JP2022151339A - 地図処理装置、および、地図処理方法 - Google Patents

地図処理装置、および、地図処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】GNSSに基づいて算出した自車位置は、受信機周囲に存在する建物等の構造物環境とその日時での測位衛星の配置とによって、構造物のために測位電波が遮蔽、反射、回折などの影響を受け、検出される測位位置が偏って出力される。【解決手段】本発明の地図処理装置10は、自車の測位に用いられる地図情報を処理する地図処理装置であって、複数の測位衛星の位置情報を取得する衛星軌道情報取得部103と、複数の測位衛星からそれぞれ受信した測位電波に基づいて複数の測位衛星からの疑似距離を算出する疑似距離取得部102と、複数の測位衛星のうち、自車位置までの距離と疑似距離とが整合しない測位衛星を測位使用不可衛星として特定する測位使用衛星検証部104と、自車位置から測位使用不可衛星に向かう方向を、測位使用不可衛星の測位電波が遮蔽される遮蔽範囲として自車位置に対応付けて記憶した地図を生成する地図生成部106とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、衛星測位を行いながら走行する移動体が、周囲環境構造を観測してその情報を蓄積し、あるいは蓄積した情報を用いて、自己位置推定をおこなう際に用いられる地図処理装置および地図処理方法に関する。
従来、衛星測位を行いながら走行する移動体が自己位置推定を行う際、衛星測位と自律航法とを組み合わせ、衛星測位で得られた離散的な時刻での緯度経度高度を基準とし、測位されたタイミングからの相対的な移動量を自律航法を用いて求めることで、時々刻々と変化する自車位置を算出している。衛星測位は、複数の測位衛星からの測位電波の到達時間に基づき、受信局の緯度経度を算出するものである。例えば米国のGPSのほか、ロシアのGLONASS,欧州のGalileo、中国のBeidou、日本のQZSSなど、近年各国が測位衛星を打ち上げており、こうした多数の測位衛星を組み合わせて精度の高い衛星測位が可能になってきた。また、衛星測位と自律航法の結果を組み合わせる際に、例えばカルマンフィルタなどのフィルタ処理を用いて、突発的なノイズに起因する位置ずれを抑制する方策が採られている。
さらに、衛星測位をおこなう際に、市街地に存在する周辺構造物等により衛星電波が遮蔽され、自己位置推定の精度が低下する問題がある。この問題を改善する技術として、走行経路周辺の構造物の配置から衛星電波が遮蔽される領域を示す衛星遮蔽領域マップを算出し、この衛星遮蔽領域マップを用いて走行経路を制御することで、自己位置推定の精度を保ったまま、自車両の走行制御を行う技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、段落0015に「地図情報格納メモリ7は、道路地図情報が予め格納保持されている記憶手段」が接続されており、この道路地図情報には「周辺構造物(ビル、トンネル、高架等)22の情報も含まれている」ことが段落0023に記載されている。この道路地図情報を用いて、「推定された各GPS衛星の将来の軌道座標を用いて、自車両の現在位置から目的地までの走行経路(ルート)候補に対して、GPS衛星が周辺構造物に遮蔽される領域(衛星遮蔽領域)を表す衛星遮蔽領域マップを作成する」ことが開示されている。すなわち、特許文献1では、3D情報の記載された地図(3D地図)と走行経路を用いて、走行経路上の各地点において、各測位衛星の遮蔽状況を幾何学的に算出し、これを衛星遮蔽領域マップとしていることが開示されている。また、特許文献1では、衛星遮蔽領域マップに基づいて、測位衛星が遮蔽される領域を避けるように走行経路や停車位置を選択することが開示されている。
特開2009-42106号公報
しかしながら、上記従来技術においては、周辺構造物の情報が格納された3D地図に基づいて測位衛星の遮蔽有無を判定し、構造物による悪影響を避けることができる走行経路と停車位置を選択するのみであり、選択できる複数の走行経路候補がない場合には対応できず、また、衛星測位の精度を向上すること自体には貢献しない。
自動運転システムに用いられるGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)では、受信機周囲に存在する建物等の構造物環境と、その日時での測位衛星の配置とによって、検出される測位位置が偏って出力される。しかし、構造物環境が既知であり、構造物によって測位電波が遮蔽、反射、回折などの影響を受けることが分かっていれば、影響を受ける測位衛星からの衛星電波を除外して測位計算をおこなうことで、測位位置の誤差を低減することが可能である。
このような課題を鑑み、本発明では、測位電波が構造物によって影響を受ける状態を各地点で学習することで、測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の地図処理装置は、自車の測位に用いられる地図情報を処理する地図処理装置であって、複数の測位衛星の位置情報を取得する衛星軌道情報取得部と、前記複数の測位衛星からそれぞれ受信した測位電波に基づいて前記複数の測位衛星と自車位置との間の疑似距離を算出する疑似距離取得部と、前記複数の測位衛星のうち、前記自車位置までの距離と疑似距離とが整合しない測位衛星を、前記自車の測位に使用できない測位使用不可衛星として特定する測位使用衛星検証部と、前記自車位置から前記測位使用不可衛星に向かう方向を、前記測位使用不可衛星の測位電波が遮蔽される遮蔽範囲として前記自車位置に対応付けて記憶した地図を生成する地図生成部と、を備えることを特徴とする。
本発明の地図処理装置および地図処理方法によれば、測位電波が構造物によって影響を受ける状態を各地点で学習することで、測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することが可能となる。本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
