JP2022170718A - 遮音板 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐飛び石性と防火性とを満たすことができる遮音板を提供する。【解決手段】遮音板は、通路の側に配置される第1の化学強化ガラスと前記通路と反対の側に配置される第2の化学強化ガラスとが、中間膜を介して積層される合わせガラスを含む遮音板を有し、第1の化学強化ガラスにおける、表面圧縮応力CS1(MPa)と、中央引張応力CT1(MPa)と、第2の化学強化ガラスにおける、圧縮応力層の厚みDOL2(μm)、中央引張応力CT2(MPa)が、CT1≦2.75(MPa)、CS1≧300(MPa)、DOL2≧20(μm)、CT2>2.75(MPa)の関係式を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、合わせガラスにより構成される遮音板に関する。
車両の通路(例えば高速道路、一般道路、線路など)の側縁に沿って配置される遮音板として、透明板を有するものが検討されている。車両の乗員が透明板を介して周辺景色を視認できる。この透明板として、樹脂板よりも紫外線劣化の少ないガラス板を用いることが種々検討されている。
例えば、特許文献1は、耐熱性及び耐風圧性に優れ、破損時におけるガラス片を縮小するため、2枚の化学強化ガラスを、中間層を介して積層した合わせガラスを遮音板に適用することを開示する。特許文献1の遮音板に適用される合わせガラスは、通路側および民地側に配置される化学強化ガラスの表面圧縮応力が350MPa以上であり、民地側の化学強化ガラスの厚みが1.5~4mmであり、通路側の化学強化ガラスの厚みが1.5~8mmであり、中間膜の厚みが1.5~3.1mmであることを特徴としている。
特許5921103号公報
ところで、遮音板に求められる性能として、耐飛び石性と防火性とがある。特許文献1に示される通路側と民地側とが化学強化ガラスで構成される合わせガラスで、防火試験を実施した場合、通路側および民地側の化学強化ガラス板の強度が高いと、試験終盤まで両方の化学強化ガラスが割れない状態が維持されてしまう。そのため、加熱された中間膜の発泡により化学強化ガラスの間の内圧が上昇し、化学強化ガラスが外側に向けて大きく膨らんでしまう。この変形による曲げ応力と熱応力によって、民地側の化学強化ガラスが単独で、または通路側と民地側の化学強化ガラスが同時に割れた場合、遮音板が防火性能を満たせない場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、耐飛び石性と防火性とを満たすことができる、合わせガラスにより構成される遮音板を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、通路の側に配置される第1の化学強化ガラスと通路と反対の側に配置される第2の化学強化ガラスとが、中間膜を介して積層される合わせガラスを含む遮音板であって、第1の化学強化ガラスにおける、表面圧縮応力CS(MPa)と、中央引張応力CT(MPa)と、第2の化学強化ガラスにおける、圧縮応力層の厚みDOL(mm)と中央引張応力CT(MPa)とが、CT≦2.75(MPa)、CS≧300(MPa)、DOL≧20(μm)、CT>2.75(MPa)の関係式を満たす。
遮音板は、さらに第1の化学強化ガラスがエッジの0.1%破壊確率強度が260MPa未満であってもよい。
上記いずれかの遮音板は、さらに第2の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度が260MPa以上であっても良い。
上記いずれかの遮音板は、さらに第2の化学強化ガラスにおける、表面圧縮応力CS(MPa)が、CS≧300(MPa)の関係式を満たしても良い。
上記いずれかの遮音板は、さらに第1の化学強化ガラスにおける、板厚tが、3(mm)≦t≦10(mm)の関係式を満たしても良い。
上記いずれかの遮音板は、さらに第2の化学強化ガラスにおける、板厚t(mm)が、1.3(mm)≦t≦5(mm)の関係式を満たしても良い。
上記いずれかの遮音板は、さらに第1の化学強化ガラスの板厚tと第2の化学強化ガラスの板厚tとが、t≧tの関係式を満たしても良い。
上記いずれかの遮音板は、さらに中間膜における、厚みtが、0.75mm≦t≦3.1mmの関係式を満たしても良い。
上記いずれかの遮音板は、さらに中間膜が、ビニル系ポリマー、アイオノマー樹脂、エチレン-ビニル系モノマー共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン系共重合体、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、又はシリコーン樹脂の少なくとも一種から構成されても良い。
本発明の合わせガラスにより構成される遮音板によれば、耐飛び石性と防火性とを満たす。
図1は合わせガラスにより構成される遮音板を含む遮音パネルを示す断面図である。 図2はエッジの強度評価をするための試験治具の一例を示す概略図である。 図3は化学強化後のガラスから4枚のガラス板を切断する方法を説明するための図である。 図4は中央引張応力と飛び石試験合格率との関係を示すグラフである。 図5は圧縮応力層の厚みと防火試験合格率との関係を示すグラフである。 図6は中央引張応力と防火試験合格率との関係を示すグラフである。
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ ~ ”を用いて表す場合は、“ ~ ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
図1は、実施形態の遮音板を含む遮音パネルを示す断面図である。遮音パネル10は、車両の通路(例えば道路、線路など)の側縁に沿って配置される。例えば、遮音パネル10は、立体交差や高架上の通路に設置される。
