JP2022174669A - 炭素繊維強化プラスチック成形用材料、一方向炭素繊維基材、及び炭素繊維強化プラスチック成形体 - Google Patents

炭素繊維強化プラスチック成形用材料、一方向炭素繊維基材、及び炭素繊維強化プラスチック成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が層内で規則的に配置された炭素繊維強化プラスチック成形用材料に比べ、曲げ強度、曲げ弾性率、及び破断歪の少なくともいずれか1つの機械特性が向上した炭素繊維強化プラスチック成形用材料等を提供する。【解決手段】PAN系炭素繊維束(A)とピッチ系炭素繊維束(B)とを、双方の繊維方向が一方向となり、かつPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対するピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように重ね合わせて一括で開繊する処理を行うことにより、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維とが混在した一方向炭素繊維基材に、マトリックス樹脂を含浸させた、炭素繊維強化プラスチック成形用材料。【選択図】図1

Description

本開示は、炭素繊維強化プラスチック成形用材料、一方向炭素繊維基材、及び炭素繊維強化プラスチック成形体に関する。
近年、ノートパソコンや携帯端末や電気自動車など軽量化が求められている用途が拡大している。軽量化の手法としては肉厚を減らして体積を小さくする方法が一般的であるが、ただ肉厚を薄くするだけでは断面2次モーメントが低下し剛性が低下するため、同じ力を加えた場合でも従来よりも大きく撓む問題が発生する。その為、比弾性率の高い材料を使用し、低下する断面2次モーメントの値を補うことで、剛性を維持する設計を行うことが一般的である。
比弾性率の高い材料として、炭素繊維と熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から構成される炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が挙げられる。CFRPに使用されている炭素繊維はPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維の2種類が主流であり、市販されている炭素繊維の引張弾性率の範囲は、通常、PAN系炭素繊維が230~600GPa、ピッチ系炭素繊維が620~860GPaである。
比弾性率の高いCFRPを得る為にはピッチ系炭素繊維を使用することが望ましいが、ピッチ系炭素繊維を使用したCFRPはPAN系炭素繊維を使用したCFRPに比べて、曲げ強度が低いことが観察される。この原因は以下のように考えられる。
CFRPの引張試験時の破断歪は炭素繊維の破断歪に対してほぼ100%に近い値を示すのに対し、CFRPの圧縮試験時の破断歪は、PAN系炭素繊維で引張破断歪の7割程度、ピッチ系炭素繊維で引張破断歪の5割程度しか発現しない。その結果、曲げ強度の発現率もピッチ系炭素繊維を用いたCFRPはPAN系炭素繊維を用いたCFRPよりも低いものとなる。
ピッチ系炭素繊維を用いたCFRPの圧縮試験時の応力-歪曲線を観察すると、圧縮応力の4割程度までは応力-歪曲線が線形の関係を保っているが、それ以上になると非線形の挙動を示し、応力は殆ど増えないのに対して、歪量は増加していくという挙動が観察される。そこで、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維を組み合わせてPAN系炭素繊維がサポートすることで、ピッチ系炭素繊維の圧縮側の破断歪を伸ばすことができ、ひいては曲げ強度の向上につながる。
例えば、特許文献1では、PAN系炭素繊維プリプレグとピッチ系炭素繊維プリプレグを交互に積層して成形した炭素繊維強化複合材料(層間ハイブリッド)が開示されている。
また、特許文献2では、プリプレグの層内でPAN系炭素繊維ストランドとピッチ系炭素繊維ストランドとを交互に配置した炭素繊維強化複合材料(層内ハイブリッド)が開示されている。
特開平5-293919号公報 特開平5-278032号公報
比剛性が高い材料を得るためには、より弾性率の高いピッチ系炭素繊維を使用することが求められる。特許文献2に開示されている層内ハイブリッドは特許文献1に開示されている層間ハイブリッドよりも、曲げ強度の向上効果が高いが、従来技術で使用されていた引張弾性率620GPaのピッチ系炭素繊維を、800GPaのピッチ系炭素繊維に置き換えると、それほどハイブリッドの効果が得られない。その原因として、負荷時においてプリプレグ層内のピッチ系炭素繊維のモノフィラメントが密集している部分が破壊起点となり、ハイブリッドの効果が十分得られないことが考えられる。
本開示は、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が層内で規則的に配置された炭素繊維強化プラスチック成形用材料に比べ、曲げ強度、曲げ弾性率、及び破断歪の少なくともいずれか1つの機械特性が向上した炭素繊維強化プラスチック成形用材料、該炭素繊維強化プラスチック成形用材料に用いられる一方向炭素繊維基材、並びに該炭素繊維強化プラスチック成形用材料を用いて成形した炭素繊維強化プラスチック成形体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> PAN系炭素繊維束(A)とピッチ系炭素繊維束(B)とを、双方の繊維方向が一方向となり、かつPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対する前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように重ね合わせて一括で開繊する処理を行うことにより、前記PAN系炭素繊維と前記ピッチ系炭素繊維とが混在した一方向炭素繊維基材に対し、マトリックス樹脂を含浸させた、炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
