JP2022159178A - 抗老化用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規な抗老化用組成物の提供。【解決手段】本発明によれば、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、抗老化用組成物が提供される。本発明によればまた、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、NMN産生促進用組成物、Nampt遺伝子発現増強用組成物およびSirt1遺伝子発現増強用組成物も提供される。前記油脂は好ましくは、β位-パルミチン酸を含む油脂であり、前記組成物は好ましくは、食品組成物である。【選択図】図1

Description

本発明は、抗老化用組成物に関する。本発明はまた、NMN産生促進用組成物、Nampt遺伝子発現増強用組成物およびSirt1遺伝子発現増強用組成物に関する。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は多くの細胞の酸化還元反応に関与する普遍的で必須の補酵素である。哺乳動物におけるNAD+の主要な生合成経路であるサルベージ経路は、律速酵素であるニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)により制御される経路であり、NAMPTによってニコチンアミドがニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)に変換される。生成されたNMNはニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT1)によってNAD+に変換される。
近年の研究により、NMNは加齢に伴い減少すること、また、加齢関連疾患に対する効果や抗老化作用を有することが明らかになっている(特許文献1および非特許文献1)。このため、生体内のNMN産生の促進は老化に伴って減退するさまざまな機能低下の抑制にとって重要であると考えられる。
特表2020-530460号公報
Mills et al., Cell Metab. 2016 Dec; 24(6):795-806
本発明は、新規な抗老化用組成物の提供を目的とする。本発明はまた、新規なNMN産生促進用組成物、Nampt遺伝子発現増強用組成物およびSirt1遺伝子発現増強用組成物の提供を目的とする。
本発明者らは今般、β位-パルミチン酸をヒト培養細胞に添加することにより、Nampt遺伝子発現量およびSirt1(サーチュイン1)遺伝子発現量が有意に上昇することを見出した。本発明者らはまた、β位-パルミチン酸をヒト培養細胞に添加することにより、β位-ミリスチン酸およびβ位-ステアリン酸の添加と比較して、Nampt遺伝子発現量およびSirt1遺伝子発現量が有意に上昇することを見出した。本発明者らはまた、β位-パルミチン酸を含む試験食を摂取させたラットにおいて、試験食中のβ位-パルミチン酸の比率の増加に依存して肝臓中のNMN量が有意に増加することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、抗老化用組成物および抗老化剤。
[2]β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、NMN産生促進用組成物およびNMN産生促進剤。
[3]β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、Nampt遺伝子発現増強用組成物およびNampt遺伝子発現増強剤。
[4]β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、Sirt1遺伝子発現増強用組成物およびSirt1遺伝子発現増強剤。
[5]β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防用組成物および前記疾患または状態の維持、改善、治療または予防剤。
[6]β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、SIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防用組成物および前記疾患または状態の維持、改善、治療または予防剤。
[7]前記油脂が、β位-パルミチン酸を含む油脂である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物および剤。
[8]前記油脂において、全パルミチン酸に対するβ位におけるパルミチン酸の比率が54%以上98%未満である、上記[7]に記載の組成物および剤。
[9]前記油脂が、β位-パルミチン酸を含む油脂であり、かつ、前記油脂において、全パルミチン酸に対するβ位におけるパルミチン酸の比率が54%以上98%未満である、上記[5]に記載の組成物および剤。
[10]前記油脂が、β位-パルミチン酸を含む油脂であり、かつ、前記油脂において、全パルミチン酸に対するβ位におけるパルミチン酸の比率が54%以上98%未満である、上記[6]に記載の組成物および剤。
[11]食品組成物である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の組成物および剤。
本明細書において、上記[1]、[2]、[3]、[4]、[5]および[6]の組成物を「本発明の組成物」ということがある。また、本明細書において、上記[1]、[2]、[3]、[4]、[5]および[6]の剤を「本発明の剤」ということがある。
