JP2022159046A - 分析用チップ、分析方法及び分析用チップの製造方法 - Google Patents

分析用チップ、分析方法及び分析用チップの製造方法 Download PDF

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【課題】これまで攪拌用微粒子を備えた分析用チップでは、気泡の発生を抑えるための攪拌用微粒子の物性や製造方法が規定されていなかったため、十分に攪拌用微粒子の凝集を防ぐことができず、気泡が混入することを抑制することができなかった。【解決手段】本発明は、選択結合性物質がその表面に固定された基板と、該基板と接着されたカバー部材とを備え、該基板と該カバー部材との間に空隙を有し、該空隙に微粒子が移動可能に格納又は注入され、該微粒子の表面に界面活性剤がコーティングされ、該微粒子の静電電位が0.01kV以上0.2kV以下であることを特徴とする分析用チップを提供するものである。【選択図】図1

Description

本発明は、選択結合性物質、すなわち被検物質と選択的に結合する物質を固定化した基板を備えた分析用チップ、当該分析用チップを用いた被検物質の分析方法及び当該分析用チップの製造方法に関する。
分析用チップは、遺伝子、タンパク質、脂質、糖などの選択結合性物質が固定化された基板を有し、この基板上の選択結合性物質と被検物質を通常溶液として反応させて、反応結果から被検物質の存在の有無、状態又は量などを分析するために用いられる。
分析用チップとして、分析用チップ内部に、被験物質を含む溶液を攪拌するための微粒子を備えた分析用チップが知られており、このような分析用チップとして、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的反応を阻害する気泡の発生を抑え、反応むらによる検出のばらつきや検出感度の低下を抑えるため、攪拌用微粒子の表面に界面活性剤をコーティングして微粒子の凝集を防ぎ、また、分析用チップ基板とそのカバーとの間の空隙への攪拌用微粒子の注入が容易な分析用チップが開示されている(特許文献1)。
国際公開第2008/090922号
本発明は、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的反応を阻害する気泡の発生を抑える分析用チップを提供するものである。これまで気泡の発生を抑えるための攪拌用微粒子の物性や製造方法が規定されていなかったため、十分に攪拌用微粒子の凝集を防ぐことができず、気泡が混入することを抑制することができないという課題があった。
発明者らは鋭意検討を重ねた結果、攪拌用の微粒子の表面に界面活性剤をコーティングし、該微粒子の静電電位を0.01kV以上0.2kV以下にすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1)選択結合性物質が表面に固定化された基板と、該基板と接着されたカバー部材とを備え、該基板と該カバー部材との間に空隙を有し、該空隙に微粒子が移動可能に格納又は注入され、該微粒子表面に界面活性剤がコーティングされている分析用チップであって、該微粒子の静電電位が0.01kV以上0.2kV以下である分析用チップ。
(2)微粒子の材質がセラミックまたはガラスを含む、(1)に記載の分析用チップ。
(3)微粒子の粒径が0.1μm以上300μm以下である、(1)または(2)に記載の分析用チップ。
(4)微粒子の表面にコーティングされている界面活性剤が陰イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤である、(1)~(3)のいずれかに記載の分析用チップ。
(5)前記基板が、その表面に凹部及び凸部からなる凹凸部を有し、該凸部の上端面に選択結合性物質が固定化された基板である、(1)~(4)のいずれかに記載の分析用チップ。
(6)(1)~(5)のいずれか一項に記載の分析用チップに被検物質を含む溶液を接触させて前記基板表面に固定化された選択結合性物質に該被検物質を選択的に結合させ、分析用チップ上に該選択結合性物質を介して結合した該被検物質量を測定する、被検物質の分析方法。
(7)選択結合性物質が表面に固定化された基板と、該基板と接着されたカバー部材とを備え、該基板と該カバー部材との間に空隙を有し、該空隙に微粒子が移動可能に格納又は注入され、該微粒子表面に界面活性剤がコーティングされている分析用チップの製造方法であって、
微粒子を、界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程A、
工程Aで浸漬された微粒子を、界面活性剤を含む溶液から回収する工程B、
工程Bで回収された、界面活性剤を含む溶液で表面が湿潤した微粒子を乾燥する工程C、及び、
工程Cで乾燥された微粒子を、前記基板とカバー部材との間の空隙に格納又は注入する工程D、を含み、
工程Cは、各微粒子が立体的に多点で接触する状態で行われる、製造方法。
本発明の分析用チップによれば、分析用チップ内部の反応液中での気泡の残留や発生が抑えられる分析用チップを提供することができる。この結果、気泡が選択結合性物質と被験物質との反応を阻害して反応むらによる検出のばらつきや検出感度の低下が顕著に抑制され、微量な発現遺伝子の微小な変動をとらえることが必要な測定に対して、被検物質を十分に高い感度、高い精度で検出することができる。
また、本発明の分析用チップにより、微粒子の凝集を防ぎ、また分析用チップ基板とカバー部材との間の空隙に容易かつスムーズに微粒子を注入することができる。
図1は、本発明の分析用チップを構成する選択結合性物質が固定化された基板の一例を概略的に示す断面図である。 図2は、図1の基板の使用により、基板表面に気泡が発生した例を概略的に示す断面図である。 図3は、微粒子を乾燥する工程Cにおいて、微粒子を平面で単層状態となる例(本発明に該当しない例)を概略的に示す断面図である。 図4は、微粒子を乾燥する工程Cにおいて、立体的に多点で接触する状態となる例を概略的に示す断面図である。
本発明の分析用チップは、選択結合性物質がその表面に固定された基板と、該基板と接着されたカバー部材との間に空隙を有し、該空隙に微粒子が移動可能に格納又は注入され、該微粒子の表面に界面活性剤がコーティングされ、該微粒子の静電電位が0.01kV以上0.2kV以下であることを特徴とする。界面活性剤によるコーティングとは、微粒子の表面の一部又は全部に、界面活性剤を塗布、付着又は被覆することを意味し、このコーティングは、例えば後述する方法によって行うことができる。