<2> 前記一方向炭素繊維基材が、前記PAN系炭素繊維束(A)と前記ピッチ系炭素繊維束(B)とを、下記(1)~(4)のいずれか1つの組合せで重ね合わせて一括で開繊する処理を行うことにより、前記PAN系炭素繊維と前記ピッチ系炭素繊維とが混在した一方向炭素繊維基材である<1>に記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
(1)(A)/(B)
(2)(A)/(B)/(A)
(3)(B)/(A)/(B)
(4)(A)/(B)/(A)/(B)
<3> PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が、双方の繊維方向が一方向となるように配置されている一方向炭素繊維基材にマトリックス樹脂が含浸した層を含む炭素繊維強化プラスチック成形用材料であって、
前記層内の前記一方向に垂直となる厚さ方向及び幅方向において、前記PAN系炭素繊維よりも前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が大きいピッチ系炭素繊維リッチ領域と、前記ピッチ系炭素繊維よりも前記PAN系炭素繊維の体積比率が大きいPAN系炭素繊維リッチ領域とが混在している炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
<4> 繊維目付が、50~400g/mである<1>~<3>のいずれか1つに記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
<5> 前記マトリックス樹脂が、熱可塑性樹脂である<1>~<4>のいずれか1つに記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料を用いて成形された炭素繊維強化プラスチック成形体。
<7> PAN系炭素繊維束(A)とピッチ系炭素繊維束(B)とを、双方の繊維方向が一方向となり、かつPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対する前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように重ね合わせて一括で開繊する処理を行うことにより、前記PAN系炭素繊維と前記ピッチ系炭素繊維とが混在した一方向炭素繊維基材。
<8> PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維の双方の繊維方向が一方向となるように配置されている一方向炭素繊維基材であって、
前記一方向に垂直となる厚さ方向及び幅方向において、前記PAN系炭素繊維よりも前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が大きいピッチ系炭素繊維リッチ領域と、前記ピッチ系炭素繊維よりも前記PAN系炭素繊維の体積比率が大きいPAN系炭素繊維リッチ領域とが混在している一方向炭素繊維基材。
本開示によれば、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が層内で規則的に配置された炭素繊維強化プラスチック成形用材料に比べ、曲げ強度、曲げ弾性率、及び破断歪の少なくともいずれか1つの機械特性が向上した炭素繊維強化プラスチック成形用材料、該炭素繊維強化プラスチック成形用材料に用いられる一方向炭素繊維基材、並びに該炭素繊維強化プラスチック成形用材料を用いて成形した炭素繊維強化プラスチック成形体が提供される。
本開示に係る炭素繊維強化プラスチック成形用材料の繊維方向に垂直な断面において層内のピッチ系炭素繊維とPAN系炭素繊維の配置の一例を示す模式図である。 従来の炭素繊維強化プラスチック成形用材料の繊維方向に垂直な断面において層内のピッチ系炭素繊維とPAN系炭素繊維の配置の一例を示す模式図である。 本開示に係る炭素繊維強化プラスチック成形用材料の製造工程の一例を示す概略図である。 本開示に係る炭素繊維強化プラスチック成形用材料の製造工程の一例において開繊直後の厚さ方向における炭素繊維を示す模式図である。 本開示に係る炭素繊維強化プラスチック成形用材料の繊維方向に垂直な断面の一例を示す顕微鏡画像である。
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されていない場合は、これらの数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これらの数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示に係る発明者らは、ピッチ系炭素繊維とPAN系炭素繊維を用いたハイブリッドプリプレグについて、双方の炭素繊維のモノフィラメントの分布状態、プリプレグを製造する際の双方の炭素繊維の通過条件、使用する炭素繊維の仕様などについて検討を重ねた。その結果、PAN系炭素繊維束とピッチ系炭素繊維束とを重ね合わせて一括で開繊して双方の繊維が混在した一方向炭素繊維基材とした上でマトリックス樹脂を含侵させることにより、従来の層内ハイブリッドプリプレグ以上の機械特性を発現することができることを見出した。
[炭素繊維強化プラスチック成形用材料の製造方法]
まず、本開示に係る炭素繊維強化プラスチック成形用材料(本開示において「ハイブリッドプリプレグ」又は単に「プリプレグ」と称する場合がある。)を製造する方法について説明する。
本開示に係るハイブリッドプリプレグを製造する場合、PAN系炭素繊維束(A)とピッチ系炭素繊維束(B)とを双方の繊維方向が一方向(同じ方向)となり、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対するピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように重ね合わせて、例えばコームガイドに通過し、重ね合わされたPAN系炭素繊維束とピッチ系炭素繊維束とを一括で開繊処理を行う。これにより、単一層内にPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対する前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように混在した一方向炭素繊維基材とする。そして、この一方向炭素繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させる。
