以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
[第1実施形態]
本実施形態では、ミシン1についてローカル座標系(以下、「ミシン座標系」という。)が規定される。ミシン座標系は、XYZ直交座標系により規定される。本実施形態では、ミシン座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向とする。X軸と直交する所定面内のY軸と平行な方向をY軸方向とする。所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。また、本実施形態では、X軸及びY軸を含む平面を、XY平面、と称する。X軸及びZ軸を含む平面を、XZ平面、と称する。Y軸及びZ軸を含む平面を、YZ平面、と称する。XY平面は、所定面と平行である。XY平面とXZ平面とYZ平面とは直交する。また、本実施形態では、XY平面と水平面とが平行である。Z軸方向は上下方向である。+Z方向は上方向であり-Z方向は下方向である。なお、XY平面は水平面に対して傾斜していてもよい。
図1及び図2を用いて、ミシン1について説明する。図1は、本実施形態に係るミシン1の一例を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るミシン1の一部を示す斜視図である。本実施形態において、ミシン1は、電子サイクルミシンである。ミシン1は、ミシン本体10と、作業者によって操作される操作装置20と、縫製対象物Sを撮影可能な撮像装置30と、表示装置80と、ミシン1を制御する制御装置40とを備える。
ミシン本体10は、テーブル2の上面に搭載される。ミシン本体10は、ミシンフレーム11と、ミシンフレーム11に支持される針棒12と、ミシンフレーム11に支持される針板13と、支持部材14を介してミシンフレーム11に支持される保持部材15と、針棒12を移動させる動力を発生するアクチュエータ16と、保持部材15を移動させる動力を発生するアクチュエータ17と、保持部材15の少なくとも一部を移動させる動力を発生するアクチュエータ18とを有する。
ミシンフレーム11は、Y軸方向に延在する水平アーム11Aと、水平アーム11Aよりも下方に配置されたベッド11Bと、水平アーム11Aの+Y側の端部とベッド11Bとを繋ぐ垂直アーム11Cと、水平アーム11Aの-Y側に配置されたヘッド11Dとを有する。
針棒12は、ミシン針3を保持する。針棒12は、ミシン針3とZ軸とが平行になるようにミシン針3を保持する。針棒12は、Z軸方向に移動可能にヘッド11Dに支持される。
針板13は、縫製対象物Sを支持する。針板13は、保持部材15を支持する。針板13は、ベッド11Bに支持される。針板13は、保持部材15よりも下方に配置される。
保持部材15は、縫製対象物Sを保持する。保持部材15は、ミシン針3の直下の縫製位置Psを含むXY平面内において縫製対象物Sを保持して移動可能である。保持部材15は、撮像装置30の撮影位置Pfを含むXY平面内において縫製対象物Sを保持して移動可能である。保持部材15が、縫製対象物Sを保持した状態で、後述する縫製データに基づいて縫製位置Psを含むXY平面内において移動することにより、縫製対象物SにステッチGPが形成される。保持部材15は、支持部材14を介して水平アーム11Aに支持される。
保持部材15は、向かい合って配置された押え部材15Aと、下板15Bとを有する。押え部材15Aは、枠状の部材であり、Z軸方向に移動可能である。下板15Bは、押え部材15Aの下方に配置される。保持部材15は、押え部材15Aと下板15Bとで縫製対象物Sを挟むことによって縫製対象物Sを保持する。
押え部材15Aが+Z方向に移動すると、押え部材15Aと下板15Bとが離間する。これにより、作業者は、押え部材15Aと下板15Bとの間に縫製対象物Sを配置することができる。押え部材15Aと下板15Bとの間に縫製対象物Sが配置された状態で押え部材15Aが-Z方向に移動すると、縫製対象物Sは押え部材15Aと下板15Bとで挟まれる。これにより、縫製対象物Sは保持部材15によって保持される。また、押え部材15Aが+Z方向に移動することにより、保持部材15による縫製対象物Sの保持が解除される。これにより、作業者は、押え部材15Aと下板15Bとの間から縫製対象物Sを取り出すことができる。
アクチュエータ16は、針棒12をZ軸方向に移動させる動力を発生する。アクチュエータ16は、パルスモータを含む。アクチュエータ16は、水平アーム11Aに配置されている。
水平アーム11Aの内部には、Y軸方向に延在する水平アームシャフトが配置されている。アクチュエータ16は、水平アームシャフトの+Y側の端部に連結される。水平アームシャフトの-Y側の端部は、ヘッド11Dの内部に配置されている動力伝達機構を介して針棒12に連結される。アクチュエータ16の作動により、水平アームシャフトが回転する。アクチュエータ16で発生した動力は、水平アームシャフト及び動力伝達機構を介して針棒12に伝達される。これにより、針棒12に保持されているミシン針3は、Z軸方向に往復移動する。
垂直アーム11Cの内部には、Z軸方向に延在するタイミングベルトが配置されている。また、ベッド11Bの内部には、Y軸方向に延在するベッドシャフトが配置されている。水平アームシャフト及びベッドシャフトのそれぞれにプーリが配置されている。タイミングベルトは、水平アームシャフトに配置されているプーリ及びベッドシャフトに配置されているプーリのそれぞれに架けられる。水平アームシャフトとベッドシャフトとは、タイミングベルトを含む動力伝達機構を介して連結される。
ベッド11Bの内部には、釜が配置されている。釜には、ボビンケースに入れられたボビンが収容される。アクチュエータ16の作動により、水平アームシャフト及びベッドシャフトのそれぞれが回転する。アクチュエータ16で発生した動力は、水平アームシャフト、タイミングベルト、及びベッドシャフトを介して釜に伝達される。これにより、釜は、針棒12のZ軸方向の往復移動と同期して回転する。
アクチュエータ17は、保持部材15をXY平面内で移動させる動力を発生する。アクチュエータ17は、パルスモータを含む。アクチュエータ17は、保持部材15をX軸方向に移動させる動力を発生するX軸モータ17Xと、保持部材15をY軸方向に移動させる動力を発生するY軸モータ17Yとを含む。アクチュエータ17は、ベッド11Bの内部に配置されている。
アクチュエータ17で発生した動力は、支持部材14を介して保持部材15に伝達される。これにより、保持部材15は、ミシン針3と針板13との間においてX軸方向及びY軸方向のそれぞれに移動可能である。アクチュエータ17の作動により、保持部材15は、ミシン針3の直下の縫製位置Psを含むXY平面内において縫製対象物Sを保持して移動可能である。
アクチュエータ18は、保持部材15の押え部材15AをZ軸方向に移動させる動力を発生する。アクチュエータ18は、パルスモータを含む。押え部材15Aが+Z方向に移動することにより、押え部材15Aと下板15Bとが離間する。押え部材15Aが-Z方向に移動することにより、押え部材15Aと下板15Bとで縫製対象物Sが挟まれる。
