JP2022160864A - 樹脂成形体及びこれを用いた包装材 - Google Patents

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Tetsuzo Sakiyama
愛沙子 藤井
Asako Fujii
健太 小沼
Kenta Konuma
優絵 伊藤
Masae Ito
英夫 浅間
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Abstract

【課題】酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れた樹脂成形体を容易に作製する。【解決手段】熱可塑性樹脂成形体1は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなり水蒸気バリア性を有するベース相2中に、エチレン-ビニルアルコール共重合体が分散相3として分散して存在し、分散相3は、熱可塑性樹脂成形体1の厚み方向に薄い扁平状に形成され、熱可塑性樹脂成形体1の一方の面側から見た透視図において全域に隙間なく分散相3同士が重なって存在するように配置される。さらに、分散相3はそれぞれ、少なくとも一つの他の分散相3との間における分散相間距離が0.1μm以上15μm未満であるという距離条件を満足し、且つ、断面分散サイズが4μm2以上400μm2以下である。そのため、分散相3同士を、より迷路効果が得られるように配置することができ、迷路効果による酸素ガスバリア性を向上させることができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂成形体及びこれを用いた包装材に関する。
包装フィルムや包装体、容器等といった包装材には、内容物保護の観点から、ガスバリア性に優れた各種の樹脂フィルムや樹脂成形体が用いられている。包装材に一般的に用いられる材料としては、ポリエチレン(以下、PEともいう。)やポリプロピレン(以下、PPともいう。)等のオレフィン系樹脂を主体とした材料が用いられており、これらオレフィン系樹脂は水蒸気に対してのバリア性に優れるが、酸素に対してのバリア性に劣る。一方、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHともいう。)等の親水性樹脂では、酸素に対するバリア性に優れており、水蒸気に対しバリア性に劣る。
包装材として求められるバリア性として、酸素バリア性と、水蒸気バリア性との両立が挙げられるが、このように酸素バリア性と水蒸気バリア性とを備える樹脂成形体として、例えば、酸素バリア性を有する樹脂と水蒸気バリア性を有する樹脂とを複数積層することで、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を両立するバリア性を有する樹脂成形体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、例えば、表層にPEやPP等のポリオレフィン樹脂を設け、中間層にEVOH又はMXDナイロンに複合材として酸変性等の相溶化剤を組成とした積層体等も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平10-080984号公報 特開平2006-342046号公報
しかしながら、上述のように酸素バリア性を有する樹脂と水蒸気バリア性を有する樹脂とを複数積層することで、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を両立する方法や、表層にポリオレフィン樹脂を設け、中間層にEVOH又はMXDナイロンに複合材として酸変性等の相溶化剤を組成とした積層体を構成する方法にあっては、各相間の接着性という点で問題があり、また、製造工程が複雑化するという問題がある。
また、酸素バリア性を有する材料と水蒸気バリア性を有する材料とを混合することで、これらバリア性を両立させることも考えられるが、これら材料を単純に混ぜ合わせた溶融ブレンドでは、酸素バリア性が十分に得られないという問題がある。
そこで、本発明は、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れ、且つ容易に作製することの可能な樹脂成形体及びこれを用いた包装体を提供することを目的としている。
本発明の一態様によれば、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなるベース相中に、エチレン-ビニルアルコール共重合体が分散相として分散して存在する樹脂成形体であって、前記分散相は、前記樹脂成形体の厚み方向に薄い扁平状に形成され、当該樹脂成形体を一方の面側から見た透視図において、前記一方の面全域に隙間なく前記分散相同士が重なって存在し、前記分散相同士の間の最短距離を分散相間距離とし、前記分散相はそれぞれ、少なくとも一つの他の分散相との間における前記分散相間距離が0.1μm以上15μm未満であるという距離条件を満足し、且つ、前記分散相それぞれの、厚み方向及び成形方向の両方と平行な断面における断面積の最大値である断面分散サイズが4μm以上400μm以下である樹脂成形体が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、上記態様の樹脂成形体を用いてなる包装材が提供される。
本発明の一態様によれば、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れた樹脂成形体及び包装体を容易に作製することができる。
