JP2020184422A - カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス - Google Patents

カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス Download PDF

Info

Publication number
JP2020184422A
JP2020184422A JP2019086693A JP2019086693A JP2020184422A JP 2020184422 A JP2020184422 A JP 2020184422A JP 2019086693 A JP2019086693 A JP 2019086693A JP 2019086693 A JP2019086693 A JP 2019086693A JP 2020184422 A JP2020184422 A JP 2020184422A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wire
cnt
carbon nanotube
composite wire
wire rod
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019086693A
Other languages
English (en)
Inventor
山崎 悟志
Satoshi Yamazaki
悟志 山崎
憲志 畑本
Kenji Hatamoto
憲志 畑本
英樹 會澤
Hideki Aizawa
英樹 會澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Furukawa Electric Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Furukawa Electric Co Ltd filed Critical Furukawa Electric Co Ltd
Priority to JP2019086693A priority Critical patent/JP2020184422A/ja
Publication of JP2020184422A publication Critical patent/JP2020184422A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Insulated Conductors (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)
  • Yarns And Mechanical Finishing Of Yarns Or Ropes (AREA)

Abstract

【課題】主に銅、アルミニウム等の金属製の芯線から構成される線材と比較して更なる軽量化を実現すると共に、良好な導電性、耐屈曲性とハンドリング性の双方を両立することができるカーボンナノチューブ複合線を提供する。【解決手段】CNT複合線(2)は、複数のCNT(11a)で構成されるCNT集合体(11)の複数が束ねられてなるCNT線材(10)の複数が撚り合わされてなる。CNT線材(10)の撚り数t1及びCNT複合線(2)の撚り数t2の少なくとも一方が1000T/m以上であり、CNT線材(10)およびCNT複合線(2)の少なくとも一方がメッキされている。【選択図】図1

