JP2022109609A - 抗微生物組成物、抗微生物基体及び抗微生物基体の製造方法 - Google Patents

抗微生物組成物、抗微生物基体及び抗微生物基体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線硬化に要する設備や作業が不要であり、高い抗ウィルス活性を発現できる抗微生物組成物とその組成物を用いた抗微生物基体を提供すること。【解決手段】樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含むことを特徴とする抗微生物組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、抗微生物組成物、抗微生物基体及び抗微生物基体の製造方法に関し、特には抗ウィルス組成物、抗ウィルス基体及び抗ウィルス基体の製造方法に関する。
近年、病原体である種々の微生物を媒介とした感染症が短時間で急激に広がる、いわゆる「パンデミック」が問題になっており、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、ノロウィルス、鳥インフルエンザ、コロナウィルス等のウィルス感染による死者も報告されている。
そこで、様々なウィルスに対して抗ウィルス効果を発揮する抗ウィルス剤の開発が活発に行われており、実際に様々な部材に抗ウィルス効果のあるPd等の金属や有機化合物からなる抗ウィルス剤を含む樹脂等を塗布したり、抗ウィルス剤が担持された材料を含む部材を製造することが行われている。
特許文献1には、基材表面に電磁波硬化型樹脂、銅化合物、光重合開始剤および分散媒からなる抗ウィルス組成物を付着させて、紫外線で硬化する抗ウィルス基体の製造方法が開示されている。
特許文献2には、銅または銅合金の表面処理方法であって、亜硫酸ナトリウムを含む還元剤溶液を調製する工程と、銅または銅合金の表面を上記還元剤溶液で処理する工程とを含む方法が開示されている。このような表面処理によって抗菌性を改善することができるとされている。
特許文献3には、一価の銅化合物微粒子と、還元剤と、分散媒を含む抗ウィルス組成物であって、pH6以下であることを特徴とする抗ウィルス組成物が開示されている。
国際公開第2019/074121号 国際公開第2019/008950号 特許第5194185号公報
特許文献1の抗ウィルス基体の製造方法を実用化するためには、メタルハライド紫外線ランプを用いて硬化を行う必要がある。しかしながら、紫外線による硬化時間が長く、壁やドアノブなどに抗ウィルスコートを行うにあたり、作業時間が長くなってしまうという問題が見られた。
また、特許文献2は、金属銅を還元して抗菌性を改善するものであり、抗ウィルスコートの作業効率を改善するものではない。
さらに、特許文献3は、一価銅化合物微粒子の酸化を防止して抗ウィルス効果の高い状態で安定に長期保管するための技術であって、抗ウィルスコートの作業効率を改善するものではない。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、抗微生物剤の前駆体と還元力を持つ亜硫酸塩を含む樹脂組成物を塗布することで、紫外線硬化に要する設備や作業が不要であり、高い抗ウィルス活性を発現できる抗微生物組成物とその組成物を用いた抗微生物基体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る抗微生物組成物は、樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含むことを特徴とする。
上記抗微生物組成物によれば、水溶性の二価の銅化合物を抗微生物剤の前駆体として使用することで、樹脂中に銅化合物を原子又はイオンレベルで均一混合させることができ、これを還元するために紫外線照射など特別な設備や作業を要することなく、組成物中の亜硫酸塩により還元して一価の銅化合物とすることで、高い抗微生物活性の被膜を短時間で得ることができる。また、この抗微生物組成物は、常温で硬化させることができるため、極めて施工性に優れている。
上記抗微生物組成物では、上記バインダー成分は、エポキシ系樹脂エマルジョンであることが好ましい。
エポキシ系樹脂エマルジョンは、市販されており入手しやすく、また、耐候性や強度に優れているからである。
上記抗微生物組成物は、さらに、銅(I)を含むことが好ましい。銅(I)は高い抗微生物活性を有する。
上記水溶性の二価の銅化合物の少なくとも一部は、還元反応により一価の銅化合物となっていることが好ましく、銅(I)の酸化物となっていることがより好ましい。水溶性の二価の銅化合物は、銅(I)の酸化物を得るための前駆体だからである。
上記水溶性の二価の銅化合物は、水に対する溶解度が高く、樹脂エマルジョンと均一混合させやすい。
上記水溶性の二価の銅化合物の水溶液を亜硫酸塩と反応させて、二価の銅化合物の少なくとも一部を一価の銅化合物に還元させてから樹脂エマルジョンと混合させてもよい。また、上記水溶性の二価の銅化合物の水溶液を亜硫酸塩と反応させて、二価の銅化合物の少なくとも一部を一価の銅化合物に還元させて得られた生成物について、上澄み液と沈殿物を分離し、上澄み液のみを樹脂エマルジョンと混合することもできる。上澄み液中には二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物の粒子と硫酸塩(硫酸イオン)が分散していると考えられる。
上記亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウムであることが好ましい。亜硫酸ナトリウムはpH=7~8程度の弱塩基性領域で高い還元力を発現するからである。
上記抗微生物組成物は、さらに、硫酸塩を含むことが好ましい。
また、上記亜硫酸塩の少なくとも一部は、酸化反応により、硫酸塩となっていることが好ましい。硫酸塩は、抗菌性に優れている。硫酸塩としては、硫酸銅(II)となっていることが好ましい。硫酸銅(II)は食品添加物として許容されているように安全性の高い銅化合物であり、抗菌性にも優れているため有利である。
上記抗微生物組成物のpHは7~8であることが好ましい。抗微生物組成物を付与する対象物である基材としては、一般的に樹脂、木材、金属等が採用されるが、これらの材料は酸性条件下で腐食が進行しやすいため、弱塩基性の抗微生物組成物の方が好ましいからである。
本発明に係る抗微生物基体は、樹脂エマルジョンの硬化物であるバインダー硬化物、一価の銅化合物および硫酸塩を含むことを特徴とする。
