JP2022167698A - Peg修飾タンパク質若しくはpeg修飾疎水性物質、又はその製造方法 - Google Patents

Peg修飾タンパク質若しくはpeg修飾疎水性物質、又はその製造方法 Download PDF

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Koichi Shiraishi
昌幸 横山
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Abstract

【課題】免疫原性が低減されたPEG修飾タンパク質を提供する。【解決手段】下記式(1):TIFF2022167698000031.tif4293[式中、Pはタンパク質残基であり、Aは分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基であり、Lは分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基であり、Xは単結合であるか又は2価のアミノ酸残基又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基であり、Yは単結合であるか又は-CH2-CO-NH-*若しくは-CH2CH2-CO-NH-*であり、*は、タンパク質残基との結合点であり、nは1~100である。]で表わされるPEG修飾タンパク質。【選択図】なし

Description

本発明は、PEG修飾タンパク質又はPEG修飾疎水性物質、その製造方法、及びこれを含む医薬組成物、並びにタンパク質又は疎水性物質のPEG修飾方法に関する。
ポリエチレングリコール(PEG)は汎用性の高い高分子である。特に、医薬品としてのPEGはその水和効果によって、タンパク質や薬物キャリアの血中半減期の向上、タンパク質の免疫原性の低減等、医薬品にとってのPEG修飾はゴールデンスタンダードであり、非常に有効な手段であることが知られている。しかしながら、近年、PEGに対する抗体(PEG特異抗体)がPEG修飾医薬品によって産生されることが知られている(非特許文献1)。したがって、免疫原性が低減されたPEG修飾医薬品の開発が望まれている。
タンパク質製剤については、従来から、タンパク質のPEG修飾は、末端にN-ヒドロキシコハク酸イミド基(NHS基)を有するPEGとタンパク質のアミノ基とを反応させるNHS法が簡便な方法として一般に用いられている。しかしながら、そのような方法によりPEG修飾したウリカーゼやアスパラギナーゼに対してPEG特異抗体が産生されることが問題となっている(非特許文献1~3)。
R.P. Garay, et al., Expert Opin. Drug Deliv. (2012) 9(11):1319-1323 Lipsky et al., Arthritis Research & Therapy, 2014, 16:R60 Armstrong J.K. et al., Cancer (2007) 110 (1): 103-111
本発明は、免疫原性が低減されたPEG修飾タンパク質又はPEG修飾疎水性物質、その製造方法、及びこれを含む医薬組成物、並びにタンパク質又は疎水性物質のPEG修飾方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するための手段を種々検討した結果、PEG修飾タンパク質を式(1)で表わされる構造とすることにより、従来のPEG修飾タンパク質よりも免疫原性を低減することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]下記式(1):
Figure 2022167698000001
[式中、
Pは、タンパク質残基であり、
Aは、分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基であり、
Lは、分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基であり、
Xは、単結合であるか、又は、2価のアミノ酸残基、又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基であり、
Yは、単結合であるか、又は、-CH2-CO-NH-*若しくは-CH2CH2-CO-NH-*であり、
*は、タンパク質残基との結合点であり、
nは、1~100である。]
で表わされるPEG修飾タンパク質。
[2]Lが、炭素数1~10個のアルキレン基である、上記[1]に記載のPEG修飾タンパク質。
[3]Xが、単結合である、上記[1]又は[2]に記載のPEG修飾タンパク質。
[4]Xが、2価のペプチド残基であり、該2価のペプチド残基が、20~100個のアミノ酸からなる、上記[1]又は[2]に記載のPEG修飾タンパク質。
[5]2価のペプチド残基が、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸を含む、上記[4]に記載のPEG修飾タンパク質。
[6]下記式(1):
Figure 2022167698000002
[式中、
Pは、タンパク質残基であり、
Aは、分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基であり、
Lは、分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基であり、
Xは、単結合であるか、又は、2価のアミノ酸残基、又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基であり、
Yは、単結合であるか、又は、-CH2-CO-NH-*若しくは-CH2CH2-CO-NH-*であり、
*は、タンパク質残基との結合点であり、
nは、1~100である。]
で表わされるPEG修飾タンパク質の製造方法であって、
(a)下記式(2)
A-X-NH2 (2)
[式中、A、及びXは、上記と同じ意味である。]
で表わされる化合物を下記式(3):
Figure 2022167698000003
[式中、Lは、上記と同じ意味である。]
で表わされる化合物と溶媒中で反応させて下記式(4):
Figure 2022167698000004