Description

本発明は、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ線材の複数を撚り合わせてなるカーボンナノチューブ複合線、該カーボンナノチューブ複合線を絶縁材料で被覆したカーボンナノチューブ被覆電線、及び該被覆電線を有するワイヤハーネスに関するものである。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)は、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への応用が期待されている。
例えば、CNTは、六角形格子の網目構造を有する筒状体の単層、または略同軸で配された多層で構成される3次元網目構造体であり、軽量であると共に、導電性、熱伝導性、機械的強度等の諸特性に優れる。しかし、CNTを線材化することは容易ではなく、CNTを線材として利用する技術は提案されていない。
数少ないCNT線を利用した技術の例として、多層配線構造に形成されるビアホールの埋め込み材料である金属の代替として、CNTを使用することが検討されている。具体的には、多層配線構造の低抵抗化のために、多層CNTの成長基点から遠い側の端部へ同心状に伸延した多層CNTの複数の切り口を導電層にそれぞれ接触させた多層CNTを、2以上の導線層の層間配線として使用した配線構造が提案されている(特許文献1)。
その他の例として、CNT材料の導電性をさらに向上させるために、隣接したCNT線材の電気的接合点に、金属等からなる導電性堆積物を形成したカーボンナノチューブ材料が提案され、このようなカーボンナノチューブ材料は広汎な用途に適用できることが開示されている(特許文献2)。また、CNT線材の有する優れた熱伝導性から、カーボンナノチューブのマトリクスから作られた熱伝導部材を有する加熱器が提案されている(特許文献3)。
一方で、自動車や産業機器などの様々な分野における電力線や信号線として、一又は複数の線材からなる芯線と、該芯線を被覆する絶縁被覆とからなる電線が用いられている。芯線を構成する線材の材料としては、通常、電気特性の観点から銅又は銅合金が使用されるが、近年、軽量化の観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が提案されている。例えば、アルミニウムの比重は銅の比重の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の導電率の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)であり、アルミニウム線材に、銅線材と同じ電流を流すためには、アルミニウム線材の断面積を、銅の線材の断面積の約1.5倍と大きくする必要があるが、そのように断面積を大きくしたアルミニウム線材を用いたとしても、アルミニウム線材の質量は、純銅の線材の質量の半分程度であることから、アルミニウム線材を使用することは、軽量化の観点から有利である。
特開2006−120730号公報 特表2015−523944号公報 特開2015−181102号公報
昨今、自動車、産業機器等の更なる高性能化・高機能化が急速に進められており、これに伴い、電線の導電性の向上が求められている。また、各種電気機器、制御機器などの配設数が増加すると共に、作業者が電線を配索する際のハンドリング性を向上させることが要求されている。また、自動車やロボット等に代表される移動体での繰り返し運動などに因る断線等の異常の発生を防止するために、線材の耐屈曲性の向上が求められている。その一方で、環境対応のために自動車等の移動体の燃費を向上させるため、線材の更なる軽量化も要求されている。
本発明の目的は、主に銅、アルミニウム等の金属製の芯線から構成される線材と比較して更なる軽量化を実現すると共に、良好な導電性、耐屈曲性とハンドリング性を両立することができるカーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネスを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の複数本からなるカーボンナノチューブ線材を作製し、更に該カーボンナノチューブ線材の複数本を撚り合わせてカーボンナノチューブ複合線を電線として用いることを見出した。特に、カーボンナノチューブ線材を構成する複数のカーボンナノチューブ集合体の撚りの程度、カーボンナノチューブ複合線を構成する複数のカーボンナノチューブ線材の撚りの程度、或いはこれらの撚り方の組み合わせによって、カーボンナノチューブ複合線の導電性、耐屈曲性などの諸特性が異なるという知見を得、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち、本願発明の要旨構成は以下の通りである。
[1]複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の複数が束ねられてなるカーボンナノチューブ線材の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ複合線であって、
前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1及び前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2の少なくとも一方が1000T/m以上であり、前記カーボンナノチューブ線材および前記カーボンナノチューブ複合線の少なくとも一方がメッキされている、カーボンナノチューブ複合線。
[2]前記カーボンナノチューブ線材と前記カーボンナノチューブ複合線とがメッキされている、上記[1]記載のカーボンナノチューブ複合線。
[3]前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径が、20μm以上200μm以下であり、
前記カーボンナノチューブ複合線の円相当直径が、0.1mm以上60mm以下であり、
前記カーボンナノチューブ複合線を構成する前記カーボンナノチューブ線材の本数が、15以上5000以下である、上記[1]または[2]記載のカーボンナノチューブ複合線。
[4]前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が0を超え500T/m未満であり、
前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、
前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、上記[1]または[2]記載のカーボンナノチューブ複合線。
[5]前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が500T/m以上1000T/m未満であり、
前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、
前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、上記[1]または[2]記載のカーボンナノチューブ複合線。
[6]前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が1000T/m以上2500T/m未満であり、
前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が0を超え1000T/m未満であり、
前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、上記[1]または[2]記載のカーボンナノチューブ複合線。
[7]前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が2500T/m以上であり、
前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が0を超え500T/m未満であり、
前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、上記[1]または[2]記載のカーボンナノチューブ複合線。
[8]前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径が0.01mm以上30mm以下であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の円相当直径が0.1mm以上60mm以下である、[1]または[2]記載のカーボンナノチューブ複合線。
[9]上記[1]乃至[8]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合線と、前記カーボンナノチューブ複合線の外周に設けられた絶縁被覆層とを有する、カーボンナノチューブ被覆電線。
[10]上記[9]記載のカーボンナノチューブ被覆電線を有するワイヤハーネス。
本発明によれば、カーボンナノチューブ線材の撚り数t1及びカーボンナノチューブ複合線の撚り数t2の少なくとも一方が1000T/m以上であるので、外力が作用した際に生じる応力が撚りによって分散して応力集中の発生が抑制され、曲げ特性が適度に向上すると共に、カーボンナノチューブ複合線が軸方向に関して形状が保持されやすくなり、良好な耐屈曲性とハンドリング性の両立を実現することができる。また、カーボンナノチューブ線材およびカーボンナノチューブ複合線の少なくとも一方がメッキされているため、カーボンナノチューブ複合線の導電性を向上させることができると共に端子等への接続時の接触抵抗を低減することができる。特に、カーボンナノチューブ線材は、銅やアルミニウム等で構成される線材と比較して引張強度が格段に大きく、撚り数の大きい強撚り加工をカーボンナノチューブ線材に施すことができることから、金属線では実現し得なかった撚りの度合いの大きい撚り線を作製することができる。
