JP2022144481A - 位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法 - Google Patents

位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】位相シフト膜表面におけるヘイズの発生を抑制し、且つ洗浄時における膜剥離や修正エッチング時に生じる修正部断面における段差を低減することで転写性能を向上させた位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法を提供する。【解決手段】本実施形態に係る位相シフトマスクブランク10は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、透明基板11と、透明基板11の上に形成された位相シフト膜12と、を備え、位相シフト膜12は、位相差透過率調整層13と気体透過保護層15と組成傾斜層14とを備え、組成傾斜層14は、位相差透過率調整層13を構成する成分の含有量が基板11側から気体透過保護層15側に向かって減少し、気体透過保護層15を構成する成分の含有量が基板11側から気体透過保護層15側に向かって増加している。【選択図】図1

Description

本発明は、半導体デバイス等の製造において使用される位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法に関する。
近年、半導体加工においては、特に大規模集積回路の高集積化により、回路パターンの微細化が必要になってきており、回路を構成する配線パターンやコンタクトホールパターンの微細化技術への要求が高まってきている。そのため、半導体デバイス等の製造で用いられる露光光源は、KrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
また、ウエハ転写特性を向上させたマスクとして、例えば、位相シフトマスクがある。位相シフトマスクでは、透明基板を透過するArFエキシマレーザー光と、透明基板と位相シフト膜の両方を透過するArFエキシマレーザー光との位相差(以下、単に「位相差」という。)が180度、かつ透明基板を透過するArFエキシマレーザー光の光量に対し、透明基板と位相シフト膜の両方を透過するArFエキシマレーザー光の光量の比率(以下、単に「透過率」という)が6%というように、位相差と透過率の両方を調整することが可能である。
例えば、位相差が180度の位相シフトマスクを製造する場合、位相差が177度付近になるよう位相シフト膜の膜厚を設定した後、位相シフト膜をフッ素系ガスにてドライエッチングすると同時に透明基板を3nm程度加工して、最終的に位相差を180度付近に調整する方法が知られている。
波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクにおいては、露光することにより、マスクに「ヘイズ」と呼ばれる異物が徐々に生成・成長・顕在化して、そのマスクが使用できなくなることがある。特に位相シフト膜がシリコンと遷移金属と酸素や窒素などの軽元素とで構成された膜である場合、位相シフト膜表面に異物が発生することがある。
ヘイズを抑制するための技術としては、例えば、特許文献1、2に記載されたものがある。
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術では、上述のようなヘイズを抑制する効果が十分でない場合がある。
また、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクブランクの製造方法においては、通常、スパッタリングにより基板上に位相シフト膜を形成する。形成された位相シフト膜には応力が生じており、位相シフトマスク製造時のエッチングによりこの膜応力が部分的に解放され、位相シフトマスクパターンの位置精度が悪化することがある。
位相シフト膜の応力を緩和するための技術としては、例えば、特許文献3に記載されたものがある。
しかしながら、特許文献3に記載された技術では、特に位相シフト膜が異なる組成の膜による多層構造の場合、応力緩和の程度が位相シフト膜を構成するそれぞれの膜で異なるため、膜界面の密着力が低下し、位相シフトマスクの洗浄時に膜剥離することがある。つまり、位相シフトマスクに発生するヘイズの発生を抑制する手法の一つとして、位相シフト膜を積層させる手法、即ち多層構造の位相シフト膜を形成する手法があるが、その場合には、位相シフト膜内における層間密着力が低下し、位相シフトマスクの洗浄時に膜剥離が発生することがある。そして、その結果として転写性能が悪化することもある。
さらには、位相シフト膜が異なる組成の膜で形成された多層構造の場合、マスクパターン修正時の修正エッチングレートがそれぞれの膜で異なるため、修正部断面の形状に段差が生じ、その結果として転写性能が悪化することもある。
特開2018-173621号公報 特許第4579728号 特許第4687929号
本発明は、以上のような事情の元になされ、位相シフト膜表面におけるヘイズの発生を十分に抑制することができる位相シフトマスクブランク、ヘイズ欠陥が少なくパターンの洗浄耐性や転写性能の良い位相シフトマスク及びその位相シフトマスクの製造方法を提供することを目的とする。つまり、本発明は、位相シフト膜表面におけるヘイズの発生を抑制し、且つ洗浄時における膜剥離や修正エッチング時に生じる修正部断面における段差を低減することで転写性能を向上させた位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するために成されたものであって、本発明の一態様に係る位相シフトマスクブランクは、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、前記位相差透過率調整層と前記気体透過保護層との間に位置し、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量と、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量との比が膜の膜厚方向に連続的に変わる領域である組成傾斜層と、を備え、前記組成傾斜層は、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって減少し、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって増加することを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る位相シフトマスクは、波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスクであって、透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、前記位相差透過率調整層と前記気体透過保護層との間に位置し、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量と、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量との比が膜の膜厚方向に連続的に変わる領域である組成傾斜層と、を備え、前記組成傾斜層は、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって減少し、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって増加することを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る位相シフトマスクの製造方法は、上述した位相シフトマスクブランクを用いる位相シフトマスクの製造方法であって、前記位相シフト膜上に遮光膜を形成する工程と、前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、前記遮光膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチング(F系)にて前記位相シフト膜にパターンを形成する工程と、前記位相シフト膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、前記レジストパターンを除去した後、前記位相シフト膜上から、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて前記遮光膜を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る位相シフトマスクブランクを用いることで、位相シフトマスク上におけるヘイズの発生を十分に抑制し、且つパターンの洗浄耐性や転写性能を高めることができる。つまり、本発明の一態様に係る位相シフトマスクブランク、及び位相シフトマスクであれば、位相シフト膜表面におけるヘイズの発生を抑制し、且つ優れた洗浄耐性と優れた転写性能を位相シフトマスクに付与することができる。
本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの構成を示す断面概略図である。 本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクにおける組成傾斜層の組成傾斜の様態を示す図である。 本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成を示す断面概略図である。 本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造工程を示す断面概略図である。 本発明の実施形態に係る位相シフトマスクを修正した後の位相シフト膜パターンの断面の片側を模式的に表した図である。
本願発明者らは、位相シフトマスクブランクまたは位相シフトマスクを構成する位相調整膜(後述する位相差透過率調整層)の構成材料と、水や酸素等の酸化性気体と、露光エネルギーとの3要素が全て揃わなければマスクブランクまたはマスクにおけるヘイズの発生は低減可能と考え、位相シフトマスクブランクまたは位相シフトマスクを下記構成とした。つまり、本実施形態に係る位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及びその製造方法は、位相調整膜上に気体保護層(所謂、気体バリア層)を設けることで、位相調整膜の構成材料に酸化性気体が接触しないようにし、その結果としてヘイズの発生を低減するという技術的思想に基づくものである。
さらに、本願発明者らは、位相調整膜上に気体保護層を設ける場合、位相調整膜と気体保護層の各組成を徐々に混和させ、それぞれの層の明確な界面を無くすことで、それぞれの膜の内部応力差に起因する界面剥離を防ぎ、且つ、修正エッチングレートの違いによるパターン断面の段差の発生を低減することで、転写性能の悪化を防ぐ技術を確立した。
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。なお、断面概略図は、実際の寸法比やパターン数を正確には反映しておらず、透明基板の掘り込み量や膜のダメージ量は省略してある。
本発明の位相シフトマスクブランクの好適な実施形態としては、以下に示す形態が挙げられる。
(位相シフトマスクブランクの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの構成を示す断面概略図である。図1に示す位相シフトマスクブランク10は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、露光波長に対して透明な基板(以下、単に「基板」ともいう)11と、基板11の上に成膜された位相シフト膜12とを備えている。また、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層(以下、単に「位相層」ともいう)13と、位相差透過率調整層13の上に形成され、位相差透過率調整層13への気体透過を阻止する気体透過保護層(以下、単に「保護層」ともいう)15と、位相層13と保護層15の間に位置し、位相層13の組成(位相層13を構成する成分の含有量)と、保護層15の組成(保護層15を構成する成分の含有量)との比率が膜の深さ方向(膜厚方向)に連続的に変わる区間(領域)である組成傾斜層(以下、単に「傾斜層」ともいう)14と、を少なくとも備えている。位相シフト膜12内において、位相層13は、基板11側に位置している。また、位相層13の膜厚をd1とし、傾斜層14の膜厚をd2とし、保護層15の膜厚をd3とした場合に、d1及びd2の合計膜厚はd3よりも厚く、d3は15nm以下であることが好ましい。
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10の構成する各層について詳しく説明する。
(基板)
基板11に対する特別な制限はなく、基板11としては、例えば、石英ガラスやCaFあるいはアルミノシリケートガラスなどが一般的に用いられる。
(位相シフト膜)
位相シフト膜12は、位相層13と傾斜層14と保護層15とをこの順に備えており、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成されている。
位相シフト膜12は、例えば、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対して耐性を有し、且つフッ素系エッチング(F系)でエッチング可能な膜である。