実施例1の各機能ブロックの接続関係を示す構成図。 道路環境とノードおよびリンクの対応関係を示す模式図。 複数の測位衛星から測位位置を算出する際の、測位衛星と疑似距離、自車位置付近のノードおよびリンク、の関係を示す説明図。 複数地点で衛星を観測する際の、障害物の境界と衛星電波の遮蔽を示す模式図。 地図の各ノード点で記録される遮蔽状態を表現する一例の説明図。 測位使用衛星検証部104の処理内容を表すフローチャート。 走行方向と衛星配置による誤差感度を説明する説明図。 本発明の実施例2に係る地図処理装置10を説明するブロック図。 表示装置に表示される設定画面の一例を表す模式図。 信頼度指標の設定例を示す表。 サーバ上で、あるノード点に対して遮蔽状態を記憶または更新する処理のフローチャート。
以下、本発明に係る車両制御装置の実施例を、図面を用いて説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る地図処理装置10を説明するブロック図である。
地図処理装置10は、ナビゲーション装置11、GNSS受信機12、地図記憶部13と接続されており、地図記憶部13の内容を、通信装置14を経由して外部と送受信できる構成を有する。地図処理装置10は、自動運転を行う自動運転車両に搭載されている。地図処理装置10は、ナビゲーション装置11からの自車位置を受信する自車位置受信部101を備え、GNSS受信機12から各測位衛星に関する情報を受け取る疑似距離取得部102と、衛星軌道情報取得部103を備える。そして、各測位衛星情報と自車位置情報に基づいて測位に使用できる衛星か否かを検証する測位使用衛星検証部104と、測位に使用できない測位衛星(測位使用不可衛星)の配置に基づいて遮蔽されているか否かを判定し、複数の観測地点での遮蔽判定結果から遮蔽物の配置を推定して3D地図を生成する地図生成部106を備える。そして、さらに3D地図と自車位置に基づき、遮蔽・回折・反射の影響が少なく、測位演算に使用すべき測位衛星を選択する使用衛星選択部107と、選択された測位衛星の情報に基づいて測位演算をおこなう測位演算部108と、を備える。測位演算部108は、演算結果を図示しない自車両の自動運転ユニットに送出する機能を備えるものとする。
なお、実施例1では、地図処理装置10、ナビゲーション装置11、GNSS受信機12、地図記憶部13、通信装置14を分けて記載しているが、これらのうち1つ以上が同一のハードウェア上に搭載されていてもよく、地図処理装置10の内部にナビゲーション装置11、GNSS受信機12、地図記憶部13、通信装置14のうちいずれか1つ以上が含まれていてもよい。
なお、地図処理装置10は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えた電子制御ユニット(ECU、Electronic Control Unit)であり、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、測位演算部108等の各機能を実現するが、以下では、このようなコンピュータ分野の周知技術を適宜省略しながら、各部の詳細を説明する。
<自車位置受信部101>
ナビゲーション装置11は、地点座標(ノード)と地点間距離および接続情報(リンク)が格納されている地図に基づき、ある地点から別の地点に移動する走行経路を算出し、現在地点と走行経路とを照合して、随時、道路分岐で進むべき方向を示したり、算出した走行経路から外れたりした場合には走行経路を再計算して新規の走行経路を提案したりする装置である。自車位置受信部101は、ナビゲーション装置11から走行経路と現在地点を受け取る機能をもつ。
ここでいう走行経路とは、自車が走行してきた道路およびこれから走行する予定の道路に対応する地図中のノードおよびリンクを指す。なお、地図には、図2に示すように、例えば交差点や丁字路などの経路が分岐する可能性のある地点や、車線数が増減する地点に加え、数メートルから数十メートル程度の適当な間隔の地点における、緯度・経度・高度などの座標を格納したノード点データが格納されており、さらに、例えばある地点Aから別の地点Bに移動可能な道路が存在する場合に、地点Aに対応するノード点Aと地点Bに対応するノード点Bとの間に存在する接続関係や、車線数が増減する場所での車線変更に関する接続関係などを格納したリンクデータが格納されている。
また、ここでいう現在地点とは、前記地図中で自車が通過した最終のノード点、前記地図中で自車が次に通過する可能性のある1つ以上のノード点、現在走行している道路に対応するリンク、現在走行している道路に対応するリンク上の走行割合、現在走行している緯度・経度・高度、走行している方位と速度、のうち少なくとも1つ以上を含む。
自車位置受信部101は、ナビゲーション装置11から走行経路と現在地点の情報を取得し、これらの情報に基づき、今後の走行位置を予測し、今後通過する可能性のあるノード点について、その到達時刻あるいは到達予想時刻を算出する。そして、現在地点とノード点データと時刻を測位使用衛星検証部104あるいは使用衛星選択部107に出力する。
<疑似距離取得部102>
GNSS受信機は、測位衛星からの測位電波を受信し、そのコードを同定して追跡することにより、搬送波位相やドップラー周波数、信号強度、衛星軌道情報、電離層遅延量をはじめとした様々な衛星情報を取得する。こうして取得した情報には、測位衛星が測位電波を送信した時刻情報が重畳されており、原理的には4個以上、実用上はさらに多くの測位衛星の衛星情報の到達時刻を解析することにより、受信機アンテナの緯度・経度・高度と受信機側の時刻を算出することができ、さらに各衛星の測位電波の送信時刻と受信機側の時刻に基づき疑似距離を算出することができる。こうして、各時刻での受信機アンテナの位置を算出し、さらに受信機アンテナの車両搭載位置に基づき車両の位置を算出する。また、GNSS受信機による自車位置および姿勢の推定は高頻度でおこなわれており、例えばGNSSの測位間隔は0.1秒から1秒程度であることが多いが、この測位間隔は自動運転システムの経路誘導機能に対しては十分に更新周期が高速であるといえる。
このとき、測位衛星と受信機アンテナとの間に遮蔽物があったり、付近に構造物があったりすると、その測位衛星の測位電波は、遮蔽・回折・反射の影響により、測位衛星と受信機アンテナ間の距離よりも長い距離を伝搬することになり、その測位衛星に関しては測位電波の送信時刻および受信時刻に基づいて算出される疑似距離データが長くなる。つまり、実際の距離も疑似距離の方が長くなる。疑似距離取得部102は各衛星からの疑似距離データと、その受信時刻をGNSS受信機12から取得する。
