JP2022156183A - 溶射用粉末材およびコーティング皮膜の製造方法 - Google Patents

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Naoki Okamoto
敬也 益田
Takaya Masuda
博之 伊部
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【課題】低熱伝導率と高耐磨耗性を両立した溶射皮膜を形成するための溶射用粉末材、及びそれを用いたコーティング皮膜の製造方法を提供する。【解決手段】樹脂粒子およびセラミック粒子のそれぞれ一次粒子から構成される複合二次粒子を含み、前記樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する前記複合二次粒子のメディアン径の比が2以上である、溶射用粉末材。【選択図】 図5

Description

本発明は、溶射用粉末材、その製造方法、及びそれを用いたコーティング皮膜の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、高温環境下で使用される耐熱材料の耐熱性皮膜において、従来品に比べ極めて高い耐磨耗性と低熱伝導率を両立したコーティング皮膜を形成することができる溶射用粉末材およびそれを用いたコーティング皮膜に関する。
ガスタービンエンジンの静翼、動翼、燃焼器の壁材等の高温下で使用される材料においては、耐熱性の部材を遮熱性の皮膜で被覆して高温から保護することが行われている。コーティング皮膜は、例えば、アンダーコート層とその上層のトップコート層とを積層した構造とされる。
これらのコーティング皮膜は、例えば溶射法によって形成される。溶射法は、物理的蒸着法や化学的蒸着法などとともに、実用化されている表面改質技術の一つである。溶射法は、基材の寸法に制限がなく、広い面積の基材に対しても一様な溶射皮膜を形成できること、皮膜の形成速度が大きいこと、現場施工が容易であること、比較的容易に厚膜が形成できることなどの特徴を有するため、近年、各種の産業にその適用が拡大し、極めて重要な表面改質技術となっている。
特許文献1では、セラミック粉末と樹脂粉末との混合粉末からなる溶射材料をアンダーコート層上に溶射してトップコート層を形成し、その後加熱処理することにより、トップコート層中の樹脂粉末を気化させて、トップコート層中に気孔を形成する方法が提案されている。
特開2013-181192号公報
従来の混合粉末からなる溶射用粉末材を用いて形成されたコーティング皮膜は、気孔の形成により熱伝導率は低下するが、皮膜の耐磨耗性も低下する。このため、本発明の目的は、低熱伝導率と高耐磨耗性を両立したコーティング皮膜を形成するための溶射用粉末材、及びそれを用いたコーティング皮膜の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明は、樹脂粒子およびセラミック粒子のそれぞれ一次粒子から構成される複合二次粒子を含み、樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する複合二次粒子のメディアン径の比が2以上である、溶射用粉末材、を提供する。
樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する前記複合二次粒子のメディアン径の比が2以上とすることにより、コーティング皮膜中に均一なポーラス組織を形成することができる。これにより、低熱伝導率と高耐磨耗性を両立したコーティング皮膜を形成することができる。
図1の(a)は、従来の複合二次粒子に使用する樹脂粒子の表面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示し、(b)は、本発明の実施例の複合二次粒子に使用する樹脂粒子の表面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示し、(c)は、従来の複合二次粒子に使用するセラミック粒子の表面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示し、(d)は、本発明の実施例の複合二次粒子に使用するセラミック粒子の表面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。 図2の(a)は、本発明の実施例のセラミック粒子と樹脂粒子の複合二次粒子の表面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示し、(b)は、本発明の実施例のセラミック粒子と樹脂粒子の複合二次粒子の断面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示し、(c)は、(a)の拡大図である。 