本発明の組成物および剤の有効成分は、長年食品の原料として使用されてきた油脂である。したがって、本発明の組成物および剤は、抗老化効果を奏するとともに、長期間にわたって継続的に摂取しても副作用の懸念がなく、安全性が高い点において有利である。
図1は、HepG2細胞における2-パルミトイルモノグリセロール添加によるNampt遺伝子およびSirt1遺伝子発現量を示した図(n=3)である(例1)。測定値は平均±標準偏差で示した。また、小文字の異符号は有意差を示す(Tukey-Kramer test)。 図2は、HepG2細胞におけるβ位-パルミチン酸(2-パルミトイルモノグリセロール)またはβ位-オレイン酸(2-オレオイルモノグリセロール)添加によるNampt遺伝子およびSirt1遺伝子発現量を示した図(n=3)である(例1)。測定値は平均±標準偏差で示した。また、**は有意差を示す(p<0.01;Tukey-Kramer test)。 図3は、HepG2細胞におけるβ位-ミリスチン酸(2-ミリストイルモノグリセロール)、β位-パルミチン酸(2-パルミトイルモノグリセロール)またはβ位-ステアリン酸(2-ステアロイルモノグリセロール)添加によるNampt遺伝子およびSirt1遺伝子発現量を示した図(n=3)である(例2)。測定値は平均±標準偏差で示した。また、*および**は有意差を示す(それぞれp<0.05、p<0.01;Tukey-Kramer test)。 図4は、L群、M群、H群における肝臓中のNMN濃度を示した図(n=4)である(例3)。測定値は平均±標準偏差で示した。また、*は有意差を示す(p<0.05;Tukey-Kramer test)。
発明の具体的説明
本発明の組成物および剤は、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなるものである。本発明において「β位-長鎖飽和脂肪酸」とは、グリセリドのβ位に長鎖飽和脂肪酸が結合した物質であり、化学式上において同一の化合物をすべて指す。すなわち、β位-長鎖飽和脂肪酸は少なくともβ位に長鎖飽和脂肪酸が結合したアシルグリセロールであり、β位に長鎖飽和脂肪酸が結合したアシルグリセロール(モノアシルグリセロール)、β位に長鎖飽和脂肪酸が結合し、2つのα位のいずれかに任意の脂肪酸が結合したアシルグリセロール(ジアシルグリセロール)およびβ位に長鎖飽和脂肪酸が結合し、2つのα位のそれぞれに任意の脂肪酸が結合したアシルグリセロール(トリアシルグリセロール)を含む。また、β位-長鎖飽和脂肪酸は、純品であっても、他の物質との混合物であってもよい。例えば、公知の測定方法でβ位-長鎖飽和脂肪酸を測定し、その存在を確認した原料をそのまま使用してもよい。前記長鎖飽和脂肪酸としては、炭素数12~24の飽和脂肪酸が挙げられ、例えば、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸およびリグノセリン酸が挙げられる。
本発明の組成物および剤の一態様によれば、β位-パルミチン酸を含む油脂を有効成分として含んでなるものが提供される。β位-パルミチン酸の豊富な原料(混合物)として、代表的なものがラードであり、これを本発明の組成物および剤に使用することもできる。一方、ラードには独特の「けもの臭」があり、これを解消するために、パルミチン酸の豊富な植物油脂を化学的に改変または酵素的に改変して、β位-パルミチン酸の豊富な原料を得ることも公知である(特表平8-509620号公報、特表平8-509621号公報、特開平6-70786号公報)。あるいは、β位-パルミチン酸の市販品(例えば、Betapol(ブンゲ ロデルス クロクラーン社))を購入して、適宜他の原料と配合して本発明の組成物および剤に使用してもよい。
本発明の有効成分であるβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂においては、β位(sn-2位)に結合する脂肪酸総量に対するグリセリドのβ位における長鎖飽和脂肪酸の比率(質量比)の下限値は、本発明の効果をよりよく発揮させる観点から、10%とすることができ、また、安定的製造の観点から、上限値は90%を超えない範囲とすることができる。
本発明の有効成分であるβ位-パルミチン酸を含む油脂においては、β位(sn-2位)に結合する脂肪酸総量に対するグリセリドのβ位におけるパルミチン酸の比率(質量比)の下限値は、本発明の効果をよりよく発揮させる観点から、10%とすることができ、好ましくは50%、より好ましくは74%である。また、上記比率の上限値は、安定的製造の観点から、90%を超えない範囲とすることができ、好ましくは85%、より好ましくは78%である。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、50%以上90%未満、70~85%あるいは74~78%とすることができる。
本発明の有効成分であるβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂においてはまた、全長鎖飽和脂肪酸に対するグリセリドのβ位における長鎖飽和脂肪酸の比率(長鎖飽和脂肪酸のβ位への結合比率、質量比)の下限値は、本発明の効果をよりよく発揮させる観点から、10%とすることができ、また、安定的製造の観点から、上限値は98%を超えない範囲とすることができる。