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂成形体の一例を模式的に示した縦断面図である。 熱可塑性樹脂成形体の他の例を模式的に示した縦断面図である。 熱可塑性樹脂成形体の一例を模式的に示した透視図である。 分散相間距離Aを説明するための熱可塑性樹脂成形体を模式的に示した縦断面図である。 分散相同士の成形方向又は成形幅方向の重なり幅Dを説明するための熱可塑性樹脂成形体を模式的に示した縦断面図である。 分散相の形状の一例を模式的に示した上面図である。 分散相の形状の他の例を模式的に示した上面図である。 分散相の形状の一例を模式的に示した縦断面図である。 分散相の形状の他の例を模式的に示した縦断面図である。 分散相の形状の他の例を模式的に示した縦断面図である。
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに限定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[熱可塑性樹脂成形体の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂成形体1の一例を示す縦断面図である。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂成形体(樹脂成形体)1はフィルム状を有し、ベース相2と、ベース相2の中に分散された分散相3とを備える。ベース相2は、水蒸気バリア性を有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)からなり、分散相3は、酸素バリア性に特化したエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)からなり、ベース相2中に複数個独立して存在する。
熱可塑性樹脂成形体1が包装材料として好適に使用されるためには、適度な柔軟性を持ちならびに加工性が良い必要がある。そのため、ベース相2、つまりポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)としては、オレフィン由来の構成単位を有するポリマーであれば良く、オレフィンをベースとした、低密度ポリエチレン(LDPE)、α-オレフィンとエチレンを共重合した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ホモポリマー、ランダムコポリマー及びブロックコポリマー等のポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンとオレフィンを共重合したシクロオレフィンコポリマー及び、上記オレフィンと酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン-酢酸ビニルコポリマーやオレフィンの側鎖を変性して得られる、エチレン-メチルアクリレート共重合(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のうち単体並びに複数を選択し適宜使用する事が可能である。
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(B)(分散相3)は、エチレン及び酢酸ビニルのラジカル重合等により得られるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を鹸化することにより生成され得る。エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の酸素バリア性は、よりエチレン含有量が少ないこと、または高い加水分解度もしくは鹸化度、高い結晶性により改善され、20mol%以上50mol%以下の範囲内のエチレン成分比率、90%以上の加水分解度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体の使用が好ましい。
[熱可塑性樹脂成形体の構成の変形例]
熱可塑性樹脂成形体1は、図1に示す構成に限らない。熱可塑性樹脂成形体1は、例えば図2の縦断面図に示すように、水蒸気バリア性を有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)からなるベース相2と、酸素バリア性に特化したエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)からなる分散相3と、相溶化剤4と、を備えていてもよい。相溶化剤4は、オレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)から成り、分散相3を個別に包み込むようになっている。
相溶化剤4としてのオレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)は、ベース相2を構成するポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)とは異なる樹脂であって、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)と結合し得る反応基が付与された分子構造からなる共重合体熱可塑性樹脂であり、化学的相性が悪いオレフィン系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体との親和性を向上させる役目を担う相溶化剤として機能する。相溶化剤4は、樹脂混合時に2種ポリマー間の界面張力を低下させ、相分離構造を安定化させる。相溶化剤4として機能する熱可塑性樹脂としては、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)、マレイン酸変性ポリオレフィン(以下、PO-g-MAHともいう。)等が挙げられる。
