメントミルク置換率推定方法において、前記ソイルセメントは、杭孔の根固め部を形成する。
請求項3のセメントミルク置換率推定方法では、杭孔の根固め部を形成するソイルセメントにおけるセメントミルク置換率を推定することができる。これにより、根固め部におけるセメントミルクと土との混ざり具合を把握したり、根固め部の強度を推定したりすることができる。
請求項4のソイルセメントの強度推定方法は、ソイルセメントにおけるセメントミルクの割合と圧縮強度との相関データと、請求項1~3の何れか1項に記載のセメントミルク置換率推定方法によって算出されたソイルセメントにおけるセメントミルクの割合と、を用いて、ソイルセメントの圧縮強度を推定する。
請求項4のソイルセメントの強度推定方法では、ソイルセメントにおけるセメントミルクの割合と圧縮強度との相関データから、ソイルセメントの圧縮強度を推定する。これにより、ソイルセメントが固結するまでの養生期間を確保せずに、ソイルセメントの強度を推定できる。
本発明によると、養生期間を確保せずに、セメントミルク置換率を推定することができる。
以下、本発明の実施形態に係るセメントミルク置換率推定方法及びソイルセメントの強度推定方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
<杭の施工方法>
本発明の実施形態に係るセメントミルク置換率推定方法及びソイルセメントの強度推定方法は、一例として、杭の根固め部を形成するソイルセメントに用いられる。そこで、これらの方法の説明に先立ち、セメントミルク置換率及び強度を推定する対象であるソイルセメントが用いられる杭の施工方法の概略について説明する。
本発明の実施形態に係るセメントミルク置換率推定方法及びソイルセメントの強度推定方法は、一例として、杭の根固め部を形成するソイルセメントに用いられる。そこで、これらの方法の説明に先立ち、セメントミルク置換率及び強度を推定する対象であるソイルセメントが用いられる杭の施工方法の概略について説明する。
図1(A)~(D)には、既製杭10を埋込み工法で地盤Gへ埋設する方法の一例が示されている。図1(D)に示す既製杭10は、コンクリート製の杭であり、工場などにおいて予め成型された後、施工現場へ搬入される。
既製杭10を地盤Gへ埋設するためには、まず、図1(A)に示すように、掘削ロッド20を用いて掘削液を注入しながら地盤Gを掘削し、杭孔GHを形成する。本実施形態においては既製杭10を先端支持杭とするために、杭孔GHの先端を、支持層GAに到達させる。
次に図1(B)に示すように、掘削ロッド20から杭孔GHの先端(底)へセメントミルクを注入する。このセメントミルクを攪拌することで、地盤G中の土と混合させ、根固め部を形成するソイルセメント12を構築する。
なお、セメントミルクは、セメント及び水を混錬して、又は、セメント、水及び各種添加剤を混錬して形成される。また、ソイルセメントは、セメントミルクと土との混錬体である。本明細書においては、「地盤G」を形成する鉱物、有機物、気体、液体及び生物等の混合物を「土」と称す。
杭孔GHの先端には、杭孔GHの直径が拡径され、かつ、ソイルセメント12が充填された部分である根固め球根12Aを形成することが好適である。なお、根固め球根12Aを形成する場合、掘削ロッド20における掘削ヘッドは、拡径できる公知の構造とする。そして当該掘削ヘッドを所定の深度において拡径することで、根固め球根12Aが形成される。
次に図1(C)に示すように、掘削ロッド20を引き抜きながら、ソイルセメント12の上方にセメントミルクを注入及び攪拌する。これにより杭周固定液としてのソイルセメント14を形成する。ソイルセメント14は、ソイルセメント12と比較して、単位体積当たりのセメント量が少ない貧調合のセメントミルクを用いて形成してもよい。
次に図1(D)に示すように、杭孔GHへ既製杭10を挿入する。このとき、既製杭10の先端を、杭孔GHの先端の根固め球根12Aへ陥入する。これにより、既製杭10が地盤Gへ埋設される。
<杭強度推定方法>
本発明の実施形態に係るソイルセメントの強度推定方法は、例えば既製杭10の根固め部であるソイルセメント12の固結後の強度を推定する方法である。
本発明の実施形態に係るソイルセメントの強度推定方法は、例えば既製杭10の根固め部であるソイルセメント12の固結後の強度を推定する方法である。
