JP2022147714A - 全量噴射型エアゾール製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベンジルアルコールを有効成分とし、噴射後のベタつきの問題を解消し得る全量噴射型エアゾール製品を提供する。【解決手段】エアゾール容器に収容されているエアゾール組成物の全量を一回の噴射操作で噴射する全量噴射型エアゾール製品において、エアゾール組成物は、ベンジルアルコールを含む原液と噴射剤とを含んでいる。エアゾール容器から噴射されるエアゾール組成物の50%平均粒子径が100μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、エアゾール容器に収容されているエアゾール組成物の全量を一度に噴射する全量噴射型エアゾール製品に関する。
屋内空間の除菌・抗菌などを目的として、除菌・抗菌剤を空間に噴射する全量噴射型エアゾール製品が知られている(例えば特許文献1、2参照)。このような全量噴射型エアゾール製品は、有効成分と、溶剤と、噴射剤とを含むエアゾール組成物をエアゾール容器に収容したもので、噴射操作を一回行うと、エアゾール組成物の噴射が開始され、数秒から数分かけてエアゾール組成物の全量が噴射される。
上記全量噴射型エアゾール製品以外にも、除菌・抗菌剤を空間に放出するものとしては燻蒸剤も知られている(例えば特許文献3、4参照)
特開2002-20202号公報 特開2005-2066号公報 特開2016-209533号公報 特開2017-38945号公報
ところで、特許文献3、4に開示されている燻蒸剤は、加熱反応用に水を加える必要があり、またこれにより熱が発生するなどの点で必ずしも扱いやすいものではない。この点、特許文献1、2に開示されている全量噴射型エアゾール製品を用いた除菌・抗菌剤は、水等を加える必要がなく、簡単な操作で空間全体を一度に処理できる点で優れている。
しかし近年の衛生意識の高まりに伴い、菌への効果のみならず、ウイルスへの効果や消臭効果もある空間処理剤が求められている。
この点、特許文献4には、二酸化塩素を用いて空間のウイルスを失活させる方法が提案されているが、家庭において安定した濃度で放出することの困難性に加え、高濃度では安全性についての懸念がある。
そこで、本発明者は、抗菌・抗ウイルス・消臭等の効果があり、しかも成分として安定しており安全性にも問題のない有効成分を探索したところ、ベンジルアルコールを有効成分として見出した。
しかしながら、ベンジルアルコールは油性の液体であり、揮発性も高くないことから、仮にこれをエアゾール組成物に混入して噴射したとすると、周囲に付着してベタつきの原因となってしまうことが明らかになった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベンジルアルコールを有効成分とし、噴射後のベタつきの問題を解消し得る全量噴射型エアゾール製品を提供することにある。
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、エアゾール容器に収容されているエアゾール組成物の全量を1回の噴射操作で噴射する全量噴射型エアゾール製品を前提とすることができる。前記エアゾール組成物は、ベンジルアルコールを含む原液と、該原液を噴射させるための噴射剤とを含んでおり、前記エアゾール容器から噴射される前記エアゾール組成物の平均粒子径を100μm以下とすることができる。
この構成によれば、一回の噴射操作を行うと、エアゾール容器に収容されているエアゾール組成物の全量が所定時間で噴射される。これにより、空気中の菌、ウイルスを失活させることができるとともに、消臭効果も発揮される。噴射されるエアゾール組成物の平均粒子径が100μm以下であるため、空気中の広い範囲に拡散しやすくなる。これにより、ベンジルアルコールが周囲の物等に大きな液滴や液膜として付着しにくくなるとともに、付着したとしてもその量が少なくなり、ベタつきが抑制される。
本開示の第2の側面では、前記エアゾール容器から噴射された前記エアゾール組成物の50%平均粒子径を30μm以下とすることで、噴射された粒子が空間のより一層広い範囲に拡散し易くなるとともに、べたつきの抑制効果がより一層高まる。
本開示の第3の側面では、前記原液は、溶剤を含んでおり、前記溶剤は、エタノールである。すなわち、エタノールはベンジルアルコールを溶解させる溶剤として好適であり、しかも揮発性が高いためベタつき難く特に好適である。
本開示の第4の側面では、前記エアゾール組成物に含まれるベンジルアルコールが1質量%以上である。すなわち、ベンジルアルコールの濃度が高いとベタつきが発生し易くなるが、本構成によりベタつきの抑制効果がより一層高まるため特に好適である。
以上説明したように、エアゾール容器から噴射されるベンジルアルコールを含むエアゾール組成物の平均粒子径を100μm以下としたので、ベンジルアルコールを有効成分として抗菌・抗ウイルス・消臭等の効果を得ながら、噴射後のベタつきの問題を解消することができる。
本発明の実施形態に係る全量噴射型エアゾール製品の斜視図である。 上記全量噴射型エアゾール製品の縦断面図である。 インフルエンザウイルスに対する空間接触効果を示すグラフである。 ネコカリシウイルスに対する空間接触効果を示すグラフである。 インフルエンザウイルスに対する直接接触効果を示すグラフである。 ネコカリシウイルスに対する直接接触効果を示すグラフである。 アンモニアに対する消臭効果を示すグラフである。 イソ吉草酸に対する消臭効果を示すグラフである。 ジアセチルに対する消臭効果を示すグラフである。 トリメチルアミンに対する消臭効果を示すグラフである。 メルカプタンに対する消臭効果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る全量噴射型エアゾール製品1を示すものである。全量噴射型エアゾール製品1は、エアゾール組成物と、エアゾール組成物を収容するエアゾール容器11と、操作部材12と、保護部材13とを備えている。エアゾール容器11は、エアゾール缶等で構成されている。図2に示すように、エアゾール容器11の上部には、エアゾール組成物が噴出する筒状部材からなるステム11aと、噴射バルブ11bとが設けられている。ステム11aは、上下方向に延びる姿勢で設けられており、図示しない付勢部材によって上方へ付勢されている。噴射バルブ11bは、ステム11aを下方へ押動させることによって開状態となる。