[式中、A、L、及びXは、上記と同じ意味である。]
で表わされるPEGマレイミド誘導体を生成する工程;及び
(b)過剰量の式(4)で表わされるPEGマレイミド誘導体を、下記式(5):
Figure 2022167698000005
[式中、P、及びnは、上記と同じ意味である。]
で表わされるチオール基を有するタンパク質、又は下記式(6):
Figure 2022167698000006
[式中、P、及びnは、上記と同じ意味であり、
mは1又は2である。]
で表わされるチオール化タンパク質と溶媒中で反応させて、式(1)で表わされるPEG修飾タンパク質を得る工程を含む、上記方法。
[7]上記[6]に記載の工程(a)及び(b)を含む、タンパク質のPEG修飾方法。
[8]上記[1]~[5]のいずれかに記載のPEG修飾タンパク質を含む医薬組成物。
また本発明者らは、上記課題を解決するための手段を種々検討した結果、PEG修飾疎水性物質を下記式(7)で表わされる構造とすることにより、従来のPEG修飾疎水性物質よりも免疫原性を低減することができることを見出し、本発明を完成した。
下記式(7):
Figure 2022167698000007
[式中、
P’は、疎水性物質残基であり、
A’は、分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基であり、
L’は、分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基であり、
X’は、単結合であるか、又は、2価のアミノ酸残基、又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基であり、
Y’は、-CH2CH2-NH-Z-**であり、
Zは、疎水性物質由来の2価の基であり、
**は、疎水性物質残基との結合点であり、
n’は、1~100である。]
で表わされるPEG修飾疎水性物質。
本発明によるPEG修飾タンパク質又はPEG修飾疎水性物質は、従来のPEG修飾タンパク質又はPEG修飾疎水性物質よりも免疫原性が低減されている。
図1は、動物実験による抗PEG IgMの産生評価の結果を示すグラフである。 図2は、動物実験による抗PEG IgMの産生評価の結果を示すグラフである。
本発明は、下記式(1):
Figure 2022167698000008
[式中、
Pは、タンパク質残基であり、
Aは、分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基であり、
Lは、分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基であり、
Xは、単結合であるか、又は、2価のアミノ酸残基、又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基であり、
Yは、単結合であるか、又は、-CH2-CO-NH-*若しくは-CH2CH2-CO-NH-*であり、
*は、タンパク質残基との結合点であり、
nは、1~100である。]
で表わされるPEG修飾タンパク質に関する。本発明のPEG修飾タンパク質は、従来のPEG修飾タンパク質、特に汎用されているNHS法によりPEG修飾されたタンパク質よりも免疫原性が低減されている。本発明者らは、タンパク質とPEGとを上記特定の構造のリンカーで結合させることにより、免疫原性が低減することを見出した。PEG特異抗体はPEGによって誘導される抗体であるが、PEG自身には強く結合せず、PEGと結合したタンパク質と協働的に結合すると考えられる。理論に拘束されるものではないが、上記特定のリンカーによりタンパク質とPEGとの物理的距離を離すことで、PEG修飾タンパク質に対するPEG特異抗体の結合が妨げられると考えられる。
本明細書において、「ポリエチレングリコール残基」とは、-(CH2CH2O)a-[式中、aは正の数である。]で表わされるPEGの部分をいう。
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、アミノ酸から一部の原子や基が除かれた基を意味し、例えば、アミノ酸からカルボキシル基中のヒドロキシ基又はアミノ基中の水素原子若しくはアミノ基が除かれた基をいう。
本明細書において、「ペプチド残基」とは、ペプチドから一部の原子若しくは基が除かれた基を意味し、例えば、ペプチドからカルボキシル基中のヒドロキシ基又はアミノ基中の水素原子若しくはN末端のアミノ基が除かれた基をいう。
本明細書において、「タンパク質残基」とは、タンパク質から一部の原子若しくは基が除かれた基を意味する。
本明細書において、「疎水性物質」とは、脂肪酸からなる脂質、疎水性アミノ酸からなる化合物、及び疎水性高分子を意味する。また、本明細書において、「疎水性物質残基」とは、疎水性物質から一部の原子若しくは基が除かれた基を意味する。
本明細書において、「PEG修飾タンパク質」とは、タンパク質中の一部の原子若しくは基とポリエチレングリコール残基を含む基とが直接又は任意若しくは特定のリンカーを介して結合したタンパク質をいう。
本明細書において、「PEGマレイミド誘導体」とは、ポリエチレングリコール残基を含む基とマレイミド基とが直接又は任意若しくは特定のリンカーを介して結合した化合物をいう。
本明細書において、「チオール化タンパク質」とは、チオール基が導入されたタンパク質をいう。例えば、S-アセチルチオ酢酸N-スクシンイミジル(SATA)や3-(アセチルチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SATP)等のチオール付加試薬を用いてタンパク質中の第一級アミノ基にチオール基を導入したもの等が挙げられる。
本明細書において、「チオール基を有するタンパク質」には、対象となるタンパク質自体がチオール基を有する場合に加えて、チオール基が生成されたタンパク質も含まれる。後者としては、ジチオスレイトール(DTT)や2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)等の還元剤でタンパク質内のジスルフィド結合を切断することによりチオール基を生成させたもの等が挙げられる。
