JP2020081919A - 抗微生物硬化物の固着方法および抗微生物部材の製造方法 - Google Patents

抗微生物硬化物の固着方法および抗微生物部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】抗微生物性に優れるとともに、基材表面の模様及び色彩等の特性を維持可能な、塗工性に優れた抗微生物硬化物の固着方法、抗微生物部材の製造方法の提供。【解決手段】基材表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を、スプレー散布して前記基材表面に付着せしめて、前記基材表面を前記抗微生物組成物で被覆する被覆工程と、前記被覆工程により付着した前記抗微生物組成物中の前記未硬化のバインダを硬化させて、前記基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程と、を含む抗微生物硬化物の固着方法であって、前記スプレー散布開始からt(秒)経過した際の前記基材表面の前記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(1)を満たすように、前記基材表面の被覆速度を調整することを特徴とする抗微生物硬化物の固着方法。0.01t<S(t)%<(33t)1/2・・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法に関する。
近年、病原体である種々の微生物を媒介とした感染症が短時間で急激に広がる、いわゆる「パンデミック」が問題になっており、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、ノロウィルス、鳥インフルエンザ等のウィルス感染による死者も報告されている。
そこで、様々なウィルスに対して抗ウィルス活性を発揮する抗ウィルス剤の開発が活発に行われており、実際に様々な部材に抗ウィルス活性のあるPd等の金属や有機化合物からなる抗ウィルス剤を含む樹脂等を塗布したり、抗ウィルス剤が担持された材料を含む部材を製造することが行われている。
特許文献1には、無機系抗菌剤及び金属酸化物を含有する硬化性樹脂からなる層を表面に有する成形体であって、上記無機系抗菌剤が脂肪酸修飾金属超微粒子であることを特徴とする成形体が開示されている。
特許文献2には、亜酸化銅と還元性を有する糖を含む抗ウィルスコート剤が開示されている。
特開2015−105252号公報 特許第5812488号公報
しかしながら、特許文献1に記載された成形体では、硬化性樹脂からなる層は、成形体表面に形成された連続した層であるため、保護フィルムやディスプレイ用のフィルム等、充分な透明性が要求される層として使用することは難しかった。
また、塗工方法に関しては、成形体の形状に応じて従来公知の塗工方法を適宜選択できることが記載されているのみであり、具体的な塗工方法に関する提案はされていなかった。
また、特許文献2に記載された抗ウィルスコート剤では、亜酸化銅と還元性を有する糖に加え、10〜120℃の環境下で硬化するバインダー成分が含有され旨開示されているが、電磁波硬化型樹脂等の特定のバインダー成分については開示されておらず、塗工性に劣るという問題があった。また、上記コート剤中の糖が水に溶出しやすく、樹脂硬化物の劣化を招き、亜酸化銅が脱離してしまうため耐水性に乏しい。
すなわち、特許文献1、2の技術とも脂肪酸修飾金属超微粒子含有分散液や、抗ウィルスコート剤等の抗微生物組成物の基材への塗工(コート)については、具体的な方法が開示されておらず、具体的な塗工方法により得られる効果についても示されていなかった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、抗微生物性に優れるとともに、基材表面の模様及び色彩等の特性をそのまま維持することが可能で、塗工性に優れた抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、基材表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を、スプレー散布して上記基材表面に付着せしめて、上記基材表面を上記抗微生物組成物で被覆する被覆工程と、
上記被覆工程により付着した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、上記基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程と、を含む抗微生物硬化物の固着方法であって、
上記スプレー散布開始からt(秒)経過した際の上記基材表面の上記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(1)を満たすように、上記基材表面の被覆速度を調整することを特徴とするものである。
0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(1)
本発明の抗微生物硬化物の固着方法における、抗微生物とは、抗ウィルス、抗菌、抗カビ、防カビを含む概念である。従って、抗微生物成分とは、抗ウィルス成分、抗菌成分、抗カビ成分、防カビ成分を含む概念であり、抗微生物剤とは、抗ウィルス剤、抗菌剤、抗カビ剤、防カビ剤を含む概念であり、抗微生物組成物とは、抗ウィルス組成物、抗菌組成物、抗カビ組成物、防カビ組成物を含む概念である。
本明細書の、抗微生物硬化物の固着方法により形成された抗微生物硬化物は、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうちいずれか1種の活性を示す硬化物であってもよく、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうち、いずれか2種類の活性を示す硬化物であってもよく、いずれか3種類の活性を示す硬化物であってもよく、4種類全ての活性を示す硬化物であってもよい。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法により形成された抗微生物硬化物は、上記抗微生物硬化物における抗微生物特性の中で、特に抗ウィルス、抗カビに有効であり、抗ウィルスが最も高い活性を持つ。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法では、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の基材表面の抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、上記不等式(1)を満たすように、被覆速度を調整する。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法において、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の基材表面の抗微生物組成物による被覆率S(t)%が、上記不等式(1)を満たすように、基材表面の被覆速度を調整すると、抗微生物成分を含む抗微生物組成物が基材表面へ均等に付着し、上記固着工程を経て形成されるバインダ硬化物が、凹凸形状で形成される。すなわち、基材表面に抗微生物成分を含むバインダ硬化物が固着形成されてなり、上記バインダ硬化物は、島状に分散して基材表面に固着されてなるか、もしくは基材表面に上記バインダ硬化物が形成された領域と上記バインダ硬化物が形成されていない領域が混在して設けられてなる態様となる。
このため、バインダ硬化物が基材表面の全面に形成される場合に比べて、抗微生物成分を含むバインダ硬化物の総表面積が大きくなることから、ウィルス等の微生物との接触確率が高くなり、またウィルス等の微生物をバインダ硬化物間にトラップできるため、高い抗微生物活性が得られるのである。また、抗微生物成分がバインダ硬化物中に含まれているため、基材との密着性にも優れ、拭き取り清掃による脱落も防止できる。
上記被覆率S(t)%が、上記不等式0.01t<S(t)%を満たさない場合、すなわち、S(t)≦0.01tとなる場合は、被覆速度が小さすぎるため、抗微生物組成物を基材に付着せしめる付着工程に時間がかかりすぎ、実用的ではない。逆にS(t)%<(33t)1/2 を満たさない場合、すなわち、(33t)1/2≦S(t)となる場合は、被覆速度が大きすぎるため、基材表面に対する抗微生物組成物の散布が過多となり、液ダレや塗布ムラが生じ、意匠性が低下してしまう。さらに、基材表面に対する抗微生物組成物の散布が過多となることから、上記固着工程を経て形成されるバインダ硬化物が膜状となり、適切な凹凸形状が形成されない恐れが生じる。
なお、上記不等式(1)は、スプレーノズル1本当たりに換算した場合で表示している。もし、複数のノズルで抗微生物組成物をスプレー散布する場合は、1本当たりに換算して上記不等式(1)を満たすように被覆速度を調整することが望ましい。
なお、本発明においては、塗工性のみではなく生産性を考慮した場合においても、被覆速度が上記不等式、0.1t<S(t)%<(33t)1/2を満たすように調整することが最適である。
また、本発明における抗微生物硬化物の固着方法において、上記被覆速度は、単位時間あたりの基材表面被覆量をスプレー散布面積で除した値であり、1本のスプレーノズルを用いて上記被覆処理を行う際の抗微生物組成物被覆速度と定義される。被覆速度は、スプレー1本単位の吐出流量、スプレーの圧力、スプレーの掃引回数や掃引速度等により調整することができる。
また、別の態様において、本発明は、基材表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を、スプレー散布して上記基材表面に付着せしめて、上記基材表面を上記抗微生物組成物で被覆する被覆工程と、上記被覆工程により付着した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、上記基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程と、を含む抗微生物部材の製造方法であって、上記スプレー散布開始からt(秒)経過した際の上記基材表面の上記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(2)を満たすように、上記基材表面の被覆速度を調整することを特徴とするものでもある。
0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(2)
本発明の抗微生物部材の製造方法における、抗微生物とは、抗ウィルス、抗菌、抗カビ、防カビを含む概念である。従って、抗微生物成分とは、抗ウィルス成分、抗菌成分、抗カビ成分、防カビ成分を含む概念であり、抗微生物剤とは、抗ウィルス剤、抗菌剤、抗カビ剤、防カビ剤を含む概念であり、抗微生物組成物とは、抗ウィルス組成物、抗菌組成物、抗カビ組成物、防カビ組成物を含む概念である。
本明細書の、抗微生物部材の製造方法により得られた抗微生物部材は、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうちいずれか1種の活性を示す部材であってもよく、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうち、いずれか2種類の活性を示す部材であってもよく、いずれか3種類の活性を示す部材であってもよく、4種類全ての活性を示す部材であってもよい。
本発明の抗微生物部材の製造方法により得られた抗微生物部材は、上記抗微生物部材における抗微生物特性の中で、特に抗ウィルス、抗カビに有効であり、抗ウィルスが最も高い活性を持つ。
本発明の抗微生物部材の製造方法では、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の基材表面の抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、上記不等式(2)を満たすように、被覆速度を調整する。
本発明の抗微生物部材の製造方法において、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の基材表面の抗微生物組成物による被覆率S(t)%が、上記不等式(2)を満たすように、基材表面の被覆速度を調整すると、抗微生物成分を含む抗微生物組成物が基材表面へ均等に付着し、上記固着工程を経て形成されるバインダ硬化物が、凹凸形状で形成される。すなわち、基材表面に抗微生物成分を含むバインダ硬化物が固着形成されてなり、上記バインダ硬化物は、島状に分散して基材表面に固着されてなるか、もしくは基材表面に上記バインダ硬化物が形成された領域と上記バインダ硬化物が形成されていない領域が混在して設けられてなる抗微生物部材とすることができる。
このため、バインダ硬化物が基材表面の全面に形成される場合に比べて、抗微生物成分を含むバインダ硬化物の総表面積が大きくなることから、ウィルス等の微生物との接触確率が高くなり、またウィルス等の微生物をバインダ硬化物間にトラップできるため、高い抗微生物活性が得られるのである。また、抗微生物成分がバインダ硬化物中に含まれているため、基材との密着性にも優れ、拭き取り清掃による脱落も防止できる。