相溶化剤4は必ずしも必要ではないが、ベース相2と分散相3とを相溶させ、界面密着力を向上させたり、相溶化させることで外観や成形性を向上させたりすることができるため、一定量の添加を行うことが好ましい。
図1及び図2に示す、熱可塑性樹脂成形体1のそれぞれは、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)(ベース相2)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)(分散相3)、又はポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)(ベース相)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)(分散相3)及びオレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)(相溶化剤)の他に、造核剤、補強フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、光安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、気泡防止剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックス等の添加材を含んでいてもよい。これら添加材は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
造核剤及び補強フィラーとしては、タルク、シリカ、クレー、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、炭酸リチウムアルミナ、酸化チタン、アルミニウム、鉄、銀、銅等の金属、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、セルロースミクロフィブリル、酢酸セルロース等のセルロース類、ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリアクリレート繊維等の繊維状フィラー、カーボンナノチューブ等のカーボン類等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、有機ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
熱安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
帯電防止剤としては、ノニオン系化合物、カチオン系化合物、アニオン系化合物等が挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物、窒素系化合物、無機化合物、ホウ素系化合物、シリコーン系化合物、硫黄系化合物、赤リン系化合物等が挙げられる。
難燃助剤としては、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ビスマス化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体1は、単層で用いられるだけでなく、他種の樹脂成形体との積層体として使用されても良い。
[熱可塑性樹脂成形体の構造]
次に、熱可塑性樹脂成形体1の構造を、図1に示す、ベース相2中に、分散相3が分散された構成を有する熱可塑性樹脂成形体1について説明する。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂成形体1は、ベース相2中の分散相3が厚み方向に薄い扁平状に形成されている。
分散相3同士は、上面視において、成形方向及び成形幅方向に重なりをもって分布している。ここで、成形方向とは、熱可塑性樹脂成形体1の製造工程において、フィルム状に成形される熱可塑性樹脂成形体1が流れる方向をいう。また、成形幅方向とは、成形方向と直交する方向をいう。
熱可塑性樹脂成形体1は、例えば熱可塑性樹脂成形体1を一方の面側から見た図3に示す透視図において、成形方向及び成形幅方向において分散相3同士が重なって存在し、その結果、一方の面全域に隙間なく分散相同士が重なって存在する。
この成形方向及び成形幅方向の重なりがあることで、酸素ガスが熱可塑性樹脂成形体1を透過する際に直線状に通過することができず、いわゆる迷路効果による酸素ガスバリア性を向上させている。また、この迷路効果を十分に発揮するためには、図4の縦断面図に示すように、分散相3同士間の距離A(以後、分散相間距離Aともいう。)も小さい方が好ましい。
図4は、分散相間距離Aを説明するための図である。分散相間距離Aは0.1μm以上15μm未満という距離条件を満足することが好ましい。分散相間距離Aが15μm以上であると、酸素ガスが簡単に通過できるため、酸素バリア性が不十分である。また、分散相間距離Aが0.1μm未満では、安定的に製造することが困難である。
なお、ここでいう分散相間距離Aとは、分散相同士の間の最短距離をいう。分散相間距離Aは、一の分散相3と他の少なくとも一つの分散相3との間における分散相間距離Aが距離条件を満足すればよい。図4の場合には、分散相3aの周囲に、分散相3b~3eが存在するが、分散相3aは、分散相3b~3eのうちの少なくとも一つとの間の分散相間距離Aが距離条件を満足すればよい。つまり、分散相3aは、分散相3b~3dとの間でのみ分散相間距離A(ab)~A(ad)が距離条件を満足し、分散相3eとの間の分散相間距離A(ae)は距離条件を満足していない。また、分散相3dは、分散相3aと3eとの間でのみ分散相間距離A(ad)、A(de)が距離条件を満足し、分散相3cとの間の分散相間距離A(dc)は、距離条件を満足していない。