本明細書において、「免疫原性の低減」とは、対象のタンパク質自体、又は本発明のPEG修飾タンパク質以外のPEG修飾タンパク質、特に従来のNHS法により得られたPEG修飾タンパク質と比較して、本発明のPEG修飾タンパク質が低い免疫原性を示すことを意味する。ここで、免疫原性の低減は、抗PEG抗体産生能の低下、炎症に関する応答の抑制、例えば補体の活性化、アナフィラキシー応答等急性の応答により判断することができる。
式(1)中、Pは、タンパク質残基である。対象となるタンパク質には、ポリペプチド、酵素及びペプチド等も包含される。タンパク質は、限定するものではないが、生理学的活性又は薬理活性を有するものが好ましい。またタンパク質は、それ自体が免疫原性を示すもの、又はPEG修飾により免疫原性を示すものであることが好ましい。
対象となるタンパク質、ポリペプチド及びペプチドとしては、限定するものではないが、ヘモグロビン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子等の血液因子のような血清タンパク質;免疫グロブリン、サイトカイン、例えばインターロイキン、すなわちIL-1~IL-13、α-、β-及びγ-インターフェロン、コロニー刺激因子、例えば顆粒球コロニー刺激因子、血小板由来増殖因子及びホスホリパーゼ-活性化タンパク質(PLAP)が挙げられる。一般的な生物学的又は治療目的のその他のタンパク質としては、インスリン、植物タンパク質、例えばレクチン及びリシン、腫瘍壊死因子及び関連タンパク質、形質転換増殖因子等の増殖因子、例えばTGFα又はTGFβ及び上皮増殖因子、ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、色素ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノゲン活性化因子等が挙げられる。対象となる免疫グロブリンとしては、IgG、IgE、IgM、IgA、IgD及びそれらのフラグメントが挙げられる。
対象となる酵素としては、炭水化物特異的酵素、タンパク質分解酵素、オキシドリダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ及びリガーゼが挙げられる。具体的な非限定的な例は、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼ及びビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ及びそれらの機能性誘導体又はフラグメントを挙げられる。
式(1)中、Aは、分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基である。本明細書において、分子量は平均分子量を意味する。ポリエチレングリコール残基の分子量は、タンパク質に対してPEG修飾による水和効果等の所望の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、2000~20000であり、さらには5000~15000である。
上記ポリエチレングリコール残基を含む基は、これらに限定されるものではないが、例えば以下のものが挙げられる:
Figure 2022167698000009
[式中、
aは重合度であり;
Jは、水素又はキャッピング基である。]。上記キャッピング基は、-NH2、-SH、-CO2H、C1-6アルキル基、または他のPEG末端基(かかる基は当業者によって理解される)の任意の基から選択することができるが、水溶性のものが好ましい。
上記重合度(a)は、ポリエチレングリコール残基中の反復単位の数を表し、ポリエチレングリコール残基の分子量に依存し、20~1200であってよく、好ましくは40~500、さらに好ましくは100~350である。
式(1)中、Lは、分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基である。炭素数1~10個のアルキレン基としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、テトラメチレン、2-メチルテトラメチレン、2、3-ジメチルテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、及びデカメチレン基等が挙げられる。これらの中で、PEG修飾による水和効果等の所望の効果を維持しつつ、かつPEG修飾タンパク質に対するPEG特異抗体の結合を低減させるのに適切なタンパク質とPEGとの物理的距離を確保する観点から、炭素数1~7個のアルキレン基が好ましく、炭素数1~5個のアルキレン基がさらに好ましい。また、炭素数1~10個のアルキレン基は、その分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよく、分子鎖中のエーテル結合及び/又はアミド結合の個数及び位置は特に制限されない。
式(1)中、Xは、単結合であるか、又は、2価のアミノ酸残基、又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基である。Xが2価のアミノ酸残基又はアミノ酸からなる2価のペプチド残基である場合、アミノ酸は、任意の公知の天然Lアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、スレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、及び/又はこれらの組み合わせ)から選択することができるが、生体内物質との相互作用を回避し、またPEG修飾タンパク質の水溶性を担保する観点から、アニオン性のアスパラギン酸及びグルタミン酸が好ましい。同様の観点から、2価のペプチド残基は、アニオン性のアスパラギン酸及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸を含むことが好ましく、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸からなることがさらに好ましい。2価のペプチド残基がアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸以外の他のアミノ酸を含む場合、当該他のアミノ酸としては、グリシン等の水溶性の高いアミノ酸が好ましい。またアミノ酸は、天然アミノ酸の誘導体及び類似体、並びに当分野で公知の種々の非天然アミノ酸(D又はL)であってもよい。Xが2価のペプチド残基である場合、含まれるアミノ酸の数は、PEG修飾による水和効果等の所望の効果を維持しつつ、かつPEG修飾タンパク質に対するPEG特異抗体の結合を低減させるのに適切なタンパク質とPEGとの物理的距離を確保する観点から、特にL基との関係で適宜調整することができ、例えば20~100個、さらには30~60個とすることができる。
