JP2022155896A - 研磨パッド - Google Patents

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哲平 立野
Teppei Tateno
啓介 田中
Keisuke Tanaka
香枝 喜樂
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  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)
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Abstract

【課題】被研磨物の表面の傷の発生を抑制することができ、かつ高い研磨レートを有する研磨パッドを提供する。【解決手段】本発明の研磨パッドは、複数の涙形状気泡を有し、且つ被研磨物を研磨するための研磨面を有するポリウレタンシートを含む研磨パッドであって、前記ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂が、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含み、且つポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bとの質量比が100:0.1~100:5である、前記研磨パッドである。【選択図】なし

Description

本発明は、研磨パッドに関する。特には、半導体デバイスのCMP用研磨パッドに関する。
多層配線を精度よく形成するために、半導体ウエハ等の材料表面には各層の平坦性が求められている。各層の平坦化には通常、研磨パッドを用いた遊離砥粒方式の研磨が行われている。遊離砥粒方式は、研磨パッドと被研磨物の間に研磨液(研磨スラリー)を供給しながら被研磨物の加工面を研磨加工する方法である。
半導体デバイス製造用の研磨パッドには、その研磨パッド表面に、研磨スラリーを保持するための開孔と、被研磨物の平坦性を維持する硬性と、被研磨物のスクラッチの発生を防止する弾性とが要求される。これらの要求に応える研磨パッドとして、ウレタン樹脂発泡体から製造された研磨面を有する研磨パッドが利用されている。
近年、材料表面を高精度に平坦化する技術として、遊離砥粒方式の一種である化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカ等の砥粒、防食剤、界面活性剤等を含む研磨液(スラリー)を用いて、被研磨物の表面を改質しつつ砥粒が持つ機械的研磨効果を増大させる技法である。CMPでは、砥粒を含む研磨液が被研磨物と研磨パッドとの間に入り込むことで、研磨パッドを高速回転させながら安定的に被研磨物を研磨することができる。
ポリウレタン樹脂発泡体は、通常、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物を含むプレポリマと硬化剤との反応により硬化して成形される(乾式成形法)。そして、この発泡体をシート状にスライスすることにより研磨パッドが形成される。このように乾式成形法により製造された硬質の研磨層を有する研磨パッド(以下、硬質研磨パッドと略すことがある)は、ポリウレタン樹脂硬化成形時に発泡体内部に比較的小さな略球状の気泡が形成されるため、スライスにより形成される研磨パッドの研磨表面には、研磨加工時にスラリーを保持することができる開孔(開口)が形成される。
硬質研磨パッドを用いた場合には、基板の平坦性や研磨レートを向上させることができる。しかしながら、硬質ゆえにスクラッチなどの欠陥を発生させる恐れがある。また、近年、配線幅の微細化に伴い、より精度の高い研磨が求められるようになってきており、硬質研磨パッドでは対応が難しい場面が増えている。そのため、特に仕上げの工程において、湿式成膜法により製造された軟質の研磨層を有する研磨パッド(以下、軟質研磨パッドと略すことがある)が用いられている。
上記CMP工程の仕上げ研磨に用いられる軟質研磨パッドとして、引用文献1には、微小な欠陥を与えにくい軟質なスウェードパッドが開示されている。
特開2010-149259号公報
しかしながら、従来の軟質研磨パッドは軟質な材料で構成されているため、研磨レートを大きくすることが困難であり、軟質なパッドにカーボンブラック等の微粒子を含ませたり、パッドに使用される樹脂の硬度を高めたりすることで研磨レートを大きくしていた。しかしながら、カーボンブラックの添加や樹脂硬度の増大は、被研磨物表面におけるスクラッチ(研磨傷)を招くこととなる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被研磨物の表面の傷の発生を抑制することができ、かつ高い研磨レートを有する研磨パッドを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、100%モジュラスの異なるポリウレタン樹脂を組み合わせることによって上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 複数の涙形状気泡を有し、且つ被研磨物を研磨するための研磨面を有するポリウレタンシートを含む研磨パッドであって、
前記ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂が、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含み、且つ
ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bとの質量比が100:0.1~100:5である、前記研磨パッド。
[2] ポリウレタン樹脂Bの100%モジュラスがポリウレタン樹脂Aの100%モジュラスの2倍以上である、[1]に記載の研磨パッド。
[3] ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分とポリウレタン樹脂Bの構成ポリオール成分が異なる、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4] ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種から選択される1種のポリオール成分を含み、且つポリウレタン樹脂Bの構成ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種のうち、ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分として選択された1種とは異なる他の1種のポリオール成分を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の研磨パッド。