図2に示すように、ミシン本体10は、ミシン針3の周囲に配置される中押え部材19を有する。中押え部材19は、ミシン針3の周囲の縫製対象物Sを押える。中押え部材19は、Z軸方向に移動可能にヘッド11Dに支持される。ヘッド11Dの内部には、中押え部材19をZ軸方向に移動させる動力を発生する中押えモータが配置されている。中押えモータの作動により、中押え部材19は、針棒12と同期してZ軸方向に移動する。中押え部材19により、ミシン針3の移動による縫製対象物Sの浮き上がりが抑制される。
操作装置20は、作業者に操作される。操作装置20が操作されることにより、ミシン1が作動する。本実施形態では、操作装置20は、操作パネル21と、操作ペダル22とを含む。
操作パネル21は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイを含む表示装置と、作業者に操作されることにより入力データを生成する入力装置とを有する。操作パネル21の入力装置は、縫製処理に係る操作を受け付け可能である。本実施形態では、入力装置は、表示装置の表示画面に配置されているタッチセンサを含む。すなわち、本実施形態では、操作パネル21は、入力装置の機能を有するタッチパネルを含む。操作パネル21は、テーブル2の上面に搭載される。操作ペダル22は、テーブル2の下方に配置される。作業者は、足で操作ペダル22を操作する。作業者により操作パネル21及び操作ペダル22の少なくとも一方が操作されることにより、ミシン1は作動する。
撮像装置30は、保持部材15に保持されている縫製対象物Sを撮影する。撮像装置30は、光学系と、光学系を介して入射する光を受光するイメージセンサとを有する。イメージセンサは、CCD(Couple Charged Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含む。
撮像装置30は、針板13及び保持部材15よりも上方に配置される。撮像装置30に撮影領域FAが規定される。撮影領域FAは、撮像装置30の光学系の視野領域を含む。撮影領域FAは、撮像装置30の直下に規定される。撮影領域FAは、撮像装置30の光学系の光軸AXの位置を含む。撮像装置30は、撮影領域FAに配置された縫製対象物Sの少なくとも一部の画像データを取得する。撮像装置30は、押え部材15Aの内側に配置されている縫製対象物Sの少なくとも一部を上方から撮影する。
撮像装置30の位置は、固定されている。撮像装置30とミシンフレーム11との相対位置は、固定されている。XY平面内における撮像装置30の光学系の光軸AXとミシン針3との相対位置は、固定されている。XY平面内における撮像装置30の光学系の光軸AXとミシン針3との相対位置を示す相対位置データは、ミシン1の設計データから導出可能な既知データである。
なお、撮像装置30の取付誤差に起因して、撮像装置30の実際の位置と設計データにおける位置とに差異が生じる場合、撮像装置30の取付後において、XY平面内におけるミシン針3の位置を計測し、計測されたミシン針3の位置を撮像装置30に向かって既知データ分だけ移動し、XY平面内における撮像装置30の実際の位置と移動後のミシン針3の位置との差分を計測することにより、その差分の計測結果に基づいて、撮像装置30の光学系の光軸AXとミシン針3との正確な相対位置を算出可能である。
また、ミシン1は、アクチュエータ16の駆動量を検出する駆動量センサ31と、アクチュエータ17の駆動量を検出する駆動量センサ32とを有する。
駆動量センサ31は、アクチュエータ16であるパルスモータの回転量を検出するエンコーダを含む。駆動量センサ31の検出データは、制御装置40に出力される。
駆動量センサ32は、X軸モータ17Xの回転量を検出するX軸センサ32Xと、Y軸モータ17Yの回転量を検出するY軸センサ32Yとを含む。X軸センサ32Xは、X軸モータ17Xの回転量を検出するエンコーダを含む。Y軸センサ32Yは、Y軸モータ17Yの回転量を検出するエンコーダを含む。駆動量センサ32の検出データは、制御装置40に出力される。
駆動量センサ32は、XY平面内における保持部材15の位置を検出する位置センサとして機能する。アクチュエータ17の駆動量と保持部材15の移動量とは1対1で対応する。
X軸センサ32Xは、X軸モータ17Xの回転量を検出することにより、ミシン座標系における原点からの保持部材15のX軸方向の移動量を検出可能である。Y軸センサ32Yは、Y軸モータ17Yの回転量を検出することにより、ミシン座標系における原点からの保持部材15のY軸方向の移動量を検出可能である。
また、ミシン1は、縫製対象物Sを照明する落射照明装置33を有する。落射照明装置33は、撮像装置30の近傍に配置されている。落射照明装置33は、少なくとも撮像装置30の撮影領域FAを上方から照明する。落射照明装置33は、撮像装置30で撮影される縫製対象物Sを照明する。
表示装置80は、少なくとも撮像装置30が撮影した縫製対象物Sの画像データを表示する。表示装置80は、撮像装置30が撮影した画像データを表示する表示パネル81と、落射照明装置33に係る操作を受け付け可能な照明操作パネル82とを含む。
表示パネル81は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのようなフラットパネルディスプレイを含む表示装置である。
照明操作パネル82は、作業者に操作されることにより入力データを生成する入力装置としての機能を有する。本実施形態では、入力装置は、表示パネル81の表示画面に重ねて配置されているタッチパネルである。
図3及び図4を用いて、縫製対象物Sについて説明する。図3は、本実施形態に係る縫製対象物Sの一例を示す断面図である。図4は、本実施形態に係る縫製対象物Sの一例を示す平面図である。図3及び図4は、縫製処理が実施される前の縫製対象物Sを示す。本実施形態では、縫製対象物Sは、車両用シートに使用される表皮材である。
図3に示すように、縫製対象物Sは、表材4と、パッド材5と、裏材6とを有する。表材4に孔7が形成される。
表材4の表面は、車両用シートに搭乗者が着座したときに搭乗者と接触する着座面である。表材4は、織布、不織布、及び皮革の少なくとも一つを含む。パッド材5は、弾力性を有する。パッド材5は、例えばウレタン樹脂を含む。裏材6は、織布、不織布、及び皮革の少なくとも1つを含む。
図4に示すように、孔7は、表材4に複数配置されている。孔7は、規定パターンDPで配置されている。本実施形態では、規定パターンDPは、複数の基準パターンDPhを含む。1つの基準パターンDPhは、複数の孔7によって形成される。本実施形態では、複数の孔7により基準パターンDPhが形成される。本実施形態では、1つの基準パターンDPhが17個の孔7で形成される。
図4に示すように、基準パターンDPhは、間隔をあけて表材4に配置されている。基準パターンDPhは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに等間隔で配置されている。X軸方向に隣り合う基準パターンDPhの間に、Y軸方向の位置が異なる基準パターンDPhが配置される。隣り合う基準パターンDPhの間に孔7は形成されない。以下の説明においては、表材4の表面のうち基準パターンDPhの間の孔7が形成されない領域を、ステッチ形成領域MA、と称する。ステッチ形成領域MAには、縫製対象物Sに形成されるステッチGPの目標パターンRPが形成されている。