本発明の有効成分であるβ位-パルミチン酸を含む油脂においてはまた、全パルミチン酸に対するグリセリドのβ位におけるパルミチン酸の比率(パルミチン酸のβ位への結合比率、質量比)の下限値は、本発明の効果をよりよく発揮させる観点から、50%とすることができ、好ましくは54%、より好ましくは65%、さらに好ましくは67%、特に好ましくは68%である。また、上記比率の上限値は、安定的製造の観点から、98%を超えない範囲とすることができ、好ましくは75%、より好ましくは74%、さらに好ましくは73%、特に好ましくは72%である。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、50%以上98%未満、54~75%、65~74%、67~73%あるいは68~72%とすることができる。
本発明の組成物および剤は、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を単独で含むものとすることができ、あるいは、他の成分と混合して含むものとすることもできる。本発明の組成物および剤中のβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂の含有量は、例えば、0.1~70質量%とすることができ、好ましくは1~20質量%である。本発明においては、本発明の剤をβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂からなるものとし、本発明の組成物をβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を含んでなるものとすることができる。
本発明の組成物および剤は、β位-パルミチン酸を含む油脂を単独で含むものとすることができ、あるいは、他の成分と混合して含むものとすることもできる。本発明の組成物および剤中のβ位-パルミチン酸を含む油脂の含有量は、例えば、0.1~20質量%とすることができ、好ましくは1~9質量%である。
本発明の組成物および剤は、β位-パルミチン酸を含む油脂以外に中鎖脂肪酸を含む油脂(例えば、中鎖脂肪酸グリセリド)、一般の食用油脂(例えば、オリーブ油、大豆油等の長鎖脂肪酸を主体とした油脂)等の他の油脂を含んでいてもよい。本発明の組成物および剤中のβ位-パルミチン酸を含む油脂以外の油脂の含有量は、例えば、0~99質量%とすることができ、好ましくは10~40質量%である。
後記実施例によると、β位-パルミチン酸によりNampt遺伝子の発現量が増加すること、また、β位-パルミチン酸によりSirt1遺伝子の発現量が増加することも確認された。また、β位-パルミチン酸の摂取によりNampt遺伝子の下流のNMNの生成量が増加することが確認された。ここで、NAD+の前駆体であるNMNの生成量が増加することでNAD+の生成量が増大し、SIRT1酵素はその補酵素であるNAD+が存在することにより活性発現する(吉野純・今井眞一郎, 化学と生物 2013; 51(3):147-153)。したがって、β位-パルミチン酸の摂取によりNMNの生成量を増加させることができるとともにSirt1遺伝子の発現増強によりSIRT1酵素活性を増強することができ、ひいてはNAD+依存性タンパク質脱アセチル化反応、すなわち、抗老化作用を増強することができる。したがって、β位-パルミチン酸は、NMN産生促進、Nampt遺伝子発現増強およびSirt1遺伝子発現増強のために用いることができるとともに、抗老化のために用いることができる。
本発明において「老化」とは一般的に、成熟期以降に起こる生理機能の変化(衰退)を意味し、より具体的には、例えば、冠動脈硬化、運動時の最大心拍出量の低下等の心血管系の変化;肺胞数の減少、肺の弾性力の低下等の呼吸器系の変化;咀嚼や嚥下能力の低下による誤嚥性肺炎、消化管運動の低下による便秘や便通の異常、胃内容物の食道への逆流による逆流性食道炎等の消化器系の変化;糸球体の喪失や腎血流量の低下、ろ過率の低下等の腎泌尿器系の変化;骨量や骨密度の低下による骨粗鬆症や骨折、関節液減少や滑膜の弾力低下による関節炎等の骨格系の変化;視力低下、聴力低下等の視聴覚機能の変化が挙げられる。本発明において「抗老化」とは、老化による変化前の状態および老化による変化後の状態を維持すること(すなわち、老化による変化前の状態および老化による変化後の状態を少なくともそのままの状態で保つこと、好ましくは老化による変化前の状態および老化による変化後の状態が変化すること(例えば悪化すること)を抑制または防止すること)、並びに老化による変化前の状態および老化による変化後の状態を改善すること(すなわち、老化による変化前の状態および老化による変化後の状態をよりよい状態にすること)を含む。
上記に加えこれまでに、生体内におけるNMNの生成量の増加あるいはSirt1等のSirt遺伝子の発現増強および/またはSIRTの活性化増強により、ガン、心血管疾患、II型糖尿病、肥満・耐糖能異常、高血圧および黄斑変性症を緩和させることができることが知られている(Imai & Guarente, Trends Cell Biol. 2014 August; 24(8):464-471)。また、生体内におけるNMNの生成量を増大させることあるいはSirt1等のSirt遺伝子の発現増強および/またはSIRTの活性化増強により、(年齢に伴う)体重増加の抑制;食事摂取量、酸素消費、エネルギー消費または身体機能の増加または上昇;(体重減少非依存的な)インスリン抵抗性または血清中脂質プロファイルの改善;眼の機能(神経変性疾患による低下または悪化)、骨密度または骨髄リンパ球組成の改善;および骨格筋におけるミトコンドリア機能の改善を図ることができることが知られている(非特許文献1)。