また、カーボンナノチューブ線材とカーボンナノチューブ複合線とがメッキされていることにより、カーボンナノチューブ複合線の導電性をさらに向上させることができる。さらに、(a)カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が0を超え500T/m未満であり、カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つカーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2がカーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じであるか、(b)カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が500T/m以上1000T/m未満であり、カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つカーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2がカーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じであると、優れた耐屈曲性とハンドリング性の双方を実現することができる。
また、(c)カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が1000T/m以上2500T/m未満であり、カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が0を超え1000T/m未満であり、カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つカーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2がカーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じであるか、又は、(d)カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が2500T/m以上であり、カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が0を超え500T/m未満であり、カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つカーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2がカーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じであると、優れた耐屈曲性とハンドリング性の双方を実現することができる。
本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ被覆電線の説明図である。 図1のカーボンナノチューブ複合線の撚り方向を示す説明図である。 図2のカーボンナノチューブ複合線を構成する一のカーボンナノチューブ線材の説明図である。 図3のカーボンナノチューブ線材の撚り方向を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ被覆電線を、図面を参照しながら説明する。
[カーボンナノチューブ被覆電線の構成]
図1に示すように、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ被覆電線(以下、「CNT被覆電線」ということがある。)1は、メッキされたカーボンナノチューブ複合線(以下、「CNT複合線」ということがある。)2の外周面に絶縁被覆層21が被覆された構成となっている。なお、図1ではCNT複合線2に施されたメッキは示していない。すなわち、CNT複合線2の長手方向に沿って絶縁被覆層21が被覆されている。CNT被覆電線1では、メッキされたCNT複合線2の外周面全体が、絶縁被覆層21によって被覆されている。また、CNT被覆電線1では、絶縁被覆層21はCNT複合線2の外周面とメッキを介して接した態様となっている。
CNT複合線2は、メッキされたCNT線材10の複数が撚り合わされて形成されている。なお、図1ではCNT線材10に施されたメッキは示していない。図1では、CNT複合線2は、説明の便宜上、4本のCNT線材10が撚り合わされているが、数本〜数千本のCNT線材10が撚り合わされていてもよい。CNT複合線2の円相当直径は、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上60mm以下である。また、CNT複合線2を構成するCNT線材10(素線)の本数は、例えば14以上10000以下である。
メッキされたCNT複合線2の撚り方向としては、例えば図2(a)に示すようなS方向、或いは図2(b)に示すようなZ方向を挙げることができる。S方向とは、CNT線材10の上下端のうちの上端を固定した状態で、下端側から見て下端をCNT複合線2の中心軸に対して時計回り(右回り)に捻ったときに生じる撚りの方向を指す。また、Z方向とは、CNT複合線2の上下端のうちの上端を固定した状態で、下端側から見て下端をCNT複合線2の中心軸に対して反時計回り(左回り)に捻ったときに生じる撚りの方向を指す。本実施形態では、CNT複合線2の撚り方向をd2とする。CNT複合線2の撚りの度合いについては後述する。
メッキされたCNT線材10は、図3に示すように、1層以上の層構造を有する複数のCNT11a,11a,・・・で構成されるCNT集合体11の複数が束ねられたものをメッキすることにより形成されている。CNT集合体11が束ねられている状態とは、CNT線材10に撚りが在る場合と、CNT線材10に撚りが無いか或いは実質的に撚りが無い場合の双方を意味する。ここで、CNT線材とは、CNTの割合が90質量%以上のCNT線材、言い換えると不純物が10質量%未満のCNT線材を意味する。なお、CNT線材におけるCNT割合の算定においては、メッキとドーパントの質量は除く。なお、図1では、CNT線材10は単線(素線)から構成される場合を開示するが、CNT線材10は複数の素線から構成されていてもよい。
メッキされたCNT線材10の撚り方向としては、CNT複合線2と同様、図4(a)に示すようなS方向、或いは図4(b)に示すようなZ方向を挙げることができる。すなわち、CNT線材10のS方向及びZ方向は、それぞれCNT複合線2の撚り方向であるS方向及びZ方向と同じである。本実施形態では、CNT線材10の撚り方向をd1とする。但し、CNT線材10では、図4(c)に示すように、CNT集合体11の長手方向とCNT線材10の長手方向が同一或いは実質的に同一である状態を含んでいる。すなわち、CNT線材10は、CNT集合体11の複数が撚り合わされていない状態で束ねられているものを含む。CNT線材10の円相当直径は、例えば、20μm以上200μm以下である。この場合、CNT複合線2の円相当直径を0.1mm以上60mm以下、CNT複合線2を構成するCNT線材10の本数を15以上5000以下とすることができる。CNT線材10の撚りの度合いについては後述する。
CNT集合体11は、1層以上の層構造を有するCNT11aの束である。CNT11aの長手方向が、CNT集合体11の長手方向を形成している。CNT集合体11における複数のCNT11a,11a,・・・は、その長軸方向がほぼ揃って配されている。従って、CNT集合体11における複数のCNT11a,11a,・・・は、配向している。CNT集合体11の円相当直径は、例えば、20nm以上1000nm以下であり、より典型的には、20nm以上80nm以下である。CNT11aの最外層の幅寸法は、例えば、1.0nm以上5.0nm以下である。
CNT集合体11を構成するCNT11aは、単層構造又は複層構造を有する筒状体であり、それぞれ、SWNT(single-walled nanotube)、MWNT(multi-walled nanotube)と呼ばれる。図3では、便宜上、2層構造を有するCNT11aのみを記載しているが、CNT集合体11には、3層構造以上の層構造を有するCNTや単層構造の層構造を有するCNTも含まれていてもよく、3層構造以上の層構造を有するCNTまたは単層構造の層構造を有するCNTから形成されていてもよい。
2層構造を有するCNT11aでは、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体T1、T2が略同軸で配された3次元網目構造体となっており、DWNT(Double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子が配された六員環であり、他の六員環と隣接したこれらが連続的に結合している。
CNT11aの性質は、上記筒状体のカイラリティ(chirality)に依存する。カイラリティは、アームチェア型、ジグザグ型、及びカイラル型に大別され、アームチェア型は金属性、ジグザグ型は半導体性および半金属性、カイラル型は半導体性および半金属性の挙動を示す。従って、CNT11aの導電性は、筒状体がいずれのカイラリティを有するかによって大きく異なる。CNT被覆電線1のCNT線材10を構成するCNT集合体11では、導電性をさらに向上させる点から、金属性の挙動を示すアームチェア型のCNT11aの割合を増大させることが好ましい。
