JP2022146964A - 棒材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】チタン合金からなる棒材の製造時において、作業性および生産性を共に向上させつつ、棒材の曲がりを低減すること。【解決手段】本発明に係る棒材の製造方法では、チタン合金からなる断面が円形の棒材を準備する棒材準備工程と、棒材準備工程の後に、断面で見た角度が60度のV字状のトレイ内に、同一の直径および同一の長さからなる棒材を複数個設置する棒材設置工程と、棒材設置工程の後に、設置した棒材を熱処理する棒材熱処理工程を含むことを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、チタン合金からなる棒材をV字状のトレイ内に設置し、その後熱処理を行う棒材の製造方法に関する。
チタン合金は、軽量で強度が高く耐食性も優れているので、たとえば人工骨材や各種機械部品を形成するための材料として、多く用いられるようになった。そして、これら各種製品を製造するために、例えば、チタン合金のビレットに圧延加工及びそれに続く矯正、表面加工等を施して、所定の直径、所定の長さとなる棒材に加工し、得られたチタン合金製棒材に機械加工等を施して最終的なチタン合金製品を製造する工程が採用される。
より詳細には、所定成分のチタン合金のビレットを素材とし、これに圧延を施したのち切断して、所定断面寸法および所定長さの棒材とし、この棒材に焼鈍を施して組織調整した後、プレス矯正により棒材の曲がりを矯正する。次いで、シェービング装置等により棒材の表面疵を切削除去する表面疵除去を施した後、冷間矯正により棒材の曲がりを最終矯正し、センタレスグラインダ等による表面研磨を施して、目標とするチタン合金製棒材を得るというものである。
上記プレス矯正、冷間矯正などは、いわゆる二次加工と呼ばれるものである。一方、チタン合金は、人工関節など医療分野で使用され、曲がりの規格が一般の製品よりも厳格である。このため、二次加工前にチタン合金の曲がりの量が多い又は曲がりの程度が大きいと、二次加工で工数を要し、生産性が低下する。特に、チタン合金は、材質上硬く、端部における曲がり矯正が困難である。
特許文献1(特開2003-225709)には、断面形状がV字状をなす周壁を有する矯正容器に複数本の銅合金を密接した状態で充填し、熱処理を行い、各銅合金の曲がりを矯正する形態が開示されている(特許文献1の図12を参照)。また、特許文献2(特開平10-291029)には、熱処理時の棒材の曲がりを低減するために、断面形状がV字状をなす容器にチタン合金を挿入し、密接した状態で充填し、熱処理を行う形態が開示されている(特許文献2の図2を参照)。
特許文献1においては、ダミー棒や加重板を使用した場合には、これらを取り除く作業が必要となって作業性が低下するという懸念がある。特許文献2において、図2(f)のように、V字型の鋼製の容器に1本の棒材が挿入された状態で熱処理した場合には、生産性が悪くなる。また、図2(g)(h)のように、熱処理する対象とは異なる鋼管をいっしょに挿入し、熱処理した場合には作業性が低下するという懸念もある。
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、チタン合金からなる棒材の製造時において、作業性および生産性を共に向上させつつ、棒材の曲がりを低減することである。
上記課題を解決するために、本発明に係る棒材の製造方法は、チタン合金からなる断面が円形の棒材を準備する棒材準備工程と、前記棒材準備工程の後に、断面で見た角度が60度のV字状のトレイ内に、同一の直径および同一の長さからなる前記棒材を複数個設置する棒材設置工程と、前記棒材設置工程の後に、前記設置した棒材を熱処理する棒材熱処理工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る棒材の製造方法では、同一の直径および同一の長さからなる棒材複数個をV字状のトレイ内に設置するため、棒材がV字トレイの下方から順番に収まっていくので作業性および生産性がよい。また、V字トレイの断面で見た角度が60度になっているため、各棒材は、V字トレイの壁面又は他の棒材によって拘束されるため、熱処理をした際に保熱効果が高くなる。特に、内部に設置された棒材は、最大6点で他の棒材と接し、設置された状態を断面で見た場合に最密充填構造のような配置をとるため、極めて保熱効果が高くなる。さらに、底面が平面であるトレイに比べ、トレイ上方の開口部分の面積が比較的小さくなるため、空気と直接触れる面積も少なくなり、保熱効果をさらに高めることができる。
