JP2022147896A - 固体電池及び固体電池の製造方法 - Google Patents

固体電池及び固体電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022147896000001
【課題】優れた電池性能を得ることのできる電極層を備えた固体電池を実現する。
【解決手段】固体電池1は、酸化物固体電解質及び正極活物質を含む正極層10と、酸化物固体電解質及び負極活物質を含む負極層20と、正極層10と負極層20との間に設けられ、酸化物固体電解質を含む電解質層30とを有する。負極層20には、負極活物質として、アナターゼ型TiOに加え、直方晶Nbが含まれる。直方晶Nbは、焼結助剤としても機能する。このような負極活物質を用いることで、酸化雰囲気での焼成時の負極層20の焼結密度の低下を抑え、焼結密度の低下による抵抗の増大、固体電池1のエネルギー密度の低下を抑える。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体電池及び固体電池の製造方法に関する。
固体電解質を用いた電解質層の一方の面側に、固体電解質及び活物質を含む電極材を用いた正極層を設け、他方の面側に、固体電解質及び活物質を含む電極材を用いた負極層を設ける固体電池が知られている。このような固体電池に関し、例えば、その電極材として1以上1.15未満の平均アスペクト比を有する球状粒子状の五酸化ニオブ(Nb)や酸化チタン(TiO)等の活物質を含むものを用いる技術、そのような活物質と固体電解質との混合物を固体電解質の軟化点以上の温度で焼結させる技術が知られている。
また、焼結用セラミックス成形体の作製方法に関し、セラミックス粉末とガラス転移温度が室温よりも高い熱可塑性樹脂とを含む原料粉末を、熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で静水圧加圧成形し、その後、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して温間静水圧加圧成形する技術が知られている。
特開2014-102911号公報 特開2019-199078号公報
ところで、固体電解質として酸化物固体電解質を用いる固体電池の製造においては、有機系のバインダー等を用いて可塑性のある正極層及び負極層(これらを「電極層」とも言う)並びに電解質層が形成され、それらが所定の順に積層され、裁断された後に、酸化雰囲気での焼成によって、バインダー等の有機成分の焼失(「脱媒」とも言う)、及び酸化物固体電解質の粒子間の接合(「焼結」とも言う)が行われる場合がある。
この場合、電極層では、酸化物固体電解質のガラス軟化点以上の温度での焼成やその際の活物質の粒成長により、バインダー等の有機成分が焼失した部分が埋まり、緻密になると考えられているが、酸化物固体電解質のガラス軟化点や活物質の粒成長を制御することは必ずしも容易でない。そのため、高い電池性能を実現することのできる電極層、そのような電極層を備える固体電池が得られないことが起こり得る。
また、電極層の形成に、加圧成形により得られる緻密な焼結用セラミックス成形体を用いる場合、酸化雰囲気での焼成によって有機成分が焼失すると、焼失した部分が電極層内に空隙として残り、それが抵抗層や不良原因となり得る。そのため、高い電池性能を実現することのできる電極層、そのような電極層を備える固体電池が得られないことが起こり得る。
1つの側面では、本発明は、優れた電池性能を得ることのできる電極層を備えた固体電池を実現することを目的とする。
1つの態様では、第1酸化物固体電解質及び正極活物質を含む正極層と、第2酸化物固体電解質及び負極活物質を含む負極層と、前記正極層と前記負極層との間に設けられ、第3酸化物固体電解質を含む電解質層とを有し、前記負極活物質は、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbを含む固体電池が提供される。
また、1つの態様では、上記のような固体電池の製造方法が提供される。
1つの側面では、優れた電池性能を得ることのできる電極層を備えた固体電池を実現することが可能になる。
固体電池の一例について説明する図である。 固体電池の一構成例を示す図である。 固体電池本体の第1の形成例について説明する図(その1)である。 固体電池本体の第1の形成例について説明する図(その2)である。 固体電池本体の第2の形成例について説明する図(その1)である。 固体電池本体の第2の形成例について説明する図(その2)である。 固体電池本体の第3の形成例について説明する図(その1)である。 固体電池本体の第3の形成例について説明する図(その2)である。 固体電池本体の基本構造の焼成について説明する図である。 負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池の焼成後の負極層の断面のSEM像の一例である。 負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の焼成後の負極層の断面のSEM像の一例である。 負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池の充放電曲線図の一例である。 負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の充放電曲線図の一例である。 負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池と、負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の、充放電レートに対する放電容量の推移を示す図である。 固体電池の別の構成例を示す図である。 固体電池の更に別の構成例を示す図である。
リチウムイオン二次電池は、装置の小型化や軽量化に大きく寄与し、電気自動車、定置型蓄電設備、携帯情報端末、IoT(Internet of Things)機器、ウェアラブル端末等、用途は拡大している。それに伴い、要求される仕様も多様化しており、高いエネルギー密度、安全性への期待が高まっている。要求に対応するための新しい電池として固体電池の開発が進められている。固体電池の1つとして、電解質に固体電解質材料を用いるものが知られている。このような固体電池は、可燃性の有機電解液を用いないため、漏液、燃焼、爆発、有毒ガスの発生といった危険性を低減して安全性を高めることが可能で、大気中での取り扱いが容易であり、また、低温及び高温の条件でも性能を維持することが可能である。固体電解質材料を用いることで、それに対応して、より高電圧で動作する正極活物質を用いることができるため、高エネルギー密度化等、固体電池の更なる性能向上も期待される。
[固体電池]
