JP2022164569A - コイル - Google Patents

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JP2022164569A
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英樹 會澤
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Abstract

【課題】カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性に優れたカーボンナノチューブ被覆線材のコイルを提供する。【解決手段】複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ素線の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する樹脂被覆層と、を備えたカーボンナノチューブ被覆線材が、巻回されることによって形成されたコイルであり、前記樹脂被覆層の樹脂のヤング率が、0.40GPa以上3.0GPa以下、前記樹脂被覆層の樹脂の硬度が、50以上100以下、巻き回しの張力が、CNT線材の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×D2gf以上30000×D2gf以下である、コイル。【選択図】図2

Description

本発明は、カーボンナノチューブ被覆線材が、巻回されることによって形成されたコイルに関し、特に、部材の周面に沿って巻回されることで、電気抵抗が低下するカーボンナノチューブ被覆線材のコイルに関する。
高出力の電力を通電するモータ等の各種の電動機器には、コイルが利用されている。コイルは、金属線等の導体線を有する巻線を螺旋状に巻回することによって作製される。電動機器の出力向上や軽量化の点から、コイルには、導電性向上や軽量化が要求されることがある。また、電動機器の出力などの特性を製品寿命の間、一定に保つために、導電性の高い状態を長期間維持することが要求されることがある。
また、コイルは、電動機器の小型化や出力向上の点から、隣り合うターン間の間隔を狭くして巻回することが要求されることがある。しかし、巻回される導体線間が近接配置されると、導体線に渦電流が生じて渦電流量が増大し、結果、導体線に生じる渦電流による電流損失が大きくなり、コイルの電流損失が増大してしまう。そこで、導体線と、導体線の外周に磁性材料によって形成された磁性体層とを備えるコイル用線材により、渦電流を低減して電流損失を抑制することが提案されている(特許文献1)。
一方で、カーボンナノチューブは、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への応用が期待されている。例えば、カーボンナノチューブは、六角形格子の網目構造を有する筒状体の単層、または略同軸で配された多層で構成される3次元網目構造体であり、軽量であると共に、導電性、熱伝導性、機械的強度等の諸特性に優れる。そこで、金属の代替として、カーボンナノチューブを使用することが検討されている。金属の代替としてカーボンナノチューブを使用するにあたり、カーボンナノチューブの導電性をさらに向上させることも要求されている。
カーボンナノチューブの導電性をさらに向上させるために、隣接したカーボンナノチューブ線材の電気的接合点に、金属等からなる導電性堆積物を形成することで電気抵抗を低減したカーボンナノチューブ材料が提案され、このようなカーボンナノチューブ材料は広汎な用途に適用できることが開示されている(特許文献2)。
しかし、コイルには導電性向上が要求されることがあるところ、特許文献2では、広汎な用途に対応するためにカーボンナノチューブ材料の電気抵抗を低減させる発明であり、カーボンナノチューブ材料をコイルの形態にすると、電気抵抗が十分に低減しないという問題があった。従って、特許文献2では、例えば、カーボンナノチューブ材料の巻線をモータのコイルとして使用すると、モータの出力が十分には向上しない場合があった。特に、従来のカーボンナノチューブ線材では、曲率半径の小さい状態で巻回されるインホイールモータ等のコイルに使用されても、カーボンナノチューブ線材の電気抵抗が十分に低減しない点で改善の必要性があった。
特開2017-37896号公報 特表2015-523944号公報
上記事情に鑑み、本発明は、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性に優れたカーボンナノチューブ被覆線材のコイルを提供することを目的とする。
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ素線の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する樹脂被覆層と、を備えたカーボンナノチューブ被覆線材が、巻回されることによって形成されたコイルであり、
前記樹脂被覆層の樹脂のヤング率が、0.40GPa以上3.0GPa以下、
前記樹脂被覆層の樹脂の硬度が、50以上100以下、
巻き回しの張力が、CNT線材の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下である、コイル。
[2]複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ素線の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する樹脂被覆層と、を備えたカーボンナノチューブ被覆線材が、巻回されることによって形成されたコイルであり、
前記樹脂被覆層の樹脂のヤング率が、0.40GPa以上3.0GPa以下、
前記樹脂被覆層の樹脂の硬度が、50以上100以下、
前記カーボンナノチューブ被覆線材の径方向の断面における、長径を短径で除したアスペクト比が、1.15より大きく1.50より小さい、コイル。
[3]前記カーボンナノチューブ被覆線材の径方向の断面における、長径を短径で除したアスペクト比が、1.15より大きく1.50より小さい[1]に記載のコイル。
