JP2022154706A - 回転電機制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】回転電機の電流フィードバック制御において適切に当該回転電機に生じる振動及び振動によるノイズを抑制する。【解決手段】回転電機制御システムは、回転電機の目標トルクに基づいて基本電流指令を設定する基本電流指令設定部と、基本電流指令に重畳される補正電流指令を設定する補正電流指令設定部とを備え、補正電流指令は、低減対象のトルクリップルに応じた周波数であって互いに異なる周波数の交流電流である第1補正電流指令と第2補正電流指令とを含み、補正対象領域Hとして、第1補正電流指令が設定される第1領域H6と第2補正電流指令が設定される第2領域H12とが設定され、第1領域H6と第2領域H12とは、一部が重複して設定されている。【選択図】図7

Description

本発明は、永久磁石型の回転電機を制御対象として、dq軸直交ベクトル座標系において電流フィードバック制御を行う回転電機制御システムに関する。
交流で駆動される永久磁石型の回転電機においては、周方向加振力(周方向のトルク変動であるトルクリップル)や径方向加振力(永久磁石とステータとの間で生じる吸引力及び反発力による力)により振動を生じる場合がある。この振動は、例えば可聴音の発生源となる場合があるため、回転電機の振動を軽減することが重要である。3相交流型の回転電機の場合、電気角の6次高調波に起因する周方向加振力や径方向加振力の影響が大きいことが知られている。特開2017-118726号公報には、永久磁石の磁界の方向であるd軸と、d軸に直交するq軸とのベクトル座標系において回転電機に流れる電流をフィードバック制御するシステムにおいて、そのような6次の周方向加振力や径方向加振力を低減する技術が開示されている。これによれば、径方向加振力を抑制する補正値によりd軸q軸の一方の電流指令を補正すると共に、周方向加振力を補正する補正値によりd軸q軸の電流指令を補正する([0088]~[0091]、[0098]、[0105]等)。
特開2017-118726公報
上記の文献では、3相交流型の回転電機の場合に、加振力への影響が大きい電気角の6次高調波に着目して加振力を低減させている。但し、加振力を生じさせる周波数は、6次高調波だけではない。従って、加振力をさらに低減させてノイズの発生を抑制する上では、まだ、改善の余地がある。また、上記のような補正用の電流指令により、加振力が低減される回転電機の動作領域が回転電機のトルクと回転速度とによって規定されるような場合には、低減対象の周波数によって加振力の低減効果が異なる可能性もある。
上記に鑑みて、回転電機の電流フィードバック制御において適切に当該回転電機に生じる振動及び振動によるノイズを抑制する技術の提供が望まれる。
上記に鑑みた回転電機制御システムは、N相交流(Nは任意の自然数)で駆動される永久磁石型の回転電機を制御対象として、永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸と前記d軸に直交するq軸との直交ベクトル座標系において電流フィードバック制御を行う回転電機制御システムであって、前記回転電機に流す電流の指令値である電流指令としての基本電流指令を、前記回転電機の目標トルクに基づいて設定する基本電流指令設定部と、前記回転電機のトルクリップルを低減するために前記基本電流指令に重畳される補正電流指令を設定する補正電流指令設定部と、を備え、前記補正電流指令は、低減対象の前記トルクリップルに応じた周波数であって、互いに異なる周波数の交流電流の指令である第1補正電流指令と第2補正電流指令とを含み、前記目標トルクと前記回転電機の回転速度とに応じて前記補正電流指令が設定される補正対象領域として、第1領域と第2領域とが設定され、前記補正電流指令設定部は、前記第1領域において前記補正電流指令として前記第1補正電流指令を設定し、前記第2領域において前記補正電流指令として前記第2補正電流指令を設定し、前記第1領域と前記第2領域とは、一部が重複して設定されている。
トルクリップルに起因する振動の周波数は、回転電機の回転速度に応じて異なる。従って、トルクリップルに起因する振動が、人間にとって耳障りな可聴音の原因となるか否かは、回転電機の回転速度に関係する。また、トルクが小さい場合にはトルクリップルも小さくなって可聴音のノイズも小さくなり、トルクが大きい場合にはトルクリップルによる可聴音のノイズが大きくなる。従って、目標トルクと回転電機の回転速度とに応じて設定された補正対象領域において補正電流指令を適切に設定することによって、回転電機に生じる振動及び振動によるノイズを抑制することができる。ここで、第1補正電流指令と第2補正電流指令とは、互いに異なる周波数の交流電流の指令であるから、それぞれの補正電流指令が設定される第1領域と第2領域とが設定されることにより、第1補正電流指令及び第2補正電流指令によって効果的に回転電機に生じる振動及び振動によるノイズを抑制することができる。さらに、第1領域と第2領域とが重複している領域では第1補正電流指令と第2補正電流指令との双方が設定されるため、複数の周波数成分の振動を抑制することが好ましい領域では、適切に当該振動を低減させることができる。一方、第1領域における第2領域と重複していない領域では第1補正電流指令のみが設定され、第2領域における第1領域と重複していない領域では第2補正電流指令のみが設定される。つまり、振動の抑制が必要ないにも拘わらず不要な補正電流が流れることによって生じる損失等の増加を抑制しつつ、抑制な必要な振動については適切に低減させることができる。即ち、本構成によれば、回転電機の電流フィードバック制御において適切に当該回転電機に生じる振動及び振動によるノイズを抑制することができる。
回転電機制御システムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
回転電機駆動装置の構成を模式的に示すブロック図 回転電機駆動装置の中核となる回転電機制御装置の構成を模式的に示すブロック図 回転電機制御装置における電流制御部の周辺の模式的な制御ブロック図 回転電機の実トルクの一例を示す波形図 高調波のリップル成分と逆位相のリップル低減トルクの一例を示す波形図 dq軸直交座標系におけるトルクと電流指令との関係を示す図 トルク及び回転速度に基づく回転電機の動作領域における補正領域を示す図 6次高調波に起因するノイズの音圧とトルクリップルの低減効果を示すグラフ 12次高調波に起因するノイズの音圧とトルクリップルの低減効果を示すグラフ 電流制御部における周波数とゲインとの関係を示す特性図 トルク指令と出力トルクとの関係の一例を示す波形図 電流制御部における周波数とゲインとの関係を示す特性図 電流制御部における周波数とゲインとの関係を示す特性図