また、本発明に係る棒材の製造方法において、前記トレイは、ステンレス鋼としてもよい。トレイの材料として、ステンレス鋼を使用した場合には、熱処理後にトレイ表面で酸化スケールが発生しにくくなる。
また、本発明に係る棒材の製造方法において、前記トレイの外側側面には、前記V字が変形することを防止するための支持部材が設けられていてもよい。支持部材を設けると、V字の変形が防止されて60度の角度が確実に維持され、トレイを長期間使用することができる。
本発明に係る棒材の製造方法によれば、生産性および作業性が共に向上させつつ、チタン合金からなる棒材の曲がりを低減することができる。
以下、本発明に係る実施の形態を説明する。まず、所定成分のチタン合金からなる合金塊を分塊して得られたビレットに、加熱炉、粗圧延機列および仕上圧延機列を有する圧延装置により圧延を施したのち、熱間ソー切断などの切断を施して、断面が円形の棒材(例えば、直径13mm、長さ4mの直棒状の丸棒材)を準備する(棒材準備工程)とする。
次に、この棒材を断面で見た角度が60度のV字状のトレイ内に複数個設置する(棒材設置工程)。この場合、各棒材は、同一の直径および同一の長さからなる。このようにすることで、各棒材は、他の棒材によって確実に拘束されるため、熱処理をした際に保熱効果が高くなる。
図1は、本実施形態に係るV字状のトレイの断面図である。このV字状のトレイ1は、図1で見て紙面と直交する方向に所定の長さを有する。図1に示すように、V字状トレイ1は、棒材を設置する断面がV字状のトレイ本体2、トレイ本体2のV字が変形することを防止するための支持部材3、地面に載置するための底面部材4から構成されている。なお、支持部材3は、V字の両外側に形成され、上記所定の長さにおいて、所定の間隔で複数個設けられている。図1に示すように、トレイ本体2は、断面がV字となっており、その角度が60度になっている。そして、複数個の棒材をV字トレイ1に設置した状態で、焼鈍炉を用いて焼鈍を実施する(棒材熱処理工程)。これにより、棒材(チタン合金)中の組織が均一になるように調整される。
この熱処理工程後、棒材の曲がりを矯正する矯正工程を実施する。上記熱処理工程において、棒材の曲がりが大きく、また曲がりを生じた棒材の数が多くなると、後続する矯正工程で時間を要し、生産性が低下する。
次に、本発明に係る棒材の製造方法の具体的な実施例を比較例と併せてさらに詳細に説明する。
[実施例1]
所定の直径および所定の長さからなるTi-6Al-4V合金の角棒状のビレットに、圧延及びそれに続く切断を施して、直径13mm、長さ3mの丸棒材を得た。図1に示したV字状のトレイ1内に、この棒材45本を設置した。なお、実施例1のV字状のトレイ1は、ステンレス鋼(SUS304)で作製されている。45本の棒材は、クレーン等を利用し、V字状のトレイ1の上方から下方へ順に設置される。図2は、トレイ本体2に棒材Mが設置された状態を示す図である。図2に示すように、各棒材は、V字状のトレイ1の下方から順序良く並んでいくため、作業者が棒材をきちんと整列させるために並べ直す必要がなく、作業性がよい。なお、図2において、図1で示した支持部材3は、図示を省略してある。
所定の直径および所定の長さからなるTi-6Al-4V合金の角棒状のビレットに、圧延及びそれに続く切断を施して、直径13mm、長さ3mの丸棒材を得た。図1に示したV字状のトレイ1内に、この棒材45本を設置した。なお、実施例1のV字状のトレイ1は、ステンレス鋼(SUS304)で作製されている。45本の棒材は、クレーン等を利用し、V字状のトレイ1の上方から下方へ順に設置される。図2は、トレイ本体2に棒材Mが設置された状態を示す図である。図2に示すように、各棒材は、V字状のトレイ1の下方から順序良く並んでいくため、作業者が棒材をきちんと整列させるために並べ直す必要がなく、作業性がよい。なお、図2において、図1で示した支持部材3は、図示を省略してある。
