JP2022168966A - リハビリテーション支援システム、プログラム及び制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
一般に、従来のリハビリテーションは、患者の意思とは無関係に単調な動作を繰り返すものであり、大脳皮質運動野へのフィードバック、すなわち運動のための新たなパスの生成に寄与する効果が十分ではなかった。そのため、リハビリテーションの効率は必ずしも高いとは言えなかった。
このリハビリテーション装置は、患者の視覚に対して提示を行う提示部と、外力を用いて患者の麻痺した身体の一部である麻痺部を動かす動作を補助するアシスト動作をする駆動部と、患者の脳波に基づいて駆動部にアシスト動作をさせる制御部と、を備える。提示部は、麻痺部と同一な部位である対象部位であって、少なくとも静止した状態の対象部位を含む画像を提示する。制御部は、駆動部にアシスト動作をさせるか否かを判定する判定項目に脳波を構成する信号に含まれる所定の周波数帯域のスペクトル強度の変化を用いる。
リハビリテーション支援システム10は、図1に示すように、(1)患者の意思により動く、機能が残存する健常側の手指の運動感覚、(2)麻痺側(非健常側)の手指の感覚及び(3)健常側の手指及び麻痺側の手指の動きを視認することによる視覚が、それぞれ患者の脳にフィードバックされることにより、麻痺側の手指の機能回復を促進することができる。
グラブ(アシスト部の一例)12は、麻痺側の手指(麻痺部位の一例)に装着され、手指を動かす力を加えることができる。
グラブ12の駆動源は、空圧である。駆動源を空圧とすることにより、駆動源をモータとした場合と比較して、グラブが柔軟かつ軽量となり、治療する患者の負担が軽減される。
ベローズ122は、手の甲側の各指関節に対応する位置に合計で15個設けられている。
チューブ124は、手首の甲側に設けられたマニホールド126から各指に沿って先端まで延び、一本の指につき3つのベローズを直列に接続するように空気の供給経路を形成する。
各ベローズ122は、チューブ124の内部の圧力に応じて膨張又は収縮し、これによりグラブ12が手指関節を屈伸運動する力を加えることができる。
グラブ駆動装置13は、制御装置16に接続され、制御装置16が出力した制御信号(指令信号)に基づいて、チューブ132を介してチューブ124の内部の圧力を増減させ、グラブ12を駆動できる。
刺激装置15は、制御装置16によって制御され、ケーブルを介して各刺激部152を駆動できる。
制御装置16からトリガ信号を受信すると、刺激装置15は、各刺激部152を駆動し、各装着部位が刺激される。その結果、刺激装置15は、麻痺側の手指の拘縮を和らげるための刺激を患者に加えることができる。刺激装置15は、予め設定されたパターンによる刺激を加えることもできる。
制御装置16は、例えば、パーソナルコンピュータであり、画像処理部161、駆動制御部162、表示制御部164及び音響出力制御部166を有している。
第1のデータは、手指を構成する各骨(末節骨、中節骨、基節骨及び中手骨)の中心座標及び各骨の両端の座標のうち少なくとも一方である。
第2のデータは、各骨の長手方向のベクトルである。
また、駆動制御部162は、健常側の手指及び麻痺側の手指のうち少なくとも一方の動きに基づいて、刺激装置15に対してトリガ信号を出力する。その結果、刺激装置15が患者に刺激部152を介して刺激を与え、麻痺側の手指の拘縮を緩和できる。
また、表示制御部164は、左右の各指の開閉度合い(後述する指屈曲度θ)を示すグラフの画像を生成し、表示器18に表示できる。
なお、表示制御部164は、予め設定されたパラメータである拡大率に基づいて、麻痺側指画像の動きやグラフの動きを実際の麻痺側の手指の動きよりも大きくなるように誇張して表示器18に表示することも可能である。
更に、表示制御部164は、患者を励ます応援メッセージを表示器18に表示することも可能である。
また、制御装置16は、制御装置16にて実行されるプログラムによって、センサ部14によって検出された健常側の手指の動きに基づいて、グラブ12を制御する制御手段として機能する。
患者がリハビリテーションを行っている間、表示器18には、制御装置16の表示制御部164によって生成された画像等の情報が表示される。