図5は、分散相3同士の重なり幅Dを模式的に示した熱可塑性樹脂成形体1の縦断面図であって、成形方向及び厚み方向の両方と平行な面の断面図である。この分散相3同士の成形方向の重なり幅D及び成形幅方向の重なり幅Dが「0」より大きいことで、迷路効果が発現されるものである。成形方向の重なり幅D及び成形幅方向の重なり幅Dは両方とも2μmより大きいことが好ましく、5μmより大きいことがより好ましい。重なり幅Dが大きくなればなるほど、迷路効果による酸素ガスバリア性がより十分に働く。
なお、ここでいう重なり幅Dとは、一の分散相と、この一の分散相との間の分散相間距離Aが距離条件(0.1μm以上15μm未満)を満足する他の分散相とが重なるときの、その成形方向の重なり幅及び成形幅方向における重なり幅をいう。図5は、成形方向及び厚み方向の両方と平行な面の断面図であるため、分散相3は、成形方向に長く厚み方向も薄い扁平形状となっている。図5の場合、図4に示すように、分散相3aは、分散相3b~3dとの間の分散相間距離A(ab)~A(ad)が距離条件を満足する。例えば、図5に示すように、上面視で、分散相3aと分散相3bとが重なる場合には、分散相3aと分散相3bとの成形方向における重なり幅D(ab)が成形方向の重なり幅Dとなり、図示されないが、成形幅方向における重なり幅が成形幅方向の重なり幅Dとなる。同様に、上面視で、分散相3aと分散相3c、分散相3aと分散相3dが、それぞれ重なる場合は、分散相3aと分散相3cとの成形方向における重なり幅D(ac)が成形方向の重なり幅Dになり、分散相3aと分散相3dとの成形方向における重なり幅D(ad)が成形方向の重なり幅Dになる。分散相3aと分散相3c、分散相3aと分散相3dのそれぞれにおける成形幅方向における重なり幅Dも分散相3aと分散相3bの成形幅方向の重なり幅Dと同様に設定される。
分散相3aと分散相3eとが上面視で重なる場合は、分散相間距離A(ae)が距離条件を満足しないため、成形方向の重なり幅D及び成形幅方向の重なり幅Dは零となる。また、分散相3dは、分散相3a及び3eとの間でのみ分散相間距離A(ad)、A(de)が距離条件を満足する。例えば、上面視で、分散相3dと分散相3a及び3eのそれぞれと重なる場合には、図5において、成形方向における重なり幅D(ad)、D(de)それぞれが、成形方向の重なり幅Dとなる。分散相3dと分散相3cとが上面視で重なる場合は、分散相間距離A(dc)が距離条件を満足しないため、分散相3dと分散相3cとの成形方向における重なり幅は零となり、成形方向の重なり幅Dは零となる。成形幅方向の重なり幅Dも同様にして設定される。
分散相3における断面分散サイズは、4μm以上400μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以上200μm以下である。断面分散サイズが4μmより小さい場合、熱可塑性樹脂成形体1となる、分散相3を含む熱可塑性樹脂をフィルム状に成形する際に、分散相3が扁平状に引き伸ばされ、この引き伸ばされる際に分散相3が簡単にちぎれ、十分に扁平状に成形できなくなる。また、断面分散サイズが400μmより大きい場合、ベース相2中における分散相3の分散が不十分であり、分散相3の個数が減ることで分散相3間の距離が非常に大きくなり、酸素バリア性が十分に発揮できなくなる。なお、ここでいう、断面分散サイズとは、熱可塑性樹脂成形体1の成形方向及び厚み方向の両方と平行な断面における面積のことをいう。
ここで、扁平状の分散相3は、フィルム状の熱可塑性樹脂成形体1を上方向から見た場合に、その平面形状は、図6や図7のように少なくとも熱可塑性樹脂成形体1の成形方向と成形幅方向とに伸びており、さらに層状に形成されていることが好ましい。扁平状の分散相3が層状に形成されると、分散相3同士は重なりやすく、また重なり幅Dも大きくなり、より迷路効果が向上しバリア性が向上する。
図6及び図7は、分散相3の上面視における表面形状の一例を示す概略図である。分散相3は、厚み方向に薄い扁平状であれば、分散相3の表面形状は、図6及び図7に示すように、長方形形状でもよいし、円形形状でもよいし、楕円形状であってもよく、十分な迷路効果を出せるように、少なくとも直交する二方向(X1、X2)へ伸長した形状であればよい。
図8、図9、図10は、分散相3の、厚み方向及び成形方向の両方と平行な断面における模式的な断面図である。分散相3の厚みTに対する成形方向の長さL(「成形方向の長さL/厚みT」)、及び分散相3の厚みTに対する成形幅方向の長さ(「成形幅方向の長さ/厚みT」)は、それぞれ15以上100未満であることが好ましい。「成形方向または成形幅方向の長さ/厚みT」が15未満であると、層状に重なりにくくなるため、バリア性が不十分になりやすい。「成形方向または成形幅方向の長さ/厚みT」が15以上であれば、層状の重なりも大きくなり、バリア性が十分に発揮されやすい。一方、「成形方向または成形幅方向の長さ/厚みT」が100以上となると安定的に製造することが困難である。
なお、分散相3の厚みTは、各形状における厚みの最長値を表す。成形方向の長さLは、成形方向の長さの最長値を表し、成形幅方向の長さは、成形幅方向の長さの最長値を表す。
[分散相の重量割合]
