JP2022149505A - センサ素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属成分としてAuを含む電極の形成を好適に行いつつ、他所へのAuの飛散を抑制するセンサ素子の製造方法を提供する。【解決手段】Auを含む電極を表面に備えるガスセンサのセンサ素子を製造する方法が、焼成によりセンサ素子となる素子体の表面に、焼成によりAuを含む電極となる第1のペースト膜を形成する膜形成工程と、セラミックスからなり気孔率が60%以下である覆い材を、第1のペースト膜の少なくとも一部が30%以上の被覆率で覆われるように前記ペースト膜の上に載置する覆い材載置工程と、第1のペースト膜を含む素子体を、覆い材ともども1200℃以上1500℃以下の温度で焼成する共焼成工程と、を備えるようにした。【選択図】図4

Description

本発明は、ガスセンサのセンサ素子の製造方法に関し、特に金属成分としてAuを含む電極の形成に関する。
被測定ガス中の所定ガス成分を検知してその濃度を求めるガスセンサには、半導体型、接触燃焼型、酸素濃度差検知型、限界電流型、混成電位型など、種々の方式のものがある。そのなかには、ジルコニアなどの固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料としたセンサ素子を用いるものがある。このうち、センサ素子に設ける検知電極の金属成分がPt-Au合金である混成電位型のガスセンサがすでに公知である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特許文献1に開示されているガスセンサは未燃炭化水素を検知対象としているが、Auは、アンモニアの酸化活性が小さく、アンモニアの検知感度が良好であることから、アンモニア検知電極の材料としても用いることが可能である。例えば、特許文献2には、検知電極にPt-Au合金を用いた混成電位型のガスセンサをアンモニアガスセンサとして用いる場合に関する言及がある。また、金属成分がPt-Au合金である検知電極の場合、金属粒子の表面をAuが濃化したAu濃化領域とすることが、検出感度を確保するうえで、好適である。
ただし、Auは融点が1064℃と比較的低いため、融点が1768℃と高いPtとともに検知電極を構成する場合においても、例えば1200℃~1500℃程度で行われる固体電解質との共焼成時に、最終的に検知電極となるペースト膜からのAuの蒸発(脱離)が生じることがある。また、センサ素子が高温に加熱されるガスセンサの使用時にも、検知電極からのAuの脱離は生じ得る。
特許文献1には、これらの点を踏まえ、検知電極形成時のAuの脱離を抑制し、かつ、その後の使用時にもAu濃化領域が維持されるようにすることを目的として、焼成によってセンサ素子となる素子体を例えば緻密アルミナ製の鞘材にて囲繞することにより、該素子体を焼成炉の内容積に比して充分狭い空間内に配置した状態で焼成する態様が、開示されてなる。
係る場合、素子体の表面に形成されてなる、焼成によって検知電極となるペースト膜からAuが蒸発(脱離)するものの、素子体が鞘材にて囲繞されてなるために、鞘材内部のペースト膜の近傍においては、比較的少ない量のAu原子が蒸発しただけであってもAu過剰雰囲気が実現される。これにより、ペースト膜からのAuの蒸発は生じにくくなるので、焼成が進行して検知電極が形成される過程においては、ペースト膜内に存在するAu原子がPt-Au合金粒子の表面に偏在する状態が実現され、最終的にAu濃化領域が形成されるようになっている。
また、特許文献2には、検知電極と同じ合金組成あるいはそれよりもAuリッチな組成の電極蒸発抑止膜をセンサ素子の表面(例えば検知電極の形成面と同じ面)に設けておき、ガスセンサの使用時にはセンサ素子ともども高温に加熱される電極蒸発抑止膜からAuを蒸発させることによって検知電極の近傍にAu飽和蒸気場を形成し、これによって検知電極からのAuの蒸発を抑制する態様が、開示されている。検知電極と同じ面に電極蒸発抑止膜を設ける場合には、センサ素子の表面にまずは絶縁層を形成し、該絶縁層の上に電極蒸発抑止膜を形成することも、開示されている。
一方、酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とする一のセンサ素子に、混成電位セルを備えアンモニアを検知可能なNHガスセンサ部と、測定ポンプセルを含む複数の電気化学的ポンプセルを備えたNOxセンサ部とが設けられてなり、前者の出力に基づいてNHガスの濃度が特定可能とされてなるとともに、両者の出力値に基づいてNOx濃度が特定される、ガスセンサも、すでに公知である(例えば、特許文献3参照)。
特許第5938133号公報 特許第6655515号公報 特開2018-40746号公報
特許文献1および特許文献2に開示されたAuの蒸発抑制のための手法は、いずれも、素子体あるいはセンサ素子の周囲にAu過剰雰囲気を形成することになるため、検知電極自体あるいは電極蒸発抑止膜から蒸発したAuが素子の他の部分や他の電極に付着してしまうAu被毒が発生し得る、という問題があった。
特に、特許文献3に開示されたガスセンサのように、一のセンサ素子の表面に、NHガスセンサ部に備わる混成電位セルの構成要素の1つであって金属成分としてPt-Au合金を含む検知電極と、NOxセンサ部に備わる電気化学的ポンプセルの構成要素の1つであって金属成分としてPtを含む外側ポンプ電極とを設ける場合、外側ポンプ電極やこれに接続されたリードパターンにAuが付着することは、電気化学ポンプセルの性能を劣化させ、ひいてはNOx濃度の測定精度を劣化させることになるため、好ましくない。
また、特許文献1および特許文献2に開示された手法は、検知電極におけるAu濃化領域の形成・維持には有効であるものの、必ずしも、検知電極におけるAu含有率の安定には寄与しないという問題もあった。さらに、それらの手法には、別部材の使用や、ガスセンサとしての機能には直接には寄与しない構成要素を余分に設けるための工程や材料が必要となるため、工程が複雑化し、コスト高の要因ともなっていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属成分としてAuを含む電極の形成を好適に行いつつ、他所へのAuの飛散を抑制するセンサ素子の製造方法を提供することを、目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、Auを含む電極を表面に備えるガスセンサのセンサ素子を製造する方法であって、焼成により前記センサ素子となる素子体の表面に、焼成により前記Auを含む電極となる第1のペースト膜を形成する膜形成工程と、セラミックスからなり気孔率が60%以下である覆い材を、前記第1のペースト膜の少なくとも一部が30%以上の被覆率で覆われるように前記ペースト膜の上に載置する覆い材載置工程と、前記第1のペースト膜を含む前記素子体を、前記覆い材ともども1200℃以上1500℃以下の温度で焼成する共焼成工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るセンサ素子の製造方法であって、前記第1のペースト膜が形成された複数の素子体を、それぞれの前記第1のペースト膜が列をなすように焼成鞘に配置する鞘配置工程、をさらに備え、前記覆い材載置工程においては、前記第1のペースト膜のなす列の上に、棒状の前記覆い材を配置する、ことを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1の態様に係るセンサ素子の製造方法であって、前記第1のペースト膜が形成された一または複数の素子体を焼成鞘に配置する鞘配置工程、をさらに備え、前