一方で、半導体性の挙動を示すカイラル型のCNT11aに電子供与性もしくは電子受容性を持つ物質(異種元素)をドープすることにより、カイラル型のCNT11aが金属的挙動を示すことが分かっている。また、一般的な金属では、異種元素をドープすることによって金属内部での伝導電子の散乱が起こって導電性が低下するが、これと同様に、金属性の挙動を示すCNT11aに異種元素をドープした場合には、導電性の低下を引き起こす。
このように、金属性の挙動を示すCNT11a及び半導体性の挙動を示すCNT11aへのドーピング効果は、導電性の観点からはトレードオフの関係にあることから、理論的には金属性の挙動を示すCNT11aと半導体性の挙動を示すCNT11aとを別個に作製し、半導体性の挙動を示すCNT11aにのみドーピング処理を施した後、これらを組み合わせることが望ましい。しかし、現状の製法技術では、金属性の挙動を示すCNT11aと半導体性の挙動を示すCNT11aとを選択的に作り分けることは困難であり、金属性の挙動を示すCNT11aと半導体性の挙動を示すCNT11aが混在した状態で作製される。このため、金属性の挙動を示すCNT11aと半導体性の挙動を示すCNT11aの混合物からなるCNT線材10の導電性をさらに向上させるために、異種元素・分子によるドーピング処理が効果的となるCNT11aの層構造を選択することが好ましい。
例えば、2層構造又は3層構造のような層数が少ないCNTは、それより層数の多いCNTよりも比較的導電性が高く、ドーピング処理を施した際には、2層構造又は3層構造を有するCNTでのドーピング効果が最も高い。従って、CNT線材10の導電性をさらに向上させる点から、2層構造又は3層構造を有するCNTの割合を増大させることが好ましい。具体的には、CNT全体に対する2層構造又は3層構造をもつCNTの割合が50個数%以上が好ましく、75個数%以上がより好ましい。2層構造又は3層構造をもつCNTの割合は、CNT集合体11の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察及び解析し、50個〜200個の範囲内の所定数の任意のCNTを選択し、それぞれのCNTの層数を測定することで算出することができる。
高密度を得ることで、導電性や放熱特性をより向上させる観点から、複数のCNT11a,11a,・・・の密度を示すX線散乱による強度の(10)ピークにおけるピークトップのq値が2.0nm−1以上5.0nm−1以下であり、且つ半値幅Δq(FWHM)が0.1nm−1以上2.0nm−1以下であることが好ましい。この(10)ピークから見積られる格子定数の測定値と、ラマン分光法やTEMなどで観測されるCNT直径とに基づいて、CNT集合体11内で複数のCNT11aの直径分布が狭く、複数のCNT11a,11a,・・・が、規則正しく配列、すなわち、良好な配向性を有することで、六方最密充填構造を形成しているといえる。よって、CNT集合体11中の電荷は、CNT11aの長手方向に沿って流れ易くなり、導電性がより向上する。また、CNT集合体11の熱は、CNT11aの長手方向に沿って円滑に伝達して行きながら放熱され易くなる。CNT集合体11及びCNT11の配向性、並びにCNT11aの配列構造及び密度は、後述する、乾式紡糸、湿式紡糸等の紡糸方法と該紡糸方法の紡糸条件とを適宜選択することで調節することができる。
CNT複合線2及びCNT線材10の撚りの度合いは、甘撚り、中撚り、強撚り及び極強撚りのうちのいずれかに分類することができる。甘撚りとは、撚り数0を超え500T/m未満の範囲内の値を指し、中撚りとは、撚り数500T/m以上1000T/m未満の範囲内の値を指す。また、強撚りとは、撚り数1000以上2500T/m未満の範囲内の値を指し、極強撚りとは、撚り数2500T/m以上の範囲内の値を指す。
CNT複合線2の撚り数とは、1本のCNT複合線を構成する複数のCNT線材10,10,・・・を撚り合わせた際の単位長さ当たりの巻き数(T/m)である。本実施形態では、CNT複合線2の撚り数をt2とする。また、CNT線材10の撚り数とは、1本のCNT線材10を構成する複数のCNT集合体11,11,・・・を撚り合わせた際の単位長さ当たりの巻き数(T/m)である。本実施形態では、CNT線材10の撚り数をt1とする。
CNT複合線2では、CNT線材10の撚り数t1及びCNT複合線2の撚り数t2の少なくとも一方が1000T/m以上である。CNT線材10及びCNT複合線2の少なくとも一方が強撚り以上であることで、外力が作用した際に生じる応力が撚りによって分散して応力集中の発生が抑制され、曲げ特性が適度に向上すると共に、CNT複合線2が軸方向に関して形状が保持されやすくなり、良好な耐屈曲性とハンドリング性の両立を実現することができる。また、CNT複合線2はメッキされているため、優れた導電性を有すると共に端子などに接続時の接触抵抗を低減することができる。すなわち、CNT素線をメッキした後、アニールによりメッキを溶融させた場合には、CNT素線同士の導通を確保しつつ、CNT複合線全体を導体としても機能させることができ導電性を向上させることができる。また、CNT複合線に施したメッキは端子等への接続時の接触抵抗を下げることができる。特に、CNT線材10は、主に銅、アルミニウム等の金属製の芯線から構成される線材と比較して引張強度が格段に大きく、撚り数の大きい強撚り加工をCNT線材10に施すことができることから、金属線では実現し得なかった撚りの度合いの大きい撚り線を作製することができる。
以上のように、本発明は、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の複数が束ねられてなるカーボンナノチューブ線材の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ複合線であって、カーボンナノチューブ線材の撚り数t1及びカーボンナノチューブ複合線の撚り数t2の少なくとも一方が1000T/m以上であり、カーボンナノチューブ線材およびカーボンナノチューブ複合線の少なくとも一方がメッキされている、カーボンナノチューブ複合線に関するものである。なお、図1では、CNT線材10がメッキされ、CNT線材10を撚ることで得たCNT複合線2もメッキされている例を示したが、図1は一例に過ぎず、CNT線材10およびCNT複合線2の少なくとも一方がメッキされていればよい。すなわち、本発明のCNT複合線は、CNT線材のみがメッキされていれよいし、CNT線材を撚って得たCNT複合線のみがメッキされていてもよいし、または、メッキしたCNT線材を撚って得たCNT複合線をさらにメッキしてもよい。また、CNT線材がメッキされている場合、メッキしたCNT素線からCNT線材が構成されていてもよいし、CNT素線を束ねて若しくは撚って得たCNT線材をメッキしてもよいし、あるいは、メッキしたCNT素線を束ねて若しくは撚って得たCNT線材をさらにメッキしてもよい。好ましくは、カーボンナノチューブ線材とカーボンナノチューブ複合線とがメッキされているのがよい。カーボンナノチューブ線材とカーボンナノチューブ複合線とがメッキされていることにより、CNT複合線全体の導電性を向上させると共に、端子等への接続時の接触抵抗を効果的に低減することができる。カーボンナノチューブ線材に施されたメッキは特に限定されないが、銅メッキ、銀メッキ、錫メッキ、アルミメッキおよびこれらの合金からなるメッキから選択された少なくとも一つの金属メッキを挙げることができる。比較的、柔らかい金属であり耐屈曲性に優れることから、カーボンナノチューブ線材に施されたメッキとしては銀メッキが好ましい。また、カーボンナノチューブ複合線に施されたメッキは特に限定されないが、銅メッキ、銀メッキ、錫メッキ、アルミメッキおよびこれらの合金からなるメッキから選択された少なくとも一つの金属メッキを挙げることができる。導電性に優れることから、カーボンナノチューブ複合線に施されたメッキとしては銅メッキが好ましい。カーボンナノチューブ線材およびカーボンナノチューブ複合線に施されるメッキは1層であってもよいし、異なる材料からなる2層であってもよい。
CNT複合線2に形成されるメッキの厚さは、母材であるCNT複合線2の保護、重量及びコスト等を考慮し、0.1μm〜4.0μmであることが好ましい。また、メッキが、CNT線材10に形成される場合、CNT線材10に形成されるメッキの厚さは、0.2μm〜10μmであることが好ましい。
また、耐屈曲性とハンドリング性の双方を向上する観点から、(a)CNT線材10の撚り数t1が0を超え500T/m未満であり、CNT複合線2の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、CNT線材10の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つCNT複合線2の撚り方向d2がCNT線材の撚り方向と同じであるか、(b)CNT線材10の撚り数t1が500T/m以上1000T/m未満であり、CNT複合線2の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、CNT線材10の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つCNT複合線2の撚り方向d2がCNT線材10の撚り方向と同じであるのが好ましい。CNT線材10が甘撚りであってCNT複合線2が強撚りであり且つCNT線材とCNT複合線2の撚り方向が同じであるか、又は、CNT線材10が中撚りであってCNT複合線2が強撚りであり且つCNT線材とCNT複合線2の撚り方向が同じであることで、優れた耐屈曲性とハンドリング性の双方を実現することができる。この場合、CNT線材10およびCNT複合線2の少なくとも一方がメッキされていればよい。