上記被覆率S(t)%が、上記不等式0.01t<S(t)%を満たさない場合、すなわち、S(t)≦0.01tとなる場合は、抗微生物組成物を基材に付着せしめる付着工程に時間がかかりすぎるため、実用的ではない。逆にS(t)%<(33t)1/2 を満たさない場合、すなわち、(33t)1/2≦S(t)となる場合は、基材表面に対する抗微生物組成物の散布が過多となり、液ダレや塗布ムラが生じ、意匠性が低下してしまう。さらに、基材表面に対する抗微生物組成物の散布が過多となることから、上記固着工程を経て形成されるバインダ硬化物が膜状となり、適切な凹凸形状が形成されない恐れが生じる。
なお、上記不等式(2)は、スプレーノズル1本当たりに換算した場合で表示している。もし、複数のノズルで抗微生物組成物をスプレー散布する場合は、1本当たりに換算して上記不等式(2)を満たすように被覆速度を調整することが望ましい。
なお、本発明においては、塗工性のみではなく生産性を考慮した場合においても、被覆速度が上記不等式、0.1t<S(t)%<(33t)1/2を満たすように調整することが最適である。
また、本発明における抗微生物部材の製造方法において、上記被覆速度は、単位時間あたりの基材表面被覆量をスプレー散布面積で除した値であり、1本のスプレーノズルを用いて上記被覆処理を行う際の抗微生物組成物被覆速度と定義される。被覆速度は、スプレー1本単位の吐出流量、スプレーの圧力、スプレーの掃引回数や掃引速度等により調整することができる。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法では、スプレー散布される抗微生物組成物の流量が0.02g/秒〜0.1g/秒であることが望ましい。経験上、上記流量が0.1g/秒を超えると、抗微生物組成物の液滴が、乾燥前に重畳的に基材表面に付着するため、塗工ムラが生じてしまい、実用的ではないからである。また、スプレー散布される抗微生物組成物の流量が0.02g/秒未満であると、抗微生物組成物を基材に付着せしめる付着工程に時間がかかったり、スプレー散布における抗微生物組成物の液敵の直径が大きくなり、塗工ムラが生じてしまい、実用的ではない。
本発明における抗微生物組成物は、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒及び重合開始剤とを含むので、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させることにより、抗微生物組成物を基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域とが混在している状態、もしくは、島状に散在した状態とすることができる。すなわち、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させて、基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程を経て、基材に対する透明性及び基材との密着性に優れた抗微生物硬化物を、島状、もしくは、バインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域とが混在している状態、で形成することができる。
なお、バインダの硬化物が島状に散在して固着されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域とが混在している場合は、バインダ硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスなどの微生物をバインダ硬化物間にトラップさせやすくなるため、抗微生物性能を持つバインダ硬化物と微生物との接触確率が高くなり、高い抗微生物性能を発現できる。
本明細書において、バインダ硬化物は、基材表面の10%以上、95%以下を覆っていることが望ましく、バインダ硬化物が形成されたバインダ硬化物形成領域と、バインダ硬化物が形成されていないバインダ硬化物非形成領域と、が混在した状態であることが望ましい。すなわち、バインダ硬化物は、基材表面の一部を露出するように、基材表面に固着形成されているのである。バインダ硬化物は島状に形成されていてもよく、また、上記バインダ硬化物が膜状に形成され、当該バインダ硬化物の膜が形成された領域内に硬化物が形成されていない領域が混在して設けられた状態であってもよい。
本明細書において、島状とは、基材表面のバインダ硬化物が他のバインダ硬化物と接触しない孤立した状態で存在していることをいう。島状に散在しているバインダ硬化物の形状は特に限定されず、その輪郭を平面視した際、円形、楕円形等の曲線から構成される形状であってもよく、多角形等の形状であってもよく、円形、楕円形等が細い部分を介して繋がり合ったような形状であってもよい。
また、本発明における抗微生物組成物は、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含むので、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させることにより、抗微生物組成物を基材表面に膜状に形成することもでき、耐摩耗性に優れ、清掃時のふき取りでも抗微生物性能が低下しない。
しかし、抗微生物組成物が基材表面に膜状に形成されている場合、基材表面の意匠の視認性、抗微生物性能、及び、冷熱サイクル後の抗微生物性のバインダ硬化物の基材に対する密着性は、島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べて低下する。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法では、上記微生物組成物は、上記抗微生物成分として、無機系抗微生物剤及び有機系抗微生物剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが望ましい。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法では、上記微生物組成物が、上記抗微生物成分として、無機系抗微生物剤及び有機系抗微生物剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいると、確実に高い抗微生物活性を有する抗微生物硬化物を固着させることができ、及び、確実に高い抗微生物活性を有する抗微生物性部材を製造することができる。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法では、上記無機系抗微生物剤は、銀、銅、亜鉛、白金、亜鉛化合物、銀化合物、銅化合物、金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物触媒、金属イオンでイオン交換されたゼオライト、及び、銅の錯体からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法において、上記無機系抗微生物剤が、銀、銅、亜鉛、白金、亜鉛化合物、銀化合物、銅化合物、金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物触媒、金属イオンでイオン交換されたゼオライト、及び、銅の錯体からなる群から選択される少なくとも1種であると、抗微生物剤を粒子状とすることができ、該無機系抗微生物剤が上記バインダ硬化物から露出し易く、より高い抗微生物活性を有する抗微生物硬化物を固着させることができ、及び、より高い抗微生物活性を有する抗微生物部材を製造することができる。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法において、抗微生物成分として、銅化合物を含むことが望ましい。また、上記銅化合物は、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))は、0.4〜50であることが望ましい。
また、Cu(I)の銅は、Cu(II)の銅と比較して抗微生物性能により優れているため、本発明におけるバインダ硬化物において、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.0〜4.0であると、より抗微生物性能に優れた抗微生物硬化物、又は、抗微生物部材となる。
なお、Cu(I)とは、銅のイオン価数が1であることを意味し、Cuと表す場合もある。一方、Cu(II)とは、銅のイオン価数が2であることを意味し、Cu2+と表す場合もある。なお、一般的に、Cu(I)の結合エネルギーは、932.5eV±0.3(932.2 〜 932.8eV)、Cu(II)の結合エネルギーは、933.8eV±0.3(933.5 〜 934.1eV)である。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法では、上記有機系抗微生物剤は、抗微生物樹脂、スルホン酸系界面活性剤、銅のアルコキシド、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法において、上記有機系抗微生物剤が、抗微生物樹脂、スルホン酸系界面活性剤、銅のアルコキシド、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であると、有機系抗微生物剤は島状のバインダ硬化物の全体に広がり易く、高い抗微生物活性を有する抗微生物硬化物を固着させることができ、及び、高い抗微生物活性を有する抗微生物部材を製造することができる。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法では、上記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物、及び、有機・無機ハイブリッドのバインダからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。塗工性に優れ、比較的容易に密着性に優れたバインダ硬化物を、基材表面に固着形成できるからである。
上記有機バインダは、熱硬化型樹脂及び電磁波硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。
これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により、樹脂が硬化して基材表面に上記抗微生物成分を固着できるからである。また、これらの樹脂は、重合開始剤に対し還元力を低下させることがないため有利である。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及びフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種を使用できる。
上記電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。上記有機バインダが、これらの電磁波硬化型樹脂であると、本発明の、抗微生物硬化物の固着方法及び抗微生物部材の製造方法により固着される抗微生物硬化物は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
上記無機バインダは、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、及び、ケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。上記抗微生物成分の種類に応じて水を分散媒としたバインダや有溶媒を分散媒としたバインダを使い分けることができ、抗微生物成分が良好に分散した島状のバインダ硬化物を形成することができる。
本発明における抗微生物組成物では、上記未硬化のバインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
本発明における抗微生物組成物に含まれる上記分散媒は、アルコール又は水であることが望ましい。上記分散媒中に抗微生物成分が良好に分散し、その結果、抗微生物成分が良好に分散したバインダ硬化物を形成することができるからである。
本発明における抗微生物組成物に含まれる上記重合開始剤は、水に不溶性の重合開始剤であることが望ましい。水に触れても溶出しないため、耐水性に優れたバインダ硬化物となるからである。
本発明における抗微生物組成物に含まれる上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましく、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であることがより望ましい。
これらの重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
また、本発明における抗微生物組成物は、重合開始剤を含むが、この重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に銅化合物を還元させることができるため、銅の抗微生物活性を高くすることができるのである。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。