[4]前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径に対する樹脂被覆層の平均厚さの割合が、0.10%以上10%以下である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のコイル。
[5]前記カーボンナノチューブ被覆線材を巻回する部材の直径が、5.0mm以上35mm以下である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のコイル。
[6]前記カーボンナノチューブ線材の撚り数が、50T/m以上600T/m以下である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のコイル。
[7]前記カーボンナノチューブ線材の撚り数が、50T/m以上500T/m以下である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のコイル。
[8]前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径に対する樹脂被覆層の平均厚さの割合が、0.10%以上8.0%以下である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のコイル。
[9]前記樹脂被覆層の樹脂の硬度が、50以上80以下である[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のコイル。
[10]前記カーボンナノチューブ線材を構成する前記カーボンナノチューブ素線の本数が、5本以上1000本以下である[1]乃至[9]のいずれか1つに記載のコイル。
[11][1]乃至[10]のいずれか1つに記載のコイルを用いた電気モータ用コイル。
本明細書中、「樹脂の硬度」とは、ロックウェル硬度(Rスケール:RHR)を意味する。
本発明のコイルの態様によれば、樹脂被覆層の樹脂のヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下、樹脂被覆層の樹脂の硬度が50以上100以下、且つ巻き回しの張力がCNT線材の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下であることにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性に優れたカーボンナノチューブ被覆線材のコイルを得ることができる。
また、本発明のコイルの態様によれば、樹脂被覆層の樹脂のヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下、樹脂被覆層の樹脂の硬度が50以上100以下、且つカーボンナ
ノチューブ被覆線材の径方向の断面における長径を短径で除したアスペクト比が、1.15より大きく1.50より小さいことにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性に優れたカーボンナノチューブ被覆線材のコイルを得ることができる。
本発明のコイルの態様によれば、カーボンナノチューブ被覆線材を巻回する部材の直径が、5.0mm以上35mm以下であることにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによって、カーボンナノチューブ被覆線材の電気抵抗がさらに確実に低減する。
本発明のコイルの態様によれば、カーボンナノチューブ線材の撚り数が、50T/m以上600T/m以下であることにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによって、カーボンナノチューブ被覆線材の電気抵抗がさらに確実に低減する。
本発明のコイルの態様によれば、カーボンナノチューブ線材の撚り数が、50T/m以上500T/m以下であることにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性がさらに向上する。
本発明のコイルの態様によれば、カーボンナノチューブ線材の円相当直径に対する樹脂被覆層の平均厚さの割合が0.10%以上8.0%以下であることにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性がさらに向上する。
本発明のコイルの態様によれば、樹脂被覆層の樹脂の硬度が50以上80以下であることにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性がさらに向上する。
本発明のコイルの態様によれば、カーボンナノチューブ線材を構成するカーボンナノチューブ素線の本数が5本以上1000本以下であることにより、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによって、カーボンナノチューブ被覆線材の電気抵抗がさらに確実に低減する。
本発明のコイルとして使用されるカーボンナノチューブ被覆線材の、巻回される前の状態を説明する径方向の断面図である。 カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによって形成された本発明のコイルを説明する径方向の断面図である。
以下に、本発明の実施形態に係る、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによって形成されたコイルについて、図面を用いながら説明する。なお、図1は、本発明のコイルに使用されるカーボンナノチューブ被覆線材の、巻回される前の状態を説明する径方向の断面図である。図2は、カーボンナノチューブ被覆線材が巻回されることによって形成された本発明のコイルを説明する径方向の断面図である。