記覆い材載置工程においては、前記一または複数の素子体の前記第1のペースト膜のそれぞれに、板状の前記覆い材を配置する、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様のいずれかに係るセンサ素子の製造方法であって、前記覆い材の厚みが1mm以上10mm以下である、ことを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1ないし第4の態様のいずれかに係るセンサ素子の製造方法であって、前記覆い材がアルミナからなる、ことを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1ないし第5の態様のいずれかに係るセンサ素子の製造方法であって、前記Auを含む電極が、金属成分としてPt-Au合金を含み、NHガスに対する触媒活性が不能化されてなるNH検知電極であり、前記センサ素子が、酸素イオン伝導性の固体電解質からなる基体部を有するとともに、前記NH検知電極と、前記センサ素子の内部に備わる基準電極と、前記NH検知電極と前記基準電極との間の固体電解質とによって構成される混成電位セルを有する、NHガスセンサ部を備えるものである、ことを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第6の態様に係るセンサ素子の製造方法であって、前記センサ素子が、外部空間から被測定ガスが導入される少なくとも1つの内部空所と、前記少なくとも1つの内部空所に面して形成されたNOx測定電極と、前記センサ素子の表面に形成された外側ポンプ電極と、を備え、前記NOx測定電極と、前記外側ポンプ電極と、前記NOx測定電極と前記外側ポンプ電極との間の固体電解質とによって電気化学的ポンプセルである測定用ポンプセルが構成されてなるNOxセンサ部、をさらに備えるものであり、前記膜形成工程においては、焼成により前記外側ポンプ電極となる第2のペースト膜がさらに形成され、前記覆い材載置工程においては、前記第1のペースト膜の少なくとも前記第2のペースト膜に近い側が覆われるように、前記覆い材を配置する、ことを特徴とする。
本発明の第8の態様は、第7の態様に係るセンサ素子の製造方法であって、前記覆い材載置工程においては、前記第1のペースト膜の少なくとも一部に加えて、前記第1のペースト膜と前記第2のペースト膜との間の領域の少なくとも一部が覆われるように、前記覆い材を配置する、ことを特徴とする。
本発明の第1ないし第8の態様によれば、覆い材の配置によって共焼成時のAuの蒸発・飛散が抑制されるので、センサ素子のAuを含む電極における重量減少とAu濃化度の低下とが抑制される。
特に、第6ないし第8の態様によれば、センサ素子を用いてNHガスを検出する際の感度特性の劣化が抑制される。
特に、第7および第8の態様によれば、センサ素子をマルチガスセンサに用いるにあって、Auが外部ポンプ電極に付着・吸着することに起因したNOxの検出精度の劣化が、より確実に抑制される。
センサ素子101の長手方向に沿った垂直断面図を含む、ガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す図である。 センサ素子101の長手方向に沿った上面図である。 センサ素子101を作製する際の処理の流れを示す図である。 Auの蒸発・飛散抑制の手法を模式的に示す側面図である。 焼成鞘Sに対する素子体101αの配置例を示す図である。 焼成鞘Sに配置された素子体101αに対し覆い材Cを載置する例を示す要部拡大図である。 焼成鞘Sに配置された素子体101αに対し覆い材Cを載置する例を示す要部拡大図である。 焼成鞘Sに配置された素子体101αに対し覆い材Cを載置する例を示す要部拡大図である。 焼成鞘Sに配置された素子体101αに対し覆い材Cを載置する例を示す要部拡大図である。 焼成鞘Sに配置された素子体101αに対し覆い材Cを載置する例を示す要部拡大図である。 荷重棒の配置例を示す図である。 覆い材の配置の変形例を示す図である。 同じ気孔率の覆い材Cを用いて製造したセンサ素子101ごとに、Au残留率を被覆率に対してプロットしたグラフである。 同じ気孔率の覆い材Cを用いて製造したセンサ素子101ごとに、Au濃化度を被覆率に対してプロットしたグラフである。 センサ素子101の共焼成時の被覆率が同じガスセンサ100ごとに、混成電位セル61における出力値を、モデルガスにおけるNHガスの濃度に対してプロットしたグラフである。
<ガスセンサの概略構成>
はじめに、本実施の形態に係る製造方法を適用して製造されるセンサ素子の一構成例を含む、ガスセンサ100の概略構成について説明する。図1は、ガスセンサ100の主たる構成要素であるセンサ素子101の長手方向に沿った垂直断面図を含む、ガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す図である。図2は、センサ素子101の長手方向に沿った上面図である。ただし、両図における各構成要素のサイズや比率などは、必ずしも実際と同じではない。
センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。以降においては、センサ素子101のうち固体電解質にて構成された部分を特に基体部とも称する。
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5を貫通する態様にて設けられたセンサ素子101内部の空間であり、それぞれの上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面でそれぞれ区画され、側部をスペーサ層5にて囲繞されている。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には基準ガスとして大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質アルミナからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスたる大気が導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
また、図1においては図示を省略するが、図2に示すように、センサ素子101の他方端部(ガス流通部が備わる先端部とは反対側の端部)の上面(つまりは第2固体電解質層6の上面)には、複数の端子電極77が設けられてなる。図2においては、4つの端子電極77(77a~77d)が備わる場合を例示している。さらには、当該他方端部の下面(つまりは第1基板層1の下面)にも、後述するヒータ電極71と端子電極77とが設けられてなる。
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrOとのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に可変電源24によって所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。
さらに、起電力V0が一定となるようにVp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これにより、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保たれるようになっている。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の特定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の特定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41が動作することによりなされる。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度の特定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。
なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの検出に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOxの検出を担う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられたNOx測定電極(以下、単に測定電極)44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。
第4拡散律速部45は、アルミナ(Al)を主成分とする多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うとともに、測定電極44の保護膜(測定電極保護層)としても機能する。
測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N+O)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された制御電圧V2が一定となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出できることとなる。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
以上において説明した、センサ素子101のうち、素子長手方向においてガス導入口10から第2内部空所40に至る部分、および当該部分に備わる電極、ポンプセルおよびセンサセル等は、主としてNOx濃度の測定に関係する部位であることから、本実施の形態においてはこれらの部位を、センサ素子101のNOxセンサ部とも称する。
さらに、センサ素子101は、第2固体電解質層6の上面にNH検知電極(以下、単に検知電極)60を備えている。検知電極60は、Auを所定の比率で含むPt、つまりはPt-Au合金と、ジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。センサ素子101においては、係る検知電極60と、基準電極42と、両電極の間に存在する固体電解質層とによって、混成電位セル61が構成されてなる。すなわち、混成電位の原理に基づいて両電極近傍におけるNHの濃度の相違に起因して電位差が生じることを利用して、被測定ガス中のNHの濃度を求めるようになっている。なお、本実施の形態においては、センサ素子101のうち、混成電位セル61を構成する部分を、NHガスセンサ部とも称する。また、基準電極42は、係るNHガスセンサ部のみならず、上述したようにNOxセンサ部においても用いられることから、共通基準電極とも称される。
具体的には、検知電極60は、その構成材料たるPt-Au合金の組成を好適に定めることによって、所定の濃度範囲について、NHガスに対する触媒活性が不能化されてなる。つまりは、検知電極60でのNHガスの分解反応を抑制させられてなる。これにより、ガスセンサ100においては、検知電極60の電位が、当該濃度範囲のNHガスに対して選択的に、その濃度に応じて変動する(相関を有する)ようになっている。換言すれば、検知電極60は、当該濃度範囲のNHガスに対しては、電位の濃度依存性が高い一方で、他の被測定ガスの成分に対しては電位の濃度依存性が小さいという特性を有するように、設けられてなる。
なお、検知電極60と外側ポンプ電極23との距離はセンサ素子101のサイズや所望される性能などによって適宜に設定されてよい。図2(a)には、両者の距離が素子長手方向における検知電極60のサイズよりも小さい場合を例示しており、図2(b)には、両者の距離が素子長手方向における検知電極60のサイズよりも大きい場合を例示している。
より詳細には、センサ素子101においては、検知電極60を構成するPt-Au合金粒子の表面におけるAu濃化度を好適に定めることで、NHガス濃度に対する電位の依存性が顕著であるように、検知電極60が設けられてなる。
なお、本明細書において、Au濃化度とは、検知電極60を構成する貴金属粒子の表面のうち、Auが被覆している部分の面積比率を意味する。本明細書においては、貴金属粒子の表面に対しXPS(X線光電子分光法)分析を行うことにより得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度値を用い、
Au濃化度(%)=100×Au強度値/(Au強度値+Pt強度値)・・・(1)
なる式にてAu濃化度を算出する。
XPS測定は、後述する表面保護層90がなく検知電極60が露出している場合は、当該検知電極60の表面に存在する貴金属粒子を測定対象として行えばよく、検知電極60が露出していない場合は、当該検知電極60の部分を破断し、破断面に存在する貴金属粒子の表面を測定対象として行えばよい。
また、(1)式によって算出されるAu濃化度が10%以上である場合、検知電極60を構成する貴金属粒子の表面においてAuが濃化しているとみなすことができる。換言すれば、当該貴金属粒子の表面にAu濃化領域が形成されているとみなすことができる。本実施の形態の場合、検知電極60のAu濃化度は15%以上となっている。
なお、Au濃化度は、貴金属粒子の表面に対しAES(オージェ電子分光法)分析を行うことにより得られるオージェスペクトルにおけるAuとPtとについての検出値から、算出することも可能である。係る手法に得られるAu濃化度の値と、XPS分析の結果に基づいて(1)式により算出されるAu濃化度の値とは、実質的に同じとみなせる。
一方、基準電極42は、上述したように、その周囲を基準ガス導入空間43につながる大気導入層48にて覆われているので、ガスセンサ100が使用される際には基準電極42の周囲は絶えず大気(酸素)で満たされるようになっている。それゆえ、ガスセンサ100の使用時、基準電極42は、常に一定の電位を有してなる。
これにより、ガスセンサ100の使用時、混成電位セル61においては、検知電極60と基準電極42との間に、被測定ガス中のNHガスの濃度に応じた電位差EMFが、少なくとも0ppm~500ppmというNHガスの濃度範囲について、生じるようになっている。
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。ヒータ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
ガスセンサ100においては、NOxの濃度を求める際、ヒータ72が発熱することによって、センサ素子101の各部が動作に適した温度に加熱、保温されるようになっている。それゆえ、各ポンプセルおよびセンサセルと混成電位セル61の配置箇所についても、それぞれが好適に動作する温度に加熱される。ただし、それぞれが好適に動作する温度範囲は異なっている。具体的には、NOxセンサ部が(より詳細には、内側ポンプ電極22および外側ポンプ電極23を含む主ポンプセル21などが備わる、第3拡散律速部30よりも先端部側(図1において図面視左側)が)、600℃以上900℃以下の所定温度(第1の温度)に加熱され、NHガスセンサ部が(より詳細には、混成電位セル61およびその付近が)、400℃以上650℃以下であって第1の温度よりも低い所定温度(第2の温度)に加熱される。
