JP2022168579A - 睡眠時無呼吸症候群の症状改善用マウスピース - Google Patents

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【課題】小型で、装着した場合に違和感が少ない、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するためのマウスピースを提供する。【解決手段】下顎歯列に被せる下顎用ピースの前面に、高さが少なくとも上顎歯列の先端部まで達し、左右は上顎歯列に沿って中心部から延伸する前壁部を一体的に形成し、患者がマウスピースを口腔内に装着したときに、前壁部の前面は唇内側に当接し背面は上顎歯列に当接することにより、下顎を上顎に対して前方移動させて固定されるようにする。【選択図】図1

Description

本発明は、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するためのマウスピースに関するものである。
睡眠時無呼吸症候群とは、主として睡眠中に上気道が狭くなったり一時的に閉塞することにより、無呼吸あるいは低呼吸状態になる疾患であり、良質な睡眠が妨げられるため、日中の眠気や集中力の低下などを招くと共に、睡眠中に体内の酸素量が不足しがちになることにより、心筋梗塞や脳卒中などの合併症を引き起こす可能性もある。
睡眠時無呼吸症候群の症状を改善する方法として、現在欧米や日本国内で最も普及している治療方法は、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)であり、その原理は、寝ている間の無呼吸を防ぐために、気道に空気を送り続けて気道を開存させておくものである。CPAP装置は、患者が顔にマスクを装着し、装置に接続されたエアチューブを経由して患者の気道に空気を強制的に送り込むことによって、症状を改善させるものである。一方、患者にとってはマスクを顔に装着する違和感があると共に、装置にはファンを駆動させるモータや電源部が必要であるため大掛かりな装置となり、コスト高にもなる。そのため、この治療方法から脱落する患者も少なくないと言われている。
一方、CPAP装置よりも違和感が少なく、かつ低コストで睡眠時無呼吸症候群の症状を改善する器具として、睡眠時に口腔に挿入される器具が知られている。例えば、下顎を上顎よりも前方に出すように固定させることにより上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぐ治療法に基づくもので、上顎と下顎をそのような位置に固定するためのマウスピースの例が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。これらに開示されるマウスピースは、上顎用マウスピースと下顎用マウスピースとで構成され、双方のマウスピースの咬合部の調整、あるいは双方のマウスピースを連結する部材による調整により、下顎を上顎よりも前方に移動させて固定させるようにしている。
このような口腔挿入器具は、CPAP装置よりは患者にかかる負担が少ないとはいえ、上下の顎の運動を大きく制限するストレスのために、睡眠中に無意識に外れる(あるいは外してしまう)リスクがあり、また器具全体が持ち運ぶのにやや大きめで、また作製コストもそれなりにかかるという問題点がある。
これに対し、特許文献3には、上顎側の歯列と唇との間に配置される上側ピースと、下顎側の歯列に装着される下側ピースと、上側ピースに対する下側ピースの相対位置を調節する調節部材とを備える、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いる小型のマウスピースが開示されている。この小型マウスピースでは、上下の歯列にマウスピースを装着するのではなく、下顎の歯列に被せるマウスピースに、上顎の歯列の外面のみを覆う板状部材である上側ピースを組み合わせることにより、器具の小型化を図っているが、器具の前方に突出する調節部材の存在により、器具全体として小型化の度合いが大きいとはいえない。また、上下両方の歯列にマウスピースを被せる必要がないとはいえ、板状の上側ピースを上顎前歯に当接させることにより、下顎を上顎に対して前方に固定するために、上顎前歯に掛かる負担が大きいと考えられ、装着性が必ずしも良好とはいえない可能性がある。
特許第3589456号 特許第6157583号 特許第6719265号
本願発明は、小型で、装着した場合に違和感が少ない、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するためのマウスピースを提供することを目的とする。
