JP2022177994A - 防御用不織布および織布の製造方法、および防護用品 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属アレルギーを生じる可能性のある銅化合物を用いず、抗アレルゲン、抗菌、抗ウイルス性の高い防御用不織布および織布の製造方法、およびそれらの方法で製造された布を用いたマスク等の防護用品を提供することを目的とした。【解決手段】抗アレルゲン、抗菌、抗ウイルス、およびそれらの不活化、中和効果を有する機能性のカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーの水性溶液をそれぞれ不織布や織布の表面に交互に静電噴霧し繊維上で耐水性のイオンコンプレックスポリマーを成膜し、さらに裏面からボロン酸基を表面に多数有するカーボンドットPVA複合体の水溶液を静電噴霧することで効率的にアレルゲンや菌、ウイルスをトラップ不活化できる不織布および織布の製造方法の提供、およびそれらを用いたマスクやエプロン、ガウン等の防護用品を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、ウイルスや花粉由来アレルゲンを防御するマスク用のフィルターや防護用品の不織布および織布の製造方法、およびそれによって得られた不織布および織布を基材として用いた防御用マスクおよび防護服などの防護用品に関するものである。
衛生マスクやサージカルマスク用フィルター部材には、繊維径を1μm以下に極細にできるメルトブロー法で作られたポリプロピレン製不織布が使われている。一般的には、このフィルター部材のシートをスパンボンドで作られた保形性と通気性、飛沫をはじきやすい疎水性の不織布で包んで、耳掛け部を繋ぎマスクとしている。
近年、食物アレルギー、ダニアレルギー、花粉症等のアレルギー体質を有する人口が増加し日本人の3分の1は何らかのアレルギー疾患を持つといわれ、花粉症対策としてスギ花粉基因のアレルゲン等を吸着するエレクトレット加工されたフィルターを用いたマスクが市販されている。
しかし、単にエレクトレット加工だけを行った不織布フィルターは帯電した電荷が数時間の使用で呼気の水分や汚れの吸着で弱まるため数時間毎に付け替える必要があるとされている。
また、2019年に新型コロナウイルス(SARS-COV19)のパンデミックが発生し、ウイルスの吸着や不活化効果を有するマスクが市販されている。
特許文献1、2によれば、ダチョウ抗体が、ウイルスや、スギやヒノキ花粉のアレルゲンをキャッチし不活化することが開示されている。そして、ダチョウ抗体を用いたマスクはCROSSEED社が製造し販売している。抗ウイルス性、抗アレルゲン性の抗体は不活化した新型コロナウイルスや弱毒化した遺伝子組み換えウイルスに感染させた花粉症のダチョウの卵から得られる。
また、ウイルスを不活化できる銅や銅化合物を用いた量産が容易なマスクが注目されている。銅および銅化合物は水分と反応し活性酸素分子種を発生させ菌やウイルスを分解することができるとされている。
ここで、非特許文献1によれば、SARS-CoV-2がプラスチックの上では72時間、ステンレスの上では48時間残存するのに対し銅の表面では4時間しか残存できないことが示されている。
新型コロナウイルスに対しての銅や銅イオンの不活化効果は実証されてはいないものが多いが、金属銅や銅化合物により抗ウイルス機能を持たせたとされるマスクは種々開発されている。
例えば、金属銅のワイヤーを螺旋状に繊維に巻いた織布を使ったマスク(特許文献3)、金属銅を表面に島状に真空蒸着した布(特許文献4)、スパッタリングした布(特許文献5)を用いたマスク等が特許出願されている。
特許文献6によれば、酸化第1銅粉末をテトラエトキシシラン、酸化チタン光触媒と共にガラス板に塗布し乾燥した板がファージを30分程度で不活性化する技術が開示されている。
また、特許文献7、非特許文献2によれば、CuI等の一価銅のナノ粒子(平均粒径170nm)にテトラメトキシシランを加えたエタノール分散スラリーをレーヨン不織布に含侵させた布でCufitec(登録商標)というマスクを作り、1時間程度でインフルエンザウイルスを不活化できるとしている。1価銅イオンのウイルス不活化の機構は酸素アニオンラジカルから生じるヒドロキシラジカル等の活性酸素種であると考えられている。
また、特許文献8によれば、酢酸銅と酢酸亜鉛を塗布したレーヨン織物を用いたマスクが開示されている。マスクは4層構造で、外側から1層目はスパンボンド不織布のポリプロピレン繊維に2%のポリビニルアルコール及び2%のクエン酸(架橋剤、および酸性が殺ウイルス効果も有している)と0.5%の非イオン性界面活性剤ツイーン20を塗布している。塗布によりポリプロピレン繊維を親水化し2層目の殺ウイルス層にウイルスを含む液滴を送る働きがあるとされる。2層目の層はCIリアクティブブルー21染料(スルホン化結合剤)と2価の殺ウイルス性金属イオンとして酢酸銅と酢酸亜鉛で塗布したレーヨン織物、3層目はポリプロピレン繊維のメルトブローン不織布でできたフィルター層、4層目の口に当たる層はポリプロピレン繊維のスパンボンド不織布層である。マスクへのA型インフルエンザBウイルスの1分暴露試験でウイルス量が10万分の1未満に減少したとしている(特許文献8中、表2、材料#4)。
また、銅の安全性については、環境省の銅およびその化合物による健康リスクの初期評価(非特許文献3)によると、銅はヒトの必須微量元素であり、約10種類の銅依存性酵素の活性中心に結合して、エネルギー生成や鉄の代謝、細胞外マトリックスの成熟、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去など、生物の基本的な機能に関与している。
また、非特許文献4によれば、サプリメントから10mg/dayの銅を12週間継続摂取しても異常を認めなかったとしたアメリカの報告をもとに、食事からの銅摂取量の耐容上限量(小児や妊婦を除く)が10mg/dayとされていると述べられている。
しかし、非特許文献5によれば、金属アレルギーの患者はニッケル、クロム、コバルトに対するだけでなく銅に対する患者も存在し、硫酸銅を含む試薬金属によるパッチテストでは、金属アレルギーが疑われる患者の約2割が銅に陽性であるとの報告もある。
そのため、アレルギー性の金属を用いずに抗アレルゲン、抗菌、抗ウイルスおよびウイルスや花粉アレルゲンに対して不活化能、および中和能を有するマスク用フィルター材料が求められている。
また、近年アニオン性とカチオン性のポリマーの交互吸着膜を用いたケミカルフィルターが提案されている(特許文献9)。交互吸着膜は1992年にG.デッカーらにより最初に報告された(非特許文献6)。これはアミノプロピルシリル化でカチオン化された石英基板や単結晶シリコン基板をアニオン性ポリマー溶液とカチオン性ポリマー溶液に交互に浸漬、洗浄を繰り返し基板上にポリマーイオンコンプレックス積層膜を形成する方法である。
特許文献9でのフィルターの製法は、表面にOH基を導入し負帯電化したガラス繊維上に、アンモニウムクロライド系カチオン性モノマーとカルボン酸系アニオン性モノマーを含む別々の溶液に交互に浸漬し、カチオン性とアニオン性のポリマーを交互に1分子層ずつ水洗しながら交互積層し膜を形成している。このフィルターでは物理的、化学的に煙草の煙成分や匂い成分を吸着できるとしている。
しかし、浸漬法は大型の部材を処理するには水槽設備も大型化し高コストになる。また、浸漬法は表裏別々の処理ができないためスプレー法も検討された(特許文献10)。特許文献10では圧搾空気等の高速な流れを利用して液体と気体を混合して10μm以下の液滴として吹き付け可能な2流体式スプレーが用いられているが、凝集体が生じ、膜が白濁し易く純水の流水またはスプレーで凝集体を洗い落す作業が必要であった。そのため、より細かい霧を形成し微量なポリマーの噴霧でムラを抑制可能な噴霧法が求められた。