図1は固体電池の一例について説明する図である。図1には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図1に示す固体電池1は、正極層10及び負極層20、並びにそれらの間に設けられた電解質層30を有する。
電解質層30は、固体電解質材料を含む。電解質層30の固体電解質材料には、酸化物固体電解質が用いられる。電解質層30には、例えば、NASICON(Na super ionic conductor)型(「ナシコン型」とも称される)の酸化物固体電解質の1種であるLAGPが用いられる。LAGPは、一般式Li1+xAlGe2-x(PO(0<x≦1)で表される酸化物固体電解質であって、アルミニウム置換リン酸ゲルマニウムリチウム等と称される。この例では、電解質層30のLAGPとして、組成比x=0.5のLi1.5Al0.5Ge1.5(POが用いられる。
電解質層30の一方の面30a側に設けられる正極層10には、固体電解質材料及び正極活物質が含まれる。正極層10の固体電解質材料には、酸化物固体電解質が用いられる。正極層10の酸化物固体電解質には、例えば、電解質層30に用いられる酸化物固体電解質と同種の材料が用いられる。即ち、この例では、正極層10の酸化物固体電解質として、LAGPが用いられる。正極層10の正極活物質には、例えば、ピロリン酸コバルトリチウム(LiCoP,以下「LCPO」と言う)が用いられる。正極層10には、固体電解質材料及び正極活物質のほか、導電助剤が含まれてよい。正極層10の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素材料が用いられる。
電解質層30の他方の面30b側に設けられる負極層20には、固体電解質材料及び負極活物質が含まれる。負極層20の固体電解質材料には、酸化物固体電解質が用いられる。負極層20の酸化物固体電解質には、例えば、電解質層30に用いられる酸化物固体電解質と同種の材料が用いられる。即ち、この例では、負極層20の酸化物固体電解質として、LAGPが用いられる。負極層20の負極活物質には、チタン(Ti)酸化物及びニオブ(Nb)酸化物が用いられる。負極活物質のTi酸化物としては、アナターゼ型TiOが用いられ、負極活物質のNb酸化物としては、直方晶Nbが用いられる。アナターゼ型TiO及び直方晶Nbは、各々の結晶構造の形態で負極層20内に共存する。負極層20には、固体電解質材料及び負極活物質のほか、導電助剤が含まれてよい。負極層20の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素材料が用いられる。
上記のような電解質層30、正極層10及び負極層20を有する固体電池1において、その充電時には、正極層10から電解質層30を介して負極層20にリチウムイオンが伝導して取り込まれ、放電時には、負極層20から電解質層30を介して正極層10にリチウムイオンが伝導して取り込まれる。固体電池1では、このようなリチウムイオン伝導によって充放電動作が実現される。
上記構成を有する固体電池1は、例えば、次のような方法を用いて製造される。
一例として、ドクターブレード法等により、電解質層用グリーンシート、正極層用グリーンシート及び負極層用グリーンシートが準備される。電解質層用グリーンシートは、酸化物固体電解質のLAGP及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。正極層用グリーンシートは、例えば、酸化物固体電解質のLAGP、正極活物質のLCPO、炭素系導電助剤及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。負極層用グリーンシートは、例えば、酸化物固体電解質のLAGP、負極活物質のアナターゼ型TiO及び直方晶Nb、炭素系導電助剤並びに有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。電解質層用グリーンシート、正極層用グリーンシート及び負極層用グリーンシートが、正極層用グリーンシートと負極層用グリーンシートとの間に電解質層用グリーンシートが介在されるように積層され、焼成が行われる。焼成は、大気や酸素等の酸化性ガスが含まれる酸化雰囲気で行われ、この焼成により、電解質層用グリーンシート、正極層用グリーンシート及び負極層用グリーンシートに含まれる有機系バインダー等の有機成分が焼き飛ばされ、脱媒が行われる。更に酸化雰囲気での焼成(「本焼成」とも言う)が行われることで、電解質層用グリーンシート内、正極層用グリーンシート内及び負極層用グリーンシート内に残る材料の焼結が行われる。これにより、電解質層30が正極層10と負極層20との間に介在された構造を有する固体電池1が製造される。
また、別の例として、電解質層用グリーンシート又は焼結体が準備され、正極層用ペースト(若しくはスラリー)、及び負極層用ペースト(若しくはスラリー)が準備される。電解質層用グリーンシートは、酸化物固体電解質のLAGP及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成され、電解質層用焼結体は、酸化物固体電解質のLAGP粉体の圧粉及び焼結により形成される。正極層用ペーストは、例えば、酸化物固体電解質のLAGP、正極活物質のLCPO、炭素系導電助剤及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。負極層用ペーストは、例えば、酸化物固体電解質のLAGP、負極活物質のアナターゼ型TiO及び直方晶Nb、炭素系導電助剤並びに有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。正極層用ペースト及び負極層用ペーストが、スクリーン印刷法等によって、それらの間に電解質層用グリーンシート又は焼結体が介在されるように塗工される。そして、酸化雰囲気での焼成が行われ、有機系バインダー等の有機成分が焼き飛ばされ、脱媒が行われる。更に、酸化雰囲気での本焼成により、正極層用ペースト内及び負極層用ペースト内に残る材料の焼結が行われる。これにより、電解質層30が正極層10と負極層20との間に介在された構造を有する固体電池1が製造される。
尚、固体電池1の製造方法の詳細については後述する。
固体電池1では、上記のように、負極層20の負極活物質として、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbが含まれる。アナターゼ型TiO及び直方晶Nbは、各々の結晶構造の形態で負極層20内に共存する。