図3の(a)は、本発明の比較例の複合二次粒子の表面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示し、(b)は、本発明の比較例の複合二次粒子の断面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。 図4は、本発明の比較例の複合二次粒子で溶射した皮膜の断面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。 本発明の実施例の複合二次粒子で溶射した皮膜の断面構造の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
本発明の一実施形態は、樹脂粒子およびセラミック粒子のそれぞれの一次粒子から構成される複合二次粒子を含み、樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する複合二次粒子のメディアン径の比が2以上である溶射用粉末材を提供する。詳述すると、本実施形態の溶射用粉末材は、樹脂原料粒子とセラミック原料粒子とを造粒して得られた複合二次粒子を含有してもよい。
メディアン径は、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒子径(Dv50%)であり、たとえば、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置としてはMalvern Panalytical社のレーザー回折式粒度分布測定装置Mastersizer 3000などを使用することができる。本実施形態において、樹脂粒子の一次粒子径は、樹脂原料粒子のメディアン径である。また、セラミック粒子の一次粒子径は、セラミック原料粒子のメディアン径である。
一実施形態の溶射用粉末材を用いてコーティング皮膜を形成することにより、コーティング皮膜中に均一なポーラス組織を形成できる。これにより、低熱伝導率と高耐磨耗性を両立したコーティング皮膜を形成することができる。
樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する複合二次粒子のメディアン径の比は、3以上、4以上、又は5以上であってもよい。樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する複合二次粒子のメディアン径の比が2未満であると、溶射後の皮膜中の気孔が粗大化しやすくなる傾向にある。また、この比が2未満であると、気孔分布が不均一になりやすくなる傾向がある。
セラミック粒子の一次粒子のメディアン径と複合二次粒子のメディアン径との比は、特に限定されるものではないが、20以上、25以上、又は30以上であってもよい。セラミック粒子の一次粒子のメディアン径に対する複合二次粒子のメディアン径の比が大きいほど、耐摩耗性が向上する傾向にある。
複合二次粒子において、各樹脂粒子の周囲が複数のセラミックス粒子により覆われた構造をなすことが好ましい。また、複合二次粒子の最外殻は、セラミックス粒子により形成されていることが好ましい。すなわち、複合二次粒子の表面に樹脂粒子が露出していないことが好ましい。これによれば、溶射プロセス中において樹脂粒子の揮発を抑制し、コーティング皮膜中に気孔を形成するのに有利となる。また、複合二次粒子は、流動性の観点から球形をなしていることが好ましい。なお、本実施形態において、球形とは、例えば粒子の平均円形度が0.8以上1.0以下であることを指す。また、非球形は、平均円形度が0.8未満のものを言う。平均円形度とは、画像解析法により得られた、例えば1000個以上の複合二次粒子の平面視における円形度の算術的平均値を意味する。
本発明の一実施形態において、セラミック粒子の一次粒子のメディアン径と樹脂粒子の一次粒子のメディアン径との比は特に限定されるものではない。樹脂粒子の一次粒子のメディアン径がセラミック粒子の一次粒子のメディアン径より大きいほうが、樹脂粒子の周囲をセラミック粒子が覆うように付着する傾向にある。セラミック粒子の一次粒子のメディアン径に対する樹脂粒子の一次粒子のメディアン径の比は、1超であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。セラミック粒子の一次粒子のメディアン径に対する樹脂粒子の一次粒子のメディアン径の比は、耐摩耗性の低下抑制の観点から7未満、又は5以下であってもよい。