また、縫製対象物Sに複数の特徴パターンUP(UP1,UP2,UP3,UP4,UP5,UP6,UP7)が配置される。本実施形態では、特徴パターンUPは、規定パターンDPの一部である。本実施形態では、特徴パターンUPは、基準パターンDPhの一部である。図4に示すように、本実施形態では、特徴パターンUP(UP1,UP2,UP3,UP4,UP5,UP6,UP7)は、基準パターンDPhの1つの鋭角な角部を含むパターンとする。特徴パターンUPは、画像処理方法の一種であるパターンマッチング法により特定可能なパターンである。
図5を用いて、厚みがあり弾力性を有する縫製対象物SにステッチGPが形成された際に縫製対象物Sの表面に生じる変位について説明する。図5は、本実施形態に係る縫製対象物Sの一例を示す断面図である。図5は、縫製処理が実施された後の縫製対象物Sを示す。縫製対象物Sは、厚みがあり弾力性を有する。厚みがあり弾力性を有する縫製対象物SにステッチGPが形成されることにより、図5に示すように、縫製対象物Sが縮む可能性が高い。縫製対象物Sが縮むと、縫製対象物Sの表面が変位する可能性がある。縫製対象物Sの表面が変位すると、縫製対象物Sの表面に規定されているステッチGPの目標位置がXY平面内において変位する可能性が高い。ステッチGPの目標位置がXY平面内において変位した場合、目標パターンRPに従って保持部材15を移動させると、ステッチGPを目標位置に形成することが困難となる。そこで、ステッチGPの形成により縫製対象物Sが縮んで縫製対象物Sの表面が変位しても、次のステッチGPが目標位置に形成されるように、変位量に応じて保持部材15が移動される。
以下の説明においては、縫製対象物Sの表面に規定されるステッチGPの目標位置を適宜、ステッチ形成目標位置、と称する。ステッチ形成目標位置は、ミシン座標系において規定される。
図6を用いて、制御装置40について説明する。図6は、本実施形態に係る制御装置40の一例を示す機能ブロック図である。制御装置40は、ミシン1を制御する制御信号を出力する。制御装置40は、コンピュータシステムを含む。制御装置40は、入出力インターフェース装置50と、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む記憶装置60と、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む演算処理装置70とを有する。
制御装置40には、ミシン針3をZ軸方向に移動させるアクチュエータ16と、保持部材15をXY平面内において移動させるアクチュエータ17と、保持部材15の押え部材15AをZ軸方向に移動させるアクチュエータ18と、操作装置20と、撮像装置30と、落射照明装置33と、表示装置80とが、入出力インターフェース装置50を介して接続される。
また、制御装置40には、アクチュエータ16の駆動量を検出する駆動量センサ31と、アクチュエータ17の駆動量を検出する駆動量センサ32とが接続される。
制御装置40は、駆動量センサ31の検出データに基づいて、アクチュエータ16を制御する。制御装置40は、駆動量センサ31の検出データに基づいて、例えばアクチュエータ16の作動タイミングを決定する。
制御装置40は、駆動量センサ32の検出データに基づいて、アクチュエータ17を制御する。制御装置40は、駆動量センサ32の検出データに基づいて、保持部材15が目標位置に移動するようにアクチュエータ17をフィードバック制御する。
制御装置40は、駆動量センサ32の検出データに基づいて、XY平面内における保持部材15の位置を算出する。駆動量センサ32の検出データに基づいて、XY平面内における原点からの保持部材15の移動量が検出される。制御装置40は、検出された保持部材15の移動量に基づいて、XY平面内における保持部材15の位置を算出する。
記憶装置60は、縫製データ記憶部61と、プログラム記憶部62とを有する。
縫製データ記憶部61は、縫製データを記憶する。縫製データは、CAD(Computer Aided Design)データのような縫製対象物Sの設計データから導出可能な既知データである。
図4を用いて、縫製データについて説明する。縫製データは、縫製処理において参照される。縫製データは、縫製対象物Sに形成されるステッチGPの目標パターンRP及び保持部材15の移動条件を含む。
目標パターンRPは、縫製対象物Sに形成されるステッチGPの目標形状又は目標模様を含む。目標パターンRPは、ミシン座標系において規定される。
保持部材15の移動条件は、ミシン座標系において規定される保持部材15の移動軌跡を含む。保持部材15の移動軌跡は、XY平面内における保持部材15の移動軌跡を含む。保持部材15の移動条件は、目標パターンRPに基づいて定められる。
縫製データは、縫製対象物Sの表面に規定されるステッチ形成目標位置を含む。ステッチ形成目標位置は、ステッチ形成領域MAに規定される。ミシン1は、ステッチGPがステッチ形成目標位置に形成されるように、縫製データに基づいて縫製処理を実施する。
縫製データは、複数のステッチGPのそれぞれを形成するための複数の縫製データを含む。本実施形態では、縫製データは、第1ステッチGP1を形成するための第1縫製データ、第2ステッチGP2を形成するための第2縫製データ、及び、同様に第3ステッチGP3から第10ステッチGP10を形成するための第3縫製データから第10縫製データを含む。
目標パターンRPは、第1目標パターンRP1、第2目標パターンRP2、及び、同様に第3目標パターンRP3から第10目標パターンRP10を含む。本実施形態では、複数の目標パターンRP(RP1、RP2、RP3、RP4、RP5、RP6、RP7、RP8、RP9、RP10)は、Y軸方向に規定される。ミシン座標系において、複数の目標パターンRPのそれぞれは離間している。1つの目標パターンRPは、ライン状に規定される。本実施形態では、1つの目標パターンRPは、X軸方向に延在しY軸方向にジグザグ状(zigzag)に規定される。ステッチ形成目標位置は、目標パターンRPに対応して、ステッチ形成領域MAにおいてX軸方向に延在しY軸方向にジグザグ状に規定される。
第1縫製データは、第1縫製処理において縫製対象物Sに形成される第1ステッチGP1の第1目標パターンRP1を含む。また、第1縫製データは、第1縫製処理におけるXY平面内における保持部材15の移動条件を含む。
第1縫製処理は、第1目標パターンRP1に基づいて縫製対象物Sに第1ステッチGP1を形成する処理を含む。第1縫製処理は、縫製対象物Sが保持部材15に保持された後に縫製対象物Sに最初にステッチGPを形成する処理である。
第2縫製データは、第2縫製処理において縫製対象物Sに形成される第2ステッチGP2の第2目標パターンRP2を含む。また、第2縫製データは、第2縫製処理におけるXY平面内における保持部材15の移動条件を含む。
第2縫製処理は、第2目標パターンRP2に基づいて縫製対象物Sに第2ステッチGP2を形成する処理を含む。第2縫製処理は、第1縫製処理の次に実施される。
