JP2022158745A - 抗微生物組成物及び抗微生物基体 - Google Patents

抗微生物組成物及び抗微生物基体 Download PDF

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Abstract

【課題】表面平滑性に優れた塗膜を得るための抗微生物組成物を提供すること。【解決手段】銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および分散媒を含み、上記分散媒の含有量が30重量%未満であることを特徴とする抗微生物組成物。【選択図】図1B

Description

本発明は、抗微生物組成物及び抗微生物基体に関する。
近年、病原体である種々の微生物を媒介とした感染症が短時間で急激に広がる、いわゆる「パンデミック」が問題になっており、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、ノロウィルス、鳥インフルエンザ等のウィルス感染による死者も報告されている。
そこで、様々のウィルスに対して抗ウィルス効果を発揮する抗ウィルス剤の開発が活発に行われており、実際に様々な部材に抗ウィルス効果のあるPd等の金属や有機化合物からなる抗ウィルス剤を含む樹脂等を塗布したり、抗ウィルス剤が担持された材料を含む部材を製造することが行われている。
特許文献1には、銅化合物、光重合開始剤、電磁波硬化型樹脂及び分散媒からなる抗微生物組成物及びそれを用いた抗微生物基体が開示されている。
国際公開第2019/74121号
しかしながら、特許文献1に記載された抗微生物組成物は、基材に塗布した場合、塗膜表面が基材の凹凸を反映してしまい、塗膜表面の平滑性に劣るという問題が見られた。塗膜表面の凹凸が大きい場合、耐摩耗性が低下してしまうため、塗膜表面は平滑である方が望まれる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、表面平滑性に優れた塗膜を得るための抗微生物組成物とその抗微生物組成物を基材に塗布して得られる抗微生物基体を提供することを目的とする。
上記特許文献1記載の抗微生物組成物を用いた場合、塗膜の表面平滑性に劣ってしまう原因が、抗微生物組成物中の分散媒の量が多すぎるためであることを知見した。すなわち、抗微生物組成物中の分散媒の量が多すぎるため、その粘度が低下し、基材表面の凹凸や基材表面のプライマー層の凹凸を反映してしまい、抗微生物組成物の塗膜表面に凹凸が形成されてしまうのである。
第1の本発明である抗微生物組成物は、銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および分散媒を含み、上記分散媒の含有量が30重量%未満であることを特徴とする抗微生物組成物である。抗微生物組成物中の分散媒の含有量を抗微生物組成物の全重量に対して30重量%未満とすることで、抗微生物組成物の粘度を高くすることができる。このような粘度の高い抗微生物組成物を基材表面に塗布することで、抗微生物組成物の硬化物の表面が、基材表面の凹凸の影響を受けにくくなり、平滑な塗膜表面を実現できるのである。
なお、本発明の抗微生物とは、抗ウィルス、抗菌、抗カビ、防カビを含む概念である。本発明の抗微生物基体、抗微生物組成物については、いずれも抗ウィルス基体、抗ウィルス組成物であることが望ましい。本発明の効果が最も顕著だからである。
なお、本明細書において、上記抗微生物組成物は、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうちいずれか1種の活性を示す組成物であってもよく、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうち、いずれか2種類の活性を示す組成物であってもよく、いずれか3種類の活性を示す組成物であってもよく、4種類全ての活性を示す組成物であってもよい。
本明細書において、上記抗微生物基体は、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうちいずれか1種の活性を示す基体であってもよく、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうち、いずれか2種類の活性を示す基体であってもよく、いずれか3種類の活性を示す基体であってもよく、4種類全ての活性を示す基体であってもよい。
本発明の抗微生物組成物は、光重合開始剤を含むが、この光重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に銅化合物を還元させることができるため、銅の抗微生物活性を高くすることができるのである。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。
熱重合開始剤は、励起エネルギーが低く、このような還元作用は見られない。
本発明の抗微生物組成物では、上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物及び銅の水溶性無機塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましく、銅のカルボン酸塩及び銅の水溶性無機塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより望ましく、銅のカルボン酸塩がさらに望ましい。基材表面に抗微生物組成物の硬化物を形成した際、抗微生物組成物の硬化物の表面よりウィルス等の微生物と接触可能な状態で露出した銅化合物が優れた抗微生物活性を発揮することができるからである。
本発明の抗微生物組成物では、上記銅化合物は、二価の銅化合物(銅化合物(II))であることが望ましい。一価の化合物(銅化合物(I))は、分散媒である水に不溶であり、粒子状に局在化し、バインダ中への分散が不充分であり、抗微生物活性に劣るからである。また、二価の銅化合物を抗微生物組成物中に加え、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物が抗微生物組成物の硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。この点からも、水溶性の二価の銅化合物を用いることが最適である。
本発明の抗微生物組成物では、上記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。比較的容易に密着性に優れた抗微生物組成物の硬化物を、基材表面に固着形成できるからである。
上記有機バインダは、電磁波硬化型樹脂及び熱硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により硬化して基材表面に上記銅化合物を固着できるからである。また、これらの有機バインダは、光重合開始剤の銅に対する還元力を低下させることがないため有利である。上記電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上を使用することができる。また、上記熱硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上を使用できる。
本発明の抗微生物組成物では、上記未硬化のバインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
本発明の抗微生物組成物では、上記分散媒は、アルコール及び/又は水であることが望ましい。上記分散媒中に銅化合物が良好に分散し、その結果、銅化合物が良好に分散した抗微生物組成物の硬化物を形成することができるからである。
本発明の抗微生物組成物では、上記光重合開始剤は、水に不溶性の光重合開始剤であることが望ましい。水に触れても溶出しないため、耐水性に優れた抗微生物組成物の硬化物を形成することができるからである。
上記光重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。これらの光重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
上記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の光重合開始剤及びベンゾフェノン系の光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。本明細書において、アルキルフェノン系の光重合開始剤には、アルキルフェノン及びその誘導体が含まれ、ベンゾフェノン系の光重合開始剤には、ベンゾフェノン及びその誘導体が含まれる。これらの光重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
上記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の光重合開始剤及びベンゾフェノン系の光重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の光重合開始剤の濃度が上記未硬化のバインダに対して、0.1~30.0重量%、上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤の濃度が上記未硬化のバインダに対して0.1~10.0重量%であることが望ましい。
電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
上記アルキルフェノン系の光重合開始剤と上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の光重合開始剤/ベンゾフェノン系の光重合開始剤=1/1~4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上が望ましく、特に95%以上が望ましい。
第2の本発明である抗微生物組成物は、銅化合物及び分散媒を含むA液と、未硬化のバインダ及び光重合開始剤を含むB液とから構成されてなる抗微生物組成物であって、前記A液と前記B液を混合することで、銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および分散媒を含み、前記分散媒の含有量が30重量%未満である抗微生物組成物を得ることができることを特徴とする。