遮音パネル10は、遮音板20と、遮音板20の外周部を支持する支持枠40とを有する。遮音板20は透明であり、車両の乗員は、遮音板20を介して周辺の景色を視認できる。なお、支持枠40は、透明でも不透明でもよい。
支持枠40は、遮音板20の外周部を支持することにより、遮音板20の変形を抑制することができる。支持枠40は、遮音板20の外周部を収容する溝41を有する。溝41の溝幅は遮音板20の板厚よりも大きくてよく、支持枠40は緩衝材44を介して遮音板20を支持してよい。支持枠40は、アルミニウム若しくは鉄などの金属(合金を含む)、または樹脂で形成されることが好ましい。また、緩衝材44としてゴム、または発泡樹脂を用いることが好ましい。
実施形態の遮音板20は、通路側に配置される第1の化学強化ガラス21、および民地側に配置される第2の化学強化ガラス22が、中間膜23を介して積層される合わせガラスで構成される。
遮音板20の第1の化学強化ガラス21は通路側に曝され、第2の化学強化ガラス22は民地側に曝されている。
遮音板20には、車両の通路に使用されることから、耐飛び石性と防火性とが求められている。耐飛び石性を満たすためには、化学強化ガラスを用いる必要がある。一方で、通路側と民地側とに化学強化ガラスが配置された合わせガラスで、防火試験を実施した場合、通路側および民地側の化学強化ガラス板の強度が高いと、試験終盤まで両方の化学強化ガラスが割れない状態が維持され、加熱された中間膜の発泡により化学強化ガラスの間の内圧が上昇し、化学強化ガラスが外側に向けて大きく膨らんでしまう。この変形による曲げ応力と熱応力によって、民地側の化学強化ガラスが単独で、または通路側と民地側の化学強化ガラスが同時に割れた場合は、非加熱側の民地側に火焔が噴出するなどして、遮音板20が防火性能を満たせない場合がある。
そこで、発明者らは、遮音板20の耐飛び石性と防火性とを鋭意検討した。その結果、防火試験において、中間膜の発泡により化学強化ガラスの間の内圧が上昇した際に、通路側の第1の化学強化ガラス21が割れ、防火試験中に民地側の第2の化学強化ガラス22が割れないようにすることで、防火試験の合格基準を満たすことに着目し、第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22に必要な特性を見出し、本発明に至った。
実施形態の遮音板20は、合わせガラスを含み、合わせガラスは第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22を備えている。化学強化ガラスは、板厚の薄いガラス板であっても表面層及び裏面層に生じる表面圧縮応力CS(Compressive Stress)の値を大きくすることにより、未強化ガラスと比較して強度が高められ、容易に割れないものとできる。
遮音板20では、通路側に第1の化学強化ガラス21を配置することにより、通路から飛び石等の加撃物により生じる衝撃に対する耐飛び石性を向上させている。第1の化学強化ガラス21は、加撃面に生じるヘルツコーンクラックが中間膜23まで達成することを抑制することができる。ヘルツコーンクラックとは、加撃面に発生するヘルツコーンと呼ばれる円錐状の破面を起点として生じる破壊をいう。
また、民地側に第2の化学強化ガラス22を配置することにより、加撃物に対する耐衝撃性を向上させることができる。
耐飛び石性の観点から、第1の化学強化ガラス21の表面圧縮応力CSは、好ましくは300MPa以上であり、より好ましくは400MPa以上であり、更に好ましくは500MPaである。第1の化学強化ガラス21の表面圧縮応力CSは、1000MPa以下であってもよい。耐飛び石性の観点から、第1の化学強化ガラスの圧縮応力層の厚みDOLは、例えば10μ以上であってもよく、20μm以上であってもよい。第1の化学強化ガラスの圧縮応力層の厚みDOLは50μm以下であってもよい。また、加撃物に対する耐衝撃性の観点から、第2の化学強化ガラス22の表面圧縮応力CSは、好ましくは300MPa以上であり、より好ましくは400MPa以上であり、更に好ましくは500MPaである。第2の化学強化ガラス22の表面圧縮応力CSは、1000MPa以下であってもよい。
化学強化ガラスにおいて、表面に表面圧縮応力CSが生じ、中央領域には中央引張応力CTが生じる。中央引張応力CT(MPa)は表面圧縮応力CS(MPa)と圧縮応力層の厚みDOL(μm)とガラスの板厚t(mm)から次の式で求められることが知られている。
CT=CS×DOL/(1000t-2DOL)
防火試験に合格するために、中間膜の発泡により化学強化ガラスの間の内圧が上昇した際に、通路側の第1の化学強化ガラス21が割れ、防火試験中に民地側の第2の化学強化ガラス22が割れないようにすることが好ましい。CTが大きいと、CS×DOLが大きく、防火試験中に発生するエッジ部の熱応力への耐性が強くなるため、防火性能が向上する。
したがって、合わせガラスとしたときに、第2の化学強化ガラスの中央引張応力CTが第1の化学強化ガラスの中央引張応力CTより大きいと、第1の化学強化ガラス21が第2の化学強化ガラス22よりも早く割れるため、好ましい。
第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22の特性に関し、後述する実施例で説明するように、発明者らは、第1の化学強化ガラス21における、表面圧縮応力CS(MPa)と、中央引張応力CT(Center tension)(MPa)と、第2の化学強化ガラス22における、圧縮応力層の厚みDOL(μm)と中央引張応力CT(MPa)とが、CT≦2.75(MPa)、CS≧300(MPa)、DOL≧20(μm)、CT>2.75(MPa)の関係式を満たすことで、遮音板20は耐飛び石性と防火性とを満たすことができることを見出した。
