JP2022155510A - 人工乳首 - Google Patents

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Abstract

【課題】乳幼児のスムーズな哺乳瓶離れを補助する、訓練用として好適な人工乳首を提供すること。【解決手段】乳頭部を有し、哺乳瓶に取り付けて用いられる中空の人工乳首であって、ドーム形状に形成された乳房部、前記乳房部の頂部から突起状に形成された前記乳頭部、および、前記乳房部の開口端部に配され該人工乳首を哺乳瓶に取付けるためのフランジ状の取付部、を有し、前記乳房部は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.5mm以上4.0mm以下であり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.5mm以上12.0mm以下となるものであり、前記乳頭部の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下であり、前記乳頭部の平均直径r1が、8.0mm以上12.0mm以下であることを特徴とする人工乳首。【選択図】図1

Description

本発明は、人工乳首に関する。
ミルクや予め搾取した母乳、果汁等の乳幼児用の飲料を収容した哺乳瓶に、人工乳首を装着した人工哺乳器が、乳幼児の授乳において広く使用されている。
例えば、特許文献1には、乳輪部が、乳首部よりも大きな肉厚を備え、かつ、乳輪部と乳首部との境界には乳輪部よりも肉厚が薄い脆弱部を備えた人工乳首が開示されている。この人工乳首では、乳首部が、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定することで、乳首先端部が哺乳窩に十分に到達できて、適切に押し潰されることができ、その状態で確実に哺乳運動ができるようにされている。
また、特許文献2には、人工乳首の乳頭部の貫通孔の周囲の強度を向上させることによって、耐用性を向上させた哺乳瓶用の人工乳首が開示されている。
特開2011-92550号公報 特開2015-171455号公報
しかしながら、直母乳による授乳を拒否する赤ちゃんに対して、上記のような哺乳瓶を用いて授乳を行っていると、授乳の際に口を大きく開けずに飲む癖が付いたり、乳首部をかんだりする癖が付いてしまう。このため、いつまでたっても直母乳に移行するのが困難になる。また、直母乳による授乳を行っている赤ちゃんであっても、例えば、他人に預けられて、その間、上記のような哺乳瓶を用いて授乳を行っていると、直母乳に戻した際にうまく授乳できなかったりすることがある。
また、従来の人工乳首では、乳幼児の吸いやすさ、飲みやすさを主な目的としているため、乳頭部分が柔らかく、径も小さくされている。すると、乳幼児は口先で乳頭部分だけを咥えるため、歯が生えてきた乳幼児が、乳頭部分を噛み切ってしまうことも多い。このため、直母乳に移行させた際、母親の乳首等を傷付けてしまうこともある。
本発明の目的は、直母乳を拒否する赤ちゃんに対して、直母乳に移行させるための訓練用として好適な人工乳首を提供することにある。
このような目的は、下記に記載の本発明により達成される。
[1]
乳頭部を有し、哺乳瓶に取り付けて用いられる中空の人工乳首であって、
ドーム形状に形成された乳房部、前記乳房部の頂部から突起状に形成された前記乳頭部、および、前記乳房部の開口端部に配され該人工乳首を哺乳瓶に取付けるためのフランジ状の取付部、を有し、
前記乳房部は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.5mm以上4.0mm以下であり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.5mm以上12.0mm以下となるものであり、
前記乳頭部の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下であり、
前記乳頭部の平均直径r1が、8.0mm以上12.0mm以下であることを特徴とする人工乳首。
[2]
前記乳房部は、偏心した形状を有している、[1]に記載の人工乳首。
[3]
前記乳房部が、前記乳頭部に連続して配され、肉厚の薄い薄肉部と、前記薄肉部に連続して配され、肉厚が前記薄肉部よりも厚い厚肉部と、を有している、[1]または[2]に記載の人工乳首。
[4]
前記乳房部の平均直径r2が、50mm以上75mm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の人工乳首。
[5]
前記乳頭部の肉厚が、0.5mm以上3mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の人工乳首。
[6]