本発明の一実施形態において、セラミック粒子と樹脂粒子のそれぞれ一次粒子から構成される複合二次粒子のメディアン径は特に限定されるものではない。ただし、あまりメディアン径が大きくなると、均一で緻密なコーティング皮膜が形成しにくくなる傾向があるため、複合二次粒子のメディアン径は40μm以下であると好ましい。また、複合二次粒子のメディアン径は、35μm以下、30μm以下であってもよい。また、複合二次粒子のメディアン径は、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましい。複合二次粒子のメディアン径を5μm未満とすると、樹脂粒子がセラミックス粒子により覆われた被覆構造となりにくく、10μm未満では溶射機への供給が困難となる。
<セラミック粒子>
セラミック粒子を形成するセラミックの種類は特に限定されるものではなく、酸化イットリウム(Y23)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の金属酸化物を好適に用いることができるが、酸化ジルコニウム(ジルコニア)が好ましい。また、ジルコニアの中でも、イットリア(Y23)安定化ジルコニア(YSZ)、イッテルビア(Yb23)安定化ジルコニア(YbSZ)、ジスプロシア(Dy23)安定化ジルコニア(DySZ)、エルビア(Er23)安定化ジルコニア(ErSZ)、SmYbZr27が特に好ましい。イットリア安定化ジルコニアの中では、8質量%のイットリアで安定化されたジルコニア(8YSZ)がより好ましい。
セラミック粒子の一次粒子のメディアン径は特に限定されないが、1μm以下であってもよい。1μmを超えると樹脂粒子の表面にセラミック粒子が被覆された複合二次粒子を形成しにくくなる傾向にある。例えば、図1(d)に示されるように、図1(c)に示される従来(比較例)の複合二次粒子に使用されるセラミック粒子に比較して、メディアン径が小さく、それぞれの粒子径が均一であるセラミック粒子を使用することができる。また、本実施形態のセラミック粒子は、非球形であり、具体的には表面が不規則な多角形である。
<樹脂粒子>
樹脂粒子を形成する樹脂の種類は、加熱により熱分解して気化する樹脂であれば、特に限定されるものではないが、空気中での熱分解温度が200℃以上である樹脂が好ましい。空気中での熱分解温度は、例えば熱重量示差熱同時分析(TG-DTA)で測定することができる。空気中でのTG-DTAによる5%重量減少温度が200℃以上であれば、空気中での熱分解温度が200℃以上であると判断することができる。
空気中での熱分解温度が200℃以上である樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリカーボネート、フッ素樹脂、液晶ポリマー、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等を挙げることができる。樹脂粒子としては、耐熱性の高い樹脂が好ましい。この中でも、ポリイミド、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、フェノール樹脂、メラミン樹脂が好ましい。また、セラミック粒子および樹脂粒子の種類の組み合わせは特に限定されないが、セラミック粒子に8YSZを用いる場合、樹脂粒子にポリイミドおよびポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、およびこれらの組み合わせを用いることが好ましい。
溶射用粉末材中の樹脂粒子の含有量は、複合二次粒子の製造時における樹脂原料粒子の混合量から求めることができる。樹脂粒子の含有量は、溶射用粉末材全体、すなわちセラミックス粒子の混合量と樹脂粒子の混合量の合計に対する樹脂粒子の混合量が10体積%以上50体積%以下であるとが好ましく、15体積%以上40体積%以下であるとさらに好ましい。また、樹脂粒子の含有量としては、炭素分析装置を用いて測定した炭素量を樹脂粒子の含有量に換算して実質的に測定することができる。具体的には炭素分析装置としてはHORIBA社の炭素分析装置 EMIA-321V2などを使用することができる。測定方法としては、あらかじめ原料の樹脂(樹脂粒子)の単位重量当たりの炭素量を測定する、若しくは既知の炭素量を得る。次に樹脂粒子とセラミック粒子とにより調整した複合二次粒子の炭素量を測定する。複合二次粒子中の炭素量は実質的に樹脂粒子に起因しているため、複合二次粒子の炭素量を樹脂粒子の含有量に換算できる。換算含有量の一例は、ポリイミド中の炭素元素の重量割合を用いて炭素量を換算したポリイミド換算含有量である。溶射用粉末材における樹脂粒子のポリイミド換算含有量は、1重量%以上12重量%以下であると好ましく、5重量%以上10重量%であるとさらに好ましい。一般に樹脂粒子の含有量が多くなると溶射後のコーティング皮膜の気孔率は高くなり熱伝導率は低くなる傾向にあるが、耐磨耗性が低くなる傾向にある。樹脂粒子の混合量が10体積%以上、又はポリイミド換算含有量が1重量%以上では気孔率が高くなり熱伝導率が十分に低くなりやすい傾向にある。また、樹脂粒子の混合量が50体積%以下、又はポリイミド換算含有量が12重量%以下であると、十分な耐磨耗性を得やすい傾向にある。