CTとCTとの差は、0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、0.15MPa以上がさらに好ましい。飛び石耐性の観点も踏まえると、第1の化学強化ガラスの中央引張応力CTは、2.75MPa以下が好ましく、2.65MPa以下がより好ましく、2.55MPa以下がさらに好ましく、2.0MPa以上であってもよい。一方、第2の化学強化ガラスの中央引張応力CTは、2.75MPa超が好ましく、2.80MPa以上がより好ましく、3.0MPa以上がさらに好ましく、5.0MPa以下であってもよい。圧縮応力層の厚みDOLが厚い方が、防火耐性が向上するため、第2の化学強化ガラスの圧縮応力層の厚みDOLは20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、50μm以下であってもよい。
さらに、遮音板20において、第1の化学強化ガラス21のエッジの0.1%破壊確率強度を260MPa未満とし、第2の化学強化ガラス22のエッジの0.1%破壊確率強度を260MPa以上にすることで、防火試験において、より通路側の第1の化学強化ガラスを割れやすくすし、民地側の第2の化学強化ガラスを割れにくくできることを、発明者らは見出した。
第1の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度は260MPa未満が好ましく、240MPa未満がよりに好ましく、220MPa未満がさらに好ましい。
第2の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度は260MPa以上が好ましく、280MPa以上がよりに好ましく、300MPa以上がさらに好ましい。
第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度の差は50MPa以上が好ましく、70MPa以上がより好ましく、90MPa以上がさらに好ましい。なお、エッジ強度は、中央引張応力CTの増加により高くすることができ、中央引張応力CTの減少により低くすることができる傾向にある。
エッジの0.1%破壊確率強度の求め方を説明する。ここで0.1%破壊確率強度は、ガラス板に該応力が印加された際に、1000枚中1枚破損する可能性があることを意味する。なお、エッジの0.1%破壊確率強度は、JIS R3223(2017)に規定されるエッジ強度の試験方法によって測定される。エッジの0.1%破壊確率強度を求めるため、図2に示す試験治具を使用した。図2に示すように、試験治具では、板厚t(mm)、100(mm)の高さH、1000(mm)の幅W、の試験片を、900(mm)の支持スパンlで支持し、300(mm)の荷重スパンl、1mm/分の荷重点速度として、エッジ強度を測定した。これらの条件の曲げ変形試験によってエッジの強度評価を行った。破壊荷重Fを式(1)に代入して破壊強度σfeを計算し、対数正規分布による統計処理からエッジの0.1%破壊確率強度を求めた。このエッジ強度評価試験において、曲げ変形でガラスが破壊した時の最大荷重を破壊荷重Fとした。なお、破壊起点が荷重スパン内にあり、かつ破壊起点がガラス板の端面にあるデータのみを統計処理した。
Figure 2022170718000002
破壊応力の測定に供される試験片は、板厚t×2000mm×900mmのガラスを面取した後、化学強化処理し、化学強化後のガラスから4枚のガラス板を切断することで得られる。図3は、化学強化後の化学強化ガラスから4枚のガラス板を切断する場合の図である。図3に示すように1枚のガラス板G(2000mm×900mm)から、ガラス板の周縁を含むように4枚のガラス板G1,G2,G3およびG4(板厚t×1000mm(幅W)×100mm(高さH))が切断される。
破壊応力の大きさは、試験片の大きさによる影響を受ける。2個の試験片の破壊強度をσfe1およびσfe2とし、エッジの有効表面積をSe1およびSe2とし、形状母数をmとした場合、以下の式(2)の関係式を満たすことが知られている。形状母数mは、JIS R1625(2010)に準拠したワイブルプロットから求めることができる。
Figure 2022170718000003
実施形態のガラス板の場合、ガラス板の板厚が一定であれば、有効表面積は有効長さの比になる。大板サイズのガラス板と小板サイズのガラス板とが同じ板厚の場合、次のように算出できる。
大板サイズのガラス板の破壊強度がσfe2(MPa)、大きさが1000mm(W)×100mm(H)、有効評価長さ(荷重スパン)が300mm(l)で、小板サイズのガラス板の大きさが70mm(W)×20mm(H)、有効評価長さ(荷重スパン)が20mm(l)である場合、小板サイズのガラス板の破壊強度のσfe1(MPa)を推測する場合、式(2)に基づいて、式(3)により算出できる。
Figure 2022170718000004
次に、第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22に適用される化学強化ガラスについて説明する。化学強化ガラスは、化学処理により、ガラス表面に圧縮応力層およびガラス内部に引張り応力層を生じさせたガラスである。化学処理は、例えば、イオン交換法などがある。イオン交換法は、ガラス板の表面や裏面をイオン交換し、ガラスに含まれる小さなイオン半径のイオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン)を大きなイオン半径のイオン(例えば、カリウムイオン)に置換する。これにより、ガラス板の表面層及び裏面層に表面圧縮応力CSを生じさせる。表面圧縮応力CSはガラスの表面全体に生じ、ガラスの表面全体に均一な厚みの圧縮応力層が形成される。イオン交換法では、ガラス板を高温の処理液(例えば、硝酸カリウム溶融塩)に浸漬してイオン交換を行う。
ガラス表面の表面圧縮応力CSの大きさ、ガラス表面に形成される圧縮応力層の厚み(DOL:Depth of Layer)は、それぞれ、化学処理時間、および化学処理温度により調整できる。例えば、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、圧縮応力層の厚みDOLが厚くなる。また、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、最初は表面圧縮応力CSの大きさが大きくなる。なお、途中から表面圧縮応力CSの大きさが小さくなる。化学処理時間と化学処理温度が異なるとき、圧縮応力層の厚みDOLと、表面圧縮応力CSの大きさとは、一対一で対応しない場合がある。