以下、回転電機制御システムの実施形態を図面に基づいて説明する。回転電機制御システムは、例えば、車両の駆動力源となる回転電機を制御対象として、電流フィードバック制御を行う。図1のブロック図は、回転電機制御装置10(MG-CTRL)を含む回転電機駆動装置100のシステム構成を模式的に示している。また、図2のブロック図は、回転電機駆動装置100の中核となる回転電機制御装置10のシステム構成を模式的に示している。また、図3の制御ブロック図は、回転電機制御装置10における電流制御部2の周辺の模式的な構成を示している。尚、広義には回転電機駆動装置100が回転電機制御システムに相当し、狭義には回転電機制御装置10が回転電機制御システムに相当する。
回転電機制御システムによる駆動対象の回転電機80は、ステータコア85にN相(Nは任意の自然数)のステータコイル83が配置されたステータ81と、ロータコア86に永久磁石84が配置されたロータ82とを有する埋め込み永久磁石型回転電機(IPMSM : Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。図1には、8つの磁極(4つのN極及び4つのS極)を備えた8極(4極対)のロータ82を例示しているが、これは模式的なものであって発明を限定するものではない。ステータ81についても同様であり、図1は3相のステータコイル83が中性点で短絡された形態を例示しているが、相数や結線の方法、また、ステータコイル83の巻き方等は発明を限定するものではない。尚、回転電機80は、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機80が電動機と機能するとき、回転電機80は力行状態であり、回転電機80が発電機として機能するとき、回転電機80は回生状態である。
図1に示すように、回転電機駆動装置100は、電圧型のインバータ50を備えている。インバータ50は、交流の回転電機80及び直流電源41に接続されて、複数相の交流と直流との間で電力を変換する。直流電源41は、例えば、リチウムイオン電池などの充電可能な二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。回転電機80が、車両の駆動力源の場合、直流電源41は、大電圧大容量の直流電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。インバータ50の直流側には、正極と負極との間の電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑化する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ42)が備えられている。
インバータ50は、複数のスイッチング素子51を有して構成される。スイッチング素子51には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。図1には、スイッチング素子51としてIGBTが用いられる形態を例示している。尚、各スイッチング素子51には、負極から正極へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、並列にフリーホイールダイオード53が備えられている。
図1に示すように、インバータ50は、回転電機制御装置10により制御される。回転電機制御装置10は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。例えば、回転電機制御装置10は、上位の制御装置の1つである車両制御装置90(VHL-CTRL)等の他の制御装置等から要求信号として提供される回転電機80の目標トルク(トルク指令T:図2等参照)に基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ50を介して回転電機80を駆動する。ベクトル制御法では、交流モータの3相(N相)各相のステータコイル83に流れる電流(Iu,Iv,Iw:図2参照)を、ロータ82に配置された永久磁石84が発生する磁界の方向であるd軸と、d軸に直交する方向(磁界の向きに対して電気角でπ/2進んだ方向)のq軸とのベクトル成分に座標変換してフィードバック制御を行う。座標変換先の座標系をdq軸直交座標系と称する。
回転電機80の各相のステータコイル83を流れる実電流は電流センサ43により検出され、回転電機制御装置10はその検出結果を取得する。尚、ここでは3相の交流電流を検出する形態を例示しているが、例えば3相交流の場合には3相は平衡しており、その瞬時値の和はゼロであるから2相のみの電流を検出して残りの1相は回転電機制御装置10が演算によって取得してもよい。また、回転電機80のロータ82の各時点での磁極位置θ(電気角)やロータ82の回転速度(角速度ω)は、例えばレゾルバなどの回転センサ44により検出され、回転電機制御装置10はその検出結果を取得する。回転電機制御装置10は、電流センサ43及び回転センサ44の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。
図2に示すように、回転電機制御装置10は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。本実施形態では、回転電機制御装置10は、トルク制御部(MTPA: Maximum Torque per Ampere Control)1と、電流制御部(Current Control)2と、2相3相座標変換部3と、3相2相座標変換部4と、変調部5(PWM)と、補正電流指令設定部6(高調波マップ(Harmonic MAP))とを備えている。
トルク制御部1は、車両制御装置90から伝達されるトルク指令T(目標トルク)に基づいて、回転電機80のステータコイル83に流す目標電流(基本電流指令Idq)を設定する。即ち、トルク制御部1は、基本電流指令設定部に相当する。上述したように、回転電機制御装置10は、dq軸直交ベクトル座標系において回転電機80をフィードバック制御するので、トルク制御部1は、基本電流指令Idqとして、d軸基本電流指令Id及びq軸基本電流指令Iqを演算する。後述するように、本実施形態では、基本電流指令Idqに補正電流指令Idqhが重畳された補正後電流指令Idq**が後段の制御対象となる。即ち、補正後電流指令Idq**は、電流制御部2の制御対象の対象電流指令に相当する。