ガスセンサ100においては、これらの温度条件が好適に実現されるように、各セルの配置位置やヒータの存在範囲、さらにはヒータ72による加熱態様が、定められる。
さらに、センサ素子101は、第2固体電解質層6の上面に、外側ポンプ電極23と検知電極60とを被覆する態様にて設けられた表面保護層90を備える。表面保護層90は、被測定ガス中に含まれる被毒物質が外側ポンプ電極23と検知電極60に付着することを防止する目的で設けられてなる。係る表面保護層90は、多孔質のアルミナにて形成されるのが好適な一例である。ただし、表面保護層90は、外側ポンプ電極23と検知電極60のそれぞれと素子外部との間におけるガスの流通を律速することのない気孔径および気孔サイズを有するように設けられる。
また、図1においては表面保護層90がセンサ素子101の他方端部(図面視右端部)にまで延在する様子を示しているが、実際には、図示を省略する端子電極77は表面保護層90に覆われることなく露出している。あるいはさらに、他方端部にまで延在するのではなく、外側ポンプ電極23と検知電極60のみを覆う態様にて表面保護層90が設けられる態様であってもよい。
ガスセンサ100の各部の動作、例えば、可変電源によるポンプセルへの電圧の印加や、ヒータ72による加熱などは、各部と電気的に接続されたコントローラ(制御手段)110によって制御される。加えて、コントローラ110は、センサ素子101の混成電位セル61に生じる電位差EMFと、測定用ポンプセル41を流れるポンプ電流Ip2とに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を特定する。また、係るNOx濃度算出の過程でNH濃度の特定を行うこともできる。すなわち、コントローラ110は、NOx濃度さらにはNH濃度を特定する濃度特定手段としても機能する。
なお、図1においては電位差EMFとポンプ電流Ip2のみがコントローラ110と矢印にて結ばれているが、これはあくまで図示の都合であり、他の電位差値やポンプ電流値などもコントローラ110に供されることは言うまでもない。コントローラ110には、汎用のパーソナルコンピュータが適用可能である。
また、同じく図示の都合から、図1においては各ポンプセルを構成する電極と可変電源との電気的接続や、混成電位セル61や各センサセルにおける電気的接続を、概念的にのみ示している。実際のガスセンサ100においては、例えば図2に示すように、外側ポンプ電極23であればリード線23Lによって端子電極77の1つである端子電極77aと接続されており、検知電極60であればリード線60Lによって端子電極77の他の1つである端子電極77cと接続されており、その他の電極も、センサ素子101の内部に設けられた図示しないリード線によって端子電極77の他の一つと接続されている。そして、センサ素子101外部との間の電気的接続を担う図示しないコネクタにセンサ素子101が挿入され、端子電極77とコネクタの接続端子とが接触させられることによって、センサ素子101に備わる種々のセルと外部との接続が実現されている。
以上のような構成を有するガスセンサ100においては、混成電位セル61において検知電極60と基準電極42との間に生じる電位差EMFに基づいて被測定ガス中のNHガスの濃度を精度よく求めることが出来ることに加えて、測定用ポンプセル41を流れるポンプ電流Ip2の値に基づいて求められるNOx濃度を、電位差EMFの値に基づいて補正することにより、NHガスの共存下でもNOx濃度を測定することが出来るようになっている。すなわち、ガスセンサ100は、NHとNOxの濃度を同時並行的に測定可能なマルチガスセンサとして機能するものである。
<センサ素子の製造プロセス>
次に、図1に例示するセンサ素子101を製造するプロセスについて説明する。概略的にいえば、図1に例示するセンサ素子101は、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含むグリーンシートからなる積層体を形成し、該積層体を切断・焼成することによって作製される。酸素イオン伝導性固体電解質としては、例えば、ジルコニアに3mol%以上の比率でイットリアが内添加されたイットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)などが例示される。
図3は、センサ素子101を作製する際の処理の流れを示す図である。センサ素子101を作製する場合、まず、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示せず)を用意する(ステップS1)。具体的には第1基板層1、第2基板層2、第3基板層3、第1固体電解質層4、スペーサ層5、および第2固体電解質層6に対応する6枚のブランクシートが用意される。ブランクシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、対応する層が内部空間を構成するグリーンシートの場合、該内部空間に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、センサ素子101の各層に対応するそれぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はない。
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対して種々のパターンを形成するパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。具体的には、各ポンプ電極や検知電極60、端子電極77、ヒータ電極71などの電極パターンや、ヒータ72のパターンや、大気導入層48や、リード線23L、60Lや図示を省略している内部配線などの配線パターンが形成される。さらには、表面保護層90のパターンも印刷される。なお、第1基板層1に対しては、後工程において積層体を切断するときに切断位置の基準とされるカットマークも印刷される。
各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行う。印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
パターン印刷が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。なお、係る態様にて得られた積層体に対して表面保護層90が形成される態様であってもよい。
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断してセンサ素子101の個々の単位(素子体と称する)に切り出す(ステップS5)。切り出された素子体を、所定の条件下で焼成することにより、上述のようなセンサ素子101が生成される(ステップS6)。すなわち、センサ素子101は、固体電解質層と電極との一体焼成(共焼成)によって生成されるものである。その際の焼成温度は、1200℃以上1600℃以下(例えば1400℃)が好適である。なお、係る態様にて一体焼成がなされることで、センサ素子101においては、各電極が十分な密着強度を有するものとなっている。これはセンサ素子101の耐久性の向上に資するものである。
しかも、本実施の形態においては、後述する方策を採用することにより、最終的に検知電極60となるパターン(印刷膜)からの共焼成時のAuの蒸発・飛散が、好適に抑制されるようになっている。
このようにして得られたセンサ素子101は、所定のハウジングに収容され、ガスセンサ100の本体(図示せず)に組み込まれる。
<共焼成時の検知電極からのAuの蒸発・飛散の抑制>