[5] ポリウレタン樹脂Bが、構成ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の研磨パッド。
[6] ポリウレタン樹脂Aが、構成ポリオール成分としてポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の研磨パッド。
[7] 複数の涙形状気泡を有し、且つ被研磨物を研磨するための研磨面を有するポリウレタンシートを含む研磨パッドであって、
前記ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂が、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含み、
ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bとの質量比が100:0.1~100:5であり、
ポリウレタン樹脂Aが、構成ポリオール成分としてポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含み、且つ
ポリウレタン樹脂Bが、構成ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを含む、前記研磨パッド。
[8] 前記ポリウレタンシートが、カーボンブラックを含まない、[1]~[7]のいずれか1項に記載の研磨パッド。
[9] [1]~[8]のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法であって、
3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと、15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含む樹脂溶液を調製する工程、ここで、ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bは、その質量比が100:0.1~100:5となるように調製される、
前記樹脂溶液を成膜用基材に塗布する工程、及び
前記溶液が塗布された成膜用基材を凝固液に浸漬して前記溶液を凝固させる工程を含む、研磨パッドの製造方法。
本発明によれば、被研磨物の表面の傷の発生を抑制することができ、かつ高い研磨レートを有する研磨パッドを得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
<<研磨パッド>>
本発明の研磨パッドは、複数の涙形状気泡を有し、且つ被研磨物を研磨するための研磨面を有するポリウレタンシートを含む研磨パッドであって、前記ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂が、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含み、且つポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bとの質量比が100:0.1~100:5である、前記研磨パッドである。
<ポリウレタンシート>
ポリウレタンシートは、複数の涙形状(teardrop-shaped)気泡を有する。涙形状気泡は、湿式成膜法によってポリウレタンシート内部に形成される気泡(異方性があり、樹脂シートの上部から下部(基材と接する側)に向けて径が大きい構造を有する気泡)を意図するものであり、モールド法によって形成される略球状の気泡とは区別される。従って、本発明の複数の涙形状気泡を有するポリウレタンシートは、湿式成膜法により形成されたポリウレタンシートと言い換えることができる。湿式成膜法とは、成膜する樹脂を有機溶媒に溶解させ、その樹脂溶液をシート状の基材に塗布後、該有機溶媒は溶解するが該樹脂は溶解しない凝固液中に通して該有機溶媒を置換し、凝固させ、乾燥して発泡層を形成する方法を意味する。通常、湿式成膜法によりポリウレタンシートを製造すると、ポリウレタンシート内部の有機溶媒が凝固液中に抜ける時の抜け道が空洞となり、略涙形状のマクロ気泡(涙形状気泡)が複数生じる。
本発明において、ポリウレタンシートとは、ポリウレタン樹脂を主成分(50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%、更により好ましくは85質量%以上)とするシートを意味しており、他の樹脂(シリコーン樹脂等)を主成分とするシートとは明確に区別される。
(ポリウレタン樹脂)
本発明の研磨パッドに含まれるポリウレタンシートは、ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂が、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含む。
本発明において100%モジュラスとは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばした時(元の長さの2倍に伸ばした時)にかかる荷重を断面積で割った値である。この値が高いほど、硬い樹脂であることを意味する。
樹脂Aと樹脂Bとの「混合物を含む」とは、樹脂Aと樹脂Bを含む混合樹脂溶液を湿式成膜法にて成膜して得られるウレタンシートを意図した概念であり、樹脂Aからなるシートと樹脂Bからなるシートとを別々に用意し、これらを接着/積層してなる組み合わせシートは上記概念に含まれない。
ポリウレタン樹脂Aの100%モジュラスは、3~10MPaであることが好ましく、4~10MPaであることがより好ましく、6~9MPaであることがさらにより好ましい。
ポリウレタン樹脂Bの100%モジュラスは、15~35MPaであることが好ましく、20~30MPaであることがさらにより好ましく、21~27MPaであることがさらにより好ましい。
また、ポリウレタン樹脂Bの100%モジュラスは、上記ポリウレタン樹脂Aの100%モジュラスの2倍以上であることが好ましく、2~8倍であることがより好ましく、2~6倍であることがさらにより好ましく、2~5倍であることがさらにより好ましく、2~4倍であることがさらにより好ましく、3~4倍であることがさらにより好ましい。100%モジュラスの比が上記範囲内であると、相分離構造を有するポリウレタンシートが得られやすくなり、研磨パッド全体の剛性の上昇を抑制して研磨傷の発生を抑制しつつ、研磨レートを高めることが容易となる。上記100%モジュラスは、構成ポリオール成分及び/又は構成ポリイソシアネート成分の種類や量を調整することによって容易に調整することができる。