本発明における抗微生物組成物に含まれる上記重合開始剤は、光重合開始剤であることが望ましい。上記光重合開始剤を含むと、上記銅化合物を抗微生物効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
本発明における抗微生物組成物に含まれる抗微生物成分としては銅化合物が望ましい。銅化合物としては、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましく、銅のカルボン酸塩であることがより望ましい。基材表面にバインダ硬化物を形成した際、バインダ硬化物の表面よりウィルスなどの微生物と接触可能な状態で露出した銅化合物が優れた抗微生物性を発揮することができるからである。また、カルボン酸は、COOH基を持ち、樹脂との親和性に優れ、バインダ硬化物により保持されやすく、他の銅の無機塩や銅の酸化物、銅の水酸化物に比べて、水で溶出しにくい為、耐水性に優れる。
また、本発明における抗微生物組成物では、上記銅化合物は、二価の銅化合物(銅化合物(II))であることが望ましい。一価の化合物は、分散媒である水に不溶であり、粒子状に局在化する、バインダ中への分散が十分であり、抗微生物活性に劣るからである。
また、二価の銅化合物を抗微生物組成物中に加えることで、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物がバインダ硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。
本発明における抗微生物組成物では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤及びベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
また、上記アルキルフェノン系の重合開始剤と上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法は、前記スプレー散布される抗微生物組成物の吐出液量が、1g/m〜20g/mであることが望ましい。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法は、前記被覆工程により付着した抗微生物組成物中の電磁波硬化型樹脂を乾燥させる乾燥工程を含むことが望ましく、乾燥条件は、50W〜500Wのランプを用いて、ランプを基材表面から5cm〜50cm離間させ、1mあたりに換算して、100〜500秒光照射することが望ましい。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法における、固着工程は、抗微生物組成物中の電磁波硬化型樹脂を硬化させる硬化工程を含むことが望ましく、前記硬化条件が、電磁波の積算エネルギーとして、0.1J/cm〜3.0J/cmであることが望ましい。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法においては、上記被覆工程により付着した上記抗微生物組成物を乾燥させて、上記抗微生物中の分散媒を除去する乾燥工程を含んでいてもよい。
この場合、本発明の抗微生物硬化物の固着方法は、上記乾燥工程と同時に、又は、乾燥工程の後、分散媒が除去された上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、上記基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる硬化工程を含む。
また、本発明の抗微生物部材の製造方法においては、上記被覆工程により付着した上記抗微生物組成物を乾燥させて、上記抗微生物中の分散媒を除去する乾燥工程を含んでいてもよい。
この場合、本発明の抗微生物部材の製造方法は、上記乾燥工程と同時に、又は、乾燥工程の後、分散媒が除去された上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、上記基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる硬化工程を含む。
上記乾燥工程を含むことで、乾燥工程と同時に、又は、乾燥工程の後、抗微生物組成物の硬化反応を進行させることができ、比較的容易に抗微生物成分を含むバインダ硬化物を形成することができ、上記抗微生物成分の一部をバインダ硬化物の表面から微生物と接触可能な状態で露出させて微生物と接触させることにより、抗微生物成分による抗微生物に優れた抗微生物硬化物を固着させることができる。
また、バインダの硬化時に収縮が生じるため、硬化収縮時に抗微生物成分をバインダ表面から露出せしめることができる。
本発明における抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、乾燥や加熱は、赤外線ランプやヒータなどで行うことができ、また、電磁波を照射して乾燥と硬化を同時行ってもよい。
本発明における抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法においては、重合開始剤の還元力を発現せしめるために、所定波長の電磁波を照射する工程を含むことが望ましい。電磁波としては高エネルギーを持つ紫外線が好適に利用される。電磁波の照射工程は、乾燥工程を含む場合は、その前後、もしくは硬化工程の前後に行うことが好ましい。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法は、抗ウィルス性硬化物の固着方法であることが望ましい。
また、本発明の抗微生物部材の製造方法は、抗ウィルス性部材の製造方法であることが望ましい。
図1(a)は、第1の本発明の抗ウィルス性部材の一実施形態を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した抗ウィルス性部材の平面図である。 図2は、実施例及び比較例の散布時間(散布開始からの時間)と抗ウィルス性組成物の基材表面の被覆率S(t)%の関係をグラフ化したものである。
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法について各工程ごとに詳細に説明する。
本発明は、基材の表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を、スプレー散布して上記基材表面に付着せしめて、上記基材表面を上記抗微生物組成物で被覆する被覆工程と、上記被覆工程により付着した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、上記基材の表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程と、を含む抗微生物硬化物の固着方法であって、上記スプレー散布開始からt(秒)経過した際の上記基材表面の上記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(1)を満たすように、上記基材表面の被覆速度を調整することを特徴とするものである。
0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(1)
また、別の態様において、本発明は、基材表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を、スプレー散布して上記基材表面に付着せしめて、上記基材表面を上記抗微生物組成物で被覆する被覆工程と、上記被覆工程により付着した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、上記基材の表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程と、を含む抗微生物部材の製造方法であって、上記スプレー散布開始からt(秒)経過した際の上記基材表面の上記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(2)を満たすように、上記基材表面の被覆速度を調整することを特徴とするものでもある。
0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(2)
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、本発明の別の態様である抗微生物部材の製造方法は、同様の上記被覆工程及び上記固着工程を含む。また、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の上記基材表面の上記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、同様の不等式(上記不等式(1)及び(2))を満たすように、上記基材表面の被覆速度を調整することも同様である。そのため、以下では、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、本発明の別の態様である抗微生物部材の製造方法において共通する各工程を説明する。
(1)被覆工程
本発明の抗微生物硬化物を固着する際、及び、本発明の抗微生物部材を製造する際には、まず、被覆工程において、基材表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物をスプレー散布して、基材表面に付着せしめて、基材表面を抗微生物で被覆する被覆工程を含む。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法で用いられる基材の材料は、特に限定されるものでなく、例えば、金属、ガラス等のセラミック、樹脂、繊維織物、木材等が挙げられる。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法で用いられる基材となる部材も、特に限定されるものではなく、タッチパネルの保護用フィルムやディスプレイ用のフィルムであってもよく、建築物内部の内装材、壁材、窓ガラス、手すり等であってもよい。また、ドアノブ、トイレのスライド鍵などでもよい。さらに事務機器や家具等であってもよく、上記内装材の外、種々の用途に用いられる化粧板等であってもよい。
上記化粧板は、基板と基板の表面上に積層された表面樹脂層を有する。
上記化粧板に使用する基板は、特に限定されるものではなく、一般的に化粧板に使用されるコア紙やマグネシアセメント等の不燃板等を使用することができる。コア紙は単独でもよく複数枚のコア紙を積層した積層体としてもよい。コア紙の枚数は特に限定されないが、1〜20枚とすることができる。コア紙としては、例えば、水酸化アルミニウム抄造紙を使用することができる。コア紙には、フェノール樹脂を含浸させることができる。また、コア紙とマグネシアセメント不燃板を積層させて基板とすることもできる。
マグネシアセメント不燃板は、単独で使用することにより、又は、コア紙の中心部に積層して配置させることにより基板を構成することができる。マグネシアセメント不燃板は、酸化マグネシウム(MgO)と塩化マグネシウム(MgCl)を混合し、さらに骨材と水を加えて混練し、板状に成形することにより製造されるものである。骨材としては、ロックウール、グラスウール等の無機質繊維、ウッドチップ、パルプ等の有機質繊維を用いることができる。また、マグネシアセメント不燃板の強度を高めるため、中間層として網目状等に形成されたガラス繊維層を設けることができる。
また、上記化粧板を構成する表層樹脂層に用いることができる樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。これらの中では、メラミン樹脂を用いることが望ましい。
メラミン樹脂は、透光性などの光学的、視覚的特性を損なうことなく、寸法安定性や靭性を改善した樹脂である。メラミン樹脂としては、メラミン及びその誘導体をモノマーとする樹脂であれば公知のものを採用することができる。また、メラミン樹脂は、単一のモノマーからなる樹脂であってもよく、複数のモノマーからなる共重合体であってもよい。メラミンの誘導体としては、例えば、イミノ基やメチロール基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基などの官能基を有する誘導体が挙げられる。また、メチロール基を有するメラミン誘導体に低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物をモノマーとして用いることができる。モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロール基を有する誘導体(以下、「メチロール化メラミン」という。)を架橋剤としてメラミンと共重合させてなるメラミン樹脂を用いることができる。
上記表層樹脂層は、模様や色彩が印刷された印刷紙に樹脂が含浸された化粧層であってもよく、填料の量が15%以下で樹脂を含浸した場合には透光性となるオーバーレイ紙に樹脂が含浸されたオーバーレイ層でもよい。表層樹脂層がオーバーレイ層である場合には、化粧層はオーバーレイ層の下に設けられる。