電流制御部2は、補正後電流指令Idq**とステータコイル83を流れる実電流(d軸電流Id、q軸電流Iq)との偏差に基づいて、インバータ50に印加する電圧の指令である電圧指令Vdqを演算する。電流センサ43(SEN-I)により検出されるのは、ステータコイル83を流れる3相の実電流(U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iw)である。3相の実電流は、3相2相座標変換部4においてdq軸ベクトル座標系の2相の電流(d軸電流Id、q軸電流Iq)に変換される。3相2相座標変換部4は、回転センサ44(SEN-R)により検出されたロータ82の各時点での磁極位置θ(電気角)に基づいて、座標変換を行う。
電流制御部2は、d軸の電流指令(ここでは補正後d軸電流指令Id**)とd軸電流Idとの偏差及び回転速度(角速度ω)に基づいてd軸電圧指令Vdを演算すると共に、q軸の電流指令(ここでは補正後q軸電流指令Iq**)とq軸電流Iqとの偏差及び回転速度(角速度ω)に基づいてq軸電圧指令Vqを演算する。尚、図3を参照して後述するように、本実施形態では、電流制御部2が比例積分制御器(PI)を備えて構成されている形態を例示しているが、電流制御部2は、比例積分微分制御器(PID)を備えて構成されていてもよい。
2相3相座標変換部3は、dq軸ベクトル座標系の2相の電圧指令Vdq(d軸電圧指令Vd、q軸電圧指令Vq)を3相のインバータ50に対応した3相の電圧指令(U相電圧指令Vu、V相電圧指令Vv、W相電圧指令Vw)に座標変換する。変調部5は、3相の電圧指令(U相電圧指令Vu、V相電圧指令Vv、W相電圧指令Vw)のそれぞれに基づいて、インバータ50の3相のスイッチング制御信号(U相スイッチング制御信号Su、V相スイッチング制御信号Sv、W相スイッチング制御信号Sw)を生成する。ここでは、変調部5がパルス幅変調(PWM : Pulse Width Modulation)によりスイッチング制御信号を生成する形態を例示している。尚、図2においては、3つのスイッチング制御信号(Su,Sv,Sw)に簡略化しているが、変調部5は、インバータ50の6つのスイッチング素子51に対応して、6つのスイッチング制御信号(U相上段側スイッチング制御信号、U相下段側スイッチング制御信号、・・・)を生成する。
図1及び図2に示すように、インバータ50を構成する各スイッチング素子51の制御端子(例えばIGBTのゲート端子)は、ドライブ回路15(DRV-CCT)を介して回転電機制御装置10に接続されており、各スイッチング素子51はそれぞれ個別にスイッチング制御される。上述したように、スイッチング制御信号を生成する回転電機制御装置10は、マイクロコンピュータなどを中核として構成され、その動作電圧は、例えば5[V]や3.3[V]である。一方、インバータ50は、上述したように定格の電源電圧が例えば200~400[V]の直流電源41に接続されており、スイッチング素子51の制御端子には、例えば15~20[V]の駆動信号を入力する必要がある。ドライブ回路15は、回転電機制御装置10が生成したスイッチング制御信号の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて、インバータ50に中継する。
ところで、埋め込み永久磁石型の回転電機80は、ロータ82が回転する際に磁束鎖交数が変化することによって、トルクリップルが発生する。即ち、図1に示す周方向Cにおいて加振力(トルクリップル)が生じる。また、ステータコア85と永久磁石84との間の吸引力及び反発力により、図1に示す径方向Rにおいてもトルクに変動が発生する。この径方向Rの加振力は、径方向加振力である。これらの加振力によりロータ82が振動すると、可聴音を発生させる場合がある。この可聴音はユーザーにとって耳障りな場合があるため、これらの加振力が軽減されることが好ましい。可聴音に関しては、周方向加振力であるトルクリップルの寄与が大きく、本実施形態では、トルクリップルを打ち消すようなトルクを発生させることによってトルクリプルを低減させている。上述した補正後電流指令Idq**は、トルクリップルを打ち消すためのトルクを発生させる補正電流指令Idqhが、基本電流指令Idqに重畳された指令である。
図2に示すように、本実施形態の回転電機制御装置10は、回転電機80のトルクリップルを低減するために基本電流指令Idqに重畳される補正電流指令Idqhを設定する補正電流指令設定部6を備える。補正電流指令設定部6は、トルク指令T及び磁極位置θを引数とするマップ(高調波マップ(Harmonic MAP))を備えて構成されている。
上述したように、d軸補正電流指令Idh及びq軸補正電流指令Iqhは、トルク制御部1が設定したd軸基本電流指令Id及びq軸基本電流指令Iqにそれぞれ重畳される。電流制御部2は、補正後d軸電流指令Id**とd軸電流Idとの偏差及び回転速度(角速度ω)に基づいてd軸電圧指令Vdを演算すると共に、補正後q軸電流指令Iq**とq軸電流Iqとの偏差及び回転速度(角速度ω)に基づいてq軸電圧指令Vqを演算する。これにより、回転電機80は、トルクリップルが低減されたトルクを出力することができる。
加振力を低減するための補正トルクは、図4に示すような回転電機80の実トルクTから抽出される高調波トルク成分(トルクリップル)の内、周方向加振力の(2NM)次高調波トルク成分(Mは任意の自然数)の逆位相のトルクである。本実施形態では、交流の相数を示すNは3であるから、例えば“M=1”とした場合は、実トルクTから抽出される高調波トルク成分の内、6次高調波トルク成分の逆位相のトルクが補正トルクとなる。図5の実線の波形は、図4に示す実トルクTから抽出された(2NM)次高調波トルク成分(トルクリップル)を表しており、一点鎖線の波形は、(2NM)次高調波トルク成分の逆位相の補正トルクを示している。
補正電流指令Idqhの位相は、補正トルクの位相がトルクリップルの位相と180度異なるように設定されている。また、図5に示す例では、トルクリップルの振幅と、補正トルクの振幅とが同等である。このように、トルクリップルの位相と補正トルクの位相とが180度異なり、振幅が同等であると、補正トルクとトルクリップルとが相殺されて、ほぼ全てのトルクリップルが低減される。
ここで、図5に示すように、補正トルクの大きい側のピーク値を第1トルクT1とし、補正トルクの小さい側のピーク値を第2トルクT2とし、補正トルクの平均値を平均補正トルクTavとする。平均補正トルクTavは、補正トルクや回転電機80の実トルクTの直流成分に対応する。トルク指令Tに基づく電流フィードバック制御が適切に実行されている場合には、補正トルクに影響されることなく、回転電機80の出力トルクはトルク指令T(目標トルク)にほぼ等しい値となる。
