JP2022161063A - 亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂密着性に優れた亜鉛めっき鋼板を製造する。【解決手段】少なくとも表層部がη-Znを主相とする亜鉛めっき層を有するめっき鋼板を陽極酸化処理することにより、亜鉛めっき層の最表層に、ZnOを主成分とし、ナノポーラス構造を有する膜厚0.05~5μmのZn酸化皮膜を形成させる。このナノポーラス構造のZn酸化皮膜により、樹脂との接合界面における表面積が増加するとともに、高度なアンカー効果が得られるため、高い樹脂密着性が得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂密着性に優れた亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、自動車のCO排出規制に対応して、車体材料の薄肉化による軽量化を図るために、高強度薄鋼板の自動車への適用が促進されており、優れた防錆性も求められる部位においては高強度溶融亜鉛めっき鋼板の適用が進んでいる。一方、さらに積極的な軽量化を図るため、炭素繊維強化樹脂(CFRP)などの樹脂材料が車体部材に適用されつつある。現状、金属/樹脂の接合にはリベットやボルト等の機械的接合が多く用いられているが、締結部材による重量増加やボルト孔が材料損傷の起点となるといったデメリットを生じる。したがって、接着剤による接合や樹脂材料との直接接合といった接合方法に適した、樹脂密着性に優れる金属材料のニーズは高まっていくものと考えられる。
金属材料の樹脂密着性を改善するには、金属材料の表面に微細凹凸を導入することによって表面積を増加させるとともに、機械的な引っかかりを生じるアンカー効果を発現させること有効である。例えば、特許文献1には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を酸化性の酸性水溶液に浸漬することで表面に微細な凹凸を形成し、アンカー効果によって樹脂密着性を改善する方法が開示されている。
一方、特許文献2には、アルミニウム材表面に陽極酸化によってナノポーラスアルミナを形成し、さらにエッチング処理により表面にスパイク状の微細突起を形成させることで、アンカー効果による高い樹脂密着性を得る方法が開示されている。
特開2011-174099公報 特開2018-58279公報
しかしながら、特許文献1の方法は、めっき表面に混在するδ相(FeZn)、η相(Zn)、ζ相(FeZn13)の溶解速度差を利用してη相とζ相を選択的に溶解させることにより、表面に微細な凹凸を形成するものであることから、めっき表面の主相(主構成相)がη相である溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板に対しては適用することはできない。
また、特許文献2の方法については、基材の金属によって陽極酸化挙動は全く異なることから、その方法を亜鉛めっき鋼板に適用することはできない。加えて、亜鉛めっき鋼板の場合は、鋼板上に数μm~数十μm程度の厚さのZnしか存在しないことから、陽極酸化により消費できるZnに限りがあるだけでなく、過度に厚いZn酸化膜の存在は酸化膜自体が破壊起点となり、却って樹脂密着性を劣化させる可能性もあることから、適切な表面構造を有し、かつ最小限の厚さのZn酸化膜を形成することが課題となる。しかしながら、特許文献2には、亜鉛めっき鋼板に陽極酸化を適用して樹脂密着性を改善する方法は開示も示唆もない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、樹脂密着性に優れた亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すために鋭意検討した結果、少なくとも表層部がη-Znを主相(主構成相)とする亜鉛めっき層を有するめっき鋼板を陽極酸化処理し、亜鉛めっき層の最表層にナノポーラス構造を有する所定膜厚のZn酸化皮膜を形成させることにより、高い樹脂密着性が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]亜鉛めっき層の最表層に、ZnOを主成分とし、ナノポーラス構造を有する膜厚0.05~5μmのZn酸化皮膜を有することを特徴とする亜鉛めっき鋼板。
[2]上記[1]の亜鉛めっき鋼板において、ZnO皮膜の直下のめっき相がη-Zn相を主体とするめっき相であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板。