位相シフト膜12の透過率の値は、基板11の透過率に対して、例えば、3%以上80%以下の範囲内であり、所望のウエハパターンに応じて最適な透過率を適宜選択することが可能である。また、位相シフト膜12の位相差の値は、例えば、160度以上220度以下の範囲内であり、175度以上190度以下の範囲内であればより好ましい。つまり、位相シフト膜12は、露光光に対する透過率が3%以上80%以下の範囲内であり、位相差が160度以上220度以下の範囲内であってもよい。位相シフト膜12の露光光に対する透過率が3%未満の場合には、良好な露光性能が得られないことがある。また、位相差が160度以上220度以下の範囲内であれば、必要な露光性能を容易に維持することができる。
<位相層>
位相層13は、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成されており、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする層である。ここで、「位相を調整」とは、例えば、位相を反転させることを意味する。また、「透過率」とは、露光光に対する透過率を意味する。
位相層13は、例えば、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有した単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、組成と膜厚とを適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差とを調整させたものである。ここで、「傾斜膜」とは、位相層13を構成する成分の組成比が、位相層13全体で均一となっている膜ではなく、一定の割合で変化している膜をいう。
位相層13は、位相層13全体の元素比率において、ケイ素を20原子%以上60原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、遷移金属を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を30原子%以上80原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上30原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上10原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。位相層13における各元素のより好ましい含有量の範囲は、位相層13全体の元素比率において、ケイ素は30原子%以上50原子%以下の範囲内であり、遷移金属は0原子%以上10原子%以下の範囲内であり、窒素は40原子%以上70原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上20原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上5原子%以下の範囲内である。位相層13における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、位相層13の透過率とともに、位相差も容易に制御することができる。
なお、位相層13は、金属シリサイドの酸化物、炭化物及び窒化物の少なくとも1種を含有したものであってもよい。その場合、金属シリサイドを構成する金属は、後述する遷移金属であってもよい。
位相層13が含有する遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、モリブデンであればより好ましい。位相層13が含有する遷移金属が、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種であれば、位相層13の加工が容易になり、モリブデンであればさらに位相層13のエッチング等の加工性が高くなる。
位相層13の膜厚をd1とし、傾斜層14の膜厚をd2とし、保護層15の膜厚をd3とした場合に、位相層13の膜厚d1及び傾斜層14の膜厚d2の合計膜厚は保護層15の膜厚d3よりも厚く、保護層15の膜厚d3は15nm以下であってもよい。保護層15の膜厚d3を15nmよりも厚くした場合には、光学特性や修正特性において影響を受ける可能性がある。
本実施形態において「位相層13」は、位相層13を構成する成分(化合物)のみで構成されており、保護層15を構成する成分(化合物)を含まない層である。また、「保護層15」は、保護層15を構成する成分(化合物)のみで構成されており、位相層13を構成する成分(化合物)を含まない層である。また、「傾斜層14」は、位相層13を構成する成分(化合物)と保護層15を構成する成分(化合物)の両方を含む層である。つまり、「位相層13の膜厚d1」とは、位相層13を構成する成分のみで構成された領域の厚さ(膜厚)を意味する。また、「保護層15の膜厚d3」とは、保護層15を構成する成分のみで構成された領域の厚さ(膜厚)を意味する。また、「傾斜層14の膜厚d2」とは、位相層13を構成する成分と、保護層15を構成する成分との両方を含んで構成された領域の厚さ(膜厚)を意味する。
また、位相層13の膜厚d1及び傾斜層14の膜厚d2の合計は15nmよりも厚くてもよい。位相層13の膜厚d1及び傾斜層14の膜厚d2の合計が15nmよりも厚い場合には、位相及び透過率の各調整が容易になる。
また、位相層13の膜厚d1と傾斜層14の膜厚d2と保護層15の膜厚d3との合計膜厚は、50nm以上であれば好ましく、70nm以上であればより好ましい。位相層13の膜厚d1と、傾斜層14の膜厚d2と、保護層15の膜厚d3との合計膜厚が上記数値範囲内であれば、位相シフト膜12の機能を所望の値に設定しやすくなる。なお、位相層13の膜厚d1は、傾斜層14で露光波長に対する透過率と位相差とを十分調整できる場合は、0nmであってもよい。
<保護層>
保護層15は、傾斜層14上に他の膜を介さずに形成されており、傾斜層14及び位相層13への気体透過(特に、水や酸素等の酸化性気体の透過)を阻止・抑制するための層、即ち気体バリア層である。本実施形態であれば、ヘイズ発生の要素の1つと考える気体の傾斜層14及び位相層13への侵入を阻止・抑制することができるため、長期間マスクを使用した場合(例えば、マスク上のドーズ量が100kJ/cmを超えた場合)であっても、位相シフトマスク表面におけるヘイズの発生を阻止・抑制することができる。
なお、保護層15で透過が阻止・抑制される気体(雰囲気ガス)は、酸化性気体であり、具体的には酸素含有分子であり、さらに具体的には水分子である。
保護層15は、酸素含有塩素系(Cl/O系)のガスエッチングに耐性があり、フッ素系ガス(F系)でエッチング可能であり、EB(電子ビーム)修正法で修正できる層であれば好ましい。