同様に第3縫製データから第10縫製データのそれぞれは、第3縫製処理から第10縫製処理のそれぞれにおいて縫製対象物Sに形成される第3ステッチGP3から第10ステッチGP10のそれぞれの第3目標パターンRP3から第10目標パターンRP10のそれぞれを含む。また、第3縫製データから第10縫製データのそれぞれは、第3縫製処理から第10縫製処理のそれぞれにおけるXY平面内における保持部材15の移動条件を含む。
同様に第3縫製処理から第10縫製処理のそれぞれは、第3目標パターンRP3から第10目標パターンRP10のそれぞれに基づいて縫製対象物Sに第3ステッチGP3から第10ステッチGP10のそれぞれを形成する処理を含む。第3縫製処理から第10縫製処理は、順次実施される。
第1縫製データは、第1縫製処理において参照される。第2縫製データは、第2縫製処理において参照される。同様に第3縫製データから第10縫製データのそれぞれは、第3縫製処理から第10縫製処理のそれぞれにおいて参照される。
縫製データは、第1ステッチGP1から第10ステップGP10を形成するための縫製順番を含む。上述のように、第1ステッチGP1を形成するための第1縫製処理が実施された後、第2ステッチGP2を形成するための第2縫製処理が実施されるように、縫製データが規定される。同様に、第3ステッチGP3を形成すための第3縫製処理から第10ステッチGP10を形成するための第10縫製処理が順次実施されるように、縫製データが規定される。
また、図7に示すように、縫製データは、複数の目標パターンRPのそれぞれについて、縫製対象物Sの表面の変位を補正するための基準点である補正点Pc(Pc1,Pc2,Pc3)の位置データと、補正点Pcの変位量を算出するために撮像装置30により撮影される縫製対象物Sの複数の特徴パターンUPの撮影位置Pf(Pf1,Pf2,Pf3)の位置データと、補正点Pcを撮像装置30の撮影領域FAに移動させるための保持部材15の空送り量とを含む。補正点Pcの位置データは、縫製対象物Sの設計データから取得可能である。撮影位置Pfの位置データは、縫製対象物Sの設計データと補正点Pcの位置データとから取得可能である。なお、撮影位置Pfの位置データは、後述する特徴パターン設定部74によって表示された操作部が操作されることによって設定されてもよい。空送り量は、縫製対象物Sの設計データと縫製方向に隣接する補正点Pc間の距離とに基づいて、取得可能である。図7は、本実施形態に係る縫製対象物Sの補正点Pcと撮影位置Pfとを示す模式図である。
図8を用いて、縫製データのディレクトリ構成の一例について説明する。図8は、本実施形態に係る縫製対象物データのディレクトリ構成の一例を示す概略図である。縫製データは、記憶装置60の縫製データ記憶部61に、図6に示すディレクトリ構成で記憶される。縫製データは、定義ファイルと、データファイルとを含む。定義ファイルは、縫製対象物Sの生地の厚みデータを含む。データファイルは、特徴パターンUPに対応する補正点Pcの位置データと、特徴パターンUPの撮影位置Pfの位置データと、次の撮影位置Pf又は縫製処理の開始位置SPまでの保持部材15の空送り量とを含む。
より詳しくは、第n縫製データを識別する識別番号を含むフォルダ名のフォルダ内に、設定値などを記憶した定義ファイルと、第n縫製データに含まれる特徴パターンUPを識別する識別番号を含むファイル名の複数のデータファイルとが、第n縫製データごとに保存される。
図6に戻って、プログラム記憶部62は、ミシン1を制御するためのコンピュータプログラムを記憶する。縫製データ記憶部61に記憶されている縫製データがプログラム記憶部62に記憶されているコンピュータプログラムに入力される。コンピュータプログラムは、演算処理装置70に読み込まれる。演算処理装置70は、プログラム記憶部62に記憶されているコンピュータプログラムに従ってミシン1を制御する。
演算処理装置70は、縫製データ取得部71と、撮影位置設定部72と、照明設定部73と、特徴パターン設定部74と、初期位置データ生成部75と、縫製処理部76とを有する。
縫製データ取得部71は、縫製データ記憶部61から縫製データを取得する。本実施形態では、縫製データ取得部71は、第1縫製処理において参照される第1縫製データ及び第1縫製処理の次に実施される第2縫製処理において参照される第2縫製データを縫製データ記憶部61から取得する。同様に、縫製データ取得部71は、第3縫製処理から第10縫製処理のそれぞれにおいて参照される第3縫製データから第10縫製データのそれぞれを縫製データ記憶部61から取得する。
撮影位置設定部72は、縫製データ取得部71により取得された縫製データに基づいて、縫製対象物Sに配置されている複数の特徴パターンUPが撮像装置30の撮影領域FAに順次配置されるように、保持部材15を移動させるアクチュエータ17に制御信号を出力する。
また、撮影位置設定部72は、初期位置データの作成時、作業者の操作によって、撮影位置Pfを設定可能にする。より詳しくは、撮影位置設定部72は、初期位置データの生成時、縫製データに基づいて、現在の撮影位置Pfの前後の撮影位置Pfを撮像装置30の撮影領域FAに移動する制御を行う。撮影位置設定部72は、表示制御部721と、移動制御部722とを含む。
表示制御部721は、初期位置データの生成時、現在の撮影位置Pfの前後の撮影位置Pfを撮像装置30の撮影領域FAに移動させる操作を受付可能な操作部21Aを操作装置20の操作パネル21に表示させる。
図9を用いて、表示制御部721によって操作パネル21に表示される操作部21Aについて説明する。図9は、本実施形態に係るミシン1の一例を示す概略図である。操作部21Aは、撮像装置30の撮影領域FAに現在の撮影位置Pfの前(次)の撮影位置Pfを移動させる前キー21Bと、撮像装置30の撮影領域FAに現在の撮影位置Pfの後の撮影位置Pfを移動させる後キー21Cとを有する。前(次)の撮影位置Pfとは、保持部材15を縫製順番に対応して順番に移動させたときに次に撮影する撮影位置Pfである。後の撮影位置Pfとは、保持部材15を縫製順番に対応して逆順に移動させたときに次に撮影する、言い換えると、後の撮影位置Pfとは、既に撮影した撮影位置Pfである。
移動制御部722は、縫製データに基づいて、縫製対象物Sに配置されている複数の特徴パターンUPが縫製順番に対応して順番又は逆順に撮像装置30の撮影領域FAに順次配置されるように、アクチュエータ17に制御信号を出力する。
本実施形態において、移動制御部722は、縫製データに基づいて、操作部21Aに対する操作に応じて、保持部材15を移動させて、撮像装置30の撮影領域FAに現在の撮影位置Pfの前後の撮影位置Pfを移動させる制御信号を出力する。より詳しくは、移動制御部722は、前キー21Bに対する操作が検出されると、アクチュエータ17のX軸モータ17Xを駆動して、保持部材15をX軸方向に空送り量分だけ移動させて、撮像装置30の撮影領域FAに現在の撮影位置Pfの前の撮影位置Pfを移動させる。移動制御部722は、後キー21Cに対する操作が検出されると、アクチュエータ17のX軸モータ17Xを駆動して、保持部材15をX軸方向に空送り量分だけ移動させて、撮像装置30の撮影領域FAに現在の撮影位置Pfの後ろの撮影位置Pfを移動させる。また、移動制御部722は、現在の撮影位置PfがX軸方向の端部である場合、アクチュエータ17のY軸モータ17Yを駆動して、保持部材15をY軸方向に空送り量分だけ移動させる。