前記乳房部の肉厚が、前記薄肉部では、1mm以上10mm以下であり、前記厚肉部では、10mm以上30mm以下である、[3]~[5]のいずれかに記載の人工乳首。
本発明によれば、乳幼児のスムーズな哺乳瓶離れを補助する、訓練用として好適な人工乳首を提供することができる。
図1は、本発明の人工乳首の一構成例を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図である。 図2は、人工乳首を哺乳瓶に取り付けるためのキャップの一例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は一部切り欠き断面図である。 図3は、本発明の人工乳首をキャップを介して哺乳瓶に取り付けた状態を示す側面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の人工乳首の一構成例を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図である。図2は、人工乳首を哺乳瓶に取り付けるためのキャップの一例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は一部切り欠き断面図である。図3は、本発明の人工乳首をキャップを介して哺乳瓶に取り付けた状態を示す側面図である。
なお、以下の説明において、「上側」「下側」は、それぞれ図中における「上側」「下側」を意味し、同様に、「右側」「左側」は、それぞれ図中における「右側」「左側」を意味する。
本発明の人工乳首1は、乳頭部2を有し、哺乳瓶20に取り付けて用いられる中空の人工乳首であって、ドーム形状に形成された乳房部3、乳房部3の頂部から突起状に形成された乳頭部2、および、乳房部3の開口端部に配され該人工乳首1を哺乳瓶20に取付けるためのフランジ状の取付部4、を有し、乳房部3は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.5mm以上4.0mm以下であり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.5mm以上12.0mm以下となるものであり、乳頭部2の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下であり、乳頭部2の平均直径r1が、8.0mm以上12.0mm以下である。
本発明の人工乳首1では、乳房部3を有するため、乳幼児が口を大きく開けた状態で内部の飲料を飲むこととなる。よって、口唇を大きく開けて授乳を行う訓練となる。
また、乳房部3は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.5mm以上4.0mm以下であり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.5mm以上12.0mm以下であるため、比較的硬く、乳幼児が口を大きく開けた状態を維持しやすい。また、乳幼児が吸っても変形しにくくなり、乳幼児が乳頭部2を噛みにくくすることができる。また、歯が生えて来た乳幼児が乳頭部2を噛み切ることも抑制される。
また、乳頭部2の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下であり、従来のものに比べて硬い。これにより、授乳の際に乳幼児が乳頭部2を噛むのを抑制することができる。
また、乳頭部2の平均直径r1が、8.0mm以上12.0mm以下であるため、乳幼児が口の奥まで咥えやすい。
以上のことから、本発明の人工乳首1を使用することにより、授乳の際に乳頭部2を噛むのを抑制しつつ、授乳の際に口を大きく開けるよう訓練を行うことができる。その結果、人工乳首1を使用することにより、直母乳による授乳に移行させやすくすることができる。
これに対し、上記条件を満たさない場合、上述したような本発明の効果は得られない。
すなわち、乳房部3は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧して測定した凹没量が小さすぎても大きすぎても、実際の乳房と弾性が乖離し、本発明の効果を得るのが困難になる。
また、乳頭部2について、JIS K 6253(2012)で規定される硬さが下限値未満であると、乳頭部2は柔らかく飲みやすいため、授乳中に乳幼児が乳頭部2を噛みやすくなる。また、硬さが上限値を超えると、硬くなりすぎて過度に飲みにくいものとなってしまう。
また、乳頭部2および乳房部3の形状について、平均直径r1が8.0mm未満であると、乳頭部2が比較的小さいものとなり、口を大きく開ける訓練にならない可能性がある。一方、平均直径r1が12.0mmを超えると、乳頭部2が大きすぎて、人工乳首1による授乳が困難になる可能性がある。