保護層15は、タンタル金属、タンタル化合物、タングステン金属、タングステン化合物、テルル金属、テルル化合物、ケイ素金属、及びケイ素化合物から選ばれる1種以上の化合物からなる単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜であることが好ましいが、バリア機能を備える層であれば特に組成は限定されるものではない。なお、上述のタンタル金属、タングステン金属、テルル金属、及びケイ素金属は、各金属の単体を意味する。
タンタル化合物からなる保護層15は、タンタルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
タンタル化合物からなる保護層15は、保護層15全体の元素比率において、タンタルを10原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。タンタル化合物からなる保護層15における各元素のより好ましい含有量の範囲は、保護層15全体の元素比率において、タンタルは20原子%以上80原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上60原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上10原子%以下の範囲内である。タンタル化合物からなる保護層15における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、保護層15の、傾斜層14及び位相層13への気体透過のバリア性が高まる。
また、タングステン化合物からなる保護層15は、タングステンと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
タングステン化合物からなる保護層15は、保護層15全体の元素比率において、タングステンを10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を30原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。タングステン化合物からなる保護層15における各元素のより好ましい含有量の範囲は、保護層15全体の元素比率において、タングステンは20原子%以上60原子%以下の範囲内であり、酸素は50原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上10原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上10原子%以下の範囲内である。タングステン化合物からなる保護層15における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、保護層15の、傾斜層14及び位相層13への気体透過のバリア性が高まる。
また、テルル化合物からなる保護層15は、テルルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1類種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
テルル化合物からなる保護層15は、保護層15全体の元素比率において、テルルを20原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を30原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。テルル化合物からなる保護層15における各元素のより好ましい含有量の範囲は、保護層15全体の元素比率において、テルルは30原子%以上60原子%以下の範囲内であり、酸素は50原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上10原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上10原子%以下の範囲内である。テルル化合物からなる保護層15における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、保護層15の、傾斜層14及び位相層13への気体透過のバリア性が高まる。
また、ケイ素化合物からなる保護層15は、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1類種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
ケイ素化合物からなる保護層15は、保護層15全体の元素比率において、ケイ素を20原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上60原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。ケイ素化合物からなる保護層15における各元素のより好ましい含有量の範囲は、保護層15全体の元素比率において、ケイ素は30原子%以上60原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上40原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上10原子%以下の範囲内である。ケイ素化合物からなる保護層15における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、保護層15の、傾斜層14及び位相層13への気体透過のバリア性が高まる。
以上のように、保護層15が、タンタル金属、タンタル化合物、タングステン金属、タングステン化合物、テルル金属、テルル化合物、ケイ素金属、及びケイ素化合物から選ばれる1種以上の化合物からなる単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜であれば、傾斜層14及び位相層13への気体透過を効果的に阻止することができる。
なお、保護層15の膜厚d3は、上述のように15nm以下であるが、保護層15が複数層である場合であっても、その合計膜厚が15nm以下であればよく、各層の膜厚は特に限定されるものではない。保護層15の膜厚d3が上記数値範囲内であれば、光学特性や修正特性を維持しつつ、傾斜層14及び位相層13への気体透過のバリア性も維持することができる。
<傾斜層>