また、耐屈曲性とハンドリング性の双方を向上する観点から、(c)CNT線材の撚り数t1が1000T/m以上2500T/m未満であり、CNT複合線の撚り数t2が0を超え1000T/m未満であり、CNT線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つCNT複合線の撚り方向d2が前記CNT線材の撚り方向と同じであるか、又は、(d)CNT線材の撚り数t1が2500T/m以上であり、CNT複合線の撚り数t2が0を超え500T/m未満であり、CNT線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つCNT複合線の撚り方向d2がCNT線材の撚り方向と同じであるのが好ましい。CNT線材10が強撚りであってCNT複合線2が甘撚り、中撚りのいずれかであり且つCNT線材とCNT複合線2の撚り方向が同じであるか、又は、CNT線材10が極強撚りであってCNT複合線2が甘撚りであり且つCNT線材とCNT複合線2の撚り方向が同じであることで、優れた耐屈曲性とハンドリング性の双方を実現することができる。この場合、CNT線材10およびCNT複合線2の少なくとも一方がメッキされていればよい。
CNT複合線2の外周に形成される絶縁被覆層21(図1参照)の材料としては、芯線として金属を用いた被覆電線の絶縁被覆層に用いる材料を使用することができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド、フェノール樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。
絶縁被覆層21は、図1に示すように、一層としてもよく、これに代えて、二層以上としてもよい。例えば、絶縁被覆層が、CNT複合線2の外周に形成された第1絶縁被覆層と、該第1絶縁被覆層の外周に形成された第2絶縁被覆層とを有していてもよい。この場合、第2絶縁被覆層に含有された他のCNTの含有量が、第1絶縁被覆層に含有された他のCNTの含有量よりも小さくなるように構成されていてもよい。また、必要に応じて、絶縁被覆層21上に、さらに、熱硬化性樹脂の一又は二以上の層が設けられていてもよい。また、上記熱硬化性樹脂が、繊維形状或いは粒子形状を有する充填材を含有していてもよい。
CNT被覆電線1では、CNT複合線2の径方向の断面積に対する絶縁被覆層21の径方向の断面積の比率は、0.001以上1.5以下の範囲であることが好ましい。前記断面積の比率が0.001以上1.5以下の範囲であることにより、芯線が銅やアルミニウム等と比較して軽量であるCNT線材10である上、絶縁被覆層21の厚さを薄肉化できることから、絶縁信頼性を十分に確保すると共に、CNT複合線2の熱に対して優れた放熱特性を得ることができる。また、絶縁被覆層が形成されていても、銅やアルミニウムなどの金属被覆電線と比較して軽量化を実現することができる。
また、上記断面積の比率にて絶縁被覆層21がCNT複合線2の外周面に被覆されていることにより、CNT被覆電線1の長手方向における形状を維持し易くなる。従って、CNT被覆電線1の配索時のハンドリング性を高めることができる。
さらに、CNT複合線2は、外面に微細な凹凸が形成されていることから、アルミニウムや銅の芯線を用いた被覆電線と比較して、CNT複合線2と絶縁被覆層21との間の接着性が向上し、CNT複合線2と絶縁被覆層21との間の剥離を抑制することができる。
前記断面積の比率は0.001以上1.5以下の範囲内で適宜、設定できるが、絶縁信頼性をさらに向上させる点から、その下限値は0.1が好ましく、0.2が特に好ましい。一方で、前記断面積の比率の上限値は、CNT被覆電線1のさらなる軽量化とCNT複合線2の熱に対する放熱特性をさらに向上させる点から1.0が好ましく、0.27が特に好ましい。
前記断面積の比率が0.001以上1.5以下の範囲である場合、CNT複合線2の径方向の断面積は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上3000mm以下が好ましく、100mm以上3000mm以下が更に好ましく、1000mm以上2700mm以下が特に好ましい。また、絶縁被覆層21の径方向の断面積は、特に限定されないが、絶縁信頼性と放熱性とのバランスの観点から、例えば、0.001mm以上4500mm以下が好ましい。
断面積は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察の画像から測定することができる。具体的には、CNT被覆電線1の径方向断面のSEM像(100倍〜10,000倍)を得た後に、CNT複合線2の外周で囲われた部分の面積からCNT線材10内部に入り込んだ絶縁被覆層21の材料の面積を差し引いた面積、CNT複合線2の外周を被覆する絶縁被覆層の部分の面積とCNT線材10内部に入り込んだ絶縁被覆層21の材料の面積との合計を、それぞれ、CNT複合線2の径方向の面積、絶縁被覆層21の径方向の断面積とする。絶縁被覆層21の径方向の断面積には、CNT線材10間に入り込んだ樹脂も含む。なお、上記断面積の判断において、CNT複合線2の断面積には、メッキ部分の断面積は含まれない。
絶縁被覆層21の長手方向に対し直交方向(すなわち、径方向)の肉厚は、CNT被覆電線1の絶縁性及び耐摩耗性を向上させる点から均一化されていることが好ましい。具体的には、絶縁被覆層21の偏肉率は、絶縁性及び耐摩耗性を向上させる点から50%以上であり、また、これらに加えてハンドリング性を向上させる点から80%以上が好ましい。なお、「偏肉率」とは、CNT被覆電線1の長手方向の任意の1.0mにおいて10cmごとに、径方向断面について、それぞれ、α=(絶縁被覆層21の肉厚の最小値/絶縁被覆層21の肉厚の最大値)×100の値を算出し、各断面にて算出したα値を平均した値を意味する。また、絶縁被覆層21の肉厚は、例えば、CNT線材10を円近似してSEM観察の画像から測定することができる。ここで、長手方向中心側とは、線の長手方向からみて中心に位置する領域をさす。
絶縁被覆層21の偏肉率は、例えば、押出被覆にてCNT線材10の外周面に絶縁被覆層21を形成する場合、押出工程時にダイスへ通す際にCNT線材10の長手方向に付与する張力を調整することで向上させることができる。
[カーボンナノチューブ被覆電線の製造方法]
次に、本発明の実施形態に係るCNT被覆電線1の製造方法例について説明する。CNT被覆電線1は、まず、CNT11aを製造し、得られた複数のCNT11aをそのまま束ねるか、或いはS方向またはZ方向に撚り合わせてCNT素線を形成し、必要に応じてCNT素線をメッキする。次いで、CNT素線をそのまま束ねるか、或いはS方向またはZ方向に撚り合わせてCNT線材10を形成し、必要に応じてCNT線材10をメッキする。なお、この際CNT線材10は、複数の素線から構成してもよい。更に、CNT線材10の複数本をS方向或いはZ方向に撚り合わせてCNT複合線2を形成する。この際、CNT素線またはCNT線材10をメッキした場合には、不活性雰囲気もしくは還元雰囲気でCNT複合線2を加熱し、メッキを溶融させることでCNT11aおよびCNT線材10間をメッキで融着させる。次に、このようにして得られたCNT複合線2を必要に応じてメッキする。この後、CNT複合線2の外周面に絶縁被覆層21を被覆することで、本発明の実施形態に係るCNT被覆電線1を製造することができる。CNT線材10およびCNT複合線2のメッキ方法は特に限定されないが、電解メッキ法や無電解メッキ法を挙げることができる。
CNT11aは、浮遊触媒法(特許第5819888号公報)や、基板法(特許第5590603号公報)などの手法で作製することができる。CNT線材10の素線は、例えば、乾式紡糸(特許第5819888号公報、特許第5990202号公報、特許第5350635号公報)、湿式紡糸(特許第5135620号公報、特許第5131571号公報、特許第5288359号公報)、液晶紡糸(特表2014-530964号公報)等で作製することができる。また、CNT複合線2は、例えば、作成したCNT線材の両端を基板に固定し、対向する基板の一方を回転させることで作製することができる。
このとき、CNT集合体を構成するCNTの配向性は、例えば乾式紡糸、湿式紡糸、液晶紡糸等の紡糸方法と該紡糸方法の紡糸条件とを適宜選択することで調節することができる。
上記のようにして得られたCNT複合線2の外周面に絶縁被覆層21を被覆する方法は、アルミニウムや銅の芯線に絶縁被覆層を被覆する方法を使用でき、例えば、絶縁被覆層21の原料である熱可塑性樹脂を溶融させ、CNT複合線2の周りに押し出して被覆する方法や、或いはCNT複合線2の周りに塗布する方法を挙げることができる。