詳細には、表示器18の画面上側の領域182Uには、健常側指画像及び麻痺側指画像が、それぞれ擬似的な手指の三次元動画として表示される。表示器18の画面下側の領域182Lには、左右の各指の開閉度合い(後述する指屈曲度θ)を示す棒グラフが並んで表示される。これらの棒グラフは、対応する手指の開閉に伴って増減して表示される。
なお、左右の各指の開閉度合いは、対応する棒グラフの近傍に、数値又は時系列チャートとして表示されてもよい。また、棒グラフは、患者にとって最適な任意のチャートであればよい。
なお、リハビリテーション支援システム10は、患者が健常側の手指を動かしてから麻痺側の手指が動くまでの反応時間の遅れが、予め決められた時間Td以下となるように構成されている。この予め決められた時間Tdは、治療を受ける患者が違和感を抱かない時間であり、短ければ短いほど好ましい。具体的には、時間Tdは、1000ms以下であり、好ましくは500ms以下であり、更に好ましくは、300ms以下である。
リハビリテーション支援システム10は、図3に示す以下のステップS1~S4に従って使用され、患者のリハビリテーションが行われる。
なお、同図3において、ステップS2が開始されると、前述の反応時間の遅れが経過した後にステップS3が開始される。従って、ステップS2及びステップS3は、完全な並列処理ではなく実質的な並列処理として実行される。
患者の麻痺側の手指にグラブ12が装着される。
予め決められた時間、センサ14の検出範囲にて、患者が左右で同じ動きをするように手指の運動を繰り返す。この手指の運動(リハビリテーション)は、全ての手指を握ったり開いたりする屈曲運動である。
屈曲運動する健常側の手指の動きは、前述の第1のデータ及び第2のデータとして、センサ14を介して制御装置16の画像処理部161によって取得され、駆動制御部162は、グラブ駆動装置13に対し、健常側の手指の動きに倣って麻痺側の手指が動くように制御信号を出力する。
患者が運動を繰り返す間、表示器18の画面上側の表示領域182Uには、運動を行っている左右の手指の動きが擬似的な手の三次元動画として表示され、画面下側の表示領域182Lには、左右の各指の開閉度合い(後述する指屈曲度θ)を示す棒グラフが表示される。
従って、患者は、表示器18に表示される屈曲運動を繰り返す擬似的な三次元動画やグラフを見ながら、麻痺側の手指が健常側の手指と同じ屈曲運動をするようにグラブ12から力が加えられるとともに患者自ら麻痺側の手指を動かそうとする意思を持った状態で手指の運動を行う。
ただし、表示器18に表示された擬似的な手指の三次元動画を見ることなく、自らの健常側及び麻痺側の手指の動きだけを見ながらリハビリテーションを行ってもよい。
従って、拘縮が強い患者であっても、麻痺側の手指を動かそうとする意思を持たせ、その運動感覚が大脳にフィードバックされる。
また、拘縮が強い患者に対して、刺激装置15が患者に刺激を加えることで、麻痺側の手指を動かしやすくすることができる。
具体的には、音響出力制御部166が、麻痺側の手指の速度又は加速度の変化に応じて、20Hz~20kHzの可聴域の範囲内で周波数特性が変化する音に変換することで、患者が手指の動きの状態を聴覚にて把握できるようになる。
なお、周波数に代えて、振幅としてもよいし、周波数及び振幅を変化させてもよい。また、音響出力制御部166は、麻痺側の手指の動きに応じて患者を励ます合成音声を出力してもよい。
従って、視覚に障害を持っている患者であっても、表示器18に表示される情報に頼ることなく、リハビリテーションを行うことができる。
予め決められた時間が経過するまで、前述のステップS3及びステップS4が繰り返される。
予め決められた時間が経過した後、患者はリハビリテーションを終える。
このようなリハビリテーション方法により、治療効果が高いリハビリテーションが提供される。
発明者らは、右手側に麻痺を有する初発の脳卒中患者に対してリハビリテーション支援システム10を用いたリハビリテーションを約20分間行い、リハビリテーションの前後において、それぞれ、全ての手指を握ったり開いたりする10回の屈曲運動の状態を測定した。