本発明の抗微生物基体によれば、樹脂エマルジョンの硬化物であるバインダー硬化物のマトリクス中に抗微生物剤である一価の銅化合物が3次元網目状に分散して固定されるか、あるいは、抗微生物剤である銅(I)がイオン又は分子レベルでバインダー硬化物中に均一に分布するため、高い抗微生物活性が得られる。また、水溶性の抗微生物剤は、光触媒粒子とは異なり、バインダー成分と混合されても失活しない。さらに、硫酸銅などの硫酸塩を含むため抗菌性にも優れており、総じて抗微生物活性に優れる。一価の銅化合物は銅(I)の酸化物であることが好ましい。
上記バインダー硬化物は、エポキシ系樹脂であることが好ましい。
エポキシ系樹脂は、市販されており入手しやすく、また、耐候性や強度に優れているからである。
上記硫酸塩は、硫酸銅(II)であることが好ましい。
硫酸銅(II)は食品添加物として許容されているように安全性の高い銅化合物であり、抗菌性にも優れているため有利である。銅(I)の酸化物は、抗ウィルス性には優れているが、抗菌性は銅(II)や金属銅より劣るとの報告がある(国際公開第2011/078203号、International Journal of Antimicrobial Agents, 33, pp587-590, 2009)。そこで安全で抗菌性に優れた硫酸銅(II)を含有させることで、抗ウィルス性、抗菌性のいずれにも優れた抗微生物被膜を得ることができる。
上記抗微生物基体は、さらに二価の銅化合物を含むことが好ましい。一価の銅化合物および二価の銅化合物を共に含むことにより、抗ウィルス性および抗菌性の両方を実現できるからである。
上記二価の銅化合物は、硫酸銅(II)及び酸化銅(II)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。安全であり、かつ酸化等に対して安定な物質だからである。
上記抗微生物基体中の、銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合は50%以上であることが好ましい。銅(I)の割合が多い方が抗ウィルス活性が高く、好ましいからである。銅(I)の存在割合は、(銅(I)の個数/(銅(I)の個数+銅(II)の個数))×100(%)で計算される。
本発明に係る抗微生物基体の製造方法は、樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含む抗微生物組成物を準備する工程、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させる付着工程、及び、上記基材表面に付着させた上記抗微生物組成物を乾燥させて、上記樹脂エマルジョンを硬化させてバインダー硬化物とし、上記バインダー硬化物、上記二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物、および、上記亜硫酸塩が酸化されて生成した硫酸塩を含む抗微生物基体を得る硬化工程を行うことを特徴とする。
上記方法では、抗微生物組成物中に含まれる水溶性の二価の銅化合物を亜硫酸塩により還元して、高い抗微生物性を発揮する銅(I)を生成させる。
また、本発明に係る抗微生物基体の製造方法では、硬化工程における乾燥を20~100℃で行うことが好ましい。また、常温での放置乾燥により行うことも好ましい。これらの乾燥であると紫外線硬化装置等の硬化設備を使用することなく硬化を行うことができる。
本発明に係る抗微生物基体の製造方法では、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させる時点での上記抗微生物組成物中に、上記二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物が含まれていることが好ましい。
二価の銅化合物の還元による銅(I)の生成は抗微生物組成物の段階で行われていてもよい。
本発明に係る抗微生物基体の製造方法では、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させる時点での上記抗微生物組成物中に含まれる銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合に対して、上記樹脂エマルジョンを硬化させてバインダー硬化物とした後の上記抗微生物基体中に含まれる銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合が高くなることが好ましい。
二価の銅化合物の還元による銅(I)の生成が、抗微生物基体において進むことにより、抗微生物基体における銅(I)の割合が増加して、抗ウィルス性能がより高い抗微生物基体となる。
上記の態様における「抗微生物」とは、抗菌、抗カビ、抗ウィルスが挙げられるが、特に「抗ウィルス」であることが好ましい。本発明の抗微生物組成物及び抗微生物基体は、ウィルスを失活させる効果が特に優れているからである。
図1は、基材表面に本発明の抗微生物基体が形成された抗微生物部材を模式的に示す断面図である。 図2は、抗微生物特性が要求される領域の写真であって、抗微生物組成物の硬化物が固着した領域と、抗微生物組成物の硬化物が固着せず基材が露出している領域が混在している状態を示す光学顕微鏡写真である。 図3は、抗微生物特性が要求される領域の写真であって、基材表面に抗微生物組成物の硬化物が島状に散在した状態を示す光学顕微鏡写真である。 図4は、実施例1に係る抗微生物基体表面をレーザーラマン分光にて分析して得られたチャートである。
(発明の詳細な説明)
以下、本発明について説明する。なお、本発明の抗微生物組成物を基材の抗微生物活性が要求される領域に付着させて硬化させたもの(抗微生物組成物の硬化物)が本発明の抗微生物基体であるから、抗微生物組成物と抗微生物基体の両者の構成は共通する。そのため、特に断らない限り、以下の抗微生物組成物および抗微生物基体に関する説明は両者に適用されるものとする。
本発明の抗微生物組成物は、樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含むことを特徴とする。
樹脂エマルジョンからなるバインダー成分と水溶性の二価の銅化合物と亜硫酸塩と水とを含む抗微生物組成物は、基材表面に付着させた後、単に乾燥させることで硬化するため、紫外線硬化設備のような硬化に必要な設備や機器が不要で施工性に優れている。
本発明の抗微生物組成物では、水溶性の二価の銅化合物を使用する。