ソイルセメント12の固結後の強度を推定する理由は、既製杭10の支持力がソイルセメント12の強度に影響を受けるからである。具体的には、ソイルセメント12は、既製杭10の先端部分と支持層GAとを一体化し、既製杭10に作用する押し込み力に抵抗する。このため、既製杭10の支持力を評価する際には、既製杭10そのものの強度だけではなく、ソイルセメント12の強度を推定することが好適である。
また、ソイルセメント12の固結後の強度を「推定」するとは、ソイルセメント12の「固結前」において固結後の強度を評価することである。この場合、ソイルセメント12の固結後に、当該ソイルセメント12の強度を「測定」する場合と比較して、ソイルセメント12が固結するまでの養生期間を確保する必要がない。これにより、工期を短縮できる。
なお、本実施形態において強度を推定するソイルセメントは、本設杭に用いられるものでなくてもよく、本設杭に用いられるものと略等しい成分のソイルセメントでよい。
この場合、本設杭としての既製杭10が設けられる敷地と同じ敷地に仮設の杭孔を削孔し、セメントミルクを注入及び攪拌する。これにより、本設杭に用いられるソイルセメント12と略等しい成分のソイルセメントを形成できる。「略等しい」とは、例えばセメントと土との混合割合がほぼ等しいことを示す。
また、本実施形態において強度を推定するソイルセメントは、必ずしも杭の根固め部に用いる必要はなく、杭の根固め部以外の部分に用いてもよい。さらに、ソイルセメントは、山留め壁や地盤改良体に用いるもの等としてもよい。以下の説明においては、本設杭に用いられるソイルセメント12を含むソイルセメント全般の強度推定方法について説明する。
(ソイルセメントの強度推定方法の概要)
ソイルセメントの強度は、単位体積のソイルセメントにおけるセメントミルクの体積の割合、すなわちセメントミルク置換率Vhが分かれば、セメントミルク置換率Vhと圧縮強度との相関データから、推定することができる。セメントミルク置換率Vhと圧縮強度(一軸圧縮強度qu[N/mm2])との相関データは、例えば図3に示されるように、既知の情報として得ることができる。なお、図3に示した例は、セメントミルクの水セメント比が60%の場合を示している。
ソイルセメントの強度は、単位体積のソイルセメントにおけるセメントミルクの体積の割合、すなわちセメントミルク置換率Vhが分かれば、セメントミルク置換率Vhと圧縮強度との相関データから、推定することができる。セメントミルク置換率Vhと圧縮強度(一軸圧縮強度qu[N/mm2])との相関データは、例えば図3に示されるように、既知の情報として得ることができる。なお、図3に示した例は、セメントミルクの水セメント比が60%の場合を示している。
図3においては、様々なセメントミルク置換率Vhを有する複数の試料において、一軸圧縮強度を測定した測定値がプロットされている。そして、図3には、これらのプロット箇所を一次曲線で近似した近似線C1が示されている。試料のセメントミルク置換率Vhに対応する一軸圧縮強度は、近似線C1から1対1対応で導出される。
(セメントミルク置換率)
図2に示すように、ソイルセメントを形成するセメントミルクは、一例として、C[g]のセメントと、C・R[g]の水とを混錬して形成されている。Rはセメントミルクにおける水セメント比(質量比)であり、任意に設定できる既知の値である。
図2に示すように、ソイルセメントを形成するセメントミルクは、一例として、C[g]のセメントと、C・R[g]の水とを混錬して形成されている。Rはセメントミルクにおける水セメント比(質量比)であり、任意に設定できる既知の値である。
また、セメントミルクと攪拌される土である現場発生土には、S[g]の土粒子(乾燥状態)と、S・ωs[g]の水と、が含まれている。ωsは現場発生土の含水比(質量比)であり、後述する事前調査によって測定できる値である。
セメントの密度をρc[g/cm3]、土粒子の密度をρs[g/cm3]とすると、C[g]のセメントの体積は、(C/ρc)[cm3]であり、S[g]の土粒子の体積は、(S/ρs)[cm3]である。さらに、水の密度を1とすると、(C・R)[g]の水の体積は(C・R)[cm3]であり、(S・ωs)[g]の水の体積は(S・ωs)[cm3]である。
すなわち、セメントミルクの体積Vcm[cm3]は次の(1-1)式で示される。
Vcm=C・[(1/ρc)+R]・・・(1-1)
また、現場発生土の体積Vsl[cm3]は次の(1-2)式で示される。
Vsl=S・[(1/ρs)+ωs]・・・(1-2)
さらに、単位体積のソイルセメントにおけるセメントミルクの体積の割合、すなわち「セメントミルク置換率」Vhは、次の(1-3)式で示される。