第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22として、例えば、建築用のソーダライムガラスを適用できる。
ソーダライムガラスは、例えば、酸化物基準のモル百分率表示でSiOを65~76%、Alを0.2~3%、NaOを10~16%、KOを0~2%、MgOを2~12%、CaOを5~15%含有することが好ましい。以降、百分率表示は、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示含有量を示す。
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分として知られており、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、65%以上であり、好ましくは67%以上、より好ましくは69%以上である。また、SiOの含有量は、76%以下であり、好ましくは74%以下、より好ましくは72%以下である。SiOの含有量が65%以上であるとガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が76%以下であると熔解性及び成形性の点で優位である。
Alはガラスの耐候性を向上させる成分であり、化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用がある。Alの含有量は、0.2%以上であり、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.6%以上である。また、Alの含有量は、3%以下であり、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下である。Alの含有量が0.2%以上であると、ガラスを屋外に面して使用しても十分な耐候性が得られる。一方、Alの含有量が3%以下であると、ガラスの熔解時の粘性を低く保つことができ、かつ成型時に失透が発生することがなく、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位である。
NaOはガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。また、イオン交換により圧縮応力を形成させる成分であり、圧縮応力層の深さDOLを大きくする作用がある。NaOの含有量は、10%以上であり、好ましくは11%以上、より好ましくは12%以上である。また、NaOの含有量は、16%以下であり、好ましくは15%以下、より好ましくは14%以下である。NaOの含有量が10%以上であると、イオン交換により所望の圧縮応力を形成することができる。一方、NaOの含有量が16%以下であると、充分な耐候性が得られる。
Oは必須ではないが、ガラスの熔解性を向上するため、化学耐久性を向上するため、イオン交換速度を増大するため含有してもよい。一方、KOが多くなりすぎるとガラスの熱膨張係数が大きくなり、熱割れし易く、防火性が低下する。KOを含有する場合は2%以下が好ましく、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。KOの含有量が2%以下であると、熱割れしにくく、防火ガラスに適している。
MgOは、ガラスを安定化させる成分である。MgOの含有量は、2%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上である。また、MgOの含有量は、12%以下であり、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下である。MgOの含有量が2%以上であると、ガラスの耐候性が良好になる。高温での熔解性が良好になる。一方、MgOの含有量が12%以下であると、ガラス製造時に失透が起こりにくい。
CaOは、ガラスを安定化させる成分である。耐水性、耐薬品性を向上させるために、CaOの含有量は、5%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上である。また、CaOの含有量は、15%以下であり、好ましくは13%以下、より好ましくは11%以下である。CaOの含有量が5%以上であるとガラスの耐水性、耐薬品性が良好になる。一方、CaOの含有量が15%以下であると、ガラス製造時に失透が起こりにくく、イオン交換で所望の圧縮応力が得られる。
以上述べた成分以外に、硫酸塩などの清澄剤、Fe、TiO、ZrO、SnOなどの微量成分を、合計で1%以下含有してもよい。
次に、第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22の好ましい板厚について説明する。実施形態において、第1の化学強化ガラス21の板厚t(mm)は、3(mm)≦t≦10(mm)の関係式を満たすことが好ましい。また、第2の化学強化ガラス22の板厚t(mm)は、1.3(mm)≦t≦5(mm)の関係式を満たすことが好ましい。第1の化学強化ガラス21の板厚tが10(mm)以下、第2の化学強化ガラス22の板厚tが5(mm)以下であれば、遮音板20の破損時におけるガラス片の最大重量を1g以下とすることができる。ガラス片の最大重量を1g以下とすることにより、安全性を確保することができる。
破損時のガラス片に起因する損害を小さくするには、ガラス片の最大重量が小さい方が好ましい。ガラス片の最大重量は化学強化ガラスの厚みと略比例関係にある。特に、民地の側に飛散するガラス片を小さくすることにより、周囲への損害を抑えることができる。したがって、第2の化学強化ガラス22の板厚tを5mm以下にすることにより、ガラス片の最大重量を小さくすることができる。