なお、填料とは紙に添加して、白色度や平滑度を調整するための無機粒子(フィラー)であり、炭酸カルシウム、タルク、クレーおよびカオリンから選ばれる少なくとも1種以上が望ましい。填料は無機粒子であるため、填料の含有量は紙の重量と紙を強熱して残存する灰分の重量から計算することができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、上記抗微生物成分は、無機系抗微生物剤及び有機系抗微生物剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいることが望ましい。
上記バインダ硬化物中には、上記した無機系抗微生物剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の無機系抗微生物剤が含まれていてもよく、上記した有機系抗微生物剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の有機系抗微生物剤が含まれていてもよい。さらに、上記バインダ硬化物中には、上記無機系抗微生物剤と上記有機系抗微生物剤とが2種類以上含まれていてもよい。
また、本発明において、上記無機系抗微生物剤は、銀、銅、亜鉛、白金、亜鉛化合物、銀化合物、銅化合物、金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物触媒、金属イオンでイオン交換されたゼオライト、及び、銅の錯体からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
上記バインダ硬化物中に含まれている無機系抗微生物剤として、例えば、銀、銅、亜鉛及び白金の少なくとも1種からなる金属が挙げられる。
バインダ硬化物中には、銀、銅、亜鉛及び白金の粒子が単独で含まれていてもよく、銀、銅、亜鉛及び白金のうち、2種類以上の金属粒子が含まれていてもよく、例えば、銀、銅、亜鉛及び白金のうち、少なくとも2種を含む合金の金属粒子が固定されていてもよい。
上記バインダ硬化物中に含まれている無機系抗微生物剤として、例えば、銅の酸化物、銅の水酸化物、銅のカルボン酸塩、銅の錯体、銅の水溶性無機塩等の銅化合物等が挙げられる。特に、二価の銅化合物(銅化合物(II))が望ましい。二価の銅化合物は、分散媒である水に溶解して、銅イオンがバインダ中に均一分散しやすくなるためである。これに対して、一価の銅化合物は、水に溶解せず、粒子状に懸濁してしまい、均一性に劣る。
また、二価の銅化合物を抗微生物組成物中に加えることで、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物がバインダ硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。
上記銅のカルボン酸塩としては、酢酸銅(II)、酢酸銅(I)、シュウ酸銅(I)、安息香酸銅(II)、フタル酸銅(II)等が挙げられ、なかでも、二価の銅のカルボン酸塩が望ましい。
上記銅の錯体としては、例えば、アセチルアセトンと銅との錯体、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン等のβジケトンと銅との錯体、銅(I)(1−ブタンチオレート)、銅(I)(へキサフルオロペンタンジオネートシクロオクタジエン)等が挙げられる。
上記銅の水溶性無機塩としては、例えば、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)等が挙げられる。その他の銅化合物としては、二価の銅化合物が望ましく、例えば、銅(II)(メトキシド)、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)ブトキシド等が挙げられる。未硬化のバインダ中に銅化合物(II)を添加して、重合開始剤によって銅化合物を一価に還元することが望ましい。その他、銅の共有結合性化合物としては同の酸化物、銅の水酸化物等が挙げられる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、上記抗微生物成分として銅化合物を用いることが望ましく、中でも銅のカルボン酸塩を用いることがより望ましい。基材表面にバインダ硬化物を形成した際、バインダ硬化物の表面より微生物と接触可能な状態で露出した銅化合物が優れた抗微生物性を発揮することができるからである。また、カルボン酸はCOOH基を持ち、樹脂との親和性に優れ、バインダ硬化物により保持されやすく、他の銅の無機塩や銅の酸化物、銅の水酸化物に比べて、水で溶出しにくいため、耐水性に優れる。
上記抗微生物組成物中に含まれている金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物触媒として、例えば、酸化チタン等に白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族、銀、銅などを担持させたものなどが挙げられる。金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物触媒として、具体的には、例えば、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、銀担持チタニア触媒、白金担持窒素ドープチタニア触媒、白金担持硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、銅担持酸化タングステン触媒、銀担持酸化タングステン触媒等の可視光応答型光触媒が挙げられ、上記銅担持チタニア触媒としては、例えば、特開2006−232729号公報に記載されたCuO/TiO(重量%比)=1.0〜3.5の範囲で銅を含有するアナターゼ型酸化チタン、特開2012−210557号公報に記載された亜酸化銅(酸化銅(I):CuO)と酸化チタンとが複合化した光触媒組成物、特開2013−166705号公報に記載された一価銅化合物及び二価銅化合物を含む混合物を表面に担持した酸化チタン、並びに、国際公開第2013/094573号に記載された結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する銅及びチタン含有組成物などが挙げられる。
また、無機系抗微生物剤としては、銀、銅、亜鉛、チタン、タングステン等から選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物あるいは金属水和物の粒子を用いることもできる。無機系抗微生物剤の具体例としては、例えば、酸化銅(I)(亜酸化銅)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライト、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたアルミナ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたシリカ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化チタン、もしくは酸化タングステン、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウム等の無機粒子が挙げられる。銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライトは、さらに亜鉛イオン等の他の金属イオンで交換されていてもよい。また、本発明で用いられる無機系抗微生物剤としては、銅の錯体であることが望ましい。
本発明の、抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法で用いられる上記有機系抗微生物剤は、抗微生物樹脂、スルホン酸系界面活性剤、銅のアルコキシド、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
上記有機系抗微生物剤としては、例えば、ハロカルバン、クロロフェネシン、塩化リゾチーム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヘキサクロロフェン、ベルベリン、チオキソロン、サリチル酸およびそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ヘキサクロロフェン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、チアントール、ヒノキチオール、トリクロサン、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、モノニトログアヤコールナトリウム、ウイキョウエキス、サンショウエキス、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及びウンデシレン酸誘導体、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩等が挙げられる。これらのなかでは、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩が好ましい。
上記抗微生物樹脂は、酸性官能基と樹脂とからなる。酸性官能基としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基などが挙げられる。これらのなかでは、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基が好ましい。
上記樹脂は、ビニル基を有するモノマーの重合体であることが望ましい。
ビニル基を有するモノマーの重合体は、付加重合で合成されるので水などの副生成物がなく、透明度の高い抗微生物樹脂を得ることができる。このため、基材の意匠性に与える影響を小さくすることができる。
上記ビニル基を有するモノマーは、スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンから選択される1種以上のモノマーであることが望ましい。
スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンは、特に透明度の高い抗微生物樹脂を得ることができる。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンは、モノマーに添加することによって架橋し、三次元網目構造を形成することができる。三次元網目構造を形成することによって、分解しにくくなり、耐久性を高くすることができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、酸性官能基と樹脂とからなる抗微生物樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、陽イオン交換樹脂をそのままあるいは粉砕などして微細化して使用することができる。陽イオン交換樹脂は、同様に樹脂に酸性官能基を有する構成であり、本発明の抗微生物樹脂として利用することができる。
上記ビス型第四級アンモニウム塩としては、例えば、下記一般式(1)で表されるビス型ピリジニウム塩、ビス型キノリニウム塩、ビス型チアゾリウム塩、下記一般式(2)で表される化合物等が望ましい。
Figure 2020081919
(上記一般式(1)中、R及びRは、同一または異なっていてもよいアルキル基、Rはエーテル結合を含んでもよい有機基であり、X−は、ハロゲン陰イオンを示す。)
Figure 2020081919
(上記一般式(2)中、Rは、官能基を有してもよいアルキル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、アルキル基を表す。)
まず、上記一般式(1)で表されるビス型ピリジニウム塩について説明する。
上記一般式(1)で表されるビス型ピリジニウム塩において、X−としては、例えば、Cl−、Br−、I−等が挙げられる。
、Rは、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、上記アルキル基は、側鎖を有していてもよい。
上記一般式(1)中、Rで表される有機基は、−CO−O−(CH−O−CO−、−CONH−(CH−CO−、−NH−CO−(CH−CO−NH−、−S−Ph−S−、−CONH−Ph−NHCO−、―NHCO−Ph−CONH−、−O−(CH−O−または−CH−O−(CH−O−CH−(但し、Phは、フェニレン基を表す。)で表されるものであることが望ましい。
具体的には、ビス型ピリジニウム塩として、下記の一般式(3)〜一般式(10)で示されるものが挙げられる。
Figure 2020081919
上記一般式(3)中、R11は、C2n+1で表されるアルキル基であり、nは、8、10、12、14、16または18が望ましい。また、mは、3、4、6、8、10が望ましい。以下に示す化合物の置換基R11についても、同様である。
Figure 2020081919
Figure 2020081919
Figure 2020081919
Figure 2020081919
Figure 2020081919
Figure 2020081919
Figure 2020081919
また、上記ビス型ピリジニウム塩としては、下記の一般式(11)で表される1,1′−ジデシル−3,3′−[ブタン−1,4−ジイルビス(オキシメチレン)]ジピリジニウム=ジブロミドが特に望ましい。
Figure 2020081919
次に、上記ビス型チアゾリウム塩について説明する。