[3]上記[1]の亜鉛めっき鋼板において、ZnO皮膜の直下のめっき相がFe-Zn合金相を主体とするめっき相であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの亜鉛めっき鋼板において、構造用接着剤により他の部材と接合される部材用であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板。
[5]上記[1]~[3]のいずれかの亜鉛めっき鋼板において、樹脂材料と直接接合または射出成型接合される部材用であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板。
[6]上記[5]の亜鉛めっき鋼板において、直接接合される樹脂材料が炭素繊維強化樹脂材料であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板。
[7]少なくとも表層部がη-Znを主相とする亜鉛めっき層を有するめっき鋼板を陽極酸化処理することにより、亜鉛めっき層の最表層に、ZnOを主成分とし、ナノポーラス構造を有する膜厚0.05~5μmのZn酸化皮膜を形成させることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[8]上記[7]の製造方法において、亜鉛めっき層の最表層に形成されたZnO皮膜の直下のめっき相がη-Zn相を主体とするめっき相であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[9]上記[7]の製造方法において、亜鉛めっき層の最表層に形成されたZnO皮膜の直下のめっき相がFe-Zn合金相を主体とするめっき相であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[10]上記[7]~[9]のいずれかの製造方法において、陽極酸化処理の電解液が、電解質としてアルカリ金属水酸化物または/およびアルカリ土類金属水酸化物を含有する水溶液であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[11]上記[7]~[10]のいずれかの製造方法において、陽極酸化処理の電解液は電解質濃度が10-5~1mol/Lであることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[12]上記[7]~[11]のいずれかの製造方法において、陽極酸化処理を電解電流密度:10~1000Am-2、電解時間:30~1200sの電解条件で行うことを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[13]上記[7]~[12]のいずれかの製造方法において、陽極酸化処理するめっき鋼板は、還元雰囲気中で焼鈍された母材鋼板を亜鉛めっきして得られたものであることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[14]上記[7]~[13]のいずれかの製造方法において、陽極酸化処理するめっき鋼板が溶融亜鉛めっき鋼板であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[15]上記[7]~[13]のいずれかの製造方法において、陽極酸化処理するめっき鋼板が電気亜鉛めっき鋼板であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[16]上記[1]~[3]のいずれかの亜鉛めっき鋼板の片面または両面に、構造用接着剤層を介して他の部材が接合されていることを特徴とする複合材料。
[17]上記[1]~[3]のいずれかの亜鉛めっき鋼板の片面または両面に、樹脂材料が接着剤層を介することなく接合されていることを特徴とする複合材料。
[18]上記[17]の複合材料において、樹脂材料が炭素繊維強化樹脂材料であることを特徴とする複合材料。
本発明の亜鉛めっき鋼板は優れた樹脂密着性を有する。このため構造用接着剤を用いた接合、さらには樹脂材料との直接接合や射出成型接合などに適用した場合に高い接合強度が得られる。また、本発明の製造方法は、そのような樹脂密着性に優れた亜鉛めっき鋼板を安定して製造することができる。
実施例における本発明例の亜鉛めっき鋼板について、SEM観察による表面および45°断面の二次電子像を示す写真