また、本発明の研磨パッドに含まれるポリウレタンシートは、ポリウレタンシートを構成する樹脂全体の100%モジュラスが13MPa以下であることが好ましく、11MPa以下であることがより好ましく、3~10MPaであることがさらにより好ましく、4~10MPaであることがさらにより好ましく、6~9MPaであることがさらにより好ましい。
(質量比)
本発明の研磨パッドに含まれるポリウレタンシートは、ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bとの質量比が、100:0.1~100:5であることが好ましく、100:0.5~100:4であることがより好ましく、100:1~100:3であることがさらにより好ましい。ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bの質量比が上記範囲内であると、研磨パッド全体の剛性の上昇を抑制して研磨傷の発生を抑制しつつ、かつ研磨レートを高めることが容易となる。
(ポリウレタン樹脂)
本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートを構成する樹脂に含まれるポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分とポリウレタン樹脂Bの構成ポリオール成分が異なることが好ましく、ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種から選択される1種のポリオール成分を含み、且つポリウレタン樹脂Bの構成ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種のうち、ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分として選択された1種とは異なる他の1種のポリオール成分を含むことがより好ましい。例えば、ポリウレタン樹脂Aが構成ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを含む場合、ポリウレタン樹脂Bは構成ポリオール成分としてポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールを含むことが好ましい。
エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合はそれぞれ異なる性質を有しており、ポリウレタン樹脂Aのポリオール種とポリウレタン樹脂Bのポリオール種が異なる場合、ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bを併用すると相分離が進みやすくなる。ここでポリウレタン樹脂Bのモジュラスが高いとポリウレタン樹脂Aとの相分離がより一層進み、モジュラスの高く硬い樹脂Bが相分離により分散して存在することで強度が向上し、高い研磨レートを得ることが出来る。また、相分離の進んだ樹脂の大部分はモジュラスが低く軟質な樹脂Aによって構成されているため、研磨傷の発生も抑えることができる。
(ポリウレタン樹脂A)
ポリウレタン樹脂Aは、3~12MPaの100%モジュラスを有する。ポリウレタン樹脂Aは、樹脂を構成するポリオール成分(以下、構成ポリオール成分という)として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種から選択される1種を含むことが好ましく、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含むことがより好ましく、ポリエステルポリオールを含むことがさらにより好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されず、種々のポリエーテルポリオールを用いることが出来る。好ましいポリエーテルポリオールの例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等を挙げることが出来る。ポリエーテルポリオールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されず、種々のポリエステルポリオールを用いることが出来る。好ましいポリエステルポリオールの例として、エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等を挙げることが出来る。ポリエステルポリオールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタン樹脂Aは、構成ポリオール成分として、上記以外のポリオールを含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、含んでいないことが好ましい。
(ポリウレタン樹脂B)
ポリウレタン樹脂Bは、15~40MPaの100%モジュラスを有する。ポリウレタン樹脂Bは、樹脂を構成するポリオール成分(構成ポリオール成分)として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種のうち、ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分として選択された1種とは異なる他の1種のポリオール成分を含むことがより好ましく、ポリカーボネートポリオールを含むことがより好ましい。
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されず、種々のポリカーボネートポリオールを用いることができる。好ましいポリカーボネートポリオールの例として、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートとの反応物等を挙げることが出来る。ポリカーボネートポリオールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタン樹脂Bは、構成ポリオール成分として、上記以外のポリオールを含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、含んでいないことが好ましい。