第2の本発明である抗微生物組成物は、銅化合物及び分散媒を含むA液と、未硬化のバインダ及び光重合開始剤を含むB液とから構成されてなる抗微生物組成物であって、A液中の分散媒の組成割合およびA液とB液の配合量を調整して、銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および30重量%未満の分散媒を含む抗微生物組成物を調製するために使用される。
すなわち、第2の本発明である抗微生物組成物は、第1の本発明の抗微生物組成物を得るために使用できるキットであるともいえる。
第2の本発明の抗微生物組成物では、保管中に上記A液中の銅化合物と上記B液中の未硬化のバインダとが接触しないので、バインダの硬化反応が進行せず、抗微生物組成物に黄変が生じない。このため、室温以上の温度で長期間にわたって保管が可能である。また、抗微生物組成物中の分散媒の含有量を抗微生物組成物の全重量に対して30重量%未満とすることで、抗微生物組成物の粘度を高くすることができる。このような粘度の高い抗微生物組成物を基材表面に塗布することで、抗微生物組成物の硬化物の表面が、基材表面の凹凸の影響を受けにくくなり、平滑な塗膜表面を実現できるのである。なお、第2の本発明にかかる抗微生物組成物を構成する各構成要素の好ましい態様は、第1の本発明にかかる抗微生物組成物を構成する各構成要素の好ましい態様と同様にすることができる。
第3の本発明は、第1の本発明または第2の本発明にかかる抗微生物組成物の硬化物が基材上に固着形成されてなる抗微生物基体である。
粘度の高い抗微生物組成物を塗布しているため、基材表面の凹凸の影響を受けにくく、表面が平滑な塗膜を得ることができる。このため、耐摩耗性に優れ、長期間に亘って抗微生物活性を持続できるのである。
抗微生物組成物の硬化物は、第1の領域と第2の領域からなり、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域が、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域中に分散していることが望ましい。
また、抗微生物組成物の硬化物中には光触媒を含まないことが望ましい。
また、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の少なくとも一部は、抗微生物組成物の硬化物の表面から露出していることが望ましい。
抗微生物組成物の硬化物中において、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域が、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域中に分散しており、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の少なくとも一部が、上記抗微生物組成物の硬化物の表面から露出していると、上記銅化合物がウィルス等の微生物と接触しやすく、上記銅化合物に基づく抗微生物活性を有する基体としての効果を充分に発揮することができる。
なお、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域と、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域は、例えば、本発明の抗微生物基体の抗微生物組成物の硬化物の表面を電子顕微鏡写真(反射電子像:倍率5000倍)で確認したときに、相対的に白く見える領域が銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域に該当し、黒く見える領域が銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域に該当する。また、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の平面視の面積は、銅化合物それ自体の面積よりも大きい。つまり、上記銅化合物の粒子単独もしくは銅化合物の粒子が凝集して樹脂中に分散している形態は第1の領域とは呼ばない。また、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の平面視の面積は、全領域の平面視の面積(つまり、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の平面視の面積と上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域の平面視の面積の合計)に対して0.5%~50%であることが望ましく、さらに1%~30%が好適である。上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の平面視の面積が大きすぎても、小さすぎても十分な抗微生物活性やふき取りに対する耐性が得られないからである。
本発明の抗微生物基体は、光重合開始剤を含むが、この光重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に上記銅化合物を還元させることができるため、銅の抗微生物活性を高くすることができる。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。また、光重合開始剤は、疎水性で水に不溶であるため、耐水性に優れた抗微生物組成物の硬化物を有する抗微生物基体となる。銅化合物を上記光重合開始剤が還元することで銅(I)の存在割合を増やすことができる。
本発明の抗微生物基体では、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記抗微生物組成物の硬化物の表面から、ウィルス等の微生物と接触可能な状態で露出していることが望ましい。銅化合物の少なくとも一部がウィルス等の微生物と接触可能な状態で露出していると、ウィルス等の微生物の機能を失活させることができるからである。
また、本発明の抗微生物基体では、上記抗微生物組成物の硬化物が、抗微生物活性が要求される領域の表面に、塗膜として島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に塗膜として抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在していることが望ましい。上記抗微生物組成物の硬化物が、抗微生物活性が要求される領域の表面に、塗膜として島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に塗膜として抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、可視光線の基材表面に対する透過率が低下する等の不都合を防止することができる。そのため、基材が透明な材料である場合には、基材の透明性が低下することはなく、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合には、意匠等の外観を損ねることもない。
さらに、本発明の抗微生物基体では、上記抗微生物組成物の硬化物が基材の抗微生物上に膜状に形成されていることが望ましい。抗微生物活性を有する抗微生物組成物の硬化物が基材上に膜状に形成されていると、島状に分散固定されている場合や基材表面に上記抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と上記抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べて、上記抗微生物組成物の硬化物の表面が滑りやすくなるためふき取り清掃に対する耐性に優れている。また、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域が、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域中に分散していると、上記銅化合物が粒子として存在しておらず、ふき取りの応力によっても、上記銅化合物が脱落しないため、さらに、ふき取り時に抗微生物活性が低下しない。
上記抗微生物組成物の硬化物からなる膜の厚さは、0.1~100μmが望ましい。厚すぎると応力が発生して膜が剥離して抗微生物活性が低下し、膜が薄すぎても抗微生物活性を十分発揮できないからである。
本発明の抗微生物基体では、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域では、銅が0.6原子%以上存在することが望ましい。銅が0.6原子%以上存在することにより、高い抗微生物活性を発揮することができるからである。
なお、上記銅とは、銅原子及び銅イオンを意味し、後述するエネルギー分散型蛍光X線分析装置で、X線を照射した場合に発生する蛍光X線(一次X線を試料に照射するとX線のエネルギーによって内殻の電子がはじき飛ばされて空孔が生じ、その空孔に外殻電子が落ち込むことにより、そのエネルギー差に相当するX線が放射されるが、これを蛍光X線という)をカウントし得る状態のものをいう。
上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域では、銅が1.5原子%以上存在することがより望ましい。
上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域では、銅が100原子%未満である。銅化合物粒子単独もしくは銅化合物粒子の凝集体は、上記銅化合物の含有量が相対的に多い第1の領域ではないからである。すなわち、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域は、銅化合物とバインダ硬化物との複合体であると言える。なお、第2の領域に銅化合物を含む場合も同様に、前記第2の領域は、銅化合物とバインダ硬化物との複合体である。