式(1)中、Yは、単結合であるか、又は、-CH2-CO-NH-*若しくは-CH2CH2-CO-NH-*であり、*は、タンパク質残基との結合点である。対象のタンパク質が、チオール基を有するタンパク質である場合、Yは単結合であり、式(1)中Pに隣接する硫黄原子は当該チオール基に由来する。対象のタンパク質が、チオール付加試薬としてS-アセチルチオ酢酸N-スクシンイミジル(SATA)を用いてチオール化したタンパク質である場合、Yは-CH2-CO-NH-*であり、式(1)中Pに隣接する窒素原子はタンパク質の第一級アミンに由来する。対象のタンパク質が、チオール付加試薬として3-(アセチルチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SATP)を用いてチオール化したタンパク質である場合、Yは-CH2CH2-CO-NH-*であり、式(1)中Pに隣接する窒素原子はタンパク質の第一級アミンに由来する。
式(1)中、nは、タンパク質に導入するポリエチレングリコール残基を含む基の数に相当し、1~100である。好ましいnの範囲は、対象とするタンパク質により異なり、当業者であれば適宜選択することができる。例えば、対象とするタンパク質がウリカーゼである場合、nは好ましくは1~50、さらに好ましくは1~20である。また対象とするタンパク質がアスパラギナーゼである場合、nは好ましくは1~50、さらに好ましくは1~20である。
本発明のPEG修飾タンパク質の製造方法、及びタンパク質のPEG修飾方法は、工程(a)として、
下記式(2)
A-X-NH2 (2)
[式中、A、及びXは、上記と同じ意味である。]
で表わされる化合物を下記式(3):
Figure 2022167698000010
[式中、Lは、上記と同じ意味である。]
で表わされる化合物と溶媒中で反応させて下記式(4):
Figure 2022167698000011
[式中、A、L、及びXは、上記と同じ意味である。]
で表わされるPEGマレイミド誘導体を生成する工程を含む。
上記工程(a)は、アミノ基とNHSエステル基とを反応させてアミド基を形成させるために一般的な条件を適宜採用して行うことができる。当業者であれば具体的な反応物に応じて適宜反応条件を決定することができる。例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒中、室温で行うことができる。式(2)及び(3)で表わされる化合物は、当業者にとって一般的な有機合成法を適宜採用して行うことができるが、市販のものを用いてもよい。例えば、式(2)のA-X-NH2で表わされる化合物においてXが2価のアミノ酸残基又は2価のペプチド残基である場合、Yokoyama, M et al., Bioconjugate Chem. 1992, 3, 295-301を参照して合成することもできる。この場合、アミノ酸残基やペプチド残基を構成するアミノ酸のアミノ基を式(2)のA-X-NH2で表わされる化合物の末端の-NH2基として利用することができる。また各置換基の好ましい態様は、本発明のPEG修飾タンパク質についての上記記載を引用するものとする。
本発明のPEG修飾タンパク質の製造方法、及びタンパク質のPEG修飾方法は、工程(b)として、
過剰量の式(4)で表わされるPEGマレイミド誘導体を、下記式(5):
Figure 2022167698000012
[式中、P、及びnは、上記と同じ意味である。]
で表わされるチオール基を有するタンパク質、又は下記式(6):
Figure 2022167698000013
[式中、P、及びnは、上記と同じ意味であり、
mは1又は2である。]
で表わされるチオール化タンパク質と溶媒中で反応させて、式(1)で表わされるPEG修飾タンパク質を得る工程を含む。得られたPEG修飾タンパク質は、公知の精製法を単独又は組み合わせて精製することができる。
上記工程(b)は、マレイミド基とタンパク質のSH基とを反応させてチオエーテル基を形成させるために一般的な条件を適宜採用して行うことができる。当業者であれば具体的な反応物に応じて適宜反応条件を決定することができる。例えば、用いる溶媒としては、pH及び塩濃度等について一般的な生理条件下の水溶液であれば特に限定されず、当業者であれば適宜選択することができる。また反応温度は室温であることが好ましい。式(6)で表わされるチオール化タンパク質は、タンパク質の第1級アミン、例えばリシンの第1級アミンに対してチオール付加試薬であるS-アセチルチオ酢酸N-スクシンイミジル(SATA)や3-(アセチルチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SATP)を用いる公知の方法にて合成することができる。また各置換基の好ましい態様は、本発明のPEG修飾タンパク質についての上記記載を引用するものとする。
本発明のPEG修飾タンパク質を含む医薬組成物の組成は、いくつかの要素を考慮することによって決定される。これらの要素には、限定はしないが、タンパク質の性質、タンパク質の濃度、所望するpH範囲、どのように医薬組成物を保存するか(例えば、温度)、医薬組成物を保存する期間、どのように製剤を患者に投与するか等が含まれる。
本発明の医薬組成物は、経口及び/又は非経口経路での投与も意図している。本発明のPEG修飾タンパク質を有効成分として含有する医薬組成物を経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠及びフィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤及びマイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤が挙げられる。また、本発明のPEG修飾タンパク質を有効成分として含有する医薬組成物を非経口投与する場合の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、坐剤、塗布剤又は貼付剤が挙げられる。