本発明の微粒子を格納した分析用チップの一例を図1に示す。図1に示す例において、基板1の表面は、凹部10及び凸部11からなる凹凸部により構成されている。凹部10に微粒子2が格納されており、凸部11の上面には、選択結合性物質45(例えば核酸)が固定化されている。
この基板1に固定化された選択結合性物質45(例えば核酸)と反応させるために、分析用チップに被験物質を含む溶液を加えると、微粒子2の表面に付着した微小気泡が液体中に遊離し、図2に示すように気泡26となって凸部を覆うため、覆われた凸部表面上の選択結合性物質は被験物質と反応できない。本発明の分析用チップにおいては、微粒子2の表面に界面活性剤がコーティングされていることにより、微粒子表面に気泡が付着しない又は付着しにくいので、気泡の発生を抑制することができる。これにより、基板1表面の全ての選択結合性物質45が被験物質と反応することが可能となり、得られるデータの信頼性と再現性とを上昇させることができる。
微粒子の静電電位(静電気)が高いと一般的に微粒子どうしが凝集しやすくなり、上記のような分析用チップに被験物質を含む溶液を加える際に、微粒子への気泡が付着しやすくなり、気泡が発生しやすくなる。このため、本発明においては、分析用チップに用いる微粒子の静電電位が0.01kV以上0.2kV以下であり、好ましくは0.01kV以上0.1kV以下である。この範囲の静電電位であれば、上記のような分析用チップ内で微粒子が凝集せず、分析の際に微粒子への気泡の付着や分析用チップ内の気泡の発生を効果的に抑制することが可能となる。
微粒子の静電電位の測定は、静電気が帯電すると電界を発生する原理を応用し、この静電気による電界をセンサーが検知して静電気の電圧に換算して表示することにより、静電気を非接触で測定する測定装置を使用して測定することができる。測定の際、微粒子は乾燥状態の微粒子を使用し、前処理などは実施しない。また、実際に分析用チップを使用する際と同じ実験環境にて測定を行う。微粒子の静電電位の測定において、まず複数の微粒子を非導電性素材の台上に配置する。測定時、測定距離を30mmに設定し、センサーから測定距離をあわせるための光が照射され、その焦点をあわせるが、測定箇所となる焦点があたった場所が微粒子で被覆された状態にして測定を行う。また、測定者はリストストラップ、帯電防止靴などによって人体接地を必ず実施し、測定者の帯電電位を確実に低く抑制して測定を行う。このような測定方法として、例えば、校正済みの静電電位測定器(AS-mini II Achilles社製)を使用し、測定器は接地体を使用してゼロ点調整を行い、測定対象の微粒子に対して30mmの位置で通常モードで静電電位を測定する。測定の際、微粒子は乾燥した状態とし、プラスチップなどの非導電性素材の板上に微粒子が縦・横が2cm×2cm以上の面積を被覆した状態に配置し、測定器からから照射された光の焦点をあわせて静電電位を測定する。
微粒子の静電電位を低下させるために、微粒子表面に界面活性剤をコーティングする。界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられ、これらの中でも陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が好ましく用いられる。
陰イオン界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルサルコシンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウロイルサルコシンナトリウムなどが挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
両性界面活性剤としては、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホナート(CHAPSO)、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナート(CHAPS)、n-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホナート(ZWITTERGENT 3-12 Detergent)などが挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、ジメチルデシルホスフィンオキシド(APO-10)、ドデシルジメチルホスフィンオキシド(APO-12)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ-35)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(BRIJ-58)、ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレイン酸エステル(ポリソルベート80、Tween80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル(ポリソルベート20、Tween20)、ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-100)、TRITON(登録商標)X-114、n-デカノイル-N-メチル-D-グルカミン(MEGA-10)、n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン(MEGA-9)、n-オクタノイル-N-メチル-D-グルカミン(MEGA-8)、ノニルフェニル-ポリエチレングリコール(NP-40)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニック(登録商標)F68)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニック(登録商標)F127)などが挙げられる。
これらの中でも、陰イオン界面活性剤としては、界面活性効果が強力であることからドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウムが特に好ましく用いられ、非イオン界面活性剤としては、プルロニック(登録商標)F68、プルロニック(登録商標)F127が特に好ましく用いられる。