次に、棒材が設置されたままの状態のV字状のトレイを焼鈍炉の中に入れ、700℃、0.5時間の焼鈍を施した。そして、所定の冷却速度で冷却し、常温とした。
[実施例2]
実施例2は、V字状のトレイが構造用鋼(SS400)で作製されているものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして棒材を得た。
実施例2は、V字状のトレイが構造用鋼(SS400)で作製されているものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして棒材を得た。
[比較例]
比較例は、その断面が凹字状となっている鋼構造用鋼(SS400)で作製されているものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして棒材を得た。図3は、比較例で使用した凹字状のトレイTに棒材Mを設置した状態を示す図である。
比較例も実施例と同様に、45本の棒材は、クレーン等を利用し、凹字状のトレイTの上方から下方へ順に設置される。図3では、棒材Mが上下二段にきちんと配列された状態を示しているが、このような配置とするためには作業者の手間がかかり、作業性がよくない。つまり、単に上方から配置していくだけでは、均一に二段に配列することが難しい。
比較例は、その断面が凹字状となっている鋼構造用鋼(SS400)で作製されているものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして棒材を得た。図3は、比較例で使用した凹字状のトレイTに棒材Mを設置した状態を示す図である。
比較例も実施例と同様に、45本の棒材は、クレーン等を利用し、凹字状のトレイTの上方から下方へ順に設置される。図3では、棒材Mが上下二段にきちんと配列された状態を示しているが、このような配置とするためには作業者の手間がかかり、作業性がよくない。つまり、単に上方から配置していくだけでは、均一に二段に配列することが難しい。
[熱処理後の棒材の曲がり量]
熱処理後の棒材の曲がり量を以下のように測定した。まず、ほぼ等間隔に設置されたローラ上に熱処理前の棒材を置く。棒材の上方に変位計(自動距離測定装置)を設置しておき、変位計から棒材表面までの距離を測定する。変位計は、棒材の片方の端部から棒材の長手方向に20mm離れた棒材上方の地点(X地点)、と2350mm離れた棒材上方の地点(Y地点)の2か所に設置した。次に、熱処理後の棒材について、X地点およびY地点における変位計から棒材表面までの距離を測定する。熱処理前の距離と熱処理後の距離を比較し、これらの距離に差があれば、棒材に曲がりが生じた、と判断できる。
熱処理後の棒材の曲がり量を以下のように測定した。まず、ほぼ等間隔に設置されたローラ上に熱処理前の棒材を置く。棒材の上方に変位計(自動距離測定装置)を設置しておき、変位計から棒材表面までの距離を測定する。変位計は、棒材の片方の端部から棒材の長手方向に20mm離れた棒材上方の地点(X地点)、と2350mm離れた棒材上方の地点(Y地点)の2か所に設置した。次に、熱処理後の棒材について、X地点およびY地点における変位計から棒材表面までの距離を測定する。熱処理前の距離と熱処理後の距離を比較し、これらの距離に差があれば、棒材に曲がりが生じた、と判断できる。
各実施例は、図2に示した黒色に塗り潰した5か所の棒材の測定を行った。5か所の特定は、熱処理前に棒材にマーキングをしておき、熱処理後に設置した位置がわかるようにした。比較例も同様に、図3に示した黒色に塗り潰した5か所の棒材の測定を行った。そして、5か所の距離の平均値(N=5)を比較した。
各実施例、比較例の距離は、以下の通りであった。