第1の化学強化ガラス21の板厚tを3mm以上にすることにより、要求される遮音性を確保することができる。同様に、第2の化学強化ガラス22の板厚tを1.3mm以上にすることにより、要求される遮音性を確保することができる。第1の化学強化ガラス21の板厚tと第2の化学強化ガラス22の板厚tとが、t≧tの関係式を満たすことが好ましく、t>tの関係式を満たすことがより好ましい。特に、第1の化学強化ガラス21と第2の化学強化ガラス22とを異厚の構成とすると、コインシデンス効果の発生を効果的に抑制することができる。コインシデンス効果とは、特定の周波数で、透過損失の低下が生じる現象を意味する。
次に、第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22を接着する中間膜23の好ましい態様について説明する。
中間膜23は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等で構成され、ビニル系ポリマー、アイオノマー樹脂、エチレン-ビニル系モノマー共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン系共重合体、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、又はシリコーン樹脂の少なくとも一種から構成される、ことが好ましい。
また、好ましい樹脂材料として、エチレン- 酢酸ビニル共重合体(EVA:Ethylene-Vinyl Acetate)、ポリビニルブチラール(PVB:Poly Vinyl Butyral)、ポリウレタン、アイオノマー樹脂などを挙げることができる。
中間膜23の厚みtは、0.75mm(約30mil)以上であることが好ましい。厚みtは、0.75mm以上であれば、耐衝撃性を向上できる。厚みtは、3.1mm(約120mil)以下であることが好ましい。遮音板20を通して見た景色が歪むことを抑止できる。特に、厚みtを1.5mm(約60mil)以下にすることで、燃え草(可燃物)を減らすことができ、第1の化学強化ガラス21および第2の化学強化ガラス22との間の内圧上昇を抑制できる。
例えば、遮音板の面積は1m以上である。面積が1m以上であれば、車両の通路の側縁に沿って、好適に配置できる。面積は2m以上であってもよく、6m以上であってもよい。一方、遮音板の面積は8m以下が好ましい。面積が8m以下であれば、遮音板の取り扱いが容易になり、遮音板設置時の周辺部材との接触による破損を抑制できる。遮音板は車両の通路の側縁に沿って配置される以外に、建築窓、外壁、車両窓等の各種用途にも用いることができる。
実施形態における遮音板20は、例えば次のように製造される。
実施形態における遮音板20を製造する場合、ガラス板製造工程、化学強化処理工程、合わせガラス製造工程を経る。
ガラス板製造工程では、例えば種々の原料を適量調合し、約1300~1800℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌などにより均質化し、周知のフロート法、ダウンドロー法、ロールアウト法、プレス法などによって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断してガラス板が製造される。
化学強化処理工程では、得られたガラス板に所望の表面圧縮応力CSを有する圧縮応力層を形成する。化学強化ガラス板を製造する場合の強化処理工程は、予熱工程、化学強化工程、徐冷工程を経る。
予熱工程では、化学強化処理を行う前に、ガラス板を予熱する。予熱は、例えば常温の電気炉にガラス板を入れ、電気炉を予熱温度まで昇温し、一定時間保持することにより行われる。化学強化工程でのサーマルショックによる割れを防ぐ為、昇温終了後にガラス板を予熱温度にて一定時間保持するとよい。この保持時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましい。
化学強化工程では、予熱されたガラス板を、例えば加熱された硝酸カリウム溶融塩に浸漬し、ガラス表層のNaと溶融塩中のKとをイオン交換する。NaとKとをイオン交換できればいずれの方法でもよい。なお、本発明において硝酸カリウム溶融塩または硝酸カリウム塩は、KNOの他、KNOと10質量%以下のNaNOを含有するものなどを含む。
ガラス板に所望の表面圧縮応力CSを有する圧縮応力層を形成するための化学強化処理条件は、ガラス板の板厚などによっても異なるが、350~550℃の硝酸カリウム溶融塩に2~50時間、ガラス板を浸漬させることが典型的である。
徐冷工程では、溶融塩から取り出されたガラス板を徐冷する。溶融塩から取り出されたガラス板は、直ちに徐冷するのではなく、ガラス板の主面に温度分布が生じにくくするために、一定時間、均一な温度で保持されることが好ましい。保持温度は、溶融塩の温度との差が100℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。また、保持時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましい。
溶融塩から取り出されたガラス板は、ガラス板が100℃となるまでの徐冷速度が300℃/時以下となるように徐冷することが好ましい。
合わせガラス製造工程では、第1の化学強化ガラス21と、第2の化学強化ガラス22とを、中間膜23を介して重ね合わせ、ゴムバッグのような真空バッグ中に入れ、圧力が約1~100kPa(より好ましくは1~36kPa)となるように脱気しつつ約70~120℃(より好ましくは70~110℃)に加熱することにより予備圧着し、さらにオートクレーブにて例えば温度120~160℃、圧力約0.3~1.5MPaの加熱加圧を行うことにより遮音板20が得られる。
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
[試験1]
試験1では複数の遮音板(試験体)を準備し、中央引張応力CTと耐飛び石性との関係を確認するため飛び石試験を実施した。