微粒子の形状は、被験物質溶液を攪拌することができれば特に限定されず、球状の形状以外に、多角形でも良く、円筒形、角柱形などのマイクロロッド状(微細な棒状)など任意の形状とすることができる。
微粒子のサイズとしては、微粒子の直径が、前記基板の選択結合性物質固定化面とカバー部材との間隔の最短距離未満であることが好ましい。例えば、球状の微粒子の場合、0.1μm~300μmの範囲とすることができる。微粒子が円筒形の微粒子の場合は、その底面直径を微粒子の直径と見なして、底面直径が前記基板の選択結合性物質固定化面とカバー部材との間隔の最短距離未満であることが好ましい。例えば、円筒形の微粒子の場合、長さ50μm~5000μm、底面直径10μm~300μmの範囲とすることができる。
微粒子の材質としては、ガラス、セラミック(例えばイットリウム部分安定化ジルコニア)、金、白金、ステンレス、鉄、酸化アルミ(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)等の金属若しくは金属酸化物、ナイロンやポリスチレン等のプラスチックを用いることができる。これらの中でも、分析用チップ内に加えられる被験物質を含む溶液を効率よく攪拌する観点から、比重が被験物質を含む溶液よりも高いことが好ましく、攪拌時に破壊されにくい剛性をもち、被験物質を含む溶液と反応しにくい性質を持つという観点から、微粒子の材質としてセラミックを含むことが特に好ましい。
また、界面活性剤がコーティングされる微粒子の表面は、適度な粗さを有していることが好ましい。即ち、微粒子の表面の中心線平均粗さ(Ra値)が40nm以上300nm以下であることが好ましい。この範囲の表面粗さを有する微粒子を使用することで、ビーズの表面積がより大きいためにより多くの界面活性剤を微粒子表面にコーティングすることが可能となる。セラミックス製微粒子の場合、材質の強度を考慮すると、Ra値が40nm以上200nm以下であることが好ましい。
本発明の分析用チップを構成する基板は、その表面に選択結合物質が結合されており、凹部及び選択結合性物質を固定化する凸部からなる凹凸部を有することが好ましい。このような構造をとることにより、検出の際、非特異的に吸着した被検物質を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的によりS/Nが良好な結果を得ることができる。本発明の分析用チップは、該基板の表面を覆い該基板と接着されたカバー部材を備える。カバー部材を備えることにより、被検物質が含まれる溶液を簡便に密閉保持することができ、その結果、被検物質と、基板の領域に固定化された選択結合性物質との反応を、安定して行うことができる。また、本発明の分析用チップには予め微粒子を注入(格納)しておくことができ、被験物質溶液をアプライする作業を容易に行うことが可能である。
本発明で使用する分析用チップの具体例を図1で例示する。
また、本発明において、選択結合性物質とは、被検物質と直接的又は間接的に、選択的に結合し得る各種の物質を意味する。基板の表面に結合しうる選択結合性物質の代表的な例としては、核酸、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質を挙げることができる
本発明の分析用チップは、各種被検物質の分析に利用することができる。すなわち、本発明の分析用チップの選択結合性物質を固定化した基板に、被検物質を接触させて該選択結合性物質と選択的に結合させ、基板上に該選択結合性物質を介して結合した該被検物質の有無又は量を測定することにより、被検物質を分析することができる。
本発明の分析用チップの製造方法は、選択結合性物質が表面に固定化された基板と、該基板と接着されたカバー部材とを備え、該基板と該カバー部材との間に空隙を有し、該空隙に微粒子が移動可能に格納又は注入され、該微粒子表面に界面活性剤がコーティングされている分析用チップの製造方法であって、後述の工程A~Dを含むものであるが、該微粒子として静電電位が0.01kV以上0.2kVであるものを用いる。
本発明の製造方法において、工程Aは、微粒子を界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程である。微粒子に対して多くの界面活性剤をコーティングさせるためには、微粒子表面全体に対して界面活性剤を多く触れさせる必要があり、このための最適な方法として、界面活性剤を含む溶液に微粒子を浸漬させる。界面活性剤を含む溶液に微粒子を浸漬させる方法は、容器に入れた界面活性剤を含む溶液に微粒子を投入する方法や微粒子に界面活性剤を含む溶液を塗布、噴霧する方法などをとることができる。界面活性剤を含む溶液は、界面活性剤を溶融した状態でも良いし、界面活性剤を水や有機溶剤などの溶媒に溶解した状態でも良い、界面活性剤を含む溶液の濃度は、0.01%~10%が好ましく、0.05%~2%の濃度がより好ましく用いられる。
本発明の製造方法では、工程Aで界面活性剤を含む溶液に浸漬された微粒子を、界面活性剤を含む溶液から回収する工程Bを実施する。界面活性剤を含む溶液から回収せずに、次の工程である乾燥工程を実施すると、乾燥に時間がかかることにより、重力により界面活性剤が微粒子表面で除去されてしまい、多くの量の界面活性剤をコーティングすることができない。微粒子を、界面活性剤を含む溶液から回収する方法としては、界面活性剤を含む溶液から微粒子を単純に取り出す方法、金網や濾過膜、濾紙などを使用して、界面活性剤を含む溶液を濾過することにより、微粒子を回収する方法や界面活性剤を含む溶液をスポイトやピペットなどを使用して微粒子から取り除く方法などを取ることができる。
本発明の製造方法では、工程Bで回収された、界面活性剤を含む溶液で表面が湿潤した微粒子を乾燥する工程Cを実施する。工程Cでは、微粒子を、界面活性剤を含む溶液で表面が湿潤した状態から乾燥することにより、微粒子表面に対してより多くの界面活性剤をコーティングすることができる。微粒子表面に対して界面活性剤をより多くコーティングするためには、表面に界面活性剤の溶液を多く保持しながら乾燥させる必要があるが、従来の方法では、図3で例を示すように、微粒子を平面、単層状態で乾燥させた場合、重力の影響により界面活性剤の溶液が微粒子表面に保持されなくなり、多くの界面活性剤がコーティングされず、表面の一部にしか界面活性剤がコーティングされない場合がある。このため、本発明においては、図4で例を示すように、乾燥の際には各微粒子が立体的に多点で接触した状態で乾燥を行う。このように各微粒子を立体的に多点で接触した状態にする方法としては、使用する微粒子が単層にならないように、底面積が制限された容器に微粒子を入れることにより、多層に積みあがるようにして、各微粒子を立体的に多点で接触した状態とすることができる。また、容器を使用する際に、容器の中を仕切り板で仕切られた構造を作製し、これにより使用する微粒子が単層にならないように底面積を制限して微粒子が多層に積みあがるようにして、各微粒子を立体的に多点で接触した状態にすることも可能である。微粒子を立体的に多点で接触した状態にする際に使用する容器の形状は、直方体状、立方体状、柱状、球状、錐体形状、チューブ状などどのような形状の容器を使用してもよい。