本発明の人工乳首1は、図3に示すように、例えば、後述するキャップ10を介して哺乳瓶20に取り付けられて、哺乳器として用いられる。哺乳瓶20には、ミルク、果汁等の乳幼児用の飲料が収容されており、乳幼児(使用者)は、人工乳首1を咥えて吸うことにより、哺乳瓶20中の飲料を人工乳首1を介して飲む。
本発明の人工乳首1は、乳幼児による蠕動運動によって哺乳瓶20に収容された飲料を意図した量で提供できるような、当該分野で周知の任意の形状を有する。
本実施形態の人工乳首1は、全体が中空体とされた成形品であり、乳頭部2、乳房部3、取付部4を有する。これら乳頭部2、乳房部3および取付部4は連続して一体的に形成されている。
人工乳首1は、その全体が、例えば、ゴム、軟質樹脂等の柔軟性を有する弾性材料より形成されている。このような弾性材料としては特に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴムや、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
乳頭部2は、ドーム形状の乳房部3の頂部から突出して円筒状に形成され、先端部は閉塞されている。乳頭部2は、乳房部3の中空部6と連続しており、人工乳首1が哺乳瓶20に取り付けられた場合には、哺乳瓶20内部と連通するものとなる。
一般的に、人工乳首の乳頭部の先端は、実際の母体の乳頭形状に近づけて曲面状とされていることが多いが、本実施形態の人工乳首1では、乳頭部2の先端を平坦にすることで、乳幼児にとっては咥えにくく違和感のあるものとなる。
また、乳頭部2の先端には、哺乳瓶20中の飲料を乳幼児の口腔内に噴出させるための貫通孔が形成されている。貫通孔は、上面視で例えば、1個または複数の丸穴状の微細な開口や、十字状、Y字状又は一文字状のスリット等により形成されている。
なお、貫通孔は、閉塞した状態で販売され、購入後に、購入者(例えば、保護者)によって開口されるものであってもよい。これにより、購入者によって開口径を調節可能である。
本実施形態では、乳頭部2の先端に薄肉部5として形成されており、使用開始前に該薄肉部5を突き破ることにより開口され、1個の丸穴状の貫通孔とされる。
そして、上述したように、本実施形態の人工乳首1では、乳頭部2のJIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下とされている。
これにより、乳幼児が吸っても乳頭部2が変形しにくくなる。すなわち、乳幼児にとっては、吸っても哺乳瓶20中の飲料が出にくく飲みにくいものとなる。また、歯が生えて来た乳幼児が乳頭部2を噛み切ることも抑制される。
なお、乳頭部2の全域において、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下とされる。
乳頭部2において、湾曲した部分は、試験片として切り出して、上記試験時に平らに押し広げた状態で固定した。また、厚さが、JIS K 6253(2012)で規定される試験条件を満足しない場合、同じ部位を切り出した試験片を重ねて試験条件を満足した。そして、平面視での大きさをJIS K 6253(2012)で規定される試験条件を満足する大きさとして測定を行った。
JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)を満足する材料で乳頭部2を構成することにより、上記効果を発揮することができる。
乳頭部2の硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)は、25以上40以下であればよいが、36以上39以下であるのが好ましく、37以上38以下であるのがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
乳頭部2の平均直径r1は、8.0mm以上12.0mm以下であり、より好ましくは9.0mm以上11.0mm以下とされる。
これにより、乳頭部2の形状を、実際の母体の乳首形状により近いものとすることができるほか、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
本実施形態では、乳頭部2の平均直径r1を、10mmとしている。
乳頭部2の高さh1は、10mm以上20mm以下であるのが好ましく、12mm以上15mm以下であるのがより好ましい。
乳頭部2の高さh1は、授乳時(以下、ミルク以外の果汁その他の飲料を摂取する場合も「授乳時」という。)に乳幼児の口腔内でその哺乳窩に乳頭部2が到達するための十分な長さとなるように設定されるのが好ましい。
ここで、哺乳窩は、授乳期の乳幼児にだけみられるその上口蓋の窪みであり、通常、乳幼児の口唇から10~15mm程度口腔内に入り込んだ位置にある。
従って、乳頭部2の高さh1が10mm以上であれば、乳頭部2の先端は乳幼児の哺乳窩に到達することができる。