本発明の亜鉛めっき鋼板は、亜鉛めっき層の最表層に、ZnOを主成分とし、ナノポーラス構造のZn酸化皮膜(以下、説明の便宜上「ZnO皮膜」という)を有するものである。このナノポーラス構造のZnO皮膜は、後述するような特定の陽極酸化処理によるめっき表面のη-Znの陽極酸化により形成されるものであり、したがって、残存したη-Znなどを一部含んでいてもよいが、ZnOを主成分とする皮膜(ZnOのみからなる皮膜も含む。)である。
この最表層のZnO皮膜がナノポーラス構造を有することによって、樹脂との接合界面における表面積が増加するとともに、高度なアンカー効果が得られるため、高い樹脂密着性が得られる。ここで、ナノポーラス構造とは、ポア(気孔)とZnOを主成分とするリガメント(骨格)からなる開気孔の多孔質構造のことであり、通常、ポア(気孔)は数nm~数百nm程度の孔径を有する。ナノポーラス構造の形成は、陽極酸化後のサンプル表面を、例えば、表面SEMを用いて5000~100000倍の範囲で数nm~数百nmの孔径のポア(撮像画像の黒色部)を観察することにより確認することができる。
ZnO皮膜の膜厚は0.05~5μmとする。ここで、ZnO皮膜の膜厚は、皮膜断面を観察して求める。具体的には、SEMを用い、ZnO皮膜の膜厚に応じて5000倍~100000倍の範囲で倍率を調整し、皮膜断面を無作為に10視野観察を行い、その中から無作為に選んだ5箇所でのZnO皮膜の膜厚を測定し、その平均値をZnO皮膜の膜厚とする。
ZnO皮膜の膜厚が0.05μm未満では、ZnO皮膜を面内均一に形成できず、表面積の増加効果及びアンカー効果が十分に作用しない場合がある。一方、膜厚が5μm超では、樹脂接合部においてZnO皮膜内部で破壊が生じ、樹脂密着性が却って劣化する場合がある。また、以上の観点から、ZnO皮膜の好ましい膜厚は0.08~3μmである。
ZnO皮膜の下層側のめっき相は特に限定されず、η-Zn相、ζ相、δ相、Γ相、Γ相のうちのいずれかの単独のめっき相であってもよいし、これら2つ以上の複合相であってもよい。後述するようにZnO皮膜は、素材亜鉛めっき鋼板のめっき表面のη-Zn相の陽極酸化によって形成されるものであるので、ZnO皮膜の下層側のめっき相は、もともと素材亜鉛めっき鋼板が有しているめっき相である。ここで、ZnO皮膜の下層側のめっき相は、めっき層断面をSEM観察及びEDX分析やEBSD観察することにより同定することができる。
ZnO皮膜の直下のめっき相を大別すると、η-Zn相を主体(主構成相)とするめっき相の場合と、Fe-Zn合金相(ζ相、δ相、Γ相、Γ相の1種以上)を主体(主構成相)とするめっき相の場合とがある。前者はめっき表面のη-Znの陽極酸化処理後にもη-Znが残る場合、後者はめっき表面のη-Znの陽極酸化処理後にη-Znが残らない場合である。また、前者の場合には、η-Zn相を主体(主構成相)とするめっき相の下に、さらにFe-Zn合金相(ζ相、δ相、Γ相、Γ相の1種以上)を主体(主構成相)とするめっき相を有していてもよい。
次に、本発明の亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
この製造方法では、少なくとも表層部がη-Znを主相(主構成相)とする亜鉛めっき層を有するめっき鋼板(素材亜鉛めっき鋼板)を陽極酸化処理することにより、亜鉛めっき層の最表層に、ZnOを主成分とし、ナノポーラス構造を有する膜厚0.05~5μmのZnO皮膜を形成させるものである。
上述した通り、陽極酸化処理時の挙動は基材金属種により大きく異なる。本発明では、亜鉛めっきの陽極酸化によりナノポーラス構造を有するZnO皮膜を形成させる必要があることから、陽極酸化処理する素材亜鉛めっき鋼板は、少なくとも表層部がη-Znを主相(主構成相)とする亜鉛めっき層を有することが必要である。めっき表層部の主相がζ相、δ相、Γ相などのようなFe-Zn合金相となっている場合は、上述したZnO皮膜を均一に形成することが困難である。但し、陽極酸化反応に関与するめっき表層部(めっき表面側)の主相がη-Znであればよく、陽極酸化反応に関与しないめっき層内部では、Fe-Zn合金相(ζ相、δ相、Γ相など)を含んでいても問題ない。また、めっき表層部はη-Znを主相(主構成相)とするものであるから、一部に副相としてζ相などのFe-Zn合金相が含まれていてもよい。
したがって、亜鉛めっき鋼板の種類も特に制限はなく、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板などを用いることができる。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板であっても、めっき表層部がη-Znを主相(主構成相)とする場合は用いることができる。