上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の銅化合物の含有量は、抗微生物基体をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の元素分析を行うことにより、銅化合物の含有量を確認することができる。
なお、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域では、銅の含有量が0.6原子%未満であることが望ましく、上記銅化合物が存在しなくてもよい。上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域の銅化合物の含有量は、抗微生物基体をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域の元素分析を行うことにより、銅化合物の含有量を確認することができる。
図1は、本発明の抗微生物基体の一例である抗ウィルス基体(実施例1)について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の元素分析を行った結果である。図1Aは第1の領域の位置を示す抗ウィルス基体の電子顕微鏡写真であり、図1Bは蛍光X線分析のチャートであり、図1Cは元素分析結果である。 図2は、実施例1で得られた抗ウィルス基体の電子顕微鏡写真(反射電子像、平面図)である。 図3は、実施例1で得られた抗ウィルス基体の断面の電子顕微鏡写真である。 図4は、実施例1で得られた抗ウィルス基体をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域(図2において黒色に見える領域)の元素分析を行った結果である。図4Aは第2の領域の位置を示す抗ウィルス基体の電子顕微鏡写真であり、図4Bは蛍光X線分析のチャートであり、図4Cは元素分析結果である。
(発明の詳細な説明)
<抗微生物組成物>
第1の本発明の抗微生物組成物は、銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および30重量%未満の分散媒を含み、上記分散媒の含有量が30重量%未満であることを特徴とする抗微生物組成物である。
抗微生物組成物中の分散媒の含有量を抗微生物組成物の全重量に対して30重量%未満とすることで、抗微生物組成物の粘度を高くすることができる。このような粘度の高い抗微生物組成物を基材表面に塗布することで、抗微生物組成物の硬化物の表面が、基材表面の凹凸の影響を受けにくくなり、平滑な塗膜表面を実現できるのである。
第1の本発明の抗微生物組成物の粘度は、10~60mPa・sであることが望ましい。抗微生物組成物の粘度が高すぎるとスプレー塗布しにくいからである。抗微生物組成物の粘度は、B型回転式粘度計で12rpmの回転数で計測する。
第2の本発明にかかる抗微生物組成物は、銅化合物及び分散媒を含むA液と、未硬化のバインダ及び光重合開始剤を含むB液とから構成され、前記A液と前記B液を混合することで、銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および分散媒を含み、前記分散媒の含有量が30重量%未満である抗微生物組成物を得ることができることを特徴とする抗微生物組成物である。
第2の本発明の抗微生物組成物を使用する際には、銅化合物及び分散媒を含むA液と、未硬化のバインダと光重合開始剤を含むB液とからなり、基材表面に付着せしめる直前に上記A液とB液とを混合する。第2の本発明の抗微生物組成物では、保管中に上記A液中の銅化合物と上記B液中の未硬化のバインダとが接触しないので、バインダの硬化反応が進行せず、抗微生物組成物に黄変が生じない。このため、室温以上の温度で長期間にわたって保管が可能である。
以下、第1および第2の本発明の抗微生物組成物について合わせて説明する。
上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物及び銅の水溶性無機塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましく、銅のカルボン酸塩及び銅の水溶性無機塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより望ましく、銅のカルボン酸塩がさらに望ましい。
上記銅のカルボン酸塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、酢酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅等が挙げられる。上記銅の水溶性無機塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、例えば、硝酸銅、硫酸銅等が挙げられる。その他の銅化合物としては、例えば、銅(メトキシド)、銅エトキシド、銅プロポキシド、銅ブトキシド等が挙げられ、銅の共有結合性化合物としては銅の酸化物、銅の水酸化物等が挙げられる。銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物は、有機バインダ、無機バインダとの親和性が高く、水により溶出しないため、耐水性に優れる。
上記銅化合物は、二価の銅化合物(銅化合物(II))であることが望ましい。一価の化合物(銅化合物(I))は、分散媒である水に不溶であり、粒子状に局在化し、バインダ中への分散が不充分であり、抗微生物活性に劣るからである。また、二価の銅化合物を抗微生物組成物中に加え、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物が抗微生物組成物の硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。この点からも、水溶性の二価の銅化合物を用いることが最適である。
上記二価の銅のカルボン酸塩としては、酢酸銅(II)、安息香酸銅(II)、フタル酸銅(II)等が挙げられる。上記銅化合物としては、二価の銅のカルボン酸塩が望ましい。上記二価の銅の水溶性無機塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、例えば、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)等が挙げられる。その他の二価の銅化合物としては、例えば、銅(II)(メトキシド)、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)ブトキシド等が挙げられ、銅の共有結合性化合物としては銅(II)の酸化物、銅(II)の水酸化物等が挙げられる。
上記分散媒は、安定性を考慮した場合にはアルコール及び/又は水が望ましい。上記分散媒中に銅化合物が良好に分散し、その結果、上記銅化合物が良好に分散した抗微生物組成物の硬化物を形成することができるからである。上記アルコールとしては、光重合開始剤の溶解性を考慮すると、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等のアルコールが挙げられる。これらのアルコールのなかでは、メチルアルコール、エチルアルコールが望ましい。また、上記分散媒は、アルコールと水との混合液を使用することができる。
上記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
上記無機バインダとしては、無機ゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。さらに、有機・無機ハイブリッドのバインダとしては有機金属化合物を使用することができる。上記無機ゾルにおけるシリカ等の無機酸化物の含有量は、固形分換算で1~80重量%が好ましい。
上記有機バインダは、電磁波硬化型樹脂及び熱硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により硬化して基材表面に上記銅化合物を固着できるからである。また、これらの有機バインダは、光重合開始剤の銅に対する還元力を低下させることがないため有利である。
上記電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。また、熱硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。
上記未硬化のバインダの具体例としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種が望ましい。
上記アクリル樹脂としては、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂(ウレタン変性アクリレート樹脂)、シリコン変性アクリレート樹脂等が挙げられる。上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂やグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂とオキセタン樹脂を組みわせたもの等が挙げられる。上記アルキッド樹脂としては、ポリエステルアルキッド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
上記金属アルコキシドとしては、アルコキシシランを使用することができる。加水分解によりシロキサン結合を形成してゾルとなり、乾燥によってゲル化して抗微生物組成物の硬化物とすることができる。シリカゾル、アルミナゾル及び水ガラスについても、加熱、乾燥させることにより抗微生物組成物の硬化物とすることができる。