分散相3であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の重量割合は、15wt%以上50wt%以下の範囲が好ましい。この重量割合が15wt%未満であると、分散相3の重なりが不十分になりやすくなり、その結果、バリア性も不十分となる場合がある。重量割合が50wt%を超えると、いわゆる海島構造の海と島が逆転する。すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)がベース相2となる場合があり、その際に成形体表面で水蒸気を吸収しやすくなる場合がある。また、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)が多くなりすぎると、成形体の柔軟性が損なわれ、包装材として受け入れがたい物性となる場合がある。
[相溶化剤の重量割合]
図2に示す熱可塑性樹脂成形体1において相溶化剤4の重量割合は以下のように設定される。なお、図2に示す熱可塑性樹脂成形体1は、図1に示す熱可塑性樹脂成形体1において、さらに相溶化剤4を備えたものであり、同一符号を付与した部分は、図1に示す熱可塑性樹脂成形体1の各部と同様である。
図2に示す熱可塑性樹脂成形体1において、相溶化剤4であるオレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)の重量割合は、0.5wt%以上15wt%以下の範囲である事が好ましい。この重量割合が0.5wt%未満であると、相溶化剤4が分散相3を十分に包み込むことが困難となり、界面密着性の低下などが起こる場合がある。重量割合が15wt%を超えると、相溶化剤4が過剰となり、ベース相2中に相溶化剤4が単独で存在する場合があり、それにより熱可塑性樹脂成形体1の物性の低下を招く場合がある。
[製造方法]
本実施形態の熱可塑性樹脂成形体1の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。
熱可塑性樹脂成形体1の作製方法としては、射出成型機や、押出成形機、ならびにフィードブロックまたはマルチマニホールドを介しTダイで製膜する方法や、インフレーション法を用いた製膜方法を用いる事が可能である。
本実施形態では、押出成形機を用いたフィルム状の熱可塑性樹脂成形体1の成形方法を説明する。
本実施形態では、押出成形機に、本発明に関る熱可塑性樹脂成形体1となる熱可塑性樹脂を混合し押出すことで、フィルム状の熱可塑性樹脂成形体1が作製される。押出成形機にはスクリューを熱可塑性樹脂が通過した後に、熱可塑性樹脂に負荷をかけ昇圧を促すオリフィス等の圧縮機構を有する。この圧縮機構により、分散相3となる樹脂の形状を、より幅広いバリエーションを持って制御できる。
フィルム状に形成された熱可塑性樹脂成形体1の冷却方法に関しては、上記の成形後に、上述の各種成形用機器に準じて各種冷却方法を適用することが可能であり、例えばTダイ法では、エアーチャンバー、バキュームチャンバー、エアナイフ等の空冷方式、冷水パンへ冷却ロールをディッピングする等の水冷方式等特に制限されることはないが、賦形による表面凹凸形状を付与する場合には、シリコーンゴム、NBRゴム、またはフッ素樹脂等を加工したニップロールと、金属を切削加工した冷却ロールと、を0.1MPa以上の圧力を印加した接触部に溶融樹脂を流入し、冷却する方式が特に好ましい。
本発明によって得られる熱可塑性樹脂成形体1のフィルムでは、単体フィルム、または他基材と積層して包装材とすることができる。単体フィルムまたは積層体として用いる場合、スタンディングパウチの他に、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等に用いる事が可能である。また、包装袋の製袋様式は特に制限されるものではない。
上述の様に、単体フィルムを包装材として用いる場合及び単体フィルムを他基材と積層して包装材として用いる場合のどちらでも、適宜、後工程適性を向上するための表面改質処理を実施する事が可能である。例えば、単体フィルム使用時の印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために他基材と接触する面に対して表面改質処理を行う事が可能である。表面改質処理はコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させる事により官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質を好適に用いる事が可能である。
なお、熱可塑性樹脂成形体1の成形方法は上述した方法に限定されるものではなく、成形機により製膜した樹脂成形体を、インラインまたはオフラインの延伸処理を施しても構わない。その他、適宜必要な工程や添加剤を加えることは制限されるものではない。
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
[本実施形態の効果]
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂成形体1は、水蒸気バリア性に優れたポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなるベース相2中に、酸素バリア性に優れたエチレン-ビニルアルコール共重合体を分散相3として分散させ、熱可塑性樹脂成形体1を一方の面側から見た透視図において、一方の面全域に隙間なく分散相3同士が重なって存在するようにしている。さらに、各分散相は、厚み方向に薄い扁平状に形成され、少なくとも一つの他の分散相との間における分散相間距離を0.1μm以上15μm未満とし、且つ、分散相3の厚み方向及び成形方向の両方と平行な断面における断面積の最大値である断面分散サイズを4μm以上400μm以下としている。そのため、熱可塑性樹脂成形体1を一方の側から見た透視図において、全域に隙間なく分散相3同士が重なって存在するだけでなく、より迷路効果を得ることができるように分散相3を配置することができる。そのため、酸素ガスバリア性の向上を図ることができる。その結果、水蒸気バリア性に優れたベース相2中に、酸素パリア性を有する分散相3を分散させ、且つ分散相3をより迷路効果が得られるように配置することで水蒸気バリア性及び酸素バリア性共に優れた熱可塑性樹脂成形体1を容易に作製することができ、また、この熱可塑性樹脂成形体1を用いた包装体を容易に得ることができる。