ところで、上述したように、基本電流指令Idqは直流電流であるが、補正電流指令Idqhは交流電流である。従って、補正後電流指令Idq**は、直流成分と交流成分とを有する。一般的な電流制御部2は比例積分制御器(PI)を備えて構成されているが、比例積分制御器は高い周波数に対する応答性に限界がある。つまり、補正電流指令Idqhに相当する交流成分に関して電流制御が十分に追従しない可能性がある。このため、本実施形態では、電流制御部2が、基本電流指令Idqに相当する直流成分に対する電流制御を行う第1電流制御部20と、補正電流指令Idqhに相当する交流成分に対する電流制御を行う第2電流制御部21とを備えている。第1電流制御部20は、一般的な電流制御部と同様に、比例積分制御器(PI)により構成されている。
第2電流制御部21は、補正電流指令Idqhに相当する交流成分を直流成分に座標変換して、比例積分制御を行い、直流成分を交流成分に逆座標変換することによって、補正電流指令Idqhに対して電流制御を行う。図3に示すように、第2電流制御部21は、dq軸直交ベクトル座標系からγδ軸直交座標系へ補正電流指令Idqhに相当する交流成分を座標変換し、ローパスフィルタを介した後、比例積分制御を行い、γδ軸直交座標系からdq軸直交ベクトル座標系へ逆座標変換することによって、補正電流指令Idqhに対して電流制御を行う。第2電流制御部21は、補正電流指令Idqhに対してdq軸電流Idqの位相が進んでいる場合と、遅れている場合とのそれぞれに対応するように、2系統(22~25のパス、26~29のパス)備えられている。それぞれ、符号“22”、“26”は座標変換部、“23”、“27”はローパスフィルタ(LPF)、“24”、“28”は比例積分制御器(PI)、“25”、“29”は逆座標変換部である。
図6は、dq軸直交座標系におけるトルクと基本電流指令Idqとの関係を示している。図6において符号“30”で示す曲線は、dq軸直交ベクトル座標系において一定のトルクを出力可能なd軸電流とq軸電流との組み合わせ(dq直交ベクトル座標系における電流のベクトル軌跡)を表す等トルクラインである。符号“31”は上述した第1トルクT1の等トルクライン30である第1等トルクラインであり、符号“32”は第2トルクT2の等トルクライン30である第2等トルクラインである。また、符号“33”は上述した回転電機80の目標トルク(トルク指令T)に相当する基準トルクT0の等トルクライン30である基準等トルクラインである。
符号“60”は、回転電機80を標準的な条件で制御する際(以下この制御を“基本制御”と称する)のd軸電流とq軸電流との組み合わせ(dq直交ベクトル座標系における電流のベクトル軌跡)を示す基本制御ラインである。一般的に、基本制御ライン60は、dq軸直交ベクトル座標系において任意のトルクを出力するために最適なd軸電流とq軸電流との組み合わせを示すベクトル軌跡である。一例として、基本制御ライン60は、最も高い効率で各トルクを出力可能なd軸電流とq軸電流との組み合わせのベクトル軌跡を示す最大トルクラインや最大効率ラインとすることができる。トルク制御部1は、このようなベクトル軌跡を示す基本電流指令Idqを設定する機能部ということができる。
例えば、トルクリップルの低減を考慮しない場合、つまり、単純にトルク指令Tに応じてd軸基本電流指令Id及びq軸基本電流指令Iqを設定する場合には、図6に示す基準点P0における電流値が設定される。この基準点P0は、dq軸直交ベクトル座標系において、基本制御ライン60とトルク指令T(目標トルク)に対応した等トルクライン(この場合は基準等トルクライン33)との交点である。本実施形態においては、トルクリップルを低減するため、図5を参照して上述したように、補正トルクを出力可能な補正電流指令Idqhを、d軸基本電流指令Id及びq軸基本電流指令Iqに重畳させる。つまり、dq軸直交ベクトル座標系において直流成分であるd軸基本電流指令Id及びq軸基本電流指令Iq(トルク指令Tに応じた電流指令Idq)のそれぞれに対して、交流成分(ここでは(2NM)次高調波成分)によって構成されるd軸補正電流指令Idh及びq軸補正電流指令Iqhがそれぞれ重畳される。
例えば、補正トルクは、平均補正トルクTav(基準トルクT0)を経由して第1トルクT1と第2トルクT2との間で振動するトルクである。補正トルクを出力するためのd軸補正電流指令Idh及びq軸補正電流指令Iqhのdq軸直交ベクトル座標系におけるベクトル軌跡は、基準点P0を通って、例えば第1等トルクライン31と第2等トルクライン32とを結ぶ直線(線分)である。基準点P0を通るこの直線を以下、補正直線Kと称する。また、第1等トルクライン31と補正直線Kとの交点を第1交点P1、第2等トルクライン32と補正直線Kとの交点を第2交点P2と称する。
補正直線Kは、原理的には無限に設定することができる。図6には、3本の補正直線K(K11,K12,K13)を例示している。第1補正直線K11は、q軸に沿って電流を変化させてトルクを変化させた形態、第2補正直線K12は、d軸に沿って電流を変化させてトルクを変化させた形態、第3補正直線K13は、d軸及びq軸に対して傾斜した方向に沿って電流を変化させてトルクを変化させた形態を示している。
補正電流指令Idqhのベクトル軌跡が第1補正直線K11の場合、補正電流指令Idqhはq軸補正電流指令Iqhのみによって構成される。第1補正直線K11は、q軸と平行であるから、d軸補正電流指令Idhは一定値であり、その値は、トルク指令Tに応じたd軸基本電流指令Idの値(基準点P0におけるd軸電流の値)である。補正電流指令Idqhのベクトル軌跡が第2補正直線K12の場合、補正電流指令Idqhはd軸補正電流指令Idhのみによって構成される。第2補正直線K12は、d軸と平行であるから、q軸補正電流指令Iqhは一定値であり、その値は、基準点P0におけるq軸電流の値である。補正電流指令Idqhのベクトル軌跡が第3補正直線K13となる場合、補正電流指令Idqhはd軸補正電流指令Idh及びq軸補正電流指令Iqhの双方によって構成される。尚、補正直線Kを適切に設定することによって、周方向Cにおける加振力(トルクリップル)と、径方向Rの加振力とを低減させることができる。
補正電流指令Idqhは、複数の(2NM)次高調波トルク成分を低減対象として設定することができる。本実施形態のように、N相の交流が3相の交流であり、Mが1の場合には、6次高調波トルク成分となり、Mが2の場合には、12次高調波トルク成分となる。また、補正直線Kは、高調波トルク成分の次数に応じて異なるものであってもよい。例えば、6次高調波トルク成分と12次高調波トルク成分とを低減対象とする場合、6次高調波トルク成分に対する補正直線Kと、12次高調波成分に対する補正直線Kとが異なる補正直線Kであってもよい。本実施形態では、互いに異なる複数の高調波トルク成分が低減対象となる形態を例示する。ここで、異なる複数の高調波トルク成分とは、6次高調波トルク成分及び12次高調波トルク成分である。