照明設定部73は、照明操作パネル82に対する操作に基づいて、縫製対象物Sの表面の色(表材4の素材の色)に応じて、落射照明装置33の光量を制御する制御信号を出力する。なお、照明設定部73は、作業者の操作によらずに、自動で光量を制御してもよい。照明設定部73は、表示制御部732と、調整部733と、光量データ記憶部731とを含む。
図10を参照して、表材4の色と光量との関係について説明する。図10は、本実施形態に係る縫製対象物Sと照明の光量について説明する図である。表材4の色と光量とが適切である場合、左に示すように、表材4と孔7とのコントラストが大きくなる。例えば、左に示した表材4と素材の色が異なると、光量が適切ではなくなり、右上に示すように、表材4と孔7とのコントラストが小さくなる。また、例えば、光量が不足していたり、二値化閾値が不適切であるような、認識パラメータが不整合である場合、図10の右下に示すように、撮影された画像の全体が暗くなったり、表材4と孔7との境界が不明確又は不鮮明になったりする。
表示制御部732は、落射照明装置33の光量を調整する操作を受付可能な操作部82Aを表示装置80の操作パネル82に表示させる。
図11を用いて、表示制御部732によって操作パネル82に表示される操作部82Aについて説明する。図11は、本実施形態に係るミシン1の一例を示す概略図である。操作部82Aは、光量を増加させる上キー82Bと、光量を低減させる下キー82Cと、光量を自動で設定する自動キー82Dとを含む。操作部82Aの近くには光量表示部82Eが配置されている。光量表示部82Eは、光量を表示する。
調整部733は、操作部82Aに対する操作が検出されると、落射照明装置33の光量を調整する。調整部733は、上キー82Bに対する操作が検出されると、落射照明装置33の光量を増やす。調整部733は、下キー82Cに対する操作が検出されると、落射照明装置33の光量を減らす。調整部733は、自動キー82Dに対する操作が検出されると、落射照明装置33の光量を自動で調整する。
光量データ記憶部731は、上記のようにして調整された光量と二値化閾値とを光量データとして、生成した初期位置データに対応付けて記憶する。また、光量データ記憶部731は、適切な光量を得たときの、表材4と孔7との平均濃度と許容範囲とをそれぞれ記憶する。
特徴パターン設定部74は、表示装置80の表示パネル81に表示された、撮像装置30が撮影した画像データ上において、特徴パターンUPのテンプレート枠の位置と撮像位置Pfとを設定する。
特徴パターン設定部74は、初期位置データの生成時、作業者による表示装置80の操作によって、撮像装置30が撮影した縫製対象物Sの表面の画像における特徴パターンUPのテンプレート枠の位置と撮影位置Pfとを設定する。本実施形態では、撮影位置Pfは、テンプレート枠の中心である。特徴パターン設定部74は、表示制御部741と、設定部742とを含む。
図12を用いて、表示制御部741によって操作パネル82に表示される操作部82Aについて説明する。図12は、本実施形態に係るミシン1の一例を示す概略図である。表示制御部741は、表示パネル81に、撮像装置30が撮影した縫製対象物Sの表面の画像に、撮影位置Pfを示す十字キーの画像と、特徴パターンUPを示すテンプレート枠の画像とを重畳して表示させる。本実施形態では、テンプレート枠は、撮影した画像の面積の1/2とする。表示制御部741は、表示パネル81においてテンプレート枠で囲まれた領域を特徴パターンUPとして登録する操作を受付可能な登録ボタン画像82Fを表示させる。また、表示制御部741は、操作装置20の操作パネル21に、テンプレート枠を設定する操作を受付可能な登録ボタン画像21Dを表示させる。作業者は、操作装置20の登録ボタン画像21Dまたは表示装置80の登録ボタン画像82Fによって、特徴パターンを設定可能である。
設定部742は、登録ボタン画像82Fまたは登録ボタン画像21Dが押下されると、撮像画像に対して、表示パネル81においてテンプレート枠で囲まれた領域である特徴パターンUPで画像処理を行う。設定部742は、画像処理の結果、正しく認識されると、駆動量センサ32によって検出したアクチュエータ17の駆動量に基づいて、表示パネル81においてテンプレート枠で囲まれた領域である特徴パターンUPの位置と、中心位置である撮影位置Pfとを記憶する。設定部742は、正しく認識されない場合、テンプレート枠を大きくして、再度画像処理を行う。設定部742は、テンプレート枠の大きさが所定の上限まで大きくされても正しく認識されない場合、エラーとする。
初期位置データ生成部75は、撮像装置30が撮影した画像データに基づいて、縫製対象物Sに配置されている複数の特徴パターンUPの初期位置を示す初期位置データを生成する。特徴パターンUPの初期位置データは、ミシン座標系における特徴パターンUPの初期位置を示す。初期位置データ生成部75は、縫製処理が開始される前の縫製対象物Sの特徴パターンUPの画像データに基づいて、特徴パターンUPの初期位置を自動で取得する。なお、特徴パターンUPの初期位置データは、操作パネル21に表示された操作部21Aに対する操作によって取得してもよい。特徴パターンUPの初期位置データは、CADデータのような縫製対象物Sの設計データから導出可能な既知データである。特徴パターンUPの初期位置データは、縫製データ記憶部61に記憶される。
特徴パターンUPの初期位置データは、縫製対象物Sごとに、落射照明装置33の光量データを規定する。
なお、初期位置データの生成は、CADデータから自動又は手作業で導出してもよいし、図9に示すような操作パネル21に表示された操作部21Aを操作して、初期位置データを作成してもよい。
操作パネル21に表示された操作部21Aに対する操作によって、初期位置データを生成する方法について説明する。まず、制御装置40は、アクチュエータ17を制御して、保持部材15に保持されている縫製対象物Sのうち、特徴パターンUPを撮像装置30の撮影領域FAに移動させる。本実施形態では、特徴パターンUPの中心位置Cを撮像装置30の撮影領域FAの中心位置である光軸位置に移動させる。撮影位置Pfは、光軸位置を含む。撮像装置30は、撮影領域FAに配置されている特徴パターンUPを撮影する。初期位置データ生成部75は、特徴パターンUPの画像データを取得する。初期位置データ生成部75は、特徴パターンUPの画像データをパターンマッチング法により画像処理して、特定パターンUPを特定する。特徴パターンUPが撮像装置30の撮影領域FAに配置されているときのミシン座標系における保持部材15の位置は、駆動量センサ32によって検出される。上述のように、駆動量センサ32は、XY平面内における保持部材15の位置を検出する位置センサとして機能する。初期位置データ生成部75は、駆動量センサ32の検出データを取得する。このようにして、初期位置データ生成部75は、特徴パターンUPが撮影領域FAに配置されているときの駆動量センサ32の検出データに基づいて、撮影領域FAに配置されている特徴パターンUPのXY平面内における初期位置を示す初期位置データを取得する。次の特徴パターンUPを撮像装置30の撮影領域FAに移動する際には、自動で移動させてもよいし、操作部21Aに対する操作によって移動させてもよい。これらの処理を繰り返して、初期位置データを生成する。