本発明による睡眠時無呼吸症候群の症状改善用マウスピースは、下顎歯列に被せる下顎用ピースの前面に、高さが少なくとも上顎歯列の先端部まで達し、左右は上顎歯列に沿って中心部から延伸する前壁部が一体的に形成され、患者がマウスピースを口腔内に装着したときに、前壁部の前面は唇内側に当接し背面は上顎歯列に当接することにより、下顎を上顎に対して前方移動させて固定する。これにより、上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぐことができる。
前記前壁部は、上顎歯列に沿って中心から少なくとも左右3番までの歯列にそって形成されていることがより望ましい。上顎歯列にかかる負担を軽減できるからである。
また、前記前壁部の背面及び底面は、上顎歯列及び上顎と下顎との咬み合せを型取りしてその上顎歯列の表面及び咬合面の印象が反映されるように成型されていると、より効果的である。上顎歯列が前壁部に当接したときの患者の違和感やストレスを軽減できるからである。
前記下顎用ピースは、下顎歯列の中心から少なくとも左右6番までの歯列に被せるようにすることが望ましい。睡眠時に簡単にはずれないようにすることができるからである。
本発明によるマウスピースは、以下のような効果を奏する。
・下顎に装着するだけで、上顎を固定しないため、違和感が少ない。
・下顎の運動を大きく制限しないためストレスが少ない。
・マウスピース全体が小さいため、持ち運びがしやすい。
・寝ている間に無意識に外れる(外してしまう)リスクが少ない。
・比較的安価で作製することが可能である。
実施の形態によるマウスピースの斜視図である。 実施の形態によるマウスピースの側面図である。 上顎模型、下顎模型及びバイトを示す斜視図である。 咬合器を使用してマウスピースの模型を造形する例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明による睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するためのマウスピースの実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態によるマウスピース1の斜視図、図2はマウスピース1のU字の中心を垂直に切断して示す断面図である。
図1及び図2に示すように、マウスピース1は、下顎歯列に嵌める略U字型の下顎用成型ピース2の前面上部に、高さが少なくとも上顎歯列の先端部まで達し、左右は中心から上顎歯列に沿って延伸する前壁部3が一体的に形成されている。前壁部3は、患者がマウスピース1を装着した場合に上顎歯列にかかる負担を考慮し(前壁部3の内側が接する歯数が少ないと、歯に掛かる負担が増えて痛みを感じる可能性がある)、上顎歯列の中心から少なくとも左右3番までの歯列に沿って形成されている。
下顎用成型ピース2は、下顎歯列に被せるために、型取りした下顎歯列の形状に基づいて歯列が嵌合する凹部2aが成型された中空体である。下顎用成型ピース2は、必ずしも下顎歯列全体に被せる必要はないが、少なくとも睡眠時に簡単にはずれないための十分の下顎歯列(例えば下顎歯列の中心から少なくとも左右6番までの歯列)に被せるのが望ましい。
患者がマウスピース1を口腔内に装着したときに、前壁部3の前面3aは唇内側に当接し、前壁部3の背面3bは上顎歯列に当接することにより、下顎を上顎に対して前壁部3の厚み分前方移動させることが出来る。前壁部3の背面3b及び底面3cは、上顎歯列及び上顎と下顎の咬み合せを型取りしてその上顎歯列の表面及び咬合面の印象が反映されるように成型されており、上顎歯列が前壁部3の背面3bに当接したときの患者の違和感やストレスを軽減している。
なお、マウスピース1の材質は、下顎の形状に適合し、適度な硬さと柔らかさを備えた樹脂、例えば、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ナイロン、シリコーン等が使用可能である。透明な材質で作製されることが多いが、必ずしも透明である必要はない。
次に、マウスピース1を作製する工程の一例について、図3及び図4を参照しながら説明する。
・上顎と下顎の印象(型)を採り、それを基に上顎模型5と、下顎模型6を作製する。
上顎模型5と下顎模型6を作製するためには、例えば印象材で上顎と下顎の型取りをして、型取りした型に石膏を流し込んで硬化後に取り出すことによって作製する。また、別の方法として、光学スキャナ(口腔内スキャナ)により印象データを三次元デジタルデータとして取得し、取得したデータに基づいて3Dプリンタで上顎模型5及び下顎模型6を出力することにより作製することが出来る。