また、補正電流指令Idqhの振幅及び位相は、回転電機80のトルク(トルク指令T)に応じて異なる。即ち、補正電流指令Idqhは、低減対象のトルクリップルに応じた周波数であって、回転電機80のトルク指令Tに応じて位相及び振幅が異なる交流電流である。そして、上述したように、互いに異なる複数の高調波トルク成分(6次高調波トルク成分及び12次高調波トルク成分)が低減対象となる形態を例示する。
ところで、補正トルクはトルクリップルによる振動が可聴音となることを抑制するために出力される。トルクリップルの周波数は、回転電機80の回転速度に応じて異なり、また、可聴音となる周波数は20[Hz]~20[kHz]程度であり、特に1[kHz]以下の周波数が人間にとって耳障りである。従って、本実施形態では、補正電流指令設定部6は、回転電機80の回転速度が予め規定された補正対象回転速度の場合に、補正電流指令Idqhを設定する。図7は、トルク及び回転速度に基づく回転電機80の動作領域における補正対象領域H(第1領域H6,第2領域H12)を示している。詳細は後述するが、補正対象領域Hは、補正電流指令Idqhが設定される上限の回転速度と下限の回転速度との間に設定されている。尚、ここでは、回転電機80が力行動作する場合(トルクが正)における補正対象領域Hを例示しているが、回転電機80が回生動作する場合(トルクが負)における補正対象領域Hも同様に設定することができる。
トルクリップルに起因する振動の周波数は、ロータ82の構造(極対数)、ロータ82の回転速度、トルクリップルの高調波の周波数に応じて、下記式(1)によって定まる。
本実施形態では、回転電機80のロータ82が4極対である。ここで、回転電機80の回転速度が1000[rpm]の場合、6次高調波に起因する振動の周波数は、下記式(2-1)に示すように400[Hz]となり、12次高調波に起因する振動の周波数は、下記式(3-1)に示すように800[Hz]となる。
振動周波数[Hz] = 回転速度[rpm]・(極対数/60[sec])・2MN ・・・(1)
400 [Hz] = 1000 [rpm] ・ (4 / 60 [sec])・6 ・・・(2-1)
800 [Hz] = 1000 [rpm] ・ (4 / 60 [sec])・12 ・・・(3-1)
また、回転電機80の回転速度が2500[rpm]の場合、6次高調波に起因する振動の周波数は、下記式(2-2)に示すように1000[Hz]となり、12次高調波に起因する振動の周波数は、下記式(3-2)に示すように2000[Hz]となる。
1000 [Hz] = 2500 [rpm] ・ (4 / 60 [sec])・6 ・・・(2-2)
2000 [Hz] = 2500 [rpm] ・ (4 / 60 [sec])・12 ・・・(3-2)
上述したように、補正トルクはトルクリップルによる振動が可聴音となることを抑制するために出力される。そして、可聴音となる周波数は20[Hz]~20[kHz]程度であり、特に1[kHz]以下の周波数が人間にとって耳障りである。式(2-1)、式(3-1)に示すように、回転電機80の回転速度が1000[rpm]の場合には、6次高調波に起因する振動の周波数も、12次高調波に起因する振動の周波数も、1[kHz]以下である。一方、式(2-2)、式(3-2)に示すように、回転電機80の回転速度が2500[rpm]の場合には、6次高調波に起因する振動の周波数が1[kHz]であるのに対して、12次高調波に起因する振動の周波数は1[kHz]を越えている。即ち、回転電機80の回転速度が同じであっても、6次高調波に起因する可聴音に比べて、12次高調波に起因する可聴音の方が人間にとって耳障りではなくなる場合がある。
また、トルクが小さい場合にはトルクリップルも小さくなって可聴音のノイズも小さくなる。トルクが大きい場合にはトルクリップルも大きくなるが、当該トルクリップルを抑制するための補正電流の振幅も大きくなり、損失が増大する。従って、補正電流指令設定部6は、回転電機80のトルク(トルク指令T)が予め規定された補正対象トルクの場合に、補正電流指令Idqhを設定する。即ち、補正対象領域Hは、補正電流指令Idqhが設定される上限のトルクと下限のトルクとの間に設定されている(図7参照、詳細は後述する)。
上述したように、本実施形態では、互いに異なる複数の高調波トルク成分が低減対象となる。従って、補正電流指令Idqhは、低減対象のトルクリップルに応じた周波数であって、互いに異なる周波数の交流電流の指令である第1補正電流指令と第2補正電流指令とを含む。そして、図7に示すように、トルク指令T(目標トルク)と回転電機の回転速度とに応じて補正電流指令Idqhが設定される補正対象領域Hとして、第1領域H6と第2領域H12とが設定されている。補正電流指令設定部6は、第1領域H6において補正電流指令Idqhとして第1補正電流指令を設定し、第2領域H12において補正電流指令Idqhとして前記第2補正電流指令を設定する。図7に示すように、第1領域H6と第2領域H12とは、一部が重複して設定されている。
トルクリップルに起因する振動の周波数は、ロータ82の回転速度に応じて異なる。従って、トルクリップルに起因する振動が、人間にとって耳障りな可聴音の原因となるか否かは、回転電機80の回転速度に関係する。また、トルクが小さい場合にはトルクリップルも小さくなって可聴音のノイズも小さくなり、トルクが大きい場合にはトルクリップルによる可聴音のノイズが大きくなる。従って、トルク指令T(目標トルク)と回転電機80の回転速度とに応じて設定された補正対象領域Hにおいて補正電流指令Idqhが設定されることによって、不要な補正電流が流れることによる損失等の増加を抑制しつつ、回転電機80に生じる振動及び振動によるノイズを抑制することができる。
また、第1補正電流指令と第2補正電流指令とは、互いに異なる周波数の交流電流の指令であるから、それぞれの補正電流指令Idqhが設定される第1領域H6と第2領域H12とが設定されることにより、第1補正電流指令及び第2補正電流指令によって効果的に回転電機80に生じる振動及び振動によるノイズを抑制することができる。さらに、第1領域H6と第2領域H12とが重複している領域では第1補正電流指令と第2補正電流指令との双方が設定されるため、複数の周波数成分の振動を抑制することが好ましい領域では、適切に当該振動を低減させることができる。一方、第1領域H6における第2領域H12と重複していない領域では第1補正電流指令のみが設定され、第2領域H12における第1領域H6と重複していない領域では第2補正電流指令のみが設定される。つまり、振動の抑制が必要ないにも拘わらず不要な補正電流が流れることによって生じる損失等の増加を抑制しつつ、抑制な必要な振動については適切に低減させることができる。