なお、上記電磁波硬化型樹脂とは、電磁波照射により原料であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が進行して製造される樹脂を意味している。従って、上記抗微生物組成物は、上記電磁波硬化型樹脂の原料となるモノマーやオリゴマー(未硬化の電磁波硬化型樹脂)を含有している。上記未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマー又はオリゴマーと、上記光重合開始剤と各種添加剤を含んだ組成物に電磁波を照射することにより、上記光重合開始剤は、開裂反応、水素引き抜き反応、電子移動等の反応を起こし、これにより生成した光ラジカル分子、光カチオン分子、光アニオン分子等が上記モノマーや上記オリゴマーを攻撃してモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応が進行し、抗微生物組成物の硬化物を生成することができる。本明細書において、このような反応により生成する樹脂を電磁波硬化型樹脂という。
上記光重合開始剤は、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。上記A液と上記B液とを混合したときに、上記光重合開始剤は、上記銅化合物を抗微生物活性が高い銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物活性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制することができるからである。そのため、本発明の抗微生物組成物から形成される抗微生物基体は、ウィルス及び/又はカビに最も効果的に作用する。上記銅(I)の還元力によって、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元することで、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカル等を発生させてウィルス又はカビを構成する蛋白を効果的に破壊するからである。
上記光重合開始剤は、水に不溶性の光重合開始剤であることが望ましい。水に触れても溶出しないため、抗微生物組成物の硬化物を劣化させることがなく、上記銅化合物の脱離を招かないからである。上記銅化合物が水溶性であっても抗微生物組成物の硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、抗微生物組成物の硬化物中に水溶性物質が含まれていると、抗微生物組成物の硬化物の上記銅化合物に対する保持力が低下して、上記銅化合物の脱離が生じると推定される。また、上記水に不溶性の光重合開始剤は、未硬化のバインダとして電磁波硬化型樹脂を用いた場合、可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
上記アルキルフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
上記アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。特開2010―126542号にあるように、アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤は、LED‐UV光源を用いて電磁波硬化型樹脂の硬化を行う場合に好適に用いられる。
上記分子内水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、オキシフェニルサクサン、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルトオキシフェニル酢酸と2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物等が挙げられる。
上記オキシムエステル系の光重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
上記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の光重合開始剤及びベンゾフェノン系の重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましく、特に、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン系の光重合開始剤を含むことが望ましい。これらの光重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
本発明における抗微生物組成物中の銅化合物の含有量は、抗微生物組成物の全重量に対して0.1~30.0重量%が好ましい。
本発明における抗微生物組成物中の分散媒の含有量は、抗微生物組成物の全重量に対して1重量%以上、30重量%未満であることが好ましい。
本発明における抗微生物組成物中の未硬化のバインダの含有量は、抗微生物組成物の全重量に対して10~90重量%が好ましい。
光重合開始剤は、上記未硬化のバインダに対して、0.1~30.0重量%であることが望ましい。
上記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の光重合開始剤及び上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の光重合開始剤の濃度が上記未硬化のバインダに対して、0.1~30.0重量%、上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤の濃度が上記未硬化のバインダに対して0.1~10.0重量%であることが望ましい。
電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
上記アルキルフェノン系の光重合開始剤と上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の光重合開始剤/ベンゾフェノン系の光重合開始剤=1/1~4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上が望ましく、特に95%以上が望ましい。
第2の本発明においては、上記A液中の上記銅化合物の含有量は、0.1~7.0重量%が望ましく、上記分散媒の含有量は、93.0~99.9重量%が望ましい。
また、上記B液中の上記未硬化のバインダ(例えば、電磁波硬化型樹脂のモノマー又はオリゴマー)の含有量は40.0~99.9重量%が望ましく、上記B液中の上記光重合開始剤の含有量は、0.1~60.0重量%が望ましい。上記アルキルフェノン系の光重合開始剤及び上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤を含む場合には、上記アルキルフェノン系の光重合開始剤の濃度が、0.1~60.0重量%、上記ベンゾフェノン系の光重合開始剤の濃度が、0.1~20.0重量%であることがより望ましい。上記B液には、光重合開始剤を溶解させるための溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、有機溶媒が望ましく、水と相溶する極性有機溶媒が望ましい。有機溶媒としては、アルコールが望ましい。メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等のアルコールが挙げられる。これらのアルコールのなかでは、メチルアルコール、エチルアルコールが望ましい。上記光重合開始剤を溶解させるための溶媒は、B液において0.1~50重量%であることが望ましい。上記A液と上記B液の混合割合は、重量比でA液/B液=1/1~1/10であることが望ましく、1/1~1/5であることがさらに望ましい。
上記抗第1及び第2の本発明における抗微生物組成物には必要に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、消泡剤、抗微生物組成物の硬化物の表面粗さを調整するためのシリカ、アルミナ等の粒子成分等(以下、「その他の成分」)が配合されていてもよい。なお、A液において、銅化合物、分散媒および必要に応じて添加されるその他の成分の合計は100重量%を超えない。また、B液において、光重合開始剤、未硬化のバインダおよび必要に応じて添加される光重合開始剤を溶解させるための溶媒および必要に応じて配合される上記のその他の成分の合計は100重量%を超えない。
<抗微生物基体>
第3の本発明にかかる抗微生物基体は、第1の本発明または第2の本発明にかかる抗微生物組成物の硬化物が基材上に固着形成されてなる。
具体的には、基材上に、第1または第2の本発明にかかる銅化合物、光重合開始剤、未硬化のバインダおよび分散媒からなる抗微生物組成物を硬化させた抗微生物組成物の硬化物が固着してなる。
また、上記抗微生物組成物の硬化物中には、光触媒を含まないことが望ましい。
第3の本発明にかかる抗微生物基体の抗微生物組成物の硬化物においては、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域が、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域中に分散していることが望ましい。また、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の少なくとも一部は、抗微生物組成物の硬化物の表面から露出していることが望ましい。
本発明の抗微生物基体において、上記銅化合物及び上記光重合開始剤は、上述した第1及び第2の本発明にかかる抗微生物組成物において記載したものを用いる。また、上記抗微生物組成物の硬化物は、上述した抗微生物組成物において記載した未硬化のバインダを硬化したものである。第1または第2の本発明にかかる抗微生物組成物を硬化させた抗微生物組成物の硬化物は、表面の平滑性に優れており、耐摩耗性が高く、長期間に亘って抗微生物活性を維持することができるからである。本発明の抗微生物基体において、抗微生物組成物の硬化物の表面の面粗さは、JIS B0601 に準拠した算術平均面粗さRaが0.5μm以下であることが望ましい。耐摩耗性に優れるからである。