これらの中でも、本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂Aが、構成ポリオール成分としてポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含み、且つ、ポリウレタン樹脂Bが、構成ポリオールとしてポリカーボネートポリオールを含むことが好ましく、ポリウレタン樹脂Aが、構成ポリオール成分としてポリエステルポリオールを含み、且つ、ポリウレタン樹脂Bが、構成ポリオールとしてポリカーボネートポリオールを含むことがより好ましい。上記ポリオール成分を用いることにより、相分離がさらに進み、研磨レートを更に向上させることができる。すなわち、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とするポリウレタン樹脂は、カーボネート基の高い凝集力により、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールを用いたポリウレタン樹脂と相溶性が低い。ここでポリウレタン樹脂Bのモジュラスがポリウレタン樹脂Aより十分大きい場合、凝集性の高いポリカーボネートポリオール部位に加え極性の大きなハードセグメント部位が増えるため、ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bはより一層相分離しやすくなり、ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bを併用することで相分離のより進んだポリウレタンシートが得られやすくなる。モジュラスが高く硬い樹脂Bが相分離により分散して存在することで強度が向上し、高い研磨レートを得ることが出来る。また、相分離の進んだ樹脂の大部分はモジュラスが低く軟質な樹脂Aによって構成されているため、研磨傷の発生も抑えることができる。
(ポリイソシアネート成分)
ポリウレタンシートを構成するウレタン樹脂A、Bを構成するポリイソシアネート成分は、特に限定なく種々のポリイソシアネート成分を使用することができる。ポリイソシアネート成分の例としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、MDI、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートモノマ類、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族トリイソシアネートモノマ類、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートモノマ類、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートモノマ類等を挙げることができる。また、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよく、その例として、これらのジイソシアネートモノマ類による3官能以上のポリイソシアヌレート型多価イソシアネートまたはビューレット型多価イソシアネート等の各種の変性多価イソシアネート類等の通常ポリウレタン樹脂を製造する際に使用されるポリイソシアネート成分を挙げることが出来る。
(他の樹脂)
本発明の研磨パッドに含まれるポリウレタンシートは、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン樹脂A及びポリウレタン樹脂B以外の樹脂を含んでいてもよいが、ポリウレタン樹脂A及びポリウレタン樹脂Bが、ポリウレタンシートを構成する全樹脂の50質量%であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらにより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、100質量%であることがさらにより好ましい。本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートを構成する樹脂がポリウレタン樹脂A及びポリウレタン樹脂Bの混合物からなることが特に好ましい。
(他の成分)
上記ポリウレタンシートは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他に、カーボンブラック等の無機充填剤、成膜安定化剤、界面活性剤等を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
カーボンブラック等の無機充填剤は、研磨レートを向上させる一方で研磨傷の発生を招くことから、上記ポリウレタンシートは、無機充填剤の量が少ない方が好ましく、無機充填剤の量が5質量%以下(好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下)であることがより好ましく、無機充填剤を含まないことがさらにより好ましい。
また、上記ポリウレタンシートは、カーボンブラックの量が少ない方が好ましく、カーボンブラックの量が5質量%以下(好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下)であることがより好ましく、カーボンブラックを含まないことがさらにより好ましい。
(結晶相、非晶相、中間相)
本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートに占める結晶相の割合が、10~40質量%であることが好ましく、15~30質量%であることがより好ましく、20~25質量%であることが更により好ましい。ポリウレタンシートに占める非晶相の割合は、50~80質量%であることが好ましく、55~75質量%であることがより好ましく、60~70質量%であることが更により好ましい。ポリウレタンシートに占める中間相の割合は、0~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましく、10~15質量%であることが更により好ましい。中間相とは、ソフトセグメントとハードセグメントとが混在する領域であり、その分率が少ないことは、ハードセグメントとソフトセグメントの相分離が明確であることを示している。ポリウレタンシートの結晶相、中間相、非晶相の割合が上記範囲にあると、ポリウレタン樹脂Aと、これと相溶性が悪く且つ100%モジュラスの高いポリウレタン樹脂Bとを添加した際に相分離構造が形成されやすい。
上記結晶相の含有量は、ポリウレタン樹脂をパルスNMR測定に供し、非晶相、中間相及び結晶相の比率をそれぞれ求めたものである。
(厚み)
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタンシートの厚みに特に制限はないが、例えば、0.3~2.0mm、好ましくは0.6~1.2mmの範囲であってもよい。
厚みは、日本工業規格(JIS K6505)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
縦、横10cm角の試料を準備する。試料の表面を上にして測定器に載せる。荷重100g/cm2をかけた加圧面を試料上に下し、5秒後の厚さを測定する。1枚につき5ヶ所測定しその平均値を厚さとする。なお、10cm角の試料が取れない場合は5ヶ所の平均とする。
(密度)
ポリウレタンシートの密度は、0.15~0.40g/cm3が好ましく、0.20~0.30g/cm3であることがより好ましい。密度が上記範囲内であると、研磨レートとスクラッチ性能とのバランスがよい。