図1、2に示すように、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ被覆電線(以下、「CNT被覆電線」ということがある。)1は、カーボンナノチューブ線材(以下、「CNT線材」ということがある。)10の外周面に樹脂被覆層21が被覆された構成となっている。すなわち、CNT線材10の長手方向に沿って樹脂被覆層21が被覆されている。CNT被覆電線1では、CNT線材10の外周面全体が、樹脂被覆層21によって被覆されている。また、CNT線材10は、複数本のカーボンナノチューブ素線(以下、「CNT素線」ということがある。)12を撚り合わせた撚り線となっている。
撚り線の形態となっているCNT線材10においては、撚り線を構成するCNT素線12は、長手方向に高い導電性を示し、CNT素線12間は、CNT素線12の長手方向の導電性と比較して導電性が低い。CNT線材10では、CNT素線12は、隣接する他のCNT素線12と樹脂被覆層21を介さずに接触している。CNT線材10を撚り線の形態とすることで、CNT線材10が太線化されている。
CNT素線12は、1層または2層以上の多層構造を有する複数のカーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)で構成されるカーボンナノチューブ集合体(以下、「CNT集合体」ということがある。)の単数から、または複数のCNT集合体が束ねられて形成されている。ここで、CNT線材とはCNTの割合が90質量%以上のCNT線材を意味する。なお、CNT線材におけるCNT割合の算定においては、メッキとドーパントは除く。CNT集合体は線状となっており、CNT集合体の長手方向が、CNT線材10及びCNT素線12の長手方向を形成している。CNT線材10における複数のCNT素線12、12、12・・・は、CNT線材10の長手方向の中心軸に沿って所定の撚り数にて撚り合わされている。従って、CNT線材10における複数のCNT素線12、12、12・・・は、配向している。
CNT素線12は、1層または2層以上の多層構造を有する長尺なCNTの束である。CNTの長手方向が、CNT線材10及びCNT素線12の長手方向を形成している。CNT素線12における複数のCNTは、その長軸方向がほぼ揃って配されている。従って、CNT素線12における複数のCNTは、配向している。CNT素線12の円相当直径は、例えば、10μm以上1000μm以下であり、このうち、CNT集合体の円相当直径は、例えば、20nm以上200nm以下である。また、CNTの最外層の幅寸法は、例えば、1.0nm以上5.0nm以下である。
コイル100として使用されるCNT被覆線材1において、CNT素線12を構成するCNTは、単層構造または複層構造を有する筒状体であり、それぞれ、SWNT(single-walled nanotube)、MWNT(multi-walled nanotube)と呼ばれる。CNT素線12に優れた導電性を付与するためには、CNT素線12を構成するCNTが、2層構造であることが好ましい。2層構造のCNTは、高グラファイト構造を有していることから、導電性が高いためである。一方で、CNT素線12には、3層構造以上の層構造を有するCNTや単層構造の層構造を有するCNTも含まれていてもよく、CNT素線12は、3層構造以上の層構造を有するCNTまたは単層構造の層構造を有するCNTから形成されていてもよい。
CNT素線12を構成するCNTにおいて、2層構造を有するCNTでは、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体が略同軸で配された3次元網目構造体となっており、DWNT(Double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子が配された六員環であり、他の六員環と隣接してこれらが連続的に結合している。
CNT素線12を構成するCNTの性質は、上記筒状体のカイラリティに依存する。カイラリティは、アームチェア型、ジグザグ型及びカイラル型に大別され、アームチェア型は金属性、ジグザグ型は半導体性および半金属性、カイラル型は半導体性および半金属性の挙動を示す。従って、CNTの導電性は、筒状体がいずれのカイラリティを有するかによっても大きく異なる。コイル100に使用されるCNT被覆線材1を構成するCNT素線12では、導電性をさらに向上させる点から、金属性の挙動を示すアームチェア型のCNTの割合を増大させることが好ましい。
次に、CNT線材10におけるCNT及びCNT素線12の配向性について説明する。小角X線散乱(SAXS)を用いて、CNT線材10についてX線散乱像の情報を分析すると、CNT線材10において、複数のCNT及び複数のCNT素線12、12、12・・・が良好な配向性を有していることが分かる。例えば、複数のCNT及び複数のCNT素線12、12、12・・・の配向性を示す小角X線散乱によるアジマスプロットにおけるアジマス角の半値幅Δθは、60°以下が好ましく、50°以下が特に好ましい。このように、複数のCNT及び複数のCNT素線12、12、12・・・が良好な配向性を有しているので、CNT線材10は、CNT及びCNT素線12の長手方向に沿って優れた導電性を有している。すなわち、CNT素線12が長手方向に配向性を有することで、CNT素線12は径方向の導電性と比較して長手方向の導電性に優れている特性を有する。従って、複数のCNT素線12、12、12・・・が撚り合わされたCNT線材10は、CNT線材10の長手方向の導電性に優れ、撚り合わされたCNT素線12間の導電性は長手方向の導電性と比較して小さい。上記から、コイル100として使用されるCNT被覆線材1では、コイル100の形態においてCNT線材10の導電性を向上させるためには、巻回されたCNT被覆線材1がCNT線材10の長手方向の導電性だけではなく、撚り合わされたCNT素線12とCNT素線12の間の導電性も向上している必要がある。
なお、コイル100として使用されるCNT被覆線材1のCNT線材10は径方向よりも長手方向に優れた導電性を発揮するので、CNT線材10では、それぞれのCNT素線12に絶縁被覆層を被覆する必要がない。よって、CNT線材10では、CNT素線12は、隣接する他のCNT素線12と直接接触した態様で撚り合わせることができる。また、CNT線材10では、各CNT素線12に絶縁被覆層を形成する必要がないので、製造コストを低減できる。