水溶性の二価の銅化合物を抗微生物剤の前駆体として使用すると、抗微生物剤の前駆体を水分散性の樹脂エマルジョン中に溶解させることができる。これに還元剤としての亜硫酸塩を併用することで、銅(I)を生成させることが可能である。このため、この銅(I)を硬化後に樹脂マトリクス中に3次元網目状に分散、もしくは、イオン又は分子レベルで均一に分散させることができ、銅化合物が粒子状に凝集する場合や水に不溶性の銅化合物粒子を使用する場合に比べて、抗微生物活性に優れる。また、水溶性の抗微生物剤は、バインダー成分と混合しても、抗微生物剤がバインダー成分中に3次元網目状に分散、もしくは、イオン又は分子レベルで均一に分散しているため、バインダー硬化物の表面から抗微生物剤が露出する確率が高く、光触媒粒子のように樹脂に被覆されて失活することがない。
本発明の抗微生物組成物は、樹脂エマルジョンからなるバインダー成分と水溶性の二価の銅化合物と亜硫酸塩と水とを含むので、上記抗微生物組成物を基材表面の抗微生物活性が要求される領域に付着させることにより、以下の(i)~(iii)の状態を基材表面の抗微生物活性が要求される領域に実現できる。なお、下記態様の抗微生物組成物の硬化物(抗微生物硬化物)が本発明の抗微生物基体の一例である。
(i)基材上に抗微生物組成物の硬化物が連続膜として固着形成されている(図1参照)。
(ii)抗微生物組成物の膜状の硬化物が固着形成された領域内に、抗微生物組成物の硬化物が固着せず基材が露出している領域が混在している(図2参照)。
(iii)基材表面に抗微生物組成物の硬化物が島状に散在している(図3参照)。
上記抗微生物組成物の硬化物は、基材表面に直接固着させていてもよく、プライマー層を設けて、プライマー層上に固着形成させていてもよい。
図1は、基材表面に本発明の抗微生物基体が形成された抗微生物部材を模式的に示す断面図である。
図1に示す抗微生物部材10では、基材11の表面に抗微生物基体12が形成されている。
抗微生物部材10においては、基材11上に連続膜からなる抗微生物組成物の硬化物である抗微生物基体12が固着形成されている。
図2は、抗微生物特性が要求される領域の写真であって、抗微生物組成物の硬化物が固着した領域と、抗微生物組成物の硬化物が固着せず基材が露出している領域が混在している状態を示す光学顕微鏡写真である。
図3は、抗微生物特性が要求される領域の写真であって、基材表面に抗微生物組成物の硬化物が島状に散在した状態を示す光学顕微鏡写真である。
本発明においては、抗微生物組成物を基材表面に連続した膜状に形成することもでき、耐摩耗性に優れ、清掃時の拭き取りでも抗微生物性能が低下しない抗微生物基体が得られる。
本発明では、抗微生物組成物が付着した基材を乾燥し、抗微生物組成物を硬化させることにより、基材に対する透明性および基材との密着性に優れた島状の状態の抗微生物組成物の硬化物(抗微生物基体)、もしくは、抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と、抗微生物組成物の硬化物が固着せず基材が露出している領域が混在している状態の抗微生物組成物の硬化物(抗微生物基体)を、基材表面の抗微生物性が要求される領域に形成することができる。
また、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に、抗微生物組成物の硬化物が島状に散在して固着されている場合か、もしくは、基材表面の抗微生物活性が要求される領域に、抗微生物組成物の硬化物が固着形成された領域と、抗微生物組成物の硬化物が固着せず基材が露出している領域が混在している場合は、抗微生物組成物の硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスなどの微生物を抗微生物組成物の硬化物の硬化物間にトラップさせやすくなる。そのため、抗微生物性能を持つ抗微生物組成物の硬化物と微生物との接触確率が高くなり、高い抗微生物性能を発現できる。
本発明における抗微生物組成物では、上記抗微生物剤として、光触媒機能を持たない抗微生物剤を用いることが好ましい。
本発明においては、光触媒機能を持つ抗微生物剤は、バインダー成分又はバインダー硬化物を劣化させるおそれがあるため、抗微生物剤としては除外されることが好ましい。ここで、光触媒機能とは、光を吸収して触媒作用を示す機能を意味する。
本発明においては、水溶性の二価の銅化合物を使用する。水溶性の二価の銅化合物としては、例えば、銅のカルボン酸塩、銅の水溶性無機塩等の銅化合物等が挙げられる。
本明細書における水溶性の物質とは、20℃での水に対する溶解度が1g/100gHO以上の物質を意味する。
上記銅のカルボン酸塩としては、例えば、二価の銅のカルボン酸塩が挙げられる。具体的には、酢酸銅(II)、安息香酸銅(II)、フタル酸銅(II)等が挙げられる。なお、酢酸銅(II)等は、二価の銅化合物であることを示している。
上記銅の水溶性無機塩としては、例えば、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)等が挙げられる。
その他の銅化合物としては、二価の銅化合物が好ましく、例えば、銅(II)(メトキシド)、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)ブトキシド等が挙げられる。
上記二価の銅化合物は、抗微生物組成物の中に上記二価の銅化合物と還元剤とを添加した際、二価の銅化合物の銅(II)が銅(I)に還元されることが可能なものが好ましい。
本発明における抗微生物組成物中の二価の銅化合物の含有割合は、抗微生物組成物の全重量に対して0.1~30.0重量%が好ましい。
また、「銅化合物」と「樹脂エマルジョン」の比率は、固形分換算の重量比で「樹脂エマルジョン」/「銅化合物」=70.0/30.0~100.0/0.1であることが好ましい。特に、「銅化合物」と「樹脂エマルジョン」の比率は、固形分換算の重量比で「樹脂エマルジョン」/「銅化合物」=86.0/5.0~100.0/1.0であることが好ましい。
上記樹脂エマルジョンからなるバインダー成分としては、エポキシ系樹脂エマルジョンが好ましい。樹脂エマルジョンについては、色材、77[4]、169-176(2004)に詳述されている。
エポキシ系樹脂エマルジョンの市販品としては、ダイセルオルネクス社製のBECKOPOX/エポキシエマルジョンを使用できる。特にBECKOPOX EM 2120w/45WAやBECKOPOX EP 2384w/57WAを好適に用いることができる。また、必要に応じて硬化剤を使用してもよい。硬化剤としてはダイセルオルネクス社製のBECKOPOX EH 613w/80WAを好適に用いることができる。
本発明における抗微生物組成物中のバインダー成分としての樹脂の含有割合は、固形分換算で抗微生物組成物の全重量に対して15~40重量%が好ましい。