縫製処理部76は、上記のようにして生成した縫製データと初期位置データと補正点Pcの変位量に基づいて生成した補正データとに基づいて、縫製対象物Sに所定のステッチを形成する。また、縫製処理部76は、縫製対象物Sの縫製時、初期位置データの生成時に設定した光量データに基づいて、光量を自動で調整してもよい。
次に、図13を用いて、本実施形態に係る初期位置データ生成方法について説明する。図13は、第一実施形態に係る初期位置データ生成方法の一例を示すフローチャートである。
縫製対象物Sを保持部材15で保持する(ステップS101)。
制御装置40は、アクチュエータ17を制御して、縫い始めの位置である縫製処理の開始位置SP1を撮像装置30の真下の撮影領域FAに移動させる(ステップS102)。
制御装置40は、第1縫製データの空送り量に基づいてアクチュエータ17を制御して、第1特徴パターンUP1を撮像装置30の真下の撮影領域FAに移動する(ステップS103)。制御装置40は、撮像装置30の撮影領域FAの撮影位置Pfに第1特徴パターンUP1の中心位置C1が配置されるように保持部材15を移動させる。
第1特徴パターンUP1は、第1縫製処理に係る特徴パターンである。第1縫製処理に係る特徴パターンUPとは、ミシン座標系において第1縫製処理により第1ステッチGP1が形成されるステッチ形成目標位置に最も近い特徴パターンUPである。言い換えると、第1縫製処理に係る特徴パターンUPとは、ミシン座標系における第1目標パターンRP1に最も近い特徴パターンUPをいう。
第1特徴パターンUP1は、ジグザグ状に規定されている第1目標パターンRP1の頂点の近傍に配置されている。本実施形態では、第1特徴パターンUP1は、縫製対象物Sの-X側の端部の近傍に配置されている。
制御装置40は、照明設定部73によって、落射照明装置33を調整する(ステップS104)。落射照明装置33の照明調整方法については後述する。
制御装置40は、特徴パターン設定部74によって、第1特徴パターンUP1を登録する(ステップS105)。本実施形態では、制御装置40は、表示制御部741によって、表示パネル81に、撮像装置30が撮影した縫製対象物Sの表面の画像に、撮影位置Pfを示す十字キーの画像と、第1特徴パターンUP1を示すテンプレート枠の画像とを重畳して表示させる。表示制御部741は、表示パネル81に登録ボタン画像82Fを表示させ、操作パネル21に登録ボタン画像21Dを表示させる。作業者は、操作装置20の登録ボタン画像21Dまたは表示装置80の登録ボタン画像82Fによって、第1特徴パターンUP1を設定する。
制御装置40は、第1特徴パターンUP1が設定された後、撮像装置30で撮影する(ステップS106)。制御装置40は、撮影した第1特徴パターンUP1の画像データを取得する。
制御装置40は、初期位置データ生成部75によって、第1特徴パターンUP1のデータを生成して初期位置データとして記憶する(ステップS107)。制御装置40は、登録ボタン画像82Fまたは登録ボタン画像21Dが押下されたときの、第1特徴パターンUP1の位置と、撮影位置Pfとを、撮影した画像データに関連付けて初期位置データとして記憶する。
制御装置40は、光量データ記憶部731によって、第1特徴パターンUP1の初期位置データに、第1特徴パターンUP1を撮影したときの照明のデータを記憶する(ステップS108)。照明のデータは、光量と、二値化閾値と、背景部である表材4の平均濃度と許容範囲と、孔7の平均濃度と許容範囲とを含む。
制御装置40は、カウンタnを「2」にする(ステップS109)。
制御装置40は、第n-1縫製データの空送り量に基づきアクチュエータ17を制御して、第n特徴パターンUPnを撮像装置30の真下に移動させる(ステップS110)。
制御装置40は、特徴パターン設定部74によって、第n特徴パターンUPnを登録する(ステップS111)。
制御装置40は、第n特徴パターンUPnが設定された後、撮像装置30で撮影する(ステップS112)。
制御装置40は、初期位置データ生成部75によって、第n特徴パターンUPnのデータを生成して初期位置データとして記憶する(ステップS113)。
制御装置40は、光量データ記憶部731によって、第n特徴パターンUPnの初期位置データに、第n特徴パターンUPnを撮影したときの照明のデータを記憶する(ステップS114)。
制御装置40は、第1縫製データについて、初期位置データの生成が終了したかを判定する(ステップS115)。制御装置40は、第1縫製データの全ての特徴パターンUPについて初期位置データの生成が終了した場合(ステップS115でYes)、処理を終了する。制御装置40は、第1縫製データの全ての特徴パターンUPについて初期位置データの生成が終了していない場合(ステップS115でNo)、ステップS116に進む。
第1縫製データの全ての特徴パターンUPについての初期位置データ生成が終了していない場合(ステップS115でNoの場合)、制御装置40は、カウンタnを「+1」する(ステップS116)。
次に、図14及び図15を用いて、本実施形態に係る照明調整方法について説明する。図14は、本実施形態に係る照明調整方法の一例を示すフローチャートである。図15は、本実施形態に係る照明調整方法の他の例を示すフローチャートである。縫製対象物Sが保持部材15によって保持され、撮像装置30の撮影領域FAに第1特徴パターンUP1が配置されているものとする。
まず、図14を用いて、初期位置データに落射照明装置33の光量が記憶されていない場合について説明する。照明設定部73は、落射照明装置33の光量を増加する(ステップS201)。照明設定部73は、光量をあらかじめ設定された最小値から徐々に大きくする。
照明設定部73は、撮像装置30によって保持部材15に保持されている縫製対象物Sを撮影する(ステップS202)。
照明設定部73は、判別分析法を実行する(ステップS203)。判別分析法は、縫製対象物Sの表面を撮影した画像データに画像処理を行って、縫製対象物Sの背景部である表材4を判別する。本実施形態において、二値化処理を行うと、表材4は、白い領域(高輝度領域)として判別可能である。
照明設定部73は、判別分析法によって縫製対象物Sの表材4として判別された領域の平均濃度を算出する(ステップS204)。
照明設定部73は、表材4の平均濃度が上限閾値より大きいかを判定する(ステップS205)。照明設定部73は、表材4の平均濃度が上限閾値より大きい場合(ステップS205でYes)、ステップS206に進む。照明設定部73は、表材4の平均濃度が上限閾値より大きくない場合(ステップS205でNo)、ステップS201に戻って処理を再度実行する。
表材4の平均濃度が上限閾値を超えると、照明設定部73は、現在の光量を最大光量として決定する(ステップS206)。
照明設定部73は、最大光量以下で光量を減少する(ステップS207)。照明設定部73は、光量を最大光量から徐々に小さくする。
照明設定部73は、撮像装置30によって保持部材15に保持されている縫製対象物Sを撮影する(ステップS208)。