・バイト(咬み合わせ)7を採る。
例えば、咬み合わせ取得用のワックス材を下顎歯列に沿って盛り、患者に下顎を前方に移動させた状態で、上顎と下顎を咬み合せることにより、ワックス材に咬み合わせの印象を取得する。咬み合せを取得するためには、ワックス材以外にもシリコン等を用いることも出来る。咬み合せを取得する場合に患者の下顎をどの程度前方移動させるかについては、まず、上下顎を安静にしていた状態と、下顎を最大まで前方に移動させた状態の間に存在する。ここで、下顎を極端に前に出しすぎれば痛みを伴うことになり、前方移動の程度があまりに少ないと無呼吸を改善させる効果を得ることが出来なくなる。睡眠時に下顎が下がり、気道を閉鎖する場合、5mm程度でも空間があれば呼吸は可能なので、5mm以上前方に移動させることにはなるが、患者の体格や口腔の状態等により一律には判断することはできないので、「気道に呼吸するのに十分な空間を確保できる程度」に下顎を前方移動させることになる。
・次に、咬合器を用いて咬み合わせを再現する。
咬合器とは、歯の模型を用いて、患者の歯の咬み合せ状態や顎の関節の動きを再現するための装置であり、図4は咬合器10を使用してマウスピースの模型を造形する例を示す図である。まず、咬合器10の上方に上顎模型5を取り付け、バイト7を上顎模型5に合わせて配置し、さらに下顎模型6をそのバイト7に合わせて配置し、下顎模型6を咬合器に取る付けるこれにより、患者が咬み合わせを取得した時の状態(すなわち、下顎を前方に移動させた咬合)を再現することができる。次に、バイト7を外し、模型上にマウスピースの形状をワックスで造形する。図4では、バイト7を外し、上顎模型5と下顎模型6との間隙及びこれらの前面にワックスを用いてマウスピースのワックス模型11を造形して完成した状態を示している。
・上記したワックスで造形されたマウスピースのワックス模型11からマウスピース1を作製する方法は、様々な方法があり、マウスピース1の材質によっても異なる。一例としては、出来上がったワックス模型11を埋没剤(石膏等)に埋め込み、その後熱湯につけてワックスを溶かし出し、その空間にマウスピース1の材料を流し込むことによって、マウスピース1を作製する。
・完成したマウスピース1を、患者が実際に装着し、患者の口腔内において調整を行う。
上記で説明したマウスピース1の作製工程は一部の例であって、他にも様々な方法を採り得るし、マウスピースの材質により異なる工程となる。一方、本願発明によるマウスピース1はその形状に特徴があり、その効果は、どのような工程により作製するかによって影響を受けるものではない。
本実施の形態によるマウスピース1は、下顎に装着するだけで、上顎を固定することがないため、下顎と上顎用のマウスピースを組み合わせた形態に比べて、装着した場合の違和感が少なく、また、下顎の運動を大きく制限しないために、装着中の患者のストレスを軽減することが出来る。そのため、睡眠中に無意識にマウスピースが外れる(あるいは、無意識に外してしまう)リスクを軽減することができる。
さらに、上顎歯列を配置する部分は、上顎歯列の印象を反映した形状に成型されているため、上顎歯列に対するストレスも軽減することができる。
さらに、マウスピース1は、装置全体の大きさが小さく、また比較的軽量であるので、持ち運びがしやすい。また、作製に要する材料も少なくて済み、比較的安価で作製することができる。
1 マウスピース
2 下顎用成型ピース
3 前壁部
5 上顎模型
6 下顎模型
7 バイト
10 咬合器
11 マウスピースのワックス模型

Claims (4)

  1. 下顎歯列に被せる下顎用ピースの前面に、高さが少なくとも上顎歯列の先端部まで達し、左右は上顎歯列に沿って中心部から延伸する前壁部が一体的に形成され、
    患者がマウスピースを口腔内に装着したときに、前壁部の前面は唇内側に当接し背面は上顎歯列に当接することにより、下顎を上顎に対して前方移動させて固定する、睡眠時無呼吸症候群の症状改善用マウスピース。
  2. 前記前壁部は、上顎歯列に沿って中心から少なくとも左右3番までの歯列にそって形成されている請求項1に記載の睡眠時無呼吸症候群の症状改善用マウスピース。
  3. 前記前壁部の背面及び底面は、上顎歯列及び上顎と下顎との咬み合せを型取りしてその上顎歯列の表面及び咬合面の印象が反映されるように成型されている請求項1に記載の睡眠時無呼吸症候群の症状改善用マウスピース。
  4. 前記下顎用ピースは、下顎歯列の中心から少なくとも左右6番までの歯列に被せる請求項1に記載の睡眠時無呼吸症候群の症状改善用マウスピース。
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