また、特許文献11では、ポリ[(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)メチレン-1,4-フェニレンメチレンジクロライド]、ポリ(L-リジン)、ジエチルアミノエチルデキストラン、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリ[(ジメチルイミニオ)ヘキサメチレン(ジメチルイミニオ)メチレン-1,4-フェニレンメチレンジクロライド]等の特定構造のカチオン性ポリマーの水溶液と、アクリル酸/ラウリルアクリレートのランダム重合体、アルギン酸、カルボキシルメチルキチン、アクリル酸/2-エチルヘキシルアクリレートのランダム共重合体、アクリル酸/ステアリルアクリレートのランダム共重合体(アクリル酸含有量約74モル%)等の特定構造のアニオン性ポリマーの水溶液との混合により沈殿した高分子電解質錯体(ポリイオンコンプレックス)ゲルが抗菌性を示し、そのゲル懸濁液に繊維を8時間浸漬後、洗浄と乾燥を繰り返し抗菌性のガーゼ等を得ることが開示されている。しかし、ゲル状態で繊維上に塗布するため薄くコーティングできず、マスク用のフィルターにする場合は通気性が妨げられる恐れがあった。
また、従来、ダニや花粉のタンパク質からなるアレルゲンを不活化する材料としてカテキン(茶抽出物)やタンニン酸が知られていたが、水溶性でフィルターの水洗や衣服の洗濯に対し耐水性がなく、また有色で、ポリフェノールはキノンに変化し黄変し易い課題があった。
また、特許文献12、非特許文献7では、芳香族ヒドロキシ化合物を用いたアレルゲン低減マスクとマスク用シートを開示している。芳香族ヒドロキシ化合物の例として、ポリ(4-ビニルフェノール)が、着色性が低くモノフェノールのためキノン化による黄変も少ないとしている。吸湿剤のポリエチレングリコールと併用することでダニや花粉のタンパク質アレルゲンを繊維に強固に吸着しフィルターやマスクに用いている。
ポリ(4-ビニルフェノール)を繊維に固定化する方法としては、モノマーの4-ビニルフェノールをポリエチレンテレフタレート(PET)繊維へラジカルグラフト重合(100℃、60分間)する方法や、ポリプロピレンとポリ(4-ビニルフェノール)のアセトン溶解ドープからのメルトブローン製法での不織布化法が例示されている。
しかし、グラフト重合は処理に手間がかかり、ポリプロピレンに練り込み繊維化する方法は繊維表面に出ていない抗アレルゲン剤が無駄になり環境や人体に悪い有機溶媒の使用にも課題があった。
また、合成ポリマーのポリ(4-ビニルフェノール)と同様にフェノール性基を有する生分解性ポリマーのポリチロシンも抗アレルゲン性に優れるが、ポリアミノ酸の使用は高コストになる課題があった。
また、スチレンスルホン酸塩とスチレンなどとを共重合した抗ウイルス性コポリマーは、エンベロープウイルス表面のスパイク糖タンパク等と静電相互作用、および疎水性相互作用により強く結合し抗ウイルス剤として機能できる。
そこで、抗ウイルス性コポリマー、抗アレルゲン剤としてリン酸ジルコニウムや芳香族スルホン酸系単独重合体、バインダー樹脂とを加えた水分散体にポリエステル編物を浸漬、加熱乾燥し空気清浄機用フィルターや車のシート生地等への応用が例示されている(特許文献13)。
しかし、繊維表面に固定する際にバインダーを用いないと均一な塗布が難しく、白化を生じたり、洗浄時に溶け出し際(きわ)付の原因になったりする課題があった。
特開2011-020927号公報 特許第6200630号公報 特許第4581027号公報 国際公開第2012/143464号 特開2000-288108号公報 特許第5570006号公報 特許第5291198号公報 特許第5740653号公報 特許第3300314号公報 特許第5498824号公報 特許第3289055号公報 特許第3838899号公報 特許第6023933号公報
N van Doremalen等、 Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 as compared with SARS-CoV-1、The New England Journal of Medicine. DOI: 10.1056/NEJMc2004973 (2020) 藤森、繊維学会誌第74巻、第11号530ページ(2018) 保健・化学物質対策 報告書、第1編 化学物質の環境リスク初期評価等(第13次とりまとめ)、2.化学物質の環境リスク初期評価、 [10] 銅及びその化合物 (https://www.env.go.jp/chemi/report/h27-01/pdf/chpt1/1-2-2-10.pdf)、3.健康リスクの初期評価,(1)体内動態、代謝 Pratt WB, Omdahl JL, Sorenson JR.、Lack of effects of copper gluconate supplementation、Am J Clin Nutr. 42: 681-682(1985). 有田孝司、アレルギーの臨床、21巻、p1103(2001). Decher.G, Hong.J.D. and J.Schmit、Buildup of ultrathin multilayer films by a self-assembly process: III. Consecutively alternating adsorption of anionic and cationic polyelectrolytes on charged surfaces、Thin Solid Films, 210/211, p.831(1992). 鈴木太郎、繊維製品消費科学 51巻、625ページ、2010年
ダチョウの卵の黄身に含まれる抗体を利用したダチョウマスクは、金属アレルギーの原因となる恐れのある銅化合物を使わないが大量生産のためにはダチョウの大量飼育が必要なためマスクの大量供給には時間とコストがかかる。
また、銅や銅化合物を用いてウイルスを不活化するマスクは、効果が高いが一部の金属アレルギーの患者には、銅が肌に触れないように工夫する必要があり、またマスクから脱落した銅化合物や銅化合物が付着した繊維を吸い込む恐れもあり使用に適さない場合があった。
そこで、本発明は、金属アレルギーを引き起こす可能性があるニッケル、コバルト、銅等の金属を使わずウイルスや、花粉などのアレルゲンをトラップ、不活化でき、かつ生産性に優れた防御用の不織布や織布の製造方法の提供、およびそれらの方法で製造された布を用いたマスク、マスクインナー、および防護服等の防護用品を提供することを目的とした。
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る防御用不織布および織布の製造方法は、少なくとも布面の一方に対し少なくとも以下のA工程、B工程、C工程をこの順に含む。
A工程:不織布および織布をイオン性化および親水性化する工程
B工程:カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーの少なくとも一方が抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性のいずれかを有するポリマーから選ばれるカチオン性ポリマーを含む溶液と、アニオン性ポリマーを含む溶液の少なくとも2種類の水性溶液を準備する工程であり、
C工程:上記B工程で作製したカチオン性ポリマーを含む溶液と、アニオン性ポリマーを含む溶液を、イオン性基を有するイオン性化した不織布および織布のイオン性基による極性と反対の極性を有するイオン性ポリマー溶液から交互に少なくとも各1回以上静電噴霧し不織布および織布の繊維表面上でポリマーイオンコンプレックスを形成させ耐水性の抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性コーティングを行う工程
防御用不織布および織布の製造方法のある実施形態は、少なくとも布面の一方に対し少なくとも以下のA工程、B工程、C工程をこの順に含む。
A工程の不織布および織布のイオン性化および親水性化する工程は、以降のC工程で最初に静電噴霧されたカチオン性またはアニオン性ポリマーを含む水溶液の液滴を不織布および織布の繊維表面に濡れ広がらせる効果がある。
また、イオン性化された不織布および織布は、C工程で最初にイオン性化された不織布および織布の極性と反対の極性を有するカチオン性ポリマーまたはアニオン性ポリマーをクーロン力により強固に繊維と結合させる効果がある。
B工程に使用するカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーは、少なくとも一方が抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性のいずれかを有する水溶性ポリマーから選ばれる。