照明設定部73は、判別分析法を実行する(ステップS209)。判別分析法は、縫製対象物Sの表面を撮影した画像データに画像処理を行って、縫製対象物Sの孔7を判別する。本実施形態において、二値化処理を行うと、孔7は、黒い領域(低輝度領域)として判別可能である。
照明設定部73は、判別分析法によって孔7として判別された領域の平均濃度を算出する(ステップS210)。
照明設定部73は、孔7の平均濃度が下限閾値より小さいかを判定する(ステップS211)。照明設定部73は、孔7の平均濃度が下限閾値より小さい場合(ステップS211でYes)、ステップS212に進む。照明設定部73は、孔7の平均濃度が下限閾値より小さくない場合(ステップS211でNo)、ステップS207に戻って処理を再度実行する。
照明設定部73は、最適光量を決定する(ステップS212)。照明設定部73は、現在の光量以上、最大光量以下を最適光量として決定する。
次に、図15を用いて、初期位置データに落射照明装置33の光量を含む光量データ(認識パラメータ)が記憶されている場合について説明する。照明設定部73は、落射照明装置33の光量を初期位置データに記憶された光量にする(ステップS301)。
照明設定部73は、撮像装置30で撮影する(ステップS302)。
照明設定部73は、表材4の平均濃度と孔7の平均濃度とがあらかじめ記憶された基準濃度値の範囲内であるかを判定する(ステップS303)。照明設定部73は、表材4の平均濃度と孔7の平均濃度とを算出する。照明設定部73は、表材4の平均濃度と孔7の平均濃度とが基準濃度値の範囲内である場合(ステップS303でYes)、ステップS308に進む。照明設定部73は、表材4の平均濃度と孔7の平均濃度とが基準濃度値の範囲内ではない場合(ステップS303でNo)、現在の認識パラメータはデータ不整合であるので、ステップS304に進む。認識パラメータは、光量データと二値化閾値データとを含む。
照明設定部73は、認識パラメータがデータ不整合である旨を警告表示する(ステップS304)。また、照明設定部73は、警告表示とともに、光量を再調整するか否かを選択する画面を表示パネル81に表示する。
照明設定部73は、光量を再調整する選択操作が実行されたかを判定する(ステップS305)。照明設定部73は、光量を再調整することが選択された場合(ステップS305でYes)、ステップS306に進む。照明設定部73は、光量を再調整しないことが選択された場合(ステップS305でNo)、ステップS307に進む。
照明設定部73は、照明を再設定する(ステップS306)。図11に示すように、表示制御部732によって、操作パネル82に操作部82Aを表示する。作業者は、操作部82Aを操作して、照明装置の光量が適切になるように操作する。または、光量を調整してもデータ不整合であるような場合、二値化閾値を変更してもよい。
照明設定部73は、後続処理を中断する(ステップS307)。この場合、後続する処理は実行されない。
照明設定部73は、光量を設定した後、後続処理を実行する(ステップS308)。この場合、設定した光量で後続処理が実行される。
以上説明したように、本実施形態においては、縫製順番を含む縫製データに基づいて、縫製対象物Sの複数の特徴パターンUPが撮像装置30の真下の撮影領域FAに順次配置されるように、保持部材15を移動させるアクチュエータ17が制御される。縫製対象物S上の特徴パターンUPを縫製順番に対応して、撮像装置30の真下の撮影領域FAに正確に移動するので、容易に初期位置データを生成することができる。
また、本実施形態においては、縫製データは、補正時の基準点であるライン上の補正点Pcと、特徴パターンUP内の撮影位置Pfと、次の撮影位置Pf又は縫製処理の開始位置SPまでの保持部材15の空送り量とを含む。本実施形態は、このような縫製データに基づいて、自動又は操作パネル21に表示される操作部21Aを操作することよって、縫製対象物S上の特徴パターンUPを縫製順番に対応して、撮像装置30の真下の撮影領域FAに正確に移動することができる。このようにして、本実施形態は、容易に初期位置データを生成することができる。
これに対して、手作業で、縫製対象物Sの特徴パターンUPを撮像装置30の真下の撮影領域FAに移動する場合、保持部材15の位置を正確に合わせることと、縫製対象物Sの姿勢を正確に合わせることが難しい。これにより、初期位置データの生成に手間と時間とを要する。また、手作業で実行する場合、同じ位置に繰り返し移動させることを再現することが難しいおそれがある。
本実施形態は、縫製データに基づいて、保持部材15の位置を正確に合わせることと、縫製対象物Sの姿勢を容易に、かつ、正確に合わせることができる。
また、本実施形態は、初期位置データの生成時、作業者の操作によって、撮像装置30が撮影した縫製対象物Sの表面の画像における特徴パターンUPのテンプレート枠の位置と撮影位置Pfとを設定することができる。本実施形態によれば、より検出精度の高い特徴パターンUPを設定可能であるので、より適切な初期位置データを生成することができる。
また、本実施形態は、保持部材15にセットされた縫製対象物Sに対して、照明装置の光量を自動で設定することができる。また、本実施形態は、調整された光量と二値化閾値とを光量データとして、生成した初期位置データに対応付けて記憶する。これにより、本実施形態によれば、縫製処理時に、適切な光量を容易に再現することができる。
これに対して、手作業で、縫製対象物Sごとに照明を設定する場合、作業者の習熟度によって作業効率と精度とに差異が生じるそれがある。手作業で実行する場合、同様に照明を設定することを再現することが難しいおそれがある。
さらに、本実施形態は、縫製データについて初めて初期位置データを生成するために照明を設定する際、記憶されている照明データの認識パラメータの整合性をチェックし、警告表示するので、縫製処理における不良発生のリスクを低減することができる。また、本実施形態は、認識パラメータの不整合が発生したときに、再調整を行うことができる。本実施形態によれば、縫製対象物Sの表材4の素材に合わせて、認識パラメータを適切に設定することができる。
[第2実施形態]
図16及び図17を参照しながら、本実施形態に係るミシン1について説明する。図16は、本実施形態に係るミシン1の一例を示す概略図である。図17は、本実施形態に係る照明調整方法の一例を示すフローチャートである。ミシン1の基本的な構成は、上述の第1実施形態のミシン1と同様である。以下の説明においては、ミシン1と同様の構成要素には、同一の符号又は対応する符号を付し、その詳細な説明は省略する。ミシン1は、透過照明装置34を備える点で第1実施形態と異なる。
透過照明装置34は、撮像装置30の下側であって、保持部材15の下側のテーブル2に配置されている。透過照明装置34は、少なくとも撮像装置30の撮影領域FAを下方から照明する。透過照明装置34は、パネル型の照明装置である。透過照明装置34は、縫製対象物Sを表面から見ると、孔7が高輝度領域となり、表材4が低輝度領域となる。
透過照明装置34を使用する場合、外乱光の影響を抑制するため、撮像装置30の撮影領域FAを、図示しない筒状のカバーで覆うことが好ましい。
次に、図16を用いて、本実施形態に係る照明調整方法について説明する。照明設定部73は、落射照明装置33を設定する(ステップS401)。落射照明装置33の光量は、初期位置データに含まれる光量データに基づいて設定するものとする。