上記の剤形の製剤の調製は、製剤分野において一般的に用いられる公知の製造方法に従って行うことができる。この場合、必要に応じて、製剤分野において一般的に用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤等を含有させて製造することができる。
本発明の医薬組成物が適用され得る哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、げっ歯類(例、マウス、ラット、モルモット)、ペット(例、イヌ、ネコ、ウサギ)、使役動物又は家畜(例、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ)が挙げられるが、臨床応用という観点からはヒトが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[1. PEG修飾タンパク質の作製]
[参考例1]チオール化ウリカーゼ(式(6)で表わされる化合物に該当する)の調製
ウリカーゼへのS-アセチルチオ酢酸N-スクシンイミジル(SATA)結合反応によりチオール化ウリカーゼを調製した。ウリカーゼ(Merck製、商品名Uricase from Candida sp. recombinant, expressed in E. coli)(18.6 mg、0.572 μmol)を0.1M PBS(2.33 mL, 8.0mg/mL)に溶解し、SATA(2.9 mg、6.3 μmol)を加え、室温で1時間攪拌した。溶液を遠心限外ろ過(AmiconUltra4、分画分子量=10k)にて、ろ過洗浄し、過剰のSATAを除き、溶液を回収した。得た溶液に対して、0.5M NH2OH・HCl(150 μL)を加え、室温で1時間攪拌し、脱アセチル化を行った。溶液を遠心限外ろ過(AmiconUltra4、分画分子量=10k)にてろ過洗浄し、過剰のNH2OH・HClを除去し、溶液を回収した。得られたチオール化ウリカーゼを含む溶液を、Ellman’s試薬を用い、システインを標準物質として、ウリカーゼ中のSH基を定量し、ウリカーゼ単位当たり8個のSH基の導入を確認した。
[参考例2]PEG(分子量12k)-ポリ(ベンジルL-アスパラギン酸)(PEG-PBLA)の調製
以下のようにPEG-PBLAを合成した。
Figure 2022167698000014
[式中、aはポリエチレングリコール残基中の反復単位の数であり、分子量12000のポリエチレングリコール残基に対応し、bは50である。]
Shiraishi et al., Journal of Controlled Release, 165 (2013)183-90及びYokoyama, M et al., Bioconjugate Chem. 1992, 3, 295-301に記載の方法に従って合成した。具体的には、PEG-PBLAは脱水DMF中、35~40℃でPEG-NH2(油化産業株式会社製、商品名:SUNBRIGHT MEPA-12T)を開始剤とするβ-ベンジル-L-アスパルテートのN-カルボキシ無水物(BLA-NCA)の開環重合を行い、得られたDMF溶液を氷冷したジエチルエーテルに再沈殿して得た。BLA-NCAは58当量用いた。得られた白色粉末はCDCl3中にて1H NMR(400MHz)を測定し、PEGのOCH2CH2のピークとベンジル基のCH2とのピーク比によりBLAの重合数bを決定した。δ/ppm: 2.69 (CH2のH), 3.11 (CH2のH), 3.38 (末端-OCH3), 3.64 (PEGのOCH2CH2), 4.28 (CHのH), 5.05 (ベンジルのCH2), 7.26 (PhのH), 8.84 (NH)。
[参考例3]PEG-P(Asp)50-NH2(式(2)で表わされる化合物に該当する)の調製
以下のようにPEG-P(Asp)50-NH2を合成した。
Figure 2022167698000015
[式中、aはポリエチレングリコール残基中の反復単位の数であり、分子量12000のポリエチレングリコール残基に対応し、bは50である。]
Yokoyama, M et al., Bioconjugate Chem. 1992, 3, 295-301に記載の方法に従って合成した。具体的には、参考例2で調製したPEG-PBLAを0.5N NaOHに溶解させ脱保護し、6N 塩酸で中和した。溶液は透析膜を用いて水に対して透析することで脱離基成分を除去し、凍結乾燥を行い得た。得られた白色粉末はD2O+NaOD中にて1H NMR(400MHz)を測定し、PEGのOCH2CH2のアスパラギン酸基のCH2とのピーク比によりP(Asp)の重合数bを決定した。δ/ppm: 2.78 (CH2のH), 3.39 (末端-OCH3), 3.71 (PEGのOCH2CH2), 4.47, 4.67 (CHのH)。
[実施例1]
以下のPEG修飾ウリカーゼを合成した。
Figure 2022167698000016
[式中、aはポリエチレングリコール残基中の反復単位の数であり、分子量12000のポリエチレングリコール残基に対応し、Pはウリカーゼ残基である。]
(a)PEGマレイミド誘導体(式(4)で表わされる化合物に該当する)の合成
用いたスペーサー分子(式(3)で表わされる化合物に該当する)の化学構造を以下に示す。
Figure 2022167698000017
PEG-NH2(油化産業株式会社製、商品名:SUNBRIGHT MEPA-12T)(200.0 mg、0.0167 mmol)(式(2)で表わされる化合物に該当する)に対して50当量のスペーサー分子1(東京化成工業株式会社製)(188.9 mg、0.84 mmol)を脱水DMF(5.0mL)中で混合し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、透析膜(SpectraPor6 分画分子量=1,000)に反応溶液を移動し、DMSOに対して3回、メタノールに対して3回の溶媒交換を行い、透析を行った。透析終了後にメタノール溶液を回収し、メタノールを濃縮し、メタノール溶液から0℃のジエチルエーテル中に再沈殿を行った。白色沈殿を桐山ロート(5C)にて回収し、減圧乾燥した(収量166.8mg)。PEGに対するスペーサー導入率はCDCl3中の1H NMRにて同定し、導入率85%以上であることを確認した。得られた白色粉末はトリフルオロ酢酸加えたDMSO-d6中にて1H NMR(400MHz)を測定した。PEGの末端OCH3のピークとマレイミド基の2CHとのピーク比により導入率を決定した。δ/ppm: 2.29 (CH2), 3.21(末端-OCH3), 3.49 (PEGのOCH2CH2), 6.93(CHの2H)。