カチオン性ポリマーやアニオン性ポリマーからなるイオン性ポリマーは、正電荷と負電荷がアレルゲンやウイルス表面のタンパクの電荷の偏りに対してクーロン力により吸着しポリマー中の酸性基や塩基性基で細胞膜やタンパク質を分解、不活化する効果がある。
より好ましくは、カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーの両方が作用スペクトル範囲が異なる抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性を有し、それらを組み合わせることでよりより広い作用スペクトル範囲を得られる。
また、グラム陰性桿菌や球菌の中には悪臭の強いチオールを生成するものがあり、カチオン性ポリマーはマスク上に付着したそれらの菌の繁殖の抑制にも効果が期待できる。
C工程で使用する静電噴霧はエレクトロスプレーとも呼ばれ、レイリー分裂によりナノレベルの大きさの帯電した液滴の霧を形成でき、液滴間のクーロン反発により霧を広範囲に広げられ従来の圧空を使った2流体スプレー方式に比べ噴霧ムラを低減させる効果がある。
また、微量の噴霧ができるため浸漬法に比べ過剰のポリマーの付着を抑制できる。また、電界に沿って液滴が噴霧されるため電界の範囲外にはほとんど塗料を付着させず材料の利用効率が高い。
また、アミン構造を有するポリマーを利用する場合、塩酸塩化してカチオン化せずとも水性溶媒に溶かした液滴を噴霧時に高電圧で正帯電させることにより、液滴表面のポリマーの少なくとも一部がカチオン化され、繊維上でアニオン性ポリマーとポリマーコンプレックスを形成し、耐水性の向上と副生物として塩化物を発生させない効果が期待できる。
また、カチオン性ポリマーを含む溶液とアニオン性ポリマーを含む溶液とを噴霧前に混合すると、クーロン力により凝集体を作り難溶性の凝集体ゲルが生じる。そのため、混合後に噴霧した場合は、不織布や織布上に大きな凝集体が付着したり、静電塗布や静電塗装で用いるノズルやキャピラリーを詰まらせる恐れがある。
そこで、本実施形態ではカチオン性ポリマーを含む水溶液、およびアニオン性ポリマーを含む水溶液を別々のノズルから交互に少なくとも各1回以上静電噴霧し、繊維上でカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを静電相互作用で結合させる。
そのため、ポリマー鎖は液滴中で広がった状態で繊維上に付着し濡れ広がることができ、水分を蒸発させ乾燥させるにつれイオン性化した繊維や、噴霧済のイオン性ポリマーが有する反対極性の置換基と静電的に結合することで固定される。そのため、繊維上への凝集体の固まりの付着を抑制し、基材繊維と絡み合った親水性かつ耐水性の高いナノレベルの厚さのゲル状塗布膜が得られる効果がある。
また、カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーを含む水溶液を交互に複数回静電塗布することで塗布量を所望の量に増すことも可能である。
また、上記防御用不織布および織布の製造方法においては、上記C工程中および後に「水洗工程」を含んでもよい。
C工程中および後に「水洗工程」を入れる工程は、繊維へのポリマーの過剰な付着分を洗い落し、繊維の絡み合いが作る通気のための空隙が生成したポリマーコンプレックスによるゲルで塞がれることを抑制し通気性を保つ効果がある。
また、上記防御用不織布および織布の製造方法においては、上記布面の他方の面に対して複数のボロン酸基を表面に含有するカーボンドットとポリビニルアルコールとの複合体の水溶液を静電噴霧し乾燥させる工程を含んでもよい。
このように、上記防御用不織布および織布の製造方法においては、上記布面の他方の面(不織布および織布の処理面)と反対側の面から複数のボロン酸基を表面に含有するカーボンドットとポリビニルアルコールとの複合体の水溶液を噴霧した後に乾燥することが好ましい。
反対側の面から静電噴霧することで、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマー溶液の噴霧時に影になり覆われなかった部分を被覆することができる。
また、静電噴霧法は浸漬法とことなり先に形成したアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの交互積層膜のすべてを覆ってしまうこともなく両者の機能を活かせる効果がある。
また、カーボンドット表面のボロン酸基はカルボキシル基含有アニオン性ポリマーとアミノ基含有カチオン性ポリマー中のアミド化架橋反応を触媒することもでき、繊維表面での耐水性をさらに高めることができる。
また、ボロン酸残基は、アレルゲンやコロナウイルス表面のスパイク蛋白中のマンノース等の1,2-シスジオール基や1,3-ジオール基を有する糖鎖と常温でエステル結合し効果的にトラップすることができ、同じ布層に存在するカチオンポリマーおよびアニオンポリマーと協奏的に働き不活化、中和効果を高める効果がある。
また、上記防御用不織布および織布の製造方法においては、巻き取りされたシート状の不織布および織布を用いてロールツーロール法で製造されてもよい。
このように、巻き取りされたシート状の不織布および織布の原反を用いてロールツーロール法で一連の製造工程を連続で行うことにより、生産性が向上させる効果がある。
また、上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る防護用品は、上記防御用不織布および織布の製造方法により製造された防御用不織布および織布を用いて製造される。上記防護用品としては、例えば、マスク、マスクインナー等を含む。
上記防護用品として、上記防御用不織布および織布の製造方法により製造された防御用不織布および織布を用いることにより、通気性が良く金属アレルギーの心配の無い抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性を有するマスクおよび手袋やガウン等の防護服等の防護用品の提供を可能とすることができる。
本発明の一態様によれば、ウイルスや、花粉などのアレルゲンをトラップ、不活化でき、かつ生産性に優れた防御用の不織布や織布の製造方法の提供、およびそれらの方法で製造された布を用いたマスク、マスクインナー、および防護服等の防護用品を提供することができる。
本発明の一実施形態における不織布および織布のロールツーロール法による製造工程の一例である。 本実施形態のマスクの層構造の一例を示す斜視図である。 本実施形態のマスクの製造法の一例を図示する断面図である。
以下、本発明のある実施形態について図面を参照して説明する。
(静電噴霧装置)
本実施形態ではカチオン性ポリマーの水溶液とアニオン性ポリマーの水溶液を帯電させ不織布や織布に噴霧する方法として、ナノサイズのポリマー液滴を形成し微量の塗布量を制御可能で繊維上に過剰な塗布を抑制し薄くカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーを交互に塗布し耐水性の膜が得られる静電噴霧法を用いる。
従来の2流体式スプレー法は、液滴サイズが数ミクロンと大きく過剰な塗布が生じ大きな凝集体も生じ易かったが、静電塗布(エレクトロスプレーデポジッション(ESD))法は、ナノサイズまで細かく分裂する液滴のため大きな凝集体を作り難く、また電界に沿って霧が噴霧されるため目的物に効率よく塗布でき塗布ムラも抑制できる。また、液滴を帯電させ対象物以外への付着を抑制する点で類似の2流体式スプレーにコロナ放電を追加し静電塗装法に比べ液滴がさらに小さく、帯電量も大きいので電界がかかっていない対象物への付着率も低く材料の利用効率が9割以上になる利点がある。
静電塗布装置は、ナガセテクノエンジニアリング社製マイクロミストコーター、アピックヤマダ社、シマダアプリ社等が開発しており利用することができる。1μmから1mm程度、好ましくは0.1mmから1mmの口径のガラス製キャピラリーに電極を兼ねた金属製または電極線を挿入したノズル、または噴霧溶液を垂らした金属電極製ニードルと、布を載せ接地した対抗電極板または金属ロールとを5~10cm程度離し、間に±3KVから±15KV程度のコロナ放電を起こさない範囲の直流電圧を印加することにより行うことができる。