本発明における抗微生物組成物は、分散媒として水を含んでいる。上記分散媒である水中にバインダー成分である樹脂エマルジョンが分散もしくは溶解し、かつ、水溶性の抗微生物剤も分散媒である水中に溶解するため、バインダー成分と抗微生物剤が良好に分散し、その結果、抗微生物剤が良好に分散した抗微生物組成物の硬化物を形成することができるからである。
本発明における抗微生物組成物中の水の含有割合は、抗微生物組成物の全重量に対して10~80重量%であることが好ましい。
また、本発明における抗微生物組成物は、亜硫酸塩を含んでいる。抗微生物剤の前駆体として二価の銅化合物を含有しているので、当該前駆体である銅(II)を一価の銅(銅(I))に還元することができるため、好適である。また、銅イオン(I)が酸化して抗微生物性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できる。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗ウィルス活性が高く、銅が還元されることで抗ウィルス活性が改善される。
このことから、本発明における抗微生物組成物は銅(I)を含むことが好ましく、水溶性の二価の銅化合物の少なくとも一部は、還元反応により一価の銅化合物となっていることが好ましい。
亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウムが好ましい。亜硫酸塩は、二価の銅化合物を還元して自身は酸化されて硫酸塩となる。このことから、本発明における抗微生物組成物は硫酸塩を含むことが好ましく、亜硫酸塩の少なくとも一部が酸化反応により硫酸塩となっていることが好ましい。
硫酸塩としては硫酸銅が好ましい。
亜硫酸塩の含有量は、抗微生物組成物の全重量に対して0.1~20重量%であることが好ましい。
本発明における抗微生物組成物は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。抗微生物剤を均一に分散、溶解させることができるからである。界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(市販品は、例えば、第一工業製薬社製 商品名 ネオゲン)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(市販品は、例えば、花王社製 商品名 エマルゲン)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品は、例えば、花王社製 商品名 レオドール)などを使用できる。
界面活性剤の含有量としては、抗微生物組成物の全重量に対して0.1~20重量%であることが好ましい。
本発明における抗微生物基体は、樹脂エマルジョンの硬化物であるバインダー硬化物、一価の銅化合物および硫酸塩を含むことを特徴とする。
上記の抗微生物基体は、樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含む抗微生物組成物を準備する工程、
上記抗微生物組成物を基材表面に付着させる付着工程、及び、
上記基材表面に付着させた上記抗微生物組成物を乾燥させて、上記樹脂エマルジョンを硬化させてバインダー硬化物とし、上記バインダー硬化物、上記二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物、および、上記亜硫酸塩が酸化されて生成した硫酸塩を含む抗微生物基体を得る硬化工程を経て、製造することができる。
上記手順により抗微生物基体を製造する方法は、本発明の抗微生物基体の製造方法である。
以下、本発明における抗微生物組成物および抗微生物基体について、上記抗微生物組成物を用いて抗微生物基体を製造する際の各工程を例にとって、工程毎に説明する。
(1)抗微生物組成物を準備する工程
樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含む抗微生物組成物を準備する。
上記抗微生物組成物を調製する際には、分散媒である水中に水溶性の抗微生物剤と樹脂エマルジョンおよび/または水性樹脂、必要に応じて界面活性剤を添加した後、ミキサー等で充分に攪拌し、均一な濃度で分散する抗微生物組成物とすることが好ましい。
攪拌により粘度を調整する場合は、例えば、1~200mPa・sとすることが好ましい。粘度が1mPa・s未満であると抗微生物組成物を基材表面に付着させることが難しく、また粘度が200mPa・sを超えると抗微生物組成物を噴霧することが難しいからである。粘度は、25℃で回転式粘度計により測定できる。回転式粘度計の羽根の回転速度は、62.5rpmが好ましい。測定装置は、リオン社製のRION VT-04Fが推奨される。
上記水溶性の二価の銅化合物の水溶液を亜硫酸塩と反応させて、二価の銅化合物の少なくとも一部を一価の銅化合物に還元させてから樹脂エマルジョンと混合して抗微生物組成物を準備してもよい。また、上記水溶性の二価の銅化合物の水溶液を亜硫酸塩と反応させて、二価の銅化合物の少なくとも一部を一価の銅化合物に還元させて得られた生成物について、上澄み液と沈殿物を分離し、上澄み液のみを樹脂エマルジョンと混合して抗微生物組成物を準備してもよい。
上澄み液中には二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物の粒子と硫酸塩(硫酸イオン)が分散していると考えられる。
(2)付着工程
続いて、付着工程として、基材の表面に、樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含む抗微生物組成物を付着させる。
本発明における抗微生物基体に用いられる基材の材料は、特に限定されるものでなく、例えば、金属、ガラス等のセラミック、樹脂、繊維織物、木材等が挙げられる。基材表面は、プライマー層(例えば(株)染めQテクノロジィ社製、商品名:「ミッチャクロンTXF」、「ミッチャクロンマルチ」、「ミッチャクロンAQUA」など)が形成されているか、コロナ放電処理、プラズマ処理等の処理が施されて親水化されていることが好ましい。抗微生物組成物の硬化物と基材との密着性を改善できるからである。
また、本発明における抗微生物基体に使用される基材となる部材の具体例としては、タッチパネルの保護用フィルムやディスプレイ用のフィルム、デスクシートのようなフィルム状、シート状であってもよく、建築物内部の内装材、壁材、窓ガラス、手すり等が挙げられ、特に人間の手が触れる機会が多い部材が好ましい。また、ドアノブ、トイレのスライド鍵などでもよい。さらに事務機器や家具等であってもよく、上記内装材の外、種々の用途に用いられる化粧板等であってもよい。もちろん、衣服、布、紙などの繊維質基材であってもよい。フィルムやシートには、凹凸が形成されていてもよい。またはこれらの基材には、コート層が設けられていてもよい。