<試験体>
試験体1から試験体4の遮音板を準備した。試験体1から試験体4は、通路側に配置される第1の化学強化ガラスと、民地側に配置される第2の化学強化ガラスと、第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスとを接着する中間膜とにより構成される合わせガラスを備えている。
試験体1から試験体4において、5[mm]の板厚tの第1の化学強化ガラスと、3[mm]の板厚tの第2の化学強化ガラスと、0.89[mm](35[mil])の厚みtのアイオノマー樹脂(SG:SentryGlasデュポン社製、登録商標)の中間膜とを用いた。
試験体1では、第1の化学強化ガラスは、550[MPa]の表面圧縮応力CS、20[μm]の圧縮応力層の厚みDOL、2.22[MPa]の中央引張応力CTであった。また、第2の化学強化ガラスは、370[MPa]の表面圧縮応力CS、37[μm]の圧縮応力層の厚みDOLであった。
試験体2では、第1の化学強化ガラスは、500[MPa]の表面圧縮応力CS、24[μm]の圧縮応力層の厚みDOL、2.42[MPa]の中央引張応力CTであった。また、第2の化学強化ガラスは、370[MPa]の表面圧縮応力CS、37[μm]の圧縮応力層の厚みDOLであった。
試験体3では、第1の化学強化ガラスは、430[MPa]の表面圧縮応力CS、33[μm]の圧縮応力層の厚みDOL、2.88[MPa]の中央引張応力CTであった。また、第2の化学強化ガラスは、370[MPa]の表面圧縮応力CS、37[μm]の圧縮応力層の厚みDOLであった。
試験体4では、第1の化学強化ガラスは、371[MPa]の表面圧縮応力CS、37[μm]の圧縮応力層の厚みDOL、2.80[MPa]の中央引張応力CTであった。また、第2の化学強化ガラスは、430[MPa]の表面圧縮応力CS、33[μm]の圧縮応力層の厚みDOLであった。
<飛び石試験>
試験体1から試験体4について、飛び石試験を実施し、合格率を求めた。試験体1から試験体4の大きさは300mm×300mmであった。
加撃体として、材質:SUS440C、質量:4.5[g]±5%、加撃速度:21.0±1.0[m/s]、径:13/32(=0.42)[inch]を満たすものを用いた。
試験方法:試験体の計3か所(中央、中央から上下50mm)に加撃体を所定の速度(75.6±3.6km/h)でそれぞれ1回加撃し、割れ、クラック等の発生有無を評価(N=10×3回加撃)した。第1の化学強化ガラスを加撃面とした。ここで、「N=10×3回加撃」は、ガラス1枚につき3か所を加撃し、10枚に行ったとことを意味する。
加撃側の第1の化学強化ガラスに貫通したヘルツ破壊、またはヘルツ破壊とクラックとが認められない場合に合格とした。
<評価結果>
表1は、試験体1から試験体4に適用される合わせガラスの構成と、飛び石試験の合格率を示している。図4は、中央引張応力CTと飛び石試験合格率との関係を示すグラフであり、縦軸は飛び石試験合格率[%]を示し、横軸は中央引張応力[MPa]を示している。グラフには、プロットされたデータから単回帰分析により求めた回帰直線y=-0.3131x+1.6886が示されている。このとき、決定係数は0.988であり、精度が高いこと示している。
Figure 2022170718000005
表1および図4のグラフによれば、中央引張応力CTが2.80[MPa]で、合格率が80%である。中央引張応力CT≦2.75[MPa]とすることより、第1の化学強化ガラスの飛び石試験における合格率を80%より大きくでき、耐飛び石性を備えることが理解できる。
[試験2]
試験2では複数の試験体(化学強化ガラス)を準備し、圧縮応力層の厚みDOLと防火性との関係、および中央引張応力CTと防火性との関係を確認するため防火試験を実施した。
<試験体>
試験体5から試験体10の化学強化ガラスを準備した。試験体5から試験体10の化学強化ガラスは第2の化学強化ガラスに相当し、3[mm]の板厚tを有し、2000[mm]×900[mm]の大きさであった。試験体5から試験体10の表面圧縮応力CSは380MPa以上430MPa以下であった。
試験体5において、圧縮応力層の厚みDOLは28.3[μm]であり、中央引張応力CTは3.95(MPa)であり、N数は9体であった。試験体6において、圧縮応力層の厚みDOLは28.0[μm]であり、中央引張応力CTは4.11(MPa)であり、N数は10体であった。試験体7において、圧縮応力層の厚みDOLは33.4[μm]であり、中央引張応力CTは4.89[MPa]であり、N数は7体であった。試験体8において、圧縮応力層の厚みDOLは33.8[μm]であり、中央引張応力CTは4.88[MPa]であり、N数は10体であった。試験体9において、圧縮応力層の厚みDOLは20.0[μm]であり、中央引張応力CTは2.73(MPa)であり、N数は10体であった。試験体10において、圧縮応力層の厚みDOLは29.0[μm]であり、中央引張応力CTは3.75[MPa]であり、N数は6体であった。
<防火試験>
試験体5から試験体10について、「防耐火性能試験・評価業務方法書(一般財団法人建材試験センター発行、平成12年6月1日制定、2020年7月13日最終変更)」の遮炎・準遮炎性能試験評価方法に準拠した試験方法で、以下に示す合格基準を満足するかで判定を行った。
試験条件:炉内熱電対によって測定した温度経過が、以下の式で表される数値になるように加熱した。
T=345log10(8t+1)+20
上式において、Tは平均炉内温度(℃)、tは試験の経過時間(分)である。試験時間は20分間であった。
加熱炉は、上記温度の時間的変化を試験面の全面にほぼ一様に与えることができ、試験体5から試験体10の片面を加熱できる構造である。防火試験において、試験枠開口は1925mm×970mmで、ガラスのフレームへの掛代は15mmであった。
合格基準:以下に示す(1)から(3)の合格基準を満足する場合を〇とし、満足しない場合を×とした。
(1)非加熱側への10秒を超える継続する火炎噴出がないこと。