流量を絞りキャピラリーノズルやニードルに数KVの高電圧が印加されるとノズルやニードル先端の溶液表面が帯電し円錐状になったテーラーコーンを形成し、コーンから液滴が連続的に放出されるコーンジェットを形成する。マイクロメートル単位の液滴で放出された後、空中での溶媒の蒸発により表面張力と表面電荷の反発力が釣り合う限界に達するとレイリー分裂によりさらに数十nm程度の微小な帯電した霧を形成する。
帯電した液滴の霧は液滴間のクーロン反発により広範囲に広がり噴霧ムラを低減でき、かつ電圧をかけていない部分にはほとんど付着しないため9割以上の材料使用効率で無駄のない塗布を行うことができる。
ノズルと布の距離は液滴が完全に蒸発せず布に付着できる距離に調節することが、布の繊維上での反応を促進するために望ましい。また周囲の湿度を調整したり、含有水分量を調整した空気やガスを周囲に流すことで液滴の乾燥や付着後の対象物の乾燥度合いを調整することもできる。
また、大気中での静電噴霧では高電圧によりスーパーオキサイドラジカルも発生するため酸化劣化しやすい材料を噴霧する場合はノズルの周囲から窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスをキャリアガスとして流すこともできる。
(用いる布の種類)
本実施形態に使用する布の種類は不織布および織布を用いることができる。
マスク用フィルター部材および防護服に用いることができる不織布および織布の材料としては、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ポリメタクリル酸メチル、レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート等の合成繊維、半合成繊維や、絹、綿、麻(亜麻、苧麻)、洋麻(ケナフ)等の天然繊維が挙げられる。
使い捨てのマスク用フィルター部材や防護服の生地には低コストで大量生産可能なポリプロピレン製不織布を相応しく用いることができる。
特に、マスク用フィルター部材には、繊維径を1μm以下に極細にできるメルトブローン法で作られたポリプロピレン製不織布が適している。
防護服には、緻密であると共に強度に優れたフラッシュスパン法で作られたポリエチレン繊維(平均直径4μm)からなるタイベック(デュポン社)等の不織布が適している。
また、自然環境にマスクが捨てられた場合の環境問題を考慮した場合、ポリプロピレンは太陽光により分解するがマイクロプラスチック化する課題がある、自然環境で微生物により分解され易いポリヒドロキシアルカン酸またはセルロースナノファイバーから作製したナノファイバーシートを用いることが相応しいが、現状では材料が高価な課題がある。
(布の前処理:イオン性化、親水性化)
第1の発明では、まず不織布および織布の布地をイオン性化および親水性化した後、カチオン性およびアニオン性のポリマーの水溶液を交互に噴霧し、布地の目を詰まらせないよう繊維表面に薄くクーロン結合により強固な膜をコーティングする工程を含んでいる。
そのため、不織布および織布の繊維表面にカチオン性置換基またはアニオン性置換基を導入しイオン性化し親水性化することが望ましい。
例えば、親水性の水酸基を有する綿布、レーヨン、セルロース系、PVA系繊維や、絹などのアミノ基を有する繊維をカチオン化する場合には、カチオン化剤として例えば、第4級アンモニウム塩を用いたカチオノンKCN(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル卜リメチルアンモニウ厶クロライドおよび2,3-グリシジル卜リメチルアンモニウ厶クロリドを主成分とする第4級アンモニゥ厶塩;ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)と水酸化ナトリウム水溶液で繊維をカチオン化処理することにより繊維上の水酸基やアミノ基に4級アンモニウム基が付加すると共により親水性を高めることができる。
また、疎水性の性質を有するポリエチレンやポリプロプレン等のオレフィン系繊維等の不織布等を基材に用いる場合は、そのままでは静電噴霧した水溶液の液滴が弾かれ不織布や織布に浸透し難い。
そのため予め繊維表面をドライ表面処理法の大気圧グロー放電プラズマ処理やコロナ処理等でカルボキシル基やヒドロキシル基を導入し親水性化処理を行うことが望ましく、基材へのダメージの少ないプラズマ処理を行うことがより望ましい。
大気圧プラズマ処理装置を用いた方法では、グロー放電プラズマ中に不織布等の布シートを通し行うことができる。
平行平板型電極間にヘリウムガス等を流し放電させる大気圧プラズマ表面処理装置ではアーク放電防止のため少なくとも一方に誘電体バリア層を形成した1.5mm程度の間隔で平行に設置した電極間に数kVから10kVの交流電圧を印加し布地を連続的に通し行うことができる。
また、大気中では誘電体バリア層と繊維シートを密着させ10KV程度の交流電圧を10秒程度かけることで繊維へのダメージを抑制しプラズマ処理を行うことができる。
大気圧低温リモートプラズマ装置を用いた場合には不織布や布のウェブの片面または両面から任意のガスのプラズマを照射することもできる。
二酸化炭素や酸素、水蒸気を含むガス雰囲気下でプラズマ処理を行なうと、繊維表面に水酸基やカルボニル基、カルボキシル基のアニオン性基が導入され親水化することができる。
また、窒素とヘリウムを含むガス雰囲気下でプラズマ処理を行なうとポリプロピレン表面にアミノ基を導入することもできる(特許第5089521号参照)。
また、ポリプロピレン繊維はガラスやセラミックスとの摩擦帯電で負帯電し易いため、表面をガラスで溶射したロールで擦ることにより繊維表面を数KVに負帯電化することもできる。この場合、帯電量を安定させるため大気雰囲気中の水分量をキャリアガスにより制御する必要がある。
アミノ基等のプロトン化によりカチオン化する置換基、またはカルボキシル基等のプロトンの解離によりアニオンになる置換基の導入を行った不織布や織布は、必要に応じてクエン酸等の有機酸やアミノ酸を含む緩衝溶液を含侵させpH調整を行ない、置換基をイオン化させ噴霧されたポリマーのイオン性置換基と結合し易くしておくこともできる。
また、クロロスルホン酸や発煙硫酸を反応させてのスルホン化や、電子線照射後にスチレンスルホン酸Naをグラフト重合することによってもポリプロピレン繊維表面にスルホン酸基を導入し、酸性から塩基性まで広いpHに渡りアニオン性を維持することもできる。
(抗アレルゲン、抗菌、抗ウイルスポリマーの仕組み)
B工程に使用するカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーは、少なくとも一方が抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性のいずれかを有するポリマーから選ばれ、より好ましくはカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーの両方が抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性を有し、さらにアレルゲン、細菌、ウイルスの不活化能、中和能を有することが望ましい。
ポリマー分子構造によるウイルスの細胞への感染阻止能力への要因は、単にアニオンの解離度による静電相互作用の強さによる決まるのではなくポリマーバックボーンの疎水性による疎水性アミノ酸残基との疎水性相互作用も影響している。
ウイルスの糖蛋白やスパイク蛋白の糖鎖やアミノ酸残基との静電的結合、疎水性結合がさらに強まるように、カルボキシレート基、スルホネート基、4級アミン基等のイオン性残基を有する親水性のイオン性コモノマーと、アルキル基や芳香族基等の疎水性残基を有する疎水性コモノマーとの共重合体配列を対象のアレルゲンや細菌、ウイルス表面のタンパク質のアミノ酸配列や糖鎖配列に結合するのに適した配列に設計しRAFT(可逆的付加―開裂連鎖移動)リビング重合等で合成し用いることもできる。
本実施形態では、カチオン性ポリマーの水性溶液とアニオン性ポリマーの水性溶液を静電噴霧し繊維上で反応させポリマーコンプレックス(高分子電解質錯体)を形成させるため、反応し脱水和した部分は疎水性が増し難溶化する。そのため共重合体でなくても静電的結合が強いイオン性部と疎水性を増した部分を有することになり、効率的にアレルゲン、菌、ウイルスのタンパクと反応しトラップすることができると考えられる。