操作部材12は、ステム11aを下方へ押動操作させるための部材であり、例えば樹脂材等で構成されている。操作部材12には、筒部12aと、レバー部12bとが設けられている。筒部12aは、上下方向に延びており、下端部は開放されている。筒部12aの下部には、ステム11aの上部が嵌入するようになっている。ステム11aの上部が筒部12aの下部に嵌入した状態で、ステム11aと筒部12aとの間がシールされるようになっている。操作部材12には、一度押し下げられると当該押し下げ状態を維持するロック機構が設けられている。これにより操作部材12を一度押し下げると、噴射バルブ11bが開状態に保持されてエアゾール組成物の全量が噴射されるように構成されている。このように一度の操作で全量を噴霧するエアゾールを全量噴霧型エアゾールと呼ぶことができ、従来から周知のものである。
筒部12aの内部はステム11aから噴射されたエアゾール組成物が流通する通路12cとなっている。筒部12aの上端部には、通路12cの下流端と連通する噴射口12dが上方へ向けて開口している。噴射口12dの開口径は、通路12cの径よりも小さく設定されている。通路12cの径は、例えば1mm以上3mm以下の範囲で設定することができる。また、噴射口12dの開口径は、例えば0.2mm以上1.0mm以下の範囲で設定することができる。噴霧口12dの開口径は、0.3mm以上0.8mm以下が更に好ましい。また、通路12cの長さは、10mm以上30mm以下の範囲で設定することができる。
レバー部12bは、筒部12aの上下方向中間部から当該筒部12aの軸線と交差する方向へ突出している。レバー部12bは水平方向に突出していてもよいし、上または下方向に傾斜していてもよい。レバー部12bの形状は、例えば板状にすることができる。
操作部材12は、上方へ延びる周壁部12eを備えている。周壁部12eは、筒部12aを囲むように形成されており、上端部が開放されている。周壁部12eは、上方へ行くほど拡径するように形成されている。また、周壁部12eにおけるレバー部12b側が最も高く、反レバー部12b側へ行くほど低くなるように、当該周壁部12eの形状が設定されている。尚、周壁部12eは省略してもよい。
保護部材13は、エアゾール容器11の上部に嵌合する筒状の嵌合部13aと、嵌合部13aの上部から上方へ突出する複数の突出部13bとを備えている。複数の突出部13bは、エアゾール容器11の周方向に互いに間隔をあけて配置され、筒部12a及び周壁部12eが複数の突出部13bによって囲まれている。また、各突出部13bは、筒部12a及び周壁部12eよりも上まで延びており、これにより、筒部12a及び周壁部12eを保護する突出部13bによって保護することが可能になる。尚、保護部材13は省略してもよい。
エアゾール組成物は、ベンジルアルコールを含む原液と、該原液を噴射させるための噴射剤とを含んでいる。原液には、溶剤が含まれていてもよい。エアゾール組成物に含まれるベンジルアルコールは、例えば1質量%以上とすることができる。エアゾール組成物に含まれるベンジルアルコールは、例えば3質量%以上、または5質量%以上とすることもできる。エアゾール組成物に含まれるベンジルアルコールの上限は、例えば10質量%以下とすることができる。ベンジルアルコールの上限は20重量%以下、または30重量%以下とすることもできる。ベンジルアルコールの上限は40重量%以上でもよいが、ベンジルアルコールの量を増やしすぎると、ベンジルアルコールと噴射剤が分離することがある。この場合は溶剤を配合してベンジルアルコールと噴射剤とを均一に溶解させることが好ましい。溶剤としては、例えばエタノールを挙げることができる。溶剤の配合量は、ベンジルアルコールと噴射剤を均一に溶解させることができる量以上であれば良い。溶剤の配合量は、例えばベンジルアルコールの質量と同等以上、より好ましくはベンジルアルコールの質量の3倍以上とすることができる。なお、ベンジルアルコールと噴射剤が分離しない場合には、溶剤は配合しなくても良いが、その場合であっても、エタノールのように揮発性の溶剤を配合すれば粒子径が細かくなり拡散性が良好になる。エアゾール組成物に含まれる噴射剤は、例えば30質量%以上、または40質量%以上とすることができ、50質量%以上が好ましい。噴射剤を50質量%以上とすることで、粒子径が細かくなり拡散性が良好になる。
噴射剤は、例えば液化石油ガス、ジメチルエーテル等であり、これらのうち、一方のみを使用してもよいし、これらを混合して使用してもよい。
エアゾール容器11から噴射されるエアゾール組成物の50%平均粒子径は100μm以下である。上記平均粒子径は、噴射剤の圧力、噴射剤の量、噴射口12dの開口径、通路12cの径、通路12cの長さ等の各要素を変更すること任意の粒子径に設定することができる。この実施形態では、上記平均粒子径を100μm以下としているが、例えば50μm以下であってもよく、また、30μm以下であってもよい。上記平均粒子径の下限は、例えば10μm以上とすることができる。
エアゾール組成物の平均粒子径の測定方法としては、レーザー回析式粒径分布測定装置を使用した測定方法とすることができる。具体的には、上記測定装置を用いて、噴射口12dから噴射軸線方向に10cm離れた所での粒径分布を測定する。そして、50%粒子径d50(累積分布)で表した平均粒子径が、上述した100μm以下、または50μm以下、または30μm以下となるように、上記各要素が設定されている。この場合、例えば、測定時の気温は20℃~25℃、湿度は35%~40%である。
エアゾール組成物の全量を噴射するのに要する時間は、噴射剤の圧力、噴射剤の量、噴射口12dの開口径、通路12cの径等によって設定することができる。エアゾール組成物の全量を噴射するのに要する時間は、数秒程度~数分程度に設定することができる。なお、この実施例では、エアゾール組成物の全量を噴射するのに要する時間は70秒~100秒程度に設定されている。
(エアゾール組成物の処方例)
Figure 2022147714000002