このような方法により、層内の一方向に垂直となる厚さ方向及び幅方向において、PAN系炭素繊維よりもピッチ系炭素繊維の体積比率が大きいピッチ系炭素繊維リッチ領域と、ピッチ系炭素繊維よりもPAN系炭素繊維の体積比率が大きいPAN系炭素繊維リッチ領域とが混在したPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維とのハイブリッド炭素繊維強化プラスチック成形用材料(ハイブリッドプリプレグ)が得られる。
なお、プリプレグ中のPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対する前記ピッチ系炭素繊維の体積比率を求める単一層内の単位面積は特に限定されないが、好ましくは100mm×100mm、より好ましくは40mm×100mmである。
図1は、本開示に係るハイブリッドプリプレグの繊維方向に垂直な断面において層内のピッチ系炭素繊維とPAN系炭素繊維の配置の一例を示す模式図である。図2は、従来のハイブリッドプリプレグの繊維方向に垂直な断面において層内のピッチ系炭素繊維とPAN系炭素繊維の配置の一例を示す模式図である。
従来の層内ハイブリッドの炭素繊維強化プラスチック成形用材料では、図2に示すように炭素繊維とマトリックス樹脂40を含む層内においてPAN系炭素繊維の集合体42aとピッチ系炭素繊維の集合体44aとが層内の幅方向に交互に繰り返すように規則的に配置されている。
一方、本開示に係る炭素繊維強化プラスチック成形用材料では、図1に示すように、PAN系炭素繊維22aとピッチ系炭素繊維24aが、それぞれ1本又は図2に示す層内ハイブリッドよりも少ない本数の集合体となって層内の厚さ方向及び幅方向に混在している。なお、本開示においてPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維とがハイブリッドプリプレグの「厚さ方向及び幅方向に混在」とは、ハイブリッドプリプレグの繊維方向に垂直な断面を観察した場合に、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が、ハイブリッドプリプレグの厚さ方向及び幅方向のいずれの方向にも一定のパターンでは配置されていないことを意味する。例えば、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維がそれぞれ同種の炭素繊維の集合体(PAN系炭素繊維群及びピッチ系炭素繊維群)となって、ハイブリッドプリプレグの厚さ方向及び幅方向のいずれの方向にも混在していてもよい。
このような構成を有するハイブリッドプリプレグでは、モノフィラメントが密集している部分が少なく、ピッチ系炭素繊維の密集による破壊起点が少ないため、ピッチ系炭素繊維とPAN系炭素繊維とのハイブリッド効果によって曲げ特性(曲げ強度及び曲げ弾性率の少なくとも一方)が向上すると考えられる。
図3は、本開示に係るハイブリッドプリプレグの製造を行う装置の一例について概略的に示している。なお、図3に示す装置10は、本開示に係るハイブリッドプリプレグの製造装置の一部を示している。
図3に示す装置10では、PAN系炭素繊維束22が巻かれたボビン12とピッチ系炭素繊維束24が巻かれたボビン14とが1組となって2組配置されている。
各ボビン12,14から引き出された炭素繊維束(ストランド)22,24を規則正しく並べるためのコームガイド16が配置されている。コームガイド16には棒状のガイド部16Aが等間隔に配置されている。また、コームガイド16を通過する炭素繊維束22,24に対して繊維束を開繊するための装置(開繊装置、不図示)が設けられている。
さらに、コームガイド16を通過して開繊された各炭素繊維群30A,30Bを一体化して次工程に送り出すニップロール18A,18Bが配置されている。
本開示に係るハイブリッドプリプレグを製造する場合、各組のボビン12,14から引き出されたPAN系炭素繊維束22とピッチ系炭素繊維束24を、双方の繊維方向が一方向(同じ方向)であり、双方の炭素繊維束22,24が互いに重なった状態で搬送され、コームガイド16の隣接する2つのコームガイド部16Aの一間隔(一区間)に同時に通過させる。
各炭素繊維束22,24中の炭素繊維のモノフィラメント本数は限定されないが、それぞれ例えば500本から24000本程度ものを使用することができる。
また、各炭素繊維の引張弾性率は特に限定されないが、市販品の炭素繊維を用いることができ、例えば、PAN系炭素繊維が230~600GPa、ピッチ系炭素繊維が620~860GPaである。また、各炭素繊維の繊維径は、例えば4μm~15μmである。
本開示に係るハイブリッドプリプレグを製造する際に使用可能な市販品として、例えば、以下の各炭素繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
<ピッチ系炭素繊維>
ピッチ系炭素繊維(“GRANOC(登録商標)”XN-90-60S、日本グラファイトファイバー(株)製、引張弾性率:860GPa、引張強度:3430MPa、繊度:0.88g/m、密度:2.19g/cm
ピッチ系炭素繊維(“GRANOC(登録商標)”XN-80-A2S、日本グラファイトファイバー(株)製、引張弾性率:780GPa、引張強度:3430MPa、繊度:1.78g/m、密度:2.17g/cm
ピッチ系炭素繊維(“GRANOC(登録商標)”XN-80-60S、日本グラファイトファイバー(株)製、引張弾性率:780GPa、引張強度:3430MPa、繊度:0.89g/m、密度:2.17g/cm
ピッチ系炭素繊維(“GRANOC(登録商標)”XN-60-A2S、日本グラファイトファイバー(株)製、引張弾性率:620GPa、引張強度:3430MPa、繊度:1.78g/m、密度:2.12g/cm
ピッチ系炭素繊維(“GRANOC(登録商標)”XN-60-60S、日本グラファイトファイバー(株)製、引張弾性率:620GPa、引張強度:3430MPa、繊度:0.89g/m、密度:2.12g/cm