Vh=Vcm/(Vcm+Vsl)・・・(1-3)
上述したように、ソイルセメントの強度は、セメントミルク置換率Vhが分かれば、セメントミルク置換率Vhと圧縮強度との相関データから、推定することができる。しかし、ソイルセメントにおけるセメントミルクと現場発生土との混合割合を把握することは困難であるため、ソイルセメントに含まれるセメントの含有量C[g]を把握することは難しい。このため、セメントミルク置換率を把握することも難しい。
ここで、セメント及び現場発生土には、それぞれカルシウムが含まれている。ソイルセメント、及び、現場発生土のカルシウム含有量を把握することができれば、以下に示す方法で、ソイルセメントのセメントミルク置換率Vhを算出することができる。なお、カルシウムは本発明における所定元素の一例である。本発明に用いる「所定元素」とは、カルシウムのようにセメントに含有されているものであればよい。
(セメントのカルシウム濃度、密度及びセメントミルクの水セメント比)
ソイルセメントに用いられるセメントのカルシウム濃度Ca(c)[ppm]は、既知の情報である。例えば図4にも示すように、C[g]のセメントにおけるカルシウム含有量Ccaは、次の(2)式で示される。なお、セメントのカルシウム濃度は、蛍光X線分析計を用いて測定してもよい。
ソイルセメントに用いられるセメントのカルシウム濃度Ca(c)[ppm]は、既知の情報である。例えば図4にも示すように、C[g]のセメントにおけるカルシウム含有量Ccaは、次の(2)式で示される。なお、セメントのカルシウム濃度は、蛍光X線分析計を用いて測定してもよい。
Cca=C・Ca(c) ・・・(2)
また、セメントの密度ρc[g/cm3]も既知の情報である。さらに、セメントミルクにおける水セメント比Rは、上述したように任意に設定できる既知の値である。セメントと水とは、予め決められた水セメント比となるように調合されるが、例えば図1に示す杭孔GHへ注入するセメントミルクの水セメント比Rは、プラントでのセメントミルク製造時に調査することが好ましい。
(事前調査-試料採取)
ソイルセメントの強度を推定するためには、事前調査を実施する。事前調査の一例としては、まず、地盤(例えば図1に示す地盤G)から現場発生土の試料を採集する。試料の採集は、地盤調査のためのボーリング試験と併せて実行することが好適である。この試料とは、例えば図1に示す支持層GAを形成する現場発生土(以下、「土試料」と称す場合がある)である。
ソイルセメントの強度を推定するためには、事前調査を実施する。事前調査の一例としては、まず、地盤(例えば図1に示す地盤G)から現場発生土の試料を採集する。試料の採集は、地盤調査のためのボーリング試験と併せて実行することが好適である。この試料とは、例えば図1に示す支持層GAを形成する現場発生土(以下、「土試料」と称す場合がある)である。
(事前調査-現場発生土の測定)
次に、採集した土試料の質量を測定後、乾燥して、粉砕する。土試料の乾燥には、加熱乾燥式水分計や電子レンジ等、任意の機材を用いることができる。また、土試料の粉砕には、ミル等を用いることができる。そして、乾燥後の土試料の質量及び体積を測定する。
次に、採集した土試料の質量を測定後、乾燥して、粉砕する。土試料の乾燥には、加熱乾燥式水分計や電子レンジ等、任意の機材を用いることができる。また、土試料の粉砕には、ミル等を用いることができる。そして、乾燥後の土試料の質量及び体積を測定する。
これにより、土粒子(乾燥状態)の密度ρs[cm3]及び乾燥前の土試料の含水比ωsを把握することができる。なお、土試料には、図2に示すように、S[g]の土粒子(乾燥状態)と、S・ωs[g]の水と、が含まれている。
(事前調査-現場発生土のカルシウム含有量の測定)
次に、蛍光X線分析計を用いて、乾燥及び粉砕した土試料(土粒子)におけるカルシウム濃度を測定する。図4にも示すように、土粒子(乾燥状態)のカルシウム濃度が、Ca(s)[ppm]と測定された場合、S[g]の土粒子(乾燥状態)におけるカルシウム含有量Scaは、次の(3)式で示される。
次に、蛍光X線分析計を用いて、乾燥及び粉砕した土試料(土粒子)におけるカルシウム濃度を測定する。図4にも示すように、土粒子(乾燥状態)のカルシウム濃度が、Ca(s)[ppm]と測定された場合、S[g]の土粒子(乾燥状態)におけるカルシウム含有量Scaは、次の(3)式で示される。
Sca=S・Ca(s) ・・・(3)