本実施形態では、乳頭部2の高さh1を10mmとし、乳房部3の下端から乳頭部2の先端までの寸法(全体の高さ)h2を40mmとしている。なお、本実施形態では、哺乳時に、乳幼児が乳頭部2を咥えて吸うことにより乳頭部2が伸び、その状態で、h1が20mmになるようにされている。
乳頭部2の肉厚は、使用する材料の硬度により適宜調整されるが、乳頭部2の肉厚t1が、0.5mm以上3mm以下であるのが好ましく、0.7mm以上2mm以下であるのがより好ましい。
これにより、乳頭部2のJIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)を上記範囲に好適に調整することができる。
本実施形態では、乳頭部2の肉厚t1を、1mmとしている。また、開口することにより飲料を噴出させるための貫通孔となる薄肉部5の肉厚を、0.5mmとしている。
乳房部3は、乳頭部2と連続して形成され、内部に中空部6を有するドーム形状に形成されている。
乳房部3は対称的な形状ではなく、偏心した形状を有していることが好ましい。例えば、図1(b)に示すように、本実施形態では、上面視で、乳房部3の形状は円形よりも楕円に近い形状であり、乳頭部2の位置も、哺乳時の状態(図1の左側を下向きにした状態)で中心から少し下側にずれた位置に配されている。
これにより、乳房部3の形状を、実際の母体の乳房形状により近いものとすることができる。
図1(a)に示すように、本実施形態では、乳房部3における中空部6は、縦断面視で矩形状とされている。すなわち、中空部6の径r3が、取付部4側から乳頭部2側に向かって一定であり、r3=30mmである。
中空部6の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、中空部6の径r3が一定の割合で減少していくものであってもよいし(すなわち、縦断面視で台形状をなす)、あるいは、中空部6の径r3の変化割合が漸次変化するもの(すなわち、縦断面視で曲線をなすもの)であってもよい。
本実施形態の人工乳首1では、乳房部3は、乳頭部2に連続して配され肉厚の比較的薄い薄肉部3aと、薄肉部3aに連続して配された肉厚の比較的厚い厚肉部3bと、を有している。
これにより、薄肉部3aでは剛性が低く、厚肉部3bでは剛性が高くなり、薄肉部3aと厚肉部3bとの境界近辺で変形(曲り)を生じやすくなる。これにより、哺乳瓶20中の飲料を出しやすくすることができる。ただし、薄肉部3aとはいっても十分な厚さを有しているので、変形したとしても潰れてしまうことが抑制される。
また、図1(b)に示すように、乳房部3にマーク7を付しておいてもよい。マーク7は特に限定されないが、図1(b)では「★」で示している。このマーク7は、薄肉部3aと厚肉部3bとの境界近傍に付しておくことが好ましい。哺乳時にこのマーク7の部分を押すことで、上述したような薄肉部3aと厚肉部3bとの境界近辺での変形(曲り)をより生じやすくなる。これにより、哺乳瓶20中の飲料を適度に出すことができる。
乳房部3のJIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、薄肉部3aでは、25以上40以下であるのが好ましく、28以上39以下であるのがより好ましい。また、厚肉部3bでは、27以上42以下であるのが好ましく、30以上41以下であるのがより好ましい。
これにより、乳幼児が吸っても変形しにくく、哺乳瓶20中の飲料を適度に飲みにくいものとなり、上述した効果をより顕著なものとすることができる。また、上述したような薄肉部3aと厚肉部3bとの境界近辺での変形(曲り)をより生じやすくなる。
なお、薄肉部3aおよび厚肉部3bの肉厚は使用する材料の硬度により適宜調整されるが、厚肉部3bの肉厚は、薄肉部3aの2倍以上とすることが好ましい。
具体的には、例えば、薄肉部3aの肉厚t2aは、1mm以上10mm以下であるのが好ましく、3mm以上8mm以下であるのがより好ましい。また、厚肉部3bの肉厚t2bは、10mm以上30mm以下であるのが好ましく、15mm以上25mm以下であるのがより好ましい。
本実施形態では、薄肉部3aの肉厚t2aを5mm、厚肉部3bの肉厚t2bを15mm~25mmとしている。
これにより、乳房部3の薄肉部3aおよび厚肉部3bの硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)を上記範囲に好適に調整することができ、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
乳房部3の平均直径r2は、50mm以上75mm以下であるのが好ましく、60mm以上70mm以下であるのがより好ましい。
これにより、授乳時に乳幼児が口唇を大きく開いても、乳房部3が乳幼児の口腔内に入り込まず、乳幼児の口唇により保持することができる。また、従来の人工乳首と比較して乳房部3の径が大きくなされているので、乳房部3を咥える際に口唇を大きく開けなければならない。その結果、咥えづらくなり、本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