工程Cにおける乾燥の際には微粒子どうしはできるだけ多くの点で接触していることが好ましく、各微粒子が立体的に多点で接触した状態にすることにより、表面張力の影響で、界面活性剤の溶液が微粒子の表面でより多く保持された状態となり、この状態で乾燥を行うことにより、微粒子表面により多くの界面活性剤がコーティングされることになる。
工程Cの乾燥は、室温で行っても加熱乾燥により行ってもよいし、真空乾燥により行ってもよい。
本発明の製造方法では、工程Cで乾燥された微粒子を、基板とカバー部材との間の空隙に格納又は注入する工程Dを行い、分析用チップを製造する。この際、微粒子表面に多くの界面活性剤がコーティングされているため、静電電位が低下し、微粒子どうしの凝集を定常的に防ぐことにより、基板とカバー部材との間の空隙に容易かつスムーズに微粒子を注入することができる。
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。本発明は下記実施例に限定されない。
実施例1
(1)分析用チップの基板の作製
公知の方法であるLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスを用いて、射出成形用の型を作製し、射出成型法により後述するような形状を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)製の基板を得た。用いたPMMAの平均分子量は5万であり、PMMA中には1重量%の割合で、カーボンブラック(三菱化学製 #3050B)を含有させて、基板を黒色にした。
基板としては、外形が縦76mm、横26mm、厚み1mmであり、基板の中央部に、縦39.4mm、横19.0mm、深さ0.15mmの凹部を設け、この凹部の中に、直径0.1mm、高さ0.15mmの凸部を9248箇所設けた基板(以下「基板A」とする)を用いた。この基板Aにおいて、凸部上面と平坦部上面との高さの差(凸部は高さの平均値)は、3μm以下であった。また、凸部上面の高さのばらつき(最も高い凸部上面の高さと最も低い凸部上面との高さの差)は、3μm以下であった。また、凸部のピッチを0.5mmとした。
上記基板Aを10Nの水酸化ナトリウム水溶液に70℃で12時間浸漬した。これを、純水、0.1NのHCl水溶液、純水の順で洗浄し、基板表面にカルボキシル基を生成させた。
(2)選択結合性物質の固定化
基板Aに対し、以下の条件で、それぞれ選択結合性物質(プローブDNA)としてオリゴヌクレオチドを固定化した。オリゴヌクレオチドとしては、オペロン社製DNAマイクロアレイ用オリゴヌクレオチドセット“Homo sapiens (human) AROS V4.0(各60塩基)”を用いた。このオリゴヌクレオチドを、純水に0.3nmol/μLの濃度となるよう溶解させて、ストック溶液とした。このストック溶液を基板にスポット(点着)する際は、PBS(8gのNaCl、2.9gのNaHPO・12HO、0.2gのKCl、及び0.2gのKHPOを合わせて純水に溶かし、1Lにメスアップしたものに、塩酸を加えてpH5.5に調整したもの)で10倍希釈して、プローブDNAの終濃度を0.03nmol/μLとし、かつ、PMMA製基板表面に生成させたカルボキシル基とプローブDNAの末端アミノ基とを縮合させるため、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mLとした。この溶液をアレイヤー(スポッター)(日本レーザー電子製;Gene Stamp-II)を用いて、基板Aの全ての凸部上面にスポットした。次いで、スポットした基板を密閉したプラスチック容器に入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間程度インキュベートした。最後に純水で基板を洗浄し、スピンドライヤーで遠心して乾燥した。
(3)分析用チップ基板へのカバー部材の貼付
選択結合性物質を固定化した上記基板Aに対し、次のようにカバー部材を貼付した。
カバー部材としては、縦41.4mm、横21mm、厚さ1mmのPMMA平板を切削加工により作製してカバー部材とした。作製した該カバー部材には、貫通孔および液面駐止用チャンバーを設けた。そして、接着部材として縦41.4mm、横21mmを幅1mmの両面テープを用い、この両面テープをカバー部材を縁取るように、かつ厚さ50μmで積層させて貼り付けたのち、該カバー部材を基板Aに貼付した。
(4)攪拌用微粒子表面の界面活性剤コーティング
直径180μmのジルコニア製微粒子(東レ(株)製)10gを、10mLサンプル瓶(マルエム製、口内径×胴径×全長:φ14.8×φ21×45mm)に入れ、微粒子どうしを立体的に多点で接触した状態とし、これに界面活性剤として0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlを加えた。これを10分間超音波処理したのち、上清(SDS成分)をスポイトで除去し、オーブンを用いて微粒子を70℃にて、12時間乾燥させた。乾燥後の微粒子は微粒子どうしが凝集しにくく、さらさらの状態であった。同様のコーティング操作を5回行った。乾燥後の微粒子をポリプロピレンの板上で縦・横が2cm×2cm以上の面積を被覆する状態に配置し、校正済みの静電電位測定器(AS-mini II Achilles社製)を使用して、接地体を使用してゼロ点調整を行い、微粒子に対して30mmの位置で通常モードを使用して静電電位を測定した。測定の結果、静電電位は0.05kV、0.03kV、0.07kV、0.06kV、0.07kVであり、全ての微粒子で、静電電位は0.01kV以上0.2kV以下の値を示した。
(5)分析用チップへの微粒子の注入(格納)と注入(格納)操作性の評価