(圧縮率及び圧縮弾性率)
本明細書において、圧縮率とは、軟らかさの指標であり、圧縮弾性率とは、圧縮変形に対する戻りやすさの指標である。
圧縮率及び圧縮弾性率は、日本工業規格(JIS L1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終荷重を5分間かけた後の厚さt1を測定する。次に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定する。
圧縮率は、圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0の式で算出することができる(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=100×(t0’-t1)/(t0-t1)の式で算出することが出来る(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
ポリウレタンシートの圧縮率は、1~40%が好ましく、3~30%がより好ましく、5~20%であることがより好ましい。ポリウレタンシートの圧縮弾性率は、70~100%であることが好ましく、80~99%であることがより好ましく、90~98%であることがさらにより好ましい。圧縮率及び圧縮弾性率が上記範囲内であると、被研磨物表面への追従性に優れ、被研磨物の表面粗さ低減につながる。
(ショアA硬度)
本明細書において、ショアA硬度とは、日本工業規格(JIS K7311)に準じて測定した値を意味する。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートのショアA硬度が、5~50度(°)であることが好ましく、5~40度であることがより好ましく、10~30度であることがさらにより好ましく、15~25度であることがさらにより好ましい。ポリウレタンシートのショアA硬度が上記範囲内であると、高い研磨レートと低い研磨傷の両立がしやすい。
(平均開孔径)
本明細書において、平均開孔径とは、ポリウレタンシートの表面画像を二値化処理し、各々の開孔部分の面積と個数から算出した円相当径の平均値である。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタンシートの平均開孔径は、20~80μmの範囲内であることが好ましく、25~70μmがより好ましく、30~60μmがさらにより好ましく、30~50μmがさらにより好ましく、30~40μmがさらにより好ましい。
平均開孔径が上記範囲内であると、スラリーの保持性が良く、安定した研磨レートを得られる。
(開孔率)
本明細書において、開孔率とは、ポリウレタンシートの表面(研磨面)に対する開孔面積の割合(%)を意味する。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタンシートの開孔率は、5~50%の範囲内であることが好ましく、10~40%がより好ましく、15~35%がさらにより好ましく、20~30%がさらにより好ましい。
開孔率が上記範囲内であると、スラリーの保持性が良く、安定した研磨レートが得られる。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタンシートは、被研磨物を研磨するための研磨面を有している。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートの研磨面及び/又は研磨面とは反対側の面が研削処理(バフ処理)されていてもよく、研削処理されていなくてもよいが、ポリウレタンシートの研磨面が研削処理されていることが好ましい。これにより、研磨面に微小気泡由来の開口部が多数存在することとなり、当該開口部にスラリーを保持することで研磨レートを向上させることができる。
また、本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートの研磨面に、溝加工、エンボス加工及び/又は穴加工(パンチング加工)が施されていてもよい。本発明の研磨パッドは、光透過部を備えていてもよい。
また、本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートのみからなる単層構造であってもよく、ポリウレタンシートの研磨面とは反対側の面に基材を貼り合わせた複層構造であってもよい。基材としては、例えば、不織布製、PET製、塩化ビニル製の基材等が挙げられる。基材の特性に特に制限はないが、ポリウレタンシートよりも硬い(例えば、A硬度又はD硬度が大きい)ことが好ましい。ポリウレタンシートよりも硬い層が設けられていることにより、ポリウレタンシートから作製した研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する際に、研磨パッドが伸縮したり湾曲したりするのを抑制することができる。
本発明の研磨パッドは、特に半導体デバイスの製造において被研磨物(例えば、ウエハ)を研磨(化学機械研磨(CMP))して平坦化させるために好適に用いることができる。上記被研磨物の材料としては、例えばシリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、Cu、W、Al、Ta、TiN等の金属が挙げられる。本発明の研磨パッドによれば、シリコンウエハ等の被研磨物を研磨する際の表面の傷の発生を抑制し、かつ研磨レートを向上させることができる。
(作用)
本発明の研磨パッドは、被研磨物の表面の傷の発生を抑制することができ、かつ高い研磨レートを得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように推察される。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタンシートを構成する樹脂が100%モジュラス、および、凝集性の大きく異なる2種類のポリウレタン樹脂の混合物を含み、且つ100%モジュラスおよび凝集性のより大きいポリウレタン樹脂の割合が低く制限されている。これにより、モジュラスのより低いポリウレタン樹脂がベースとなって研磨傷の発生を抑えつつ、ところどころに存在するモジュラスの高いポリウレタン樹脂が寄与して高い研磨レートが得られるのではないかと考えられる。
<研磨パッドの製造方法>
本発明の研磨パッドは、例えば下記の本発明の研磨パッドの製造方法により製造してもよい。