上述したように、本実施の形態においては、センサ素子101に設ける各電極の形成にスクリーン印刷技術を採用し、かつ、印刷によって形成した各電極形成用のペースト膜ともども素子体を焼成する共焼成を行うことにより、センサ素子101を完成される。その際、検知電極60に関しては、共焼成温度よりも融点が低いAuを含むPt-Au合金を金属成分とし、かつ、センサ素子101の上面に設けられるために、その上面に多孔質の表面保護層90が設けられるにもかかわらず、共焼成時に検知電極60となるペースト膜からのAuの蒸発・飛散が生じ得る。
係るAuの蒸発・飛散は、検知電極の重量減少につながるほか、飛散したAuによる他部位の汚染や、検知電極60の表面におけるAuの被覆度(濃化度)が想定よりも減少するという不具合を引き起こすことになるため、好ましくない。特に、本実施の形態に係るセンサ素子101の外側ポンプ電極23のように、検知電極60の近傍に他の電極やこれに接続されたリードパターンが設けられる場合、検知電極60となるペースト膜から飛散したAuがそれらの電極やリードパターンに付着すると、当該電極が想定された機能を発揮できなくなってしまう可能性もある。
なお、本実施の形態においては、以下の式により求まるAu残留率を検知電極60における重量減少の指標とする。
Au残留率(%)=100×{(検知電極における金属成分全体に対するAu重量比)/(検知電極用ペーストにおける金属成分全体に対するAu重量比)}・・・(2)
ここで、センサ素子101に備わる検知電極60と検知電極用ペーストのそれぞれにおける、金属成分全体に対するAu重量比は、検知電極と検知電極用ペーストのそれぞれについてEPMAによる組成分析を行ったときの、AuとPtとの合計重量に対するAuの重量比として、求めることが出来る。
検知電極用ペーストの作製以降、上述の製造プロセスにてセンサ素子101を作製する際の共焼成により検知電極60が得られるまでの間、検知電極60に対しPtおよびAuが供給されることはないので、検知電極60におけるAu重量比が検知電極用ペーストにおけるAu重量比よりも低下しているということは、共焼成時にAuが蒸発していることを意味する。
図4は、上述のような不具合の発生を回避するべく、本実施の形態においてセンサ素子101を得るための共焼成に際して行う、Auの蒸発・飛散抑制の手法を模式的に示す、側面図である。図4においては、図1と同様、図面視左右方向が素子長手方向となっている。
図4(a)~図4(e)に示すように、共焼成後にセンサ素子101となる素子体101αの上面には、それぞれに所定のペーストを用いてスクリーン印刷により形成されたペースト膜である、ポンプ電極膜23αと、検知電極膜60αとが設けられてなり、かつ、それらを覆うように、同じく所定のペーストにてスクリーン印刷により形成されてなる保護層膜90αが、設けられている。なお、ポンプ電極膜23α、検知電極膜60α、および保護層膜90αはそれぞれ、共焼成後に外側ポンプ電極23、検知電極60、多孔質の表面保護層90となるペースト膜である。
本実施の形態においては、共焼成に先立って、例えば図4(a)および図4(b)に示すように、保護層膜90αの上面かつ検知電極膜60αの上方位置に覆い材Cを載置する。そして、係る覆い材Cともども、共焼成を行うようにする。覆い材Cは、気孔率が60%以下のセラミックスからなる、少なくとも底面(保護層膜90αとの接触面)が略平坦とされた、棒状あるいは板状の部材である。覆い材Cに用いるセラミックスとしてはアルミナが例示されるが、上述した1200℃以上という共焼成温度に耐えられるセラミックスであれば、他の材質であってもよい。覆い材Cは、その形状・気孔率などに応じて1mm~10mmの範囲から選択される適宜の厚みを有する。
覆い材Cの載置によって、検知電極膜60αの焼成が進行して検知電極60となる過程の途中におけるAuの蒸発・飛散の経路を塞ぐことにより、他の部分へのAuの付着・吸着を抑制し、最終的に得られるセンサ素子101における検知電極60の重量減少と、金属粒子表面におけるAu濃化度の低下とを、抑制するようにしている。
なお、図4(a)~図4(e)のいずれの場合も、図示を省略する素子短手方向における覆い材Cの長さは検知電極膜60αの素子短手方向における長さ以上であるとする。
例えば、図4(a)および図4(b)には、素子長手方向におけるサイズL1が検知電極膜60αの素子長手方向におけるサイズL0と等しい覆い材C(C1)が、保護層膜90αを介して検知電極膜60α上に載置された場合を示している。すなわち、検知電極膜60αの上面全体が覆い材C1によって覆われた状態を示している。
このように覆い材C1を載置した場合、Auが蒸発・飛散することが、覆い材C1を設けない場合に比して好適に抑制される。
また、図4(c)には、素子長手方向におけるサイズL2が検知電極膜60αの素子長手方向におけるサイズL0より大きい覆い材C(C2)が、保護層膜90αを介して検知電極膜60α上に載置された場合を示している。係る場合も、検知電極膜60αの上面全体が覆い材C2によって覆われている。さらには、検知電極膜60αとポンプ電極膜23αの間の領域全体およびポンプ電極膜23αも、覆い材C2によって覆われている。
このように覆い材C2を載置した場合も、Auが蒸発・飛散することが、好適に抑制される。加えて、図4(b)に示した覆い材C1を載置する場合に比して、外側ポンプ電極23へのAuの付着・吸着が、より確実に抑制される。これにより、係る付着・吸着に起因したNOxの検出精度の劣化が、より確実に抑制される。
一方、図4(d)には、素子長手方向におけるサイズL3が検知電極膜60αの素子長手方向におけるサイズL0の半分である覆い材C(C3)が、保護層膜90αを介して検知電極膜60α上に載置された場合を示している。より具体的には、検知電極膜60αのポンプ電極膜23αに近い側の半分が、覆い材C3によって覆われている。
このように覆い材C3を載置した場合、検知電極膜60αのポンプ電極膜23αから遠い側の半分は、覆い材C3によって覆われていないので、こちら側から表面保護層90を介してAuが蒸発・飛散することはあり得るものの、覆い材Cを載置することなく共焼成を行った場合に比べ、係る蒸発・飛散は抑制される。しかも、ポンプ電極膜23αから近い側には覆い材C3が載置されているので、外側ポンプ電極23へのAuの付着・吸着は、好適に抑制される。すなわち、係る付着・吸着に起因したNOxの検出精度の劣化が、抑制される。
また、図4(e)には、図4(b)において検知電極膜60α上に載置したものと同じ覆い材C1を、図4(b)に示した場合よりもポンプ電極膜23α側へとシフトさせて載置し、検知電極膜60αの素子長手方向におけるサイズL0の半分の幅L3だけ、検知電極膜60αを覆うようにした場合を示している。
このように覆い材C1を載置した場合も、図4(d)に示した覆い材C3を載置した場合と同様、検知電極膜60αのポンプ電極膜23αから遠い側の半分は、覆い材C3によって覆われていないので、こちら側から表面保護層90を介してAuが蒸発・飛散することはあり得るものの、覆い材Cを載置することなく共焼成を行った場合に比べ、係る蒸発・飛散は抑制される。しかも、検知電極膜60αとポンプ電極膜23αとの間の領域の一部をも覆うように覆い材C1が載置されているので、外側ポンプ電極23へのAuの付着・吸着は、図4(d)に示した場合よりもさらに好適に抑制される。
図4(d)および図4(e)に示したように、共焼成に際しては、検知電極膜60αの一部を覆うようにした場合でも、検知電極膜60αからのAuの蒸発・飛散を抑制し、最終的に得られるセンサ素子101における検知電極60の重量減少と、金属粒子表面におけるAu濃化度の低下とを、抑制する効果がある。