上記(3)でカバー部材を貼りつけた基板Aに、上記(4)で界面活性剤をコーティングしたジルコニア製微粒子120mgを、基板Aとカバー部材とで形成される空隙(基板A表面の凹凸構造の凹部)に注入(格納)した。微粒子の注入は、カバー部材の貫通孔から行った。以上のようにして得られた分析用チップを、「分析用チップ1」とした。
(6)被験物質DNAの調製
被験物質としては、マイクロアレイの被験物質として一般的な、aRNA(antisense RNA)を用いた。市販のヒト培養細胞由来total RNA(CLONTECH社製Human Reference RNA)5μgから、Ambion社製aRNA調製キットを使用して、5μgのCy3標識aRNAを得た。
本実施例、及び以下の実施例、比較例において、ハイブリダイゼーションの際の被験物質溶液は、特に断りのない限り、上記で調製した標識aRNAを、1重量%BSA、5×SSC、0.01重量%サケ精子DNA、0.1重量%SDSの溶液(各濃度はいずれも終濃度)で希釈したものを用いた。
(7)ハイブリダイゼーション反応と気泡発生数の評価
マイクロピペットを用いて、分析用チップ1の基板Aとカバー部材との空隙(反応槽)に、Cy3標識aRNA200ngを含むハイブリダイゼーション被験物質溶液165μLを貫通孔より注入した。このとき、容易に溶液を注入でき、気泡が混入することはなかった。封止材としてカプトンテープ(アズワン)を用い、4つの貫通孔を塞いだ。ハイブリダイゼーションチャンバー(Takara Hybridization chamber(タカラバイオ(株)製)を、シート振盪台(東京理化器械(株)製 MMS FIT-S)に密着させて固定し、分析用チップ1をハイブリダイゼーションチャンバー内にセットした。このとき、分析用チップ1をセットする位置の両端の凹みに、15μLずつ超純水を滴下した。ハイブリダイゼーションチャンバー蓋を閉めた後、6本の固定ネジを締めて固定し、42℃に設定した恒温チャンバー(東京理化器械(株)製 FMS-1000)内に据え付けた振盪機(東京理化器械(株)製 MMS-310)の上に載せて固定した。恒温チャンバーの前面をアルミホイルで遮光して、250回転/分で旋回振盪しながら、42℃で16時間インキュベートした。インキュベート後、ハイブリダイゼーションチャンバーから分析用チップ1を取り出した。
カバー部材を通して、分析用チップ1の基板A上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数した。分析用チップ1を用いたハイブリダイゼーション反応を10回実施した結果、被験物質溶液中に発生した気泡数は、1回当たりの平均で0.4個であった(表1)。
(8)蛍光シグナル値の測定と検出ばらつきの評価
分析用チップ1の基板Aに接着したカバー部材と両面テープを脱離した後、基板Aを洗浄、乾燥した。DNAチップ用のスキャナー(Axon Instruments社製 GenePix 4000B)に上記処理後の基板Aをセットし、レーザー出力33%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を500にした状態において、ハイブリダイゼーション反応した被験物質の標識体シグナル値(蛍光強度)、バックグラウンドノイズを測定した。全9248個のスポットのうち、32個をバックグラウンド蛍光値測定用のネガティブコントロールスポットとし、個々のシグナル値からバックグラウンドシグナル値を差し引いて各スポットの真のシグナル値を算出した。
ハイブリダイゼーション反応の反応むらによる検出のばらつきの評価として、分析用チップ1を用いたハイブリダイゼーション反応を10回実施し、各回におけるバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値=全回のバックグラウンドシグナル値の標準偏差/全回のバックグラウンドシグナル値の平均値(%))を計算した。その結果、10回の評価におけるバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)の平均値は3.0%であった(表1)。
実施例2
実施例1(6)で調製した被験物質溶液を次のように脱気処理を行ったこと以外は、実施例1と同様に分析用チップ1を用いた評価を実施した。
被験物質溶液175μlを0.2mlPCRチューブ(アシスト社製72.737.002)にいれ、フタを開けたまま脱気装置(ULVAC社製アスピレーターNDA-015型)にセットして脱気を行った。脱気時の到達圧力は、装置の表示で50hPa、脱気時間は25分間とした。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回実施した結果の1回当たりの平均値が0.2個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、1.5%であった(表1)。
比較例1
実施例1の(4)において、10mLサンプル瓶の代わりに、ステンレス製バット(10cm×10cm×5cm)を用いて、界面活性剤のコーティングを行った。すなわち、ステンレス製バット(10cm×10cm×5cm)に直径180μmのジルコニア製微粒子(東レ(株)製)10gを入れ、これに界面活性剤として0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlを加えた。これを10分間超音波処理したのち、上清(SDS成分)をスポイトで除去したところ、微粒子どうしは平面、単層状態となり、この状態でオーブンを用いて微粒子を70℃にて、12時間乾燥させた。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しやすく、微粒子塊を形成しやすい状態であった。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.45kV、0.41kV、0.38kV、0.27kV、0.51kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.2kVを超える値を示した。
本ジルコニア製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ2」を作成した。この分析用チップ2を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が4.5個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、8.4%であった(表1)。