なお、乳房部3が上面視で偏心した形状、例えば、楕円形状を有している場合、乳房部3の平均直径r2は、径が最も小さい小径部分の径r2aと、径が最も大きい大径部分の径r2bとの平均値とする。すなわち、平均直径r2は、以下の式で求められる。
r2=(r2a+r2b)/2
本実施形態では、乳房部3の径を、小径部分の径r2aが65mm、大径部分の径r2bが70mmとしている。この場合、平均直径r2は、67.5mmである。
そして、上述したように、本実施形態の人工乳首1では、乳頭部2の平均直径をr1とし、乳房部3の平均直径をr2としたときに、r1/r2が、0.1以上0.2以下である。
これにより、乳幼児にとって哺乳瓶20中の飲料を飲みにくいものとなり、また、歯が生えて来た乳幼児が乳頭部2を噛み切ることも抑制される。
r1/r2は、0.1以上0.2以下であればよいが、0.12以上0.17以下であるのが好ましく、0.13以上0.16以下であるのがより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
本実施形態では、乳頭部2の平均直径r1が、10mmであり、乳房部3の平均直径r2が、67.5mmであり、r1/r2が、0.148である。
このような乳房部3は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.5mm以上4.0mm以下であり、かつ、剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.5mm以上12.0mm以下となるものである。これにより、乳幼児が口を大きく開けた状態を維持しやすい。また、乳幼児が吸っても変形しにくくなり、乳幼児が乳頭部2を噛みにくくすることができる。また、歯が生えて来た乳幼児が乳頭部2を噛み切ることも抑制される。
なお、上記剛体で乳房部3を押圧する方向は、剛体と乳房部3とが最初に接した点の接線を含む平面の法線に沿った方向である。具体的には、人工乳首1を硬質で平坦な支持板に載置して、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で乳房部3の全域を何度も万遍なく押圧した。その際、乳房部3の表面のカーブに合わせて支持板を傾斜させながら押圧した。
また、乳房部3は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.7mm以上2.0mm以下であり、かつ、剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.8mm以上10.0mm以下となるものであるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
取付部4は、人工乳首1の下端部(開口端部)において、例えば、所定厚さを有し、成形体の全周にわたってリング状に外方に突出したフランジ状に形成されている。
図3に示すように、本実施形態の人工乳首1は、取付部4においてキャップ10に取り付けられた状態で、キャップ10によって哺乳瓶20に取り付けられる。
なお、本実施形態の人工乳首1は、図3のように哺乳瓶20に取り付けられた状態で、図1および図3の左側を下向きとした状態で、乳幼児の口唇に咥えられる。
図2に示すように、キャップ10は、全体が硬質合成樹脂の成形品で、偏平な円筒体である。キャップ10の上部には、上側開口部11に隣接して内向きに形成されたフランジ部14が形成されており、上側開口部11は、下側開口部12よりも開口径が小さくなされている。
フランジ状の取付部4をキャップ10の上側開口部11にはめ込むことで、人工乳首1がキャップ10に取り付けられ、その状態で、キャップ10を哺乳瓶20の上端に取り付け組み立てられる。
哺乳瓶20は、ガラス、樹脂等の耐熱性材料からなる容器であり、その内部に、ミルク等の飲料が収容される。哺乳瓶20は特に限定されるものではなく、通常用いられている哺乳瓶を用いることができる。
キャップ10の内側面には第1のねじ山13(雌ねじ)が形成され、哺乳瓶20の開口端外側面には第2のねじ山(雄ねじ)(図示略)が形成されており、第1のねじ山13と第2のねじ山とを螺合させることにより、キャップ10は、哺乳瓶20に取り付けられ固定される。
なお、取付部4には、通気手段である、例えば、通気孔または通気弁(図示略)が形成されていてもよい。これにより、例えば、授乳に伴って哺乳瓶20内の圧力が低下した場合でも、この通気孔または通気弁によって、外気が人工乳首1の内部となる哺乳瓶20内に流入し、負圧の発生を防ぐことができる。