なお、主に測位衛星からの電波が到達しにくい地域や屋内などに設置されるスードライト(疑似衛星)やビーコンなどについても、GNSSと同様のシステム構成をとることが可能であるため、前述の測位衛星は疑似衛星信号発信器と読み替えることができ同様に扱うことができる。
<衛星軌道情報取得部103>
衛星軌道情報取得部103は、疑似距離取得部102と同様に、各衛星からの衛星軌道情報とその受信時刻をGNSS受信機12から取得する。この受信時刻は疑似距離取得部102で取得する受信時刻と同期しているものとする。また、取得した衛星軌道情報を後段の計算で使用しやすい座標系に変換してもよい。
<測位使用衛星検証部104>
測位使用衛星検証部104は、自車位置受信部101からの出力、疑似距離取得部102からの出力、衛星軌道情報取得部103からの出力に基づき、各測位衛星情報と自車位置情報に基づいて測位に使用できる衛星か否かを検証する。ここで検証と表現しているのは、図示していないが、自車位置受信部101から得た自車位置は、ナビゲーション装置11がGNSS受信機12の出力を使用している可能性があり、測位に使用すると位置精度が低下する不適切な各測位衛星情報を利用して自車位置が算出されている可能性があるが、この測位使用衛星検証部104では更に各測位衛星情報を測位に使用すべきか否かを判定するためである。
この検証の様子を図3を用いて説明する。図3は、自車がある経路を走行しているときに、周囲に3機の測位衛星がある様子を模式的に描いた図であり、本来は三次元として描かなくてはならないが、簡略化のため平面的に描いている。ここで、衛星aと衛星bからは測位電波が直接自車に到達しているため、可視の位置関係にあり、各衛星を中心とし疑似距離を半径とした円を描くとその円周上に自車位置があることが分かる。一方、衛星cからは障害物による反射や回折により、衛星と自車の直線距離よりも疑似距離が長くなっていることが分かる。
自車位置受信部101から、走行経路のノード点{N1,N2,N3,N4,N5}を、それぞれ時刻{tb2,tb1,ta1,ta2,ta3}に通過するという出力情報が得られている。ここでtbのbはBefore、taのaはAfterの意味である。また、現在の自車位置がリンクL23上であるという出力情報も得られているものとする。
また、疑似距離取得部102からは、衛星a、衛星b、衛星cからの疑似距離がそれぞれPa、Pb、Pcとして得られているものとする。衛星軌道情報取得部103からは、衛星a、衛星b、衛星cのそれぞれの三次元位置が得られているものとする。
このとき、自車位置がリンクL23上にあるという情報と、各衛星の三次元位置と疑似距離の情報とが整合しているか否かを検証する。これは、例えば、衛星の三次元位置を中心とし疑似距離を半径とした円を描き、その円周が自車位置のリンクと交差するか否かを判定すればよい。図3において、衛星aを中心として、疑似距離Paの円がリンクL23と交差しているため、自車位置までの疑似距離が整合しており、衛星aから得た疑似距離Paは測位に使用できると判定する。衛星bについても同様に測位に使用できると判定する。衛星cについては衛星cを中心として、疑似距離Pcの円がリンクL23とは交差していないため、本来の疑似距離よりも長い疑似距離として観測されており、自車位置までの疑似距離が整合していないので、測位に使用できないと判定する。
この判定方法は、例えば自動運転システムや特定のコースを巡回する移動体システム、指定経路を走行する手動走行による移動体などのように、自車がどこを走行しているかが既知である場合に、各地点で観測に使用できる測位衛星が存在する範囲を特定することに役立つ。
なお、上記では疑似距離を半径とした円周が自車位置のリンクと交差するか否かを判定すると記載したが、疑似距離に所定の幅の誤差範囲を考えて、その誤差範囲で自車位置のリンクと交差するか否かを判定したり、あるいは疑似距離を半径とした円周が自車位置のリンクの前後1リンク以上の範囲で交差するか否かを判定する、さらには疑似距離を半径とした円周が現在の時刻のみならず所定の時刻範囲の通過リンクと交差するか否かを判定する、など、判定方法を選択したり、走行地域や走行時刻によってこれらの判定方法を切り替えてもよい。
測位使用衛星検証部104は、自車位置付近の経路リンク上で、測位衛星からの疑似距離の交点を最小二乗法を用いて探索し、その交点からの疑似距離の誤差を算出する。そして、測位使用衛星検証部104は、自車位置と測位衛星位置との間を結ぶ距離と、疑似距離との差が所定の誤差範囲の場合に、自車と前記測位衛星は可視の位置関係にあると判定する。測位使用衛星検証部104は、複数の測位衛星の位置情報および自車の位置情報に基づいて複数の測位衛星と自車位置との間の距離を算出距離として算出し、算出距離と疑似距離との差が閾値以上の測位衛星を、測位使用不可衛星として特定することができる。
<地図生成部106>
地図生成部106では、測位使用衛星検証部104において、測位に使用できないと判定された衛星について、自車位置から衛星方向が遮蔽されていると判定する機能をもち、さらに遮蔽空間に関する地図を生成し、地図記憶部13へ出力する機能をもつ。地図生成部106は、自車位置から測位使用不可衛星に向かう方位角と仰角を含む範囲を、遮蔽方位角範囲および遮蔽仰角範囲として、自車位置に対応付けて記憶する処理を行う。
図3において、自車位置では測位衛星cが測位に使用できない衛星である場合、衛星軌道情報取得部103からの出力により、衛星cの方位角および仰角を算出することができる。さらに、自車位置受信部101から地図中での自車の現在位置が得られているため、この各位置に対して測位に使用できない測位衛星(測位使用不可衛星)が存在しうる方位角(遮蔽方位角)および仰角(遮蔽仰角)を算出できる。なお、測位衛星の方位角および仰角の値をそのまま使用するのではなく、方位角および仰角にそれぞれ所定の余裕幅を設定し、測位に使用できない測位衛星が存在しうる方位角および仰角に範囲を持たせて遮蔽方位角範囲および遮蔽仰角範囲として算出してもよい。