ここで、固体電池1の負極層20の負極活物質として、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbのうち、アナターゼ型TiOのみが含まれる場合には、上記のような酸化雰囲気での脱媒や本焼成のための焼成時に、TiOの凝集が起こり易くなることがある。TiOの凝集が起こると、負極層20の焼結性が低下し、焼結密度が低下して、酸化雰囲気での焼成により焼結体として得られる負極層20の抵抗の増大、負極層20を備える固体電池1のエネルギー密度の低下を招く恐れがある。
これに対し、固体電池1の負極層20の負極活物質として、アナターゼ型TiOに加え、直方晶Nbが含まれる場合には、直方晶Nbが負極活物質として機能するほか、焼結助剤としても機能する。これにより、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方を含む負極層20では、上記のような酸化雰囲気での脱媒や本焼成のための焼成時における、TiOの凝集、それによる負極層20の焼結性、焼結密度の低下が抑えられる。その結果、酸化雰囲気での焼成により焼結体として得られる負極層20の抵抗の増大、負極層20を備える固体電池1のエネルギー密度の低下が、効果的に抑えられるようになる。
負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方が用いられることで、優れた電池性能を得ることのできる負極層20を備えた固体電池1が実現される。
[固体電池の製造]
続いて、上記のような構成を含む固体電池の製造方法について説明する。ここでは、次の図2に示すようなチップ形の固体電池を例に、その製造方法について説明する。
図2は固体電池の一構成例を示す図である。図2(A)には、固体電池の一例の外観斜視図を模式的に示している。図2(B)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。図2(B)は、図2(A)の面P1に沿った切断面の一例である。
図2(A)及び図2(B)に示す固体電池1Aは、チップ形電池の一例であって、固体電池本体1Aaと、その両端部にそれぞれ設けられた集電体40及び集電体50とを有する。
固体電池本体1Aaは、図2(B)に示すように電解質層30、正極層10及び負極層20が積層された構造を有する。1組の正極層10と負極層20との間に1層の電解質層30が介在され、最上層の正極層10上、及び最下層の負極層20下に、それぞれ1層の電解質層30が設けられる。正極層10は、固体電池本体1Aaの一端部に設けられる集電体40と接続され、負極層20は、固体電池本体1Aaの他端部に設けられる集電体50と接続される。正極層10の側面は、集電体40との接続部を除き、正極層10と同じ層内に設けられる例えば電解質層30によって囲まれ、負極層20の側面は、集電体50との接続部を除き、負極層20と同じ層内に設けられる例えば電解質層30によって囲まれる。図2(A)及び図2(B)に示すように、固体電池本体1Aaの外面には、例えば、積層された電解質層30群(それらの酸化物固体電解質)が露出する。
固体電池本体1Aaにおいて、電解質層30には、例えば、酸化物固体電解質であるLAGPが用いられる。正極層10には、例えば、酸化物固体電解質のLAGP、正極活物質のLCPO、炭素系導電助剤が含まれる。負極層20には、例えば、酸化物固体電解質のLAGP、負極活物質のアナターゼ型TiO及び直方晶Nb、炭素系導電助剤が含まれる。固体電池本体1Aaの最表面の電解質層30には、図2(A)及び図2(B)に示すように、集電体40及び集電体50のうちいずれが正極側でいずれが負極側であるかを示す極性マーカ2が設けられてよい。この例では、負極層20と接続される集電体50が負極側であることを示す極性マーカ2が設けられる。
図2(A)及び図2(B)に示すような構成を有する固体電池1Aの製造方法について、以下に説明する。
(LAGP粉体の形成)
まず、LAGPの原料となる炭酸リチウム(LiCO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ゲルマニウム(GeO)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)の粉末が所定の組成比となるように秤量され、磁性乳鉢やボールミルで混合される。混合によって得られた混合物は、アルミナルツボ等に入れられ、温度300℃~400℃で3時間~5時間仮焼成される。仮焼成によって得られた粉体は、温度1200℃~1400℃で1時間~2時間の熱処理によって溶解される。溶解によって得られた材料は、急冷され、ガラス化される。これにより、非晶質のLAGP粉体が形成される。
得られた非晶質のLAGP粉体は、200μm以下の粒子径となるように粗解砕され、更にボールミル等の粉砕装置を用いて粉砕されることで、目的の粒径p(メジアン径D50)に調整される。ここで、電解質層用のLAGP粉体については、その粒径pが、例えば2μm≦p≦5μmに調整される。また、電極層用のLAGP粉体については、それぞれ粉体状の活物質の粒子間にLAGP粉体を介在させて電極層のリチウムイオン伝導性を確保する観点から、その粒径pが、電解質層用のものよりも細かい、例えば0.2μm≦p≦1.0μmに調整される。
例えばこのような方法により、図2(B)に示すような固体電池1Aの電解質層30、正極層10及び負極層20に用いられるLAGP粉体が準備される。
(電解質層の形成)
一例として、上記方法によって得られた電解質層用の粒径pのLAGP粉体が、有機系バインダー等と混合され、所定の厚みとなるように調整されて、ドクターブレード法等によりポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)フィルム等のキャリアに塗工され、可塑性のある電解質層用グリーンシート(「LAGPグリーンシート」とも言う)が形成される。例えば、このようにして形成される電解質層用グリーンシートが、図2(B)に示すような電解質層30の形成に用いられる。
また、別の例として、上記方法によって得られた電解質層用の粒径pのLAGP粉体が、一軸油圧プレスによって圧粉体に成形され、温度900℃で3時間焼成される。これにより、電解質層用基板(「LAGP基板」とも言う)が形成される。例えば、このようにして形成される電解質層用基板が、図2(B)に示すような電解質層30の形成に用いられる。
(正極層の形成)
一例として、上記方法によって得られた電極層用の粒径pのLAGP粉体、正極活物質のLCPO、炭素系導電助剤、アクリル樹脂等のバインダーが混合され、所定の厚み及び活物質量となるように調整されて、ドクターブレード法等によりPETフィルム等のキャリアに塗工され、正極層用グリーンシートが形成される。このようにして形成される正極層用グリーンシートが、図2(B)に示すような正極層10の形成に用いられる。