さらに、分散相間距離が距離条件を満足する分散相が、上面視で重なるときの成形方向の重なり幅及び成形幅方向の重なり幅を両方とも2μmよりも大きくなるようにすること、分散相の厚みに対する成形方向の長さ最長値の比及び分散相の厚みに対する成形幅方向の長さの最長値の比が15以上100未満となるようにすること、分散相3であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の重量割合を、15wt%以上50wt%以下の範囲とすること、により、迷路効果をより向上させることができ、酸素ガスバリア性を向上させることができる。
さらに、図2に示す熱可塑性樹脂成形体1では、分散相3を、オレフィンと官能基含有単量体の共重合体からなる相溶化剤で包み込むようにしている。そのため、ベース相2と分散相3とを相溶させ、界面密着力を向上させたり、相溶化させることで外観や成形性を向上させたりすることができる。
次に、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
〈実施例1〉
ベース相2であるポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)として、株式会社プライムポリマー製のホモポリプロピレン樹脂F-300SPを使用した。分散相3であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)として三菱ケミカル株式会社製のソアノールD2908(エチレン比29mol%)を使用した。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)それぞれの混合割合(wt%)を、(A):(B)=80:20に調整し、ドライブレンドした後単軸押出機に投入した。スクリュー部以降に圧縮率65%の圧縮部を通過するよう流路を設定し、成形温度250℃でTダイキャスト法にて厚み100μmのフィルムを製膜した。なお、スクリュー回転数、引取速度などは適宜調整を行った。
得られた製膜フィルムの、幅方向に沿った断面についてSEM(走査電子顕微鏡)で観察し、分散相の分散形状を測定したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。なお、分散相の分散形状の測定方法は、後述する。
〈実施例2〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数、成形温度を調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は0.1μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例3〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数、成形温度を調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は15μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例4〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数、成形温度を調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なりDは2μm、断面分散サイズは400μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例5〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数、成形温度を調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは5μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例6〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数、成形温度を調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは15μm、断面分散サイズは200μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例7〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数、成形温度を調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは15μm、断面分散サイズは200μm、アスペクト比は15であった。
〈実施例8〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数、成形温度を調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは15μm、断面分散サイズは200μm、アスペクト比は98であった。