また、自車が移動しながら、測位に使用できない衛星が存在しうる方位角および仰角が算出できるため、この算出結果から遮蔽物の距離および位置も算出できる。これを図4を用いて説明する。図4は、時刻t1,時刻t2,時刻t3における自車の位置401,位置402,位置403において、2つの測位衛星dおよび衛星eを観測し、障害物405において遮蔽されているか否かを判定したときの模式図である。測位衛星は車両が走行する地表平面に対して十分に高い高度に存在するため、短時間であれば位置401~403のいずれの地点からも同じ仰角および方位角であるとみなすことができる。また、衛星dあるいは衛星eと自車の位置401~403の間が実線で描かれていれば遮蔽されていない状態、破線で描かれていれば遮蔽されている状態をそれぞれ示している。前述した方位角および仰角にそれぞれ所定の余裕幅を設定したうえでの、遮蔽範囲が範囲411、範囲412、範囲421であり、非遮蔽範囲が範囲413、範囲422、範囲423であることを示している。
このとき、障害物405によって遮蔽される範囲の境界にある点406は、自車に近い点あるいは高い点であり、この点が領域407の内部にあることが分かる。領域407は、位置402から衛星dが遮蔽されている、位置401から衛星eが遮蔽されている、位置403から衛星dが遮蔽されていない、位置402から衛星eが遮蔽されていない、位置401よりも遠方である、といった条件から、各位置と衛星とを結ぶ線の内部領域407に存在することが計算できる。あるいは、例えば一般にボリュームレンダリングと呼ばれる手法でも計算することができ、空間をボクセルに区切っておいて、ある位置から衛星が遮蔽されていない場合に、当該位置と衛星とを結ぶ直線が通過するボクセルを記録して蓄積することで、最終的に通過されずに残ったボクセルに障害物が存在する、という求め方をすることも可能である。こうして算出した障害物により遮蔽される範囲の境界に基づき、境界の内部領域も遮蔽領域として扱っても良い。こうした遮蔽領域を地図として地図記憶部13に出力する。
具体的には、地図記憶部13に出力する内容は、各ノード点に対して、当該ノード点の位置での測位衛星からの電波が遮蔽される仰角範囲および方位角範囲を対応づけたものである。図5に一例を示す。図5はあるノード点における測位衛星からの電波が遮蔽される仰角範囲および方位角範囲を示したものであり、南(S)、北(N)、東(E)、西(W)の方位角と、仰角90度の目安線501、仰角60度の目安線502、仰角30度の目安線503、仰角0度の目安線504が描かれている。この方位角および仰角の図に対して、測位衛星からの電波が遮蔽されない範囲511と、測位衛星からの電波が遮蔽される範囲512を重畳して表現している。
例えば、図5の上図のように適当なサイズの画像として、測位衛星からの電波の遮蔽状態をピクセルの濃淡値に対応させて記録することで、各ピクセルの座標に対応した仰角および方位角の遮蔽状態を記録することができる。この記録方式は人が見たときの可読性が高いという利点がある。あるいは、図5の下図のように六角形メッシュを考え、測位衛星からの電波の遮蔽状態を各メッシュ位置に値として記録することで、各メッシュ位置に対応した仰角および方位角の遮蔽状態を記録することができる。この記録方式は仰角および方位角に対して分解能に偏りが出にくいという利点がある。あるいは、図示しないが、遮蔽領域あるいは非遮蔽領域のいずれかあるいは両方について、方位角と仰角のペアを複数格納したリストとした多角形領域として記録してもよい。この記録方式は記録用のデータ容量が少なくできるという利点がある。このように、地図記憶部13に出力する内容は、いくつかの形式が考えられるが、本発明ではいずれかに特定するものではなく、各ノード点について、少なくとも方位角と仰角に相当する情報と遮蔽状態の情報とを記録することを特徴とする。
<使用衛星選択部107>
使用衛星選択部107は、自車位置受信部101からの出力、衛星軌道情報取得部103、および地図記憶部13から取得した遮蔽空間に関する地図に基づき、測位演算に使用する測位衛星の信号を選択する。これは、衛星軌道情報取得部103から取得した測位衛星の配置に基づき、自車位置受信部101から得た自車位置からみた各測位衛星の方位角および仰角を算出し、地図生成部106で生成された遮蔽領域あるいは非遮蔽領域を表現した地図を用いて遮蔽されずに観測できるか否かを判定することで、遮蔽されていない測位衛星を特定する。こうして遮蔽されていない測位衛星の衛星種別(衛星系識別子などとも呼ばれる)、衛星番号(PRN番号、Slot番号などとも呼ばれる)などの測位衛星を特定する情報を出力する。
なお、前記は遮蔽されていない測位衛星の情報を出力する、と記載したが、出力形式としては逆に遮蔽されている測位衛星の情報を出力しても構わないし、全ての衛星について遮蔽あるいは非遮蔽の情報を付加して出力しても構わない。すなわち、本発明における使用衛星選択部107は、後段でどの測位衛星を使用すべきかが特定できる情報ができる機能をもつことを特徴とする。
<測位演算部108>
測位演算部108では、使用衛星選択部107から得た遮蔽されていない測位衛星に関して、その疑似距離取得部102から得た疑似距離、および衛星軌道情報取得部103から得た衛星軌道情報を用いて測位演算を行う。この測位演算の結果は、緯度、経度、高度、時刻、移動速度、移動方向の1つ以上を含み、測位演算部108はこの測位演算の結果を地図処理装置の外部に出力する。この出力を自動運転装置やナビゲーション装置11で使用してもよい。なお、前述の測位演算は、例えば、4個以上の測位衛星がある場合に最小二乗法を用いることで受信局の位置を算出することが可能であり、測位演算技術の詳細は公知技術が多数あるため、ここでの詳細説明は省略する。
<通信装置14>
通信装置14は、必要に応じて地図記憶部13の内容を通信回線を経由してサーバに送受信する機能をもつ。これにより自車が走行して観測した周囲の遮蔽環境に関する情報をサーバに蓄積し、地図記憶部13の記憶容量の制約にかかわらず、広範囲な走行環境に対する地図を扱うことができるようになる。また、サーバを経由して他車両が観測した遮蔽環境の情報を得ることができ、自車が初めて走行する環境であっても遮蔽環境の情報を利用することができるようになる。
前述した測位演算部108からの出力は、各種処理時間分の遅延はあるものの、GNSS受信機12の出力タイミングに合わせておこなわれる。GNSS受信機12は、例えばGNSSなどの測位情報を2Hz程度で定期的に取得するものであるため、測位演算部108も一定周期で出力することが期待できる。自動運転システムにおいては、常時自車がどこを走行しているかを取得する必要があるため、本実施例の構成をとることで、こうした自動運転システムのニーズに応えることができる。