本発明の抗微生物基体においては、上記抗微生物組成物の硬化物に含まれる上記光重合開始剤が、銅イオン(II)を還元して銅イオン(I)を生成せしめるため、銅(I)の還元力によって、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元することで、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカル等を発生させて、微生物を構成する蛋白質を破壊してウィルス等の微生物を失活させることができる。銅イオン(I)は空気中の水や酸素を還元すると、銅(II)に変わるが、上記抗微生物組成物の硬化物に含まれる上記光重合開始剤によって、銅(II)が再び銅イオン(I)に還元されるため、還元力が常に維持される。このため、還元性糖等の還元剤は不要となり、また、上記光重合開始剤は、上記抗微生物組成物の硬化物と結合しており、水に溶出しないので、耐水性にも優れる。なお、銅イオン(II)の錯体を銅イオン(I)に還元すると錯体を形成し得ないため、銅イオン(II)から銅イオン(I)のような還元反応が生じにくく、銅のアミノ酸塩等の錯塩を本発明に使用することは不適切である。
上記基材としては、特に限定されるものでなく、例えば、金属、ガラス等のセラミック、樹脂、繊維織物、木材等が挙げられる。また、本発明の抗微生物基体の基材となる部材も、特に限定されるものではなく、タッチパネルの保護用フィルムやディスプレイ用のフィルムであってもよく、建築物内部の内装材、壁材、窓ガラス、手すり等であってもよい。また、ドアノブ、トイレのスライド鍵等でもよい。さらに事務機器や家具等であってもよく、上記内装材の外、種々の用途に用いられる化粧板等であってもよい。
本発明の抗微生物基体では、上記抗微生物組成物の硬化物中には、光触媒を含まず、また、上記抗微生物組成物の硬化物は、第1の領域と第2の領域からなり、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域が、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域中に分散しており、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の少なくとも一部は、上記抗微生物組成物の硬化物の表面から露出しているため、上記銅化合物がウィルスと接触しやすく、上記銅化合物に基づく抗微生物活性を有する基体としての効果を充分に発揮することができる。
本発明の抗微生物基体は、光重合開始剤を含むが、この光重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に上記銅化合物を還元させることができるため、銅の抗微生物活性を高くすることができる。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。また、光重合開始剤は、疎水性で水に不溶であるため、耐水性に優れた抗微生物組成物の硬化物を有する抗微生物基体となる。銅化合物を上記光重合開始剤が還元することで銅(I)の存在割合を増やすことができるのである。
本発明の抗微生物基体では、X線光電子分光分析法により、925~955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.4~50であることが望ましい。Cu(II)と共存した方が、Cu(I)のみの場合に比べて、抗微生物活性が高くなる。この理由は明確ではないが、不安定なCu(I)のみの場合と比較して、安定なCu(II)と共存することで、Cu(I)が酸化されることを防止できるためではないかと推定している。特に、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.5~50であることが好ましい。
また、Cu(I)の銅は、Cu(II)の銅と比較して抗微生物活性により優れているため、本発明の抗微生物基体において、X線光電子分光分析法により、925~955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.0~4.0であると、より抗微生物活性に優れた抗微生物基体となる。上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.4~2.9がより望ましく、特に1.4~1.9が最適である。本発明の抗微生物基体において、銅イオン(I)の抗微生物活性は、ウィルス及び/又はカビに対して最も効果が高い。一価の銅イオンがウィルスとカビを構成する蛋白を最も効果的に破壊するからである。
また、抗微生物組成物の硬化物が、島状に分散固定されている場合や、基材表面に抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態の場合は、銅化合物中のCu(I)/Cu(II)の比率が0.4/1~4.0/1に調整されていると、抗微生物活性を高くできるため、望ましい。本発明における抗微生物基体における銅化合物中のCu(I)/Cu(II)の比率は、バインダ、重合開始剤、銅化合物の選択、これらの濃度調整、及び、紫外線等の電磁波の照射時間や強度で調整することができる。
なお、Cu(I)とは、銅のイオン価数が1であることを意味し、Cuと表す場合もある。一方、Cu(II)とは、銅のイオン価数が2であることを意味し、Cu2+と表す場合もある。なお、一般的に、Cu(I)の結合エネルギーは、932.5eV±0.3(932.2~932.8eV)、Cu(II)の結合エネルギーは、933.8eV±0.3(933.5~934.1eV)である。
本発明の抗微生物基体では、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記抗微生物組成物の硬化物の表面から、ウィルス等の微生物と接触可能な状態で露出していることが望ましい。銅化合物の少なくとも一部がウィルス等の微生物と接触可能な状態で露出していると、ウィルス等の微生物の機能を失活させることができるからである。
また、本発明の抗微生物基体では、上記抗微生物組成物の硬化物が、抗微生物活性が要求される領域の表面に、塗膜として島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に塗膜として抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在していることが望ましい。換言すると、抗微生物活性を有する抗微生物組成物の硬化物からなる塗膜が形成され、その塗膜は、抗微生物組成物の硬化物の膜が固着形成された領域内に、抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と、抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している形態となっている。上記抗微生物組成物の硬化物が、抗微生物活性が要求される領域の表面に、塗膜として島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に塗膜として抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、可視光線の基材表面に対する透過率が低下する等の不都合を防止することができる。そのため、基材が透明な材料である場合には、基材の透明性が低下することはなく、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合には、意匠等の外観を損ねることもない。
また、本発明の抗微生物基体では、上記抗微生物組成物の硬化物が塗膜として島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に塗膜として抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在する場合は、上記抗微生物組成物の硬化物と基材表面との接触面積を小さくすることができ、上記抗微生物組成物の硬化物の残留応力、冷熱サイクル時に発生する応力を抑制することが可能となり、基材と高い密着性を有する上記抗微生物組成物の硬化物を形成することができる。また、上記抗微生物組成物の硬化物が塗膜として島状に散在して固着されているか、もしくは、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に塗膜として上記抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、上記抗微生物組成物の硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルス等の微生物を上記抗微生物組成物の硬化物の間にトラップさせやすくなるため、抗微生物活性を持つ抗微生物組成物の硬化物と微生物との接触確率が高くなり、高い抗微生物活性を発現できる。
さらに、本発明の抗微生物基体では、上記抗微生物組成物の硬化物が基材上に膜状に形成されていてもよい。抗微生物活性を有する抗微生物組成物の硬化物が基材上に膜状に形成されていると、島状に分散固定されている場合や基材表面に上記抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と上記抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べて、上記抗微生物組成物の硬化物の表面が滑りやすくなるため耐摩耗性に優れているのである。また、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域が、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域中に分散していると、上記銅化合物が粒子として存在しておらず、ふき取りの応力によっても、上記銅化合物が脱落しないため、さらに、ふき取り時に抗微生物活性が低下しない。
上記抗微生物組成物の硬化物からなる膜の厚さは、0.1~100μmが望ましい。厚すぎると応力が発生して膜が剥離して抗微生物活性が低下し、膜が薄すぎても抗微生物活性を十分発揮できないからである。上記基材に意匠が施されていない場合、あるいは、意匠性よりも抗微生物活性を優先させる場合には、上記のように、抗微生物組成物の硬化物からなる膜が基材上に形成されていてもよい。また、本発明の抗微生物基体は、全光線透過率は90%以上であることが望ましい。本発明の抗微生物基体において、全光線透過率が90%以上であると、可視光等の光線を透過するので、光の透過性を利用した用途に用いることができる。