(ソイルセメントのカルシウム含有量の測定)
次に、例えば図1に示す杭孔GHの内部においてセメントミルクと現場発生土とを混錬し、ソイルセメントを形成する。そして、未固結状態のソイルセメントを未固結試料として採取する。
次に、例えば図1に示す杭孔GHの内部においてセメントミルクと現場発生土とを混錬し、ソイルセメントを形成する。そして、未固結状態のソイルセメントを未固結試料として採取する。
次に、採取した未固結試料を乾燥して、粉砕する。未固結試料の乾燥には、土試料と同様に、加熱乾燥式水分計や電子レンジ等、任意の機材を用いることができる。また、未固結試料の粉砕には、ミル等を用いることができる。電子レンジ等による乾燥、粉砕及びカルシウム測定に要する時間は約1時間程度(このうち、加熱乾燥式水分計による乾燥は30分程度、電子レンジによる乾燥は15分程度)であり、一軸圧縮試験用の試験及び試験体の養生に要する時間(3~7日程度)と比較して十分に短い。
次に、蛍光X線分析計を用いて、乾燥及び粉砕した未固結試料(つまり、乾燥状態のソイルセメント)におけるカルシウム濃度を測定する。このとき、未固結試料は乾燥及び粉砕されているため、セメント成分と現場発生土成分とが均一に混合され、カルシウム含有量を精度よく測定できる。
図4に示すように、ソイルセメント(乾燥状態)のカルシウム濃度が、Ca(sc)[ppm]と測定された場合、このソイルセメント(乾燥状態)におけるカルシウム含有量Cca+Scaは、次の(4)式で示される。
Cca+Sca=(C+S)・Ca(sc) ・・・(4)
(ソイルセメントにおけるセメントと土粒子(乾燥状態)の質量比)
図4に示すように、ソイルセメントにおけるセメントと土粒子(乾燥状態)の質量比C:Sを、1:αとすると、この係数α(以下、質量比αと称す)は、次の(5-1)式で示される。
図4に示すように、ソイルセメントにおけるセメントと土粒子(乾燥状態)の質量比C:Sを、1:αとすると、この係数α(以下、質量比αと称す)は、次の(5-1)式で示される。
α=S/C ・・・(5-1)
また、ソイルセメントにおけるカルシウム濃度Ca(sc)は、(2)、(3)、(4)式から、次の(5-2)式で示される。
Ca(sc)=[C・Ca(c)+S・Ca(s)]/(C+S) ・・・(5-2)
これらのCa(c)、Ca(s)、Ca(sc)を用いて、質量比αは次の(5)式のように算出される。
α=[Ca(c)-Ca(sc)]/[Ca(sc)-Ca(s)] ・・・(5)
(ソイルセメントにおけるセメントミルク置換率)
ソイルセメントにおけるセメントミルクの体積Vcm[cm3]と、現場発生土の体積Vsl[cm3]との比は、上述した(1-1)式、(1-2)式より、次の(1-4)式で示される。
ソイルセメントにおけるセメントミルクの体積Vcm[cm3]と、現場発生土の体積Vsl[cm3]との比は、上述した(1-1)式、(1-2)式より、次の(1-4)式で示される。
Vcm:Vsl=1:(S/C)・[(1/ρs)+ωs]/[(1/ρc)+R]
・・・(1-4)
・・・(1-4)
(5-1)式を用いると、(1-4)式は次の(1-5)式で示される。
Vcm:Vsl=1:α・[(1/ρs)+ωs]/[(1/ρc)+R]
・・・(1-5)
・・・(1-5)
ここで、係数X=α・[(1/ρs)+ωs]/[(1/ρc)+R]とすると、(1-5)式は次の(1-6)式で示される。
Vcm:Vsl=1:X ・・・(1-6)
(1-3)式と、(1-6)式より、セメントミルク置換率Vhは、次の(1)式で示される。すなわち、セメントミルク置換率Vhは、上記の工程で算出又は測定された、ソイルセメントにおけるセメントと土粒子(乾燥状態)の質量比α、土粒子(乾燥状態)の密度ρs[cm3]、乾燥前の土試料の含水比ωs、セメントの密度ρc[g/cm3]及びセメントミルクの水セメント比Rから導出される係数Xにより、次の(1)式で示される。
Vh=1/(1+X)・・・(1)
(ソイルセメントの強度推定)
次に、図3に示すセメントミルク置換率Vhと圧縮強度との相関データから、ソイルセメントの強度(一軸圧縮強度)を推定する。具体的には、近似線C1において、算出されたセメントミルク置換率Vhに対応する一軸圧縮強度の値が、ソイルセメントの強度として推定される。これにより、ソイルセメントの未固結試料が固結した時の一軸圧縮強度が推定される。