本実施形態の人工乳首1がキャップ10を介して哺乳瓶20に取り付けられた哺乳器では、人工乳首1の乳房部3が、従来のものに比べて径が大きいので、乳幼児は大きく口唇を開けて、乳房部3も含めて乳頭部2の全体を咥えるようになるほか、乳頭部2が、従来のものより硬いことで、吸っても変形しにくくなり、乳幼児にとっては哺乳瓶20中の飲料を飲みにくいものとなる。また、歯が生えて来た乳幼児が乳頭部2を噛み切ることも抑制される。
その結果、この哺乳器を所定期間継続して使用することで、乳幼児が哺乳瓶20の使用を好まなくなることが期待され、スムーズな哺乳瓶離れを補助することができると考えられる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例)
シリコーンゴムを用いて、図1に示したような人工乳首を作製した。
乳頭部の平均直径r1は、10mmであり、乳房部の平均直径r2は、67.5mmであった。そして、r1/r2は、0.148であった。
乳頭部の肉厚t1は、1mmとした。また、乳房部は、厚肉部と薄肉部とを有しており、薄肉部の肉厚t2aが、5mmであり、厚肉部の肉厚t2bが、15mm~25mmであった。
得られた人工乳首について、25℃、JIS K 6253(2012)に準拠して、タイプA デュロメータ硬さを測定した。
その結果、乳頭部のタイプA デュロメータ硬さは37であった。
(比較例A)
人工乳首Aを用意した。
この人工乳首Aでは、乳頭部の平均直径r1が10mmであり、乳房部は円形ドーム形状であり、その平均直径r2は42mmであった。この場合、r1/r2は、0.238であった。また、乳頭部2のデュロメータ硬さは33であった。
また、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.4mmであり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が1.9mm以下であった。
(比較例B)
人工乳首Bを用意した。
この人工乳首Bでは、乳頭部の平均直径r1が10mmであり、乳房部は円形ドーム形状であり、その平均直径r2は42mmであった。この場合、r1/r2は、0.238であった。また、乳頭部2のデュロメータ硬さは45であった。
また、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が2.0mmであり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が6.0mm以下であった。
(比較例C)
人工乳首Cを用意した。
この人工乳首Cでは、乳頭部の平均直径r1が15mmであり、乳房部は円形ドーム形状であり、その平均直径r2は42mmであった。この場合、r1/r2は、0.238であった。また、乳頭部2のデュロメータ硬さは36であった。
また、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が2.0mmであり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が6.0mm以下であった。
以上のようにして用意した実施例および比較例A~Cの人工乳首A~Cを、それぞれキャップを介して哺乳瓶に取り付けた。哺乳瓶には飲料が入れられ、通常の哺乳器と同様に使用した。
被験者として、1歳5か月~1歳7か月の乳幼児を20名をAグループ、Bグループ、CグループおよびDグループとにランダムに5名ずつ振り分けた。
Aグループの乳幼児に対しては、実施例の人工乳首を、Bグループの乳幼児に対しては比較例Aの人工乳首Aを、Cグループの乳幼児に対しては比較例Bの人工乳首Bを、Dグループの乳幼児に対しては比較例Cの人工乳首Cを、それぞれ保護者に依頼して7日間にわたって継続して使用してもらい、哺乳時の様子を観察した。
実施例の人工乳首を用いたAグループでは、乳幼児が授乳中に大きく口を開けて飲んでいた。また、乳頭部が噛み切られることもなかった。このため、実施例の人工乳首を数日間使用することにより、直母乳への移行がスムーズであった。これは、乳房部が、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.5mm以上4.0mm以下であり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.5mm以上12.0mm以下となるものであり(特徴1)、乳頭部の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下であり(特徴2)、乳頭部の平均直径r1が、8.0mm以上12.0mm以下(特徴3)であるからである。
これに対し、比較例Aの人工乳首Aを用いたBグループでは、特徴1を有していないため、乳幼児が授乳中に大きく口を開けずに飲んでいた。また、乳頭部が噛み切られることもあった。したがって、比較例Aの人工乳首Aを数日間用いると、直母乳への移行がスムーズにいかなかった。