また、上記ビス型チアゾリウム塩としては、下記の一般式(12)で示されるビス型チアゾリウム塩が挙げられる。
Figure 2020081919
次に、ビス型キノリニウム塩について説明する。
上記ビス型キノリニウム塩としては、一般式(3)〜一般式(10)で表されるビス型ピリジニウム塩を構成する下記の一般式(13)に表されるピリジニウム基を、一般式(14)に示すキノリウム基に置換した化学構造を有するビス型キノリニウム塩が挙げられる。上記ビス型キノリニウム塩において、他の置換基等は、一般式(3)〜一般式(10)で表されるビス型ピリジニウム塩と同様である。
Figure 2020081919
Figure 2020081919
さらに、本発明で使用される一般式(2)で表される化合物について説明する。
Figure 2020081919
上記一般式(2)中、Rは、官能基を有してもよいアルキル基を示す。アルキル基は、側鎖を有してもよく、その炭素数は、1〜20が望ましい。上記官能基としては、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、エーテル基等が挙げられる。また、R、R、R、R、R及びR10は、アルキル基を表し、上記アルキル基は、側鎖を有してもよく、その炭素数は、1〜20が望ましい。
上記一般式(2)で表される化合物としては、2,3−ビス(ヘキサデシルジメチルアンモニウムブロマイド)−1−プロパノール等が挙げられる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び抗微生物部材の製造方法では、上記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機・無機ハイブリッドバインダ及び電磁波硬化型樹脂のバインダから選択される少なくとも1種であることが望ましい。比較的容易に密着性に優れたバインダ硬化物を、基材表面に固着させることができるからである。上記有機・無機ハイブリッドのバインダとしては有機金属化合物を使用することができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、上記抗微生物成分として、無機系抗微生物剤及び有機系抗微生物剤からなる群から選択される少なくとも1種と、未硬化バインダである有機バインダ、無機バインダ、有機・無機ハイブリッドのバインダ及び電磁波硬化型樹脂の少なくとも1種と、を混合したものを用いることができ、これを硬化させることにより、バインダ硬化物を得ることができる。
上記有機バインダは、熱硬化型樹脂および電磁波硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により、樹脂が硬化して基材表面に銅化合物を固着できるからである。また、これらの樹脂は、重合開始剤により、銅化合物等の抗微生物成分に対する還元力を低下させることがないため有利である。
電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。
上記アクリル樹脂としては、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂(ウレタン変性アクリレート樹脂)、シリコーン変性アクリレート樹脂等が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂やグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂とオキセタン樹脂を組みわせたもの等が挙げられる。
アルキッド樹脂としては、ポリエステルアルキッド樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
次に、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法で使用できる無機バインダについて説明する。
無機バインダと抗微生物成分と必要により各種添加剤や分散媒とを混合した抗微生物組成物を、スプレー散布して基材表面に付着せしめて、基材表面を抗微生物組成物で被覆する工程を経た後、乾燥工程を経ることにより、抗微生物成分を含むバインダ硬化物(無機バインダの硬化物)が形成される。
上記被覆工程において、抗微生物組成物が孤立して基材表面に付着するとバインダ硬化物は島状となり、抗微生物組成物が基材表面に重畳して付着すると、バインダ硬化物は膜状となり、形成されたバインダ硬化物は、バインダ硬化物の形成領域とバインダ硬化物が形成されていない非形成領域が混在した形態となる。これは、上記した電磁波硬化型樹脂においても同様である。
上記無機バインダとしては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル及びケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。上記無機バインダにおけるシリカ等の無機酸化物の含有割合は、固形分換算で2〜80重量%が好ましい。
上記無機バインダは、分散媒として、水を用いたものと有機溶媒を用いたものが存在するので、添加する抗微生物成分の種類を考慮して、無機バインダを選択することができ、抗微生物成分が均一に分散した上記抗微生物組成物を得ることができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、上記バインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
次に、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、本発明の抗微生物部材の製造方法において、未硬化バインダとして用いられる電磁波硬化型樹脂について説明する。
未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマー又はオリゴマーと重合開始剤と各種添加剤と抗微生物成分とを含んだ抗微生物組成物をスプレー散布して基材表面に付着せしめて、基材表面を抗微生物組成物で被覆した後、電磁波を照射することにより、重合開始剤は、開裂反応、水素引き抜き反応、電子移動等の反応を起こし、これにより生成した光ラジカル分子、光カチオン分子、光アニオン分子等が上記モノマーや上記オリゴマーを攻撃してモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応が進行し、抗微生物成分を含むバインダ硬化物が形成される。このような反応により生成するバインダ硬化物を構成する樹脂を電磁波硬化型樹脂という。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、上記分散媒の種類は特に限定されるものではないが、安定性を考慮した場合には、アルコール又は水を使用することが望ましい。アルコール類としては、粘性を下げる事を考慮して、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコールのなかでは、粘度が高くなりにくいメチルアルコール、エチルアルコールが好ましく、アルコールと水との混合液が望ましい。
なお、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、上記粘度は、25℃で、1〜200mPa・sであることが望ましい。低すぎると基材表面に塗着せず、高すぎると噴霧できないからである。
粘度の測定方法としては、25℃で回転式粘度計を用いて測定を行うことができる。回転式粘度計の羽の回転速度は、62.5rpmである。装置は、RION VT−04Fが推奨される。
本発明における抗微生物硬化物の固着方法、及び抗微生物部材の製造方法では、上記重合開始剤は、水に不溶性の重合開始剤を使用することが望ましい。水に触れても溶出しないため、バインダ硬化物を劣化させることがなく、抗微生物成分の脱離を招かないからである。抗微生物成分が水溶性であってもバインダ硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、バインダ硬化物中に水溶性物質が含まれていると、バインダ硬化物の抗微生物成分に対する保持力が低下して、抗微生物成分の脱離が生じると推定される。
また、上記水に不溶性の重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。電磁波硬化型樹脂を用いた場合、可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
本発明における抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。本発明における抗微生物組成物に含まれる上記抗微生物成分が銅化合物である場合、抗ウィルス効果などの抗微生物効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。本発明で用いられる抗微生物組成物は、抗微生物成分として銅化合物をを用いる場合、ウィルス、カビに最も効果的に作用する。銅(I)の還元力によって、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元することで、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカルなどを発生させてウィルスまたはカビを構成するタンパクを効果的に破壊するからである。
本発明における抗微生物硬化物の固着方法、及び抗微生物部材の製造方法では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
上記アルキルフェノン系の重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(実施例1〜4の重合開始剤に相当)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系の重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
分子内水素引き抜き型の重合開始剤としては、例えば、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、オキシフェニルサクサン、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルトオキシフェニル酢酸と2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物等が挙げられる。
オキシムエステル系の重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
本発明における抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法においては、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが望ましい。紫外線等の電磁波により還元力を発現するからである。上記光重合開始剤のなかで、特に、ベンゾフェノン又はその誘導体が好ましい。
本発明における抗微生物硬化物の固着方法、及び抗微生物部材の製造方法では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含むことが望ましい。また、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅化合物等の抗微生物成分に対する還元力を高くすることができるからである。
本発明において、重合開始剤は、抗微生物成分に対する還元剤として使用することができる。重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に抗微生物成分を還元させることができるため、得られた抗微生物基体中の抗微生物成分の抗微生物活性を高くすることができるのである。特に、抗微生物成分が銅化合物である場合、一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。
重合開始剤としては、光重合開始剤であることが望ましい。重合開始剤により、銅(II)を銅(I)に還元することができる。
銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物性能が高いため、重合開始剤により、抗微生物組成物の抗微生物性能を高くすることができるのである。
また、電磁波硬化型樹脂に限らず、無機バインダ、銅化合物および分散媒からなる抗微生物組成物に重合開始剤を添加してもよい。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法における抗微生物組成物に、未硬化のバインダとして電磁波硬化型樹脂(モノマー又はオリゴマー)を用いた場合は、上記抗微生物組成物中の抗微生物成分の含有割合は、2.0〜30.0重量%が望ましく、未硬化の電磁波硬化型樹脂(モノマー又はオリゴマー)の含有割合は、15〜40重量%が望ましく、分散媒の含有割合は、30〜80重量%が望ましい。上記抗微生物成分として、銅化合物を用いることが望ましい。