本発明の抗微生物基体の製造においては、上記抗微生物剤として水溶性の二価の銅化合物を使用する。
抗微生物剤として用いられる水溶性の二価の銅化合物としては、例えば、銅のカルボン酸塩、銅の水溶性無機塩等の銅化合物等が挙げられる。
上記銅のカルボン酸塩としては、例えば、二価の銅のカルボン酸塩が挙げられる。具体的には、酢酸銅(II)、安息香酸銅(II)、フタル酸銅(II)等が挙げられる。
上記銅の水溶性無機塩としては、例えば、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)等が挙げられる。
その他の銅化合物としては、二価の銅化合物が好ましく、例えば、銅(II)メトキシド、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)ブトキシド等が挙げられる。
上記二価の銅化合物は、抗微生物組成物の中に上記二価の銅化合物と還元剤とを添加した際、二価の銅化合物が一価の銅化合物に還元されることが可能なものが好ましい。
本発明の抗微生物基体において、上記樹脂エマルジョンとしては、エポキシ系樹脂エマルジョンが好ましい。樹脂エマルジョンについては、色材、77[4]、169-176(2004)に詳述されている。
特開2011-246608号公報の実施例に記載された方法や特開2001-114969号公報の実施例に記載された方法で、エポキシ系樹脂エマルジョンを製造することができる。
また、市販品としては、ダイセルオルネクス社製BECKOPOX/エポキシエマルジョンを使用できる。特にBECKOPOX EM 2120w/45WAやBECKOPOX EP 2384w/57WAを好適に用いることができる。
分散媒としては水を用いる。水には必要に応じてアルコールを添加してもよい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコールのなかでは、粘度が高くなりにくいメチルアルコール、エチルアルコールが好ましく、アルコールと水との混合液が好ましい。
本発明における抗微生物組成物では、還元剤として亜硫酸塩を含んでおり、抗微生物基体としては、亜硫酸塩が酸化還元反応にて変化した硫酸塩を含む。
還元剤を含むことで、二価の銅化合物を抗ウィルス効果などの抗微生物効果を持つ一価の銅化合物に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できる。また、一般的には銅イオン(I)は、抗ウィルス性に優れ、銅イオン(II)は、抗菌性に優れており、亜硫酸塩が酸化されて生成する硫酸イオンは、銅イオン(II)と結びついて抗菌性に優れる硫酸塩を生成するため、抗微生物基体中には硫酸塩を含むことが有利である。
抗微生物基体が含む硫酸塩としては硫酸銅(II)が好ましい。人体に対する安全性が高く、抗菌性にも優れているからである。
付着工程において、抗微生物組成物を基材表面に付着させる時点での上記抗微生物組成物中に、上記二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物が含まれていることが好ましい。すなわち、水溶性の二価の銅化合物と亜硫酸塩の酸化還元反応により一価の銅化合物が存在している抗微生物組成物を基材に付着させることが好ましい。
また、抗微生物基体は、さらに二価の銅化合物を含むことが好ましい。一価の銅化合物および二価の銅化合物を共に含むことにより、抗ウィルス性および抗菌性の両方を実現できるからである。
上記二価の銅化合物は、硫酸銅(II)及び酸化銅(II)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。安全であり、かつ酸化等に対して安定な物質だからである。
本発明における抗微生物組成物、抗微生物基体では、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(市販品は、例えば、第一工業製薬社製 商品名 ネオゲン)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(市販品は、例えば、花王社製 商品名 エマルゲン)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品は、例えば、花王社製 商品名 レオドール)などを使用できる。
上記抗微生物組成物中の抗微生物剤である水溶性の二価の銅化合物の含有割合は、抗微生物組成物の全重量に対して0.1~30.0重量%が好ましい。これにより過剰に抗微生物剤を含まなくとも高い抗微生物性を発現できるからである。
バインダー成分としての樹脂の含有割合は、抗微生物組成物の全重量に対して15~40重量%が好ましい。これにより抗微生物性を損なうことなく基材との密着性を確保できるからである。
分散媒である水の含有割合は、抗微生物組成物の全重量に対して10~80重量%が好ましい。これにより均一に抗微生物剤を分散もしくは溶解させることができるからである。
還元剤である亜硫酸塩の含有割合は、抗微生物組成物の全重量に対して0.1~20重量%が好ましい。バインダー成分に影響を与えることなく、水溶性の二価の銅化合物の還元を促進できるからである。
界面活性剤を含有する場合は、その含有割合は、抗微生物組成物の全重量に対して0.1~20重量%が好ましい。これにより、水溶性の抗微生物剤をバインダー成分と均一混合できるからである。
本発明における抗微生物組成物中には、必要に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、消泡剤等が配合されていてもよい。
本発明における抗微生物組成物のpHは7~8であることが好ましい。抗微生物組成物を付与する対象物である基材としては、一般的に樹脂、木材、金属等が採用されるが、これらの材料は酸性条件下で腐食が進行しやすいため、弱塩基性の抗微生物組成物の方が好ましいからである。
本発明においては、基材の表面であって抗微生物性が要求される領域の表面に抗微生物組成物を付着させる。上記抗微生物組成物を、基材表面に連続した膜状に形成することが密着性、耐摩耗性の観点から好ましい。
上記抗微生物組成物を、分割された状態で基材表面に島状に散在させるか、基材表面に抗微生物組成物が膜状に付着された領域内に、抗微生物組成物が付着されていない領域を混在させた状態、すなわち、基材表面(基材表面にプライマー層を形成した場合には基材表面のプライマー層)の一部が露出するような状態となるように抗微生物組成物を付着してもよい。