本発明の抗微生物基体では、上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域では、銅が0.6原子%以上存在することが望ましい。銅が0.6原子%以上存在することにより、高い抗微生物活性を発揮することができるからである。
なお、上記銅とは、銅原子及び銅イオンを意味し、後述するエネルギー分散型蛍光X線分析装置で、X線を照射した場合に発生する蛍光X線(一次X線を試料に照射するとX線のエネルギーによって内殻の電子がはじき飛ばされて空孔が生じ、その空孔に外殻電子が落ち込むことにより、そのエネルギー差に相当するX線が放射されるが、これを蛍光X線という)をカウントし得る状態のものをいう。
上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域では、銅が1.5原子%以上存在することがより望ましい。
上記銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の銅化合物の含有量は、抗微生物基体をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の元素分析を行うことにより、銅化合物の含有量を確認することができる。
なお、上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域では、銅の含有量が0.6原子%未満であることが望ましく、上記銅化合物が存在しなくてもよい。
上記銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域の銅化合物の含有量は、抗微生物基体をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域の元素分析を行うことにより、銅化合物の含有量を確認することができる。
例えば、図1は、本発明の抗微生物基体の一例(実施例1)について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の元素分析を行った結果である。
図1Aは第1の領域の位置を示す抗微生物基体の電子顕微鏡写真であり、図1Bは蛍光X線分析のチャートであり、図1Cは元素分析結果である。
図1に記載の本発明の微生物基体の一例における銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域では、銅が1.75原子%存在することが分かる。
次に、本発明の抗微生物組成物及び抗微生物基体の製造方法について説明する。
この説明では、第2の本発明の抗微生物組成物を用いた場合について説明するが、(2)の付着工程以降は、第1の本発明の抗微生物組成物を用いることができる。
(1)抗微生物組成物調製工程
銅化合物及び分散媒からなるA液と未硬化のバインダと光重合開始剤からなるB液をそれぞれ上述した含有量で個別に調製することにより、本発明の抗微生物組成物を製造することができる。
A液とB液をそれぞれ25℃以上で、24時間以上暗所にて保管して養生する。保管時の温度は35℃以上でもよい。上記未硬化のバインダが変質せずに保管可能である。このため夏場でも冷却せずに保管することができる。本発明の抗微生物組成物においては、A液中の銅化合物とB液中の未硬化のバインダが接触しないため、保管中に硬化反応が進行しない。そのため、抗微生物組成物が黄変せず、劣化しない。このため、高温下でも長期の保管が可能となる。
上記A液及び上記B液は、基材表面に付着せしめる直前に混合する。上記A液と上記B液とを混合した後、ミキサー等で充分に撹拌し、均一な濃度で分散する付着用抗微生物組成物とした後、基材の表面に付着せしめることが望ましい。
(2)付着工程
本発明の抗微生物基体の製造方法においては、付着工程として、上記付着用抗微生物組成物を基材に付着せしめる。上記付着用抗微生物組成物を基材表面に付着させる前に、基材表面にプライマー層を形成しておいてもよい。プライマー層は、ポリオレフィン系樹脂からなることが望ましい。密着性に優れるからである。プライマー層の厚さは、0.1~20μmであることが望ましい。プライマー層としては、染めQテクノロジィ社製、商品名「ミッチャクロン」が望ましい。
上記付着用抗微生物組成物を、基材表面に島状に散在させるか、基材表面に上記付着用抗微生物組成物が付着された領域と上記付着用抗微生物組成物が付着されていない領域とを混在させた状態、すなわち、基材表面の一部が露出するような状態となるように上記付着用抗微生物組成物を付着せしめてもよく、上記付着用抗微生物組成物を、基材表面に膜状に形成してもよい。
基材表面を上記した状態とするためには、例えば、スプレー法、二流体スプレー法、静電スプレー法、エアロゾル法等を用いて上記付着用抗微生物組成物を散布する方法、塗布用のバーコーター、アプリケーター等の塗布冶具を用いて上記付着用抗微生物組成物を塗布する方法等が挙げられる。
上記付着工程において、スプレーを用いて上記付着用抗微生物組成物を霧の状態で噴霧し、基材表面に上記付着用抗微生物組成物の液滴を付着させてもよい。
上記二流体スプレー法とは、スプレー法の一種であり、高圧の空気等のガスと上記付着用抗微生物組成物とを混合した後、ノズルから霧の状態で噴霧し、基材表面に上記付着用抗微生物組成物の液滴を付着させることをいう。
上記静電スプレー法とは、帯電した付着用抗微生物組成物を利用する散布方法であり、上記したスプレー法により上記付着用抗微生物組成物を霧の状態で噴霧するが、上記付着用抗微生物組成物を霧状にするための方式には、上記付着用抗微生物組成物を噴霧器で噴霧するガン型と、帯電した付着用抗微生物組成物の反発を利用した静電霧化方式があり、さらに、ガン型には帯電した付着用抗微生物組成物を噴霧する方式と、噴霧した霧状の付着用抗微生物組成物に外部電極からコロナ放電で電荷を付与する方式とがある。霧状の液滴は、帯電しているため、基材表面に付着し易く、良好に上記付着用抗微生物組成物を、細かく分割された状態で基材表面に付着させることができる。上記エアロゾル法とは、金属の化合物を含む上記付着用抗微生物組成物を物理的及び化学的に生成した霧状のものを対象物に吹き付ける手法である。
上記付着工程により、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と光重合開始剤とを含む付着用抗微生物組成物が、分割された状態で基材表面に島状に散在しているか、基材表面に上記付着用抗微生物組成物が付着された領域と上記付着用抗微生物組成物が付着されていない領域とが混在した状態となる。もちろん、上記付着用抗微生物組成物が、基材表面に膜状に形成されていてもよい。
(3)乾燥工程
上記付着工程により付着された銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む付着用抗微生物組成物を乾燥させ、分散媒を蒸発、除去し、銅化合物等を含む抗微生物組成物の硬化物を基材表面に仮固定させるとともに、抗微生物組成物の硬化物の収縮により、銅化合物を抗微生物組成物の硬化物の表面から露出させることができる。乾燥条件としては、20~100℃、0.5~5.0分が望ましい。乾燥は、赤外線ランプやヒータ等で行うことができる。また、減圧(真空)乾燥させてもよい。
本発明の抗微生物基体を製造する際には、乾燥工程と後述する硬化工程を同時に行ってもよい。また、(2)の付着工程と(3)の乾燥工程を繰り返し行ってもよい。
(4)硬化工程
本発明の抗微生物基体を製造する際には、硬化工程として、上記乾燥工程で分散媒を除去した付着用抗微生物組成物中、もしくは、分散媒を含む付着用抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させ、抗微生物組成物の硬化物とする。
未硬化のバインダを硬化させる方法としては、乾燥による分散媒除去、加熱や電磁波照射によるモノマー、オリゴマーの重合促進等がある。乾燥は、減圧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。また、バインダが熱硬化型樹脂の場合は、加熱により硬化が進行する。加熱はヒータ、赤外線ランプ、紫外線ランプ等で行うことができる。未硬化のバインダが電磁波硬化型樹脂である場合に照射する電磁波としては、特に限定されず、例えば、紫外線(UV)、赤外線、可視光線、マイクロ波、電子線(Electron Beam:EB)等が挙げられるが、これらのなかでは、紫外線(UV)が望ましい。
これらの工程により、上記した本発明の抗微生物基体を製造することができる。
上記付着用抗微生物組成物中には、上記した光重合開始剤が添加されているので、バインダとしてモノマーやオリゴマーを含む場合は、それらの重合反応が進行する。また、光重合開始剤は銅を還元するため、銅(II)を銅(I)に還元でき、銅(I)の量を増やすことができるため、ウィルス等の微生物に対する抗微生物活性の高い抗微生物組成物の硬化物が得られるのである。
上記付着工程により上記付着用抗微生物組成物は、島状に散在しているか、基材表面に上記付着用抗微生物組成物が付着された領域と上記付着用抗微生物組成物が付着されていない領域とが混在した状態となっているので、得られた抗微生物組成物の硬化物も島状に散在しているか、基材表面に抗微生物組成物の硬化物が付着された領域と抗微生物組成物の硬化物が付着されていない領域とが混在した状態となっている。また、抗微生物組成物の硬化物が基材表面に膜状に形成されていてもよい。
上記抗微生物組成物の硬化物の基材表面への被覆率は、抗微生物組成物中の抗ウィルス成分等の抗微生物成分の濃度、分散媒の濃度等や散布の圧力、塗液の噴出速度、塗布時間等を操作することにより、調整することができる。スプレーガンを用いて噴射する場合は、スプレーガンのエアー圧力やスプレー塗布幅、スプレーガンの移動速度、塗液の噴出速度、塗布距離を変化させることにより、抗微生物組成物の硬化物の被覆率を調整することができる。