また、別の例として、上記方法によって得られた電極層用の粒径pのLAGP粉体、正極活物質のLCPO、炭素系導電助剤、アクリル樹脂等のバインダーが混合され、正極層用ペースト(若しくはスラリー)が形成される。このようにして形成される電極層用ペーストが、図2(B)に示すような正極層10の形成に用いられる。
(負極層の形成)
一例として、上記方法によって得られた電極層用の粒径pのLAGP粉体、負極活物質のアナターゼ型TiO及び直方晶Nb、炭素系導電助剤、アクリル樹脂等のバインダーが混合され、所定の厚み及び活物質量となるように調整されて、ドクターブレード法等によりPETフィルム等のキャリアに塗工され、負極層用グリーンシートが形成される。負極活物質のアナターゼ型TiOと直方晶Nbとは、重量比1:1(アナターゼ型TiOの重量に対する直方晶Nbの重量の比が1)となるように配合される。例えば、アナターゼ型TiOと直方晶Nbとが予め重量比1:1で混合されたものが、負極活物質として用いられる。このようにして形成される負極層用グリーンシートが、図2(B)に示すような負極層20の形成に用いられる。
また、別の例として、上記方法によって得られた電極層用の粒径pのLAGP粉体、負極活物質のアナターゼ型TiO及び直方晶Nb、炭素系導電助剤、アクリル樹脂等のバインダーが混合され、負極層用ペースト(若しくはスラリー)が形成される。負極活物質のアナターゼ型TiOと直方晶Nbとは、重量比1:1(アナターゼ型TiOの重量に対する直方晶Nbの重量の比が1)となるように配合される。例えば、アナターゼ型TiOと直方晶Nbとが予め重量比1:1で混合されたものが、負極活物質として用いられる。このようにして形成される負極層用ペーストが、図2(B)に示すような負極層20の形成に用いられる。
(固体電池本体の形成)
例えば、電解質層用グリーンシート及び正負極層用グリーンシートを用いたグリーンシート積層法(図3及び図4に示す第1の形成例)によって、又は、電解質層用基板及び正負極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法(図5及び図6に示す第2の形成例)によって、又は、電解質層用グリーンシート及び正負極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法(図7及び図8に示す第3の形成例)によって、図2(B)に示すような固体電池本体1Aaが形成される。
図3及び図4は固体電池本体の第1の形成例について説明する図である。図3(A)~図3(C)にはそれぞれ、固体電池本体に含まれる層の要部斜視図を模式的に示している。図4には、固体電池本体に含まれる層の積層工程の要部断面図を模式的に示している。
図2(B)に示すような固体電池本体1Aaの、正極層10の上下に設けられる電解質層30、負極層20の上下に設けられる電解質層30には、図3(A)に示すような形状を有する電解質層用グリーンシート31(LAGPグリーンシート)が用いられる。電解質層用グリーンシート31は、上記方法によって得られたものがそのまま或いは切断されて、準備される。
図2(B)に示すような固体電池本体1Aaの正極層10には、図3(B)(その中図)に示すような形状を有する正極層用グリーンシート11が用いられる。正極層用グリーンシート11は、上記方法によって得られたものがそのまま或いは切断されて、準備される。更に、固体電池本体1Aaの、正極層10と同じ層内に設けられる電解質層30として、図3(B)(その上図)に示すような形状、即ち、正極層用グリーンシート11をその一端部を除いて囲むことができるような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備される。この電解質層用グリーンシート31は、上記方法によって得られたものが切断されて、準備される。準備された正極層用グリーンシート11と電解質層用グリーンシート31とは、図3(B)(その下図)に示すように、正極層用グリーンシート11がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれるように、予め組み合わされてもよい。
図2(B)に示すような固体電池本体1Aaの負極層20には、図3(C)(その中図)に示すような形状を有する負極層用グリーンシート21が用いられる。負極層用グリーンシート21は、上記方法によって得られたものがそのまま或いは切断されて、準備される。更に、固体電池本体1Aaの、負極層20と同じ層内に設けられる電解質層30として、図3(C)(その上図)に示すような形状、即ち、負極層用グリーンシート21をその一端部を除いて囲むことができるような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備される。この電解質層用グリーンシート31は、上記方法によって得られたものが切断されて、準備される。準備された負極層用グリーンシート21と電解質層用グリーンシート31とは、図3(C)(その下図)に示すように、負極層用グリーンシート21がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれるように、予め組み合わされてもよい。
上記のようにして得られた電解質層用グリーンシート31、正極層用グリーンシート11及び負極層用グリーンシート21が、図4に示すような順序となるように積層され、熱圧着される。これにより、固体電池本体1Aaの基本構造(積層体)が形成される。最上層の電解質層用グリーンシート31には、極性マーカ2が付与されてよい。
図3(B)には便宜上、正極層用グリーンシート11がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれる状態を例示するが、図4に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、正極層用グリーンシート11がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれる状態が得られてもよい。同様に、図3(C)には便宜上、負極層用グリーンシート21がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれるような状態を例示するが、図4に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、負極層用グリーンシート21がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれる状態が得られてもよい。
図5及び図6は固体電池本体の第2の形成例について説明する図である。図5(A)~図5(D)にはそれぞれ、固体電池本体に含まれる層の形成工程の要部斜視図を模式的に示している。図6には、固体電池本体に含まれる層の積層工程の要部断面図を模式的に示している。