〈実施例9〉
実施例1において、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)それぞれの混合割合(wt%)を、(A):(B)=85:15に調整し、ドライブレンドした後単軸押出機に投入した。スクリュー回転数、成形温度を適宜調整した以外は実施例1と同様の作製方法でフィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例10〉
実施例1において、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)及びエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)それぞれの混合割合(wt%)を、(A):(B)=50:50に調整し、ドライブレンドした後単軸押出機に投入した。スクリュー回転数、成形温度を適宜調整した以外は実施例1と同様の作製方法でフィルムを作製した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例11〉
実施例1において、相溶化剤4であるオレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)として三井化学株式会社製の無水マレイン酸変性ポリプロピレンのアドマーQE060を使用した。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)及びオレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)それぞれの混合割合(wt%)を、(A):(B):(C)=70:20:10に調整し、ドライブレンドした後単軸押出機に投入した。スクリュー回転数、成形温度を適宜調整した以外は実施例1と同様の作製方法でフィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは4μm、アスペクト比は10であった。
〈実施例12〉
実施例1において、相溶化剤4であるオレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)として旭化成株式会社製の水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテックH1221を使用した。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)及びオレフィンと官能基含有単量体の共重合体(C)それぞれの混合割合(wt%)を、(A):(B):(C)=70:20:10に調整し、ドライブレンドした後単軸押出機に投入した。スクリュー回転数、成形温度を適宜調整した以外は実施例1と同様の作製方法でフィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは6μm、アスペクト比は10であった。
〈比較例1〉
実施例1において、混合比を(A):(B)=90:10に調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は20μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈比較例2〉
実施例1と同様の作製方法で、フィルムの引取速度を上げて製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは0μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈比較例3〉
実施例11において混合比を(A):(B):(C)=60:20:20に調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは0μm、断面分散サイズは1μm、アスペクト比は3であった。
〈比較例4〉
実施例1と同様の作製方法で、スクリュー回転数を1/10程度まで低くし、成形温度を10℃上げて調整し、フィルムを製膜した。得られた製膜フィルムの断面を観察したところ、分散相間の距離は30μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは1000μm、アスペクト比は10であった。
〈比較例5〉
実施例1において、ベース相2として、宇部興産株式会社製のナイロン樹脂1022B10を使用した。スクリュー回転数、成形温度を適宜調整した以外は実施例1と同様の作製方法でフィルムを作製した。得られた製膜フィルムの断面から、分散相間の距離は4μm、分散相間の成形幅方向の重なり幅Dは2μm、断面分散サイズは10μm、アスペクト比は10であった。
〈性能評価方法〉
[分散相(エチレン-ビニルアルコール共重合体(B))の分散形状の測定]
実施例1~12及び比較例1~5における、分散相の分散形状の測定は以下の手順で行った。
得られた製膜フィルムの、幅方向に沿った断面において、分散相3の断面分散サイズ、「成形幅方向の長さ/厚みT」としてのアスペクト比、及び分散相間の距離、分散相間の成形幅方向重なり幅Dについて、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(形式「S-4800」)により分散相の形状を観察し、倍率1000倍の画像を得た。アスペクト比は、画像内の無作為に選択した各20個の分散相について各々の長軸及び短軸を計測し、長軸の平均値を長軸分散径平均値とし、短軸の平均値を短軸分散径平均値として算出し、「長軸径/短軸径」(=長軸分散径平均値/短軸分散径平均値)を計算した。断面分散サイズについては、分散相3を無作為に20個選択し断面積を計測し平均値を算出した。分散相間の距離及び分散相間の成形幅方向重なり幅Dは、画像内から無作為に20箇所を選択し、各箇所において、分散相間の距離と成形幅方向重なり幅Dを計測し平均値を算出した。算出した分散相間の距離を、分散相間距離Aに相当する測定値とした。