また、上記未硬化のバインダとして無機バインダを用いた場合は、上記抗微生物組成物中の抗微生物成分の含有割合は、2〜30重量%が望ましく、分散媒の含有割合は、30〜80重量%が望ましい。この場合、上記抗微生物組成物中のシリカ等の無機酸化物の含有割合は、5〜20重量%となる。また、上記抗微生物成分として、銅化合物を用いることが望ましい。
本発明における抗微生物組成物中には、必要に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、消泡剤等が配合されていてもよい。
本発明における抗微生物組成物を調製する際には、分散媒に抗微生物成分とバインダ成分と重合開始剤とを添加した後、ミキサー等で充分に攪拌し、均一な濃度で分散する組成物とした後、スプレー散布して基材表面に付着せしめることが望ましい。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法では、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の上記基材表面の上記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(1)を満たすように、上記基材表面の被覆速度を調整する。
0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(1)
また、本発明の抗微生物部材の製造方法では、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の上記基材表面の上記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(2)を満たすように、上記基材表面の被覆速度を調整する。
0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(2)
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、スプレー散布開始からt(秒)経過した際の基材表面の抗微生物組成物による被覆率S(t)%が、上記不等式(1)又は(2)を満たすように、基材表面の被覆速度を調整すると、抗微生物成分を含む抗微生物組成物が基材表面へ均等に付着し、上記固着工程を経て形成されるバインダ硬化物が、凹凸形状で形成される。すなわち、基材表面に抗微生物成分を含むバインダ硬化物が固着形成されてなり、上記バインダ硬化物は、島状に分散して基材表面に固着されてなるか、もしくは基材表面に上記バインダ硬化物が形成された領域と上記バインダ硬化物が形成されていない領域が混在して設けられてなる態様となる。
このため、バインダ硬化物が基材表面の全面に形成される場合に比べて、抗微生物成分を含むバインダ硬化物の総表面積が大きくなることから、ウィルス等の微生物との接触確率が高くなり、またウィルス等の微生物をバインダ硬化物間にトラップできるため、高い抗微生物活性が得られるのである。また、抗微生物成分がバインダ硬化物中に含まれているため、基材との密着性にも優れ、拭き取り清掃による脱落も防止できる。
上記被覆率S(t)%が、上記不等式0.01t<S(t)%を満たさない場合、すなわち、S(t)≦0.01tとなる場合は、被覆速度が小さすぎるため、抗微生物組成物を基材に付着せしめる付着工程に時間がかかりすぎ、実用的ではない。逆にS(t)%<(33t)1/2 を満たさない場合、すなわち、(33t)1/2≦S(t)となる場合は、被覆速度が大きすぎるため、基材表面に対する抗微生物組成物の散布が過多となり、液ダレや塗布ムラが生じ、意匠性が低下してしまう。さらに、基材表面に対する抗微生物組成物の散布が過多となることから、上記固着工程を経て形成されるバインダ硬化物が膜状となり、適切な凹凸形状が形成されない恐れが生じる。
なお、上記不等式(1)及び(2)は、スプレーノズル1本当たりに換算した場合で表示している。もし、複数のノズルで抗微生物組成物をスプレー散布する場合は、1本当たりに換算して上記不等式(1)及び(2)を満たすように被覆速度を調整することが望ましい。
なお、本発明においては、塗工性のみではなく生産性を考慮した場合においても、被覆速度が上記不等式、0.1t<S(t)%<(33t)1/2を満たすように調整することが最適である。
本発明において、「抗微生物組成物を、スプレー散布して基材表面に付着せしめる」とは、上記抗微生物組成物を、分割された状態で基材表面に島状に散在させるか、基材表面に抗微生物組成物が付着された領域と抗微生物組成物が付着されていない領域とを混在させた状態、すなわち、基材表面の一部が露出するような状態となるように抗微生物組成物を付着させるか、又は、上記抗微生物組成物を、基材表面に膜状に付着させるかの、いずれの状態であってもよい。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法で用いられるスプレー散布方法としては、例えば、スプレー法、二流体スプレー法、静電スプレー法等を用いることができる。
上記スプレー法とは、高圧の空気などのガスや機械的な運動(指やピエゾ素子など)用いて抗微生物組成物を霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗微生物組成物の液滴を付着させることをいう。
上記二流体スプレー法とは、スプレー法の一種であり、高圧の空気などのガスと抗微生物組成物とを混合した後、ノズルから霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗微生物組成物の液滴を付着させることをいう。
上記静電スプレー法とは、帯電した抗微生物組成物を利用する散布方法であり、上記したスプレー法により抗微生物組成物を霧の状態で噴霧するが、上記抗微生物組成物を霧状にするための方式には、上記抗微生物組成物を噴霧器で噴霧するガン型と、帯電した抗微生物組成物の反発を利用した静電霧化方式があり、さらに、ガン型には帯電した抗微生物組成物を噴霧する方式と、噴霧した霧状の抗微生物組成物に外部電極からコロナ放電で電荷を付与する方式とがある。霧状の液滴は、帯電しているため、基材表面に付着し易く、良好に上記抗微生物組成物を、細かく分割された状態で基材表面に付着させることができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、スプレー散布の散布条件として、スプレーの圧力は、0.05〜5MPaが望ましく、散布幅は1cm〜15cmが望ましく、散布ピッチは1〜10cmが望ましく、スプレーノズルから基材表面までの距離は、5〜30cmが望ましい。また、スプレー一本当たりの抗微生物組成物の吐出流量は、0.02〜0.1g/秒が望ましい。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、上記スプレー散布される抗微生物組成物の吐出液量は、コスト、生産性の観点から、1g/m〜20g/mであることが望ましい。吐出液量は、抗微生物組成物の付着塗工に使用した全抗微生物組成物量を塗工面積で除した値である。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、抗微生物組成物の粘度は、スプレー散布可能な範囲に適宜設定することができ、例えば、1〜200mPa・sとすることが望ましい。低すぎると基材表面に塗着せず、高すぎると噴霧できないからである。粘度の測定方法としては、25℃で回転式粘度計により測定を行う。回転式粘度計の羽の回転速度は、62.5rpmである。測定装置は、RION VT−04Fが推奨される。
このような被覆工程により、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物が、分割された状態で基材表面に島状に散在しているか、基材表面に抗微生物組成物が付着された領域と抗微生物組成物が付着されていない領域とが混在した状態となる。もちろん、上記抗微生物組成物が、基材表面に膜状に形成されていてもよい。
(2)乾燥工程
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、上記被覆工程により散布された抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を乾燥させる工程を含んでもよい。乾燥工程において抗微生物組成物中の分散媒を蒸発、除去し、銅化合物等の抗微生物成分を含むバインダ硬化物を基材表面に仮固定させるとともに、バインダ硬化物の収縮により、銅化合物等の抗微生物成分をバインダ硬化物の表面から露出させることができる。乾燥条件としては、20〜100℃、0.5〜5.0分が望ましい。乾燥は、赤外線ランプやヒータなどで行うことができる。また、減圧(真空)乾燥させてもよい。
前記乾燥は、50W〜500Wのランプを用いて、基材表面から5cm〜50cm離間させて、1mあたりに換算して、100〜500秒照射して行うことがコスト、生産性の観点から望ましい。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、上記乾燥工程と下記固着工程を、乾燥工程終了後に固着工程を行ってもよく、乾燥工程と固着工程とを同時に行ってもよい。
(3)固着工程
本発明にの抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、硬化工程として、上記乾燥工程で分散媒を除去した抗微生物組成物中、もしくは、上記被覆工程後の分散媒を含む抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させ、基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程を含む。
未硬化のバインダを硬化させる方法としては、乾燥による分散媒除去、加熱や電磁波照射によるモノマー、オリゴマーの重合促進などがある。乾燥は、減圧乾燥、加熱乾燥などが挙げられる。また、バインダが熱硬化性樹脂の場合は、加熱により硬化が進行する。加熱はヒータ、赤外線ランプ、紫外線ランプなどで行うことができる。未硬化のバインダが電磁波硬化型樹脂である場合に照射する電磁波としては、特に限定されず、例えば、紫外線(UV)、赤外線、可視光線、マイクロ波、電子線(Electron Beam:EB)等が挙げられるが、これらのなかでは、紫外線(UV)が望ましい。
これらの工程により、未硬化のバインダを基材表面に固着させることができる。
上記電磁波硬化型樹脂の硬化条件は、電磁波の積算エネルギーとして、0.1J/cm〜3.0J/cmであることが望ましい。積算エネルギーが低すぎると硬化せず、高すぎると基材を損傷するおそれがあるからである。
また、上記電磁波は、光重合開始剤を励起して、銅化合物を還元する働きをもつ。このため、銅(II)を還元して銅(I)の量を増やして抗微生物活性を高くすることができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、抗微生物組成物に含まれる抗微生物成分として、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が、0.4〜50となるように含まれることが望ましい。
Cu(I)の銅は、Cu(II)の銅と比較して抗微生物性により優れているため、第1の本発明の抗微生物部材において、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.0〜4.0であると、より抗微生物に優れた抗微生物硬化物を固着させることができ、より抗微生物に優れた抗微生物部材を製造することができる。Cu(I)とCu(II)を共存させることで、Cu(I)とCu(II)それぞれ単独で存在する場合に比べて、抗微生物活性が高いからである。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、固着工程で得られるバインダ硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、0.1〜500μmであり、その厚さの平均値は、0.1〜20μmであることが望ましい。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、固着工程で得られるバインダ硬化物の厚さの平均値が0.1〜20μmであると、バインダ硬化物の厚さが薄いので、バインダ硬化物の連続層となりにくく、バインダ硬化物が島状に散在、もしくは、上記バインダ硬化物が膜状に形成され、当該バインダ硬化物の膜が形成された領域内に硬化物が形成されていない領域が混在して設けられた状態にさせ易くなり、意匠等の外観や美観が損なわれてしまうのを防止することができ、高い抗微生物活性を得ることができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法では、固着工程で得られるバインダ硬化物の厚さの平均値が0.1μm未満のバインダ硬化物を形成するのは技術的に難しく、バインダ硬化物の基材表面の被覆率も低くなってしまい、抗微生物活性が低下してしまう。一方、バインダ硬化物の厚さの平均値が20μmを超えると、バインダ硬化物が厚すぎるので、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合、バインダ硬化物が邪魔して意匠等が見にくくなり、意匠等の外観や美観が損なわれる恐れが生じる。