以上で説明したように、本発明の地図処理装置および地図処理方法によれば、測位電波が構造物によって影響を受ける状態を各地点で学習することで、測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することが可能となり、さらにサーバ等と通信することで他車が走行した学習結果を相互に利用することで、さらに効率的に測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することが可能となる。
次に、本実施例に係る各部の処理内容について、必要に応じてフローチャートを用いて説明する。
<自車位置受信部101の処理内容>
自車位置受信部101は、ナビゲーション装置11から受け取った走行経路と現在地点に基づき、今後の走行位置を予測し、今後通過する可能性のあるノード点について、その到達時刻あるいは到達予想時刻を算出する機能と、現在地点とノード点データと時刻を測位使用衛星検証部104あるいは使用衛星選択部107に出力する機能をもつ。
ナビゲーション装置11には、予め出発地点と目的地点が設定されており、その地点間の走行経路を算出するものであり、さらに通常は各道路における制限速度なども地図に記録されていることが多いため、自車位置受信部101ではそれらの情報を受け取り、例えば各ノード点間の距離dと制限車速vに基づいて走行時間tを、t=d/v、のように算出し、順次加算することにより各ノード点の通過時刻を求めれば良い。
<疑似距離取得部102の処理内容>
疑似距離取得部102は各衛星からの疑似距離データと、その受信時刻をGNSS受信機12から取得する機能をもつ。本機能は単純であるため、ここでは詳細の説明を割愛する。
<衛星軌道情報取得部103の処理内容>
衛星軌道情報取得部103は各衛星からの衛星軌道情報と、その受信時刻をGNSS受信機12から取得する機能をもつ。本機能は単純であるため、ここでは詳細の説明を割愛する。
<測位使用衛星検証部104の処理内容>
図6は、測位使用衛星検証部104の処理内容を表すフローチャートである。
S1において、自車位置受信部101からの出力、疑似距離取得部102からの出力、衛星軌道情報取得部103からの出力を取得してメモリに格納する。ここで、取得できている前記情報は時刻的な同期がとれているものとする。
S2では、出力が得られている衛星個数分、すなわち疑似距離が取得でき、かつ衛星軌道情報が取得できた測位衛星の個数分の回数、S3およびS4の処理を繰り返す。
S3において、各測位衛星の位置情報と疑似距離の情報が、自車位置情報と整合しているか否かを判定する。この判定条件は複数の方策が考えられ、例えば、以下の方法で判定することができる。
<疑似距離の誤差量による判定>
衛星の三次元位置を中心として、疑似距離に基づいた距離をもつ球面を考え、この球面が自車位置から所定の閾値以内の範囲を通過していれば整合していると判定し、そうでない場合には整合していないと判定する。ここで、疑似距離を実際の距離に変換する際、例えば電離層活動が活発な場合には、いわゆる電離層遅延の影響が大きくなりやすいため、測位衛星からの電波に含まれる電離層パラメータに基づき、電離層パラメータが大きい場合には誤差量の閾値を大きくしてもよい。
この判定方法を採ることにより、電離層環境の悪化により精度がばらつく場合であっても、適切な閾値で判定をおこなうことができるという効果がある。
<現在位置に対応するリンクとの交差による判定>
衛星の三次元位置を中心として、疑似距離に基づいた距離を持つ球面を考え、この球面が自車の走行位置に対応するリンクと交差していることを整合していると判定する条件として判定する。なお、必ずしも自車の走行位置に対応するリンクのみと交差することを判定する必要はなく、例えば、自車の走行位置に対応するリンクとその前後1つ分のリンクと交差するか否かを判定してもよい。
この判定方法を採ることにより、自車の走行方向に対し直交する方向にある測位衛星、すなわち自車進行方向の左右の上空にある測位衛星に対しては、疑似距離誤差の感度が高くすることができ、整合しているか否かの判定を厳しくすることができる。逆に進行方向の前後の上空にある測位衛星に対しては、疑似距離誤差の感度を緩和することができ、整合しているか否かの判定を緩めることができる。
これを図7を用いて説明する。図7は、自車進行方向の左右の上空にある測位衛星dが疑似距離を半径とした球面701である場合に、自車位置710にてリンクと交差していることを示しており、自車進行方向の前後の上空にある測位衛星eが疑似距離を半径とした球面703である場合に、自車位置710にてリンクと交差していることを示している。このとき、測位衛星d、測位衛星eの疑似距離にそれぞれ同程度の誤差が発生し、この誤差分だけ半径が大きくなった球面を考えると、自車進行方向の左右の上空にある測位衛星dの誤差発生後の疑似距離を半径とした球面702は自車位置のリンクL23とは交差せず、自車進行方向の前後の上空にある測位衛星eの誤差発生後の疑似距離を半径とした球面704は自車位置のリンクL23とは交差していることが分かる。このように、自車の進行方向に延びるリンクに対して直交する方向にある測位衛星と、自車の進行方向に延びるリンクの延長線上の上空にある測位衛星とでは、誤差に対する感度が異なることが分かる。
この判定方式をとることにより、自動運転システムにとって重要な進行方向直交方向(=横方向)の誤差を低減するように判定をおこなうことができるという効果がある。
<自車位置情報が得られていない場合の判定処理>
自車位置情報が得られていない場合、自車位置を算出するために、観測できている測位衛星の情報を用いて測位演算をおこなう。原理上、少なくとも4つの測位衛星からの測位電波が得られていれば位置と時刻を合わせることが可能である。測位演算により自車位置を算出した後、各測位衛星の疑似距離が所定の閾値以下で整合しているか否かを判定し、誤差の大きい測位衛星の疑似距離を判定する。
この判定方式をとることにより、自車位置情報が得られていない場合であっても、あるいは自車位置受信部101がない場合であっても判定をおこなうことができ、構成を簡略化することができる高価がある。
このようにS3における判定処理をおこない、整合していないと判定された場合(No:整合しない)はS4に進み、整合していると判定された場合(Yes:整合する)はS2の繰り返し処理の最初に戻る。
S4では、当該衛星の衛星種別および衛星番号などを、測位に使用すべきではない衛星として出力するため、出力用リストに登録する。
S5では、出力用リストに登録されている内容を後段の地図生成部106へ出力する。