上述したようにZnO皮膜の下層側のめっき相は、η-Zn相、ζ相、δ相、Γ相、Γ相の1種以上からなるものであるが、ZnO皮膜は、素材亜鉛めっき鋼板のめっき表面のη-Zn相の陽極酸化によって形成されるものであるので、このZnO皮膜の下層側のめっき相は、もともと素材亜鉛めっき鋼板が有しているめっき相である。したがって、ZnO皮膜の下層側を特定のめっき相にするには、素材亜鉛めっき鋼板の製造時にめっき条件や熱処理条件を調整して所望のめっき相を得るようにすればよい。
亜鉛めっき鋼板の母材となる鋼板についても特別な制限はなく、鋼板表面に亜鉛めっき層が不めっきやピンホールのようなめっき欠落部を最小限とした状態で形成されていれば、成分や機械的特性などは自由に設計してよい。したがって、亜鉛めっき鋼板の製造工程についても特に制限されることはなく、鋼板の焼鈍工程とめっき処理工程は連続ラインで実施しても複数工程に分けて実施してもよい。めっき処理の方法も特に限定されず、代表的な方法として、例えば、溶融亜鉛めっき処理や電気亜鉛めっき処理を用いることができる。
本発明の製造方法では、上述したような素材亜鉛めっき鋼板を陽極酸化処理する。すなわち、電解液(電解質を含む水溶液)中で素材亜鉛めっき鋼板を陽極として電解処理を行う。このような電解処理により、めっき表面のη-Znの陽極酸化によって亜鉛めっき層の上層にナノポーラス構造を有するZnO皮膜を形成させることができる。
この電解処理(陽極酸化処理)における陰極の構成部材には特別な制限はなく、例えば、普通鋼、ステンレス鋼、白金など適当な通電材料を用いることができる。
電解液(水溶液)の電解質に特別な制限はないが、ナノポーラス構造を有するZnO皮膜を均一に形成させるためには、電解液をアルカリ性とすることが好ましい。このため、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、四ホウ酸アンモニウム、シュウ酸などの1種以上を用いることができる。また、Znの陽極酸化においては、Zn(OH)を経由してZnOが生じることを考慮すると、電解液中の陰イオンとしてOHのみ存在させることが好ましいことから、上記の電解質の中でも特にアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)が好ましく、これらの1種以上を用いるのが好ましい。また、そのなかでも、工業的汎用性が高くかつ安価に入手可能である点から水酸化ナトリウムが特に好ましい。
また、ナノポーラス構造を有するZnO皮膜を、必要な膜厚で面内均一に形成させるためには、皮膜の成長と素材亜鉛の溶解をバランスよく同時に生じさせることが好ましい。素材亜鉛の溶解が過度に優勢な場合、形成した酸化皮膜も溶解し、成長しにくくなるため、樹脂密着性の向上効果は小さくなる。一方、素材亜鉛の溶解が過度に抑えられる場合も酸化皮膜が成長せず、樹脂密着性の向上効果は小さくなる。
電解液中の電解質濃度(電解質がアルカリ金属水酸化物または/およびアルカリ土類金属水酸化物の場合には水酸化物イオン濃度。以下同様)が高すぎると、過度の皮膜溶解(素材亜鉛の溶解)が生じ、十分な膜厚のZnO皮膜を面内均一に形成できない場合がある。一方、電解質濃度が低すぎる場合も、皮膜溶解が遅くなるためZnO皮膜の成長が抑制され、十分な膜厚のZnO皮膜を面内均一に形成できない場合がある。電解液中の電解質濃度が10-5~1mol/Lであれば、皮膜の成長と溶解をバランスよく同時に生じさせることができ、所望のナノポーラス構造を有するZnO皮膜を形成させることができるので、電解質濃度は10-5~1mol/Lが好ましく、10-4~0.8mol/Lがより好ましい。
また、陽極酸化処理における電解モードは特に制限されず、定電流や定電圧など任意の方法で実施すればよい。また、電解液の温度も特に制限はないが、水溶液の工業的取扱いを考慮すると10~60℃の間で適宜調整するのが好ましい。
陽極酸化処理で形成されるのはZnOを主成分とする膜厚0.05~5μmのZnO皮膜であり、このZnO皮膜の構成や膜厚の限定理由はさきに述べたとおりである。ZnO皮膜の膜厚は、電解電流密度および電解時間によって制御することができる。
ここで、ZnO皮膜を上記膜厚範囲とするには、電解電流密度を10~1000Am-2、電解時間を30~1200sとすることが好ましい。
電解電流密度が10Am-2未満では、0.05μm以上の膜厚を確保できない場合がある。一方、電解電流密度が1000Am-2を超えると、膜厚が5μmを超える場合がある。以上の観点から、より好ましい電解電流密度は50~800Am-2である。