上記のように圧粉及び焼結によって形成される、図5(A)に示すような形状を有する電解質層用基板32(LAGP基板)が準備される。電解質層用基板32の一方の面上の一部に、図5(B)に示すように、正極層用ペースト12が、所定の厚み及び活物質量となるように調整されて、スクリーン印刷により塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された正極層用ペースト12中の溶剤が除去される。電解質層用基板32の一方の面上の残部には、図5(C)に示すように、絶縁性ペースト、例えば酸化物固体電解質のLAGPを含む電解質層用ペースト33が、スクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。
尚、正極層用ペースト12のスクリーン印刷による塗工後に電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工を行い、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33を一括で乾燥して溶媒を除去するようにしてもよい。また、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
図5(A)~図5(C)と同様にして、図5(D)に示すように、電解質層用基板32の他方の面上の一部に、負極層用ペースト22が、所定の厚み及び活物質量となるように調整されて、スクリーン印刷により塗工され、その面上の残部に、絶縁性ペースト、例えば電解質層用ペースト33がスクリーン印刷によって塗工される。負極層用ペースト22の塗工後、電解質層用ペースト33の塗工後には、乾燥機によって温度100℃で30分間の乾燥が行われ、塗工された負極層用ペースト22中の溶剤、電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。
尚、負極層用ペースト22のスクリーン印刷による塗工後に電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工を行い、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33を一括で乾燥して溶媒を除去するようにしてもよい。また、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
図5(D)に示すような積層体3が、図6に示すように、電解質層用基板32又は電解質層用グリーンシート31と交互に積層され、熱圧着される。これにより、固体電池本体1Aaの基本構造(積層体)が形成される。最上層の電解質層用基板32又は電解質層用グリーンシート31には、極性マーカ2が付与されてよい。
図5(B)及び図5(C)には便宜上、正極層用ペースト12の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、図6に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、正極層用ペースト12の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。同様に、図5(D)には便宜上、負極層用ペースト22の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、図6に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、負極層用ペースト22の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。
図7及び図8は固体電池本体の第3の形成例について説明する図である。図7(A)~図7(E)にはそれぞれ、固体電池本体に含まれる層の形成工程の要部斜視図を模式的に示している。図8には、固体電池本体に含まれる層の積層工程の要部断面図を模式的に示している。
図7(A)に示すような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備される。電解質層用グリーンシート31上の一部に、図7(B)に示すように、正極層用ペースト12が、所定の厚み及び活物質量となるように調整されて、スクリーン印刷により塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された正極層用ペースト12中の溶剤が除去される。電解質層用グリーンシート31上の残部には、図7(C)に示すように、絶縁性ペースト、例えば電解質層用ペースト33がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。
尚、正極層用ペースト12のスクリーン印刷による塗工後に電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工を行い、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33を一括で乾燥して溶媒を除去するようにしてもよい。また、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、正極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
同様に、図7(A)に示すような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備され、電解質層用グリーンシート31上の一部に、図7(D)に示すように、負極層用ペースト22が、所定の厚み及び活物質量となるように調整されて、スクリーン印刷により塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された負極層用ペースト22中の溶剤が除去される。電解質層用グリーンシート31上の残部には、図7(E)に示すように、絶縁性ペースト、例えば電解質層用ペースト33がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。
尚、負極層用ペースト22のスクリーン印刷による塗工後に電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工を行い、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33を一括で乾燥して溶媒を除去するようにしてもよい。また、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、負極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