傾斜層14は、位相層13上に他の膜を介さずに形成されており、傾斜層14上に他の膜を介さずに保護層15が形成されている。傾斜層14は、位相層13と保護層15の膜応力差や修正エッチングレート差の緩和を担う層である。本実施形態であれば、位相層13と保護層15との膜応力差による密着力低下を防ぐため、洗浄による膜剥がれ、即ち位相層13と保護層15との間で生ずる層間剥離に対する耐性が向上する。また、エッチングレート差に起因するパターン断面段差が減少するため、パターン側面の断面形状が直線状となり位相シフトマスクの転写性能が向上する。
傾斜層14は、酸素含有塩素系(Cl/O系)のガスエッチングに耐性があり、フッ素系ガス(F系)でエッチング可能であり、EB(電子ビーム)修正法で修正できる層であれば好ましい。
傾斜層14の組成は、位相層13の組成と保護層15の組成の比が膜の深さ方向に連続的に変わり、傾斜層14における位相層13の組成の比は基板11側から保護層15に向かって減少し、傾斜層14における保護層15の組成の比は基板11側から保護層15に向かって増加する。
なお、ここでいう「位相層13の組成」とは、位相層13を構成している化合物としての組成のことを指し、位相層13に含まれる酸素や窒素などの個別の元素比率を指すものではない。同様に「保護層15の組成」とは、保護層15を構成している化合物としての組成を指し、保護層15に含まれる酸素や窒素などの個別の元素比率を指すものではない。つまり、傾斜層14の組成は、位相層13を構成する成分(化合物)の含有量と、保護層15を構成する成分(化合物)の含有量との比率が膜の深さ方向に連続的に変化している。具体的には、傾斜層14における位相層13を構成する成分の含有量比は基板11側から保護層15側に向かって減少し、傾斜層14における保護層15を構成する成分の含有量比は基板11側から保護層15に向かって増加する。
以下、傾斜層14の組成傾斜の様態について図面を用いて説明する。
図2は、本実施形態の傾斜層14の組成傾斜、即ち成分比率について模式的に示した断面概略図である。図2の横軸は位相シフト膜12の基板11側から最表面までの距離を示しており、図2の縦軸は位相層13及び保護層15の各層を構成する成分(化合物)の組成比率(成分比率)を示している。
図2における第1の様態(a)では、基板11側からd1の距離(以降、単に「膜厚」ともいう)で位相層13が形成され、位相層13の上に傾斜層14が膜厚d2の厚みで形成され、さらに傾斜層14の上に保護層15が膜厚d3の厚みで形成される。このとき、傾斜層14における位相層13を構成する成分の比率(含有量比)は保護層15側に向かって線形的に減少し、傾斜層14における保護層15を構成する成分の比率(含有量比)は保護層15側に向かって線形的に増加する。
また、図2における第2の様態(b)では、第1の様態と同様に、基板11側からd1の膜厚で位相層13が形成され、位相層13の上に傾斜層14が膜厚d2の厚みで形成され、さらに傾斜層14の上に保護層15が膜厚d3の厚みで形成される。ここで、第2の様態では、第1の様態とは異なり、傾斜層14における位相層13を構成する成分の比率は保護層15側に向かって曲線的に減少し、傾斜層14における保護層15を構成する成分の比率は保護層15側に向かって曲線的に増加する。なお、第1の様態においても第2の様態においても、位相層13を構成する成分の比率と、保護層15を構成する成分の比率とが逆転する膜厚(位置)は任意であり、位相層13を構成する成分の比率が高い領域の膜厚と、保護層15を構成する成分の比率が高い領域の膜厚とはどちらが厚くてもよい。
また、図2における第3の様態(c)では、傾斜層14のみで露光波長に対する透過率と位相差とを十分調整できる場合を示しており、位相層13の膜厚は実測値としては0nmである。なお、第3の様態における位相層13の膜厚は極めて薄いものの、位相層13自体は存在している。
さらに、図2における第4の様態(d)では、保護層15が複数層である場合を示しており、位相層13の上に、位相層13を構成する成分と保護層15Aを構成する成分からなる傾斜層14が形成され、傾斜層14の上に、保護層15Aを構成する成分とは異なる成分で構成された保護層15Bが形成されている。このように、保護層15は、1種類の成分(化合物)で構成された単層構造であってもよいし、2種類以上の成分(化合物)で構成された積層構造であってもよい。
(位相シフトマスクの全体構成)
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100の構成について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成を示す断面概略図である。図3に示す位相シフトマスク100は、波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスク(即ち、パターニングされた位相シフトマスク)であって、露光波長に対して透明な基板11と、基板11の上に成膜された位相シフト膜12とを備えている。また、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相層13と、位相層13の上に形成され、位相層13への気体透過を阻止する保護層15と、位相層13と保護層15の間に位置し、位相層13の組成(位相層13を構成する成分の含有量)と、保護層15の組成(保護層15を構成する成分の含有量)との比率が膜の深さ方向(膜厚方向)に連続的に変わる区間(領域)である傾斜層14と、を少なくとも備えている。位相シフト膜12内において、位相層13は、基板11側に位置している。また、位相層13の膜厚をd1とし、傾斜層14の膜厚をd2とし、保護層15の膜厚をd3とした場合に、d1及びd2の合計膜厚はd3よりも厚く、d3は15nm以下であることが好ましい。
位相シフトマスク100は、位相シフト膜12の一部を除去して基板11の表面を露出することで形成した位相シフト膜パターン18を備えている。
なお、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100を構成する各層の組成等は、上述した本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10の構成する各層の組成等と同じであるため、各層の組成等に関する詳細な説明については省略する。
(位相シフトマスクブランクの製造方法)
本実施形態に係る位相シフトマスクブランク10を用いる位相シフトマスク100の製造方法は、位相シフト膜12上に遮光膜16を形成する工程と、位相シフト膜12上に形成された遮光膜16上にレジストパターン17を形成する工程と、レジストパターン17を形成した後に、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて遮光膜16にパターンを形成する工程と、遮光膜16にパターンを形成した後に、フッ素系エッチング(F系)にて位相シフト膜12にパターンを形成する工程と、位相シフト膜12にパターンを形成した後に、レジストパターン17を除去する工程と、レジストパターン17を除去した後、位相シフト膜12上から、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて遮光膜16を除去する工程と、を含んでいる。