次に、エアゾール組成物の処方例について説明する。エアゾール組成物の処方例は表1に示すとおりである。例えば、エアゾール組成物100g中、ベンジルアルコールは4.5g、99%合成アルコール(エタノール)は20.3g、残部を噴射剤とすることができるが、これに限られるものではなく、上述した範囲内でベンジルアルコールの量を変更することができる。このエアゾール組成物を、例えば200ml以上、エアゾール容器11に収容して全量噴射型エアゾール製品1とすることができる。エアゾール容器11へのエアゾール組成物の収容量としては、150ml以上350ml以下の範囲で設定することができる。また、エアゾール容器11の内圧は、25℃のときに0.50MPa以上0.54MPa以下の範囲であり、また、35℃のときに0.65MPa以上0.68MPa以下の範囲である。なお、噴霧するベンジルアルコールの量、エアゾール容器11の容量等は、処理する空間の大きさに応じて適宜設定することができる。
(ベンジルアルコールの気中濃度)
被処理空間内のベンジルアルコールの気中濃度の上限は、人体への影響を考慮して設定する。全量噴射型エアゾール製品1は、単発的に使用して使用後には換気をすることが前提であるので、単回毒性で良い場合があり、この場合は、気中濃度が2000ppm以下、好ましくは1500ppm以下となるようにベンジルアルコールの放散量を設定するのが好ましい。その場合であっても、換気後の室内には人が留まることが想定されるため、換気後の気中濃度は慢性毒性を考慮することが好ましい。この場合は、換気後のベンジルアルコールの気中濃度が6ppm以下、より好ましくは0.6ppm以下となるように換気条件等を設定するのが好ましい。
また、ベンジルアルコールの気中濃度が0.05ppm以上となるようにベンジルアルコールの放散量を設定することもできる。これにより、各種ウイルスや菌を不活性化することができる。本実施形態によれば、例えばインフルエンザウイルス、ネコカリシウイルス、大腸菌等を不活性化することができる他、アンモニア等に対する消臭効果を得ることができる。
(全量噴射型エアゾール製品1の使用方法)
次に、上記のように構成された全量噴射型エアゾール製品1の使用方法(空間処理方法法ともいう)について説明する。処理対象となる空間は、例えば一般家庭の部屋、事務所、店舗、教室、各種イベントスペース、車両の室内、航空機の室内、船舶の室内等を挙げることができるが、これら以外の空間を対象とすることもできる。
まず、図2に示すように、全量噴射型エアゾール製品1を設置面100に設置する。このとき、例えば床面や机の上、台の上等が設置面100となり得るが、他の物の上に全量噴射型エアゾール製品1を設置してもよい。窓などは全て閉め、換気扇等も停止しておくことが好ましい。
その後、ユーザーが全量噴射型エアゾール製品1のレバー部12bを下方へ押すと、当該レバー部12bと一体の筒部12aに対して下向きの力が作用する。これにより、筒部12aに嵌入しているステム11aが付勢部材による付勢力に抗して下方へ移動し、噴射バルブ11bが開状態になるとともに、操作部材12のロック機構によってこの状態に保持される。噴射バルブ11bが開状態で保持されると、噴射剤の圧力によってエアゾール組成物が筒部12a内の通路12cを上方へ流通し、噴射口12dから上方へ噴射される。噴射が開始されると、噴射されたエアゾール組成物を吸い込まないためにユーザーは空間の外に退出するとともに、当該空間を締め切ることが好ましい。70秒から100秒かけてエアゾール組成物の全量が放出される。
エアゾール組成物に含まれるベンジルアルコールにより、空間の菌、ウイルスが不活化するとともに、空間を消臭することができる。また、ベンジルアルコールが物に付着した場合、その物に存在している菌やウイルスを不活化する。また、エアゾール組成物の平均粒子径が100μm以下であるため、空気中の広い範囲に拡散しやすくなる。これにより、ベンジルアルコールが周囲の物等に大きな液滴や液膜として付着しにくくなるとともに、付着したとしてもその量が少なくなり、ベタつきが抑制される。
エアゾール組成物の全量が放出されてから、少なくとも1時間は空間を締め切ることが好ましい。このように空間を締め切ることで、ベンジルアルコールの気中濃度が高濃度で維持され、当該空間の除菌、ウイルス不活性化、消臭を行うことができる。
また、空間を締め切ることで、噴射されたエアゾール組成物の細かい粒子が沈降し、空間内の物や、壁面や床面などに付着する。なおこの場合、エアゾール組成物は、平均粒子径が100μm以下の細かい粒子として空間内に拡がって広い表面積に薄く付着するので、空間内の物や壁面や床面にべたつきの問題はない。これにより、空間内の物体表面の除菌、ウイルス不活性化、消臭を行うことができる。
噴射完了後、空間を閉め切っている間は、気中濃度が高くなっているので空間への立ち入りを禁止とすることが好ましい。所定時間(例えば1時間)経過後、空間を開放し、充分に換気する。例えば9畳の部屋において、本実施形態の全量噴射型エアゾール製品を噴射して1時間締め切った後、15分間の換気を行えば、ベンジルアルコールの気中濃度が2.5mg/m3(0.56ppm)以下となる。このように換気を行ったあと、空間内に立ち入り可とする。
ところでベンジルアルコールは、水やエタノールに比べると蒸散しにくいので、空間内の物や床面や壁面に付着したベンジルアルコールは数日から数週間にわたって残留する。これにより、空間内の物体表面の除菌、ウイルス不活性化、消臭の効果を持続させることができる。
また、空間内の物体表面に付着したベンジルアルコールは、常温でも徐々に空気中に蒸散していく。このため、換気を行った後も、空間内の物や壁面や床面に付着したベンジルアルコールが徐々に蒸散し(再蒸散)、空間内のベンジルアルコールの気中濃度は数日から数週間にわたって0.05ppm以上に維持される。これにより、当該空間の除菌、ウイルスウイルス不活性化、消臭の効果が持続する。なお、持続時間はベンジルアルコールの放出量によって設定することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(空間接触によるウイルス不活性化試験)
本試験は、ベンジルアルコールを有効成分とする原液を空間に揮発させ、当該空間内の物体表面のウイルスへの不活性化効果を確認した基礎試験である。
1.容積が10Lのガラスシリンダーを設置し、ガラスシャーレに入れた目的量のベンジルアルコールをガラスシリンダー内に入れておく。ベンジルアルコールの量は0.002mgであり、ベンジルアルコールの全量が揮発すると、ガラスシリンダー内のベンジルアルコールの気中濃度は0.05ppmとなる。また、ベンジルアルコールの量を0.0009mgとすることで、ガラスシリンダー内のベンジルアルコールの気中濃度は0.02ppmとなる。
2.調湿用の飽和水溶液をガラスシリンダー内に入れる。