また、本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、固着工程で得られるバインダ硬化物の上記基材表面に平行な方向の最大幅を0.1〜500μmとすることにより、基材表面がバインダ硬化物により被覆されていない部分の割合を適切に保つことができ、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合でも、意匠等の外観や美観が損なわれてしまうのを防止することができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、固着工程で得られるバインダ硬化物の上記基材表面に平行な方向の最大幅が0.1μm未満のバインダ硬化物を形成することは技術的に困難であり、バインダ硬化物の基材表面の被覆率も低くなってしまい、抗微生物活性が低下してしまう。一方、上記バインダ硬化物の上記基材の表面に平行な方向の最大幅が500μmを超えると、1個のバインダ硬化物の大きさが大きくなりすぎ、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合、バインダ硬化物が邪魔して意匠等が見にくくなり、意匠等の外観や美観が損なわれてしまう。
上記バインダ硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅やその厚さの平均値は、走査型顕微鏡、レーザー顕微鏡を用いることにより、測定することができる。
具体的には、画像解析・画像計測ソフトウェアを備えた走査型顕微鏡やレーザー顕微鏡を用いることにより、又は、走査型顕微鏡、レーザー顕微鏡で得られた画像を画像解析・画像計測ソフトウェアを用いて画像解析等を行うことにより、上記したバインダ硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅やその厚さの平均値を求めることができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、固着工程で得られるバインダ硬化物を含む基材表面のJIS B 0601に準拠した算術平均粗さ(Ra)は、0.1〜5μmであることが望ましい。
上記算術平均粗さ(Ra)は、東京精密製の接触式表面粗さ測定機であるHANDYSURFを用い、8mmの測定長さで測定することにより得ることができる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、固着工程で得られるバインダ硬化物を含む基材表面のJIS B 0601に準拠した算術平均粗さ(Ra)が、0.1〜5μmであると、バインダ硬化物を含む基材表面の表面積が適切な範囲となり、ウィルス等の微生物と抗微生物成分が接触する確率が高くなり、また、表面の凹凸の谷間に、ウィルス等の微生物がトラップされ易くなり、その結果、ウィルス等の微生物を失活させ易くなる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、固着工程で得られるバインダ硬化物が、基材表面に島状に散在している場合、上記島状のバインダ硬化物は、基材表面1平方メートル当たり0.05×10〜30×10個存在することが望ましい。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法において、固着工程で得られるバインダ硬化物が、基材表面に島状に散在している場合、上記島状のバインダ硬化物が、基材の表面1平方メートル当たり0.05×10〜30×10個存在すると、バインダ硬化物の大きさが適切に設定されていることとなり、基材表面に形成された意匠等の外観や美観が損なわれてしまうのを防止することができ、単位担持量当たり抗微生物活性の高い抗微生物部材となる。
本発明の抗微生物硬化物の固着方法、及び、抗微生物部材の製造方法によれば、例えば、ヒトの手が接触する頻度の高いノブ、スライドキー、持ち手、取っ手、手すり等に、表面に形成されたパターン、色彩、意匠、色調等を変えることなく、抗微生物機能を付加することができる。また、建築内部の、内装材、壁材、窓ガラス、ドア、台所用品等や、事務機器や家具等や、種々の用途に用いられる化粧板等に、表面に形成されたパターン、色彩、意匠、色調等を変えることなく、抗微生物機能を付加することができる。
(実施例1〜3)
(1)酢酸銅の濃度が1.75wt%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬社製)を純水に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を調製した。紫外線硬化樹脂液は、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製 UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)を重量比97:2:1で混合し、ホモジナイザーを用い、8000rpmで30分間撹拌して調製した。
上記1.75wt%酢酸銅水溶液と上記紫外線硬化樹脂液を重量比1.9:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗微生物組成物を調製した。なお、IGM社製のOmnirad500は、BASF社のIRGACURE500と同じもので、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンとの重量比1:1の混合物である。この光重合開始剤は、水に不溶であり、紫外線により還元力を発現する。また、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(アルキルフェノン)であり、光重合開始剤としては、アルキルフェノン系重合剤とベンゾフェノン系重合剤とを重量比で2:1の割合で含む混合物である。
(2)上記の抗微生物組成物をアネスト岩田製スプレーガン(LPH−50)の塗料カップに充填し、スプレー圧力:0.1MPa、塗布ピッチ間隔:4cm、スプレーノズルから基材である1m四方(1m)の黒色光沢メラミン基板表面までの塗工距離が20cmとなるようにセットした。上記条件で1m四方(1m)の黒色光沢メラミン基板を塗工し、塗工幅が8cmとなるようにパターン絞りを調整した。
液噴出量は0.02g/秒、0.05g/秒、0.10g/秒の3種類の吐出流量で、1mの黒色光沢メラミン基板を2回塗り、4回塗り、6回塗りの3種類のスプレー条件で塗工し、実施例1〜3に係る抗ウィルス性組成物が被覆された黒色光沢メラミン基板を得た。
なお、縦方向にスプレー散布1回と横方向にスプレー散布1回の計2回のスプレー散布を1セットとしているため、上記2回塗りは、縦方向1回と横方向1回のスプレー散布が1セット、上記4回塗りは、縦方向1回と横方向1回のスプレー散布を2セット、上記6回塗りは、縦方向1回と横方向1回のスプレー散布が3セット行われたことを意味する。
なお、実施例1〜3及び比較例1におけるスプレーの掃引速度は、実施例1〜3、比較例1における塗工時間と、被覆率との関係を示す図2から読み取ることができる。図2のグラフの各液吐出量におけるドットは、スプレー散布1セット、2セット、3セットに要するスプレー時間(秒)と、その時の被覆率(%)を示している。従って、例えば、液噴出量が0.02g/秒の場合、1セット目終了まで210秒を要し、1セット目終了から2セット目終了まで(430秒―210秒)=220秒を要し、2セット目終了から3セット目終了までが(590秒−430秒)=160秒をそれぞれ要していることがグラフから確認できる。上述の通り、1セットあたり1m四方(1m)を縦方向1回と横方向1回の計2回スプレー散布しているので、1セット目が210秒かかるのであれば、2×1m/210秒=0.0095m/秒の掃引速度でスプレーしたことになる。同様に2セット目の掃引速度は、0.0091m/秒、3セット目の掃引速度は0.0125m/秒の掃引速度ということになる。
上記条件で1mの黒色光沢メラミン基板に、霧状の抗ウィルス性組成物が散布され、該黒色光沢メラミン基板表面に、抗ウィルス性組成物の液滴が島状に被覆した。
(3)次に、抗微生物組成物が付着した黒色メラミン化粧板に1000Wのハロゲンランプを黒色光沢メラミン化粧板から20cm離間させ、150cmあたり、3〜5秒照射して乾燥させた(1mあたり、200〜330秒照射)。
(4)得られたサンプルに、さらに紫外線照射装置(COATTEC社製 MP02)を用い、30mW/cmの照射強度で80秒間紫外線を照射することにより(積算エネルギー量として、2.4J/cm)、基材である黒色光沢メラミン化粧板表面にその表面の一部が露出するように銅化合物を含むバインダ硬化物が固着形成された抗微生物部材を得た。これを各実施例に係る評価サンプルとした。
なお、実施例1〜3に係る抗微生物組成物が被覆された黒色光沢メラミン基板から、5cm角のサンプルを等間隔(隣り合う5cm角のサンプルの中心距離間隔を20cmとした)で25個切り出し、被覆率を測定した。
(比較例1)
液噴出量を 1.30g/秒に変更した以外は、実施例1〜3と同様にして、1mの黒色光沢メラミン化粧基板を2回塗り、4回塗り、6回塗りの3種類のスプレー条件で塗工し、比較例1に係る抗微生物組成物が被覆された黒色光沢メラミン基板を得た。
なお、上記条件において、液噴出量が1.30g/秒の場合の被覆速度は、0.03g/s・mであった。この場合の比較例1における塗工時間と、被覆率との関係は以下の通りであった。
(時間(秒)/被覆率(%))=(100/70)、(200/89)、(280/97)である。
実施例1〜3、比較例1における塗工時間と、被覆率との関係を図2に示す。
(時間t(秒)における抗微生物組成物の被覆率の測定)
評価サンプル1個について、光学顕微鏡(キーエンス社製 マイクロスコープ VHX−5000)で表面を200倍で観察し、画像の2値化処理により、2410291μm当たり(1552μm□)の基材表面のバインダ硬化物の面積を測定し、表面被覆率を算出する。残りの24個のサンプル全てについても同等に表面被覆率を算出し、25個の評価サンプルの平均値を平均被覆率とした。吐出流量: 0.02g/秒、0.05g/秒、0.10g/秒の3種類の吐出流量で、2回塗り、4回塗り、6回塗りの各回数塗工した時点での平均被覆率を計測し、図2のグラフを作成した。
(バクテリオファージを用いた抗ウィルス性評価)
実施例1〜3及び比較例1で得られたサンプルの抗ウィルス性を評価するためにJIS Z 2801 抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果を改変した手法を用いた。改変点は、「試験菌液の接種」を「試験ウィルスの接種」に変更した点である。ウィルスを使用することによる変更点についてはすべてJIS L 1922繊維製品の抗ウィルス性試験方法に基づき変更した。測定結果は実施例、比較例で得られた抗微生物部材についてJIS L 1922付属書Bに基づき、大腸菌への感染能力を失ったファージウィルス濃度をウィルス不活度として表示する。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活性化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用し、このウィルス不活度に基づいて抗ウィルス活性値を算出した。
以下、手順を具体的に記載する。
(1)実施例、比較例で得られた抗微生物部材について、当該抗微生物部材を1辺50mm角の正方形に切り出して試験試料とした。この試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、試験ウィルス液(>107PFU/mL)を0.4mL接種した。試験ウィルス液は108PFU/mLのストックを精製水で10倍希釈したものを使用した。
(2)対照試料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様にウィルス液を接種した。
(3) 接種したウィルスの液の上から40mm角のポリエチレンを被せ、試験ウィルス液を均等に接種させた後、25℃で所定時間反応させた。
(4) 接種直後または反応後、SCDLP培地10mLを加え、ウィルス液を洗い流した。
(5)JIS L 1922付属書Bによってウィルスの感染値を求めた。
(6) 以下の計算式を用いて抗ウィルス活性値を算出した。
Mv=Log(Vb/Vc)
Mv:抗ウィルス活性値
Log(Vb):ポリエチレンフイルムの所定時間反応後の感染値の対数値
Log(Vc):試験試料の所定時間反応後の感染値の対数値
参考規格 JIS L 1922、JIS Z 2801
測定方法は、プラーク測定法によった。
実施例2、3の抗ウィルス活性値は、いずれも5.0であった。また、実施例1の抗ウィルス活性値は、4.8であった。さらに、比較例1の抗ウィルス活性値は、4.4であった。
(黄色ブドウ球菌を用いた抗菌性評価)
黄色ブドウ球菌を用いた抗菌性評価を、以下のように実施した。
(1)実施例1、比較例で得られた機能性部材(化粧板)を、50mm角の正方形に切り出した試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、試験菌液(菌数2.5×10〜10×10/mL)を0.4mL接種する。