また、電解時間が30s未満では、0.05μm以上の膜厚を確保できない場合がある。一方、電解時間が1200sを超えると、膜厚が5μmを超える場合がある。以上の観点から、より好ましい電解時間は60~1000sである。
亜鉛めっき鋼板に対して陽極酸化処理を施すタイミングは特に制限はなく、例えば、めっき処理と陽極酸化処理を連続ラインで行う場合、陽極酸化処理をオフラインで行う場合など、適宜な形態を採り得る。
本発明の亜鉛めっき鋼板は樹脂密着性に優れることから、構造用接着剤(例えば、自動車構造用接着剤など)により他の部材と接合される部材用(用途)として好適であり、さらには、炭素繊維強化樹脂(CFRP)などをはじめとする各種樹脂材料との直接接合や射出成型接合などで接合される部材用(用途)としても好適である。なお、構造用接着剤により接合される「他の部材」としては、例えば、金属材料、樹脂材料、繊維材料、それらの複合材料などが挙げられる。
したがって、本発明の亜鉛めっき鋼板は、以下のような複合材料の構成材としても利用することができる。
(i)本発明の亜鉛めっき鋼板の片面または両面に、構造用接着剤層を介して他の部材が接合されている複合材料。
(ii)本発明の亜鉛めっき鋼板の片面または両面に、樹脂材料が接着剤層を介することなく接合されている複合材料。
ここで、上記(i)の構造用接着剤層を介して接合される「他の部材」としては、例えば、金属材料、樹脂材料、繊維材料、それらの複合材料などが挙げられる。また、本発明の亜鉛めっき鋼板と他の部材は、複数枚が積層するようにして接合されてもよい。
また、上記(ii)の複合材料は、樹脂材料が亜鉛めっき鋼板面に直接接合や射出成型接合などで接合されたものであり、樹脂材料としては、樹脂のみからなる材料のほかに、炭素繊維強化樹脂材料などのような樹脂と他の材料との複合材であってもよい。また、本発明の亜鉛めっき鋼板と樹脂材料は、複数枚が積層するようにして接合されてもよい。
表1に示す板厚0.8mmのSPCC(冷間圧延鋼板)を母材とする5種類の亜鉛めっき鋼板を供試材とし、表2に示す条件でそれぞれ陽極酸化処理を行い、この陽極酸化処理後の亜鉛めっき鋼板の樹脂密着性を評価した。また、陽極酸化処理後の亜鉛めっき鋼板について、走査電子顕微鏡(SEM)により表面および断面を観察し、ZnO皮膜の形態と厚さを調べた。それらの結果を、陽極酸化処理条件などとともに表2に示す。
ZnO皮膜厚さは、さきに述べた測定方法で測定した。また、ZnO皮膜直下のめっき相は、さきに述べた方法で同定した。
樹脂密着性は、以下のような試験を行って評価した。
陽極酸化処理された各亜鉛めっき鋼板から25mmW×100mmLのサンプルを切り出し、これを板厚0.8mmで25mmW×100mmLのSPCC材(めっき層を有しない鋼板)と接着剤により接合し、得られた板組について一軸引張試験を行い、接合部が破壊したときの剪断強度から樹脂密着性を評価した。接着剤はサンライズ(株)製「SRボンドE56」を用い、接着面積は25mmW×12.5mmLとした。引張試験における引張速度は5mm/minとした。
比較のために無処理の亜鉛めっき鋼板についても同様の試験を行い、この無処理の亜鉛めっき鋼板の試験による剪断強度と比較した時の剪断強度増加量に基づき、樹脂密着性を以下のように評価した。
× 剪断強度増加量が1MPa未満(効果なし)
○ 剪断強度増加量が1MPa以上3MPa未満(効果あり)
◎ 剪断強度増加量が3MPa以上(顕著な効果あり)
Figure 2022161063000002
Figure 2022161063000003
表2において、ZnO皮膜厚さの記載がない実施例は、SEM観察時にZnO皮膜の形成が認められなかったものである。
図1に、代表例として、表2のNo.1(本発明例)のSEM観察による表面および45°断面の二次電子像を示す。この図1において、(a)は陽極酸化処理前の表面SE像、(b)及び(c)は陽極酸化処理後の表面SE像、(d)は陽極酸化処理後の45°断面SE像である。図1(b)、(c)の表面SE像の黒い点が気孔(ポア)であり、この図1によれば、数nm~数百nmの孔径のポア(気孔)が無数に形成された多孔質構造、すなわちナノポーラス構造が得られていることが判る。
なお、ZnO皮膜の形成が認められた他の実施例(本発明例、比較例)についても、SEM観察により同様のナノポーラス構造が確認された。