具体的には、検知電極膜60αのうち覆い材Cによって覆われている部分の平面面積の検知電極膜60α全体の平面面積に対する比率を被覆率と定義した場合、被覆率が30%以上となるよう覆い材Cを配置すれば、センサ素子101における検知電極60の重量減少と、金属粒子表面におけるAu濃化度の低下とが、好適に抑制される。例えば、混成電位セル61においてNHガス濃度に対する電位差EMFの依存性が顕著となるうえにおいて必要とされる、15%以上のAu濃化度が、好適に確保される。
<覆い材の形状および配置の例>
次に、覆い材Cの具体的な形状および共焼成時の配置に係る種々の例について、順次に説明する。図5は、その前提となる、焼成鞘Sに対する素子体101αの配置例を示す図である。また、図6ないし図10は、焼成鞘Sに配置された素子体101αに対し覆い材Cを載置する種々の例を示す、要部拡大図である。なお、図5ないし図10においては、保護層膜90αの図示は省略している。
図5に示す例においては、図2(a)に例示した電極配置を有する全44個の素子体101αが、ポンプ電極膜23α、検知電極膜60α、リード線膜23Lα、リード線膜60Lα、および、端子電極膜77αが備わる側を上面として、2列に、かつ、それぞれの列GLおよび列GRに属する素子体01αのポンプ電極膜23αおよび検知電極膜60αが備わる側の端部同士が図面視左右方向において相対するように、焼成鞘Sに整列配置されている。リード線膜23Lα、リード線膜60Lα、および端子電極膜77αはそれぞれ、共焼成後にリード線23L、リード線60L、端子電極膜77αとなるペースト膜である。なお、それぞれの列GLおよび列GRに属する22個ずつの素子体01αは、11個ずつ図面視上下方向に離隔させて配置されてなる。
それぞれの列GLおよび列GRに属する22個ずつの素子体01αにおいては、検知電極膜60αの図面視左右方向における位置が、互いに一致してなる。換言すれば、個々の素子体101αの検知電極膜60αは、図面視上下方向に沿って列をなしている。
図6では、列GLおよび列GRのそれぞれにおいて、検知電極膜60αの素子長手方向におけるサイズL0と等しい幅Laを有する一の棒状の覆い材C(Ca)を、図面視上下方向に沿った検知電極膜60αの列の上に配置した例を示している。係る場合、覆い材Caは、個々の素子体101αの長手方向に直交するように、配置されてなる。係る場合、それぞれの素子体101αにおいては、図4(b)に示した場合のように、検知電極膜60αの上面全体が覆い材Caによって覆われる。すなわち、被覆率は100%となる。
図7では、列GLおよび列GRのそれぞれにおいて、検知電極膜60αの素子長手方向におけるサイズL0よりも大きな幅Lbを有する一の棒状あるいは板状の覆い材C(Cb)を、検知電極膜60αのなす列の上に配置した例を示している。係る場合、それぞれの素子体101αにおいては、図4(c)に示した場合のように、検知電極膜60αの上面全体が覆い材Cbによって覆われる。すなわち、被覆率は100%となる。加えて、図4(c)においては、ポンプ電極膜23αの全体も覆い材Cbによって覆われている。
図8では、列GLと列GRとで異なる覆い材Cの配置例を示している。
列GLにおいては、検知電極膜60αの素子長手方向におけるサイズL0の50%の幅Lcを有する一の棒状の覆い材C(Cc)を検知電極膜60αのなす列の上に配置した例を、示している。係る例においては、それぞれの検知電極膜60αのうちポンプ電極膜23αに近い半分が覆い材Ccによって覆われており、反対側の半分が露出している。
列GRにおいては、図6に示したものと同じ覆い材Caを、ポンプ電極膜23α側へとシフトさせつつ、素子長手方向におけるサイズL0の50%だけそれぞれの検知電極膜60αが露出するように、検知電極膜60αのなす列の上に配置した例を、示している。
前者は、図4(d)の場合に該当し、後者は図4(e)の場合に該当する。いずれの場合も、検知電極膜60αの平面面積S0の半分が覆われており、残り半分が露出しているので、被覆率は50%となる。なお、このように左右の列で配置する覆い材Cを違える態様は、あくまで説明上のものであり、通常は、同じ覆い材Cが同じように配置される。
図9では、列GLの図面視上側の素子群GL1および図面視下側の素子群GL2と、列GRの図面視上側の素子群GR1および図面視下側の素子群GR2との4つの素子群に対し、同じ覆い材C(Cd)を異なる態様にて配置した例を示している。
覆い材Cdは、検知電極膜60αと同一の平面形状を有する板状(チップ状)をなしている。図9においては、個々の検知電極膜60αが、個別の覆い材Cdを用いて覆われている。
素子群GL1に属するそれぞれの素子体101αの検知電極膜60αに対しては、当該検知電極膜が全て覆われるように、覆い材Cdが配置されている。これは、図4(b)に示した場合に該当し、被覆率は100%となる。
素子群GL2に属するそれぞれの素子体101αの検知電極膜60αに対しては、素子短手方向については全て覆われる一方で、素子長手方向については、ポンプ電極膜23αに近い側においてサイズL0の70%の範囲が露出するように、覆い材Cdが配置されている。係る場合の被覆率は30%である。
素子群GR1に属するそれぞれの素子体101αの検知電極膜60αに対しては、素子短手方向については全て覆われる一方で、素子長手方向については、ポンプ電極膜23αから遠い側においてサイズL0の70%の範囲が露出するように、覆い材Cdが配置されている。係る場合の被覆率も30%である。
素子群GR2に属するそれぞれの素子体101αの検知電極膜60αに対しては、素子短手方向および素子長手方向の双方について一部が露出するように、覆い材Cdが配置されている。係る場合においては、検知電極膜60αの平面面積S0の70%が露出しているので、被覆率は30%となる。
なお、図8に示した場合と同様、図9のように配置する覆い材Cを違える態様も、あくまで説明上のものである。
図6ないし図8に示したような、棒状の覆い材Cを用いる態様は、複数の検知電極膜60αの上に一度に配置が出来るという利点を有する。ただし、ハンドリングの観点から覆い材Cの厚みを薄くすることがやや困難であるほか、検知電極膜60αを覆うという目的に照らせば本来的には不要な部分も存在し得るため、検知電極膜60α上に配置した場合に検知電極膜60αに対し作用する荷重が大きくなる場合がある。
一方、図9に示した、板状の覆い材Cにて個々の検知電極膜60αに個別に覆う態様は、対象となる素子体101αの個数が多い場合には配置が煩雑となるものの、薄肉化が比較的容易であり、かつ、必要最小限の面積にて配置できるので、検知電極膜60αに対し作用する荷重を、棒状の覆い材Cを用いる場合に比して低減することが可能である。
図10では、図5ないし図9に示す場合とは異なり、図2(b)に例示した電極配置を有する全44個の素子体101αが、列GLおよび列GRをなして焼成鞘Sに配置されてなる場合につき、列GLと列GRとで異なる覆い材Cの配置例を示している。
列GLにおいては、図6と同様、覆い材Caを、図面視上下方向に沿った検知電極膜60αの列の上に配置した例を示している。係る場合の被覆率は100%である。
列GRにおいては、図8の列GRと同様、覆い材Caを、ポンプ電極膜23α側へとシフトさせつつ、素子長手方向におけるサイズL0の50%だけそれぞれの検知電極膜60αが露出するように、検知電極膜60αのなす列の上に配置した例を、示している。係る場合の被覆率は50%である。