図1に示すように、本発明では、コイル100として使用されるCNT被覆線材1は、径方向の導電性と比較して長手方向の導電性に優れている特性を有するCNT素線12の複数が撚り合わされてなるCNT線材10と、CNT線材10を被覆する樹脂被覆層21と、を備えている。CNT被覆線材1は、巻回される前の径方向の断面形状は略円形となっている。また、図2に示すように、コイル100は、上記CNT被覆線材1が部材200に巻回されることによって形成されている。CNT被覆線材1は、部材200の外周面に巻回される際に応力を受けて、略円形から楕円形状等に変形する。
本発明の第1の実施形態のコイル100では、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下、樹脂被覆層21の樹脂の硬度が50以上100以下、且つ巻き回しの張力がCNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下となっている。CNT被覆線材1のコイル100が上記各構成を有することにより、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形が適度な範囲に制御されて、撚り合わされたCNT素線12が圧縮され、結果、CNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上する。CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することで、CNT素線12とCNT素線12の間の電気抵抗が低減するので、電気抵抗の低減特性に優れたコイル100を得ることができる。
このように、CNT素線12とCNT素線12の間の電気抵抗が低減することで、撚り合わされたCNT素線12間の導電性も向上するので、コイル100の形態においてCNT線材10の導電性が向上する。
本発明の第1の実施形態のコイル100では、上記の通り、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下となっている。樹脂被覆層21の樹脂のヤング率が0.40GPaよりも小さい場合、巻回されたCNT線材10を把持できず、樹脂被覆層21内でCNT素線12がばらけてしまう可能性がある。また、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率が3.0GPaよりも大きい場合、巻回されたCNT線材10を適度に押しつぶすことができず、CNT素線12同士の接触性を向上することができない。一方で、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下となっていることにより、CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12が圧縮されてCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することに寄与する。
樹脂被覆層21の樹脂のヤング率は0.40GPa以上3.0GPa以下の範囲であれば、特に限定されないが、その下限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形を適度に抑制して撚り合わされたCNT素線12間の優れた接触性を確実に維持する点から、0.50GPaが好ましく、0.60GPaが特に好ましい。一方で、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率の上限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形を適度に円滑化して撚り合わされたCNT素線12間の接触性を確実に向上させる点から、2.5GPaが好ましく、2.0GPaがより好ましく、1.5GPaが特に好ましい。
本発明の第1の実施形態のコイル100では、上記の通り、樹脂被覆層21の樹脂の硬度が50以上100以下となっている。樹脂被覆層21の樹脂の硬度が50よりも小さい場合、巻回されたCNT線材10を把持できず、樹脂被覆層21内でCNT素線12がばらけてしまう可能性がある。また、樹脂被覆層21の樹脂の硬度が100よりも大きい場合、巻回されたCNT線材10を適度に押しつぶすことができず、CNT素線12同士の接触性を向上することができない。一方で、樹脂被覆層21の樹脂の硬度が50以上100以下となっていることにより、CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12が圧縮されてCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することに寄与する。
樹脂被覆層21の樹脂の硬度は50以上100以下の範囲であれば、特に限定されないが、その下限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形を適度に抑制して撚り合わされたCNT素線12間の優れた接触性を確実に維持する点から、55が好ましく、60が特に好ましい。一方で、樹脂被覆層21の樹脂の硬度の上限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形を適度に円滑化して撚り合わされたCNT素線12間の接触性を確実に向上させて、コイル100の電気抵抗の低減特性をさらに向上させる点から、90が好ましく、80が特に好ましい。
ヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下であり、硬度が50以上100以下である樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル重合体等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、樹脂被覆層21は、1層としてもよく、これに代えて、2層以上の多層構造としてもよい。