実施例1:X地点-0.8mm、Y地点-0.2mm
実施例2:X地点-0.7mm、Y地点-0.3mm
比較例:X地点-1.5mm、Y地点-2.4mm
以上の通り、各実施例は、比較例に対し、曲がりを低減できていることがわる。
実施例1:X地点-0.8mm、Y地点-0.2mm
実施例2:X地点-0.7mm、Y地点-0.3mm
比較例:X地点-1.5mm、Y地点-2.4mm
以上の通り、各実施例は、比較例に対し、曲がりを低減できていることがわる。
実施例が比較例に対し、曲がりを低減できた理由は、以下の通りと考えられる。
まず、図2のAで示すように、実施例では、棒材と他の棒材を接する点を最大6か所とする配置(最密充填構造)をとる場所が多く、極めて保熱効果が高くなった。なお、比較例は、図3のBで示すように、棒材と他の棒材を接する点は、最大でも5か所となる。また、底面が平面である比較例の凹字状トレイに比べ、トレイ上方の開口部分の面積が小さくなるため、空気と直接触れる面積が少なくなり、保熱効果をさらに高めることができた。実際、凹字状トレイの開口部の面積は、V字トレイの開口部の面積よりも2.6倍大きかったため、それだけ空気と触れる部分が増え、これが曲がりの原因になったと考えられる。さらに、チタン合金には、いわゆるクリープ変形という現象が生じるが、実施例では、V字トレイの側面や側面に沿ってクリープ変形したため、曲がりが低減されたと考えられる。
まず、図2のAで示すように、実施例では、棒材と他の棒材を接する点を最大6か所とする配置(最密充填構造)をとる場所が多く、極めて保熱効果が高くなった。なお、比較例は、図3のBで示すように、棒材と他の棒材を接する点は、最大でも5か所となる。また、底面が平面である比較例の凹字状トレイに比べ、トレイ上方の開口部分の面積が小さくなるため、空気と直接触れる面積が少なくなり、保熱効果をさらに高めることができた。実際、凹字状トレイの開口部の面積は、V字トレイの開口部の面積よりも2.6倍大きかったため、それだけ空気と触れる部分が増え、これが曲がりの原因になったと考えられる。さらに、チタン合金には、いわゆるクリープ変形という現象が生じるが、実施例では、V字トレイの側面や側面に沿ってクリープ変形したため、曲がりが低減されたと考えられる。
[熱処理後のトレイの外観]
実施例1は、トレイの外観を観察しても酸化スケール等の発生は、なかった。一方、実施例2、比較例は、トレイの外観を観察すると、全体的に酸化スケールが確認された。実施例1は、トレイの素材としてステンレス鋼を使用したため、酸化スケール発生の防止に寄与したものと考えられる。
実施例1は、トレイの外観を観察しても酸化スケール等の発生は、なかった。一方、実施例2、比較例は、トレイの外観を観察すると、全体的に酸化スケールが確認された。実施例1は、トレイの素材としてステンレス鋼を使用したため、酸化スケール発生の防止に寄与したものと考えられる。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態、実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
1 V字状トレイ
2 トレイ本体
3 支持部材
4 底面部材
M 棒材
2 トレイ本体
3 支持部材
4 底面部材
M 棒材
Claims (3)
- チタン合金からなる断面が円形の棒材を準備する棒材準備工程と、
前記棒材準備工程の後に、断面で見た角度が60度のV字状のトレイ内に、同一の直径および同一の長さからなる前記棒材を複数個設置する棒材設置工程と、
前記棒材設置工程の後に、前記設置した棒材を熱処理する棒材熱処理工程を含む棒材の製造方法。 - 前記トレイは、ステンレス鋼である特徴とする請求項1に記載の棒材の製造方法。
- 前記トレイの外側側面には、前記V字が変形することを防止するための支持部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の棒材の製造方法。
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