比較例2
実施例2において、分析用チップ1の代わりに、比較例1で作成した分析用チップ2を用いた以外は実施例2と同様にして、被験物質溶液を脱気処理して評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の発生気泡数を計数したところ、気泡数は、6回の評価の平均が0.4個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、6.7%であった(表1)。
以上の実施例1、2、比較例1、2の結果から、微粒子どうしが立体的に多点で接触した状態で界面活性剤をコーティングして微粒子表面の静電電位を0.01kV以上0.2kV以下にすることによって、気泡の発生が顕著に抑制され、データのばらつき(バックグラウンドシグナルのCV値)を顕著に低減できることがわかった。
実施例3
実施例1の(4)において、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlの代わりに、0.05%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ジルコニア製微粒子表面の界面活性剤コーティングを行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しにくく、さらさらの状態であった。同様のコーティング操作を5回行った。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.12kV、0.10kV、0.15kV、0.14kV、0.11kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.01kV以上0.2kV以下の値を示した。
本ジルコニア製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ3」を作成した。この分析用チップ3を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が0.6個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、3.0%であった(表1)。
実施例4
実施例1の(4)において、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlの代わりに、0.01%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ジルコニア製微粒子表面の界面活性剤コーティングを行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しにくく、さらさらの状態であった。同様のコーティング操作を5回行った。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.19kV、0.15kV、0.17kV、0.17kV、0.16kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.01kV以上0.2kV以下の値を示した。
本ジルコニア製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ4」を作成した。この分析用チップ4を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が0.9個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、3.4%であった(表1)。
以上の実施例3,4の結果から、微粒子表面の静電電位を0.01kV以上0.2kV以下に制御することによって、気泡の発生が抑制され、データのばらつき(バックグラウンドシグナルのCV値)を低減できることがわかった。
実施例5
実施例1の(4)において、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlの代わりに、界面活性剤として0.1%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル(Tween20)水溶液50mlを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ジルコニア製微粒子表面の界面活性剤コーティングを行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しにくく、さらさらの状態であった。同様のコーティング操作を5回行った。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.13kV、0.14kV、0.08kV、0.10kV、0.06kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.01kV以上0.2kV以下の値を示した。
本ジルコニア製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ5」を作成した。この分析用チップ5を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が0.6個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、3.1%であった(表1)。
比較例3
実施例5において、比較例1と同様に、10mLサンプル瓶の代わりに、ステンレス製バット(10cm×10cm×5cm)を用いて、微粒子どうしが平面、単層状態となるようにして界面活性剤のコーティングを行ったこと以外は、実施例5と同様にして、ジルコニア製微粒子の界面活性剤(0.1%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル(Tween20))のコーティングを行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しやすく、微粒子塊を形成しやすい状態であった。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.45kV、0.30kV、0.51kV、0.38kV、0.62kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.2kVを超える値を示した。