<地図生成部106の処理内容>
地図生成部106は、測位使用衛星検証部104において測位に使用できないと判定された衛星について、自車位置から衛星方向が遮蔽されていると判定する機能をもち、さらに遮蔽空間に関する地図を生成し、地図記憶部13へ出力する機能をもつ。この動作は既に図4を用いて説明したため、ここでは詳細の説明を省く。
<使用衛星選択部107の処理内容>
使用衛星選択部107は、地図記憶部13に記憶された地図を利用して自車位置を求める際に使用され、遮蔽空間に関する地図に基づき、測位演算に使用する測位衛星の信号を選択する機能をもつ。自車位置と各衛星位置がそれぞれ三次元座標として分かっているため、それらの差をとり、自車位置における方位角および仰角を算出することができる。この算出方法は基本的な幾何演算であり公知技術であるため、ここでの詳細説明は割愛する。
さらに、遮蔽空間に関する地図に基づき、測位演算に使用する測位衛星の信号を選択する。これは、衛星軌道情報取得部103から取得した測位衛星の配置に基づき、自車位置受信部101から得た自車位置からみた各測位衛星の方位角および仰角を算出し、地図生成部106で生成された遮蔽領域あるいは非遮蔽領域を表現した地図を用いて遮蔽されずに観測できるか否かを判定することで、遮蔽されていない測位衛星を特定する。こうして遮蔽されていない測位衛星の衛星種別(衛星系識別子などとも呼ばれる)、衛星番号(PRN番号、Slot番号などとも呼ばれる)などの測位衛星を特定する情報を出力する。
<測位演算部108の処理内容>
測位演算部108は、使用衛星選択部107から得た遮蔽されていない測位衛星に関して、その疑似距離取得部102から得た疑似距離、および衛星軌道情報取得部103から得た衛星軌道情報を用いて測位演算をおこなう。この測位演算は、例えば、4個以上の測位衛星がある場合に最小二乗法などの最適化計算を用いることで受信局の位置を算出することが可能である。また、通常は各測位信号の電波強度も得られていることから、電波強度の強い測位衛星からの測位信号は遮蔽・反射・回折などの影響を受けていない信号だと考えることができるため、電波強度の強さが大きいほど重みを高くした重みつきの最適化計算をおこなってもよい。また、地図生成部106で生成された遮蔽領域の境界から離れている方位角および仰角に存在する測位衛星からの測位信号は遮蔽・反射・回折などの影響を受けていない信号だと考えることができるため、電波強度の強さが大きいほど重みを高くした重みつきの最適化計算をおこなってもよい。最適化計算を含む測位演算技術の詳細は公知技術が多数あるため、ここでの詳細説明は省略する。
以上で説明したように、本実施例の地図処理装置および地図処理方法によれば、測位電波が構造物によって影響を受ける状態を各地点で学習することで、測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することが可能となり、さらにサーバ等と通信することで他車が走行した学習結果を相互に利用することで、さらに効率的に測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することが可能となる。
GNSSによる衛星測位は、多数の測位衛星からの測位電波の到達時間を利用するが、その位置誤差要因の1つに、測位衛星からGNSS受信機まで直接到達した測位電波以外に、遮蔽・回折・反射の影響を受けることで直線距離よりも長い到達距離となった測位電波(マルチパス電波)を、測位演算に使用してしまうことが挙げられる。本実施例の地図処理装置および地図処理方法によれば、測位電波が構造物によって影響を受ける状態を各地点で学習することで、こうした直接到達した測位電波以外を測位演算から除外し、自己位置推定の精度を向上できるようになる。
[実施例2]
図8は、本発明の実施例2に係る地図処理装置10を説明するブロック図である。
地図処理装置10は、ナビゲーション装置11、GNSS受信機12、地図記憶部13と接続されており、地図記憶部13の内容を通信装置14を経由して、サーバ15と送受信できるものとする。本実施例では、地図処理装置10がサーバ15と連携しながら動作する様子に注目する。なお、サーバ15は通信回線等を通じて通信装置14と情報を送受信できる処理装置を意図しており、いわゆるパーソナルコンピュータや組込情報機器などのハードウェアの形態を指すものではない。以下では、実施例1と重複している部分については適宜省略しながら、各部の詳細を説明する。
本実施例における、自車位置受信部101、疑似距離取得部102、衛星軌道情報取得部103、測位使用衛星検証部104については、実施例1に記載したものと同様であるため説明を省略する。
<地図生成部106>
地図生成部106では、測位使用衛星検証部104において、測位に使用できないと判定された衛星について、自車位置から衛星方向が遮蔽されていると判定する機能をもち、さらに遮蔽空間に関する地図を生成し、地図記憶部13へ出力する機能をもつ。
このとき、実施例1で記載したとおり、測位使用衛星検証部104から測位に使用できる衛星か否かが出力されており、例えば、測位に使用できない衛星に対して、衛星軌道情報取得部103からの出力により、当該衛星の方位角および仰角を算出することができる。ただし、算出される仰角は観測をおこなう車両のGNSSアンテナ高に依存する。すなわち、小型の軽自動車と大型トラックとでは、GNSSアンテナの高さが異なるため、同一地点において同一衛星を観測しても算出される仰角が変わる。自車両のアンテナ高は既知であるため、仰角を算出する際にアンテナの高さ位置を考慮し、例えば走行地点の標高にアンテナ高を加算した位置から衛星の仰角を算出する。
遮蔽の判定方法、余裕幅の持たせ方、遮蔽領域の記録方式などについては、実施例1にて記載済みなので、ここでの説明は割愛する。
ただし、地図記憶部13に出力する内容にアンテナ高、あるいは小型車・普通車・大型車などのアンテナ高の区分けについての情報、および観測情報の信頼性を表す指標情報、および観測した時刻情報も付加するものとする。すなわち、各ノード点について、少なくとも方位角と仰角に相当する情報と遮蔽状態の情報、アンテナ高、アンテナ高の区分け、出力された情報の信頼度指標、時刻情報を記録することを特徴とする。