照明設定部73は、撮像装置30によって保持部材15に保持されている縫製対象物Sを撮影する(ステップS402)。
照明設定部73は、判別分析法を実行する(ステップS403)。判別分析法は、縫製対象物Sの表面を撮影した画像データに画像処理を行って、縫製対象物Sの表材4と孔7とを判別する。本実施形態において、表材4が低輝度領域として、孔7が高輝度領域として判別可能である。なお、照明設定部73は、判別分析法によって孔7を適切に認識できない場合、CADデータから生成した縫製データに基づいて、孔7を判別してもよい。
照明設定部73は、判別分析法によって縫製対象物Sの孔7として判別された領域の平均濃度を算出する(ステップS404)。
照明設定部73は、算出した、落射照明装置33を使用した際の孔7の平均濃度を第一孔情報として取得し記憶する(ステップS405)。
照明設定部73は、透過照明装置34を設定する(ステップS406)。透過照明装置34の光量は、初期位置データに含まれる光量データに基づいて設定するものとする。
照明設定部73は、撮像装置30によって保持部材15に保持されている縫製対象物Sを撮影する(ステップS407)。
照明設定部73は、判別分析法を実行する(ステップS408)。
照明設定部73は、判別分析法によって縫製対象物Sの孔7として判別された領域の平均濃度を算出する(ステップS409)。
照明設定部73は、算出した、透過照明装置34を使用した際の孔7の平均濃度を第二孔情報として取得し記憶する(ステップS410)。
照明設定部73は、第一孔情報と第二孔情報とを照合する(ステップS411)。照明設定部73は、第一孔情報と第二孔情報とが一致する場合(ステップS411でYes)、ステップS414に進む。照明設定部73は、第一孔情報と第二孔情報とが一致しない場合(ステップS411でNo)、ステップS413に進む。
照明設定部73は、落射照明装置33を使用する照明として設定する(ステップS413)。
照明設定部73は、透過照明装置34を使用する照明として設定する(ステップS414)。
以上説明したように、本実施形態は、落射照明装置33を使用するか、透過照明装置34を使用するかを適切に設定することができる。本実施形態では、透過照明装置34を使用すると、縫製対象物Sの表材4の色、表面のしわの有無、糸色によって、画像が変化して、認識結果に影響することを抑制することができる。言い換えると、本実施形態は、透過照明装置34を使用することによって、表材4の色、表面のしわの有無、糸色によらず、適切に認識することができる。
[第3実施形態]
図18から図26を参照しながら、本実施形態に係るミシン1の撮像装置30のキャリブレーションに使用する治具100と治具110とについて説明する。図18は、本実施形態に係る治具100の一例を示す平面図である。図19は、本実施形態に係る治具100の一例を示す断面図である。図20は、高さに対するピクセルレートの一例を示す図である。図21は、パターンごとに規定された縫製対象物の高さの一例を示す図である。図22は、本実施形態に係る治具110の一例を示す平面図である。図23は、本実施形態に係る治具110の一例を示す断面図である。図24は、本実施形態に係る治具110の使用方法の一例を示す概略図である。図25は、本実施形態に係る治具110の使用方法の一例を示す概略図である。図26は、本実施形態に係る治具110の使用方法の一例を示す概略図である。
図18及び図19を用いて、治具100について説明する。治具100は、縫製対象物Sの厚さごとに、正確なピクセルレートを算出するための治具である。治具100は、3段階の厚さを有している。治具100は、厚さh1の第1厚さ部101と、厚さh1より厚い厚さh2の第2厚さ部102と、厚さh2より厚い厚さh3の第3厚さ部103とを有する。第1厚さ部101は、表面に円101aと円101bとが配置されている。第2厚さ部102は、表面に円102aと円102bとが配置されている。第3厚さ部103は、表面に円103aと円103bとが配置されている。円101aと円101bと円102aと円102bと円103aと円103bとは同じ大きさである。円101aと円102aと円103aとは、中心が同一直線上に位置している。円101bと円102bと円103bとは、中心が同一直線上に位置している。円101aと円101bと、円102aと円102bと、円103aと円103bとの表面における実際の中心間距離は同じである。
撮像装置30が撮像した画像データに画像処理を行って、画像上における円101aと円101bと、円102aと円102bと、円103aと円103bとの中心間距離を算出することにより、3段階のピクセルレートが算出される。
図20及び図21を用いて、ピクセルレートについて説明する。図20に示すように、上記の治具100を使用して取得した3段階のピクセルレートに基づいて、回帰直線を取得する。回帰直線に基づいて、図21に示すような、任意の厚さの縫製対象物Sの適切なピクセルレートが算出可能である。図21に示すように、パターンごとに、縫製対象物Sの厚さが規定されている。または、3段階のピクセルレートに基づいて、2点間の中間値を使用して算出処理を簡素化してもよい。
図22及び図23を用いて、治具110について説明する。治具110は、保持部材15を使用した状態におけるミシン座標系とカメラ座標系との対応を補正するための治具である。治具110は、正方形状の板材である。治具110は、中央部に配置された円形部111と、円形部111の中央に形成された孔112とを有する。円形部111は、治具110の他の部分と異なる色で着色されている。孔112は、治具110の重心である。治具110は、重心計算によって、正確に位置検出が可能である。
図24から図26を用いて、治具110の使用方法を説明する。まず、図24の上に示すように、治具110を保持部材15上の任意の位置に固定する。そして、図24の中央に示すように、保持部材15をミシン針3の真下であるミシン原点に移動して、ミシン座標値を記憶する。そして、図24の下に示すように、保持部材15を撮像装置30の真下に移動して、撮影した画像に基づいて、治具110の重心の座標値を検出する。そして、図25に示すように、アクチュエータ17の駆動量から取得したX軸方向の移動量とY軸方向の移動量と、治具110の重心の座標値とから、ミシン座標系における撮像装置30の中心の座標値を取得する。図26に示すように、テーブル2をX軸方向とY軸方向とに既知の量だけ水平面内で移動させて、再度、治具110の重心の座標値を検出する。検出した2つの重心の座標値と、テーブル2の移動量とに基づいて、カメラ座標系とミシン座標系と傾きθが算出可能である。このようにして、ミシン座標系とカメラ座標系との対応付けを補正することが可能である。
以上説明したように、本実施形態は、縫製対象物Sの厚さに応じたピクセルレートを適切に算出することができる。また、本実施形態は、保持部材15を使用した状態において、ミシン座標系における、撮像装置30と縫製対象物Sとの位置関係を正確に取得することができる。本実施形態は、縫製対象物Sの厚さによらず、縫製対象物Sの表面に生じる変位を高精度に検出することができる。