リハビリテーション支援システム10のグラブ12及びグラブ駆動装置13は、パワーアシストハンド(株式会社エルエーピー製)とし、センサ部14(ハードウェア)は、Leap Motion Controller(Leap Motion社製)とした。
ここで、指屈曲度θは、図6に示すように、末節骨の長手方向に延びる直線と基節骨の長手方向に延びる直線とがなす角αの補角である。従って、指屈曲度θは、手指を屈曲させると大きい値をとり、反対に手指を伸展させると小さい値をとることになる。
一方、リハビリテーション後においては、図5(A)及び図5(B)に示すように、右手(麻痺側)には、左手(健常側)の動きに対応したリズミカルな屈曲運動が発現した。
すなわち、リハビリテーション支援システム10を使用したリハビリテーションにより、麻痺側の手指の機能回復が促進されたことが明らかとなった。
(1)患者が、自発的な意思により、健常側の手指を動かそうとすると、大脳皮質運動野の対象筋支配領域が発火(活動)する。これにより対象とする手指の運動が生じる。
(2)健常側の手指の運動状態(状況)が、患者の感覚神経を通して大脳皮質感覚野や関連領域へフィードバックされる。
(3)麻痺側の手指に装着されたグラブ12が、非接触で検出された健常側の手指の運動の情報に基づき、この健常側の手指の運動に倣うように麻痺側の手指へ運動する力を加える。これにより生じる麻痺側の手指の運動状態は、麻痺側の手指の感覚として、健常側の手指と同期した情報として大脳へ向かう。
(4)この際の両手の運動状態は、直接目視されるか表示器18を介して目視され、患者の視覚を通して大脳内の各部位へとフィードバックされる。
(5)以上の状況が、患者が違和感を抱かない反応時間(時間Td以下)で実現される。
(6)その結果、健常側の手指の運動に起因する健常側の手指についての運動意思及び感覚情報に対して、麻痺側の手指の感覚情報(わずかに残る運動情報を含む)及び視覚による情報が加わり、最終的には、実際にはグラブ12の作用により麻痺側の手指が動いているにもかかわらず、麻痺側の手指が動いたという喜び(大脳への強い報酬)が患者に提示される状態が作られる。
すなわち、麻痺側の手指が自分の意思で動かせるという報酬を伴う錯覚した状態が患者の脳内に構成され、脳内ネットワークの新規構築又は再構成が促される。
リハビリテーション支援システムは、手指の機能回復に限定されるものではない。リハビリテーション支援システムが、グラブ12に代わる麻痺側の足指に装着可能なアシスト部と、麻痺側の足指に対応する健常部位(健常側の足指)の動きを検出するセンサ部と、健常部位の動きに基づいてアシスト部を制御する駆動制御部と、を備えることによって、麻痺側の足指の機能回復を促すことも可能である。
また、リハビリテーション支援システムが、グラブ12に代わる麻痺側の肢体(上肢又は下肢)に装着可能なアシスト部と、麻痺側の肢体に対応する健常部位(健常側の肢体)の動きを検出するセンサ部と、健常部位の動きに基づいてアシスト部を制御する駆動制御部と、を備えることによって、麻痺側の肢体の機能回復を促すことも可能である。
すわなわち、リハビリテーション支援システムは、麻痺部位を動かす力を加えるアシスト部と、麻痺部位に対応する健常部位の動きを検出するセンサ部と、センサ部によって検出された健常部位の動きに基づいて、アシスト部を制御する駆動制御部と、を備えることによって、麻痺部位の機能回復を促すことができる。
12 グラブ
13 グラブ駆動装置
14 センサ部
15 刺激装置
16 制御装置
18 表示器
20 スピーカ
122 ベローズ
124 チューブ
126 マニホールド
132 チューブ
161 画像処理部
162 駆動制御部
164 表示制御部
166 音響出力制御部
182U 上側の領域
182L 下側の領域
Claims (16)
- 身体の一部が麻痺した患者の麻痺部位を動かす力を加えるアシスト部と、
前記麻痺部位に対応する健常部位の動きを検出するセンサ部と、