なお、本発明の地図処理装置が自動車のメーカーオプションであれば出荷時にGNSSアンテナ高が既に設定されていることが想定されるが、ディーラーオプションや後付けで購入するアクセサリである場合には、GNSSアンテナの搭載位置を設定する必要がある。GNSSアンテナの搭載位置を設定方法の一例を図9に挙げる。
図9は、図示しない自車両に接続された表示装置に表示される設定画面の一例を表す模式図である。
この表示装置としてはナビゲーション装置やスマートフォンやタブレット端末を使用してもよく、さらに表示装置と連携したタッチパネルやスイッチ類により選択入力や数値入力ができるものとする。設定画面901は、アンテナ高およびアンテナの左右位置に関してセンチメートル単位でその位置が入力および調整できるようにした画面例である。ここでは前後方向については入力欄を省いており、走行中は進行方向が時々刻々と変化するため取付位置が性能にあまり影響を及ぼさないためであるが、前後方向の入力欄を設けていてもよい。設定画面902は、アンテナ高を車種種別から選択できるようにしており、さらに左右方向の偏差の入力も5段階程度で選択できるようにしている。このような設定画面構成により、設定入力が簡素化でき、ユーザへの負担が減らせるという効果がある。
出力された情報の信頼度指標は、前述のディーラーオプションや後付けで購入するアクセサリの場合には、取付位置の設定に誤差がある、廉価なアンテナを使用するため精度が劣化する、など、出力された情報の誤差が大きい可能性があるため、メーカーオプションの場合よりも信頼度指標を低くする。また、例えば、測量用車両などのように、より多周波のGNSSアンテナや複数のGNSSアンテナを使うことにより、電離層遅延の誤差が低減できる、反射や回折の影響を受けた測位電波を除外できる、など、出力された情報の精度を向上することができるため、使用するアンテナの特性に応じて信頼度指標を高くする。図10に信頼度指標の設定例を示す。この図に示したように、ディーラーオプションや後付けで購入するアクセサリの場合か、メーカーオプションの場合か、測量車両の場合か、によって信頼度指標が異なる。また、メーカーオプションであってもカーメーカ毎、廉価車種か高級車種かによっても信頼度指標が異なるように設定してもよい。
<使用衛星選択部107>
使用衛星選択部107は、自車位置受信部101からの出力、衛星軌道情報取得部103、および地図記憶部13から取得した遮蔽空間に関する地図とその地図を作成した車両のGNSSアンテナ高に基づき、測位演算に使用する測位衛星の信号を選択する。これは、衛星軌道情報取得部103から取得した測位衛星の配置に基づき、自車位置受信部101から得た自車位置からみた各測位衛星の方位角および仰角を算出し、地図生成部106で生成された遮蔽領域あるいは非遮蔽領域を表現した地図を、地図が作成されたときのGNSSアンテナ高と自車のGNSSアンテナ高との差異を用いて変換し、各測位衛星が遮蔽されずに観測できるか否かを判定することで、遮蔽されていない測位衛星を特定する。こうして遮蔽されていない測位衛星の衛星種別、衛星番号などの測位衛星を特定する情報を出力する。
<通信装置14>
測位演算部108、通信装置14については、実施例1に記載したものと同様であるため説明を省略する。
<サーバ15>
サーバ15は、通信装置14から送信された地図記憶部13の内容を、例えば、各ノード点について少なくとも方位角と仰角に相当する情報と遮蔽状態の情報、アンテナ高、アンテナ高の区分け、出力された情報の信頼度指標、時刻情報が受信する。サーバ15では、各ノード点について少なくとも方位角と仰角に相当する情報と遮蔽状態の情報を蓄積し、必要に応じて更新する。この更新には、少なくとも信頼度指標、時刻情報のいずれかあるいは両方を用いる。
具体的には、あるノード点の遮蔽状態について、サーバ15上で保持している情報がなければ受信した遮蔽状態をそのまま記憶する。既に記憶している遮蔽状態と異なる遮蔽状態を受信したときは、観測した時刻情報が新しく、信頼度指標が高い情報である場合には、受信した遮蔽状態を更新して記憶し、そうでない場合には記憶している遮蔽状態を保持するものとする。これを図11を用いて説明する。
図11はサーバ15上で、あるノード点に対して遮断状態を記憶または更新する処理のフローチャートである。なお、新たに通信装置14から時刻Tnewに観測された、信頼度指標Cnewが受信されたとする。
S10において、ノード点に既に遮蔽状態が記録されているか否かを判定する。記録されている場合(Yes)はS11に、記録されていない場合(No)はS16にすすむ。記録されている場合、S11において、既に記憶されている遮蔽状態の観測時刻Tでの信頼度指標Cと比較し、新たに観測された信頼度指標Cnewが信頼度指標Cよりも高いか否かを判定する。高い場合(Yes)はS16に、同じか低い場合(No)はS12にすすむ。S12において、信頼度指標Cnewが記憶されている信頼度指標Cと同じか否かを判定する。同じ場合(Yes)はS14に、低い場合(No)はS13にすすむ。S13において、観測時刻の差(Tnew-TM)が閾値Thr1より大きいか否かを判定する。閾値よりも大きい場合(Yes)はS16に、同じか小さい場合(No)はS15にすすむ。S14において、観測時刻の差(Tnew-TM)が閾値Thr2より大きいか否かを判定する。閾値よりも大きい場合(Yes)はS16に、同じか小さい場合(No)はS15にすすむ。
S15では、新たに通信装置14から時刻Tnewに観測された、信頼度指標Cnewで受信された遮蔽状態は、既に記憶されているものよりも古いか、既に記憶されているものよりも信頼性が高くないため、更新するに値しないと判断された結果、記憶している遮蔽状態を保持し、更新しない。一方、S16では記憶している遮蔽状態を、受信した遮蔽状態で更新して記憶する。
こうして、サーバ15側で、地図更新をおこなうことで、最新かつ信頼性の高い地図を保持しつづけることが可能である。
このサーバ15側の地図は、例えば地図処理装置10からの更新要求に応じて、通信装置14を経由して地図記憶部13に反映される。あるいは、サーバ15からの更新要求に応じて、通信装置14を経由して地図記憶部13に反映される。地図処理装置10からの更新要求は、例えば地図処理装置10が初回に起動したとき、または、当該地域を初めて走行するとき、ユーザが更新要求を出したとき、前回の更新から一定時間が経過したとき、などの条件に該当したときに出される。サーバ15からの更新要求は、例えば、前回の更新から一定時間が経過したとき、測量車両などの信頼度の高い車両で所定の範囲以上の地図が更新されたとき、などの条件に該当したときに出される。