上記方法で作製されたCNT被覆電線1或いはCNT複合線2は、CNTが耐腐食性に優れていることから、極限環境下で使用されるロボットの配線に好適である。極限環境としては、例えば原子炉内、高温・多湿環境、深海などの水中、宇宙空間などが挙げられる。特に、原子炉内では多くの中性子が発生しており、仮に銅或いは銅合金で構成される導体を移動体などの配線として使用している場合、中性子を吸収して放射性亜鉛に変化する。この放射線亜鉛は半減期が245日と長く、放射線を放出し続ける。すなわち、銅或いは銅合金は、中性子に因って放射性物質に変化し、外部に様々な悪影響を及ぼす原因となる。一方、CNTで構成されるCNT複合線を配線として使用することで、上記のような反応が起こり難くなり、放射性物質の生成を抑制することができる。また、上記方法で作製されたCNT被覆電線1或いはCNT複合線2は、耐屈曲性及びハンドリング性の双方が求められるロボットアームなどの装置の配線に特に好適である。
本発明の実施形態に係るCNT被覆電線1は、ワイヤハーネス等の一般電線として使用することができ、また、CNT被覆電線1を使用した一般電線からケーブルを作製してもよい。
上記実施形態では、CNT線材10に対してメッキ処理が行われ、さらに、CNT複合線2に対してもメッキ処理が行われていたが、本発明ではCNT線材10およびCNT複合線2の少なくとも一方に対してメッキ処理が行われていればよい。すなわち、CNT線材10に対してメッキ処理を行わずCNT複合線2に対してメッキ処理を行ってもよく、CNT線材10に対してメッキ処理を行い、CNT複合線2に対してはメッキ処理を行わなくてもよい。また、CNT複合線2に対してメッキ処理を施す際にCNT複合線2の隙間を通してCNT複合線2の内部にメッキ液を浸透させたることで、CNT複合線2とCNT線材10に対するメッキ処理を一度に行ってもよい。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明の趣旨を超えない限り、下記実施例に限定されるものではない。
(実施例用のCNT複合線1〜48、比較例用のCNT複合線1〜16について)
CNT線材の製造方法について
先ず、浮遊触媒法で作製したCNTを直接紡糸する乾式紡糸方法(特許第5819888号公報)または湿式紡糸する方法(特許第5135620号公報、特許第5131571号公報、特許第5288359号公報)でCNT線材の素線(単線)を得て、その後CNT線材の素線を束ねるか、或いは撚り方向及び撚り数を調節して撚り合わせて表1〜表4に示すような断面積のCNT線材を得た。
次に、各種紡糸方法で製造されたCNT線材であるCNT素線を、所定の直径の複合線になる様に素線を選ぶ。その後、穴の開いたディスク状の基板に各素線を、基板の中心の穴から法線状に通した後、CNT素線を基板に巻きつけて固定する。もう一方のCNT素線らの端部を一箇所に集めて固定し、その後所定の巻き数になる様に基板を回転させて撚る。そして、複数のCNT線材の撚り方向及び撚り数を表1〜表4に示すように調節して撚り合わせて、表1〜表4に示すような断面積のCNT複合線を得た。
(a)CNT複合線及びCNT線材の断面積の測定
CNT複合線の径方向の断面をイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製IM4000)により切り出した後、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製SU8020、倍率:100〜10,000倍)で得られたSEM像から、CNT複合線の径方向の断面積を測定した。CNT被覆電線の長手方向中心側の任意の1.0mにおいて10cmごとに同様の測定を繰り返し、その平均値をCNT複合線の径方向の断面積とした。なお、CNT複合線の断面積として、CNT複合線内部に入り込んだ樹脂は測定に含めなかった。
また、CNT線材についても同様に、CNT線材の径方向の断面をイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製IM4000)により切り出した後、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製SU8020、倍率:100〜10,000倍)で得られたSEM像から、CNT線材の径方向の断面積を測定した。CNT被覆電線の長手方向中心側の任意の1.0mにおいて10cmごとに同様の測定を繰り返し、その平均値をCNT線材の径方向の断面積とした。CNT線材の断面積として、CNT線材内部に入り込んだ樹脂は測定に含めなかった。
(b)CNT複合線及びCNT線材の撚り数の測定
撚り線の場合、複数の単線を束ね、一端を固定した状態で、もう一端を所定の回数ひねることで、撚り線とすることができる。撚り数は、ひねった回数(T)を線の長さ(m)で割った値(単位:T/m)で表すことができる。
CNT線材及びその複合線をカーボンテープの上に設置し、走査型電子顕微鏡で得られたSEM像を観察する。観察する際は、倍率を1000〜100000倍に設定する。1.0mサンプルで5cmごとに測定し、平均値をひと巻きの長さとして1mあたりの撚り数を算出する。ひと巻き長さの測定方法は、SEM像より、一つの撚り線が線側面の端部から他方の端部までたどり着くまでの距離とCNT線材及び複合線の断面より、線の長手方向の距離を算出し、その二倍の値を一巻きの長手方向の長さとする。この一巻きの長さの逆数をT/mとした。
CNT複合線の上記各測定の結果を、下記表1〜表4に示す。
次に、上記のようにして作製したCNT複合線について、以下の評価を行った。
(1)導電性
抵抗測定機(ケースレー社製、装置名「DMM2000」)にCNT集合体を接続し、4端子法により抵抗測定を実施した。抵抗率は、r=RA/L(R:抵抗、A:CNT集合体の断面積、L:測定長さ)の計算式に基づいて抵抗率を算出した。試験片は、長さ40mmとした。なお、上記試験は、150℃、1時間の加熱処理の前後において、各CNT集合体3本ずつについて行い(N=3)、その平均値を求め、それぞれのCNT集合体の加熱前後の抵抗率(Ω・cm)とした。抵抗率は、小さいほど好ましく、本実施例では、上記加熱前においては7.5×10−5Ω・cm以下を合格レベルとし、上記熱処理後の抵抗率の上昇率(%)[(熱処理後の抵抗率−熱処理前の抵抗率)×100/熱処理前の抵抗率]は、35%以下を合格レベルとし、加熱前の上記抵抗率及び加熱後の抵抗率の上昇率のいずれも合格レベルであるものを良好「〇」、いずれか或いは双方が合格レベルでないものを不良「×」とした。
(2)屈曲性
IEC60227−2に準拠した方法で、100cmのCNT被覆電線に荷重500gfで90度の屈曲を1000回行った。その後、軸方向10cmごとに断面観察を行い、導体と被覆の間に剥離があるかどうかを確認した。剥離がないものを〇、一部剥離したものを△、導体が断線したものを×とした。
(3)ハンドリング性
CNT被覆電線を用いて、直径10mmのコアに幅10mmで5層の巻線を手巻きで一定速度で行った。得られたコイルの断面観察から、占積率(占積率(%)=(CNT被覆電線の断面積の和)/(コイル断面積) × 100)を求めた。コイルは、各CNT被覆電線について5回作製し、占積率は5回の平均値とした。占積率が50%以上はハンドリング性がよいとして「○」、占積率が50%未満はハンドリング性がよくないとして「×」とした。
上記評価の結果を、下記表1〜表4に示す。
Figure 2020184422
Figure 2020184422
Figure 2020184422
Figure 2020184422
上記で作成した実施例用のCNT複合線および比較例用のCNT複合線について必要に応じて、CNT線材を構成する(素線)、複数の素線からなるCNT線材、およびCNT複合線に対してメッキ処理を行った。
特に、実施例用の複合線34および41については、以下のようにしてメッキ処理を行った。作製したCNTの素線に予め酸などで表面を化学処理しメッキを形成しやすい状態にした。その後、電解メッキ法にてCNTの素線上に銀メッキを施した。次に、上記のように銀メッキを施したCNT素線を、穴の開いたディスク状の基板に各素線を、基板の中心の穴から法線状に通した後、CNT素線を基板に巻きつけて固定した。もう一方のCNT素線の端部を一箇所に集めて固定し、その後所定の巻き数になる様に基板を回転させて撚り、その撚り状態を維持したまま、アルゴン雰囲気下で、800〜1000℃でアニールして複数のCNT線材を得た。得られた複数のCNT線材を撚り方向及び撚り数を調節して撚り合わせてCNT複合線を得た。次いで、CNT複合線に電解メッキ法により銅メッキを施した。このようにメッキ処理後の実施例用の複合線34および41について導電性と端子への接続性を評価したところ、何れも良好な結果が得られた。
また、実施例用の複合線18および27については、CNTの素線に予め有機溶剤や酸などで表面を化学処理し不純物を取り除いた状態にした。この後、CNT素線を、穴の開いたディスク状の基板に各素線を、基板の中心の穴から法線状に通した後、CNT素線を基板に巻きつけて固定した。もう一方のCNT素線の端部を一箇所に集めて固定し、その後所定の巻き数になる様に基板を回転させて撚り、その撚り状態を維持したまま、溶融アルミニウムメッキ方法によりメッキを施したCNT線材を複数、得た。この際、CNTを保護するためにアルゴン雰囲気下でCNT素線を溶融したアルミニウム液中に浸漬させた。得られた複数のCNT線材を撚り方向及び撚り数を調節して撚り合わせてCNT複合線を得た。次いで、CNT複合線に電解メッキ法により銅メッキを施した。このようにメッキ処理後の実施例用の複合線18および27について導電性と端子への接続性を評価したところ、何れも良好な結果が得られた。
1 カーボンナノチューブ被覆電線(CNT被覆電線)
2 カーボンナノチューブ複合線(CNT複合線)
10 カーボンナノチューブ線材(CNT線材)
11 カーボンナノチューブ集合体(CNT集合体)
11a カーボンナノチューブ(CNT)
21 絶縁被覆層