本ジルコニア製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ6」を作成した。この分析用チップ6を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が2.0個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、6.9%であった(表1)。
以上の実施例5、比較例3の結果から、実施例1~4と異なる界面活性剤を用いた場合であっても、微粒子どうしが立体的に多点で接触した状態で界面活性剤をコーティングして微粒子表面の静電電位を0.01kV以上0.2kV以下にすることによって、気泡の発生が顕著に抑制され、データのばらつき(バックグラウンドシグナルのCV値)を顕著に低減できることがわかった。
実施例6
実施例1の(4)において、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlの代わりに、界面活性剤として0.5%ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニック(登録商標)F68)水溶液50mlを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ジルコニア製微粒子表面の界面活性剤コーティングを行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しにくく、さらさらの状態であった。同様のコーティング操作を5回行った。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.12kV、0.17kV、0.06kV、0.02kV、0.13kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.01kV以上0.2kV以下の値を示した。
本ジルコニア製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ7」を作成した。この分析用チップ7を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が0.8個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、3.3%であった(表1)。
以上の実施例6の結果から、実施例1~5と異なる界面活性剤を用いた場合であっても、微粒子どうしが立体的に多点で接触した状態で界面活性剤をコーティングして微粒子表面の静電電位を0.01kV以上0.2kV以下にすることによって、気泡の発生が顕著に抑制され、データのばらつき(バックグラウンドシグナルのCV値)を顕著に低減できることがわかった。
比較例4
実施例1の(4)において、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlの代わりに水を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ジルコニア製微粒子を処理した。すなわち、界面活性剤のコーティングを行っていないジルコニア製微粒子を用いて以下の評価を行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しやすく、微粒子塊を形成しやすい状態であった。同様の操作を5回行った。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.62kV、0.55kV、0.65kV、0.72kV、0.59kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.2kVを超える値を示した。
本ジルコニア製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ8」を作成した。この分析用チップ8を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が12.5個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、12.2%であった(表1)。
実施例7
実施例1の(4)において、ジルコニア製微粒子の代わりに直径180μmのガラス製微粒子(不二製作所製)10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ガラス製微粒子表面に界面活性剤(0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50ml)のコーティングを行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しにくく、さらさらの状態であった。同様のコーティング操作を5回行った。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.09kV、0.05kV、0.12kV、0.18kV、0.10kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.01kV以上0.2kV以下の値を示した。
本ガラス製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ9」を作成した。この分析用チップ9を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が1.6個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、4.7%であった(表1)。
比較例5