<PAN系炭素繊維>
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T300B-6000、東レ(株)製、引張弾性率:230GPa、引張強度:3530MPa、繊度:0.396g/m、密度:1.76g/cm
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T700SC-24000、東レ(株)製、引張弾性率:230GPa、引張強度:4900MPa、繊度:1.650g/m、密度:1.8g/cm
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T700SC-12000、東レ(株)製、引張弾性率:230GPa、引張強度:4900MPa、繊度:0.800g/m、密度:1.8g/cm
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800SC-24000、東レ(株)製、引張弾性率:294GPa、引張強度:5880MPa、繊度:1.030g/m、密度:1.8g/cm
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”M40JB-12000、東レ(株)製、引張弾性率:377GPa、引張強度:4400MPa、繊度:0.450g/m、密度:1.77g/cm
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”M40JB-6000、東レ(株)製、引張弾性率:377GPa、引張強度:4400MPa、繊度:0.225g/m、密度:1.77g/cm
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”M50JB-6000、東レ(株)製、引張弾性率:475GPa、引張強度:4120MPa、繊度:0.216g/m、密度:1.88g/cm
炭素繊維束22,24を開繊するための開繊装置は、繊維束に振動ロールを接触させる振動開繊方式や、エアーを吹き付ける方法による空気開繊方式などの一般公知の方法を使用することができる。
PAN系炭素繊維束22とピッチ系炭素繊維束24は重なった状態でコームガイド16を通過させ、開繊装置にて横方向の振動やエアーの吹き付けにより各炭素繊維束22,24を一括で開繊させる。このようにコームガイド16を通過する時点でPAN系炭素繊維束22とピッチ系炭素繊維束24が完全に重なった状態とし、その後、開繊装置で一括して開繊することで各炭素繊維束22,24はニップロール18A,18Bに向けて幅方向に広がる。また、図4に示すように、コームガイド16を通過して開繊した各炭素繊維束22,24は厚さ方向にも若干広がった状態で搬送される。各組のボビン12,14から引き出されたPAN系炭素繊維束22とピッチ系炭素繊維束24が完全に重なった状態で開繊してニップロール18A,18Bに向けて広がることで、各炭素繊維束は1本又は複数本の集合体の炭素繊維に分かれるとともに隙間ができ(本開示において、開繊後は、1本の炭素繊維のほか、複数本の炭素繊維からなる集合体(炭素繊維群)も含めて「炭素繊維」と称する。)、互いの炭素繊維の間の隙間に入り込む。これによりPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が幅方向及び厚さ方向に混在したハイブリッド炭素繊維群30A,30Bとなってニップロール18A,18Bに接触する。
なお、コームガイド16とニップロール18A,18Bとの間隔などを調整しておくことで、各ハイブリッド炭素繊維群30A,30Bが重ならずに幅方向の一端同士が実質的に隙間なく隣接した状態でニップロール18A,18B間に送り込まれる。これにより、ニップロール18A,18Bにおいて各ハイブリッド炭素繊維群30A,30Bは一体となり、一方向炭素繊維基材32となる。
このようにして得られる一方向炭素繊維基材32は、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維の各繊維方向が同じ方向(一方向)に配置されており、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維は、厚さ方向及び幅方向においてPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が混在したものとなる。そして、各炭素繊維束のボビン12,14の数、各炭素繊維束22,24における炭素繊維(モノフィラメント)の本数、繊維径などを調整することで、例えば、単一層内の100mm×100mmの単位面積内にPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対する前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように混在した一方向炭素繊維基材32とすることができる。
本開示に係るハイブリッドプリプレグの製造時の一部分を概略的に示す図3では、PAN系炭素繊維束22とピッチ系炭素繊維束24を各1本重ねて開繊しているが、これに限定されない。PAN系炭素繊維束(A)とピッチ系炭素繊維束(B)とを重ね合わせる組合せとして、例えば以下の(1)~(4)の組合せが挙げられるが、これらの組合せに限定されない。
(1)(A)/(B)
(2)(A)/(B)/(A)
(3)(B)/(A)/(B)
(4)(A)/(B)/(A)/(B)
なお、各炭素繊維束22,24の本数は、製造するハイブリッドプリプレグの幅等に応じて選択すればよい。
ニップロール18A,18Bにおいて形成された一方向炭素繊維基材32は、マトリクス樹脂が含侵される工程に送られる。