本発明の研磨パッドの製造方法は、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと、15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含む樹脂溶液を調製する工程(ここで、ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bは、その質量比が100:0.1~100:5となるように調製される)、前記樹脂溶液を成膜用基材に塗布する工程、及び前記溶液が塗布された成膜用基材を凝固液に浸漬して前記溶液を凝固させる工程を含む、研磨パッドの製造方法である。
以下、各工程について説明する。
(樹脂溶液を調製する工程)
本工程では、ポリウレタン樹脂A及び上記ポリウレタン樹脂Bを、これらの樹脂が溶解する水混和性の有機溶媒に溶解させて、これらの樹脂を含む樹脂溶液を調製する。
ポリウレタン樹脂A及びポリウレタン樹脂Bとしては、上述したものを用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)等が挙げられる。上記有機溶媒は、1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、上記有機溶媒は、DMF又はDMAcであることが好ましい。
上記樹脂溶液の固形分濃度は、特に限定されないが、15~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、20~35質量%であることが更により好ましい。固形分濃度が上記範囲内であると、樹脂溶液が適度な流動性を有し、樹脂溶液を均一に成膜用基材に塗布することが容易になる。
なお、上記樹脂溶液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外の成分を含んでいてもよい。
(樹脂溶液を成膜用基材に塗布する工程)
上記で得られた樹脂溶液を、ナイフコーター、リバースコーター等の塗工機により成膜用基材に略均一となるように、連続的に塗布する。このとき、成膜用基材と塗工機のダイやナイフとの間隙(クリアランス)を調整することで、塗膜の膜厚を調整することができる。
上記成膜用基材としては、本技術分野で通常用いられる基材であれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等の可撓性のある高分子フィルム、弾性樹脂を含浸固着させた不織布等が挙げられる。中でも、ポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
(樹脂溶液を凝固させる工程)
樹脂溶液が塗布された基材を、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液(凝固浴)に浸漬して、ポリウレタン樹脂を凝固再生させる。
凝固液としては、水、水及びDMF等の極性有機溶媒の混合溶媒等が用いられる。極性有機溶媒としては、ポリウレタン樹脂を溶解するのに用いた水混和性の有機溶媒、例えばDMF、DMAc、THF、DMSO、NMP、アセトン、DMI等が挙げられる。混合溶媒中の極性有機溶媒の濃度は0~20質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。上記凝固液は、水又は水及びDMFの混合溶媒であることが好ましく、水及びDMFの混合溶媒であることがより好ましい。
凝固液の温度や浸漬時間に特に制限はなく、例えば10~60℃、好ましくは15~50℃で5~120分間であることが好ましい。
凝固液中では、まず、塗布された樹脂溶液と凝固液との界面に緻密なスキン層が形成される。その後、スキン層を通じて樹脂溶液中の有機溶媒と凝固液との溶媒置換が進行し、ポリウレタン樹脂が成膜用基材上にシート状に凝固再生されて、内部に涙形状気泡が複数形成された成膜用基材付き樹脂シートが得られる。
その後、凝固再生されたポリウレタンシートを上記樹脂シートから剥離し、又は剥離せずに、洗浄、乾燥処理を行う。
洗浄処理により、ポリウレタンシート中に残存する有機溶媒が除去される。洗浄に用いられる洗浄液としては、水が挙げられる。
洗浄後、ポリウレタンシートを乾燥処理する。乾燥処理は従来行われている方法で行えばよく、例えば80~150℃で5~60分間程度、乾燥器内で乾燥させればよい。
上記ポリウレタンシートは、必要に応じて、研磨面及び/又は研磨面とは反対の面を研削処理(バフ処理)してもよい。また、ポリウレタンシートの研磨面に溝加工、エンボス加工及び/又は穴加工(パンチング加工)を施してもよく、研磨面とは反対側の面に基材を貼り合わせてもよい。
研削処理の方法に特に制限はなく、サンドペーパーを用いた研削、バフ機やスライス機を用いた研削等、公知の方法を採用することができる。中でも、バフ機やスライス機を用いると厚みが略均一化されたポリウレタンシートが得られるため好ましい。
溝加工及びエンボス加工の形状に特に制限はなく、例えば、格子型、同心円型、放射型等の形状が挙げられる。
ポリウレタンシートに基材を貼り合わせて複層構造とする場合には、複数の層同士を両面テープや接着剤等を用いて、必要により加圧しながら接着・固定すればよい。この際用いられる両面テープや接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープや接着剤の中から任意に選択して使用することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
100%モジュラスが7.9MPaのポリエステルポリウレタン樹脂を含む濃度30質量%のDMF溶液60質量部と、100%モジュラスが24MPaのポリカーボネートポリウレタン樹脂を含む濃度10質量%のDMF溶液3質量部と、希釈溶媒としてDMF35質量部とを混合し、ポリウレタン樹脂含有溶液を得た。ポリカーボネートウレタン樹脂の100%モジュラスは、ポリエステルポリウレタン樹脂の100%の3.4倍である。
ポリエステル系ポリウレタン樹脂は、エチレングリコール及びプロピレングリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオールと、メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(MDI)と、1,4-ブタンジオールとを反応させることによって得たものである。
ポリカーボネートポリウレタン樹脂は、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られたポリカーボネートジオールと、MDIとを反応させることによって得たものである。
上記ポリウレタン樹脂含有溶液を、成膜用基材としてのPETフィルム上にナイフコーターを用いて塗工し、凝固液(水)中に18℃で60分間浸漬し、ポリウレタンを凝固再生した後、洗浄及び乾燥させて、成膜用基材上より剥離しポリウレタンシートを得た。得られたポリウレタン発泡体シートの表面を研削処理して、厚みを0.82mmとした。その後、ポリウレタンシートの研削処理面とは反対側の面に、接着剤を用いてPET基材を貼り合わせ、ポリウレタンシートの一部を格子状の金型でエンボス加工を行い、研磨パッドを得た。