図6ないし図10に示すように、共焼成時に検知電極膜60αの上に配置する覆い材Cの形状、サイズ、および配置の仕方には種々の態様があるが、気孔率が60%以下のセラミックスからなる覆い材Cを、30%以上の被覆率にて検知電極膜60αの上に配置する限りにおいては、共焼成に伴うAuの蒸発・飛散を抑制することによって他の部分へのAuの付着・吸着を抑制し、最終的に得られるセンサ素子101における検知電極60の重量減少と、金属粒子表面におけるAu濃化度の低下とを、抑制することができる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、固体電解質からなる基材部を有するとともに、表面に金属成分としてAuを含む検知電極を備えたガスセンサのセンサ素子を、共焼成により製造する場合において、焼成により検知電極となる電極膜の30%以上が覆われるように、当該電極膜上に覆い材を載置することで、共焼成時のAuの蒸発・飛散を抑制することができる。これにより、他の部分へのAuの付着・吸着を抑制し、最終的に得られるセンサ素子における検知電極の重量減少と、金属粒子表面におけるAu濃化度の低下とを、抑制することができる。さらには、検知電極が混成電位セルを構成するNH検知電極である場合には、NHに対する感度特性が好適に確保される。また、センサ素子の表面に、NOxを検出するための電気化学的ポンプセルを構成する外部ポンプ電極がさらに備わる場合には、外部ポンプ電極へのAuの付着・吸着が好適に抑制される。
<変形例>
上述の実施の形態においては、センサ素子101を含むガスセンサ100が、NHとNOxの濃度を同時並行的に測定可能なマルチガスセンサであるとしていたが、これは、必須の態様ではない。表面に金属成分としてAuを含む検知電極を備えたセンサ素子を、共焼成にて製造する限りにおいては、他の構成のセンサ素子を製造する場合においても、上述の実施形態と同様に、覆い材を用いることによる共焼成時のAuの蒸発・飛散の抑制さらには検知電極における重量減少の抑制およびAu濃化度の減少抑制の効果を、得ることが出来る。例えば、混成電位セル61のみを備えたセンサ素子の製造にも、覆い材の使用は有効である。
また、上述の実施の形態においては、混成電位セルによってNHを検知するものとしていたが、炭化水素ガスなど、他のガス種が検知対象とされる態様であってもよい。
図5に示した態様にて焼成鞘Sに複数の素子体101αを載置して共焼成を行う場合に、素子体101αの変形を抑制する目的で、複数の荷重棒が載置されてもよい。荷重棒は、例えば、個々の素子体101αの長手方向に垂直な方向に延在するように、素子体101αの長手方向において所定の間隔にて載置される。図6ないし図8や図10に示すように棒状の覆い材Cを配置する場合には、荷重棒と覆い材Cとが略平行に配置されることになる。
あるいは、荷重棒は、素子体101αの上に該素子体101αと平行に配置されてもよい。図11は、そのような荷重棒の配置例を示す図である。ただし、図示の簡単のため、ポンプ電極膜23α、検知電極膜60α、リード線膜23Lα、リード線膜60Lα、および、端子電極膜77αについては、一部の素子体101αにおいてのみ示し、他は省略している。
図11においては、図5に示した場合と同様に焼成鞘Sに素子体101αが整列配置されている。そして、図面視左上側の素子群GL1に対しては、棒状の覆い材C(Ce)が図面視上下方向に沿った検知電極膜60αの列の上に配置されてなり、図面視左下側の素子群GL2に属する個々の素子体101αに対しては、チップ状の覆い材C(Cf)がそれぞれの検知電極膜60αの上に配置されてなる。
加えて、覆い材Ce、Cfの配置位置よりも後端側(端子電極膜77α側)の大部分の範囲においては、荷重棒Wが、素子群GL1およびGL2に属する個々の素子体101αの上に該素子体101αと平行に配置されてなる。
あるいは、覆い材が荷重棒の役割を兼ね備える態様であってもよい。図12は、そのような覆い材の配置例を示す図である。図12においても、図5に示した場合と同様に焼成鞘Sに素子体101αが整列配置されている。ただし、図11と同様、図12においてもポンプ電極膜23α、検知電極膜60α、リード線膜23Lα、リード線膜60Lα、および、端子電極膜77αについては、一部の素子体101αにおいてのみ示し、他は省略している。
図12に示す場合においては、図面視左上側の素子群GL1に属するそれぞれの素子体101αの上に、棒状の覆い材C(Cg)が、該素子体101αと平行にかつ該素子体101αの大部分の範囲を覆う態様にて配置されてなる。
さらには、覆い材Cgよりもさらに長尺の棒状の覆い材C(Ch)が、一直線上に配置されてなる、図面視左下側の素子群GL2に属する素子体101αと図面視右下側の素子群GR2に属する素子体101αとの組のそれぞれの大部分の範囲を覆う態様にて、配置されてなる。
また、図7に示した覆い材Cbの幅Lbを大きくし、素子体101αの長さと同程度とした場合には、板状の覆い材Cbが荷重棒としても機能することになる。
(Au残留率とAu濃化度に対する効果の確認)
覆い材Cの気孔率と検知電極膜60αに対する被覆率との組合せを種々に違えてセンサ素子101を製造し、検知電極におけるAu残留率と、Au濃化度とを評価した。
具体的には、アルミナ製の覆い材Cの気孔率を1%、10%、40%、60%の4水準に違え、それぞれの覆い材Cを検知電極膜60αの上に配置する際の検知電極膜60αに対する被覆率を、10%、30%、50%、70%、100%、150%、200%の7水準に違えた。共焼成温度は1400℃とした。また、比較のため、覆い材なしでの共焼成も行った。
Au残留率は(2)式に基づいて算出し、Au濃化度は(1)式に基づいて算出した。
なお、被覆率が150%あるいは200%であるとは、それぞれの素子体101αにおいて検知電極膜60αの全体が覆い材Cにより覆われており、かつ、覆い材Cが覆う面積が、検知電極膜60αの平面面積の150%あるいは200%であることを意味する。
図13は、同じ気孔率の覆い材Cを用いて製造したセンサ素子101ごとに、Au残留率を被覆率に対してプロットしたグラフである。また、図14は、同じ気孔率の覆い材Cを用いて製造したセンサ素子101ごとに、Au濃化度を被覆率に対してプロットしたグラフである。
図13からは、覆い材Cを用いない場合にはAu残留率は数%に留まる一方で、覆い材Cを用いた場合には、被覆率が大きくなるほど、Au残留率も大きくなる傾向があることが確認される。また、被覆率が30%を超える範囲では気孔率によってAu残留率の値に違いが生じているものの、差異は大きくてもせいぜい10%程度であることもわかる。
また、図14からは、覆い材Cを用いない場合にはAu濃化度は数%に留まる一方で、覆い材Cを用いた場合には、被覆率が大きくなるほど、Au濃化度も大きくなる傾向があることが確認される。また、Au濃化度が15%以上であれば検知電極60を含む混成電位セル61においてNHガスを好適に検知することが可能とされているところ、図12からは、被覆率が30%以上であれば係る要件をみたすことが確認される。
ただし、被覆率が30%を超える範囲では気孔率によってAu濃化度の値に違いが生じており、覆い材Cの気孔率が60%である場合、被覆率が200%である場合であっても、気孔率が10%以下の場合にして15%程度もAu濃化度が小さいことが確認される。
以上の結果は、覆い材による検知電極膜60αの被覆率を大きくするほど、検知電極60の重量減少とAu濃化度の低減との抑制に効果があることを示している。さらには、少なくとも気孔率が60%以下の覆い材Cにて検知電極膜60αを30%以上の被覆率で覆った状態で共焼成を行うことで、覆い材を用いない場合に比してAuの重量減少を抑制でき、かつ、検知電極を含む混成電位セル61がNHガスを好適に検知することが可能とされる、15%以上というAu濃化度を実現できることを、示している。
(飛散抑制の確認)