コームガイド16とニップロール18A,18Bの間で双方の炭素繊維束(ストランド)22,24を例えばコームガイド16を通過させる前のストランド幅より3倍以上の幅Wに開繊すると、双方のストランド22,24はニップロール18A,18Bに入る直前で、各ストランド22,24を構成していたモノフィラメントが適度な集約体になる。そのままの状態を維持したままでマトリックス樹脂が含侵されることでプリプレグとなる。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、硬化剤を混練したエポキシ樹脂を用いることができ、その他、硬化剤を混練した不飽和ポリエステル樹脂や、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることもできる。また、エポキシ樹脂をポリイミド樹脂やフェノール樹脂、ゴム成分等で変成して用いることもできる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(PET、PBT、LCP他)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン他)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(PEEK、PEKK他)、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。
マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂は1種単独でもよいし、2種以上を用いてもよいが、熱可塑性樹脂は、炭素繊維と一体化させてプリプレグを形成する観点、プリプレグを加熱して積層体や成形体とする観点などから、ガラス転移温度(Tg)が90~160℃の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂のTgが低いほど、プリプレグの成形性は良くなるが、樹脂の流動性が大きくなり、例えば、熱可塑性樹脂を一方向炭素繊維基材に含侵させてプリプレグを形成する場合、熱可塑性樹脂層の厚みを確保し難くなる。一方、Tgが高くなると溶融粘度が高くなる傾向にあるために、一方向炭素繊維基材にボイドなどの欠陥を抑制して含浸させることが難しく、より高温のプロセスが必要とされる。かかる観点から、熱可塑性樹脂のTgは90~160℃の範囲内であることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂のTgは、示差走査熱量測定装置を用い、10℃/分の昇温条件で、20~280℃の範囲内の温度で測定し、セカンドスキャンのピーク値より計算された数値である。
熱可塑性樹脂は、強度、炭素繊維との親和性などの観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。
ここで「フェノキシ樹脂」とは、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、あるいは2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得られる線形の高分子であり、非晶質の熱可塑性樹脂である。
フェノキシ樹脂の平均分子量は、重量平均分子量(Mw)として、例えば10,000~200,000の範囲内であるが、プリプレグの強度、作業性、加工性の観点から、好ましくは20,000~100,000の範囲内であり、より好ましくは30,000~80,000の範囲内である。フェノキシ樹脂のMwが低すぎるとプリプレグの強度が劣り、高すぎると作業性や加工性に劣るものとなり易い。なお、Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
フェノキシ樹脂は、溶液中あるいは無溶媒下にて原料化合物から公知の方法で製造されるが、無溶媒下で製造されるフェノキシ樹脂のうち、原料化合物をin situで重合させて得られるフェノキシ樹脂については、現場重合型フェノキシ樹脂もしくは熱可塑性エポキシ樹脂とも呼称される。
フェノキシ樹脂と現場重合型フェノキシ樹脂は、いずれも2官能フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂による直鎖状のポリマーであるということは同じであるが、フェノキシ樹脂は分子量及び分子量分布が一定範囲内に制御され、加熱してもそれ以上重合が進まないのに対して、現場重合型フェノキシ樹脂は、加熱により分子量の増加が確認されることが異なる。
本開示では、マトリックス樹脂として、溶液中で製造したフェノキシ樹脂、無溶媒下で製造されたフェノキシ樹脂、現場重合型フェノキシ樹脂のいずれであっても使用することができる。
フェノキシ樹脂の製造に用いる2価フェノール化合物としては、例えば以下に例示するが、2官能であれば下記に示す限りではない。ビスフェノールA、ビスフェノールF(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾ-ルフルオレン(以上、大阪ガスケミカル株式会社製)、Bis-E、Bis-Z、BisOC-FL、BisP-AP、BisP-CDE、BisP-HTG、BisP-MIBK、BisP-3MZ、SBOC、Bis25X-F(以上、本州化学工業株式会社製)、ビスフェノールSなどのビスフェノール類や、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、カテコール、メチルカテコールなどのベンゼンジオール類や、ナフタレンジオールなどのナフタレンジオール類や、ビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラメチルビフェノールなどのビフェノール類などがあり、これらの内、ビスフェノール化合物類又はビフェノール化合物類が好ましい。
なお、これら2価フェノール化合物は単独でも、2種以上を組合わせて使用してもよい。
また、フェノキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂類としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、などのビスフェノール型エポキシ樹脂や、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂及びこれらのメチル基による置換体を挙げることができ、ビスフェノール型エポキシ樹脂およびビフェノール型エポキシ樹脂及びこれらのメチル基による置換体が好ましい。