(比較例1)
ポリカーボネートポリウレタン樹脂を使用せず、100%モジュラスが7.9MPaのポリエステルポリウレタン樹脂を含む濃度30質量%のDMF溶液100質量部と、希釈溶媒としてDMF55質量部とを混合し、ポリウレタン樹脂含有溶液を得たこと以外は実施例1と同様にして、厚み0.81mmのポリウレタンシートを有する研磨パッドを得た。
(比較例2)
比較例1のポリウレタン樹脂含有溶液にカーボンブラックを含む濃度15質量%のDMF分散液16質量部を追加してポリウレタン樹脂含有溶液を得たこと以外は比較例1と同様にして、厚み0.78mmのポリウレタンシートを有する研磨パッドを得た。
(比較例3)
100%モジュラスが24MPaのポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を含む濃度10質量%のDMF溶液を11質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.82mmのポリウレタンシートを有する研磨パッドを得た。
〔研磨パッドの物性評価〕
実施例1及び比較例1~3の研磨パッドについて、研磨層の厚み、密度、圧縮率、圧縮弾性率、ショアA硬度、平均開孔径、開孔率を以下の方法により算出した。その結果を表2に示す。
(1)研磨層の厚み
実施例及び比較例で得られた研磨層の厚みは、JIS K6505に準拠して、ダイヤルゲージ(最小目盛り0.01mm)を使用し、加重100g/cm2をかけて測定した。縦10cm×横10cmの研磨層(ポリウレタンシート)の中央部と4隅の5箇所測定し最小目盛りの10分の1(0.001mm)まで読み取り、その平均値を研磨層の厚み(mm)とした。
(2)研磨層の密度
実施例及び比較例で得られた研磨層(ポリウレタンシート)から、試料片(10cm×10cm)を切り出し、電子天秤(型式メトラーAJ-180)でその質量W0(g)を測定し、シックネスゲージで測定した厚みt(cm)及び上記質量W0(g)から、かさ密度(ρ)=W0/t/100(g/cm3)により算出した。
(3)圧縮率%、圧縮弾性率%
圧縮率及び圧縮弾性率は、JIS L1021に準拠して、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して測定した。具体的には、無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終圧力を30秒間かけた後の厚さt1を測定した。厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定した。
圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0
圧縮弾性率(%)=100×(t0’-t1)/(t0-t1
初荷重は100g/cm2、最終圧力は1120g/cm2
により測定した。
(4)ショアA硬度
ショアA硬度は、研磨パッドからポリウレタンシート試料片(10cm×10cm)を切り出し、複数枚の該試料片を厚さが4.5mm以上となるように重ね、A型硬度計(日本工業規格、JISK7311)にて測定した。
(5)平均開孔径、開孔率
平均開孔径及び開孔率は、ポリウレタンシートの研磨面を走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JMS-5500LV)によって、100倍に拡大して9か所観察した後、これらの画像を画像処理ソフト(ニコン社製、ImageAnalyzerV20LABVer.1.3)により二値化処理をして算出した。
(6)100%モジュラス
無発泡ポリウレタンシートを作成し、該シートからダンベル状3号形の形状の試験片を切り出した。これを用い、標線間距離が100%伸びたとき(2倍に伸びたとき)における引張応力(MPa)の値を、JIS K 6251(1993)に準じて引張速度100mm/minで測定した。
〔各セグメントの存在割合の測定〕
各実施例及び比較例の研磨面のソフトセグメント及びハードセグメントの含有量は、パルスNMR測定を用いて以下の条件によって求めた。具体的には、研削処理済みの研磨パッドのランド部から1~3mm角程度のサンプル片をカッターで切り出し、10mmφの試料管に1~2cmの高さまで充填し、パルスNMR測定を行って減衰曲線を得た。得られた減衰曲線とフィッティング曲線が一致するよう、ローレンツ関数(直線部分)、ガウス関数(曲線部分)を用いて最小二乗法により解析し、研磨面中の結晶相、中間相、及び非結晶相の割合(存在比(%))、並びに緩和時間(T2)を求めた。なおフィッティング及び解析は、下記測定装置に付属のソフトウェアを用いた。測定結果を表1に示す。
(測定条件)
装置:日本電子(株)社製、JNM-MU25
測定磁場強度:0.58T
観測周波数:25MHz
観測核:1H
測定:スピン-スピン緩和(T2)
測定法:Solid Echo法
パルス幅:2.2μs
パルス間隔:13.0μs
パルス繰り返し時間:4.0sec
積算回数:16回
測定温度:20℃
Figure 2022155896000001
結晶相の比率は、主にハードセグメントが集まりサイズが大きくなることや、ハードセグメント量の増加に依存して増大する。
非晶相の緩和時間は、運動性の高いソフトセグメントが相対的に増えることに依存して増大する。
パルスNMR測定試験の結果、実施例1の研磨パッドと比較例1~3の研磨パッドとの間で、結晶相、非晶相の比率にそれほど大きな差はないものの、実施例1では非晶相の緩和時間が他より長くなっており、相分離が進んでいることがうかがえる。一方、比較例3の緩和時間が他より短くなっており、相混合の方向へ進んでいることがうかがえる。
(研磨試験)
各実施例及び比較例の研磨パッドを用い、TEOS(テトラエトキシシラン)膜付きシリコンウエハ及びCu膜付きシリコンウエハの各120枚に対して、以下の条件にて研磨加工を行い、研磨レート及びスクラッチ性を評価した。評価結果を表2に示す。
〔研磨条件〕
使用研磨機:(株)荏原製作所製、商品名「F-REX300」
研磨速度(定盤回転数):70rpm
加工圧力:176g/cm2
スラリー流量:200mL/min
ドレッサー:3M社製ダイヤモンドドレッサー、型番「A188」
コンディショニング:Ex-situ、30N、4スキャン
研磨時間:60秒
被研磨物:TEOS膜付きシリコンウエハ及びCu膜付きシリコンウエハ
研磨スラリー:Cabot社製、型番「SS-25」の2倍希釈液(SS25原液:純水=1:1の混合液)
〔研磨レート〕