なお、プライマー層としてはポリオレフィン樹脂層を形成する方法が挙げられる。プライマーとしては、プライマー樹脂が有機溶剤や水中に溶解あるいは分散したものを使用でき、市販品も存在している。市販品としては、商品名「ミッチャクロンマルチ、ミッチャクロンAQUA(いずれも(株)染めQテクノロジィ社製)」等を使用することができる。これらの市販品はスプレー缶に充填されて販売されており、スプレー缶から噴射されるプライマー樹脂溶液のミストを基材に吹き付けてスプレー塗布することができる。また、プライマー樹脂が溶解あるいは分散したプライマー樹脂溶液、分散液をスプレーガンに充填して、スプレーガンにて基材に噴霧塗布することも可能である。
プライマー樹脂溶液、分散液としては、固形分濃度が、1~10wt%、粘度が1~10mPa・sであることが好ましい。また、噴霧塗布時の送り速度は、10~15cm/sで、基材から10~20cm離間させて噴霧することが好ましい。さらに、塗布した後、60分以上25℃で乾燥させることが好ましい。
基材表面に抗微生物組成物を付着させるには、例えば、スプレー法、二流体スプレー法、静電スプレー法、グラビア印刷、バーコーターによる塗布、刷毛による塗布等により抗微生物組成物を付着する方法が用いられる。
本発明において、スプレー法とは、高圧の空気などのガスや機械的な運動(指やピエゾ素子など)を用いて抗微生物組成物を霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗微生物組成物の液滴を付着させることをいう。
本発明において、二流体スプレー法とは、スプレー法の一種であり、高圧の空気などのガスと抗微生物組成物とを混合した後、ノズルから霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗微生物組成物の液滴を付着させることをいう。
本発明において、静電スプレー法とは、帯電した抗微生物組成物を利用する散布方法であり、上記したスプレー法により抗微生物組成物を霧の状態で噴霧するが、上記抗微生物組成物を霧状にするための方式には、上記抗微生物組成物を噴霧器で噴霧するガン型と、帯電した抗微生物組成物の反発を利用した静電霧化方式があり、さらに、ガン型には帯電した抗微生物組成物を噴霧する方式と、噴霧した霧状の抗微生物組成物に外部電極からコロナ放電で電荷を付与する方式とがある。霧状の液滴は、帯電しているため、基材表面に付着し易く、良好に上記抗微生物組成物を、細かく分割された状態で基材表面に付着させることができる。
本発明における抗微生物組成物の散布条件としては、スプレーの圧力は、0.05~5MPa、散布幅は115cm、散布ピッチは1~10cm、スプレーノズルから基材表面までの距離は、5~30cmが好ましい。また、スプレー1本あたりの抗微生物組成物の吐出流量は、0.02~0.1g/秒が好ましい。
本発明において、上記スプレー散布される抗微生物組成物の吐出液量は、コスト、生産性の観点から、1g/m~20g/mであることが好ましい。吐出液量は、抗微生物組成物の付着塗工に使用した全抗微生物組成物量を塗工面積で除した値である。
上記付着工程により、抗微生物組成物が、基材表面であって、抗微生物性が要求される領域に島状に散在した状態か、あるいは、基材表面であって、抗微生物性が要求される領域に、抗微生物組成物が付着された領域と抗微生物組成物が付着されていない領域とが混在した状態となる。もちろん、上記抗微生物組成物が、基材表面に連続的に膜状に形成されていてもよい。
(3)硬化工程
硬化工程では、上記付着工程により基材表面に付着させた抗微生物組成物を乾燥させる。かかる乾燥工程により、分散媒である水を蒸発、除去し、樹脂エマルジョンを硬化させてバインダー硬化物とし、バインダー成分である樹脂の硬化収縮により、抗微生物剤を樹脂の硬化物の表面から露出させることができる。樹脂エマルジョンは、乾燥により樹脂エマルジョン同士が凝集することで、あるいは、樹脂中に含まれる硬化剤により、架橋反応が進行して硬化する。乾燥条件としては、乾燥温度は20~100℃が好ましく、乾燥時間は1~120分が好ましい。乾燥は、室温(25℃)で行うことが好ましいが、赤外線ランプやヒータなどを用いてもよい。また、減圧(真空)乾燥させてもよい。
本発明における抗微生物基体では、硬化工程で得られるバインダー硬化物の厚さの平均値が0.1~50μmであることが好ましい。
また、本発明における抗微生物基体では、抗微生物基体の上記基材表面に平行な方向の最大幅を0.1~500μmとすることが好ましい。
抗微生物基体の基材表面に平行な方向の最大幅やその厚さの平均値は、走査型電子顕微鏡やレーザー顕微鏡を用いることにより、測定することができる。具体的には、画像解析・画像計測ソフトウェアを備えた走査型電子顕微鏡やレーザー顕微鏡を用いることにより、あるいは、走査型電子顕微鏡、レーザー顕微鏡で得られた画像を画像解析・画像計測ソフトウェアを用いて画像解析等を行うことにより、抗微生物基体の基材表面に平行な方向の最大幅やその厚さの平均値を求めることができる。
本発明における抗微生物基体において、硬化工程で得られる抗微生物基体の表面のJIS B 0601に準拠した算術平均粗さ(Ra)は、0.01~50μmであることが好ましい。上記算術平均粗さ(Ra)は、(株)東京精密社製の接触式表面粗さ測定機であるHANDYSURFを用い、8mmの測定長さで測定することにより得ることができる。
本発明における抗微生物基体において、抗微生物基体の鉛筆硬度は、Hから3Hであることが好ましく、特に2Hから3Hであることが好ましい。耐摩耗性に優れ、抗微生物活性が経時劣化しにくいからである。
本発明における抗微生物組成物を用いて抗微生物基体を設けることで、例えば、人間の手が接触する頻度の高いノブ、スライドキー、持ち手、取っ手、手すり、エレベータのボタン等に、表面に形成されたパターン、色彩、意匠、色調等を変えることなく、抗微生物機能を付加することができる。また、建築物内部の、内装材、壁材、窓ガラス、ドア、台所用品等や、事務機器や家具等や、種々の用途に用いられる化粧板、衣服や紙などの繊維質基材等、各種フィルム、シート等に、表面に形成されたパターン、色彩、意匠、色調等を変えることなく、抗微生物機能を付加することができる。
本発明における抗微生物基体においてバインダー硬化物は、エポキシ系樹脂であることが好ましい。
エポキシ系樹脂は、市販されており入手しやすく、また、耐候性や強度に優れているからである。