さらには、生体内におけるNMNの生成量を増大させることあるいはSirt1等のSirt遺伝子の発現増強および/またはSIRTの活性化増強により、肥満関連疾患、アテローム性動脈硬化を緩和し(Li et al., Mol Cell. 2007 Oct; 28(1):91-106)、脂肪肝、肝臓の炎症、肝臓の小胞体ストレスを抑制する(Purushotham et al., Cell Metab. 2009 Apr; 9(4):327-38)ことが知られている。ここで、NMNの生産量の増加に基づく作用は、NMNの増加により生成が促進されるNAD+が、NAD依存性タンパク脱アセチル化酵素であるSIRTの活性化を介して発揮する作用であることが知られている。また、Sirt1等のSirt遺伝子の発現増強は、SIRTタンパク質量を増加させ、NAD+で活性化されるSIRT量を増加させ、ひいてはSIRTの活性化を増強することが知られている。したがって、β位-パルミチン酸は、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患および状態を維持、改善、治療または予防するために用いることができるとともに、Sirt遺伝子の発現増強および/またはSIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患および状態を維持、改善、治療または予防するために用いることができる。なお、本発明においてSIRTとは、サーチュイン(Sirtuin)ファミリーを構成するSIRT1からSIRT7までの7種類のタンパク質のいずれかを意味し、特に限定されないが、好ましくはSIRT1である。
NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患および状態、並びにSirt1等のSirt遺伝子の発現増強および/またはSIRTの活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患および状態としては、老化(特にNAD+依存性タンパク質脱アセチル化反応を伴うもの);ガン;心血管疾患;II型糖尿病;肥満・耐糖能異常;高血圧;黄斑変性症;(年齢に伴う)体重増加;食事摂取量、酸素消費、エネルギー消費または身体機能;(体重減少非依存的な)インスリン抵抗性または血清中脂質プロファイル;眼の機能(特に神経変性疾患による眼の機能の低下または悪化)、骨密度または骨髄リンパ球組成;骨格筋におけるミトコンドリア機能;肥満関連疾患;アテローム性動脈硬化;脂肪肝;肝臓の炎症;および肝臓の小胞体ストレスが挙げられる。
本発明において「改善」とはある状態をよりよい状態にすることを意味する。本発明において「維持」とはある状態を少なくともそのままの状態で保つことを意味し、ある状態が変化することを抑制または防止することを含む。「ある状態」とは変化した状態および正常な状態を含み、「正常な状態」は変化前の状態を含む。また、「変化」は例えば悪化である。本発明において「改善」の一態様としては、悪化した状態の回復が挙げられる。本発明において「維持」の一態様としては、悪化した状態または正常状態の悪化の抑制または防止が挙げられる。
本発明の組成物および剤は、医薬品および医薬部外品(例えば医薬組成物)、食品(例えば食品組成物)、飼料(例えば飼料組成物)等の形態で提供することができ、下記の記載に従って実施することができる。
本発明においてβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂は、ヒトおよび非ヒト動物に経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明においてβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂は、ヒトおよび非ヒト動物に経管投与、経鼻経管投与等の経口投与以外の体内への投与も本発明の組成物および剤の形状に応じて可能である。例えば、本発明の組成物および剤を、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を含む粘性を有する液状の組成物、あるいは、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を含む半固形状の組成物とすることで、咀嚼や嚥下の機能が低下し、経口摂取あるいは経口投与ができないヒトおよび非ヒト動物に対しても摂取させ、あるいは投与することができる。本発明の組成物および剤を経口摂取以外で摂取させるか、あるいは投与することにより、摂取または投与対象の咀嚼や嚥下の機能が加齢等により低下したとしても、対象において抗老化作用が期待できる。
本発明においてβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂は、ヒトおよび非ヒト動物に経口摂取させることができる。β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を経口摂取させる場合には、単離、精製または粗精製された形態のものであっても、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を含む食品あるいは食品の原料の形態であってもよい。