研磨試験前後のウエハのTEOS膜について、121箇所の厚さの測定結果から平均値を求めて、その平均値から各点において測定された厚さを研磨時間で除することにより研磨レート(Å/分)を求めた。なお厚さ測定は、光学式膜厚膜質測定器(KLAテンコール社製、型番「ASET-F5x」のDBSモード)にて測定した。
〔スクラッチ性(研磨傷の有無)の評価〕
ウエハ上のCu膜について、研磨処理枚数が13枚目、28枚目、53枚目、78枚目、103枚目及び118枚目におけるウエハのCu部の表面を、表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP5)を用いて長さ150nm以上の研磨傷を数えた。研磨傷の数が5個未満である場合に○、5個以上である場合に×と評価した。
Figure 2022155896000002
<結果>
から分かるように、100%モジュラスが大きく異なる2種類のポリウレタン樹脂の混合物を含む実施例1は、高い平均研磨レートと、研磨傷の抑制との両立を達成できた。これに対し、100%モジュラスの小さい1種類のポリウレタン樹脂のみを含む比較例1の研磨パッドは、研磨傷を抑制できず、平均研磨レートも低かった。比較例2の研磨パッドは、比較例1に対してカーボンブラックを加えることで平均研磨レートを向上させることが出来たものの研磨傷が比較例1よりも悪化した。実施例1と比べて樹脂Bの割合が高い比較例3の研磨パッドは、研磨レート及び研磨傷のいずれも十分な結果が得られなかった。
<考察>
パルスNMRの測定結果から、実施例1の研磨パッドは、ポリウレタンの相分離が進んでいることが読み取れる。100%モジュラスが大きく異なる2種類のポリウレタン樹脂を組み合わせて用いることにより、ポリウレタンの相分離が進み、研磨レートの向上と研磨傷の低減を両立できたものと考えられる。
これに対し、比較例1の研磨パッドは、100%モジュラスの小さいポリウレタン樹脂Aのみを含むため、結晶相成分が最も小さく、非晶相成分が最も大きくなっており樹脂全体が柔軟で伸びやすく、研磨加工時に被研磨物との摩擦により研磨表面の開孔部が塞がれ目つぶれしやすい。その結果、スラリーや研磨屑が開孔部に入り込まずに被研磨物と接触することとなり、スクラッチが発生したのではないかと考えられる。逆に、比較例3の研磨パッドは、結晶相・非晶相・中間相の緩和時間が他より短く分子の運動性が制限された状態にあり、相混合が進行したと考えられる。添加したポリウレタン樹脂Bの樹脂の割合が大きいため、樹脂全体が硬くなり、パッドの剛性向上に起因してスクラッチが発生したのではないかと考えられる。
他方、比較例2の研磨パッドは、カーボンブラックを添加して硬度化することで高い研磨レートが得られたものの、硬質なカーボンブラック粒子によりスクラッチ性が悪化したものと考えられる。
本発明の研磨パッドは、被研磨物の表面の傷の発生を抑制することができ、かつ研磨レートが高い。よって、本発明の研磨パッドは、産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. 複数の涙形状気泡を有し、且つ被研磨物を研磨するための研磨面を有するポリウレタンシートを含む研磨パッドであって、
    前記ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂が、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含み、且つ
    ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bとの質量比が100:0.1~100:5である、前記研磨パッド。
  2. ポリウレタン樹脂Bの100%モジュラスがポリウレタン樹脂Aの100%モジュラスの2倍以上である、請求項1に記載の研磨パッド。
  3. ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分とポリウレタン樹脂Bの構成ポリオール成分が異なる、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種から選択される1種のポリオール成分を含み、且つポリウレタン樹脂Bの構成ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの3種のうち、ポリウレタン樹脂Aの構成ポリオール成分として選択された1種とは異なる他の1種のポリオール成分を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  5. ポリウレタン樹脂Bが、構成ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  6. ポリウレタン樹脂Aが、構成ポリオール成分としてポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  7. 複数の涙形状気泡を有し、且つ被研磨物を研磨するための研磨面を有するポリウレタンシートを含む研磨パッドであって、
    前記ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂が、3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含み、
    ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bとの質量比が100:0.1~100:5であり、
    ポリウレタン樹脂Aが、構成ポリオール成分としてポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含み、且つ
    ポリウレタン樹脂Bが、構成ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを含む、前記研磨パッド。
  8. 前記ポリウレタンシートが、カーボンブラックを含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法であって、
    3~12MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Aと、15~40MPaの100%モジュラスを有するポリウレタン樹脂Bとの混合物を含む樹脂溶液を調製する工程、ここで、ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bは、その質量比が100:0.1~100:5となるように調製される、
    前記樹脂溶液を成膜用基材に塗布する工程、及び
    前記溶液が塗布された成膜用基材を凝固液に浸漬して前記溶液を凝固させる工程を含む、研磨パッドの製造方法。
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