実施例7において、比較例1と同様に、10mLサンプル瓶の代わりに、ステンレス製バット(10cm×10cm×5cm)を用いて、微粒子どうしが平面、単層状態となるようにして界面活性剤のコーティングを行ったこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス製微粒子に界面活性剤(0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のコーティングを行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しやすく、微粒子塊を形成しやすい状態であった。実施例1と同様に静電電位を測定した結果、静電電位は0.40kV、0.44kV、0.25kV、0.30kV、0.31kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.2kVを超える値を示した。
本ガラス製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ10」を作成した。この分析用チップ10を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が3.5個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、7.2%であった(表1)。
以上の実施例7、比較例5の結果から、実施例1~6と異なる材質の微粒子を用いた場合であっても、微粒子どうしが立体的に多点で接触した状態で界面活性剤をコーティングして微粒子表面の静電電位を0.01kV以上0.2kV以下にすることによって、気泡の発生が顕著に抑制され、データのばらつき(バックグラウンドシグナルのCV値)を顕著に低減できることがわかった。
比較例6
実施例7において、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液50mlの代わりに水を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス製微粒子を処理した。すなわち、界面活性剤のコーティングを行っていないガラス製微粒子を用いて以下の評価を行った。乾燥後に得られた微粒子は、微粒子どうしが凝集しやすく、微粒子塊を形成しやすい状態であった。同様の操作を5回行った。実施例1と同様に静電電位を測定した。測定の結果、静電電位は0.60kV、0.67kV、0.42kV、0.45kV、0.58kVであり、全ての微粒子で静電電位は0.2kVを超える値を示した。
本ガラス製微粒子を使用して、実施例1と同様にして「分析用チップ11」を作成した。この分析用チップ11を用いて、実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1(7)と同様にして、ハイブリダイゼーション反応後の基板上に観察された被験物質溶液中の気泡数を計数したところ、気泡数は、10回の評価の平均値が13.2個であった(表1)。
また、実施例1(8)と同様にしてバックグラウンドシグナル値のばらつき(CV値)を計算したところ、13.4%であった(表1)。
Figure 2022159046000002
本発明は、被検物質と選択的に結合する選択結合性物質を固定化した基板を備え、微粒子によって被験物質溶液を攪拌することのできる分析用チップにおいて、反応むらを防ぐことにより、微量な発現遺伝子の微小な変動をとらえることが必要な測定に対して、十分に検出感度や検出精度が高い分析用チップを提供する。本発明は、特に医薬・医療分野における様々な生体関連物質の検出等のための分析用チップとして有用であり、その他、食品、環境分野における微量物質の検出のための分析用チップとしても有用である。
1 基板
2 微粒子
3 カバー部材
10 凹部
11 凸部
26 発生した気泡の例
30 接着部材
30A 仕切り構造の接着部材
32 貫通孔
33 液面駐止用チャンバー
45 基板に固定化された選択結合性物質
50 微粒子の乾燥に使用する容器

Claims (7)

  1. 選択結合性物質が表面に固定化された基板と、該基板と接着されたカバー部材とを備え、該基板と該カバー部材との間に空隙を有し、該空隙に微粒子が移動可能に格納又は注入され、該微粒子表面に界面活性剤がコーティングされている分析用チップであって、該微粒子の静電電位が0.01kV以上0.2kV以下である分析用チップ。
  2. 微粒子の材質がセラミックまたはガラスを含む、請求項1に記載の分析用チップ。
  3. 微粒子の粒径が0.1μm以上300μm以下である、請求項1または2に記載の分析用チップ。
  4. 微粒子の表面にコーティングされている界面活性剤が陰イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤である、請求項1~3のいずれかに記載の分析用チップ。
  5. 前記基板が、その表面に凹部及び凸部からなる凹凸部を有し、該凸部の上端面に選択結合性物質が固定化された基板である、請求項1~4のいずれかに記載の分析用チップ。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の分析用チップに被検物質を含む溶液を接触させて前記基板表面に固定化された選択結合性物質に該被検物質を選択的に結合させ、分析用チップ上に該選択結合性物質を介して結合した該被検物質量を測定する、被検物質の分析方法。
  7. 選択結合性物質が表面に固定化された基板と、該基板と接着されたカバー部材とを備え、該基板と該カバー部材との間に空隙を有し、該空隙に微粒子が移動可能に格納又は注入され、該微粒子表面に界面活性剤がコーティングされている分析用チップの製造方法であって、
    微粒子を、界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程A、
    工程Aで浸漬された微粒子を、界面活性剤を含む溶液から回収する工程B、
    工程Bで回収された、界面活性剤を含む溶液で表面が湿潤した微粒子を乾燥する工程C、及び、
    工程Cで乾燥された微粒子を、前記基板とカバー部材との間の空隙に格納又は注入する工程D、を含み、
    工程Cは、各微粒子が立体的に多点で接触する状態で行われる、製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024085226A1 (ja) * 2022-10-20 2024-04-25 Toppanホールディングス株式会社 検出キット及び標的分子の検出方法
WO2024085141A1 (ja) * 2022-10-20 2024-04-25 Toppanホールディングス株式会社 流体デバイス及び標的分子の検出方法

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