本発明の第1の実施形態のコイル100では、上記の通り、巻き回しの張力がCNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下となっている。巻き回しの張力がCNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下となっていることにより、CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12が圧縮されてCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することに寄与する。
巻き回しの張力はCNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下の範囲であれば、特に限定されないが、その下限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形量をより適度にして撚り合わされたCNT素線12間の接触性を確実に向上させる点から、CNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、6000×Dgfが好ましく、CNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、7000×Dgfが特に好ましい。一方で、巻き回しの張力の上限値は、コイル巻き工程における断線を防ぐ点から、CNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、27000×Dgfが好ましく、CNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、25000×Dgfがより好ましく、CNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、20000×Dgfが特に好ましい。
次に、本発明の第2の実施形態のコイル100について、図1、2を用いながら説明する。本発明の第2の実施形態のコイル100では、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下、樹脂被覆層21の樹脂の硬度が50以上100以下、且つCNT被覆線材1の径方向の断面における、長径L1を短径L2で除したアスペクト比(L1/L2)が、1.15より大きく1.50より小さくなっている。すなわち、第2の実施形態のコイル100では、第1の実施形態のコイル100の巻き回しの張力がCNT線材10の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下であることに代えて、CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比が1.15より大きく1.50より小さくなっている。CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比は、CNT被覆線材1が部材200に巻回されて略円形から楕円形状等へ変形する際の変形の程度を示す指標である。
第2の実施形態のコイル100でも、CNT被覆線材1のコイル100が上記各構成を有することにより、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形が適度な範囲に制御されて、撚り合わされたCNT素線12が圧縮され、結果、CNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上する。CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することで、CNT素線12とCNT素線12の間の電気抵抗が低減するので、電気抵抗の低減特性に優れたコイル100を得ることができる。
本発明の第2の実施形態のコイル100では、上記の通り、CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比が1.15より大きく1.50より小さくなっていることにより、CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12が圧縮されてCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することに寄与する。
CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比は1.15より大きく1.50より小さい範囲であれば、特に限定されないが、その下限値は、撚り合わされたCNT素線12間の接触性を確実に向上させる傾向が得られる点から、1.17が好ましく、1.20がより好ましく、1.22が特に好ましい。一方で、CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比の上限値は、CNT被覆線材1の径方向の変形が適度に抑制されて撚り合わされたCNT素線12間の優れた接触性を確実に維持する傾向が得られる点から、1.45が好ましく、1.40が特に好ましい。
また、第1の実施形態のコイル100でも、第2の実施形態のコイル100と同様に、CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比が1.15より大きく1.50より小さくなっていてもよい。第1の実施形態のコイル100でも、CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比が1.15より大きく1.50より小さくなっていることにより、CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12が圧縮されてCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することに寄与する。