図7(C)に示すような積層体4、及び図7(E)に示すような積層体5が、図8に示すように、電解質層用グリーンシート31と交互に積層され、熱圧着される。これにより、固体電池本体1Aaの基本構造(積層体)が形成される。最上層の電解質層用グリーンシート31には、極性マーカ2が付与されてよい。
図7(B)及び図7(C)には便宜上、正極層用ペースト12の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、図8に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、正極層用ペースト12の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。同様に、図7(D)及び図7(E)には便宜上、負極層用ペースト22の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、図8に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、負極層用ペースト22の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。
(焼成)
図9は固体電池本体の基本構造の焼成について説明する図である。図9(A)には、固体電池本体の基本構造の要部断面図を模式的に示している。図9(B)には、固体電池本体の基本構造の焼成工程の要部断面図を模式的に示している。
上記の図3及び図4に示したような方法、又は図5及び図6に示したような方法、又は図7及び図8に示したような方法により、図9(A)に示すような、固体電池本体1Aaの基本構造である積層体100が得られる。積層体100は、焼成前の電解質層30(上記の電解質層用グリーンシート31、電解質層用基板32又は電解質層用ペースト33に相当)と、焼成前の正極層10(上記の正極層用グリーンシート11又は正極層用ペースト12に相当)と、焼成前の負極層20(上記の負極層用グリーンシート21又は負極層用ペースト22に相当)とを含む。
得られた積層体100は、図9(B)に示すように、焼成炉120に搬入される。そして、搬入された積層体100に対し、焼成炉120において、酸化雰囲気中、温度500℃で7時間の加熱によって脱媒のための焼成が行われ、更に、酸化雰囲気中、温度600℃~625℃で2時間の加熱によって焼結のための焼成が行われる。これにより、焼成後の電解質層30、正極層10及び負極層20を有する固体電池本体1Aaが形成される。
ここで、焼成前の積層体100の負極層20には、負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbが含まれる。負極層20の負極活物質として、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbのうち、アナターゼ型TiOのみが含まれる場合には、上記のような酸化雰囲気での焼成時に、TiOの凝集による負極層20の焼結性、焼結密度の低下を招き得る。これに対し、負極層20の負極活物質として、アナターゼ型TiOに加え、直方晶Nbが含まれることで、直方晶Nbが負極活物質として機能するほか、焼結助剤としても機能し、上記のような酸化雰囲気での焼成時のTiOの凝集による負極層20の焼結性、焼結密度の低下が抑えられるようになる。尚、焼成後の焼結体の負極層20内には、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbが、各々の結晶構造の形態で共存するようになる。
(集電体層の形成)
固体電池本体1Aaの形成後、その正極層10が露出する一端部に、銀(Ag)ペースト等により集電体40が形成される。同様に、固体電池本体1Aaの、負極層20が露出する他端部に、Agペースト等により集電体50が形成される。尚、集電体40及び集電体50には、Agペーストのほか、各種金属粒子や炭素粒子等の導電性粒子を含有した導電性ペーストを用いることもできる。固体電池本体1Aaの両端部にAgペースト等の導電性ペーストが塗工され、焼成によってその導電性ペースト中のAg等の導電性粒子が焼結されて、集電体40及び集電体50が形成される。また、集電体40及び集電体50は、スパッタ法等を用いた各種金属の蒸着によって形成されてもよい。固体電池本体1Aaの一端部に正極層10と接続される集電体40が形成され、固体電池本体1Aaの他端部に負極層20と接続される集電体50が形成されて、図2(A)及び図2(B)に示すような構成を有する固体電池1Aが形成される。
[固体電池の特性]
続いて、固体電池の特性の評価結果について説明する。
(焼結性評価)
正極活物質としてLCPOを含む正極層10、並びに負極活物質として重量比1:1のアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(アナターゼ型TiOの重量:直方晶Nbの重量=1:1)を含む負極層20を備えた焼成後の固体電池1A(図2)について、その負極層20の断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)により観察した。また、比較のため、正極活物質としてLCPOを含む正極層、及び負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む負極層を備えた焼成後の固体電池についても同様に、その負極層の断面をSEMにより観察した。
図10は負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池の焼成後の負極層の断面のSEM像の一例である。図11は負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の焼成後の負極層の断面のSEM像の一例である。
図10及び図11より、負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池1A(図2)の負極層20(図10)は、負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の負極層(図11)に比べ、良好な焼結性を示した。一例として、図10及び図11のようなSEM像を用いて焼結密度を求めたところ、負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の負極層(図11)では、その焼結密度が82%であったのに対し、負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbを含む固体電池1Aの負極層20(図10)では、82%超の焼結密度が得られ、例えば91%以上といった高い焼結密度も得られた。尚、焼結密度は、SEM像の画像処理によりそのSEM像内の空隙でない部分の割合を算出することによって求められる。