ここで、本発明の実施形態に係る遮光膜16について説明する。
<遮光膜>
遮光膜16は、上述した本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10(保護層15)の上に形成される層である。
遮光膜16は、例えば、クロム単体、又はクロム化合物からなる単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。より詳しくは、クロム化合物からなる遮光膜16は、クロムと、窒素及び酸素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
クロム化合物からなる遮光膜16は、遮光膜16全体の元素比率において、クロムを30原子%以上100原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上50原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上50原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上10原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。クロム化合物からなる遮光膜16における各元素のより好ましい含有量の範囲は、遮光膜16全体の元素比率において、クロムは50原子%以上100原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上40原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上40原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上5原子%以下の範囲内である。クロム化合物からなる遮光膜16における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、遮光膜16の遮光性が高まる。
遮光膜16の膜厚は、例えば、35nm以上80nm以下の範囲内、特に40nm以上75nm以下の範囲内が好ましい。
遮光膜16は、公知の方法により成膜することができる。最も容易に均質性に優れた膜を得る方法としては、スパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本実施形態ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
ターゲットとスパッタガスは膜組成によって選択される。例えば、クロムを含有する膜の成膜方法としては、クロムを含有するターゲットを用い、アルゴンガス等の不活性ガスのみ、酸素等の反応性ガスのみ、又は不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス中で反応性スパッタリングを行う方法を挙げることができる。スパッタガスの流量は膜特性に合わせて調整すればよく、成膜中一定としてもよいし、酸素量や窒素量を膜の厚み方向に変化させたいときは、目的とする組成に応じて変化させてもよい。また、ターゲットに対する印加電圧、ターゲットと基板との距離、成膜チャンバー内の圧力を調整してもよい。
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100の製造方法が有する各工程について詳しく説明する。
図4は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスク100の製造工程を示す断面概略図である。図4(a)は、位相シフト膜12上に遮光膜16を形成する工程を示す。図4(b)は、遮光膜16上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン17を形成する工程を示す。図4(c)は、レジストパターン17に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により遮光膜16をパターニングする工程を示す。図4(d)は、遮光膜16のパターンに沿ってフッ素系エッチング(F系)により位相シフト膜12をパターニングし、位相シフト膜パターン18を形成する工程を示す。図4(e)は、レジストパターン17を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図4(f)は、位相シフト膜パターン18が形成された位相シフト膜12上から、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて遮光膜16を除去する工程を示す。こうして、本実施形態に係る位相シフトマスク100を製造する。
本実施形態に係る位相シフトマスク100は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクであって、基板11と、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成された位相シフト膜12と、を備えている。また、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相層13と、位相層13の上に形成され、位相層13への気体透過を阻止する保護層15と、位相層13と保護層15の間に位置し、位相層13(位相層13を構成する成分の含有量)と、保護層15の組成(保護層15を構成する成分の含有量)との比率が膜の深さ方向(膜厚方向)に連続的に変わる区間(領域)である傾斜層14と、を備えている。位相シフト膜12内において、位相層13は、基板11側に位置している。また、位相シフトマスク100は、基板11の一部が露出するように位相シフト膜12の一部を除去して形成した位相シフト膜パターン18を備えている。そして、位相層13の膜厚をd1とし、傾斜層14の膜厚をd2とし、保護層15の膜厚をd3とした場合に、d1及びd2の合計膜厚はd3よりも厚く、d3は15nm以下となっていることが好ましい。