その後、紫外線照射をして、光重合開始剤の還元力を発現せしめる。上記抗微生物基体の製造方法におけるいずれかの工程中で、光重合開始剤の還元力を発現せしめるために、所定の波長の電磁波、例えば紫外線等を照射することが望ましい。特に光重合開始剤を用いた場合は、電磁波の照射により、ラジカルが発生し、銅イオンを還元することで、抗微生物活性、特に抗ウィルス活性の高い銅(I)の量を増やすことができ、有効である。
上記抗微生物基体の製造方法では、抗微生物組成物の硬化物の表面の平滑性が高く、耐摩耗性に優れている。このため、抗菌、抗ウィルス性能が長期間に亘って持続する。
また、上記抗微生物組成物の硬化物が、基材表面に膜状に固着形成されてなり、ふき取り清掃への耐久性に優れた抗微生物基体を製造することができる。そのため、島状に分散固定されている場合や基材表面に抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と抗微生物組成物の硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べてふき取り清掃への耐性に優れている。
(実施例1)
(1)A液の調製
酢酸銅の濃度が5.0重量%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)1.19重量部を純水23.05重量部に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、700rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を調製した。
(2)B液の調製
光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)67.2重量部と光重合開始剤である2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenyl phosphine oxide(IGM社製、Omnirad TPO-H)4.3重量部、エタノール4.3重量部を混合した。
(3)保管(養生)
調製したA液及びB液を抗ウィルス組成物とした。
抗ウィルス組成物(A液とB液)を暗所にて20℃で120時間静置した。
(4)A液とB液の混合
A液とB液を重量比0.32:1(=1:3.1)で混合して、1分間撹拌することにより付着用抗ウィルス組成物とした。付着用抗ウィルス組成物の粘度は35mPa・sであった。粘度はB型回転式粘度計を用いて、回転数12rpmで測定した。
(5)プライマー層の形成
基材である30cm×30cmの黒色光沢メラミン基板表面に、ポリオレフィン樹脂からなるプライマー溶液(染めQテクノロジィ社製 商品名「ミッチャクロンマルチ」)をスプレー塗布、乾燥させて、平均厚さ3.7μmのプライマー層を形成した。
(6)付着用抗ウィルス組成物の塗布・乾燥
(4)で調製した付着用抗ウィルス組成物をスプレーガンの塗料カップに充填し、スプレー圧力:0.4MPa、塗布ピッチ間隔:4cm、スプレーノズルから(5)の工程でプライマー層を形成した30cm×30cmの黒色光沢メラミン基板(基材)表面までの塗布距離が20cmとなるようにスプレーガンをセットした。液噴出量は0.20g/秒の吐出流量で、プライマー層を設けた黒色光沢メラミン基板に対してスプレー塗布を行った。塗布後に、常温で30分乾燥させた後、さらに上記スプレー条件にてスプレー塗布を行い、上記乾燥条件で乾燥させた。この塗布、乾燥を合計4回行った。
(7)乾燥・硬化
この後、LED-UV照射装置を用い、135mW/cmの照射強度で10秒間紫外線を照射することにより、基材である黒色光沢メラミン基板上にプライマー層と、銅化合物を含む抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物とが塗膜として連続膜状に固着形成された抗ウィルス基体を得た。
抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の連続膜の平均厚さは37μmであった。
(実施例2)
(1)A液の調製
酢酸銅の濃度が5.0重量%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)0.5重量部を純水10.0重量部に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、700rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を調製した。
(2)B液の調製
光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)67.2重量部と光重合開始剤である2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenyl phosphine oxide(IGM社製、Omnirad TPO-H)4.3重量部、エタノール4.3重量部を混合した。
(3)保管(養生)
調製したA液及びB液を抗ウィルス組成物とした。
抗ウィルス組成物(A液とB液)を暗所にて20℃で120時間静置した。
(4)A液とB液の混合
A液とB液を重量比1:7.2で混合して、1分間撹拌することにより付着用抗ウィルス組成物とした。付着用抗ウィルス組成物の粘度は35mPa・sであった。粘度はB型回転式粘度計を用いて、回転数12rpmで測定した。(5)実施例1と同様に、(5)プライマー層の形成、(6)付着用抗ウィルス組成物の塗布・乾燥及び(7)乾燥・硬化の工程を行い、抗ウィルス基体を得た。ただし、スプレー塗布と乾燥は合計3回行った。
抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の連続膜の平均厚さは35μmであった。
(比較例1)
(1)酢酸銅の濃度が1.75wt%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)を純水に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を調製した。紫外線硬化樹脂液は、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)を重量比98:1:1で混合し、ホモジナイザーを用いて、8000rpmで10分間撹拌して調製した。上記1.75wt%酢酸銅水溶液と紫外線硬化樹脂液を重量比1.9:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス組成物を調製した。分散媒である水の含有量は、64.4重量%で、抗ウィルス組成物の粘度は2.6mPa・sであった(粘度はB型回転式粘度計を用いて、回転数12rpmで測定した)。
なお、IGM社製 Omnirad500は、BASF社のIRGACURE500と同じもので、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(アルキルフェノン)とベンゾフェノンの1:1の混合物である。この光重合開始剤は、水に不溶性であり、紫外線を吸収することで還元力を発現する。一方、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(アルキルフェノン)であり、結局光重合開始剤としては、アルキルフェノンとベンゾフェノンは重量比で2:1の割合で存在している。
(2)この抗ウィルス組成物を、実施例1と同様にして平均厚さ3.5μmのプライマー層を形成した黒色光沢メラミン基板にスプレー塗布し、塗布膜を常温で30分乾燥させた。なお、スプレー塗布および乾燥は12回実施した。
(3)この抗ウィルス組成物が塗布された黒色光沢メラミン基板に対して紫外線照射装置(COATTEC社製 MP02)を用い、5mW/cmの照射強度で240秒間紫外線を照射することにより硬化を行い、銅化合物を含む抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物が塗膜として連続膜状に固着形成された抗ウィルス基体を得た。抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物からなる連続膜の平均厚さは35μmであった。
(表面粗さの測定)
抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の表面につき、東京精密製の接触式表面粗さ測定機であるHANDYSURFを用い、4mmの測定長さでJIS B 0601に準拠した算術平均粗さRaを測定した。結果を表1に示した。
(耐摩耗性試験)
断面積が2cmの砂消しゴムを抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の連続膜表面に接触させ、0.5kgの荷重をかけた状態で往復させた。基材が露出した際の往復回数もしくは抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の連続膜が剥離した際の往復回数を計測した。結果を表1に示した。
(ファージウィルスを用いた抗ウィルス評価)
この抗ウィルス試験は以下のように実施した。
実施例1、2および比較例1で得られた抗ウィルス基体における抗ウィルス活性を評価するために、JIS Z 2801 抗菌加工製品―抗菌性試験方法・抗菌効果を改変した手法を用いた。改変点は、「試験菌液の接種」を「試験ウィルスの接種」に変更した点である。ウィルスを使用することによる変更点についてはすべてJIS L 1922繊維製品の抗ウィルス性試験方法に基づき変更した。測定結果は各実施例及び比較例で得られた抗ウィルス基体についてJIS L 1922付属書Bに基づき、大腸菌への感染能力を失ったファージウィルス濃度をウィルス不活度として表示する。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活性化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用し、このウィルス不活度に基づいて抗ウィルス活性値を算出した。
以下、手順を具体的に記載する。