本発明においてβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を食品として提供する場合には、該油脂を食品に含有させることができ、このような食品はβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効量含有した食品である。本発明においてβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を食品として提供する場合にはまた、該油脂を既に含んでいる食品や原料を本発明の食品として提供することができ、このような食品はβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効量含有した食品である。ここで、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲でβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂が摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、えん下困難者用食品、乳児用調製乳、妊産婦、授乳婦用粉乳、病者用食品)、栄養補助食品(サプリメント)、幼児用食品を含む意味で用いられる。
「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料や流動食のような液状の形態であっても、ペースト状、半液体、ゲル状の形態であっても、固形、バー、粉末の形態であってもよい。本発明の組成物および剤の使用形態が粉末の場合、噴霧乾燥、凍結乾燥等の手段を用いることにより製造することができる。
本発明の組成物および剤を、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を含有させてなる食品として提供する場合には、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を配合する以外は通常の食品の製造方法に従って製造することができる。すなわち、本発明の食品は、液状、固形、粉末等の形態を問わず、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を、各種食品(例えば、牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チョコレート、グミ、チーズ、パン、ビスケット、クッキー、クラッカー、ピッツァクラスト、ゼリー、アイスクリーム、高エネルギーサプリメント、高エネルギーペースト、調製粉乳、流動食、特別用途食品、病者用食品、総合栄養食品、栄養補助食品、冷凍食品、加工食品、その他の市販食品)またはその原料に添加して調製することができる。また、対象が自身で、各種性状(液状、固形、粉末、ペースト等)のβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を、水や飲食品や食事に添加して摂取することもできる。特に本発明においては、流動食にβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効量配合することにより、抗老化機能を併せ持った食品とすることができ、このような食品は咀嚼や嚥下の機能が低下した病者や高齢者に摂取させるか、あるいは投与することができるため有利である。
本発明の組成物および剤を、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を既に含んでいる食品や原料(特に加工原料)の形態で提供する場合には、そのような食品および原料としては、例えば、ラードや植物油脂等の食用油脂が挙げられる。
本発明の組成物および剤は、抗老化作用が求められる中高年者や高齢者への摂取に好適である。
本発明においては、例えば、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を他の原料等と組み合わせて、抗老化を目的とした組成物やサプリメント等として提供することができる。
本発明の組成物および剤の医薬品または食品としての1日当たりの摂取量あるいは投与量は、対象の病態、年齢、症状、体重、用途等によって異なるため、特に限定されない。抗老化を目的とする摂取および投与の場合、成人1日当たりのβ位-長鎖飽和脂肪酸(特に、β位-パルミチン酸)を含む油脂の摂取または投与量(固形分換算)は、特に制限されないが、その下限は、例えば、0.01gであり、好ましくは0.1gである。また、その上限は、例えば、65gまたは60gであり、好ましくは5gまたは1gである。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。また、摂取または投与の回数および頻度は、求められる抗老化作用の程度に応じて適宜定めることができる。摂取量および投与量並びに摂取間隔および投与間隔は、対象の担当医、薬剤師、管理栄養士、栄養士、介護福祉士、ケアマネジャー、ヘルパー、介護施設の職員や、対象の家族等の介護者、対象自身が決定することができる。
本発明の組成物および剤は、他の経口摂取できる組成物や剤と併用することに制限はない。例えば、抗酸化物質等の抗老化作用が期待できる素材や組成物と併用することで、抗老化作用効果をさらに高めることができる。
本発明の組成物および剤は、抗老化作用に有効な1日分の摂取量の組成物および剤で提供することができる。この場合、本発明の組成物および剤は、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂の1日分の有効摂取量を摂取できるように包装されていてもよく、1日分の有効摂取量が摂取できる限り、包装形態は一包装であっても、複数包装であってもよい。包装形態で提供する場合、1日分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する記載が包装になされているか、または該記載がなされた文書を一緒に提供することが望ましい。また、1日分の有効摂取量を複数包装で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量の複数包装をセットで提供することもできる。