(b) PEGマレイミド誘導体とチオール化ウリカーゼとの反応によるPEG修飾ウリカーゼ(式(1)で表わされるPEG修飾タンパク質に該当する)の合成
参考例1にて作製したチオール化ウリカーゼを含む溶液と過剰量のPEGマレイミド誘導体をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)(600 μL)中で2時間反応させた。反応溶液はAmiconUltra4(分画分子量=100k)にて遠心限外ろ過を行い、HPLC(Toso G4000PWXL、溶離液=D-PBS、流速=1.0mL/分、検出=RI/UV@280nm)にて、過剰量のPEGマレイミド誘導体(保持時間=9.9分)が消失するまでD-PBSで洗浄し、0.45 μmろ過滅菌(PVDF)を行い、PEG修飾ウリカーゼを得た。また、参考例1と同様の方法にてSH基の定量し、SH基が存在しないことを確認した。得られたPEG修飾ウリカーゼ溶液の一部を凍結乾燥し、得られた白色個体の重量から溶液濃度を求めた。得られた白色個体をD2O中にて1H NMR(400MHz)を測定した。参考例2で開始剤に用いた同じ分子量のPEGを基準物質として、D2O中の検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のPEG濃度を求めた。δ/ppm: 3.36 (末端-OCH3), 3.72 (PEGのOCH2CH2)。PEGを標準物質として水溶液中のGPCとして、PEG修飾ウリカーゼ溶液の分子量を求めた。GPC溶出曲線は原料のウリカーゼ(分子量35,000)、及びPEG(分子量12,000)のピークはなく、単一のピークを示した。PEG修飾ウリカーゼ溶液の数平均分子量は181,000、重量平均分子量は238,000であった。PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度は、280nmのウリカーゼの吸収波長における検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度を決定した。これらにより溶液中におけるPEG濃度、ウリカーゼ濃度からウリカーゼ4量体辺りに修飾されたPEG数nを7.4と求めた。
[実施例2]
スペーサー分子1の代わりにスペーサー分子2を用いた以外は実施例1と同様の手順により以下のPEG修飾ウリカーゼを合成した。
Figure 2022167698000018
[式中、aはポリエチレングリコール残基中の反復単位の数であり、分子量12000のポリエチレングリコール残基に対応し、Pはウリカーゼ残基である。]
Figure 2022167698000019
PEG-NH2(油化産業株式会社製、商品名:SUNBRIGHT MEPA-12T)(330 mg、0.0276 mmol)(式(2)で表わされる化合物に該当する)に対して33当量のスペーサー分子2(東京化成工業株式会社製)(234.5 mg、0.93 mmol)を脱水DMF(5.5mL)中で混合し、室温で2.5時間攪拌した。反応終了後、実施例1と同様の手順により精製を行った(収量302.2mg)。PEGに対するスペーサー導入率はCDCl3中の1H NMR(400MHz)にて同定し、PEGの末端OCH3のピークとマレイミド基の2CHとのピーク比により導入率を決定した。δ/ppm: 2.29 (CH2), 3.38(末端-OCH3), 3.65 (PEGのOCH2CH2), 6.77 (CHの2H)。実施例1と同様の手順によりチオール化ウリカーゼとの反応を行った。得られたPEG修飾ウリカーゼ溶液の一部を凍結乾燥し、得られた白色個体の重量から溶液濃度を求めた。得られた白色個体をD2O中にて1H NMR(400MHz)を測定した。参考例2で開始剤に用いた同じ分子量のPEGを基準物質として、D2O中の検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のPEG濃度を求めた。δ/ppm: 3.39(末端-OCH3), 3.71 (PEGのOCH2CH2)。PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度は、280nmのウリカーゼの吸収波長における検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度を決定した。これらにより溶液中におけるPEG濃度、ウリカーゼ濃度からウリカーゼ4量体あたりに修飾されたPEG数nを7.5と求めた。
[実施例3]
スペーサー分子1の代わりにスペーサー分子3を用いた以外は実施例1と同様の手順により以下のPEG修飾ウリカーゼを得た。
Figure 2022167698000020
[式中、aはポリエチレングリコール残基中の反復単位の数であり、分子量12000のポリエチレングリコール残基に対応し、Pはウリカーゼ残基である。]
Figure 2022167698000021