Claims (10)

  1. 複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の複数が束ねられてなるカーボンナノチューブ線材の複数が撚り合わされてなるカーボンナノチューブ複合線であって、
    前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1及び前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2の少なくとも一方が1000T/m以上であり、前記カーボンナノチューブ線材および前記カーボンナノチューブ複合線の少なくとも一方がメッキされている、カーボンナノチューブ複合線。
  2. 前記カーボンナノチューブ線材と前記カーボンナノチューブ複合線とがメッキされている、請求項1記載のカーボンナノチューブ複合線。
  3. 前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径が、20μm以上200μm以下であり、
    前記カーボンナノチューブ複合線の円相当直径が、0.1mm以上60mm以下であり、
    前記カーボンナノチューブ複合線を構成する前記カーボンナノチューブ線材の本数が、15以上5000以下である、請求項1または2記載のカーボンナノチューブ複合線。
  4. 前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が0を超え500T/m未満であり、
    前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、
    前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、請求項1または2記載のカーボンナノチューブ複合線。
  5. 前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が500T/m以上1000T/m未満であり、
    前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が1000T/m以上2500T/m未満であり、
    前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、請求項1または2記載のカーボンナノチューブ複合線。
  6. 前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が1000T/m以上2500T/m未満であり、
    前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が0を超え1000T/m未満であり、
    前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、請求項1または2記載のカーボンナノチューブ複合線。
  7. 前記カーボンナノチューブ線材の撚り数t1が2500T/m以上であり、
    前記カーボンナノチューブ複合線の撚り数t2が0を超え500T/m未満であり、
    前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向d1がS方向及びZ方向のうちの一方であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の撚り方向d2が前記カーボンナノチューブ線材の撚り方向と同じである、請求項1または2記載のカーボンナノチューブ複合線。
  8. 前記カーボンナノチューブ線材の円相当直径が0.01mm以上30mm以下であり、且つ前記カーボンナノチューブ複合線の円相当直径が0.1mm以上60mm以下である、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ複合線。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ複合線と、前記カーボンナノチューブ複合線の外周に設けられた絶縁被覆層とを有する、カーボンナノチューブ被覆電線。
  10. 請求項9記載のカーボンナノチューブ被覆電線を有するワイヤハーネス。
JP2019086693A 2019-04-26 2019-04-26 カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス Pending JP2020184422A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019086693A JP2020184422A (ja) 2019-04-26 2019-04-26 カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019086693A JP2020184422A (ja) 2019-04-26 2019-04-26 カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020184422A true JP2020184422A (ja) 2020-11-12