また、樹脂粒子の一次粒子のメディアン径は限定されるものではないが、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であるとさらに好ましい。例えば、図1(b)に示されるように、図1(a)に示される従来(比較例)の複合二次粒子に使用される樹脂粒子に比較して、メディアン径が小さく、それぞれの粒子径が均一である樹脂粒子を使用することができる。また、本実施形態の樹脂粒子は、非球形であるが球形のものを用いてもよい。
<溶射用粉末材の製造方法>
本発明の溶射用粉末材は、各原料粒子を混合、造粒する工程を含む方法によって製造できる。特に制限はないが、一般的には、各原料粒子を混合、造粒した球形の顆粒粉末を分級して得ることができる粒子径の揃った球形の粉末が好ましい。具体的には、造粒法などによって製造することができる。
造粒法とは、例えば、乾式造粒あるいは湿式造粒等の造粒方法を利用して実施することができる。造粒方法としては、具体的には、例えば、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、破砕造粒法、溶融造粒法、噴霧造粒法、マイクロエマルション造粒法等が挙げられる。なかでも好適な造粒方法として、噴霧造粒法が挙げられる。
<コーティング皮膜の形成方法>
本発明の溶射材を使用してコーティング皮膜を形成する方法は、上記方法により形成した溶射用粉末材を基材に溶射することにより溶射皮膜を形成する工程と、溶射皮膜に加熱処理をする加熱工程と、を備える。これらの工程により、セラミック粒子を形成するセラミックスからなるコーティング皮膜が形成されるとともに、コーティング皮膜中には気孔が形成される。
溶射用粉末材を使用して各種の溶射法により溶射することで、各種の基材に溶射皮膜を形成することができる。溶射方法は特に制限されないが、例えば、大気プラズマ溶射(APS:atmospheric plasma spraying)、サスペンションプラズマ溶射(SPS:suspension plasma spraying)、減圧プラズマ溶射(LPS:low pressure plasma spraying)、加圧プラズマ溶射(high pressure plasma spraying)等のプラズマ溶射法、酸素支燃型高速フレーム(HVOP:High Velocity Oxygen Flame)溶射法、ウォームスプレー溶射法および空気支燃型高速フレーム溶射法(HVAF : High Velocity Air flame)等の高速フレーム溶射等を好適に利用することができる。
溶射皮膜が形成された基材に加熱処理を施し、溶射皮膜を高温に加熱することにより、溶射皮膜の母相中に分散している樹脂粒子を熱分解させ、気化させることができる。加熱処理は、大気雰囲気で行ってもよい。加熱処理においては、樹脂粒子を形成する樹脂が熱分解して気化する温度以上の温度に加熱する。具体的には、樹脂粒子を形成する樹脂の空気中での熱分解温度以上の温度、例えば、空気中でのTG-DTAによる5%重量減少温度以上の温度に加熱することが好ましい。樹脂粒子が熱分解して発生したガスは溶射皮膜の外に排出され、樹脂粒子が存在した部位は空隙となるため、溶射皮膜の母相に気孔が形成される。その結果、セラミックからなる母相中に気孔が分散したコーティング皮膜が得られる。樹脂粒子の一次粒子のメディアン径が複合二次粒子のメディアン径に対して小さければ、コーティング皮膜中に比較的微細な気孔が分散したコーティング皮膜が得られる。
コーティング皮膜は、アンダーコート層とその上層のトップコート層とを積層した構造とされてもよい。上記方法によって製造された溶射用粉末材は、アンダーコート層の形成に用いられてもよいし、トップコート層の形成に用いられてもよい。
上記の方法により製造された溶射用粉末材は粉末の状態で溶射装置に供給することもできるし、スラリーの形態として溶射装置に供給してもよい。溶射材料がスラリー状の形態の場合、分散媒を用いて調製することができる。分散媒として、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、トルエン、ヘキサン、灯油等が挙げられる。スラリー状の溶射材料は、その他の添加剤、例えば分散剤、凝集剤、粘度調整剤等をさらに含有してもよい。