次に、図3に示すセメントミルク置換率Vhと圧縮強度との相関データから、ソイルセメントの強度(一軸圧縮強度)を推定する。具体的には、近似線C1において、算出されたセメントミルク置換率Vhに対応する一軸圧縮強度の値が、ソイルセメントの強度として推定される。これにより、ソイルセメントの未固結試料が固結した時の一軸圧縮強度が推定される。
(作用及び効果)
このように、本実施形態に係るソイルセメントの強度推定方法及びセメントミルク置換率推定方法によると、ソイルセメントが固結するまでの養生期間を確保せずに強度を推定できる。
このように、本実施形態に係るソイルセメントの強度推定方法及びセメントミルク置換率推定方法によると、ソイルセメントが固結するまでの養生期間を確保せずに強度を推定できる。
強度を推定した結果、設計強度より小さい場合、杭孔GHにおけるソイルセメントが固結する前にセメントミルクを追加注入することで、ソイルセメントの強度を設計強度まで引き上げることができる。
また、強度を推定したソイルセメントが、仮設杭を形成するソイルセメントの場合は、本設杭に注入するセメントミルクを富調合とすることで、本設杭におけるソイルセメントの強度を設計強度まで引き上げることができる。
また、セメントミルクの注入率(セメントミルクの注入量/例えば根固め部の掘削量)を十分に大きくすることにより根固め部の強度を確保しつつ圧縮強度試験を省略する場合と比較して、根固め部に注入するセメントミルク量を少なくできる。これにより、材料費を低減できる。
なお、上記実施形態においては、セメントミルク置換率を推定した後、当該推定値を用いてソイルセメントの強度を推定しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばセメントミルク置換率を推定した後、必ずしもソイルセメントの強度を推定しなくてもよい。
例えば、図1に示す根固め部を形成するソイルセメント12は、根固め部の体積に対して、所定の体積割合でセメントミルクを注入して施工される。そして、未固結状態のソイルセメントを未固結試料として採取して、上記の工程に従ってセメントミルク置換率を推定する。これにより、セメントミルクが根固め部に所定の体積割合で注入されているか否かを確認することができる。
また、上記の方法によれば、セメントミルク置換率を、現場で、短時間に、簡易的な方法で、精度よく推定することができる。
これに対して、従来のコンクリートの配合推定方法としては、一例として、コンクリートを、110℃、600℃、1000℃などで加熱して、各種の水分量を求める方法がある。このような乾燥には時間がかかり、装置が大掛かりなものとなる。また、装置を現場に搬入することは容易ではない。
また、従来のコンクリートの配合推定方法の別の一例として、コンクリートを酸で溶解・ろ過した溶液の酸化カルシウムを分析してセメント量を求め、残さから骨材量を求める方法がある。このような化学的な分析には、専門的な知識を要するため、作業できる人員が限られてしまう。また、酸によって貝殻などのカルシウム成分が溶けてセメント量を過大に評価する可能性があるため、海砂などに用いることが難しい。
12 ソイルセメント
Claims (4)
- セメントミルクと現場発生土とを混合して形成されたソイルセメントの未固結試料を乾燥させる工程と、
乾燥した前記未固結試料を粉砕し、蛍光X線分析計を用いて、前記未固結試料の所定元素含有量を測定する工程と、
前記未固結試料の所定元素含有量、現場発生土の所定元素含有量及び前記セメントミルクに用いられるセメントの所定元素含有量を用いて、前記ソイルセメントにおける土とセメントとの質量比を算出する工程と、
算出された前記質量比、現場発生土の含水比、密度、前記セメントの密度及び前記セメントミルクにおける水とセメントとの質量比から、前記ソイルセメントにおける前記セメントミルクの割合を算出する工程と、
を備えたセメントミルク置換率推定方法。 - 前記現場発生土の所定元素含有量は、乾燥した現場発生土を粉砕し、蛍光X線分析計を用いて測定される、請求項1に記載のセメントミルク置換率推定方法。
- 前記ソイルセメントは、杭孔の根固め部を形成する、請求項1又は2に記載のセメントミルク置換率推定方法。
- ソイルセメントにおけるセメントミルクの割合と圧縮強度との相関データと、請求項1~3の何れか1項に記載のセメントミルク置換率推定方法によって算出されたソイルセメントにおけるセメントミルクの割合と、を用いて、ソイルセメントの圧縮強度を推定する、ソイルセメントの強度推定方法。
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