3.ウイルス50μLを2cm×2cmの金巾布に塗布する。
4.当該金巾布を前記ガラスシリンダー内に配置し、揮発したベンジルアルコールを含む空気に、30分間または1時間接触させる。
5.接触後の金巾布をガラスシリンダーから取り出し、マイクロチューブに入れる。
6.PBS(リン酸緩衝液)350μLを金巾布に浸透させるように入れ、上下にPBSを移動させるようにマイクロチューブを叩く。
7.金巾布およびPBSを入れたマイクロチューブの底部に熱したピンセットで穴をあけるとともに、その下に別のマイクロチューブを重ねる。2つのマイクロチューブを重ねた状態で、25℃・10000rpmで1分間遠分離する。
8.サンプル数×8のマイクロチューブを用意し、450μLずつDMEMを分注しておく。
9.遠心分離後に、下のマイクロチューブに落ちたウイルス液を50μLとって、DMEMを分注したマイクロチューブの1つに入れて希釈する。希釈後のウイルス液を50μLとって、前記同様に順次8段階希釈する。
10.培養各細胞を培養した培養プレート用意し、各ウェルの培養液をアスピレーターで抜いておく。
11.8段階に希釈したウイルス液を、それぞれ50μLウェルに分注する。
12.37℃、二酸化炭素5%のインキュベーターで60分インキュベートする。
13.反応後に、ウイルス液を除去し、DMEMを各ウェルに100μLずつ打ち、4日間培養する。
このとき、インフルエンザウイルスの場合は、DMEM100μL/well+30μg/mL Trypsinとなるように、各ウェルに混合液を注ぐ。
14.エタノール:酢酸=4:1(重量比)を各ウェルに100μL程度注ぎ、固定化する。時間は、40分程度である。
15.固定化液を除いた後、アミドブラック0.5%in45%エタノール,10%酢酸を30μLずつ注ぎ、細胞を染色する。
16.水を溜めた容器にプレートごと浸し、細胞が傷つかないように染色液を洗い流す。
17.常法によりウイルス感染価TCID50を求めた。
以上の工程(工程1~17)をインフルエンザウイルスと、ネコカリシウイルスとで行った。また、ブランクを用意し、ブランクでは上記工程1においてベンジルアルコールを入れず、上記工程4におけるウイルスとベンジルアルコールとの空間接触を行わない。また、上記工程1でガラスシリンダー内のベンジルアルコールの濃度を0.02ppm、0.05ppm、0.1ppmの3つに変えた試験系も用意し、それぞれについて、インフルエンザウイルスとネコカリシウイルスで試験を行った。
インフルエンザウイルスを用いた試験結果を図3のグラフに示す。上記工程4で、インフルエンザウイルスをベンジルアルコールに30分間空間接触させた場合と、1時間空間接触させた場合とを行っており、グラフの左側が30分間空間接触させた場合を示し、グラフの右側が1時間空間接触させた場合を示している。ベンジルアルコールの濃度が0.02ppmであってもインフルエンザウイルスを不活化する効果が得られるが、ベンジルアルコールの濃度が0.05ppm以上では、1時間空間接触させることでインフルエンザウイルスを99%以上不活化させることができる。
ネコカリシウイルスを用いた試験結果を図4のグラフに示す。ベンジルアルコールの濃度が0.02ppmであっても1時間空間接触させれば、ネコカリシウイルスを不活化する効果が得られるが、ベンジルアルコールの濃度が0.05ppm以上では、1時間空間接触させることでネコカリシウイルスを99%以上不活化させることができる。
(抗ウイルス効果の持続試験)
空間に放散されたベンジルアルコールは、少なくともその一部が空間内の物体の表面に付着する。本試験は、空間をベンジルアルコールで処理した後、当該空間内の物体表面にベンジルアルコールが付着したことを想定したもので、ベンジルアルコールが付着した後、当該物体表面における抗ウイルス作用がどれだけ持続するかを確認した基礎試験である。
1.2×2cmの金巾布に指定量のベンジルアルコールを塗布し、解放空間にて指定日数(3日、7日、14日、21日)静置する。
2.指定日数経過後の金巾布に、インフルエンザウイルス、またはネコカリシウイルスを50μL塗布し、2時間(ISO基準)直接接触させる。
3.接触後の金巾布をマイクロチューブに入れる。
4.PBS(リン酸緩衝液)350μLを金巾布に浸透させるように入れ、上下にPBSを移動させるようにマイクロチューブを叩く。
5.金巾布およびPBSを入れたマイクロチューブの底部に熱したピンセットで穴をあけるとともに、その下に別のマイクロチューブを重ねる。2つのマイクロチューブを重ねた状態で、25℃・10000rpmで1分間遠分離する。
6.サンプル数×8のマイクロチューブを用意し、450μLずつDMEMを分注しておく。
7.遠心分離後に、下のマイクロチューブに落ちたウイルス液を50μLとって、DMEMを分注したマイクロチューブの1つに入れて希釈する。希釈後のウイルス液を50μLとって、前記同様に順次8段階希釈する。
8.培養細胞を培養した培養プレートを用意し、各ウェルの培養液をアスピレーターで抜いておく。
9.8段階に希釈したウイルス液を、それぞれ50μLウェルに分注する。
10.37℃、二酸化炭素5%のインキュベーターで60分インキュベートする。
11.反応後に、ウイルス液を除去し、DMEMを各ウェルに100μLずつ打ち、4日間培養する。
このとき、インフルエンザウイルスの場合は、DMEM100μL/well+30μg/mL Trypsinとなるように、各ウェルに混合液を注ぐ。
12.エタノール:酢酸=4:1(重量比)を各ウェルに100μL程度注ぎ、固定化する。時間は、40分程度である。
13.固定化液を除いた後、アミドブラック0.5%in45%エタノール,10%酢酸を30μLずつ注ぎ、細胞を染色する。
14.水を溜めた容器にプレートごと浸し、細胞が傷つかないように染色液を洗い流す。
15.常法によりウイルス感染価TCID50を求めた。
以上の工程(工程1~15)をインフルエンザウイルスと、ネコカリシウイルスとで行った。また、ブランクを用意し、ブランクでは工程1でベンジルアルコールの塗布を行わない。