(1)実施例1、2および比較例1で得られた抗ウィルス基体について、当該抗ウィルス基体を1辺50mm角の正方形に切り出して試験試料とした。この試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、試験ウィルス液(>10PFU/mL)を0.1mL接種した。試験ウィルス液は10PFU/mLのストックを精製水で10倍希釈したものを使用した。
(2)対照試料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様に試験ウィルス液を接種した。
(3)接種した試験ウィルス液の上から40mm角のポリエチレンを被せ、試験ウィルス液を均等に接種させた後、25℃で所定時間反応させた。
(4)接種直後又は反応後、SCDLP培地10mLを加え、試験ウィルス液を洗い流した。
(5)JIS L 1922付属書Bによってウィルスの感染値を求めた。
(6)以下の計算式を用いて抗ウィルス活性値を算出した。
Mv=Log(Vb/Vc)
Mv:抗ウィルス活性値
Log(Vb):ポリエチレンフイルムの所定時間反応後の感染値の対数値
Log(Vc):試験試料の所定時間反応後の感染値の対数値
参考規格 JIS L 1922、JIS Z 2801
測定方法は、プラーク測定法によった。
実施例1、2と比較例1について同様に抗ウィルス活性値を測定した。
得られた抗ウィルス活性値を表1に示す。
Figure 2022158745000002
実施例1では、平均37μmの厚さの抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の膜を製造するために、4回のスプレー塗布を行ったが、比較例1では平均35μmの厚さの抗ウィルス組成物の硬化物を製造するために、12回のスプレー塗布が必要であった。また、実施例1では、抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の表面粗さRaが0.14μmと平滑であったのに対して、比較例1ではRaが0.61μmと大きく、表面が粗くなってしまうことが分かる。このため耐摩耗性試験も、実施例1の方が比較例1よりも耐摩耗性が高い。実施例2では、3回のスプレー塗布で平均35μmの厚さの抗ウィルス性の抗微生物組成物の硬化物の膜が得られた。
(電子顕微鏡観察)
実施例1で得られた抗ウィルス基体を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、電界放出型走査電子顕微鏡であるFE-SEM-XMA(Hitachi製 S-4800及びHoriba製 EMAX Energy EX-250)を用い、抗ウィルス基体の表面の電子顕微鏡画像(FE-SEM)は反射電子像とし、加速電圧は10kV及び15kVを用いた。また、X線マイクロアナライザー(XMA)は、検出器としてエネルギー分散型のものを使用し、加速電圧は15kVとした。
図2は、実施例1で得られた抗ウィルス基体の表面の電子顕微鏡写真(反射電子像:倍率5000倍)である。銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多く、白く見える第1の領域が、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少なく、黒く見える第2の領域中に分散していることが分かる。
また、図3は、実施例1で得られた抗ウィルス基体の断面の電子顕微鏡写真(倍率1000倍)である。
(元素分析)
測定装置は、電界放出型走査電子顕微鏡であるFE-SEM-XMA(Hitachi製 S-4800及びHoriba製 EMAX Energy EX-250)を用い、抗ウィルス基体の表面の電子顕微鏡画像(FE-SEM)は反射電子像とし、加速電圧は10kV及び15kVを用いた。また、X線マイクロアナライザー(XMA)は、検出器としてエネルギー分散型のものを使用し、加速電圧は15kVとした。
(銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域の平面視の面積の割合の計測)
上記FE-SEM-XMAを用いて、5000倍で反射電子像を撮影し、これを画像処理ソフトImageJを用いて二値化して、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多く白く見える第1の領域の平面視の面積の割合を計測した。図2において、白色に見える領域の面積は、全面積(全視野面積)の11%であった。
<実施例1で得られた抗ウィルス基体における銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域>
実施例1で得られた抗ウィルス基体について、上記エネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域(図2において白色に見える領域)の元素分析を行った。
図1は、実施例1で得られた抗ウィルス基体をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域(図2において白色に見える領域)の元素分析を行った結果である。
図1Aは第1の領域の位置を示す抗ウィルス基体の電子顕微鏡写真であり、図1Bは蛍光X線分析のチャートであり、図1Cは元素分析結果である。図1より、抗ウィルス基体における銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域では、1.75原子%の銅が確認された。
<実施例1で得られた抗ウィルス基体における銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域>
実施例1で得られた抗ウィルス基体について、上記エネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域(図2において黒色に見える領域)の元素分析を行った。
図4は、実施例1で得られた抗ウィルス基体をエネルギー分散型蛍光X線分析装置で分析し、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域(図2において黒色に見える領域)の元素分析を行った結果である。
図4Aは第2の領域の位置を示す抗ウィルス基体の電子顕微鏡写真であり、図4Bは蛍光X線分析のチャートであり、図4Cは元素分析結果である。
図4からは、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域では、0.48原子%の銅しか確認されなかった。

Claims (14)

  1. 銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および分散媒を含み、
    前記分散媒の含有量が30重量%未満であることを特徴とする抗微生物組成物。
  2. 前記銅化合物は、銅のカルボン酸塩及び銅の水溶性無機塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の抗微生物組成物。
  3. 前記銅化合物は、銅のカルボン酸塩である請求項1又は2に記載の抗微生物組成物。
  4. 前記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  5. 前記有機バインダは、電磁波硬化型樹脂及び熱硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の抗微生物組成物。
  6. 前記未硬化のバインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  7. 前記分散媒は、アルコール及び/又は水である請求項1~6のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  8. 前記光重合開始剤は、水に不溶性の光重合開始剤である請求項1~7のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  9. 前記光重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~8のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  10. 前記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の光重合開始剤及びベンゾフェノン系の光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~9のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  11. 前記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の光重合開始剤及びベンゾフェノン系の光重合開始剤を含み、前記アルキルフェノン系の光重合開始剤の濃度が前記未硬化のバインダに対して、0.1~30.0重量%、前記ベンゾフェノン系の光重合開始剤の濃度が前記未硬化のバインダに対して0.1~10.0重量%である請求項1~10のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  12. 銅化合物及び分散媒を含むA液と、未硬化のバインダ及び光重合開始剤を含むB液とから構成されてなる抗微生物組成物であって、前記A液と前記B液を混合することで、銅化合物、未硬化のバインダ、光重合開始剤および分散媒を含み、前記分散媒の含有量が30重量%未満である抗微生物組成物を得ることができることを特徴とする抗微生物組成物。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の抗微生物組成物の硬化物が基材上に固着形成されてなる抗微生物基体。
  14. 前記抗微生物組成物の硬化物は、第1の領域と第2の領域からなり、銅化合物の含有量が第2の領域と比べて相対的に多い第1の領域が、銅化合物の含有量が第1の領域と比べて相対的に少ない第2の領域中に分散している請求項13に記載の抗微生物基体。
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