本発明の組成物および剤を提供するための包装形態は、一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、袋、ソフトバッグ、紙容器、缶、ボトル、カプセル等の収容可能な容器等が挙げられる。
本発明の組成物および剤はその効果をよりよく発揮させるために、少なくとも1週間継続的に投与または摂取させることが望ましく、投与および摂取期間は好ましくは継続的に2週間以上(例えば2~14週間)、より好ましくは継続的に3週間以上(例えば3~21週間)である。ここで、「継続的に」とは1週当たり少なくとも1回(例えば1~7回)投与または摂取を続けることを意味する。本発明の組成物および剤を包装形態で提供する場合には、継続的摂取のために一定期間(例えば、1週間)の有効摂取量をセットで提供してもよい。
本発明の食品には抗老化作用を有する旨の表示が付されてもよい。この場合、消費者に理解しやすい表示とするため、本発明の食品には、例えば、以下の一部または全部の表示が付されてもよい。
・老化が気になる方へ
・加齢や飲酒により肝機能が低下した方の脂肪を消費しやすくする(肝機能の向上と改善)
・肥満気味(太り体質)の方の脂肪利用性を高め、体脂肪を減らす(食べても肝臓に脂肪が蓄積しにくい)
・エネルギーが不足した方の運動機能を改善する(フレイルの改善)
・食欲を増進させたい方へ
本発明の別の面によれば、有効量のβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、抗老化方法、NMN産生促進方法、Nampt遺伝子発現増強方法またはSirt1遺伝子発現増強方法が提供される。本発明によればまた、有効量のβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防方法が提供される。本発明によればまた、有効量のβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、SIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防方法が提供される。本発明の方法は、本発明の組成物および剤に関する記載に従って実施することができる。
本発明の別の面によればまた、抗老化剤、NMN産生促進剤、Nampt遺伝子発現増強剤またはSirt1遺伝子発現増強剤の製造のための、抗老化剤、NMN産生促進剤、Nampt遺伝子発現増強剤またはSirt1遺伝子発現増強剤としての、あるいは、抗老化方法、NMN産生促進方法、Nampt遺伝子発現増強方法またはSirt1遺伝子発現増強方法における、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物の使用が提供される。本発明によればまた、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防剤の製造のための、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防剤としての、あるいは、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防方法における、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物の使用が提供される。本発明によればまた、SIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防剤の製造のための、SIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防剤としての、あるいは、SIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防方法における、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物の使用が提供される。本発明の使用は、本発明の組成物および剤並びに本発明の方法に関する記載に従って実施することができる。
本発明のさらに別の面によれば、抗老化、NMN産生促進、Nampt遺伝子発現増強またはSirt1遺伝子発現増強に用いるための、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物が提供される。本発明によればまた、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防に用いるための、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物が提供される。本発明によればまた、SIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防に用いるための、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂またはそれを含んでなる組成物が提供される。これらの発明は、本発明の組成物および剤並びに本発明の方法に関する記載に従って実施することができる。
本発明の方法および本発明の使用はヒトを含む哺乳動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