覆い材Cを用いた場合と用いない場合の双方について、共焼成にてセンサ素子101を作製した際のAuの付着の有無を、図2(b)の2つの点A、BにおいてXPS分析を行うことにより調べた。表1は、その結果を示している。点Aは外側ポンプ電極23の上であり、点Bは端子電極77の上である。また、覆い材Cとしては、気孔率が10%のアルミナ製のものを用意し、被覆率200%となるように配置して共焼成を行った。共焼成温度は1400℃とした。Au量は、XPS分析結果におけるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度値を用い、Auの強度値をPtの強度値を100としたときの相対値として示している。
Figure 2022149505000002
表1からわかるように、覆い材を用いない場合には点AにてAuが検出されたが、覆い材を用いた場合には、点A、点Bのいずれにおいても、Auは検出されなかった。係る結果は、覆い材の使用が、検知電極60の近傍におけるAuの飛散抑制に特に効果があることを示している。
(感度特性の確認)
気孔率が1%であるアルミナ製の覆い材Cを用い、共焼成時の被覆率を違えてセンサ素子101を作製し、さらにはそれぞれを用いてガスセンサ100を作製した。それぞれのガスセンサを対象に、NHガスの濃度が既知であるモデルガスを用いて、NHガスの検出感度を評価した。
具体的には、被覆率は、10%、30%、50%、100%、200%の5水準に違えた。また、比較のため、共焼成時に覆い材を用いることなく作製したセンサ素子を備えるガスセンサも用意した。
モデルガスにおけるNHガスの濃度は、1ppm、10ppm、1000ppmの4水準に違えた。また、いずれのモデルガスも、NHの他にOを10%、HOを6%含むようにし、残余はNとした。
そして、モデルガス雰囲気下でそれぞれのガスセンサ100を駆動し、混成電位セル61に生じる電位差EMFを、出力値として取得した。
図15は、それぞれのガスセンサ100における出力値を、モデルガスにおけるNHガスの濃度に対してプロットした図である。ガスセンサ100は、これに含まれるセンサ素子101を作製した際の(共焼成時の)被覆率により区別するようにしている。
図15からは、センサ素子101を作製する際の共焼成時の被覆率が10%以下であったガスセンサ100については、10ppmを超えた範囲においてNHガスの濃度に対する依存性がないことが確認される。係る結果と、図14に示した結果とを併せ考えると、共焼成時の被覆率を30%以上とすることによって検知電極60におけるAu濃化度を15%以上としたガスセンサ100においては、混成電位セル61において良好な感度特性が得られるものと判断される。
1~3 第1~第3基板層
4 第1固体電解質層
5 スペーサ層
6 第2固体電解質層
10 ガス導入口
11 第1拡散律速部
12 緩衝空間
13 第2拡散律速部
20 第1内部空所
21 主ポンプセル
22 内側ポンプ電極
23 外側ポンプ電極
23α ポンプ電極膜
23L、60L リード線
23Lα、60Lα リード線膜
30 第3拡散律速部
40 第2内部空所
41 測定用ポンプセル
42 基準電極
44 測定電極
45 第4拡散律速部
50 補助ポンプセル
60 検知電極
60α 検知電極膜
61 混成電位セル
70 ヒータ部
71 ヒータ電極
77 端子電極
77α 端子電極膜
90 表面保護層
90α 保護層膜
100 ガスセンサ
101 センサ素子
101α 素子体
S 焼成鞘

Claims (8)

  1. Auを含む電極を表面に備えるガスセンサのセンサ素子を製造する方法であって、
    焼成により前記センサ素子となる素子体の表面に、焼成により前記Auを含む電極となる第1のペースト膜を形成する膜形成工程と、
    セラミックスからなり気孔率が60%以下である覆い材を、前記第1のペースト膜の少なくとも一部が30%以上の被覆率で覆われるように前記ペースト膜の上に載置する覆い材載置工程と、
    前記第1のペースト膜を含む前記素子体を、前記覆い材ともども1200℃以上1500℃以下の温度で焼成する共焼成工程と、
    を備えることを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  2. 請求項1に記載のセンサ素子の製造方法であって、
    前記第1のペースト膜が形成された複数の素子体を、それぞれの前記第1のペースト膜が列をなすように焼成鞘に配置する鞘配置工程、
    をさらに備え、
    前記覆い材載置工程においては、前記第1のペースト膜のなす列の上に、棒状の前記覆い材を配置する、
    ことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  3. 請求項1に記載のセンサ素子の製造方法であって、
    前記第1のペースト膜が形成された一または複数の素子体を焼成鞘に配置する鞘配置工程、
    をさらに備え、
    前記覆い材載置工程においては、前記一または複数の素子体の前記第1のペースト膜のそれぞれに、板状の前記覆い材を配置する、
    ことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のセンサ素子の製造方法であって、
    前記覆い材の厚みが1mm以上10mm以下である、
    ことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のセンサ素子の製造方法であって、
    前記覆い材がアルミナからなる、
    ことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のセンサ素子の製造方法であって、
    前記Auを含む電極が、金属成分としてPt-Au合金を含み、NHガスに対する触媒活性が不能化されてなるNH検知電極であり、
    前記センサ素子が、酸素イオン伝導性の固体電解質からなる基体部を有するとともに、前記NH検知電極と、前記センサ素子の内部に備わる基準電極と、前記NH検知電極と前記基準電極との間の固体電解質とによって構成される混成電位セルを有する、NHガスセンサ部を備えるものである、
    ことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  7. 請求項6に記載のセンサ素子の製造方法であって、
    前記センサ素子が、
    外部空間から被測定ガスが導入される少なくとも1つの内部空所と、
    前記少なくとも1つの内部空所に面して形成されたNOx測定電極と、
    前記センサ素子の表面に形成された外側ポンプ電極と、
    を備え、前記NOx測定電極と、前記外側ポンプ電極と、前記NOx測定電極と前記外側ポンプ電極との間の固体電解質とによって電気化学的ポンプセルである測定用ポンプセルが構成されてなるNOxセンサ部、
    をさらに備えるものであり、
    前記膜形成工程においては、焼成により前記外側ポンプ電極となる第2のペースト膜がさらに形成され、
    前記覆い材載置工程においては、前記第1のペースト膜の少なくとも前記第2のペースト膜に近い側が覆われるように、前記覆い材を配置する、
    ことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  8. 請求項7に記載のセンサ素子の製造方法であって、
    前記覆い材載置工程においては、前記第1のペースト膜の少なくとも一部に加えて、前記第1のペースト膜と前記第2のペースト膜との間の領域の少なくとも一部が覆われるように、前記覆い材を配置する、
    ことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
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