試験菌液は、培養器中で温度35±1℃で16〜24時間前培養した培養菌を、さらに斜面培地に移植して、培養器中で温度35±1℃で16〜20時間前培養したものを、1/500NB培地により適宜調整したものを使用する。
(2)対照資料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様に試験菌液を接種する。
(3)接種した試験菌液の上から40mm角のポリエチレンフイルムを被せ、試験菌液を均等に接種させた後、温度35±1℃で24±1時間反応させる。
(4)接種直後または反応後、SCDLP培地10mLを加え、試験菌液を洗い出す。
(5)洗い出し液を適宜希釈し、標準寒天培地と混合して生菌数測定用シャーレを作成し、温度35±1℃で40〜48時間培養した後、集落数を測定する。
(6)生菌数の計算
以下の計算式を用いて生菌数を求める。
N=C×D×V
N:生菌数
C:集落数
D:希釈倍率
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(mL)
(7)以下の計算式を用いて抗菌活性値を算出する。
R=(Ut−U0)−(At−U0)=Ut−At
R:抗菌活性値
U0:無加工試験片の接種直後の生菌数の対数値の平均値
Ut:無加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
At:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
参考規格 JIS Z 2801
試験菌はStaphylococcus aureus NBRC12732を使用した。
実施例1〜3および比較例1の抗菌活性値は、いずれも>3.7であった。
(クロコウジカビを用いた抗カビ性評価)
クロコウジカビを用いた抗カビ性評価を、以下のように実施した。
(1) 実施例、比較例で得られた機能性部材を、50mm角の正方形に切り出した試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、胞子懸濁液(胞子濃度>2x10個/ml)を0.4mL接種する。
(2) 対照試料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様に胞子懸濁液を接種する。
(3) 接種した胞子懸濁液の上から40mm角のポリエチレンフイルムを被せ、胞子懸濁液を均等に接種させた後、温度26℃で約900LUXの光を照射しながら42時間反応させる。
(4) 接種直後または反応後、JIS L 1921 13発光量の測定に従い、ATP量を測定する。
(5)以下の計算式を用いて抗カビ活性値を算出する。
=(LogC−LogC)−(LogT−LogT
:抗カビ活性値
LogC:接種直後の対照試料3検体のATP量の算術平均の常用対数値
LogC:培養後の対照試料3検体のATP量の算術平均の常用対数値
LogT:接種直後の試験試料3検体のATP量の算術平均の常用対数値
LogT:培養後の試験試料3検体のATP量の算術平均の常用対数値

参考規格 JIS Z 2801、JIS L 1921
試験カビはAspergillus niger NBRC105649を使用した。
実施例2、3の抗カビ活性値は、いずれも3.1、実施例1の抗カビ活性値は、2.9であった。また、比較例1の抗カビ活性値は、2.8であった。
実施例(1〜3)で製造したサンプルの抗ウィルス活性値は、4.8〜5.0であり、抗菌活性値はいずれも3.7以上であり、抗カビ活性値は2.9〜3.1と良好な結果が得られた。 また、塗工ムラも見られなかった。一方、比較例1で製造したサンプルは、抗ウィルス活性値が4.4、抗菌活性値が3.7以上、抗カビ活性値が2.8と実用上問題ないが、抗ウィルス、抗カビ活性は、実施例1〜3よりやや低く、また、塗工ムラがあり、液だれも見られ、外観が悪くなった。
10 抗ウィルス性部材
11 基材
12 樹脂硬化物(電磁波硬化型樹脂の硬化物)

Claims (28)

  1. 基材表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を、スプレー散布して前記基材表面に付着せしめて、前記基材表面を前記抗微生物組成物で被覆する被覆工程と、
    前記被覆工程により付着した前記抗微生物組成物中の前記未硬化のバインダを硬化させて、前記基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程と、を含む抗微生物硬化物の固着方法であって、
    前記スプレー散布開始からt(秒)経過した際の前記基材表面の前記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(1)を満たすように、前記基材表面の被覆速度を調整することを特徴とする抗微生物硬化物の固着方法。
    0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(1)
  2. 前記スプレー散布される抗微生物組成物の流量が0.02g/秒〜0.1g/秒である請求項1に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  3. 前記抗微生物組成物は、前記抗微生物成分として、無機系抗微生物剤及び有機系抗微生物剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  4. 前記無機系抗微生物剤は、銀、銅、亜鉛、白金、亜鉛化合物、銀化合物、銅化合物、金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物触媒、金属イオンでイオン交換されたゼオライト、及び、銅の錯体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  5. 前記有機系抗微生物剤は、抗微生物樹脂、スルホン酸系界面活性剤、銅のアルコキシド、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  6. 前記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、及び、有機・無機ハイブリッドバインダからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  7. 前記有機バインダは、熱硬化性樹脂及び電磁波硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  8. 前記電磁波硬化型樹脂は、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項7に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  9. 前記無機バインダは、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、及び、ケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  10. 前記重合開始剤は、アルキルフェノン系重合開始剤とベンゾフェノン系重合開始剤を含み、前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1である請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  11. 前記スプレー散布される抗微生物組成物の吐出液量は、1g/m〜20g/mである請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  12. 前記被覆工程により付着した前記抗微生物組成物中の電磁波硬化型樹脂を乾燥させる乾燥工程を含み、前記乾燥条件は、50W〜500Wのランプを用いて、前記ランプを前記基材表面から5cm〜50cm離間させ、1mあたりに換算して、100〜500秒光照射することである請求項7又は8に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  13. 前記固着工程は、前記抗微生物組成物中の電磁波硬化型樹脂を硬化させる硬化工程を含み、前記硬化条件が、電磁波の積算エネルギーとして、0.1J/cm〜3.0J/cmである請求項7、8又は12に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  14. 前記抗微生物硬化物の固着方法は、抗ウィルス性硬化物の固着方法である請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗微生物硬化物の固着方法。
  15. 基材表面に、抗微生物成分と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を、スプレー散布して前記基材表面に付着せしめて、前記基材表面を前記抗微生物組成物で被覆する被覆工程と、
    前記被覆工程により付着した前記抗微生物組成物中の前記未硬化のバインダを硬化させて、前記基材表面にバインダ硬化物を固着せしめる固着工程と、を含む抗微生物部材の製造方法であって、
    前記スプレー散布開始からt(秒)経過した際の前記基材表面の前記抗微生物組成物による被覆率をS(t)%とした場合、下記の不等式(2)を満たすように、前記基材表面の被覆速度を調整することを特徴とする抗微生物部材の製造方法。
    0.01t<S(t)%<(33t)1/2 ・・・(2)
  16. 前記スプレー散布される抗微生物組成物の流量が0.02g/秒〜0.1g/秒である請求項15に記載の抗微生物部材の製造方法。
  17. 前記抗微生物組成物は、前記抗微生物成分として、無機系抗微生物剤及び有機系抗微生物剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項15又は16に記載の抗微生物部材の製造方法。
  18. 前記無機系抗微生物剤は、銀、銅、亜鉛、白金、亜鉛化合物、銀化合物、銅化合物、金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物触媒、金属イオンでイオン交換されたゼオライト、及び、銅の錯体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項17に記載の抗微生物部材の製造方法。
  19. 前記有機系抗微生物剤は、抗微生物樹脂、スルホン酸系界面活性剤、銅のアルコキシド、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項17に記載の抗微生物部材の製造方法。
  20. 前記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、及び、有機・無機ハイブリッドバインダからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項15〜19のいずれか1項に記載の抗微生物部材の製造方法。
  21. 前記有機バインダは、熱硬化性樹脂及び電磁波硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項20に記載の抗微生物部材の製造方法。
  22. 前記電磁波硬化型樹脂は、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項21に記載の抗微生物部材の製造方法。
  23. 前記無機バインダは、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、及び、ケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項20に記載の抗微生物部材の製造方法。
  24. 前記重合開始剤は、アルキルフェノン系重合開始剤とベンゾフェノン系重合開始剤を含み、前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1である請求項15〜23のいずれか1項に記載の抗微生物部材の製造方法。
  25. 前記スプレー散布される抗微生物組成物の吐出液量は、1g/m〜20g/mである請求項15〜24のいずれか1項に記載の抗微生物部材の製造方法。
  26. 前記被覆工程により付着した前記抗微生物組成物中の電磁波硬化型樹脂を乾燥させる乾燥工程を含み、前記乾燥条件は、50W〜500Wのランプを用いて、前記ランプを前記基材表面から5cm〜50cm離間させ、1mあたりに換算して、100〜500秒光照射することである請求項21又は22に記載の抗微生物部材の製造方法。
  27. 前記固着工程は、前記抗微生物組成物中の電磁波硬化型樹脂を硬化させる硬化工程を含み、前記硬化条件が、電磁波の積算エネルギーとして、0.1J/cm〜3.0J/cmである請求項21、22又は26に記載の抗微生物部材の製造方法。
  28. 前記抗微生物部材の製造方法は、抗ウィルス性部材の製造方法である請求項15〜27のいずれか1項に記載の抗微生物部材の製造方法。
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