図10及び図11より、負極層20に負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方が用いられる固体電池1Aでは、その負極層20の焼結密度の低下が抑えられ、良好な焼結性が実現されることが確認された。
(充放電評価)
正極活物質としてLCPOを含む正極層10、並びに負極活物質として重量比1:1のアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(アナターゼ型TiOの重量:直方晶Nbの重量=1:1)を含む負極層20を備えた固体電池1Aについて、下記のような条件の充放電測定を行った。また、比較のため、正極活物質としてLCPOを含む正極層、及び負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む負極層を備えた固体電池についても同様に、下記のような条件の充放電測定を行った。
ここで、充放電測定の条件は、次のようなものとした。充電は、定電流(Constant Current;CC)充電とし、終止電圧3.6V又は終止充電容量230μAhとし、電流値としては、充電レート0.1C(20μA)、0.4C(80μA)、2C(400μA)の条件を用いた。放電は、CC放電とし、終止電圧0.5Vとし、電流値としては、充電レートと同じく、放電レート0.1C(20μA)、0.4C(80μA)、2C(400μA)の条件を用いた。尚、充電レート1Cは、電池理論容量を1時間で完全充電する電流の大きさと定義され、放電レート1Cは、電池理論容量を1時間で完全放電する電流の大きさと定義される。充放電測定は、20℃の恒温槽中で行った。
このような条件を用いて行った充放電測定の結果を図12及び図13に示す。図12は負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池の充放電曲線図の一例である。図13は負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の充放電曲線図の一例である。
図12及び図13より、負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池1Aの負極層20では、負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の負極層に比べ、充放電レート0.1C(20μA)、0.4C(80μA)、2C(400μA)において、良好な充放電特性を示した。
また、充放電レートを所定のサイクルで0.1C(20μA)、0.4C(80μA)、2C(400μA)、0.1C(20μA)と順に変えて連続的に充放電を行った際の放電容量を評価した。結果を図14に示す。図14は負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池と、負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の、充放電レートに対する放電容量の推移を示す図である。
図14より、負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nb(重量比1:1)を含む固体電池1Aの負極層20では、負極活物質としてアナターゼ型TiOのみを含む固体電池の負極層に比べ、いずれの充放電レートにおいても高い放電容量が得られた。
図12~図14より、負極層20に負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方が用いられる固体電池1Aでは、レート特性の改善が確認された。
(考察)
図10及び図11より、負極層20に負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方が用いられる固体電池1Aでは、アナターゼ型TiOのみが用いられる場合に比べ、焼結性が向上された。図12~図14より、負極層20に負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方が用いられる固体電池1Aでは、アナターゼ型TiOのみが用いられる場合に比べ、レート特性の改善が認められ、焼結性の向上により抵抗が低減したことを示す、整合性のとれる結果が得られた。
[他の構成例]
以上の説明では、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbを含む負極層20を備えたチップ形の固体電池1Aを例示したが、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbを含む負極層20を備えた薄形、コイン形、ボタン形、角形、円筒形等の各種形状の電池も形成することが可能である。
図15は固体電池の別の構成例を示す図である。図15(A)には、固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。図15(B)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。図15(B)は、図15(A)の面P2に沿った切断面の一例である。
図15(A)及び図15(B)に示す固体電池1Bは、薄形電池の一例である。固体電池1Bは、外装体200、並びに外装体200から外部に突出する端子210及び端子220を有する。外装体200には、例えば、樹脂、セラミック、絶縁コーティングされた金属等の材料を用いて形成されるフィルム状、袋状又は箱状のもの等を用いることができる。外装体200の内部に、固体電池本体1Baが収容される。固体電池1Bでは、所定の絶縁材料(例えば酸化物固体電解質)で被覆された固体電池本体1Baが、フィルム状、袋状、箱状等の外装体200で更に被覆された構造が採用されてもよい。
固体電池本体1Baは、正極層10及び負極層20、並びにそれらの間に設けられた電解質層30を有する。固体電池本体1Baは更に、正極層10に設けられた集電体40、及び負極層20に設けられた集電体50を有する。固体電池本体1Baの電解質層30、正極層10及び負極層20、並びに集電体40及び集電体50には、上記固体電池本体1Aaについて述べたのと同様の材料が用いられる。正極層10側の集電体40に、接合や溶接等の手法を用いて端子210が接続され、負極層20側の集電体50に、接合や溶接等の手法を用いて端子220が接続される。固体電池本体1Baは、端子210及び端子220の先端部が外部に露出するように、外装体200の内部に収容される。
固体電池1Bでは、負極層20に負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方が用いられることで、酸化雰囲気での焼成によって得られる負極層20の焼結性、焼結密度の低下が抑えられ、負極層20の抵抗の増大、固体電池1Bのエネルギー密度の低下が効果的に抑えられる。優れた電池性能を得ることのできる負極層20を備えた薄形の固体電池1Bが実現される。