本発明の抗微生物基体では、抗微生物基体中の、銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合は50%以上であることが好ましい。銅(I)と銅(II)の存在量は、X線光電子分光分析法(XPS)により、925~955eVの範囲にある銅(I)と銅(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、銅(I)と銅(II)のイオンの個数として測定される量である。
また、抗微生物組成物及び抗微生物基体中の銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合は二価の銅化合物と亜硫酸塩の酸化還元反応が進むに従って変化する。
本発明の抗微生物基体の製造方法では、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させる時点での上記抗微生物組成物中に含まれる銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合に対して、上記樹脂エマルジョンを硬化させてバインダー硬化物とした後の上記抗微生物基体中に含まれる銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合が高くなることが好ましい。
このことは、実際に抗微生物性を発揮させる部材である抗微生物基体中において抗ウィルス性の高い銅(I)の存在割合が高くなることが好ましいことを意味している。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
(実施例1)
1.75重量%の酢酸銅・一水和物の水溶液と亜硫酸ナトリウム粉末を重量比で酢酸銅・一水和物:亜硫酸ナトリウム=55:1の割合で混合し、1時間以上還元反応させた還元調製液を調製した。樹脂エマルジョンとして二液性のエポキシ樹脂エマルジョン(ダイセルオルネクス社製 商品名 BECKOPOX EP 2384w/57WA)に対し、還元調製液を重量比で樹脂エマルジョン:還元調製液=1:2.3の割合で混合し、抗微生物組成物を調製した。酢酸銅の固形分の割合は、抗微生物組成物中の固形分比率で5重量%である。この抗微生物組成物に対し、樹脂エマルジョン硬化剤(ダイセルオルネクス社製 商品名 BECKOPOX EH 613w/80WA)を重量比で抗微生物組成物:硬化剤=1:0.37の割合で混合し、抗微生物組成物を最終調製した。pHは8.0であった。
この抗微生物組成物を100mm×100mmの黒色光沢メラミン樹脂化粧基板に刷毛により塗布して、常温(25℃)で24時間乾燥させて硬化させ、抗微生物組成物の硬化物である抗微生物基体が表面に固着した抗微生物部材を製造した。
この抗微生物部材は、基材上に連続膜からなる抗微生物組成物の硬化物である抗微生物基体が固着形成されているものである。
(実施例2)
0.88重量%の酢酸銅・一水和物の水溶液と亜硫酸ナトリウム粉末を重量比で酢酸銅・一水和物:亜硫酸ナトリウム=55:1の割合で混合し、1時間以上還元反応させた還元調製液を調製した。樹脂エマルジョンとして二液性のエポキシ樹脂エマルジョン(ダイセルオルネクス社製 商品名 BECKOPOX EP 2384w/57WA)に対し、還元調製液を重量比で樹脂エマルジョン:還元調製液=1:2.3の割合で混合し、抗微生物組成物を調製した。酢酸銅の固形分の割合は、抗微生物組成物中の固形分比率で2.5重量%である。この抗微生物組成物に対し、樹脂エマルジョン硬化剤(ダイセルオルネクス社製 商品名 BECKOPOX EH 613w/80WA)を重量比で抗微生物組成物:硬化剤=1:0.093の割合で混合し、抗微生物組成物を最終調製した。pHは8.0であった。
この抗微生物組成物を100mm×100mmの黒色光沢メラミン樹脂化粧基板に刷毛により塗布して、常温(25℃)で24時間乾燥させて硬化させ、抗微生物組成物の硬化物である抗微生物基体が表面に固着した抗微生物部材を製造した。
この抗微生物部材は、基材上に連続膜からなる抗微生物組成物の硬化物である抗微生物基体が固着形成されているものである。
(比較例1)
市販の亜酸化銅(I)粉末(富士フィルム和光純薬(株)製 和光一級、粒径1.0μm)と、還元剤としてアスコルビン酸と、分散媒である水と、の懸濁液(懸濁液濃度1mg/mL)にアスコルビン酸ナトリウムを加えてpH=2.0に調整して酸性の還元調整液とした。
樹脂エマルジョンとして二液性のエポキシ樹脂エマルジョン(ダイセルオルネクス社製 商品名 BECKOPOX EP 2384w/57WA)に対し、酸性の還元調製液を重量比で樹脂エマルジョン:還元調製液=1:2.3の割合で混合し、抗微生物組成物を調製した。樹脂エマルジョン硬化剤(ダイセルオルネクス社製 商品名 BECKOPOX EH 613w/80WA)を重量比で抗微生物組成物:硬化剤=1:0.37の割合で混合し、抗微生物組成物を最終調製した。
この抗微生物組成物を100mm×100mmの黒色光沢メラミン樹脂化粧基板に刷毛により塗布して、常温(25℃)で24時間乾燥させて硬化させ、抗微生物組成物の硬化物が表面に固着した抗微生物基材を製造した。
(バクテリオファージを用いた抗ウィルス性評価)
実施例1、2、比較例1で得られたサンプルにおける加熱加速試験前後の抗ウィルス性を評価するためにJIS Z 2801 抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果を改変した手法を用いた。改変点は、「試験菌液の接種」を「試験ウィルスの接種」に変更した点である。ウィルスを使用することによる変更点については、すべてJIS L 1922繊維製品の抗ウィルス性試験方法に基づき変更した。測定結果は、実施例1、2で得られた抗微生物基体について、JIS L 1922付属書Bに基づき、大腸菌への感染能力を失ったファージウィルス濃度をウィルス不活度として表示する。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活性化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用し、このウィルス不活度に基づいて抗ウィルス活性値を算出した。
以下、手順を具体的に記載する。
(1)実施例1、2、比較例1で得られた抗微生物基体について、当該抗微生物基体を1辺50mm角の正方形に切り出して試験試料とした。この試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、試験ウィルス液(>10PFU/mL)を0.1mL接種した。試験ウィルス液は10PFU/mLのストックを精製水で10倍希釈したものを使用した。