(使用するカチオン性ポリマーの種類)
使用できるカチオン性ポリマーの例としては、4級のアンモニウムカチオンやホスホニウムカチオンを含むポリマー、およびプロトン化してアンモニウムになる1級から3級のアミンを含むポリマーを含む。
多剤耐性グラム陰性菌に対して抗菌作用を有する各種4級アンモニウム塩や4級ホスフォニウム塩を含むポリマーがSilvana Alfei等がまとめた文献(Polymers、12巻、1195ページ、2020年)に記されており、それらの中から所望の材料を選択し本実施形態で用いることができる。
部分的にヘキシル化とメチル化し4級化したポリエチレンイミンやポリアリルアミン塩酸塩(PAHと略)等を用いることもできる。
しかし、所望の溶液粘度やアンモニウム基の密度を得るためにリビングラジカル重合で重合度を規定して合成できる単独重合ポリマーやブロック共重合ポリマーを使用することが、静電噴霧を安定させるため本実施形態ではより相応しい。
例えば、化学式1で示すポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(以下PDADMACと略)はRAFT/MADIX(可逆的付加-開裂連鎖移動/ザンテートの交換反応を用いた分子設計)剤を用いたリビングラジカル重合で重合度を規定して合成できるため適している(合成法:Mathias Destarac等、Polymer Chemistry、48巻、5163ページ、2010年)。
Figure 2022177994000001
また、本実施形態で用いるカチオン性ポリマーは、疎水性コモノマー部、親水性コモノマー部、カチオン性コモノマー部の組み合わせから選ばれるビニル系共重合体であっても良い。その際、共重合体中のコモノマーの配列が、一連の疎水性部分と、一連の親水性部とカチオン性部とが分離して合成された配列では水中では疎水性部をコアとしたコアシェル構造の凝集体を形成し易い。そのためポリマー鎖を平均的に疎水性部、親水性部、カチオン性部を分散した配列にし、溶液中での分子鎖の凝集を抑制することが好ましい。
芳香族系やアルキル系等の疎水性基を含有しポリマーの水溶性が1%未満である場合には、カチオン性コモノマー以外に親水性コモノマーの割合を増すことによって水溶性を増すこともできる。
例えば、親水性ビニルコモノマーの例としてはアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、3-エテニル-5-メチル-2-オキサゾリジノン、N-(3-ヒドロキシプロピル)-2-メチルアクリルアミド、2-(2-エトキシエトキシ)エチルエステル-2-プロベノイック酸、4-アミノ-N-エテニル-ブタナミド等を利用することができる。
また、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等のオキサゾリン環を側鎖に有するコモノマーから合成されるポリマーは、カルボン酸基を含有するアニオン性ポリマーと混合すると、カルボン酸基から遊離したプロトンがオキサゾリン環の窒素をプロトン化しカチオン性のオキサゾリニウムを形成し静電結合を形成することができるため、本実施形態のカチオン性ポリマーとして用いることができる。
また、4級化していない1~3級のアミンを含むポリマーも、水性溶液を静電噴霧する際に液滴が高電圧で正帯電することで液滴表面のポリマーの窒素の一部がカチオン化しカチオン性ポリマーとなるため、本実施形態に用いることができる。
(使用するアニオン性ポリマーの種類)
抗ウイルス性を示すポリマーは、Rachel H等の論文(Macromolecules、53巻、9158ページ、2020年)に記載されているポリマーのうちカルボキシル基、スルホン酸基およびそれらの塩を有するアニオン性ポリマーを用いることができる。
例えばカルボキシル基を有するシアル酸を置換したポリアクリルアミドやアクリル酸誘導体との共重合体はシアル酸基がインフルエンザウイルスのヘマグルチニンスパイク中のアミノ基と結合し、ウイルスの細胞への感染を阻止することができる。
また、Franziska Schandock等は、ジメチルホルムアミド中でRAFT剤を用いてラジカルリビング重合された各種アニオン性ポリマーの50μg/mLの溶液で試験細胞を37℃、1時間処理した後、ジカ熱、HIV-1型、単純ヘルペスウイルス2型、およびインフルエンザH5N1ウイルス、リッサウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マールブルク病ウイルス、SARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス、ラッサ熱ウイルスの各糖タンパクを導入したレンチウイルスシュードタイプを試験細胞に感染させ、2~3日経過後の抗ウイルス活性を調べている(Adv. Healthcare Mater.、6巻、1700748ページ、2017年)。
以下の各種アニオン性ポリマーの抗ウイルス活性が調べられ、本実施形態中のアニオン性ポリマーの例として用いることができる。
カルボン酸およびそれらの塩を有するアニオン性ポリマーとして、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリエチルアクリル酸(PEAA)、ポリプロピルアクリル酸(PPAA)、ポリ(4-ビニル安息香酸)(PVBzA)およびそれらのカルボキシレート。
リン酸およびホスホン酸塩を有するアニオン性ポリマーとして、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ポリ[(2-メタクリルアミド)エチルホスホン酸](PMPA)、ポリ[2-(アクリルアミド)エチルホスホン酸](PAPA)、ポリ[(2-メタクリルアミド)エチルホスフェイト](PMEP)、ポリ[(2-アクリルアミド)エチルホスフェイト](PAEP)。
スルホン酸およびスルホン酸塩を有するアニオン性ポリマーとして、ポリ(ビニルスルホン酸)(PVSA)、ポリ(3-スルホプロピルアクリレート)(PSPA)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)(PAMPS)、ポリ(ビニルベンゼンスルホネート)(PSVBS)。
本実施形態に相応しいアニオン性ポリマーとして、飛沫感染するSARSコロナウイルスに対し90~99%の阻止率を有するポリプロピルアクリル酸(PPAA)を好ましく用いることができる。
さらに、SARSコロナウイルスに対し90~99%の阻止率とインフルエンザウイルスに対して70~90%の阻止率を有するポリ(4-ビニル安息香酸)(PVBzA)をより好ましく用いることもできる
さらに、SARSコロナウイルスに対し99%以上の阻止率とインフルエンザウイルスに対しても70~90%の阻止率を有するポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)をさらに好ましく用いることができる。
また、本実施形態で用いるアニオン性ポリマーは、疎水性コモノマー部、親水性コモノマー部、アニオン性コモノマー部の組み合わせから選ばれるビニル系共重合体であっても良い。その際、共重合体中のコモノマーの配列が、一連の疎水性部分と、一連の親水性部とアニオン性部とが分離して合成された配列では水中では疎水性部をコアとしたコアシェル構造の凝集体を形成し易い。そのためポリマー鎖を平均的に疎水性部、親水性部、アニオン性部を分散した配列であった方が溶液中で分子鎖が広がり好ましい。
芳香族系やアルキル系等の疎水性基を含有しポリマーの水溶性が1%未満である場合には、アニオン性コモノマー以外に親水性コモノマーの割合を増すことによっても水溶性を調整し増すこともできる。
親水性コモノマーの例としてはN-ビニルピロリドン、3-エテニル-5-メチル-2-オキサゾリジノン、また2-(2-エトキシエトキシ)エチルエステル-2-プロベノイック酸等のポリオキシエチレン単位を有するモノマーを利用することができる。
(静電噴霧用インキの調整)
上述の水溶性の高いカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマー含む水性インクを個別に調整する。
アニオン性ポリマーの水溶液とカチオン性ポリマーの水溶液は混合により塩や錯体を形成し難溶化し析出が生じるため、別々に調整する。