なお、分散相の分散形状は成形方向に比較して成形幅方向の方が制御しにくいため、ここでは、熱可塑性樹脂成形体1の特性に、より影響を与える成形幅方向の分散形状を評価した。
[酸素バリア性評価]
酸素バリア性評価では、GTRテック株式会社製の高感度水蒸気透過度測定装置 GTR-3000を用い、30℃、ドライ環境で酸素透過度を測定した。酸素透過度がポリプロピレンフィルム(PP)単体比として、サンプル/PP単体で0.02(1/50)以下となる場合は、酸素に対し高バリア性フィルムであると判定して「◎」とし、0.02より大きく0.1(1/10)以下となる場合は、酸素に対し低バリア性フィルムであると判定して「〇」とし、0.1より大きい場合は「×」とした。
上記各実施例及び、各比較例における評価結果を表1に記載する。表1において、「←」は、左隣欄の内容と同一であることを示す。
なお、水蒸気バリア性は、ベース相2として水蒸気バリア性を有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いた場合を「○」、ベース相2として水蒸気バリア性を持たないナイロン樹脂を用いた場合を「×」とした。
また、総合判定は、酸素バリア性および水蒸気バリア性の両方が「〇」又は「◎」の場合を〇とし、どちらか一方でも「×」があった場合は「×」として評価した。

Figure 2022160864000002
〈評価結果〉
表1に示したように、実施例1~12では、酸素バリア性及び水蒸気バリア性ともに良好で、優れたバリア樹脂成形体として提供できることが確認された。
一方、比較例1では、分散相間距離Aが大きく酸素ガスが簡単に通過できるため、酸素バリア性が不十分である。
また比較例2では、分散相間の成形幅方向の重なり幅が0であり重なりがないため、いわゆる迷路効果が生じず、酸素ガスが簡単に透過できる状態となり、酸素バリア性が不十分である。
比較例3では、断面分散サイズが小さすぎることで、アスペクト比を大きくしようとしても分散相がちぎれてしまいアスペクト比を大きくすることができず、その結果分散相間の成形幅方向の重なりがないため、迷路効果が生じなく、酸素ガスが簡単に透過できる状態となり、酸素バリア性が不十分である
比較例4では、断面分散サイズが大きすぎることで、分散相の個数が少なくなり、各分散相間の距離が広がってしまっていた。それにより、酸素ガスが簡単に通過できるため、酸素バリア性が不十分である。
比較例5では、ベース相2がオレフィン樹脂でなくナイロン樹脂のため、水蒸気を吸収してしまい、水蒸気バリア性が悪く不十分である。
本発明は、酸素バリア性、及び水蒸気バリア性を両立する熱可塑性樹脂成形体として、これを用いた包装フィルムや包装体、容器等といった包装材として利用できる。
1 熱可塑性樹脂成形体
2 ベース相
3 分散相
4 相溶化剤
A 分散相間距離
D 分散相間の成形方向の重なり幅及び成形幅方向の重なり幅

Claims (6)

  1. ポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなるベース相中に、エチレン-ビニルアルコール共重合体が分散相として分散して存在する樹脂成形体であって、
    前記分散相は、前記樹脂成形体の厚み方向に薄い扁平状に形成され、
    当該樹脂成形体を一方の面側から見た透視図において、前記一方の面全域に隙間なく前記分散相同士が重なって存在し、
    前記分散相同士の間の最短距離を分散相間距離とし、
    前記分散相はそれぞれ、少なくとも一つの他の分散相との間における前記分散相間距離が0.1μm以上15μm未満であるという距離条件を満足し、且つ、前記分散相それぞれの、厚み方向及び成形方向の両方と平行な断面における断面積の最大値である断面分散サイズが4μm以上400μm以下であることを特徴とする樹脂成形体。
  2. 前記分散相それぞれは、上面視で、前記分散相間距離が前記距離条件を満足する前記他の分散相と重なり、その成形方向の重なり幅及び当該成形方向に対して直交する方向である成形幅方向の重なり幅は、2μmよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 前記分散相の厚みに対する前記成形方向の長さの比(成形方向長さ/厚み)が、15以上100未満であり、前記分散相の厚みに対する前記成形方向に対して直交する方向である成形幅方向の長さの比(成形幅方向長さ/厚み)が15以上100未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
  4. 前記分散相の重量割合が15wt%以上50wt%以下であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
  5. オレフィンと官能基含有単量体の共重合体を相溶化剤として含み、
    前記分散相は、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体が、前記相溶化剤で周囲を包まれた状態で、前記ベース相中に複数個独立して存在することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂成形体を用いてなることを特徴とする包装材。
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