以上で説明したように、本発明の地図処理装置および地図処理方法によれば、測位電波が構造物によって影響を受ける状態を各地点で学習することで、測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することが可能となり、さらにサーバ等と通信することで他車が走行した学習結果を相互に利用することで、さらに効率的に測位位置の誤差を低減し、自己位置推定の精度を向上することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
10:地図処理装置、11:ナビゲーション装置、12:GNSS受信機、13:地図記憶部、14:通信装置、101:自車位置受信部、102:疑似距離取得部、103:衛星軌道情報取得部、104:測位使用衛星検証部、106:地図生成部、107:使用衛星選択部、108:測位演算部、201:路肩区分線、202:走行路区分、211,212:走行路、221,222,223:走行路、NL1,NL2,NL3,NL4,NL5:左走行路ノード点、NR1,NR2,NR3,NR4,NR5:右走行路ノード点、NS4,NS5:側道ノード点、P,P,P:衛星a,衛星b,衛星cの疑似距離、401,402,403:時刻t1,時刻t2,時刻t3における自車位置、405:障害物、406:障害物によって遮蔽される領域の境界点、407:遮蔽領域の境界点が存在する可能性のある領域、411:時刻t1における衛星dの方位角および仰角方向の遮蔽領域、412:時刻t2における衛星dの方位角および仰角方向の遮蔽領域、413:時刻t3における衛星dの方位角および仰角方向の非遮蔽領域、421:時刻t1における衛星eの方位角および仰角方向の遮蔽領域、422:時刻t2における衛星eの方位角および仰角方向の非遮蔽領域、423:時刻t3における衛星eの方位角および仰角方向の非遮蔽領域、501:天頂方向(仰角90度)の目安点、502:仰角60度の目安線、503:仰角30度の目安線、504:水平線(仰角0度)の目安線、511:非遮蔽領域、512:遮蔽領域、513:非遮蔽領域、514:遮蔽領域、701:中心を衛星dとし、半径が疑似距離の球面が地表平面と交差する線、702:中心を衛星dとし、半径が(疑似距離+誤差)の球面が地表平面と交差する線、703:中心を衛星eとし、半径が疑似距離の球面が地表平面と交差する線、704:中心を衛星eとし、半径が(疑似距離+誤差)の球面が地表平面と交差する線、710:自車位置

Claims (9)

  1. 自車の測位に用いられる地図情報を処理する地図処理装置であって、
    複数の測位衛星の位置情報を取得する衛星軌道情報取得部と、
    前記複数の測位衛星からそれぞれ受信した測位電波に基づいて前記複数の測位衛星と自車位置との間の疑似距離を算出する疑似距離取得部と、
    前記複数の測位衛星のうち、前記自車位置までの距離と疑似距離とが整合しない測位衛星を、前記自車の測位に使用できない測位使用不可衛星として特定する測位使用衛星検証部と、
    前記自車位置から前記測位使用不可衛星に向かう方向を、前記測位使用不可衛星の測位電波が遮蔽される遮蔽範囲として前記自車位置に対応付けて記憶した地図を生成する地図生成部と、
    を備えることを特徴とする地図処理装置。
  2. 前記測位使用衛星検証部は、前記複数の測位衛星の位置情報および前記自車の位置情報に基づいて前記複数の測位衛星と前記自車位置との間の距離を算出距離として算出し、前記算出距離と前記疑似距離との差が閾値以上の測位衛星を、前記測位使用不可衛星として特定することを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
  3. 前記地図生成部は、前記自車位置から前記測位使用不可衛星に向かう方位角と仰角を、前記測位使用不可衛星の測位電波が遮蔽される方位角および仰角として前記自車位置に対応付けて記憶することを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
  4. 前記自車の自車位置情報を取得する自車位置情報取得部と、
    前記自車の走行経路を取得する走行経路取得部と、を有し、
    前記地図生成部は、前記測位使用不可衛星の位置と前記走行経路上の前記自車位置から、前記測位使用不可衛星の測位電波が遮蔽される方位角および仰角を推定することを特徴とする請求項3に記載の地図処理装置。
  5. 前記地図生成部により生成した地図に基づき、走行予定の各測位地点で前記自車の位置推定に用いる測位衛星を切り替える使用衛星選択部を有することを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
  6. 前記地図生成部により生成した地図を、通信回線を経由して送受信する地図通信部を有することを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
  7. 前記測位使用衛星検証部は、前記自車位置と測位衛星位置との間を結ぶ距離と、前記疑似距離との差が所定の誤差範囲の場合に、前記自車と前記測位衛星は可視の位置関係にあると判定することを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
  8. 前記測位使用衛星検証部は、自車位置付近の経路リンク上で、測位衛星からの疑似距離の交点を最小二乗法を用いて探索し、その交点からの疑似距離の誤差を算出することを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
  9. 複数の測位衛星から受信した測位電波を用いて衛星測位をおこないながら走行する自動運転システムにおける地図処理方法であって、
    各衛星との間の疑似距離を算出する疑似距離取得ステップと、
    各衛星の位置情報を取得する衛星軌道情報取得ステップと、
    自車位置情報を取得する自車位置情報取得ステップと、
    各衛星との間の疑似距離と自車位置とが整合しているか判定する測位使用衛星検証ステップと、
    前記測位使用衛星検証ステップにおける判定結果に基づいて地図を生成する地図生成ステップと、
    を含むことを特徴とする地図処理方法。
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