インクの静電噴霧時にレイリー分裂による微細な液滴の霧を得るには、高誘電率、低表面張力の溶媒が適している。溶媒には高抵抗で高誘電率の純水を使用することができるが、表面張力が高いためエタノール等のアルコールを1容量%以上50容量%満混合して表面張力を下げることで比較的低電圧で分裂が促進され薄くムラの少ない噴霧を行うことができる。
また、液滴の大きさを調整するために水溶液中に水の蒸発を抑制するグリセリンやソルビトール等の多価アルコールを添加することもできる。
また、アニオン性ポリマー溶液にクエン酸やリンゴ酸を添加し、弱酸性域でのpH調整や、水酸基を有するカチオン性ポリマーを使用した場合に加熱乾燥時の水酸基とのエステル化による架橋を促進することもできる。
(静電噴霧)
噴霧する対象が、カチオン化綿のようにカチオン性基を導入した不織布または織布の場合、反対電荷となるアニオン性ポリマーの液滴を最初に噴霧した後に、次のカチオン性ポリマーを噴霧する。
次のポリマー溶液を噴霧する際、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの反応性は湿潤状態の方が、分子運動が高まり高まるため、必要に応じて基材の繊維の水分を完全には飛ばさず、0.3重量%以上の水分量を残して乾燥を行ない次のポリマー溶液を噴霧することが好ましい。
逆に、噴霧する対象が、アニオン性基を導入したポリプロピレン繊維のように負帯電化した繊維の場合には、反対電荷となるカチオン性ポリマーの液滴を最初に噴霧した後に、次のアニオン性ポリマーを噴霧する。
さらに、繰り返しカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーのペアを積層する場合には最初のペアと種類の異なるカチオン性やアニオン性のイオン性ポリマーのペアを積層し複合することもできる。
また、カチオン性ポリマーのカチオン席とアニオン性ポリマーのアニオン席は必ずしも1:1となるように噴霧する必要はなく、抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性の要求に応じて調整することができる。
また、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーの塗布量を増やしたい場合には繰り返し噴霧塗布することで可能だが、厚くなるにつれカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーが結合したゲル化物により繊維の目が詰まり通気量が減りマスクにした際に息苦しくなる場合がある。
(静電噴霧中および後の水洗工程、乾燥)
静電噴霧工程中、ポリマーの静電噴霧毎、または静電噴霧工程終了後に水洗工程を入れることもできる。水洗工程は、過剰なポリマーや生成した塩を洗い落とし不織布や織布の通気性を高めるための工程である。
ポリマーの静電噴霧毎に水洗、乾燥を行う場合の乾燥工程は、熱風や赤外線、マイクロ波などで行うことができる。乾燥温度は繊維の種類によるがポリプロピレン繊維の場合は50℃以上100℃以下が相応しく、より高温では繊維表面に導入した極性基が内部に潜り込み、噴霧したポリマーとの結合力が低下する場合がある。
カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの反応性は湿潤状態の方が水和による分子運動が高まるため、ポリマー間のクーロン力による結合促進のため布中の水分率を0.3%未満まで乾燥させる必要は無い。
また、ポリマー鎖中に水酸基やアミノ基がある場合には、加熱によりカルボキシル基等の官能基間等でのエステル化やアミド化反応等の架橋反応を促進し耐水性を高めることもできる。
また、アレルゲン、細菌、ウイルス表面のタンパク質中のアミノ酸や糖鎖の極性の分布は、一方の正負の極性が連続的に分布しているわけではない。そこでアレルゲン、細菌、ウイルス表面のタンパク質との相互作用を強めるためには、カチオン性やアニオン性のイオン性ポリマーの一方が繊維上にマイクロメートルレベルで厚くゲル状に存在しているよりもナノメートルの分子層レベルの厚さの層が完全には重ならずモザイク状に表面に現れるように交互に積層されている方が好ましいと考えられる。そのため1重量%以下の希薄な溶液を噴霧し、繊維表面に厚い層を堆積させないことが望ましい。
しかし、高含有量の噴霧溶液や高分子量のポリマーを用いて過剰なポリマーが繊維上に付着してしまう場合には、溶液の噴霧毎に水洗を行ない吸着していない過剰なポリマーを除去しながら基材の繊維上に交互積層することで通気性の低下を抑制できる。
また、使用するポリマーは、リビング重合法により分子量やイオン性基や疎水性基のモノマー配列が制御され、噴霧前の水溶液中で単独ではゲル化しミクロンサイズ以上の凝集体を形成し難いポリマーを用いることが相応しい。
(複数のボロン酸基を表面に含有するカーボンドットとポリビニルアルコールとの複合体の裏面からの静電噴霧)
第3の発明では、請求項1による不織布および織布の処理面と反対側から複数のボロン酸基を表面に含有するカーボンドットとポリビニルアルコールとの複合体の水溶液を静電噴霧し乾燥することにより、不織布および織布にボロン酸基を表面に有するカーボンドットを含有させる。
カーボンドットは、カーボン量子ドットとも言われ、近年有害な重金属を含まない量子ドット発光材料や、光触媒等としても研究され注目されている。
ボロン酸基を表面に多数有するカーボンドットは、Aleksandra Loczechinらの文献(ACS Appl. Mater. Interfaces 2019, 11, 46, 42964)に記載の以下の合成手順を参考に水熱合成により行うことができる。
本実施形態ではパラ位に窒素を含む4-アミノフェニルボロン酸またはオルト位に窒素を含む2-アミノフェニルボロン酸等の窒素を含む基を有するフェニルボロン酸を合成原料に好ましく用いることができる。窒素は原料化合物が脱水素縮合しカーボンドットを形成した際にボロン酸の酸性度増大に寄与し、アレルゲン蛋白やウイルス表面のスパイクの糖鎖タンパク中の1,2-シスジオール基や1,3-ジオール基との反応性を高める効果が期待できる。
合成手順:4-アミノフェニルボロン酸(200mg)を純水20mLに溶かし、1M水酸化ナトリウムで溶液のpHを9.0に調整。溶存酸素を除くため1時間窒素ガスでバブリングした後、テフロン(登録商標)の内容器付きのオートクレーブ(125mL)で8時間160℃に加熱後、室温に戻し30分間10,000rpmで遠心分離し大きな沈殿を除く。その後半透膜(SpectraPor 1, pore size: 1000 Da)を使って6時間毎に水を替えて透析を24時間行ない精製し目的のボロン酸基を表面に含有するカーボンドット(透過電子顕微鏡像から平均粒径7.6nm)を含む水溶液を得ることができる。
合成方法は、文献のオートクレーブを用いたバッチ式に代えて、チューブ式の反応装置を使った連続フロー合成で、マイクロ波加熱で行うこともできる。精製は透析の他、限外ろ過で行なうこともできる。
得られたボロン酸基を表面に含有カーボンドットの水溶液とPVAの水溶液とを混合することで、化学式2で示すようにカーボンドット表面のボロン酸基の一部がPVAの1,3-ジオール基と反応しPVAの側鎖として結合し、ボロン酸基を表面に複数含有するカーボンドットとPVAとの複合体が得られる。この際、カーボンドット表面のボロン酸基の多くをPVAの水酸基と結合せずに残すため、混合水溶液中のカーボンドットの固形分重量は、3倍以上50倍未満であることが望ましい。PVAの固形分重量に対し3倍未満ではカーボンドットがPVAで覆われてしまいウイルスとの接触が困難になり、50倍以上の場合はPVAと結合していないカーボンドットの割合が増し繊維に固定されずに洗濯や唾液で溶出する場合がある。
使用するPVAは、PVA中の水酸基がボロン酸カーボンドットと結合し易いよう立体障害となるアセチル基が少ない方が望ましく、ケン化度80%以上が望ましい。分子量は、高すぎると高粘度になるため繊維に浸透し難くなるため5万以下、より好ましくは3万以下が望ましい。水溶液の濃度は固形分0.1から10wt%程度の溶液を用いることができるが、より好ましくは0.2から2重量%の濃度に水で希釈して用いる。