なお、これら2価エポキシ樹脂は単独でも2種以上を組合わせて使用してもよい。
フェノキシ樹脂の製造に際しては反応触媒(重合触媒)を使用する。反応触媒は、エポキシ基とフェノール性水酸基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよく、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類などが挙げられ、中でもトリフェニルフォスフィン(TPP)、トリ-o-トリルホスフィン(TOTP)やトリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン(TPAP)等の有機リン化合物、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール(TB-Z)等のイミダゾール類の使用が好ましい。
なお、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
フェノキシ樹脂の重合には反応遅延剤を用いることもできる。2液混合の際に前駆体組成物を均一液状化するとともに粘度をできるだけ低下させる必要性から、しばしば加温されるため、反応を遅らせて低粘度な状態を維持させることが好ましく、トリ-n-ブチルボレート、トリ-n-オクチルボレート、トリ-n-ドデシルボレート等のトリアルキルボレート類、トリフェニルボレート等のトアリールボレート類が反応遅延剤として使用される。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
フェノキシ樹脂を溶液中で製造する場合、その反応溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、ブチルアルコール、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ブチロラクトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトフェノン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの有機溶媒が挙げられ、これらを複数組み合わせた、または有機溶媒と無機系溶媒(水など)との混合溶媒であっても良い。
重合反応は、使用する触媒が分解しない程度の反応温度で行う。反応温度は、50~240℃、反応圧力は通常、常圧であり、反応熱の除去が必要な場合は、使用する溶剤のフラッシュ蒸発・凝縮還流法、間接冷却法、またはこれらの併用法により行われる。
また、メチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することもできる。
本方法で得られたフェノキシ樹脂はそのままワニスとして、または蒸発器等を用いた脱溶媒処理をすることにより、溶媒を含まない固形状の樹脂とされる。
その後、フェノキシ樹脂は、ワニス状態であれば炭素繊維にそのまま含浸させたのちに乾燥工程を経てプリプレグ化され、固形状の樹脂であれば、溶融状態で一方向炭素繊維基材に含浸ダイなどを用いて含浸されてプリプレグ化される。
さらに、固形状の樹脂を繊維やフィルム、パウダー化して、炭素繊維と混織(コミングルド法)したり、フィルムと一方向炭素繊維基材を重ねてロールプレス機などにより加圧含浸(フィルムスタック法)したり、粉体塗工法を用いて一方向炭素繊維基材に塗工されることでセミプレグと呼称されるCFRP成形材料に加工してもよい。
一方、フェノキシ樹脂を無溶媒下にて製造する場合は、原料化合物と反応触媒を混合して前駆体組成物とし、これを加熱により重付加反応させることによって行う。このとき、原料や反応触媒の混合状態を最適化させるために予め加熱融解させた原料を混合してもよいし、最大で10質量%程度のシクロヘキサノンンやメチルエチルケトン等の溶剤を添加させてもよい。
無溶媒下でのフェノキシ樹脂の製造も溶媒中でのフェノキシ樹脂の製造方法と大きく条件が変わるものではないが、反応器などを使わずにin situでフェノキシ樹脂を得ることができる現場重合型フェノキシ樹脂は、その重合度合いを任意の範囲で調整できるため、オリゴマーの状態で一方向炭素繊維基材に含浸させてプリプレグを作製することができるため、好ましいフェノキシ樹脂である。
一般的に高分子量体(ポリマー)を一方向炭素繊維基材に含浸するためにはそのままであれば高温高圧が必要となるため、含浸不良によるボイドの発生や炭素繊維の折損などが起きやすく、溶剤を使用する場合は残留溶媒によるボイドの発生が起こりやすいが、オリゴマーの場合はポリマーよりも溶融粘度が低いので、加熱溶融で容易に一方向炭素繊維基材に含浸することができる。
一方向炭素繊維基材への含浸に際しては、ミキサーやニーダーを用いて原料化合物と反応触媒を混合した前駆体組成物を重量平均分子量(Mw)が100~6000程度の範囲となるまで重合を進めたのちに行われ、含浸ダイ等を用いて40~80℃にて加熱溶融した状態で一方向炭素繊維基材に直接含浸させたり、離型紙などにオリゴマーをキャストしてフィルム化したものをロールプレス機等で温度70~130℃、線圧5~25kg/cmにて一方向炭素繊維基材に含浸する(フィルムスタック法)ことでプリプレグに加工される。
上記工程を経て本開示に係るハイブリッドプリプレグを製造することができる。
なお、ニップロール18A,18Bにマトリックス樹脂のフィルムを供給して一方向炭素繊維基材32とマトリックス樹脂フィルムとを一体化させてハイブリッドプリプレグを製造してもよい。
本開示に係るハイブリッドプリプレグの繊維目付は特に限定されないが、機械特性(曲げ強度、曲げ弾性率、破断歪)の観点から、50~400g/mであることが好ましい。
また、各炭素繊維の目付は、ハイブリッドによる機械特性を向上させる観点などから、互いに30~70%の範囲内で調整することが好ましい。例えばハイブリッドプリプレグの繊維目付が50g/mの場合、PAN系炭素繊維の目付は、15~35g/mであり、ピッチ系炭素繊維の目付は、35~15g/mであることが好ましい。また、ハイブリッドプリプレグの繊維目付が400g/mの場合、PAN系炭素繊維の目付は、120~280g/mであり、ピッチ系炭素繊維の目付は、280~120g/mであることが好ましい。