上記各実施形態のコイル100では、樹脂被覆層21の平均厚さ、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率、樹脂被覆層21の樹脂の硬度、巻き回しの張力或いは、樹脂被覆層21の平均厚さ、樹脂被覆層21の樹脂のヤング率、樹脂被覆層21の樹脂の硬度、CNT被覆線材1の径方向の断面におけるアスペクト比を上記規定の範囲とすることにより、弾性力のあるCNT素線12が復元力(徐々にCNT素線12同士の接触面積が減少し、コイル100の断面が略真円に戻ってしまうことを指す)を発揮することを防止する効果がある。したがって、本発明は長期間に渡ってCNT素線12同士の接触性を維持できるため、導電性に優れたコイル100を提供することが可能である。
本発明の第1の実施形態のコイル100及び第2の実施形態のコイル100では、CNT線材10の円相当直径に対する樹脂被覆層21の平均厚さの割合は、樹脂被覆層21のヤング率と硬度に合わせて適宜調節されるが、0.10%以上10%以下であることが好ましい。CNT線材10の円相当直径に対する樹脂被覆層21の平均厚さの割合が0.10%以上10%以下となっていることにより、CNT被覆線材1が巻回されることにより撚り合わされたCNT素線12が圧縮されてCNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することに寄与する。
図1に示すように、コイル100として使用されるCNT被覆線材1は、巻回される前の径方向の断面形状は略円形であり、コイル100における「CNT線材10の円相当直径に対する樹脂被覆層21の平均厚さの割合」の「CNT線材10の円相当直径」とは、巻回される前のCNT線材10の円相当直径に対応する。
CNT線材10の円相当直径に対する樹脂被覆層21の平均厚さの割合は、0.10%以上10%以下の範囲が好ましいが、その下限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形を適度に抑制して撚り合わされたCNT素線12間の優れた接触性を確実に維持する点から、0.5%がより好ましく、1.0%がさらに好ましく、2.0%が特に好ましい。一方で、CNT線材10の円相当直径に対する樹脂被覆層21の平均厚さの割合の上限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形を適度に円滑化して撚り合わされたCNT素線12間の接触性を確実に向上させて、コイル100の電気抵抗の低減特性をさらに向上させる点から、8.0%がより好ましく、7.0%が特に好ましい。
また、CNT線材10の円相当直径に対する樹脂被覆層21の平均厚さの割合は、樹脂被覆層21のヤング率や硬度によって好ましい範囲に調節することができる。例えば、ヤング率及び硬度が小さい樹脂被覆層21の場合は樹脂被覆層21の平均厚さが厚くても、十分にCNT素線12の接触性を維持することができる。また、ヤング率及び硬度が大きい樹脂被覆層21の場合は樹脂被覆層21の平均厚さを薄くすることで、CNT被覆線材1に放熱性の効果が得られる。
上記各実施形態のコイル100では、CNT被覆線材1を巻回する部材200の直径は、特に限定されないが、CNT被覆線材1が部材200に巻回されることによって、CNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上し、CNT被覆線材1の電気抵抗がさらに確実に低減する点から、5.0mm以上35mm以下が好ましく、5.0mm以上30mm以下がより好ましく、5.0mm以上25mm以下が特に好ましい。
コイル100が電気モータ用コイルに使用される場合には、部材200としては、例えば、回転子の回転軸が貫通されている鉄心のスロットが挙げられる。CNT被覆線材1が巻回されて形成されたコイル100をモータのコイルとして使用すると、コイルが軽量化されつつ、CNT素線12とCNT素線12の間の電気抵抗が低減するので、モータの出力が向上する。特に、CNT被覆線材1が巻回されて形成されたコイル100では、曲率半径の小さい状態で巻回されるインホイールモータのコイルに使用されても、CNT被覆線材1の電気抵抗が十分に低減して、インホイールモータの出力が向上する。
上記各実施形態のコイル100では、CNT線材10の撚り数(T/m)は、特に限定されないが、その下限値は、CNT素線12とCNT素線12の間の接触性が向上することに確実に寄与する点から、50T/mが好ましく、70T/mが特に好ましい。一方で、CNT線材10の撚り数(T/m)の上限値は、CNT被覆線材1が巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形を適度に円滑化して撚り合わされたCNT素線12間の接触性を確実に向上させる点から、600T/mが好ましく、500T/mがより好ましく、400T/mが特に好ましい。すなわち、CNT線材10の撚り数が50T/m以上600T/m以下であることにより、CNT被覆線材1が巻回されることによってCNT被覆線材1の電気抵抗がさらに確実に低減し、CNT線材10の撚り数が50T/m以上500T/m以下であることにより、CNT被覆線材1が巻回されることによる電気抵抗の低減特性がさらに向上する。
また、CNT線材10の撚り数(T/m)が50T/m以上600T/m以下であることにより、撚り線の形成と巻回の容易さを得ることができる。
上記各実施形態のコイル100では、CNT線材10を構成するCNT素線12の本数は、複数本であれば、特に限定されないが、CNT被覆線材1が巻回されることによってCNT被覆線材1の電気抵抗がさらに確実に低減しつつ、撚り線であるCNT線材10の形成容易性を得る点から、5本以上1000本以下が好ましく、10本以上800本以下がより好ましく、300本以上600本以下が特に好ましい。
上記各実施形態のコイル100では、撚り線であるCNT線材10の円相当直径は、特に限定されないが、太線化による大電流の電導と巻回の容易さの点から、0.01mm以上5.0mm以下が好ましく、0.05mm以上3.5mm以下がより好ましく、0.30mm以上2.0mm以下が特に好ましい。