(2)対照試料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様にウィルス液を接種した。
(3)接種したウィルスの液の上から40mm角のポリエチレンを被せ、試験ウィルス液を均等に接種させた後、25℃で所定時間反応させた。
(4)接種直後または反応後、SCDLP培地10mLを加え、ウィルス液を洗い流した。
(5)JIS L 1922付属書Bによってウィルスの感染値を求めた。
(6)以下の計算式を用いて抗ウィルス活性値を算出した。
Mv=Log(Vb/Vc)
Mv:抗ウィルス活性値
Log(Vb):ポリエチレンフイルムの所定時間反応後の感染値の対数値
Log(Vc):試験試料の所定時間反応後の感染値の対数値
参考規格 JIS L 1922、JIS Z 2801
測定方法は、プラーク測定法によった。得られた抗ウィルス活性値を下記の表1に示す。
(XPSによる銅(I)の存在割合の測定)
実施例1、2、比較例1で製造した抗微生物基体について、表2及び表3に記載の条件でX線光電子分光(XPS)による分析を実施し、932~936eVの1価銅と2価銅の放出光電子強度の比率から銅(I)と銅(II)の割合を測定した。結果を表1に示した。
(レーザーラマン分光法による測定)
以下の条件にてレーザーラマン分光法により、実施例1にかかる抗微生物基体を分析した。図4は、実施例1に係る抗微生物基体表面をレーザーラマン分光にて分析して得られたチャートである。
・装置:Ramanar T-64000 (Jobin Yvon/愛宕物産)
条件:測定モード:顕微ラマン
対物レンズ:×100
ビーム径:1μm
光源:Ar+レーザー/514.5nm
レーザーパワー:30mW
回折格子:Spectrograph 600gr/mm
分散:Single 21A/mm
スリット:100μm
検出器:CCD/Jobin Yvon 1024×256
Figure 2022109609000002
Figure 2022109609000003
Figure 2022109609000004
実施例1、2に係る抗微生物基体は、紫外線照射設備が不要で、短時間で抗ウィルスコート施工を行うことができ、いずれも抗ウィルス活性値は、5.0と高い水準であった。
また、図4のチャートから実施例1の抗微生物基体中には、998~999cm-1に硫酸イオンと思われるラマンバンドが確認された。樹脂が青く着色しており、XPS分析で二価の銅化合物の存在が確認できることから、硫酸銅(II)が存在していると推定される。
10 抗微生物部材
11 基材
12 抗微生物基体

Claims (18)

  1. 樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含むことを特徴とする抗微生物組成物。
  2. 前記バインダー成分は、エポキシ系樹脂エマルジョンである請求項1に記載の抗微生物組成物。
  3. 前記抗微生物組成物は、さらに、銅(I)を含む請求項1又は2に記載の抗微生物組成物。
  4. 前記水溶性の二価の銅化合物の少なくとも一部は、還元反応により一価の銅化合物となっている請求項1又は2に記載の抗微生物組成物。
  5. 前記亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウムである請求項1~4のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  6. 前記抗微生物組成物は、さらに、硫酸塩を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  7. 前記亜硫酸塩の少なくとも一部は、酸化反応により、硫酸塩となっている請求項1~5のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  8. 前記抗微生物組成物のpHは7~8である請求項1~7のいずれか1項に記載の抗微生物組成物。
  9. 樹脂エマルジョンの硬化物であるバインダー硬化物、一価の銅化合物および硫酸塩を含むことを特徴とする抗微生物基体。
  10. 前記バインダー硬化物は、エポキシ系樹脂である請求項9に記載の抗微生物基体。
  11. 前記硫酸塩は、硫酸銅(II)である請求項9又は10に記載の抗微生物基体。
  12. 前記抗微生物基体は、さらに、二価の銅化合物を含む請求項9~11のいずれか1項に記載の抗微生物基体。
  13. 前記二価の銅化合物は、硫酸銅(II)及び酸化銅(II)からなる群から選択された少なくとも1種である請求項12に記載の抗微生物基体。
  14. 前記抗微生物基体中の、銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合は50%以上である請求項12又は13に記載の抗微生物基体。
  15. 樹脂エマルジョンからなるバインダー成分、水溶性の二価の銅化合物、亜硫酸塩および水を含む抗微生物組成物を準備する工程、
    前記抗微生物組成物を基材表面に付着させる付着工程、及び、
    前記基材表面に付着させた前記抗微生物組成物を乾燥させて、前記樹脂エマルジョンを硬化させてバインダー硬化物とし、前記バインダー硬化物、前記二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物、および、前記亜硫酸塩が酸化されて生成した硫酸塩を含む抗微生物基体を得る硬化工程を行うことを特徴とする、抗微生物基体の製造方法。
  16. 前記硬化工程における乾燥を20~100℃で行う請求項15に記載の抗微生物基体の製造方法。
  17. 前記抗微生物組成物を基材表面に付着させる時点での前記抗微生物組成物中に、前記二価の銅化合物が還元されて生成した一価の銅化合物が含まれている請求項15又は16に記載の抗微生物基体の製造方法。
  18. 前記抗微生物組成物を基材表面に付着させる時点での前記抗微生物組成物中に含まれる銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合に対して、
    前記樹脂エマルジョンを硬化させてバインダー硬化物とした後の前記抗微生物基体中に含まれる銅(II)と銅(I)の合計に対する銅(I)の存在割合が高くなる請求項15~17のいずれか1項に記載の抗微生物基体の製造方法。

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