例1:Nampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量に対するβ位-パルミチン酸の影響(1)
例1では、β位-パルミチン酸がNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量に与える影響を培養細胞により確認した。
(1)試験方法
ヒト肝臓由来の株化細胞HepG2細胞を100,000細胞/0.5mL/ウェルとなるよう播種し、48時間培養後、80%コンフルエントに達したことを確認し、試験1および2に用いた。
<試験1>
前記80%コンフルエントの細胞を100μM、250μM、500μMおよび1000μMのβ位-パルミチン酸(2-パルミトイルモノグリセロール)(いずれもBSA終濃度1%)に3時間暴露した。次いで、細胞からRNAを抽出し、表1~3に示されるプライマーを用いてリアルタイムPCRによりNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量を測定した。それぞれの遺伝子発現量は、ΔΔCt法によりActb遺伝子の発現量で補正して発現量比を算出した。
Figure 2022159178000002
Figure 2022159178000003
Figure 2022159178000004
<試験2>
前記80%コンフルエントの細胞を500μMのβ位-パルミチン酸(2-パルミトイルモノグリセロール)またはβ位-オレイン酸(2-オレオイルモノグリセロール)(いずれもエタノール終濃度0.1%かつBSA終濃度1%)に4時間暴露した。また、コントロールとして前記80%コンフルエントの細胞をエタノール終濃度0.1%かつBSA終濃度1%(コントロール(EtOH+))またはBSA終濃度1%(コントロール(EtOH-))に4時間暴露した。次いで、試験1と同様にしてNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより測定した。
(2)結果
結果は図1および図2に示される通りであった。図1の結果から、2-パルミトイルモノグリセロールの添加によりNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量が2-パルミトイルモノグリセロールの濃度に依存して上昇する傾向が確認された。また、図2の結果から、2-パルミトイルモノグリセロールの添加によりNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量がコントロールと比較して有意に上昇する一方、2-オレオイルモノグリセロールの添加ではNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量に変化がないことが確認された。なお、エタノール終濃度0.1%による遺伝子発現量への影響は見られなかった。
例2:Nampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量に対するβ位-パルミチン酸の影響(2)
例2では、β位-パルミチン酸、β位-ミリスチン酸またはβ位-ステアリン酸がNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量に与える影響を培養細胞により確認した。
(1)試験方法
ヒト肝臓由来の株化細胞HepG2細胞を100,000細胞/0.5mL/ウェルとなるよう播種し、48時間培養後、80%コンフルエントに達したことを確認し、試験に用いた。
前記80%コンフルエントの細胞を500μMのβ位-ミリスチン酸(2-ミリストイルモノグリセロール)、β位-パルミチン酸(2-パルミトイルモノグリセロール)またはβ位-ステアリン酸(2-ステアロイルモノグリセロール)(いずれもエタノール終濃度0.1%かつBSA終濃度1%)に4時間暴露した。また、コントロールとして前記80%コンフルエントの細胞をエタノール終濃度0.1%かつBSA終濃度1%(コントロール(EtOH+))に4時間暴露した。次いで、上記例1の試験1と同様にしてNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより測定した。但し、例2におけるそれぞれの遺伝子発現量は各プライマーで作成した検量線をもとに算出し、Actb遺伝子の発現量で補正して発現量比を求めた。
(2)結果
結果は図3に示される通りであった。図3の結果から、2-パルミトイルモノグリセロールの添加によりNampt遺伝子およびSirt1遺伝子の発現量が、コントロール、2-ミリストイルモノグリセロールおよび2-ステアロイルモノグリセロールと比較して有意に上昇することが確認された。これらの結果から、炭素数14~18のβ位-長鎖飽和脂肪酸のうち、β位-パルミチン酸の抗老化作用が優位であることが示された。
例3:ラット肝臓中の代謝産物に対するパルミチン酸のβ位結合比率の影響
例3では、試験食中のパルミチン酸のβ位結合比率の違いが肝臓の代謝産物に与える影響をラットにより確認した。本試験は、株式会社明治の動物倫理審査の承認のもとに実施した(「明治動物倫理審査No.2016_3871_0064」)。
(1)試験食の調製
表4に示した2種類の試験油脂(β位-パルミチン酸低含有油脂:L油およびβ位-パルミチン酸高含有油脂:H油)を混合し、表5に示した3種類の試験食(β位-パルミチン酸低含有食:L食、β位-パルミチン酸中含有食:M食、β位-パルミチン酸高含有食:H食)を調製した。
Figure 2022159178000005