表2によれば、本発明例は、無処理の亜鉛めっき鋼板と比較して剪断強度が増加しており、優れた樹脂密着性を有することが分かる。これに対して比較例は、無処理の亜鉛めっき鋼板と比較した剪断強度の増加が認められず、本発明例に較べて樹脂密着性が劣っている。また、本発明例が樹脂密着性に優れるのは、図1に示すように、ナノポーラス構造を有するZnO皮膜が適切な膜厚で形成された結果によるものであることが分かる。

Claims (18)

  1. 亜鉛めっき層の最表層に、ZnOを主成分とし、ナノポーラス構造を有する膜厚0.05~5μmのZn酸化皮膜を有することを特徴とする亜鉛めっき鋼板。
  2. ZnO皮膜の直下のめっき相がη-Zn相を主体とするめっき相であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
  3. ZnO皮膜の直下のめっき相がFe-Zn合金相を主体とするめっき相であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
  4. 構造用接着剤により他の部材と接合される部材用であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板。
  5. 樹脂材料と直接接合または射出成型接合される部材用であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板。
  6. 直接接合される樹脂材料が炭素繊維強化樹脂材料であることを特徴とする請求項5に記載の亜鉛めっき鋼板。
  7. 少なくとも表層部がη-Znを主相とする亜鉛めっき層を有するめっき鋼板を陽極酸化処理することにより、亜鉛めっき層の最表層に、ZnOを主成分とし、ナノポーラス構造を有する膜厚0.05~5μmのZn酸化皮膜を形成させることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  8. 亜鉛めっき層の最表層に形成されたZnO皮膜の直下のめっき相がη-Zn相を主体とするめっき相であることを特徴とする請求項7に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  9. 亜鉛めっき層の最表層に形成されたZnO皮膜の直下のめっき相がFe-Zn合金相を主体とするめっき相であることを特徴とする請求項7に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  10. 陽極酸化処理の電解液が、電解質としてアルカリ金属水酸化物または/およびアルカリ土類金属水酸化物を含有する水溶液であることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  11. 陽極酸化処理の電解液は電解質濃度が10-5~1mol/Lであることを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  12. 陽極酸化処理を電解電流密度:10~1000Am-2、電解時間:30~1200sの電解条件で行うことを特徴とする請求項7~11のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  13. 陽極酸化処理するめっき鋼板は、還元雰囲気中で焼鈍された母材鋼板を亜鉛めっきして得られたものであることを特徴とする請求項7~12のいずれか記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  14. 陽極酸化処理するめっき鋼板が溶融亜鉛めっき鋼板であることを特徴とする請求項7~13のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  15. 陽極酸化処理するめっき鋼板が電気亜鉛めっき鋼板であることを特徴とする請求項7~13のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  16. 請求項1~3のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板の片面または両面に、構造用接着剤層を介して他の部材が接合されていることを特徴とする複合材料。
  17. 請求項1~3のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板の片面または両面に、樹脂材料が接着剤層を介することなく接合されていることを特徴とする複合材料。
  18. 樹脂材料が炭素繊維強化樹脂材料であることを特徴とする請求項17に記載の複合材料。
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