インフルエンザウイルスを用いた試験結果を図5のグラフに示す。ベンジルアルコールの気中濃度32ppmで空間を処理した場合と、49ppmで空間を処理した場合を想定し、指定日数が3日間、7日間、14日間、21日間のそれぞれについて試験している。なお、ベンジルアルコールの気中濃度32ppmで空間を処理すると想定した場合、例えば3.6m×3.6m×2.4mの部屋であれば、処理後にベンジルアルコールの全量が床面に付着すると考えた場合、その2cm×2cmの領域には約1.4μgのベンジルアルコールが付着する。そこで、32ppm想定の試験では、工程1において金巾布に塗布するベンジルアルコールの指定量を1.4μgとした。同様に、ベンジルアルコールの気中濃度49ppmで空間を処理すると想定した場合、2cm×2cmの領域には2.1μgのベンジルアルコールが付着する。そこで、49ppm想定の試験では、工程1において金巾布に塗布するベンジルアルコールの指定量を2.1μgとした。
図5に示すように、ベンジルアルコールの気中濃度32ppm以上で空間を処理すれば、当該処理後、空間内の物体表面に付着したベンジルアルコールによって7日間にわたってインフルエンザウイルスを99.9%以上不活化させることができる。
ネコカリシウイルスを用いた試験結果を図6のグラフに示す。図6に示すように、ベンジルアルコールの気中濃度49ppm以上で空間を処理すれば、当該処理後、空間内の物体表面に付着したベンジルアルコールによって7日間にわたってネコカリシウイルスを99%以上不活化させることができる。
(浮遊ウイルス不活化試験)
次に、空気中に浮遊しているウイルス(浮遊ウイルス)の不活化試験について説明する。本試験における供試剤は、表1のエアゾール組成物を含む全量噴霧型エアゾールである。試験空間は、2畳程度の部屋を想定したチャンバーであり、具体的には、幅186cm、奥行186cm、高さ186cmの大きさである。この試験空間で供試剤を全量噴霧したときのベンジルアルコールの気中濃度は26ppmである。
1.ディープフリーザーに-40℃で保管している大腸菌ファージを取り出し室温で融解させる。尚、本試験では、インフルエンザウイルス等の代わりに、大腸菌ファージを使用するが、大腸菌ファージはエンベロープウイルスに近い構造をしており、インフルエンザウイルス等の代替になると考えられる。
2.生理食塩水10mLに対して大腸菌ファージ10μLを加え攪拌する。
3.ネブライザーにファージ液を入れ、チャンバー内に15分間噴霧する。
4.ファージ液の噴霧開始とほぼ同時に、供試剤の噴霧を開始する(全量噴霧が完了するまで数十秒程度 )。
5.噴霧開始から15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間、4時間後のそれぞれのタイミングで、浮遊しているファージをインピンジャーにて回収する。
6.1.5mL滅菌チューブにLB 液体培地を450μL加える。
7.回収したファージ液を前記1.5mLチューブに加え、10-5まで段階希釈を行う。
8.ファージ用の大腸菌の前培養液を50mLコニカルチューブに移し1500rpmで15分間遠心分離を行う。
9.遠心後、10mLまでメスアップする。
10.新しい1.5mL滅菌チューブに大腸菌液を350μL分注する。
11.チューブに分注した大腸菌液に、ファージ液の希釈液350μLを加え、混合液とする。
12.LB寒天培地(シャーレまたはLB6穴プレート)を冷蔵庫から取り出し、40℃インキュベーターに移動する。
13.恒温槽で40℃~43℃に調整したLBソフトアガーに混合液を100μL(6穴プレートを用いる場合)または200μL(シャーレを用いる場合)加える。
14.混合液を加えたソフトアガーを寒天培地に全量注ぎ、一定時間放置し固まるまで待つ。
15.固まった後のシャーレ、または6穴プレートを40℃のインキュベーターに保管し、24時間後プラークを確認する。
試験結果を表2に示す。
Figure 2022147714000003
ブランクは、工程4で供試剤による処理を行わないチャンバーである。ブランクにおける時間は、上記工程5の時間である。実施例は、上記工程3においてチャンバー内でファージ液を噴霧した直後に、チャンバー内で供試剤を全量噴霧した例である。このときに噴射されたエアゾール組成物の50%平均粒子径は、22.3μmであった。表2における実施例の時間は、エアゾール組成物の噴射完了時からの経過時間であり、上記工程4の時間と殆ど同じである。
表2に示すように、実施例では噴射完了から15分経過すると、大腸菌ファージが99%以上不活化し、噴射完了から2時間経過すると、大腸菌ファージが99.99%以上不活化する。尚、エアゾール組成物の50%平均粒子径が100μmであっても同様な効果が得られる。
(アンモニアに対する消臭効果確認試験)
本願発明者らの検討により、有効成分であるベンジルアルコールは、空間での消臭効果があることが確認された。以下、この消臭効果について説明する。
本試験は、ベンジルアルコールを有効成分とするエアゾール組成物を空間に揮発させ、当該空間内の悪臭成分に対する消臭効果を確認した。すなわち、ベンジルアルコールが液の状態ではなく、蒸気の状態で空間に放散された場合における効力を確認したものである。
まず、家庭内の各種悪臭の一つであるアンモニアに対するエアゾール組成物による消臭効果確認試験について説明する。
1.容積が10Lのガラスシリンダーを用意し、そのガラスシリンダーの上端をガラス製の蓋で閉塞し、下端も同様に閉塞する。
2.ガラスシリンダー内にろ紙(ADVANTEC,No5A,90mm)を入れたシャーレを置いた。ろ紙にアンモニアを塗布した。アンモニアは、0.4%水溶液で準備し、その水溶液を0.25mL塗布した。
3.ガラスシリンダー内にアンモニアが充満するまで待ち、充満した後、ろ紙をガラスシリンダーから取り出す。
4.別のろ紙に供試剤を所定量塗布し、ガラスシリンダー内に置く。供試剤は、ベンジルアルコールである。0.0022mgのベンジルアルコールをろ紙に塗布した。全量が揮発すると、ガラスシリンダー内のベンジルアルコールの気中濃度は0.05ppmとなる。
5.供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置いて蓋をした直後から経過時間を測定するとともに、所定時間経過毎に、検知管を使用してガラスシリンダー内の気中の悪臭成分の濃度を測定した。検知管は、「ガステック 気体検知管 No.36L アンモニア」である。
測定結果は図7のグラフに示す通りとなった。図7に示すグラフの横軸は経過時間であり、縦軸はブランクと比較した悪臭除去率(供試剤による悪臭除去率)である。ブランクは、工程4において供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置かない場合である。悪臭除去率Aは以下の式で算出した。