尚、本実施形態では、補正電流指令Idqhの周波数は、Mを任意の自然数として、N相交流の基本周波数の(2NM)次高調波周波数であり、第1補正電流指令の周波数は、Mが1の場合の(2N)次高調波周波数であり、第2補正電流指令の周波数は、Mが2の場合の(4N)次高調波周波数である。ここで、本実施形態では、Nは3(3相交流)であるから、第1補正電流指令の周波数は、6次高調波周波数であり、第2補正電流指令の周波数は、12次高調波周波数である。
凸極性の永久磁石型の3相交流回転電機では、最も低次の6次高調波トルク成分がトルクリップルの主要な成分となることが知られている。従って、トルクリップルの主要な成分である6次高調波トルク成分を低減すべく、第1補正電流指令が設定されていると好適である。また、発明者らによる実験やシミュレーションによれば、トルクリップルには、6次高調波の他、12次高調波、18次高調波、24次高調波などの高調波トルク成分が含まれていることが判っている。回転電機80の振動を抑制する上では、これらの高調波トルク成分も低減させることが好ましい。発明者らによる実験やシミュレーションによれば、6次高調波の次に振動への影響の大きい高調波成分が12次高調波であることが判った。従って、第2補正電流指令を12次高調波周波数とすることによって、適切に振動を低減させることができる。
図7に示すように、第1補正電流指令が設定される第1領域H6と、第2補正電流指令が設定される第2領域H12とは、一部が重複するように設定されている。図7に例示する形態では、第1領域H6は、回転電機80の回転速度が第1下限回転速度R6L以上、第1上限回転速度R6H以下、且つ、トルク指令Tが第1下限トルクT6L以上、第1上限トルクT6H以下の範囲に設定されている。また第2領域H12は、回転電機80の回転速度が第2下限回転速度R12L以上、第2上限回転速度R12H以下、且つ、トルク指令Tが第2下限トルクT12L以上、第2上限トルクT12H以下の範囲に設定されている。そして、本実施形態では、第1上限回転速度R6Hは、第2上限回転速度R12Hよりも高い。また、第1下限トルクT6Lは、第2下限トルクT12Lよりも高い。更に図示の例では、第1下限回転速度R6Lは、第2下限回転速度R12Lよりも高い。また、第1上限トルクT6Hは、第2上限トルクT12Hよりも高い。
上述したように、補正トルクはトルクリップルによる振動が20[Hz]~20[kHz]の可聴音となることを抑制するために出力される。そして、特に1[kHz]以下の周波数が人間にとって耳障りである。上記の式(2-1)、式(3-1)に示すように、回転電機80の回転速度が1000[rpm]の場合には、6次高調波に起因する振動の周波数も、12次高調波に起因する振動の周波数も、1[kHz]以下である。一方、式(2-2)、式(3-2)に示すように、回転電機80の回転速度が2500[rpm]の場合には、6次高調波に起因する振動の周波数が1[kHz]であるのに対して、12次高調波に起因する振動の周波数は1[kHz]を越えている。即ち、6次高調波に起因する振動の周波数は、12次高調波に起因する振動の周波数に比べて、回転電機80の回転速度が高い場合に人間にとって耳障りになり易いと言える。このため、本実施形態では、図7に例示するように、第1上限回転速度R6Hは第2上限回転速度R12Hよりも高くされている。このように、少なくとも、第1領域H6の回転速度の上限(第1上限回転速度R6H)は、第2領域H12の回転速度の上限(第2上限回転速度R12H)よりも高く設定されると好適である。
ここで、下限の回転速度に関しては、トルクリップルによる振動が20[Hz]を超える回転速度に依存するになる。しかし、いわゆる聞こえ始める可聴音については、それほど問題とはならない。また、回転電機80の回転速度が遅い場合には、インバータ50のスイッチング周波数の低くなり、インバータ50の発熱や損失が比較的小さい。ここで、補正電流指令Idqhに基づく電流が流れると、インバータ50の発熱や損失が増加することになる。従って、回転速度が低い動作領域(回転速度がゼロに近い領域)は、補正対象領域Hに含めないことが好適である。即ち、第1領域H6の回転速度の下限と第2領域H12の回転速度の下限とは、ゼロよりも高い回転速度であるとよい。また、このような観点より、下限の回転速度に関しては、第1領域H6と第2領域H12とで同じであってもよい。例えば、第1領域H6の回転速度の下限(第1下限回転速度R6L)は、第2領域H12の回転速度の下限(第2下限回転速度R12L)以上に設定されると好適である。
また、上述したように、トルクが大きい場合にはトルクリップルも大きくなるが、当該トルクリップルを抑制するための補正電流の振幅も大きくなり、損失が増大する。従って、損失を増大させないという観点では、トルクが大きい領域では、補正電流指令Idqhが設定されないことが好ましい。このため、本実施形態では、図7に例示するように、第1領域H6は第1上限トルクT6H以下の領域に設定され、第2領域H12は第2上限トルクT12H以下の領域に設定されている。尚、これらの上限トルクは、補正電流による損失の増大を抑制するための制限でもあり、第1上限トルクT6Hと第2上限トルクT12Hとは、同じ値であってもよい。例えば、第1上限トルクT6Hは、第2上限トルクT12H以上に設定されると好適である。
また、上述したように、トルクが小さい場合にはトルクリップルも小さくなって可聴音のノイズも小さくなる。従って、第1領域H6及び第2領域H12は、トルクが小さい領域(ゼロに近い領域)には設定されず、それぞれ第1下限トルクT6L以上、第2下限トルクT12L以上の領域に設定されている。尚、図7に示すように、本実施形態では、第1領域H6のトルクの下限(第1下限トルクT6L)は、第2領域H12のトルクの下限(第2下限トルクT12L)よりも高い。
尚、本実施形態では、第1補正電流指令の振幅に比べて、第2補正電流指令の振幅の方が大きい場合がある。つまり、第1領域H6における補正電流に比べて、第2領域H12における補正電流の方が大きい場合がある。補正電流が小さい場合、ステータコイル83に流れる電流を検出する電流センサ43の精度との関係により、電流フィードバック制御が精度良く実行できない場合がある。このため、相対的に補正電流が大きい第2領域H12の方が第1領域H6に比べて低いトルクから補正対象となっている。つまり、図7に示すように、第1下限トルクT6Lは第2下限トルクT12Lよりも高い。上述したように、第1上限トルクT6Hと第2上限トルクT12Hとは、同じ値であってもよいので、少なくとも、第1領域H6のトルクの下限が第2領域H12のトルクの下限よりも高く設定されると好適である。