上記各実施形態のコイル100では、CNT線材10の密度は、特に限定されず、例えば、CNT素線12とCNT素線12の間の接触性を向上させつつ撚り線の形成が容易である点から、0.50g/cm以上2.5g/cm以下が好ましく、1.2g/cm以上1.8g/cm以下が特に好ましい。また、CNT素線12の密度は、特に限定されず、例えば、長手方向の導電性を向上させ且つCNT素線12の生産性に優れる点から、1.0g/cm以上3.0g/cm以下が好ましく、1.2g/cm以上1.8g/cm以下が特に好ましい。
次に、本発明の実施形態に係るコイル100として使用するCNT被覆線材1の製造方法例について説明する。CNT被覆線材1は、まず、CNTを製造し、得られた複数のCNTからCNT集合体を製造し、CNT集合体からCNT素線12を製造する。次に、複数本のCNT素線12を撚り合わせてCNT線材10を製造する。次に、CNT線材10の外周面に樹脂被覆層21を被覆することで、コイル100として使用するCNT被覆線材1を製造することができる。
CNTは、例えば、浮遊触媒法(特許第5819888号)、基板法(特許第5590603号)などの方法で作製することができる。CNT素線等11は、例えば、乾式紡糸(特許第5819888号、特許第5990202号、特許第5350635号)、湿式紡糸(特許第5135620号、特許第5131571号、特許第5288359号)、液晶紡糸(特表2014-530964号)等で作製することができる。
上記のようにして得られたCNT線材10の外周面に樹脂被覆層21を被覆する方法は、アルミニウムや銅の芯線に絶縁被覆層を被覆する方法を使用できる。例えば、樹脂被覆層21の原料である樹脂を溶融させ、CNT線材10の周りに押し出してCNT線材10を被覆することで樹脂被覆層21を形成する方法を挙げることができる。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明の趣旨を超えない限り、下記実施例に限定されるものではない。
実施例1~13、比較例1~10について
実施例1~13のCNT線材の製造方法について
先ず、浮遊触媒法で作製したCNTを直接紡糸する乾式紡糸方法(特許第5819888号)または湿式紡糸する方法(特許第5135620号、特許第5131571号、特許第5288359号)で、CNT素線を得た。次に、CNT素線を下記表1に示す撚り線の本数及び撚り数にて撚り合わせて、下記表1に示す円相当直径を有するCNT線材(撚り線)を得た。
CNT線材の外面に樹脂被覆層(絶縁被覆層)を被覆する方法について
下記表1に示すヤング率と硬度を有する樹脂である下記のポリエチレン樹脂等を用いて、通常の電線製造用押出成形機を用いてCNT線材周囲に押出被覆することにより、下記表1に示すCNT線材の円相当直径に対する樹脂被覆層の平均厚さの割合を有する樹脂被覆層を形成し、CNT被覆線材を作製した。
<樹脂被覆層の樹脂種>
実施例1~4、8~13:ポリエチレンA、東ソー株式会社製、ニポロンハード
実施例5:ポリ塩化ビニルA、三菱ケミカル株式会社製、ビニカ
実施例6:ポリエチレンB、日本ポリエチレン株式会社製、ノバテックHD
実施例7:ポリエチレンC、旭化成株式会社製、サンテック-HD
比較例1:ポリエチレンA、東ソー株式会社製、ニポロンハード
比較例2:ポリエチレンD、東ソー株式会社製、ペトロセン
比較例3:ポリ塩化ビニルB、YKアクロス株式会社製、塩化ビニル樹脂コンパウンド
比較例4:ポリエチレンE、旭化成株式会社製、サンテック-LD
比較例5:スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、デンカ株式会社製、デンカABS
比較例6~10:ポリエチレンA、東ソー株式会社製、ニポロンハード
CNT被覆線材を巻回することによって形成したコイルについて
上記のように作製したCNT被覆線材を、下記表1に示す直径を有する円筒形部材の外周面に、下記表1に示す巻き回しの張力にて巻回してコイルを得た。
CNT被覆線材の径方向の断面におけるアスペクト比について
上記のようにして得たコイルについて、エポキシ樹脂(ストルアス社製)で樹脂埋めし、その後、CNT線材の径方向と平行な面で一つのスロットの一つの断面を出し、マイクロスコープで観察することにより、CNT被覆線材の径方向の各断面における長径と短径を測定し、長径を短径で除してアスペクト比を算出し、平均値を算出した。
評価項目
抵抗変化率(%)
コイルを形成する前のCNT被覆線材の抵抗(巻線前抵抗)R1をソースメータ(ケースレー社製)を用いて、100mA通電時の電圧値を測定することで求めた。また、コイルを形成したCNT被覆線材の抵抗(巻線後抵抗)R2をソースメータ(ケースレー社製)を用いて、100mA通電時の電圧値を測定することで求めた。R1/R2から、抵抗変化率を算出した。抵抗変化率は95%以下を合格と評価した。
評価結果を下記表1に示す。
Figure 2022164569000002
上記表1に示しように、樹脂被覆層の樹脂のヤング率が0.40GPa以上3.0GPa以下、樹脂被覆層の樹脂の硬度が50以上100以下、且つ巻き回しの張力がCNT線材の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下となっている実施例1~13では、抵抗変化率は95%以下であり、電気抵抗の低減特性に優れたコイルを得ることができた。また、実施例1~13では、CNT被覆線材の径方向の断面におけるアスペクト比が1.15超1.50未満であった。実施例1~13のCNT被覆線材では、巻回されることによるCNT被覆線材1の径方向の変形が適度な範囲に制御されて、撚り合わされたCNT素線が圧縮された結果、CNT素線とCNT素線の間の接触性が向上したためと考えられる。なお、実施例1~13のCNT被覆線材では、巻回する部材の直径が5.0mm以上35mm以下の範囲と、曲率半径の小さいコイルとした。また、実施例1~13のCNT被覆線材では、撚り数は100T/m以上550T/m以下とした。