A=(ブランクの測定値-供試剤を使用した場合の測定値)/ブランクの測定値×100(%)
グラフに示すように、供試剤による悪臭除去率は、30分経過時には63%、1時間経過時には67%、2時間経過時には80%、3時間経過時には100%であり、ガラスシリンダー内の空間に処理した後、3時間経過することで略全てのアンモニアがガラスシリンダー内から除去された。なお、芳香消臭脱臭剤協議が定めている判断基準では、同様の試験(ガラスシリンダーの代わりにエアーバッグを使用)で悪臭成分の90%除去時間が10時間以内であれば消臭効果ありとしている。今回は3時間で100%除去だったので、上記判断基準に照らし、アンモニアに対する消臭効果があったといえる。
(イソ吉草酸に対する消臭効果確認試験)
次に、家庭内の各種悪臭の一つであるイソ吉草酸に対するエアゾール組成物による消臭効果確認試験について説明する。試験系はアンモニアの試験と同様である。異なる点は、工程2において、ろ紙にイソ吉草酸を塗布した点である。イソ吉草酸は、0.4%水溶液で準備し、その水溶液を0.3mL塗布した。工程5において濃度測定に用いた検知管は、「ガステック 気体検知管 No.81L 酢酸」である。
測定結果は図8のグラフに示す通りとなった。図8に示すグラフの横軸は経過時間であり、縦軸はブランクと比較した悪臭除去率(供試剤による悪臭除去率)である。ブランクは、工程4において供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置かない場合である。悪臭除去率の算出式はアンモニアの試験と同じである。
グラフに示すように、供試剤による悪臭除去率は、1時間経過時には13%、2時間経過時には38%、3時間経過時には62%、4時間経過時には87%、5時間経過時には100%であり、ガラスシリンダー内の空間に処理した後、5時間経過することで略全てのイソ吉草酸がガラスシリンダー内から除去されたので、消臭効果があったといえる。
(ジアセチルに対する消臭効果確認試験)
次に、家庭内の各種悪臭の一つであるジアセチルに対するエアゾール組成物による消臭効果確認試験について説明する。試験系はアンモニアの試験と同様である。異なる点は、工程2において、ろ紙にジアセチルを塗布した点である。ジアセチルは、0.1%溶液をイオン交換水で希釈し、300μL塗布した。工程5において濃度測定に用いた検知管は、「ガステック 気体検知管 アセトアルデヒド」である。
測定結果は図9のグラフに示す通りとなった。図9に示すグラフの横軸は経過時間であり、縦軸はブランクと比較した悪臭除去率(供試剤による悪臭除去率)である。ブランクは、工程4において供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置かない場合である。悪臭除去率の算出式はアンモニアの試験と同じである。
グラフに示すように、供試剤による悪臭除去率は、30分経過時には50%、1時間経過時には100%であり、ガラスシリンダー内の空間に処理した後、1時間経過することで略全てのジアセチルがガラスシリンダー内から除去されたので、消臭効果があったといえる。
(トリメチルアミンに対する消臭効果確認試験)
次に、家庭内の各種悪臭の一つであるトリメチルアミンに対するエアゾール組成物による消臭効果確認試験について説明する。試験系はアンモニアの試験と同様である。異なる点は、工程2において、ろ紙にトリメチルアミンを塗布した点である。トリメチルアミンは、0.1%溶液をイオン交換水で希釈し、300μL塗布した。工程5において濃度測定に用いた検知管は、「ガステック 気体検知管 アミン類」である。
測定結果は図10のグラフに示す通りとなった。図10に示すグラフの横軸は経過時間であり、縦軸はブランクと比較した悪臭除去率(供試剤による悪臭除去率)である。ブランクは、工程4において供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置かない場合である。悪臭除去率の算出式はアンモニアの試験と同じである。
グラフに示すように、供試剤による悪臭除去率は、1時間経過時、2時間経過時及び3時間経過時には50%、4時間経過時及び5時間経過時には75%、6時間経過時には85%、7時間経過時には90%であり、ガラスシリンダー内の空間に処理した後、7時間経過することで大部分のトリメチルアミンがガラスシリンダー内から除去されたので、消臭効果があったといえる。
(メルカプタンに対する消臭効果確認試験)
次に、家庭内の各種悪臭の一つであるメルカプタンに対するエアゾール組成物による消臭効果確認試験について説明する。試験系はアンモニアの試験と同様である。異なる点は、工程2において、ろ紙にメルカプタン標準液を200μL塗布した点である。工程5において濃度測定に用いた検知管は、「ガステック 気体検知管 メルカプタン」である。
測定結果は図11のグラフに示す通りとなった。図11に示すグラフの横軸は経過時間であり、縦軸はブランクと比較した悪臭除去率(供試剤による悪臭除去率)である。ブランクは、工程4において供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置かない場合である。悪臭除去率の算出式はアンモニアの試験と同じである。
グラフに示すように、供試剤による悪臭除去率は、1時間経過時には40%、2時間経過時には44%、3時間経過時及び4時間経過時には50%、5時間経過時には60%、6時間経過時には65%、7時間経過時には80%であり、ガラスシリンダー内の空間に処理した後、7時間経過することで大部分のメルカプタンがガラスシリンダー内から除去された。尚、他の消臭剤(高吸水性ポリマーによる市販の消臭剤、および公知の消臭成分である緑茶エキス)でメルカプタンに対する消臭試験を同様に行うと、いずれも7時間経過後の除去率は60%以下であった。従って、他の消臭成分と比較して、ベンジルアルコールはメルカプタンに対する有効な消臭効果を示すといえる。
(トリクロロアニソールに対する消臭効果確認試験)
次に、家庭内の各種悪臭の一つであるトリクロロアニソール(2,4,6-トリクロロアニソール)に対するエアゾール組成物による消臭効果確認試験について説明する。なお、トリクロロアニソールの濃度を測定するための適当な検知管が入手できなかったことから、官能試験により消臭効果を確認した。