コーティング皮膜形成の対象となる基材の種類は特に制限されない。例えば合金等の金属材料、単純セラミック材料、複合セラミック材料、セラミックスマトリックスコンポジット等が挙げられる。金属材料の具体例としては、鉄、ニッケル、コバルト等を含む合金が挙げられる。例えばステンレス鋼や、ニッケル基にモリブデン、クロム等を加えた合金であるハステロイ(ヘインズ社製)、ニッケル基に鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等を加えた合金であるインコネル(スペシャルメタルズ社製)、コバルトを主成分とし、クロム、タングステン等を加えた合金であるステライト(デロロステライトグループ社製)、鉄にニッケル、マンガン、炭素等を加えた合金であるインバー等が挙げられる。また、セラミック系材料としては、ジルコニア、アルミナ等のモノシリックセラミックス、セラミックマトリックス複合材(CMC)等が挙げられる。
コーティング皮膜の特性としては、耐磨耗性が高く、熱伝導率が低いことが望まれる。耐磨耗性は、スガ式磨耗試験による磨耗量が従来のコーティング皮膜に比較して低減される。具体的には、スガ式磨耗試験による磨耗量が0.33μm/lap以下であることが好ましい。熱伝導率は従来のコーティング皮膜と同程度に低減されていればよい。具体的には、0.49W/m・K以下であることが好ましい。またコーティング皮膜の気孔率と熱伝導率とが比例することを前提とすれば、気孔率を熱伝導率の評価に用いることもできる。気孔率は、具体的には10%以上であることが好ましい
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
<溶射用粉末材の調整>
セラミック粒子として、表1に示されるメディアン径(Dv50%)のZrO-8質量%Y(YSZ)を使用し、樹脂粒子として表1に示される種類とメディアン径の樹脂粒子を使用し、バインダーとして2質量%のポリビニルアルコール(PVA)を加え、これらを、表1に示す割合で配合し、混合、造粒して実施例1~6及び比較例2及び3の二次粒子を調製した。まず、セラミック粒子と樹脂粒子とを所定の配合で混合し、この混合粉末100質量%に対して2質量%のPVAと共に水およびアルコールの混合溶液からなる溶媒に分散させることで、スラリーを調製した。また、比較例1としてYSZセラミック粒子のみを使用して、同様にスラリーを調製した。次いで、これらのスラリーを、噴霧造粒機を用い、液滴状に造粒したのち乾燥させ樹脂粒子とセラミック粒子の複合二次粒子からなる実施例1~6及び比較例2及び3の溶射用粉末材(二次粒子)並びにセラミック粒子の二次粒子からなる比較例1の溶射用粉末材(二次粒子)を調製した。
得られた複合二次粒子のメディアン径に対する、樹脂粒子の一次粒子のメディアン径の粒子径比を表1に示した。
Figure 2022156183000002
なお、各粒子のメディアン径はMalvern Panalytical社のレーザー回折式粒度分布測定装置Mastersizer 3000を使用して体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒子径(Dv50%)を測定した。
また、得られた溶射用粉末材を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
図2(a),(c)に示すように、実施例2の溶射用粉末材には、樹脂粒子およびセラミック粒子のそれぞれ一次粒子から構成される複合二次粒子が含まれていた。複合二次粒子は、球形をなしていた。なお、球形とは、例えば粒子の平均円形度が0.8以上1.0以下であることを意味する。
図2(b)に示すように、複合二次粒子において、樹脂粒子の周囲は、セラミックス粒子により覆われていた。また、複合二次粒子の最外殻は、セラミックス粒子により形成されていた。実施例1、3~6における複合二次粒子の形態も、実施例2と同様であった。
図3(a),(b)に示すように、比較例3においては、実施例と比較して、複合二次粒子のメディアン径に対して樹脂粒子が粗大である複合二次粒子が含まれていた。
<コーティング皮膜の形成>
上記方法により製造した実施例1~6および比較例1~3の溶射用粉末材を使用して以下(1)の条件で溶射皮膜を形成し、次いで(2)の条件で溶射皮膜の熱処理を行い、コーティング皮膜を形成した。
(1)溶射条件
溶射機にはPRAXAIR社製SG-100プラズマを用いた。溶射条件を以下に示す。
Ar分圧:50psi
He分圧:50psi
粉末流量:15g/min
基材:アルミナ#40でブラスト処理されたステンレス鋼SUS316
溶射距離:150mm
皮膜厚さ:200~300μm(熱伝導率測定サンプルに関しては700~1000μmで作製)
(2)熱処理
上記溶射試験で溶射皮膜が形成された基材を大気雰囲気中で熱処理を施すことにより溶射皮膜中の樹脂を気化させ気孔を形成する。熱処理は、大気炉により、加熱温度700℃で、2時間保持することにより行った。