PEG-NH2(油化産業株式会社製、商品名:SUNBRIGHT MEPA-12T)(470 mg、0.0392 mmol)(式(2)で表わされる化合物に該当する)に対して33当量のスペーサー分子3(東京化成工業株式会社製)(361.2 mg、1.29 mmol)を脱水DMF(7.8 mL)中で混合し、室温で2.5時間攪拌した。反応終了後、実施例1と同様の手順により精製を行った(収量411.4 mg)。PEGに対するスペーサー導入率はCDCl3中の1H NMR(400MHz)にて同定し、PEGの末端OCH3のピークとマレイミド基の2CHとのピーク比により導入率を決定し、90%以上の導入率であることを確認した。δ/ppm: 1.78 (CH2), 2.15 (CH2), 3.35 (CH2), 3.38 (末端-OCH3), 3.65 (PEGのOCH2CH2), 6.71 (CHの2H)。実施例1と同様の手順によりチオール化ウリカーゼとの反応を行った。得られたPEG修飾ウリカーゼ溶液の一部を凍結乾燥し、得られた白色個体の重量から溶液濃度を求めた。得られた白色個体をD2O中にて1H NMR(400MHz)を測定した。参考例2で開始剤に用いた同じ分子量のPEGを基準物質として、D2O中の検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のPEG濃度を求めた。δ/ppm: 3.39 (末端-OCH3), 3.71 (PEGのOCH2CH2)。 PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度は、280nmのウリカーゼの吸収波長における検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度を決定した。これらにより溶液中におけるPEG濃度、ウリカーゼ濃度からウリカーゼ4量体あたりに修飾されたPEG数nを7.5と求めた。
[実施例4]
PEG-NH2の代わりに参考例3にて調製したPEG-P(Asp)50-NH2を用い、スペーサー分子1と反応させる前にPEG-P(Asp)50-NH2に対してNEt3を脱水DMF中で加えたこと以外は実施例1と同様の手順によりPEG修飾ウリカーゼを得た。
Figure 2022167698000022
[式中、aはポリエチレングリコール残基中の反復単位の数であり、分子量12000のポリエチレングリコール残基に対応し、bは50であり、Pはウリカーゼ残基である。]
参考例3で表わされるPEG-P(Asp)50-NH2(709 mg、0.040 mmol)の脱水DMF(9.2 mL)に、別途調製したトリエチルアミン脱水DMF溶液(0.586M)を3.5mL(2.0 mmol)加え、スペーサー分子1(東京化成工業株式会社製)(911.5 mg、4.03 mmol)を加えて混合し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、実施例1と同様の手順により精製を行った(収量687.9 mg)。PEGに対するスペーサー導入率はDMSO-d6中の1H NMR(400MHz)にて同定し、PEGの末端OCH3のピークとマレイミド基の2CHとのピーク比により導入率を決定した。δ/ppm: 3.19 (末端-OCH3), 3.48 (PEGのOCH2CH2), 6.85 (CHの2H)。実施例1と同様の手順によりチオール化ウリカーゼとの反応を行った。得られたPEG修飾ウリカーゼ溶液の一部を凍結乾燥し、得られた白色個体の重量から溶液濃度を求めた。得られた白色個体をD2O中にて1H NMR(400MHz)を測定した。参考例2で開始剤に用いた同じ分子量のPEGを基準物質として、D2O中の検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のPEG濃度を求めた。δ/ppm: 3.39 (末端-OCH3), 3.71 (PEGのOCH2CH2)。PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度は、280nmのウリカーゼの吸収波長における検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度を決定した。これらにより溶液中におけるPEG濃度、ウリカーゼ濃度からウリカーゼ4量体あたりに修飾されたPEG数nを6.2と求めた。
[比較例1]
従来のPEG化法であるNHS法により以下のPEG修飾ウリカーゼを得た。
Figure 2022167698000023
[式中、aはポリエチレングリコール残基中の反復単位の数であり、Pはウリカーゼ残基である。]
ウリカーゼ(Merck製、商品名Uricase from Candida sp. recombinant, expressed in E. coli)をHEPES緩衝液(pH=8.5)に溶解し、そこにPEG末端がNHS活性エステル化されたPEG-NHS(油化産業株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME-100AS)を0℃で3時間反応させた。反応終了後、反応溶液はAmiconUltra4(分画分子量=100k)にて遠心限外ろ過を行い、HPLC(Toso G4000PWXL、溶離液=D-PBS、流速=1.0mL/分、検出=RI/UV@280nm)にて、過剰量のPEG-NHSが消失するまでD-PBSで洗浄し、0.45 μmろ過滅菌(PVDF)を行い、PEG修飾ウリカーゼを得た。得られたPEG-NHSより修飾されたPEGウリカーゼ溶液の一部を凍結乾燥し、得られた白色個体の重量から溶液濃度を求めた。得られた白色個体をD2O中にて1H NMR(400MHz)を測定した。実施例1の(b)と同様の方法にて、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のPEG濃度を求めた。δ/ppm: 3.36(末端-OCH3), 3.72 (PEGのOCH2CH2)。GPC溶出曲線は単一のピークを示し、PEG修飾ウリカーゼ溶液の数平均分子量は205,000、重量平均分子量は253,000であった。PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度は、280nmのウリカーゼの吸収波長における検量線を作成し、PEG修飾ウリカーゼ溶液中のウリカーゼ濃度を決定した。これらにより溶液中におけるPEG濃度、ウリカーゼ濃度からウリカーゼに修飾されたPEG数nを求めた。次に、PEGを標準物質として水溶液中のGPCとして、PEG修飾ウリカーゼ溶液の分子量を求めた。
[2. PEG修飾ウリカーゼの同定]
実施例1~4及び比較例1にて作製したPEG修飾ウリカーゼの同定結果を以下に示す。
Figure 2022167698000024
[3. PEG修飾ウリカーゼを用いた抗PEG IgM抗体の産生評価]
[3.1 実験手順]
実施例1~4及び比較例1にて調製したPEG修飾ウリカーゼについて、動物実験により抗PEG IgM抗体の産生評価を行った。動物実験及びELISAによる結合評価は以下の手順で行った。