1.容積が10Lのガラスシリンダーを用意し、そのガラスシリンダーの上端をガラス製の蓋で閉塞し、下端も同様に閉塞する。
2.4μg/mlトリクロロアニソールin99%エタノール1mLをろ紙に滴下し、このろ紙をガラスシリンダー内に入れる。
3.ガラスシリンダー内にトリクロロアニソールが充満するまで待ち、充満した後、ろ紙をガラスシリンダーから取り出す。
4.別のろ紙に供試剤を所定量塗布し、ガラスシリンダー内に置く。供試剤は、ベンジルアルコールである。0.0022mgのベンジルアルコールをろ紙に塗布した。全量が揮発すると、ガラスシリンダー内のベンジルアルコールの気中濃度は0.05ppmとなる。
5.供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置いて蓋をした直後から1時間経過した時点でのガラスシリンダー内のにおいを官能で確認した。尚、トリクロロアニソールの濃度は、東京家政大学オフフレーバー研究会の官能パネルの異臭識別能力測定法でのTCA濃度を参考にして設定した。
また、ブランクも用意した。ブランクは、工程4において、供試剤を塗布したろ紙をガラスシリンダー内に置かない場合である。
官能評価の被験者は15人とした。無臭を「0」、やっと感知できるにおいを「1」、何のにおいであるかが分かる弱いにおいを「2」、らくに感知できるにおいを「3」、強いにおいを「4」、強烈なにおいを「5」として、各被験者にブランクと供試剤とでそれぞれ0~5の数字を示してもらった。その結果、15人の平均値がブランクでは2.33であったのに対し、供試剤の場合は1であった。芳香消臭脱臭剤協議会 消臭剤効力試験方法より、ブランクと比較して臭気強度が1段階以上低減しているため、供試剤による高い消臭効果が得られるといえる。
(ノネナールに対する消臭効果確認試験)
次に、家庭内の各種悪臭の一つであるノネナールに対するエアゾール組成物による消臭効果確認試験について説明する。試験系は、トリクロロアニソールの場合と同様である。異なる点は、工程2において、0.4%ノネナールin99%エタノール0.4mLをろ紙に滴下した点である。
官能評価の方法はノネナールの場合と同じである。官能評価の結果、15人の平均値がブランクでは4.33であったのに対し、供試剤の場合は3.2であった。芳香消臭脱臭剤協議会 消臭剤効力試験方法より、ブランクと比較して臭気強度が1段階以上低減しているため、供試剤による高い消臭効果が得られるといえる。
(黄色ぶどう球菌に対する効力試験)
また、本願発明者らの検討により、有効成分であるベンジルアルコールは、除菌・抗菌の効果があることも確認されている。そこで次に、エアゾール組成物による効力試験として、黄色ぶどう球菌に対する効力試験について説明する。供試菌は、Staphlococcus aureus(黄色ブドウ球菌)NBRC12732:グラム陽性球菌である。前培地として、ニュートリエント液体培地(普通寒天培地の寒天抜き)を調製し、坂口フラスコに約300mlずつ分注する。坂口フラスコに綿線をセットし、オートクレーブで滅菌する。液体培地は体温程度まで下がれば使用可とする。継代培養中の菌を1白金耳取り、液体培地中に播種する。培養室の振盪培養器にて、48時間振盪培養する。これにより、およそ10^8CFU/mlになる。なお、ニュートリエント液体培地は、1000ml中、肉エキス5.0g、ペプトン10.0g、塩化ナトリウム5.0g、イオン交換水1000gとしている。
本試験では、まず、10^7CFU/mlに調製した菌懸濁液10mlを摂取し、遠心分離機にかける。得られた菌の沈殿の上澄みを捨て、1mlの生理食塩水を加えることで10^6CFU/mlの菌液を調製する。10^6CFU/mlに調製した菌液200μlを摂取し、2cm×2cmの金巾布に塗布する。10Lシリンダー内に、金巾布と、プラスチック製カップに入れた供試剤を別々に入れ、8時間と24時間反応させる。供試剤は、ベンジルアルコール 132μlであり、10Lシリンダー内で自然蒸散する。
反応後、金巾布から菌を洗い出し、10^-1~10^-5までSCDLP液体培地で希釈し、200μlをSCDLP寒天培地に播種する。48時間後にコロニー数をカウントする。
試験結果は、8時間後、ブランクの場合は生菌数が590000CFU/mlであったのに対し、ベンジルアルコールの場合は0CFU/mlであった。つまり、除菌率は99.99%以上であった。24時間後、ブランクの場合は生菌数が105000CFU/mlであったのに対し、ベンジルアルコールの場合は0CFU/mlであった。つまり、除菌率は99.99%以上であった。
なお、この供試剤がすべて蒸散したと仮定すれば、10Lシリンダー内におけるベンジルアルコールの気中濃度は最大で2.9ppmとなる。ただし実際に蒸散したベンジルアルコールの量は初期量の7.5%程度だったので、本試験における10Lシリンダー内の気中濃度は0.2ppm程度であった。
(大腸菌に対する効力試験)
次に、エアゾール組成物による効力試験として、大腸菌に対する効力試験について説明する。供試菌は、Escherichia coli (大腸菌)である。前培地は「黄色ぶどう球菌に対する試験」で使用したものと同じである。ただし、振盪培養器による振盪培養は24時間とする。これにより、およそ10^8CFU/mlになる。
本試験では、まず、10^7CFU/mlに調製した菌懸濁液10mlを摂取し、遠心分離機にかける。得られた菌の沈殿の上澄みを捨て、1mlの生理食塩水を加えることで10^6CFU/mlの菌液を調製する。10^6CFU/mlに調製した菌液200μlを摂取し、2cm×2cmの金巾布に塗布する。
無風恒温室内(8畳相当)に菌を塗布した金巾布を静置し、全量噴射型エアゾール製品1を使用する。全量噴射型エアゾール製品1のエアゾール組成物の処方は、上記表1のエアゾール組成物の処方例で示したとおりである。このときに噴射されたエアゾール組成物の50%平均粒子径は、22.3μmであった。
噴射完了時から所定時間(8時間)経過後、金巾布から菌を洗い出し、10-1~10-5までSCDLP液体培地で希釈し、200μlをSCDLP寒天培地に播種する。そして、24時間後にコロニー数をカウントする。尚、ニュートリエント液体培地は、1000ml中、肉エキス5.0g、ペプトン10.0g、塩化ナトリウム5.0g、イオン交換水1000mlである。