また、図16は固体電池の更に別の構成例を示す図である。図16(A)及び図16(B)にはそれぞれ、固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。図16(C)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図16(A)に示す固体電池1Cは、コイン形又はボタン形電池の一例であって、正極層10及び負極層20、並びにそれらの間に設けられた電解質層30を有する。固体電池1Cは、例えば図16(B)に示すように、正極層10及び負極層20にそれぞれ、集電体40及び集電体50が設けられた形態とされてもよい。固体電池1Cは、例えば図16(C)に示すように、正極層10(又はそれに設けられる図示しない集電体)に接続され、且つ負極層20(又はそれに設けられる図示しない集電体)には接続されない、導電性の外装体201で被覆されてもよい。
固体電池1Cの電解質層30、正極層10及び負極層20、或いは更に集電体40及び集電体50には、上記固体電池本体1Aaについて述べたのと同様の材料が用いられる。
固体電池1Cでは、負極層20に負極活物質としてアナターゼ型TiO及び直方晶Nbの両方が用いられることで、酸化雰囲気での焼成によって得られる負極層20の焼結性、焼結密度の低下が抑えられ、負極層20の抵抗の増大、固体電池1Cのエネルギー密度の低下が効果的に抑えられる。優れた電池性能を得ることのできる負極層20を備えたコイン形又はボタン形の固体電池1Cが実現される。
[変形例]
以上の説明では、電解質層30、正極層10及び負極層20に用いる酸化物固体電解質として非晶質のLAGPを例示したが、電解質層30、正極層10及び負極層20にはそれぞれ、非晶質のLAGPに加えて結晶質のLAGPが含まれてもよい。
電解質層30のLAGPには、Li1.5Al0.5Ge1.5(POの組成に限らず、Li1.4Al0.4Ge1.6(POといった他の組成のNASICON型LAGPが用いられてもよい。電解質層30には、LAGPのほか、NASICON型LATP(一般式Li1+zAlTi2-z(PO,0<z≦1)の1種であるLi1.3Al0.3Ti1.7(PO、ガーネット型のジルコン酸ランタンリチウム(LiLaZr12,以下「LLZ」と言う)、ペロブスカイト型のチタン酸ランタンリチウム(Li0.5La0.5TiO,以下「LLT」と言う)、一部を窒化したγ-リン酸リチウム(γ-LiPO,以下「LiPON」と言う)等、他の酸化物固体電解質が用いられてもよい。
正極層10及び負極層20には、用いられる活物質との組み合わせで一定の性能が実現されるものであれば、LAGPのほか、LATP、LLZ、LLT、LiPON等の他の酸化物固体電解質が用いられてもよい。
例えば、電解質層30、正極層10及び負極層20には、一般式Li1+yAl2-y(POで表されるNASICON型の酸化物固体電解質が好適である。ここで、組成比yは0<y≦1の範囲であり、Mはゲルマニウム(Ge)及びチタンの一方又は双方である。
電解質層30、正極層10及び負極層20には、互いに同種の酸化物固体電解質が用いられてもよいし、互いに異種の酸化物固体電解質が用いられてもよい。電解質層30、正極層10及び負極層20にはそれぞれ、1種の酸化物固体電解質が用いられてもよいし、2種以上の酸化物固体電解質が用いられてもよい。
また、以上の説明では、正極層10に含まれる正極活物質としてLCPOを例示したが、正極活物質には、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO)等が用いられてもよい。正極層10には、正極活物質として、1種の材料が用いられてもよいし、2種以上の材料が用いられてもよい。
1,1A,1B,1C 固体電池
1Aa,1Ba 固体電池本体
2 極性マーカ
3,4,5 積層体
10 正極層
11 正極層用グリーンシート
12 正極層用ペースト
20 負極層
21 負極層用グリーンシート
22 負極層用ペースト
30 電解質層
30a,30b 面
31 電解質層用グリーンシート
32 電解質層用基板
33 電解質層用ペースト
40,50 集電体
100 積層体
120 焼成炉
200,201 外装体
210,220 端子

Claims (8)

  1. 第1酸化物固体電解質及び正極活物質を含む正極層と、
    第2酸化物固体電解質及び負極活物質を含む負極層と、
    前記正極層と前記負極層との間に設けられ、第3酸化物固体電解質を含む電解質層と
    を有し、
    前記負極活物質は、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbを含むことを特徴とする固体電池。
  2. 前記負極活物質に含まれる前記アナターゼ型TiOの重量に対する前記直方晶Nbの重量の比が1であることを特徴とする請求項1に記載の固体電池。
  3. 前記負極層は、82%超の焼結密度を有する焼結体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電池。
  4. 前記第1酸化物固体電解質、前記第2酸化物固体電解質及び前記第3酸化物固体電解質のうち、少なくとも前記第2酸化物固体電解質は、Li1.5Al0.5Ge1.5(POを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の固体電池。
  5. 前記正極活物質は、LiCoPを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の固体電池。
  6. 第1酸化物固体電解質及び正極活物質を含む正極層と、
    第2酸化物固体電解質及び負極活物質を含む負極層と、
    前記正極層と前記負極層との間に設けられ、第3酸化物固体電解質を含む電解質層と
    を有する積層体を形成する工程と、
    前記積層体を酸化雰囲気で焼成する工程と
    を含み、
    前記負極活物質は、アナターゼ型TiO及び直方晶Nbを含むことを特徴とする固体電池の製造方法。
  7. 前記負極活物質に含まれる前記アナターゼ型TiOの重量に対する前記直方晶Nbの重量の比が1であることを特徴とする請求項6に記載の固体電池の製造方法。
  8. 前記酸化雰囲気で焼成された前記積層体の前記負極層は、82%超の焼結密度を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の固体電池の製造方法。
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