また、耐水性を向上させ繰り返し水洗しても効果を長期間持続させるため、PVAの水酸基の一部に光や熱で架橋する架橋基を有する(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシランや、[3-(グリシジルオキシ)プロピル]ジメチルエトキシシラン等を反応させたPVAを用いることもできるし、PVA部分の一部に重合性官能基を付与したポリマー、およびPVA部分を含むブロック共重合体、またはビニルアルコール部と1-ブテン-3,4-ジオール部とを有する共重合体であっても良い。
Figure 2022177994000002
本実施形態の製造方法では、複数のボロン酸基を表面に含有するカーボンドットとPVAとの複合体の水溶液を、不織布および織布に噴霧または含侵し塗布する。
その結果、ウイルスのスパイク糖タンパク質中の糖鎖の1,2-ジオール基とカーボンドット粒子表面のボロン酸基が錯体化や環状エステル化反応することで糖鎖を有するアレルゲンやウイルス、細菌をトラップし、同時に存在するカチオン性ポリマーのアルカリ変性およびアニオン性ポリマーの酸変性作用、吸着による膜の破壊作用等でウイルスや細菌を効率的に不活化、中和することができる。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の場合は、スパイク糖タンパク質のACE2結合部位の周辺にオリゴマンノースを含むアミノ酸部位N234があることが報告されている(Yasunori Watanabeら,Science, 369, 6501, p330(2020))。
糖鎖末端のマンノース残基は1,2-ジオール基を有するため、PVAの側鎖に結合したボロン酸基を表面に多数有するカーボンドットは、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質中の末端マンノース残基の1,2-ジオールとボロン酸基が反応し環状エステルを形成し新型コロナウイルスをトラップすることができると考えられる。
また、糖タンパク質の糖鎖の末端は、N-アセチルノイラミン酸残基で形成されている糖鎖も多い(Asif Shajahanら,Glycobiology doi: 10.1093/glycob/cwaa042)。
その場合、N-アセチルノイラミン酸残基中の1,2-ジオール基もカーボンドット表面のボロン酸基と環状エステルを形成することで新型コロナウイルスがカーボンドットにトラップされることができると考えられる。
(ロールツーロール製法)
本実施形態の防御用不織布および織布を効率的に生産するため、不織布および織布の原反を巻き出し部から巻き出し、巻き取り部で巻き取る間に連続的にプラズマ照射、ポリマー溶液噴霧、洗浄、乾燥の各処理を行えるロールツーロール装置を用いることができる。
例えば、図1の模式図に示すようなロールツーロール装置(1)では、不織布および織布からなる布(2)を原反巻き出し部(3)から巻き出し、巻き取り部(4)で巻き取る間に、大気圧プラズマ処理装置(5)、接地された金属板(6)に対向して設置されたカチオンポリマー溶液静電噴霧装置(7)、乾燥装置(8)、アニオンポリマー溶液静電噴霧装置(9)、乾燥装置(8)、受水バット(11)上に設置した洗浄水噴霧装置(12)、乾燥装置(8)、ポリマーを噴霧した布面と反対面側から噴霧できるように設置した接地された金属板上のカーボンドット溶液噴霧用静電噴霧装置(13)、乾燥装置(10)の順に配置されたロールツーロール装置を通すことで、処理工程を連続処理または一定長さ毎にステップバイステップ処理を行なうことで本実施形態の防御用不織布および織布の生産効率を高めることもできる。
なお、乾燥装置は熱風ブロア装置、遠赤外線加熱乾燥装置、マイクロ波加熱装置等を用いることができる。
なお、プラズマ処理は、基材となる不織布および織布がすでに親水性であるか親水性処理済で、かつイオン性表面を有しているのであれば必要はない。また、基材となる不織布および織布表面のイオン性基の極性に応じて、カチオンポリマー溶液噴霧装置(7)とアニオン性ポリマー溶液噴霧装置(9)の設置順を逆にすることもできる。
また、カチオンポリマー溶液噴霧装置(7)とアニオン性ポリマー溶液噴霧装置(9)の組を複数に増設することもできる。
また、噴霧装置は、布の進行方向に対して垂直な方向にノズルを往復運動させるか、あるいは位置を異にする複数本のノズルから噴霧することにより噴霧ムラを低減し噴霧速度を上げることができる。
(防御用不織布および織布のマスクおよび防護用品への応用例)
本実施形態の製法により抗アレルゲン、抗菌、抗ウイルス処理したポリプロピレン製メトロブローン不織布をフィルター部(14)に用い、同様に処理した通気性と肌触りの良いポリプロピレンスパンボンド不織布を口元部(15)と絵柄・着色部(16)で挟み、耳掛け紐(17)を取り付け周囲の熱接着を行い図2の模式図に示したような3層構造のマスクとすることができる。
各種絵柄を設けることで表裏の判別や使用者の区別に用いることができる。またプリーツを設けたり裁断方法により顔の形状に合わせた立体形状にすることもできる。
本実施形態により金属銅や銅塩などのアレルギー性を有する金属を用いずに、また短期間での大量生産が難しい抗体を用いなくても高いウイルストラップ、不活化能力が得られ、かつアレルゲンに対してもトラップ可能で、日本の夏の高温高湿環境での通気性に優れるマスクを提供できる。
また、ポリプロピレンやポリエチレン製不織布や、ポリエステル布、綿布等を基材として本実施形態によるアレルゲントラップ性およびウイルス不活化効果を有するカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーを繊維表面に交互吸着させると共にボロン酸基を複数含有するカーボンドットとPVAとの複合体を担持させた布を用いてマスクやマスクインナーシート以外にもガウン、つなぎ、エプロン等の防護用品を作製することもできる。
[実施例1]
カチオンポリマー溶液噴霧用とアニオンポリマー溶液噴霧用、洗浄水噴霧用、カーボンドット溶液噴霧用の4式の噴霧ノズルと、ノズルの鉛直下に置かれた10cm角の接地されたステンレス板からなるサンプル台、サンプル台上に置いた布の加熱乾燥装置を有する静電噴霧装置を作製した。
メルトブローポリプロピレン不織布(50g/m、比表面積2000m/g)を二酸化炭素と酸素を含む雰囲気中でプラズマ処理を行ないカルボキシル基や水酸基を表面に形成させた。次にプラズマ処理した不織布を10cm角のシートに切断後、静電噴霧装置の塗布対象物を載せる接地した金属板からなるサンプル台上に載せ周囲をテープで固定した。
カチオン性ポリマーとして、平均分子量約1万のポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDADMAC)を用い、1重量%の水性エタノール溶液(エタノール30容量%)を調整し、静電噴霧装置のタンクに注入した。
重合法はPolymer Chemistry、48巻、5163ページ、2010年に記載の方法でMADIX/RAFT剤としてO-エチル-S-(1-メトキシカルボニル)エチルジチオカルバネート末端アクリルアミドオリゴマーを用いてジアリルジメチルアンモニウムクロライドを水中50℃で水溶性アゾ開始剤V-50(Sigma-Aldrich社製)で重合することができる。
アニオン性ポリマーとして、ポリサイエンス社製ポリビニルホスホン酸(PVPA)(分子量24,000、分子量分散度=1.24)を用い、1重量%の水性エタノール溶液(エタノール30容量%)を調整し静電噴霧装置のタンクに注入した。
カーボンドットとPVAとの複合体として、前述の合成例に示した4-アミノフェニルボロン酸を原料とするボロン酸基を表面に複数含有するカーボンドットPVA複合体(カーボンドット:PVAの重量比3:1)を用い、1重量%の水性エタノール溶液(エタノール30容量%)を調整し、静電噴霧装置のタンクに注入した。
基材の不織布シートが載った静電噴霧装置の台の中心とカチオン性ポリマー噴霧用ノズルの先端との距離を10cmとし、ノズルにプラス10KVの電圧をかけ、カチオン性ポリマーを5mL(ポリマー塗布量約50mg)噴霧した。
次に、基材の不織布シートを温風加熱しながら100℃以下で液が垂れない程度に乾燥させた後、ノズルをアニオン性ポリマー噴霧用ノズルに切り替え、基材の不織布シートが載った静電噴霧装置の台の中心とアニオン性ポリマー噴霧用ノズルの先端との距離を10cm空け、ノズルにマイナス10KVの電圧をかけ、アニオン性ポリマー溶液を5mL噴霧した。