(2)非加熱側への10秒を超える継続する発炎がないこと。
(3)火炎が通る亀裂などの損傷および隙間を生じないこと。
<評価結果>
表2は、試験体5から試験体10の化学強化ガラスの圧縮応力層の厚みDOLと、N数と、中央引張応力CTと、合格率を示している。
Figure 2022170718000006
図5は、圧縮応力層の厚みDOLと防火試験合格率との関係を示すグラフであり、縦軸は防火試験合格率[%]を示し、横軸は圧縮応力層の厚みDOL[μm]を示している。グラフには、プロットされたデータから単回帰分析により求めた回帰直線y=0.0298x-0.0211が示されている。このとき、決定係数は0.9672であり精度が高いこと示している。
図6は、中央引張応力CTと防火試験合格率との関係を示すグラフであり、縦軸は防火試験合格率[%]を示し、横軸は中央引張応力CT[MPa]を示している。グラフには、プロットされたデータから単回帰分析により求めた回帰直線y=0.1819x+0.0982が示されている。このとき、決定係数は0.9400であり精度が高いこと示している。
表2および図5のグラフによれば、圧縮応力層の厚みDOLが20[μm]で、合格率が60%であり、圧縮応力層の厚みDOL≧20[μm]とすることより、第2の化学強化ガラスの防火試験合格率を60%より大きくできる。したがって、民地側に配置される第2の化学強化ガラスにおいて、圧縮応力層の厚みDOL≧20[μm]とすることで、防火性を備えることが理解できる。
表2および図6のグラフによれば、中央引張応力CTが2.73[MPa]で、合格率が60%であり、中央引張応力CT>2.75[MPa]とすることより、第2の化学強化ガラスの防火試験合格率を60%より大きくできる。したがって、民地側に配置される第2の化学強化ガラスにおいて、中央引張応力CT>2.75[MPa]とすることで、防火性を備えることが理解できる。
[試験3]
試験3では複数の遮音板(試験体)を準備し、防火試験を実施した。
<試験体>
試験体11から試験体16の遮音板を準備した。試験体11から試験体16は、通路側に配置される第1の化学強化ガラスと、民地側に配置される第2の化学強化ガラスと、第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスとを接着する中間膜とにより構成される合わせガラスを備えている。
試験体11から試験体16において、5[mm]の板厚tを有する第1の化学強化ガラスと、3[mm]の板厚tを有する第2の化学強化ガラスとを用いた。第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスの大きさは、1895[mm]×940[mm]であった。
試験体11では、第1の化学強化ガラスにおいて、表面圧縮応力CSは570[MPa]であり、圧縮応力層の厚みDOLは15[μm]であり、中央引張応力CTは1.72[MPa]であった。また、第2の化学強化ガラスにおいて、表面圧縮応力CSは570[MPa]であり、圧縮応力層の厚みDOLは15[μm]であり、中央引張応力CTは1.72[MPa]であった。中間膜は、0.89[mm](35[mil])の厚みtを有するアイオノマー樹脂(SG)であった。
試験体12から14では、第1の化学強化ガラスにおいて、表面圧縮応力CSは320[MPa]であり、圧縮応力層の厚みDOLは38[μm]であり、中央引張応力CTは2.45[MPa]であった。また、第2の化学強化ガラスにおいて、表面圧縮応力CSは370.6[MPa]であり、圧縮応力層の厚みDOLは37[μm]であり、中央引張応力CTは2.80[MPa]であった。中間膜は、1.52[mm](60[mil])の厚みtを有するポリビニルブチラール樹脂(PVB)であった。
試験体15、16では、第1の化学強化ガラスにおいて、表面圧縮応力CSは371[MPa]であり、圧縮応力層の厚みDOLは37[μm]であり、中央引張応力CTは2.80[MPa]のであった。また、第2の化学強化ガラスにおいて、表面圧縮応力CSは370.6[MPa]であり、圧縮応力層の厚みDOLは37[μm]であり、中央引張応力CTは2.80[MPa]であった。中間膜は、0.89[mm](35[mil])の厚みtを有するアイオノマー樹脂(SG)であった。
なお、第1の化学強化ガラスの表面圧縮応力CSおよび圧縮応力層の厚みDOLと、第2の化学強化ガラスの表面圧縮応力CSおよび圧縮応力層の厚みDOLとは、表面応力計FSM-6000(折原製作所製)により測定した。
<防火試験>
試験体11から試験体16について、「防耐火性能試験・評価業務方法書(一般財団法人建材試験センター発行、平成12年6月1日制定、2020年7月13日最終変更)」の遮炎・準遮炎性能試験評価方法に準拠した試験方法で、以下に示す合格基準を満足するかで判定を行った。
試験条件:炉内熱電対によって測定した温度経過が、以下の式で表される数値になるように加熱した。
T=345log10(8t+1)+20
上式において、Tは平均炉内温度(℃)、tは試験の経過時間(分)である。試験時間は12分間であった。
加熱炉は、上記温度の時間的変化を試験面の全面にほぼ一様に与えることができ、試験体11から試験体16の片面を加熱できる構造である。防火試験においては、第1の化学強化ガラスが加熱面となる。試験枠開口は1925mm×970mmで、ガラスのフレームへの掛代は15mmであった。
合格基準:以下に示す(1)から(3)の合格基準を満足する場合を〇とし、満足しない場合を×とした。
(1)非加熱側への10秒を超える継続する火炎噴出がないこと。
(2)非加熱側への10秒を超える継続する発炎がないこと。
(3)火炎が通る亀裂などの損傷および隙間を生じないこと。
<エッジの強度評価>
試験体11から試験体16の第1の化学強化ガラスおよび第2の化学強化ガラスのそれぞれについて、図3に示す1000mm×100mmの試験片を準備し、図2に示す試験治具を用いて、エッジの0.1%破壊確率強度を求めた。
<評価結果>