また、本開示に係るハイブリッドプリプレグの樹脂目付は特に限定されず、樹脂の種類、プリプレグの用途、プリプレグに要求される特性などにもよるが、一方向炭素繊維基材に含浸してプリプレグに加工する観点、プリプレグの機械特性の観点などから、ハイブリッドプリプレグの繊維目付が50g/mの場合、17~33g/mであることが好ましい。また、ハイブリッドプリプレグの繊維目付が400g/mの場合、133~266g/mであることが好ましい。
なお、本開示に係るハイブリッドプリプレグは、積層して加熱加圧して一体化することで厚手のハイブリッドプリプレグとしてもよい。
図5は、本開示に係るハイブリッドプリプレグを積層してマトリックス樹脂を介して一体化させた一例について、繊維方向に垂直な断面の顕微鏡像である。図5に示すように、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が一方向に配置された層内の厚さ方向及び幅方向において、PAN系炭素繊維よりもピッチ系炭素繊維の体積比率が大きいピッチ系炭素繊維リッチ領域24Bと、ピッチ系炭素繊維よりもPAN系炭素繊維の体積比率が大きいPAN系炭素繊維リッチ領域22Bとが不規則に混在している。
なお、ハイブリッドプリプレグの積層体とする場合、各ハイブリッドプリプレグの繊維方向を同じ方向にして積層してもよいし、隣接する層で繊維方向の角度が異なるように積層してもよい。
本開示に係るハイブリッドプリプレグは、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維とのハイブリッド効果により、後述する実施例に示されるように、優れた機械特性を有するものとなる。
本開示に係るハイブリッドプリプレグの用途は限定されず、種々の用途に適用することができる。本開示に係るプリプレグは、必要に応じて複数枚のプリプレグを重ねて加熱加圧によって一体化した積層体としてもよい。このような積層体とする場合、厚さは用途に応じて選択することができる。また、積層体とする場合、各プリプレグの繊維方向をずらして複数の方向に対する曲げ強度の向上を図ってもよい。
本開示に係るプリプレグは、用途に応じて必要に応じて積層体とした後、所望の形状に成形加工して成形体とすることができる。
以下、本開示に係るプリプレグについて実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例によって限定されるものではない。
(炭素繊維)
本実施例および比較例に用いた炭素繊維は、以下の通りである。
<ピッチ系炭素繊維>
ピッチ系炭素繊維(“GRANOC(登録商標)”XN-80-A2S、日本グラファイトファイバー(株)製、引張弾性率:780GPa、引張強度:3430MPa、繊度:1.78g/m、密度:2.17g/cm
ピッチ系炭素繊維(“GRANOC(登録商標)”XN-80-60S、日本グラファイトファイバー(株)製、引張弾性率:780GPa、引張強度:3430MPa、繊度:0.89g/m、密度:2.17g/cm
<PAN系炭素繊維>
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T700SC-24000、東レ(株)製、引張弾性率:230GPa、引張強度:4900MPa、繊度:1.650g/m、密度:1.8g/cm
PAN系炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T700SC-12000、東レ(株)製、引張弾性率:230GPa、引張強度:4900MPa、繊度:0.800g/m、密度:1.8g/cm
〔実施例1〕
<マトリックス樹脂前駆体組成物フィルムの作製>
マトリックス樹脂を製造するため、以下の材料を用意した。
[エポキシ樹脂]
A1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YD-128、エポキシ当量:188g/eq)
[フェノール化合物]
B1:ビスフェノールA(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)
[重合触媒]
C1:トリ-o-トリルホスフィン(北興化学工業(株)製、商品名:「TOTP」)
A1:188質量部、B1:112質量部、C1:1質量部を溶解したシクロヘキサノン溶液1質量部をプラネタリーミキサーで混錬して前駆体組成物(F1)を得た。
リバースロールコーター方式の樹脂コーティング装置を用いて、前駆体組成物(F1)を、シリコーンを塗布した離型紙上にコーティング温度40℃で均一に塗工し、樹脂目付24.5g/m、幅1m、長さ100mの前駆体組成物(F1)フィルムとした。
<ハイブリッドプリプレグの製造>
ピッチ系炭素繊維としてGRANOC(登録商標)XN-80-A2S、PAN系炭素繊維としてトレカ(登録商標)T700SC-24000をそれぞれ用い、図3に示す構成を一部に有する装置にて、各炭素繊維の方向が同じで、かつ、各炭素繊維束が重なった状態でコームガイドの一間隔(一区間)に通過させるとともに表面が梨地の円筒状のバーを擦過させることで開繊させた。これにより、ピッチ系炭素繊維が47体積%、PAN系炭素繊維が53体積%の割合で混在した1000mm幅の一方向炭素繊維基材を得た。
続いて、一方向炭素繊維基材の両面から前駆体組成物(F1)フィルムで挟み込むようにしてプレスロールを通して温度100℃、線圧20kg/cmにて加熱加圧含浸することによって表1に示す目付量及び体積比率を有する現場重合型フェノキシ樹脂プリプレグを製造した。
<実施例2及び3>
実施例1におけるハイブリッドプリプレグの製造において、表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイブリッドプリプレグを製造した。
なお、表1において「ピッチ系CF使用本数(1000mm幅)」及び「PAN系CF使用本数(1000mm幅)」とは、1000mm幅の一方向炭素繊維基材の作製において使用した各炭素繊維束の本数を意味する。
また、「開繊倍率(倍)」とは、各炭素繊維束(ストランド)をコームガイドに通過させる前のストランド幅をW0、開繊した炭素繊維群がニップロールに接触するときの幅をWとした場合にW/W0で算出される値である。