次に、洗浄水を噴霧し、不織布シート基材のポリプロピレン繊維およびポリマー間で十分に結合、架橋していない過剰なカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーを純水で洗い流した。
次に、基材の不織布シートを100℃以下で液が垂れない程度に温風加熱乾燥後、不織布シートを裏返してサンプル台に固定し、ノズルをカーボンドットPVA複合体溶液噴霧用ノズルに切り替え、基材の不織布シートが載った静電噴霧装置の台の中心とカーボンドット溶液噴霧用ノズルの先端との距離を10cm空け、ノズルにプラス10KVの電圧をかけ、カーボンドットPVA複合体溶液を5mL静電噴霧した。
次に、100℃以下で温風乾燥させた。乾燥によりボロン酸基含有カーボンドットの濃度が高くなるとPVAの水酸基との架橋が進行し繊維に固定されることで耐水性が向上した。
半分に切断したシートを市販のサージカルマスクと顔の間に挟んでインナーシートとして用いても、息苦しさは感じられず通気性が確保されていた。
また、このシートを直径1cmに切り、寒天培地入りシャーレの上に載せインフルエンザウイルス、コロナウイルス、肺炎桿菌を播種するとウイルスや菌の増殖をシート片の周囲で抑制できた。
また、溶液噴霧時のサンプル台以外への霧滴の広がりは、接地した金属製サンプル台と噴霧ノズル間に電圧を印加することにより抑制されると共に、布中心部と周辺角部とのポリマーの塗布量の比は、リン酸化合物イオンとアンモニウム化合物イオンのTOF-SIMSのシグナル強度の比から評価し20%未満となり均一性も高かった。
[実施例2]
基材の布に380スレッドカウント、120番手と150番手の平織の綿布(日本工業規格 JIS-L-1096 一般織物試験方法 8.27 A法(フラジール形法)での通気性6.0mL/cm・s)をカチオノンKCNで処理し4級アンモニウム化したカチオン化綿布を15cm角のシートにカットし、実施例1と同様に静電噴霧装置のサンプル台にセットした。
次に、アニオン性ポリマーの溶液として、土肥らと同様の方法(高分子論文集、67巻、341ページ、2010年)で、RAFT重合で合成されたポリ(4-ヒドロキシスチレン)-(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)-(4-ビニル安息香酸)のトリブロック共重合体(平均分子量約1万)の1重量%水性塩基性エタノール溶液(エタノール30容量%、フェノール水酸基が解離し分子鎖が延びるpH13以上に調整)を接地したサンプル台とノズル間にマイナス10KV印加し5mL静電噴霧、乾燥の工程の後、引き続き実施例1で用いたカチオン性ポリマーの溶液を5ml静電噴霧、水洗(脱塩)、乾燥の工程を経て、シートを反転してカーボンドットPVA複合体溶液を5ml静電噴霧、乾燥の工程を経て実施例2のシート(綿布基材)を得た。
このシートを2つ折りにし耳紐をつけて縫製しマスクとすると息苦しさは感じられず通気性が確保され、未処理の綿布製のマスクに比べ、くしゃみ等のスギ花粉症の症状を軽減する効果を得た。
[実施例3]
実施例1に用いるメルトブローンポリプロピレン不織布の原反(35cm幅)を巻き出し部にセットし、図1に示したロールツーロール装置を通すことで、実施例1の処理工程を連続的な流れ処理を行なうことで実施例3の防御用ポリプロピレン不織布の生産速度を3倍以上高められる。
[実施例4]
メルトブローンポリプロピレンの原反に変えて、スパンボンドポリプロピレン不織布(0.12mm厚、20g/m)の原反に変えた以外は実施例3と同様にして、実施例4の防御用ポリプロピレン不織布を製造した。
[実施例5]
実施例3で得られた防御処理済のポリプロピレン製のフィルター用不織布として幅17.5cm、長さ16cmにカットし、口元および外面用として実施例4で得た防御用スパンボンド不織布(19)を幅17.5cm、長さ33.5cmにカットし図3に示した模式図のように巻き、その重なり部にアルミ板製鼻当て(20)を包み込み、プリーツを付けた後に、耳掛け紐と共に周囲をスポット上状に熱ラミネートして、実施例5の防御用マスクを作製した。
このマスクは、スギ花粉由来のアレルゲンの透過を抑制し、抗ウイルス、抗菌機能を有し、官能試験の結果、防御用処理をしていないポリプロピレン製のフィルター用不織布を用いて同様に作製したマスクと同様の通気感が得られた。
[比較例1]
実施例1の静電噴霧を噴霧角度80度の2流体ノズル式スプレー方式に変え、ノズルとサンプル台を共に接地し、基材の不織布シートが載った静電噴霧装置の台の中心とスプレーノズル間の距離を10cmとした以外は、実施例1と同様にカチオン性ポリマー溶液、アニオン性ポリマー溶液、カーボンドットPVA複合体溶液を圧縮空気で不織布シートに噴霧した。
噴霧時の霧滴の広がりは金属製サンプル台上に限定されると共に布中心部と周辺角部での塗布量の比をTOF-SIMSで評価すると中心部の濃度が30%以上高くなった。
以上説明したように、本発明によれば、金属アレルギーを引き起こす可能性があるニッケル、コバルト、銅等の金属を使わずウイルスや、花粉などのアレルゲンをトラップ、不活化でき、かつ生産性に優れた防御用の不織布や織布の製造方法の提供、およびそれらの方法で製造された布を用いたマスク、マスクインナー、防護服等の防護用品を提供することができる。
1・・・・ロールツーロール装置
2・・・・不織布および織布からなる布
3・・・・原反巻き出し部
4・・・・巻き取り部
5・・・・大気圧プラズマ処理装置
6・・・・接地された金属板
7・・・・カチオンポリマー溶液静電噴霧装置
8・・・・乾燥装置
9・・・・アニオンポリマー溶液静電噴霧装置
10・・・・ロール
11・・・・受水バット
12・・・・洗浄水噴霧装置
13・・・・カーボンドット溶液噴霧用静電噴霧装置
14・・・・フィルター部
15・・・・口元部
16・・・・絵柄・着色部
17・・・・耳掛け紐
18・・・・フィルター用不織布
19・・・・口元、外面用スパンボンド不織布
20・・・・鼻当て

Claims (5)

  1. 少なくとも布面の一方に対して、少なくとも以下のA工程、B工程、およびC工程をこの順で含むことを特徴とする防御用不織布および織布の製造方法。
    A工程:不織布および織布をイオン性化および親水性化する工程
    B工程:カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーの少なくとも一方が抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性のいずれかを有するポリマーから選ばれるカチオン性ポリマーを含む溶液と、アニオン性ポリマーを含む溶液の少なくとも2種類の水性溶液を準備する工程であり、
    C工程:前記B工程で作製したカチオン性ポリマーを含む溶液と、アニオン性ポリマーを含む溶液を、イオン性基を有するイオン性化した不織布および織布のイオン性基による極性と反対の極性を有するイオン性ポリマー溶液から交互に少なくとも各1回以上静電噴霧し不織布および織布の繊維表面上でポリマーイオンコンプレックスを形成させ耐水性の抗アレルゲン性、抗菌性、抗ウイルス性コーティングを行う工程
  2. C工程中およびその後に「水洗工程」を含むことを特徴とする請求項1に記載の防御用不織布および織布の製造方法。
  3. 前記布面の他方の面に対して複数のボロン酸基を表面に含有するカーボンドットとポリビニルアルコールとの複合体の水溶液を静電噴霧し乾燥させる工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の防御用不織布および織布の製造方法。
  4. 巻き取りされたシート状の不織布および織布を用いてロールツーロール法で製造されることを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載の防御用不織布および織布の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法により製造された防御用不織布および織布を用いたことを特徴とする防護用品。
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