前記センサ部によって検出された前記健常部位の動きに基づいて、前記アシスト部を制御する駆動制御部と、を備えたリハビリテーション支援システム。 - 請求項1記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記駆動制御部が、前記健常部位の動きに倣って前記麻痺部位が動くように、前記アシスト部を制御するリハビリテーション支援システム。 - 請求項2記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記麻痺部位の拘縮を和らげるための刺激を前記患者に加える刺激装置を更に備えるリハビリテーション支援システム。 - 請求項2記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記アシスト部が、空圧により動作するリハビリテーション支援システム。 - 請求項2記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記麻痺部位の拘縮を和らげるための刺激を前記患者に加える刺激装置を更に備え、
前記アシスト部が、空圧により動作するリハビリテーション支援システム。 - 請求項2~5のいずれか1項に記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記麻痺部位の動きを表す麻痺部位画像を表示器に表示する表示制御部を更に備えたリハビリテーション支援システム。 - 請求項2~5のいずれか1項に記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記センサ部が、前記麻痺部位の動きを検出し、
前記センサ部によって検出された前記麻痺部位の動きを表す麻痺部位画像を表示器に表示する表示制御部を更に備えたリハビリテーション支援システム。 - 請求項2~5のいずれか1項に記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記センサ部が、前記麻痺部位の動きを検出し、
前記センサ部によって検出された前記健常部位の動きを表す健常部位画像及び前記センサ部によって検出された前記麻痺部位の動きを表す麻痺部位画像を表示器に表示する表示制御部を更に備えたリハビリテーション支援システム。 - 請求項6~8のいずれか1項に記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記表示制御部が、前記麻痺部位画像を擬似的な指の三次元動画として表示するリハビリテーション支援システム。 - 請求項9記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記表示制御部が、前記麻痺部位画像の動きを前記麻痺部位の動きよりも大きくなるように表示するリハビリテーション支援システム。 - 請求項10記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記表示制御部が、前記麻痺部位の動きの大きさを示すグラフ又は数値を前記表示器に表示するリハビリテーション支援システム。 - 請求項11記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記表示制御部が、前記患者を励ますメッセージを前記表示器に表示するリハビリテーション支援システム。 - 請求項11記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記患者を励ます音声をスピーカを介して出力する音響出力制御部を更に備えるリハビリテーション支援システム。 - 請求項13記載のリハビリテーション支援システムにおいて、
前記音響出力制御部が、前記麻痺部位の動きに応じて特性が変化する音を出力するリハビリテーション支援システム。 - 身体の一部が麻痺した患者の麻痺部位を動かす力を加えるアシスト部と、前記麻痺部位に対応する健常部位の動きを検出するセンサ部と、を備えたリハビリテーション支援システムの制御装置を、
前記センサ部によって検出された前記健常部位の動きに基づいて、前記アシスト部を制御する制御手段として機能させるプログラム。 - 身体の一部が麻痺した患者の麻痺部位を動かす力を加えるアシスト部と、前記麻痺部位に対応する健常部位の動きを検出するセンサ部と、を備えたリハビリテーション支援システムの制御装置であって、
前記センサ部によって検出された前記健常部位の動きに基づいて、前記アシスト部を制御するリハビリテーション支援システムの制御装置。
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