<比較例1>
表1に示すピッチ系炭素繊維のみを用いて開繊して一方向炭素繊維基材の作製し、ハイブリッドプリプレグの製造において表1に示す条件に変更したこと以外は実施例1と同様にしてハイブリッドプリプレグを製造した。
<比較例2>
表1に示すピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維を用い、各炭素繊維束を重ねずにコームガイドの一間隔にそれぞれ通して開繊してピッチ系炭素繊維群とPAN系炭素繊維群とが幅方向に交互に配置された一方向炭素繊維基材を作製した。
次いで、この一方向炭素繊維基材を用い、ハイブリッドプリプレグの製造において表1に示す条件に変更したこと以外は実施例1と同様にしてハイブリッドプリプレグを製造した。
[評価]
製造したプリプレグの機械特性について以下の評価を行った。
<積層板の作製>
各例で製造したハイブリッドプリプレグを150mm×150mmのサイズに切断し、繊維方向が全て同一方向になるようにして厚み2mmとなるように必要数積層し、オートクレーブ成形により積層板を成形した。オートクレーブ成形は温度160℃、加圧条件4atmとし、2時間保持して成形した。
<曲げ強度、曲げ弾性率、破壊歪>
各例のハイブリッドプリプレグを用いて上記のようにして得た積層板に対し、それぞれインストロン社製万能材料試験機を用い、JIS K7074:1988に準拠して曲げ試験を実施し、曲げ強度、曲げ弾性率、破断歪を測定した。
Figure 2022174669000002

炭素繊維及びプリプレグの詳細並びに評価結果を表1に示す。
Figure 2022174669000003

表1に見られるように、本開示に係るハイブリッドプリプレグに相当する実施例1~3のハイブリッドプリプレグは、比較例2の層内ハイブリッドプリプレグに比べ、曲げ強度、曲げ弾性率、及び破断歪の少なくともいずれか1つの機械特性が向上していることがわかる。
16 コームガイド
18A,18B ニップロール
22 PAN系炭素繊維束
24 ピッチ系炭素繊維束
22a PAN系炭素繊維
24a ピッチ系炭素繊維
30A,30B ハイブリッド炭素繊維群
32 一方向炭素繊維基材

Claims (8)

  1. PAN系炭素繊維束(A)とピッチ系炭素繊維束(B)とを、双方の繊維方向が一方向となり、かつPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対する前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように重ね合わせて一括で開繊する処理を行うことにより、前記PAN系炭素繊維と前記ピッチ系炭素繊維とが混在した一方向炭素繊維基材に対し、マトリックス樹脂を含浸させた、炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
  2. 前記一方向炭素繊維基材が、前記PAN系炭素繊維束(A)と前記ピッチ系炭素繊維束(B)とを、下記(1)~(4)のいずれか1つの組合せで重ね合わせて一括で開繊する処理を行うことにより、前記PAN系炭素繊維と前記ピッチ系炭素繊維とが混在した一方向炭素繊維基材である請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
    (1)(A)/(B)
    (2)(A)/(B)/(A)
    (3)(B)/(A)/(B)
    (4)(A)/(B)/(A)/(B)
  3. PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が、双方の繊維方向が一方向となるように配置されている一方向炭素繊維基材にマトリックス樹脂が含浸した層を含む炭素繊維強化プラスチック成形用材料であって、
    前記層内の前記一方向に垂直となる厚さ方向及び幅方向において、前記PAN系炭素繊維よりも前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が大きいピッチ系炭素繊維リッチ領域と、前記ピッチ系炭素繊維よりも前記PAN系炭素繊維の体積比率が大きいPAN系炭素繊維リッチ領域とが混在している炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
  4. 繊維目付が、50~400g/mである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
  5. 前記マトリックス樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料。
  6. 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の炭素繊維強化プラスチック成形用材料を用いて成形された炭素繊維強化プラスチック成形体。
  7. PAN系炭素繊維束(A)とピッチ系炭素繊維束(B)とを、双方の繊維方向が一方向となり、かつPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維との合計に対する前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が25%以上100%未満となるように重ね合わせて一括で開繊する処理を行うことにより、前記PAN系炭素繊維と前記ピッチ系炭素繊維とが混在した一方向炭素繊維基材。
  8. PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が、双方の繊維方向が一方向となるように配置されている一方向炭素繊維基材であって、
    前記一方向に垂直となる厚さ方向及び幅方向において、前記PAN系炭素繊維よりも前記ピッチ系炭素繊維の体積比率が大きいピッチ系炭素繊維リッチ領域と、前記ピッチ系炭素繊維よりも前記PAN系炭素繊維の体積比率が大きいPAN系炭素繊維リッチ領域とが混在している一方向炭素繊維基材。
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