図4に示した、比較例3のように複合二次粒子のメディアン径に対して粗大な樹脂粒子を含む複合二次粒子を使用して溶射した場合、コーティング皮膜中に50μm程度の粗大な気孔が形成された。これは、耐磨耗性の低下に寄与すると考えられる。
図5には本発明の実施例の代表例として実施例2の溶射用粉末材により形成したコーティング皮膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真が示されている。これによれば、2~5μm程度の微細な気孔が皮膜中に均一に形成されていることがわかる。このような均一な気孔分布は、従来の混合粉末からなる溶射用粉末材を用いて形成した場合の溶射膜では見られず、また粗大な樹脂粒子を含む比較例でも見られない。したがって、微細な樹脂粒子を含むことにより、微細な気孔が皮膜中に均一に形成できたことがわかる。
<コーティング皮膜特性の測定>
上記方法により製造した実施例1~6および比較例1~3のコーティング皮膜について、以下の方法により気孔率、磨耗特性及び熱伝導率を測定した。
(1)気孔率
上記の条件で形成された溶射皮膜を熱処理して得たコーティング皮膜を、切断し、断面を研磨により鏡面加工し、断面を顕微鏡観察し、単位断面積中に占める気孔の割合(%)を測定した。
(2)熱伝導率
コーティング皮膜の熱伝導率λは以下の式を使用して計算することができる。
λ=Cp×a×ρ
上記式において、Cpは比熱容量(J・kg-1・K-1)、aは熱拡散係数(m2・S-1)、ρ(kg・m-3)は密度である。
上記溶射試験で形成されたコーティング皮膜の比熱容量Cp(J・kg-1・K-1)と熱拡散係数(m2・S-1)とはNetch社のLFA467HT Hyper Flashを使用して測定した。
(3)摩耗特性の評価
上記溶射試験で形成されたコーティング皮膜について、Suga耐磨耗性試験機を使用して、1kgfの荷重をかけて、#180研磨紙による磨耗によるコーティング皮膜の厚みの減少を測定した。
表1から分かるように、実施例1~6のコーティング皮膜は、気孔率が高いにもかかわらず耐磨耗性に優れているが、樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する複合二次粒子のメディアン径が2未満である比較例2及び3では耐磨耗性が低下(磨耗速度が増加)していることがわかる。実施例2及び3のコーティング皮膜は熱伝導率が低く抑えられていることが確認できた。なお、実施例1、4~6は熱伝導率を測定していないが、気孔率が十分に高いことから、熱伝導率が低いことが推測される。また、樹脂粒子を使用しない比較例1は気孔率が低く、熱伝導率が十分に低下していないことが確認できた。
本発明の溶射用粉末材によれば、コーティング皮膜中に均一なポーラス組織を形成することができ、これにより、低熱伝導率と高耐磨耗性を両立した産業上の利用性が高いコーティング皮膜を提供することができる。

Claims (8)

  1. 樹脂粒子およびセラミック粒子のそれぞれ一次粒子から構成される複合二次粒子を含み、
    前記樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する前記複合二次粒子のメディアン径の比が2以上である、溶射用粉末材。
  2. 前記セラミック粒子の一次粒子のメディアン径に対する前記複合二次粒子のメディアン径の比が20以上である請求項1に記載の溶射用粉末材。
  3. 前記セラミック粒子の一次粒子のメディアン径に対する前記樹脂粒子の一次粒子のメディアン径の比が7未満である、請求項1または2に記載の溶射用粉末材。
  4. 前記複合二次粒子のメディアン径が40μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶射用粉末材。
  5. 前記樹脂粒子のメディアン径が10μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶射用粉末材。
  6. 前記セラミック粒子のメディアン径が1μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶射用粉末材。
  7. 溶射用粉末材の製造方法であって、
    樹脂粒子およびセラミック粒子を混合して造粒すること、を含み、
    前記樹脂粒子の一次粒子のメディアン径に対する前記造粒後の複合二次粒子のメディアン径の比が2以上である、溶射用粉末材の製造方法。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載の溶射用粉末材を基材に溶射することにより溶射皮膜を形成する工程と、
    前記溶射皮膜に加熱処理をする加熱工程と、
    を備えるコーティング皮膜の製造方法。
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