図4(b)の工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上250nm以下の範囲内である。特に、微細なパターン形成が求められる位相シフトマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターン17のアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、200nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は、用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は35μC/cmから100μC/cmの範囲内であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターン17を得る。
また、図4(e)の工程において、レジストパターン17の剥離除去は、剥離液によるウェット剥離であってもよく、また、ドライエッチングによるドライ剥離であってもよい。
また、図4(c)の工程において、クロム単体、又はクロム化合物からなる遮光膜16をパターニングする酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。遮光膜16の下層に位置する位相シフト膜12は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図4(d)の工程において、位相シフト膜12をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、ケイ素系化合物膜、タンタル化合物膜、あるいはモリブデン化合物膜等をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものであってもよく、フッ素系ガスとしては、CFやCやSFが一般的であり、必要に応じて酸素などの活性ガスや窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。図4(d)の場合は、位相シフト膜12の上層に位置する遮光膜16又はレジストパターン17は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。図4(d)では、同時に基板11を1nmから3nm程度掘り込み、位相シフト膜12の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。
また、図4(f)の工程において、遮光膜16を除去する酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。遮光膜16の下層に位置する位相シフト膜12及び基板11は、いずれも酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
[実施例]
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
石英基板の上に3つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を63nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの印加電圧を徐々に弱めながら窒素の導入量を徐々に弱めていき、タンタルターゲットへの印加電圧を徐々に強めながら位相層の上に傾斜層を8nmの厚さで成膜した。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの電圧印加を止め、アルゴンと酸素を導入しながらタンタルターゲットへの電圧印加を続け、傾斜層の上に保護層を2nmの厚さで成膜した。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から63nmの位置まではSi:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であり、次いで位相層側から保護層側に向かい、ケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の比率は8nmの厚さでそれぞれ連続的に減少し、且つタンタル原子及び酸素原子の比率は8nmの厚さでそれぞれ連続的に増加し、次いで2nmの厚さでTa:O=30:70(原子%比)であった。つまり、実施例1の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。また、傾斜層におけるケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に減少していた。また、傾斜層におけるタンタル原子及び酸素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に増加していた。さらに、保護層における組成比は、Ta:O=30:70(原子%比)であった。
なお、こうして形成した位相層と傾斜層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と傾斜層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例1に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行った。
図5はEB修正後の位相シフト膜パターンの断面の片側を模式的に表した図である。EB修正後の位相シフト膜パターンのエッジは、位相層や傾斜層、あるいは保護層の修正エッチングレートに違いがあるため、位相シフト膜パターンの側面に段差が生じることがある。本実施例では、図5に示すように、位相シフト膜パターンの基板側の頂点を下側頂点とし、位相シフト膜パターンの最表面側の頂点を上側頂点とした場合、下側頂点より上側頂点が位相シフト膜パターン内側に後退した長さを「エッジ後退量」とし、上側頂点から内側に後退した長さを「段差量」とする。
図5(a)は、実施例1に係る位相シフトマスクの修正断面模式図である。実施例1に係る位相シフト膜パターンは下側頂点に対し、上側頂点は位相シフト膜パターンの内側に後退しており、エッジ後退量は14nmであった。また、実施例1に係る位相シフト膜パターンの段差量は0nmであった。
上記「エッジ後退量」及び「段差量」は、一般にその値が小さい程、転写性能が高いことを意味する。本実施例では、エッジ後退量を「x」とし、段差量を「y」とした場合にその総和(x+y)が20nm未満であれば、転写性能に関して何ら問題なく、極めて転写性能に優れた位相シフトマスクといえる。一方、その総和(x+y)が20nm以上である場合には、転写性能の観点からは問題がある。
上記測定結果から、実施例1の位相シフトマスクであれば、エッジ後退量xは14nmであり、且つ段差量yは0nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は14nmであり、優れた転写性能を有することが確認された。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、110kJ/cmであった。