ところで、回転電機80の回転速度が上昇して、回転電機80の動作点が補正対象領域Hの境界の近傍にあるとき、当該動作点が補正対象領域Hへの入出を頻繁に繰り返す場合がある。このような場合には、電流フィードバック制御がうまく追従しない可能性がある。従って、第1領域H6の境界(外縁)、及び第2領域H12の境界(外縁)にヒステリシスが設定されていると好適である。ヒステリシスが設定されていることによって、電流フィードバック制御が収束しにくくなることが抑制される。
図8は、6次高調波に起因するノイズの音圧とトルクリップルの低減効果を示すグラフであり、図9は、12次高調波に起因するノイズの音圧とトルクリップルの低減効果を示すグラフである。図8に示すように、6次高調波に起因するトルクリップルは、特に回生時(トルクが負)において、補正電流を重畳させる対策により低減されている。その結果、力行時(トルクが正)及び回生時(トルクが負)の双方において、ノイズの音圧が低下している。ノイズの音圧は、例えば概ね90[dB]以下に抑制することが求められているが、補正電流を重畳する対策を行うことによって、目標が達成されていることが判る。また、12次高調波に起因するトルクリップルは、力行時及び回生時の双方において、補正電流を重畳させる対策により低減されている。その結果、力行時及び回生時の双方において、ノイズの音圧が低下し、90[dB]以下に抑制されている。
以上、回転電機80の動作領域における動作点が、補正対象領域Hに位置するか否かによって、補正電流指令Idqhを与えるか否かが決定される形態について説明した。しかし、さらにこの他の条件によって、補正電流指令Idqhを与えるか否かが決定されてもよい。
例えば、インバータ50が回転電機80の回転に同期したパルスによって駆動される同期制御で駆動される場合には、回転電機80の回転に同期しないキャリアと電圧指令との比較によってパルスを生成する場合とは電流フィードバック制御の形態が異なる。また、一般的に、そのような同期制御(矩形波制御や複数パルス制御(5パルス制御等))は、回転電機80の回転速度が高い領域で実行されることが多い。従って、回転電機80の制御方式が同期制御となる場合には、補正電流指令Idqhを与えるノイズ振動低減制御(NV低減制御)が実行されないと好適である。
また、低回転且つ高トルクの動作領域においては、非同期制御においてキャリアの周波数が低く変更される場合がある。このような場合には、補正電流を含む電流フィードバック制御の追従性が低下する可能性があるため、NV低減制御が実行されないと好適である。
また、回転電機80の回転速度が低い動作領域において、いわゆるコギングトルクを低減するために、トルクリップルとは逆相のトルクをトルク指令Tに与える制御が実行される場合がある。異なる方式によるトルクリップルの低減制御による制御の発散を抑制するため、また、上述したように低い回転速度では、上記の補正電流指令Idqhを与えるNV低減制御の必要性が低いため、このような場合にも、NV低減制御が実行されないと好適である。
また、回転電機80の回転速度が高く、逆起電力が高くなる動作領域では、界磁電流(d軸電流)を減少させて界磁を弱め、逆起電力を抑制する弱め界磁制御が実行されることがある。d軸電流を減少させる一方で補正電流を流すことによる弊害を抑制するため、このような弱め界磁制御が実行される動作領域においても、NV低減制御が実行されないと好適である。
また、各種センサ(電流センサ43、回転センサ44、電圧センサ等)が故障した場合などで、車両が退避走行を行う場合も、確実に退避走行を行うことを優先し、当該NV低減制御が実行されないと好適である。
ところで、図3を参照して上述したように、高調波成分である補正電流指令Idqhに対する電流制御の応答性を向上するために、電流制御部2は、第2電流制御部21を備えている。図10のグラフは、電流制御部2の周波数特性を示しており、縦軸はゲイン、横軸は周波数を示している。尚、図10は横軸が対数軸の片対数グラフである(図12及び図13も同様。)。図10において二点鎖線は、第1電流制御部20のみの周波数特性を示しており、実線は、第1電流制御部20及び第2電流制御部21を合わせた電流制御部2の全体の周波数特性を示している。また、図中における(6fe)は6次高調波の補正電流指令Idqhに対応する周波数を示し、(12fe)は12次高調波の補正電流指令Idqhに対応する周波数を示している。
上述したように、第2電流制御部21は、高調波成分を含む交流電流である補正電流指令Idqhに対する比例積分制御の応答性を改善するために備えられている。図10に示すように、第1電流制御部20のみの周波数特性では、6次高調波の補正電流指令Idqh、及び12次高調波の補正電流指令Idqhに対応する周波数におけるゲインが低く、補正電流指令Idqhに対する電流制御の応答性が十分ではないことが示されている。
これに対して、第1電流制御部20及び第2電流制御部21を合わせた電流制御部2の全体の周波数特性では、6次高調波の補正電流指令Idqh、及び12次高調波の補正電流指令Idqhに対応する周波数におけるゲインが低下しておらず、補正電流指令Idqhに対する電流制御が十分な応答性を有していることが示されている。但し、12次高調波の補正電流指令Idqhに対応する周波数よりもさらに高い周波数において、ゲインが大きく上昇している。例えば、図11に示すように、ステップ応答のようにトルク指令Tが急激に高くなった場合、基本電流指令Idqもステップ応答することになる。電流制御部2では、ステップ応答における立ち上がりに応じた高い周波数での制御が実行されるため、図10に示すように大きなゲインが生じる。その結果、図11に示すように、出力トルクにオーバーシュートを生じたり、その後に振動が発生したりする可能性がある。
そこで、本実施形態では、第2電流制御部21のゲインが、第1電流制御部20のゲインに比べて低く設定されている。図12及び図13は、第2電流制御部21のゲインが、第1電流制御部20のゲインに比べて“1/6”に設定されている場合の周波数特性を例示している。尚、図12に対して、図13の方が回転電機80の回転速度が高い場合の周波数特性を示している。補正電流指令Idqhに対応する周波数は、回転電機80の回転速度にも依存する(式(1)~(3)参照)。このため、6次高調波の補正電流指令Idqh、及び12次高調波の補正電流指令Idqhに対応する周波数も、図12に比べて、図13の方が高い周波数の側にシフトしている。
図12及び図13に示すように、第2電流制御部21が制御対象とする周波数においては、適切に応答し、他の周波数における過剰な応答が抑制される。従って、トルク指令T(目標トルク)が急激に変化したような場合でも、出力トルクがオーバーシュートしたり、その後に振動したりすることなく、適切に回転電機80を制御することができる。