第1の試験例では、上記無風恒温室の床に障害物を設置している。障害物の大きさは、高さ160cm×横40cm×奥行40cmである。この障害物を全量噴射型エアゾール製品1と金巾布との間に設置し、全量噴射型エアゾール製品1のエアゾール組成物が金巾布に直接噴射されないようにした。この第1の試験例の除菌率は100%であった。
第2の試験例では、上記無風恒温室の床に上記障害物を設置し、その障害物の上に金巾布を載置した。この第2の試験例の除菌率も100%であった。
第3の試験例では、上記無風恒温室の床に上記障害物を2つ設置し、無風恒温室の壁と2つの障害物とで上方に開放した狭い空間を区画し、その空間内に金巾布を載置した。この第3の試験例の除菌率も100%であった。
第4の試験例では、全量噴射型エアゾール製品1の使用後、2時間後に上記無風恒温室の換気を行った。換気後、第3の試験例と同様に区画された狭い空間内に金巾布を載置した。4時間経過後の除菌率は100%であった。尚、換気回数は、0.5回/時間である。
第5の試験例では、全量噴射型エアゾール製品1の使用後、15分後に上記無風恒温室の換気を行った。換気後、第3の試験例と同様に区画された狭い空間内に金巾布を載置した。4時間経過後の除菌率は100%であった。尚、換気回数は、0.5回/時間である。
以上のように、本実施形態の全量噴射型エアゾール製品1によれば、障害物による隙間の奥まで、有効成分であるベンジルアルコールによる効果が発揮される。これは、障害物がある空間においても、噴霧粒子が空間中に拡散して障害物の反対側までまわりこむことによる。尚、第1~第5の試験例については、エアゾール組成物の50%平均粒子径が100μmであっても同様な効果が得られる。
(抗かび試験)
次に、抗かび試験(真菌に対する試験)について説明する。供試菌は白癬菌である。
まず、胞子懸濁液を作製する。始めに、かびスラント1本に0.05%ポリソルベート80-生理食塩水10mlを添加する。激しく混和し、薬さじ等でスラントから削り取るように胞子を充分に分散させる。胞子懸濁液を滅菌ガーゼ(75mm×75mm)でろ過し、ろ液を10^7個/mlとなるように0.05%ポリソルベート80-生理食塩水で適宣希釈し、単一胞子懸濁液とする。必要な液量分、これを繰り返す。
次いで接触方法について説明する。10Lシリンダーを用意し、2cm×2cmの金巾布に調整した菌懸濁液を100μl塗布する。金巾布を入れたシャーレと、ベンジルアルコール50%液260mgを10Lシリンダー内に入れ、24時間空間接触させる。試験結果は、シャーレ内に殆どかびが見られなかった。尚、ブランクとしたイオン交換水では、シャーレ内の約半分の領域にかびの発生が見られた。
(ベタつき確認試験)
次に、ベタつき確認試験について説明する。上述したように、ベンジルアルコールは抗ウイルス、抗菌効果を有するだけでなく、消臭効果及び抗かび効果も有している。これら効果は、ベンジルアルコールの濃度に依存するところがあるので、濃度を高めるのが効力向上の点で好ましい。しかし、ベンジルアルコールは油性の液体であり、揮発性も高くないことから、噴射後に周囲に付着してベタつきの原因となってしまうことがある。本実施形態では、ベンジルアルコールによる各種効力を低下させることなく、ベタつきを抑制するために、50%平均粒子径を上述した範囲内で設定している。
ベタつき確認試験では、まず、上記表1の処方のエアゾール組成物を収容した全量噴射型エアゾール製品1を半紙の上に設置する。試験室は、8畳無風恒温室であり、気温は25℃、湿度は40%である。その後、エアゾール組成物を全量噴射させてから、半紙の濡れやベタつきがないか、操作部材12にエアゾール組成物が付着していないかを確認した。
その結果、50%平均粒子径が100μmを超えると、操作部材12にエアゾール組成物が大きな液滴ないし液膜として付着しており、半紙にもベタつきが見られたが、50%平均粒子径が100μm以下であれば、操作部材12にエアゾール組成物が付着しておらず、半紙にもベタつきが見られなかった。したがって、50%平均粒子径を100μm以下に設定することで、使用後のベタつきを抑制することができる。この試験によれば、50%平均粒子径を50μm以下に設定することで、ベタつきをより一層抑制することができ、さらに30μm以下に設定することで、ベタつきが見られなくなる。
なお、噴射口12dの開口径が1.0mmを超えると、50%平均粒子径が100μmを超えてべたつきが生じる。噴射口12dの開口径が0.8mm以下であれば、粒子径が上記範囲に収まりべたつきが生じない。一方、噴射口12dの開口径を0.3mm程度まで小さくしても噴霧上の問題は生じず、べたつきも発生しない。なお、噴射口12dの開口径が0.35mmのとき、50%平均粒子径は22.3μmであった。噴射口12dの開口径は0.3mmより小さくすることもできるが、操作部材12を樹脂で成形する場合は、噴射口12dの開口径が0.2mm以下になると成形性が悪化するため、噴射口12dの開口径は0.2mm以上とするのが好ましい。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明に係る全量噴射型エアゾール製品は、例えば家庭内や事務所、店舗等で使用することができる。
1 全量噴射型エアゾール製品
11 エアゾール容器
12 操作部材
13 保護部材

Claims (4)

  1. エアゾール容器に収容されているエアゾール組成物の全量を1回の噴射操作で噴射する全量噴射型エアゾール製品であって、
    前記エアゾール組成物は、ベンジルアルコールを含む原液と、該原液を噴射させるための噴射剤とを含んでおり、
    前記エアゾール容器から噴射された前記エアゾール組成物の50%平均粒子径が100μm以下に設定されている全量噴射型エアゾール製品。
  2. 請求項1に記載の全量噴射型エアゾール製品において、
    前記エアゾール容器から噴射された前記エアゾール組成物の50%平均粒子径が30μm以下に設定されている全量噴射型エアゾール製品。
  3. 請求項1または2に記載の全量噴射型エアゾール製品において、
    前記原液は、溶剤を含んでおり、
    前記溶剤は、エタノールである全量噴射型エアゾール製品。
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載の全量噴射型エアゾール製品において、
    前記エアゾール組成物に含まれるベンジルアルコールが1質量%以上である全量噴射型エアゾール製品。
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