また、比較例Bの人工乳首Bを用いたCグループでは、特徴2を有していないため、乳幼児が授乳中に大きく口を開けずに飲んでいた。また、乳頭部が噛み切られることもあった。したがって、比較例Bの人工乳首Bを数日間用いると、直母乳への移行がスムーズにいかなかった。
また、比較例Cの人工乳首Cを用いたDグループでは、特徴3を有していないため、乳幼児が授乳中に大きく口を開けずに飲んでいた。また、乳頭部が噛み切られることもあった。したがって、比較例Cの人工乳首Cを数日間用いると、直母乳への移行がスムーズにいかなかった。
以上のことから、本発明の人工乳首1を使用することにより、授乳の際に乳頭部2を噛むのを抑制しつつ、授乳の際に口を大きく開けるよう訓練を行うことができる。その結果、人工乳首1を使用することにより、直母乳による授乳に移行させやすくすることができる。
以上の結果から、本発明の人工乳首は、所定期間継続して使用することで、乳幼児のスムーズな哺乳瓶離れを補助する効果が得られることが確認された。
また、乳房部を直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.7mm以上2.0mm以下であり、かつ、剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.8mm以上10.0mm以下の範囲となるように種々変更した以外は、上記実施例と同様にして評価を行ったところ、上記と同様に優れた結果が得られた。
また、乳頭部の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、28以上39以下の範囲となるように種々変更した以外は、上記実施例と同様にして評価を行ったところ、上記と同様に優れた結果が得られた。
また、乳頭部の平均直径r1が、9.0mm以上11.0mm以下の範囲となるように種々変更した以外は、上記実施例と同様にして評価を行ったところ、上記と同様に優れた結果が得られた。
なお、乳頭部の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が35以上40以下であると、より長期間(例えば、14日間)にわたって、乳頭部を過剰に噛むことがなかった。
本発明による人工乳首を哺乳瓶に取り付けて用いることで、乳幼児のスムーズな哺乳瓶離れを補助する人工乳首として広く利用することができる。
1…人工乳首
2…乳頭部
3…乳房部
3a…薄肉部
3b…厚肉部
4…取付部
5…薄肉部(貫通孔)
6…中空部
7…マーク
10…キャップ
11…上側開口部
12…下側開口部
13…第1のねじ山
14…フランジ部
20…哺乳瓶
t1…乳頭部の肉厚
t2a…乳房部の薄肉部の肉厚
t2b…乳房部の厚肉部の肉厚
h1…乳房部の高さ
h2…全体の高さ
r1…乳頭部の平均直径
r2…乳房部の平均直径
r2a…乳房部の小径部分の直径
r2b…乳房部の大径部分の直径
r3…中空部の直径

Claims (6)

  1. 乳頭部を有し、哺乳瓶に取り付けて用いられる中空の人工乳首であって、
    ドーム形状に形成された乳房部、前記乳房部の頂部から突起状に形成された前記乳頭部、および、前記乳房部の開口端部に配され該人工乳首を哺乳瓶に取付けるためのフランジ状の取付部、を有し、
    前記乳房部は、直径5mmの球状の剛体を用いて10Nの力で押圧した際の凹没量が0.5mm以上4.0mm以下であり、かつ、前記剛体を用いて49Nの力で押圧した際の凹没量が2.5mm以上12.0mm以下となるものであり、
    前記乳頭部の、JIS K 6253(2012)で規定される硬さ(タイプA デュロメータ硬さ)が、25以上40以下であり、
    前記乳頭部の平均直径r1が、8.0mm以上12.0mm以下であることを特徴とする人工乳首。
  2. 前記乳房部は、偏心した形状を有している請求項1に記載の人工乳首。
  3. 前記乳房部が、前記乳頭部に連続して配され、肉厚の薄い薄肉部と、前記薄肉部に連続して配され、肉厚が前記薄肉部よりも厚い厚肉部と、を有している請求項1または2に記載の人工乳首。
  4. 前記乳房部の平均直径r2が、50mm以上75mm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の人工乳首。
  5. 前記乳頭部の肉厚が、0.5mm以上3mm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の人工乳首。
  6. 前記乳房部の肉厚が、前記薄肉部では、1mm以上10mm以下であり、前記厚肉部では、10mm以上30mm以下である請求項3~5のいずれか1項に記載の人工乳首。
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