特に、実施例1、6、7の対比から、樹脂の硬度が50以上90未満であると、抵抗変化率はさらに低減した。また、実施例1、11、12の対比から、巻き回しの張力がCNT線材の円相当直径をD(mm)としたとき、10000×Dgf以上30000×Dgf以下であると、抵抗変化率はさらに低減した。また、実施例1~13から、CNT被覆線材の径方向の断面におけるアスペクト比が1.22超1.50以下にて抵抗変化率のさらなる低減傾向が見られた。
また、実施例1、2、3の対比から、撚り数は450T/mで抵抗変化率がさらに低減し、450T/m未満では抵抗変化率の低減特性がさらに向上した。
また、実施例1と実施例4の対比から、CNT線材の円相当直径に対する樹脂被覆層の平均厚さの割合が0.10%以上10%未満であると、抵抗変化率はさらに低減し、電気抵抗の低減特性がさらに向上したコイルを得ることができた。
一方で、CNT被覆線材の径方向の断面におけるアスペクト比が1.15である比較例1、樹脂被覆層の樹脂のヤング率が0.2GPaである比較例2、樹脂被覆層の樹脂のヤング率が4.0GPaである比較例3、樹脂被覆層の樹脂の硬度が35である比較例4、樹脂被覆層の樹脂の硬度が120である比較例5、巻き回しの張力が2000gfであり巻き回しの張力がCNT線材の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgfより小さく、CNT被覆線材の径方向の断面におけるアスペクト比が1.12である比較例6では、抵抗変化率は96%以上であり、電気抵抗の低減特性に優れたコイルを得ることはできなかった。また、巻き回しの張力が35000gfであり巻き回しの張力がCNT線材の円相当直径をD(mm)としたとき、30000×Dgfより大きい比較例7は、巻線時に断線が生じ、抵抗変化率を測定することができなかった。
さらに、CNT素線の本数が1200本の比較例8は巻線時に断線が生じ、抵抗変化率を測定することができなかった。また、撚り数が15T/mであり、CNT被覆線材の径方向の断面におけるアスペクト比が1.52の比較例9と、撚り数が1000T/mであり、CNT被覆線材の径方向の断面におけるアスペクト比が1.13の比較例10は抵抗変化率が95%を超え、良好なコイルが得られなかった。
本発明のCNT被覆線材のコイルは、CNT被覆線材が巻回されることによる電気抵抗の低減特性に優れているので、特に、電気モータに使用するコイルの分野で利用価値が高い。
1 カーボンナノチューブ被覆線材
10 カーボンナノチューブ線材
12 カーボンナノチューブ素線
21 樹脂被覆層
100 コイル

Claims (11)

  1. 複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ素線の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する樹脂被覆層と、を備えたカーボンナノチューブ被覆線材が、巻回されることによって形成されたコイルであり、
    前記樹脂被覆層の樹脂のヤング率が、0.40GPa以上3.0GPa以下、
    前記樹脂被覆層の樹脂の硬度が、50以上100以下、
    巻き回しの張力が、カーボンナノチューブ線材の円相当直径をD(mm)としたとき、3000×Dgf以上30000×Dgf以下である、コイル。
  2. 複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ素線の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する樹脂被覆層と、を備えたカーボンナノチューブ被覆線材が、巻回されることによって形成されたコイルであり、
    前記樹脂被覆層の樹脂のヤング率が、0.40GPa以上3.0GPa以下、
    前記樹脂被覆層の樹脂の硬度が、50以上100以下、
    前記カーボンナノチューブ被覆線材の径方向の断面における、長径を短径で除したアスペクト比が、1.15より大きく1.50より小さい、コイル。
  3. 前記カーボンナノチューブ被覆線材の径方向の断面における、長径を短径で除したアスペクト比が、1.15より大きく1.50より小さい請求項1に記載のコイル。
  4. 前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径に対する樹脂被覆層の平均厚さの割合が、0.10%以上10%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコイル。
  5. 前記カーボンナノチューブ被覆線材を巻回する部材の直径が、5.0mm以上35mm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコイル。
  6. 前記カーボンナノチューブ線材の撚り数が、50T/m以上600T/m以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコイル。
  7. 前記カーボンナノチューブ線材の撚り数が、50T/m以上500T/m以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコイル。
  8. 前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径に対する樹脂被覆層の平均厚さの割合が、0.10%以上8.0%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコイル。
  9. 前記樹脂被覆層の樹脂の硬度が、50以上80以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコイル。
  10. 前記カーボンナノチューブ線材を構成する前記カーボンナノチューブ素線の本数が、5本以上1000本以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のコイル。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のコイルを用いた電気モータ用コイル。
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