このように、第2電流制御部21のゲインを第1電流制御部20に比べて低くした場合には、補正電流指令Idqhに対する電流制御の応答性が低下するので、収束時間が長くなる可能性がある。そこで、本実施形態では、さらに、回転電機80のトルクリップルを低減するためにフィードフォワード制御により電圧指令Vdqに重畳される補正電圧指令Vdqhを設定する補正電圧指令設定部7(Harmonic Voltage MAP)を備えている。補正電圧指令設定部7は、補正電流指令設定部6と同様に、マップにより構成されている。このマップは、実験やシミュレーションによって、補正電流指令Idqhを基本電流指令Idqに重畳して電流制御を実行させて収束した後の定常値に基づいて設定されている。
このようにフィードフォワード制御によって電圧指令Vdqに補正電圧指令Vdqhが重畳されることで、電流制御部2による制御の収束時間が短縮され、応答性が改善する。例えば、第1電流制御部20に比べて第2電流制御部21のゲインが低く設定されていても、補正トルクを生じさせるための補正電圧指令Vdqhを含む電圧指令Vdqを適切に演算することができる。
尚、補正電圧指令設定部7は、トルク指令T、回転電機80の回転速度及び磁極位置θに基づいて補正電圧指令Vdqhを設定する。トルクリップルは、回転電機80の出力トルク及び回転速度に応じて発生する。従って、補正電圧指令Vdqhは、トルクリップルを低減するための補正トルクを出力するための電圧指令であるから、トルク指令T及び回転電機80の回転速度に基づくことにより適切に設定される。
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記においては、第1補正電流指令が6次高調波周波数であり、第2補正電流指令が12次高調波トルク成分である形態を例示して説明した。しかし、第1補正電流指令及び第2補正電流指令は、6次及び12次以外の高調波周波数であってもよい。また、補正電流指令は、2つの高調波周波数のみに限らず、3つ以上の高調波周波数を含んでいてもよい。
(2)上記においては、電流制御部2が、第1電流制御部20と第2電流制御部21とを備えており、さらに、フィードバック制御を実行する電流制御部2に加えて、フィードフォワード制御を実行する補正電圧指令設定部7を備える形態を例示して説明した。しかし、電流制御部2が第1電流制御部20しか備えておらず、補正電圧指令設定部7も備えられていない形態を妨げるものではない。また、電流制御部2が、第2電流制御部21を備えていない形態において、補正電圧指令設定部7を備えていてもよいし、補正電圧指令設定部7を備えていない形態において電流制御部2が、第2電流制御部21を備えていてもよい。
(3)上記においては、フィードバック制御を実行する電流制御部2が、第1電流制御部20と第2電流制御部21とを備え、第2電流制御部21のゲインが第1電流制御部20のゲインよりも低く設定され、さらにフィードフォワード制御を実行する補正電圧指令設定部7を備える形態を例示した。しかし、制御の収束時間を満足することができる場合などでは、補正電圧指令設定部7を備えることなく回転電機制御装置10が構成されていてもよい。また、第2電流制御部21のゲインを第1電流制御部20のゲインよりも低く設定する構成には、第2電流制御部21のゲインをゼロとすることを含めてもよい。この場合、実質的に電流制御部2は、第1電流制御部20のみで構成されることになる。尚、この場合には、第1電流制御部20(電流制御部2)に加えて、補正電圧指令設定部7が備えられると好適である。
1:トルク制御部(基本電流指令設定部)、6:補正電流指令設定部、10:回転電機制御装置(回転電機制御システム)、80:回転電機、84:永久磁石、100:回転電機駆動装置(回転電機制御システム)、H:補正対象領域、H12:第2領域、H6:第1領域、Idq:基本電流指令、Idqh:補正電流指令、R12H:第2上限回転速度(第2領域の回転速度の上限)、R6H:第1上限回転速度(第1領域の回転速度の上限)、T:トルク指令(目標トルク)、T12L:第2下限トルク(第2領域のトルクの下限)、T6L:第1下限トルク(第1領域のトルクの下限)

Claims (5)

  1. N相交流(Nは任意の自然数)で駆動される永久磁石型の回転電機を制御対象として、永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸と前記d軸に直交するq軸との直交ベクトル座標系において電流フィードバック制御を行う回転電機制御システムであって、
    前記回転電機に流す電流の指令値である電流指令としての基本電流指令を、前記回転電機の目標トルクに基づいて設定する基本電流指令設定部と、
    前記回転電機のトルクリップルを低減するために前記基本電流指令に重畳される補正電流指令を設定する補正電流指令設定部と、を備え、
    前記補正電流指令は、低減対象の前記トルクリップルに応じた周波数であって、互いに異なる周波数の交流電流の指令である第1補正電流指令と第2補正電流指令とを含み、
    前記目標トルクと前記回転電機の回転速度とに応じて前記補正電流指令が設定される補正対象領域として、第1領域と第2領域とが設定され、
    前記補正電流指令設定部は、前記第1領域において前記補正電流指令として前記第1補正電流指令を設定し、前記第2領域において前記補正電流指令として前記第2補正電流指令を設定し、
    前記第1領域と前記第2領域とは、一部が重複して設定されている、回転電機制御システム。
  2. 前記補正電流指令の周波数は、Mを任意の自然数として、前記N相交流の基本周波数の(2NM)次高調波周波数であり、
    前記第1補正電流指令の周波数は、Mが1の場合の(2N)次高調波周波数であり、
    前記第2補正電流指令の周波数は、Mが2の場合の(4N)次高調波周波数である、請求項1に記載の回転電機制御システム。
  3. 前記第1補正電流指令の周波数は、前記第2補正電流指令の周波数よりも低く、
    前記第1領域の回転速度の上限は、前記第2領域の回転速度の上限よりも高く、
    前記第1領域のトルクの下限は、前記第2領域のトルクの下限よりも高い、請求項1又は2に記載の回転電機制御システム。
  4. 前記第1領域の外縁及び前記第2領域の外縁にヒステリシスが設定されている、請求項1から3の何れか一項に記載の回転電機制御システム。
  5. 前記第1領域の回転速度の下限と前記第2領域の回転速度の下限とは、ゼロよりも高い回転速度である、請求項1から4の何れか一項に記載の回転電機制御システム。
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