Family

ID=73044708

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019086693A Pending JP2020184422A (ja) 2019-04-26 2019-04-26 カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020184422A (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018170267A (ja) * 2017-02-24 2018-11-01 デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド 金属コーティングを有する電気伝導性カーボンナノチューブワイヤ、および、それを形成する方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018170267A (ja) * 2017-02-24 2018-11-01 デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド 金属コーティングを有する電気伝導性カーボンナノチューブワイヤ、および、それを形成する方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20200258648A1 (en) Carbon nanotube strand wire, coated carbon nanotube electric wire, and wire harness
JP7306996B2 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線及びコイル
JP7393858B2 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線、コイル及び被覆電線
JP7254708B2 (ja) カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス
US20200258652A1 (en) Carbon nanotube strand wire, coated carbon nanotube electric wire, wire harness, wiring for robot, and overhead wiring for train
JP7195711B2 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線
JP7203748B2 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線
JP2020184422A (ja) カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス
JP2020184421A (ja) カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線及びワイヤハーネス
JP2020184420A (ja) カーボンナノチューブ複合線、カーボンナノチューブ被覆電線、ワイヤハーネス、ロボットの配線及び電車の架線
JPWO2019083028A1 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線
CN111418028A (zh) 碳纳米管包覆电线
WO2019083025A1 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線
WO2019083033A2 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線
WO2019083034A1 (ja) カーボンナノチューブ被覆電線
JP2019175855A (ja) カーボンナノチューブ被覆電線

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211217

RD07 Notification of extinguishment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7427

Effective date: 20220209

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220930

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221026

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221221

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230105