表4中、「パルミチン酸含有比率」は、試験油脂の脂肪酸総量に対するトリグリセリドに結合するパルミチン酸の比率(質量比)を表す。また、「パルミチン酸のβ位結合比率」は、パルミチン酸総量に対するトリグリセリドのβ位(sn-2位)に結合するパルミチン酸の比率(質量比)を表す。
Figure 2022159178000006
(2)試験方法
6週齢の雄性ラット(日本エスエルシー社)を1週間飼育し馴化した後、3つの試験群(各群4匹)に分け、それぞれの群をβ位-パルミチン酸の低含有食群(L群)、中含有食群(M群)、高含有食群(H群)とし、上記(1)で調製した各試験食を1週間与えた。試験期間中は自由摂食、自由飲水とした。飼育最終日にイソフルラン麻酔下で腹部大動脈より全採血を行い肝臓を摘出した。次いで、肝臓試料(各試験群について4検体)に対し、1,500μLの50%アセトニトリル水溶液(v/v)(内部標準物質濃度:10μM)を加え、冷却下にて破砕機を用いて破砕(1,500rpm,120秒×2回)した。組織破砕後、遠心分離(2,300×g,4℃,5分)を行った。遠心分離後、上層400μLを限外ろ過チューブ(ウルトラフリーMC PLHCC,HMT,遠心式フィルターユニット 5kDa)に移し取った。これを遠心(9,100×g,4℃,120分)し、限外ろ過処理を行った。ろ液を乾固させ、再び50μLのMilli-Q水に溶解して、試料を調製した。
上記試料をキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOF/MS:Agilient CE-TOFMS system(Agilient Technologies社、Capillary:Fused silica capillary i.d. 50μm×80cm)を用いてカチオンモード、アニオンモードにより測定し、肝臓中代謝物を網羅的に解析した。具体的には、HMT代謝物質ライブラリーおよびKnown-Unknownピークライブラリに登録された物質を対象として解析した。アノテーション付けされた275(カチオン154、アニオン121)のピークについて、物質毎にピーク面積の平均値および標準偏差を算出し、得られた分析結果についてウェルチのt検定を実施した。また、対象代謝化合物のうち、検出された81(カチオン47、アニオン34)物質のピークについて定量値を算出した。さらに、得られた分析結果についてL群、M群およびH群の比較解析を行った。具体的には、各物質についてL群に対するM群、L群に対するH群のそれぞれのピーク面積比を求めるとともに、p値により有意差を判定した。有意差判定は、ウェルチのt検定により行った。
(3)結果
L群とH群で有意差のある代謝物は35種あり、その中でNMNが最もH群/L群の面積比が大きい物質であることが確認された。また、図4に示されるように、H群ではL群またはM群と比較して有意にNMN量が上昇すること、およびNMN量はL群、M群、H群の順にL群では最も低く、H群では最も高くなることが確認された。これらの結果から、肝臓のNMN量は、試験食におけるトリグリセリドのβ位に結合するパルミチン酸の比率の増加に依存して増加することが確認された。
例4:高齢者用食品組成物への配合例
例4では、表6の配合組成(100ml当たり)に従って高齢者用食品組成物(飲料)を調製した。飲料以外にも、ゼリー飲料、粉末飲料、固形製剤、粉末製剤等を公知の方法により製造することができる。
Figure 2022159178000007

Claims (11)

  1. β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、抗老化用組成物。
  2. β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、NMN産生促進用組成物。
  3. β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、Nampt遺伝子発現増強用組成物。
  4. β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、Sirt1遺伝子発現増強用組成物。
  5. β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、NMN産生促進により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防用組成物。
  6. β位-長鎖飽和脂肪酸を含む油脂を有効成分として含んでなる、SIRT活性化により維持、改善、治療または予防可能な疾患または状態の維持、改善、治療または予防用組成物。
  7. 前記油脂が、β位-パルミチン酸を含む油脂である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記油脂において、全パルミチン酸に対するβ位におけるパルミチン酸の比率が54%以上98%未満である、請求項7に記載の組成物。
  9. 前記油脂が、β位-パルミチン酸を含む油脂であり、かつ、前記油脂において、全パルミチン酸に対するβ位におけるパルミチン酸の比率が54%以上98%未満である、請求項5に記載の組成物。
  10. 前記油脂が、β位-パルミチン酸を含む油脂であり、かつ、前記油脂において、全パルミチン酸に対するβ位におけるパルミチン酸の比率が54%以上98%未満である、請求項6に記載の組成物。
  11. 食品組成物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
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