表3は、試験体11から試験体16に適用される合わせガラスの構成と、0.1%破壊確率強度(エッジの0.1%破壊確率強度)と、合格基準を満たすか否かの合否結果とを示している。
Figure 2022170718000007
表3に示すように、試験体11は、合格基準を満たさず、合否結果が×であった。試験体11では、第2の化学強化ガラスの圧縮応力層の厚みDOLが15[μm]であり、第2の化学強化ガラスの圧縮応力層の厚みDOL≧20[μm]の条件を満たしていないため、第2の化学強化ガラスが割れてしまった。その結果、合格基準を満たすことができなかった。
表3に示すように、試験体12から14は、合格基準を満たし、合否結果が〇であった。試験体12から14では、第1の化学強化ガラスが中央引張応力CT≦2.75[MPa]、表面圧縮応力CS≧300[MPa]の条件を満たし、第2の化学強化ガラスが圧縮応力層の厚みDOL≧20[μm]、中央引張応力CT>2.75[MPa]を満たすので、試験開始3~6分程度で中間膜の発泡により化学強化ガラスの間の内圧が上昇した際に、第1の化学強化ガラスが割れ、脱落したが、第2の化学強化ガラスが残ることで合格基準を満たすことができた。試験体12から14は防火性を備えることが理解できる。
表3に示すように、試験体15,16は、合格基準を満たさず、合否結果が×であった。試験体15,16では、第1の化学強化ガラスおよび第2の化学強化ガラスの中央引張応力CTおよびCTが2.80[MPa]であり、ともに中央引張応力CT≦2.75[MPa]の条件を満たしていない。そのため、第1の化学強化ガラスおよび第2の化学強化ガラスともに単板としての防火性能が高く、ガラス板が割れて脱落する前に中間膜が発泡し、結果的に第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスが同時に割れた。試験体15では6分弱で第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスが同時に割れ、試験体16では11分30分で第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスが同時に割れた。その結果、合格基準を満たすことができなかった。
表3に示すように、試験体12から14は、試験体11、15、16と比較すると、中間膜の厚み(t)が大きいため、燃え草(可燃物)が多くなり、防火試験では不利(内圧が上がる傾向)に働く。中間膜の厚み(t)が大きい場合でも、試験体12から14は、中間膜の発泡により化学強化ガラスの間の内圧が上昇した際に、第1の化学強化ガラスが割れ、脱落し、第2の化学強化ガラスが残るので防火試験の合格基準を満たすことができた。
また、表3に示すように、第1の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度が260MPa未満であり、第2の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度が260MPa以上である試験体12から14では、防火試験で、より通路側に配置される第1の化学強化ガラスを割れやすくすし、民地側に配置される第2の化学強化ガラスを割れにくくできることが理解できる。第1の化学強化ガラスと第2の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度の差は50MPa以上が好ましいことが理解できる。
10…遮音パネル、20…遮音板、21…第1の化学強化ガラス、22…第2の化学強化ガラス、23…中間膜、40…支持枠、41…溝、44…緩衝材

Claims (8)

  1. 通路の側に配置される第1の化学強化ガラスと前記通路と反対の側に配置される第2の化学強化ガラスとが、中間膜を介して積層される合わせガラスを含む遮音板であって、
    前記第1の化学強化ガラスにおける、表面圧縮応力CS(MPa)と、中央引張応力CT(MPa)と、
    前記第2の化学強化ガラスにおける、圧縮応力層の厚みDOL(μm)と中央引張応力CT(MPa)が、
    CT≦2.75(MPa)
    CS≧300(MPa)
    DOL≧20(μm)
    CT>2.75(MPa)
    の関係式を満たす、遮音板。
  2. 前記第1の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度が260MPa未満であり、第2の化学強化ガラスのエッジの0.1%破壊確率強度が260MPa以上である、請求項1に記載の遮音板。
  3. 前記第2の化学強化ガラスにおける、表面圧縮応力CS(MPa)が、
    CS≧300(MPa)
    の関係式を満たす、請求項1又は2に記載の遮音板。
  4. 前記第1の化学強化ガラスにおける、板厚tが、
    3(mm)≦t≦10(mm)
    の関係式を満たす、請求項1又は2に記載の遮音板。
  5. 前記第2の化学強化ガラスにおける、板厚t(mm)が、
    1.3(mm)≦t≦5(mm)
    の関係式を満たす、請求項1又は2に記載の遮音板。
  6. 前記第1の化学強化ガラスの板厚tと前記第2の化学強化ガラスの板厚tとが、
    ≧t
    の関係式を満たす、請求項1又は2に記載の遮音板。
  7. 前記中間膜における、厚みtが、
    0.75mm≦t≦3.1mm
    の関係式を満たす、請求項1又は2に記載の遮音板。
  8. 前記中間膜が、ビニル系ポリマー、アイオノマー樹脂、エチレン-ビニル系モノマー共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン系共重合体、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、又はシリコーン樹脂の少なくとも一種から構成される、請求項1又は2に記載の遮音板。
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