(1)動物実験
マウスC57BL/6 (6週齢、オス)(n=3)の尾静脈より、各ウリカーゼ溶液2 単位/kg (=1.0 mg ウリカーゼ/kg)を投与した。1週間後にマウスの尾静脈をわずかにカットし、採血管を用いて35-45 μL採血した。得られた血液は遠心分離にて血清を回収した。参考例2のPEG-PBLAを陽性対照として用い、0.04μmolPEG/kgで投与した。
(2)ELISAによる結合評価
(2-1)PEGコートプレートは、Nuncマキシソープ上にPEG(分子量12k)-ポリ(ベンジルL-アスパラギン酸)(PEG-PBLA)のEtOH/H2O=1/1溶液を100 μL加え、4℃で一晩結合させた。
(2-2)PEGコートプレートを洗浄溶液(50 mM トリス緩衝食塩水、pH 8.0、0.05% Tween20)で3回洗浄し、100 Lのブロッキング(50 mM トリス緩衝食塩水、pH 8.0、1% BSA)溶液を加えて、1時間ブロッキングを行い、洗浄溶液で洗浄した。
(2-3)血清1 μLに対して100 μLの生食水で希釈した溶液を加え、PEGコートプレートに1時間結合させ、洗浄溶液で洗浄した。
(2-4)検出抗体として0.010 μg/mLの抗マウスIgM(HRPコンジュゲート)を用い、1時間結合させ、洗浄溶液で洗浄した。
(2-5)100 μL TMB溶液を加え、15分後に0.36MのH2SO4溶液で反応を止め、450nmの吸光度をプレートリーダーにて検出した。
[3.2 結果]
実施例1~3及び比較例1についての結果を図1に示す。図1中の対照としては生理食塩水を用いた。図1より、実施例1~3のPEG修飾ウリカーゼは、従来法であるNHS法により調製した比較例1のPEG修飾ウリカーゼに対し、抗PEG IgM産生を減少させることができ、免疫原性が低減されていることがわかる。
また、実施例1及び4、及び比較例1についての結果を図2に示す。図2中のPEG-PBLAは陽性対照として用いた。図2より、実施例1及び4のPEG修飾ウリカーゼは、従来法であるNHS法により調製した比較例1のPEG修飾ウリカーゼに対し、抗PEG IgM産生を減少させることができ、免疫原性が低減されていることがわかる。
本発明のPEG修飾タンパク質又はPEG修飾疎水性物質は、従来品と比較して免疫原性が低減されたPEG化医薬品を提供することができる。

Claims (8)

  1. 下記式(1):
    Figure 2022167698000025
    [式中、
    Pは、タンパク質残基であり、
    Aは、分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基であり、
    Lは、分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基であり、
    Xは、単結合であるか、又は、2価のアミノ酸残基、又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基であり、
    Yは、単結合であるか、又は、-CH2-CO-NH-*若しくは-CH2CH2-CO-NH-*であり、
    *は、タンパク質残基との結合点であり、
    nは、1~100である。]
    で表わされるPEG修飾タンパク質。
  2. Lが、炭素数1~10個のアルキレン基である、請求項1に記載のPEG修飾タンパク質。
  3. Xが、単結合である、請求項1又は2に記載のPEG修飾タンパク質。
  4. Xが、2価のペプチド残基であり、該2価のペプチド残基が、20~100個のアミノ酸からなる、請求項1又は2に記載のPEG修飾タンパク質。
  5. 2価のペプチド残基が、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸を含む、請求項4に記載のPEG修飾タンパク質。
  6. 下記式(1):
    Figure 2022167698000026
    [式中、
    Pは、タンパク質残基であり、
    Aは、分子量1000~50000のポリエチレングリコール残基を含む基であり、
    Lは、分子鎖中にエーテル結合及びアミド結合から選択される1以上を含んでいてもよい炭素数1~10個のアルキレン基であり、
    Xは、単結合であるか、又は、2価のアミノ酸残基、又は2~100個のアミノ酸からなる2価のペプチド残基であり、
    Yは、単結合であるか、又は、-CH2-CO-NH-*若しくは-CH2CH2-CO-NH-*であり、
    *は、タンパク質残基との結合点であり、
    nは、1~100である。]
    で表わされるPEG修飾タンパク質の製造方法であって、
    (a)下記式(2)
    A-X-NH2 (2)
    [式中、A、及びXは、上記と同じ意味である。]
    で表わされる化合物を下記式(3):
    Figure 2022167698000027
    [式中、Lは、上記と同じ意味である。]
    で表わされる化合物と溶媒中で反応させて下記式(4):
    Figure 2022167698000028
    [式中、A、L、及びXは、上記と同じ意味である。]
    で表わされるPEGマレイミド誘導体を生成する工程;及び
    (b)過剰量の式(4)で表わされるPEGマレイミド誘導体を、下記式(5):
    Figure 2022167698000029
    [式中、P、及びnは、上記と同じ意味である。]
    で表わされるチオール基を有するタンパク質、又は下記式(6):
    Figure 2022167698000030
    [式中、P、及びnは、上記と同じ意味であり、
    mは1又は2である。]
    で表わされるチオール化タンパク質と溶媒中で反応させて、式(1)で表わされるPEG修飾タンパク質を得る工程を含む、上記方法。
  7. 請求項6に記載の工程(a)及び(b)を含む、タンパク質のPEG修飾方法。
  8. 請求項1~5のいずれか一項に記載のPEG修飾タンパク質を含む医薬組成物。
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