上記「加速露光によりヘイズが発生したドーズ量」は、その値が大きい程、ヘイズが発生しにくいことを意味する。ドーズ量が70kJ/cm以上であれば、位相シフトマスクを使用する上で何ら問題なく、ドーズ量が100kJ/cm以上であれば、極めてヘイズが発生しにくい位相シフトマスクといえる。
上記測定結果から、実施例1の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が110kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
(実施例2)
石英基板の上に3つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を66nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの印加電圧を徐々に弱めながら窒素の導入量を徐々に弱めていき、タングステンターゲットへの印加電圧を徐々に強めながら位相層の上に傾斜層を8nmの厚さで成膜した。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの電圧印加を止め、アルゴンと酸素を導入しながらタングステンターゲットへの電圧印加を続け、傾斜層の上に保護層を2nmの厚さで成膜した。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から66nmの位置まではSi:Mo:O:N=35:5:15:45(原子%比)であり、次いで位相層側から保護層側に向かい、ケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の比率は8nmの厚さでそれぞれ連続的に減少し、且つタングステン原子及び酸素原子の比率は8nmの厚さでそれぞれ連続的に増加し、次いで2nmの厚さでW:O=25:75(原子%比)であった。つまり、実施例2の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=35:5:15:45(原子%比)であった。また、傾斜層におけるケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に減少していた。また、傾斜層におけるタングステン原子及び酸素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に増加していた。さらに、保護層における組成比は、W:O=25:75(原子%比)であった。
なお、こうして形成した位相層と傾斜層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と傾斜層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例2に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行い、位相シフト膜パターンの断面形状を観測したところ、図5(a)に示すようなエッジであり、エッジ後退量は15nmであった。また、実施例2に係る位相シフト膜パターンの段差量は0nmであった。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、80kJ/cmであった。
上記測定結果から、実施例2の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が80kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
また、上記測定結果から、実施例2の位相シフトマスクであれば、エッジ後退量xは15nmであり、且つ段差量yは0nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は15nmであり、優れた転写性能を有することが確認された。
(実施例3)
石英基板の上に3つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を66nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの印加電圧を徐々に弱めながら窒素の導入量を徐々に弱めていき、テルルターゲットへの印加電圧を徐々に強めながら位相層の上に傾斜層を8nmの厚さで成膜した。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの電圧印加を止め、アルゴンと酸素を導入しながらテルルターゲットへの電圧印加を続け、傾斜層の上に保護層を2nmの厚さで成膜した。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から66nmの位置まではSi:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であり、次いで位相層側から保護層側に向かい、ケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の比率は8nmの厚さでそれぞれ連続的に減少し、且つテルル原子及び酸素原子の比率は8nmの厚さでそれぞれ連続的に増加し、次いで2nmの厚さでTe:O=35:65(原子%比)であった。つまり、実施例3の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。また、傾斜層におけるケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に減少していた。また、傾斜層におけるテルル原子及び酸素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に増加していた。さらに、保護層における組成比は、Te:O=35:65(原子%比)であった。
なお、こうして形成した位相層と傾斜層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と傾斜層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例3に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行い、位相シフト膜パターンの断面形状を観測したところ、図5(a)に示すようなエッジであり、エッジ後退量は14nmであった。また、実施例3に係る位相シフト膜パターンの段差量は0nmであった。
また、上記測定結果から、実施例3の位相シフトマスクであれば、エッジ後退量xは14nmであり、且つ段差量yは0nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は14nmであり、優れた転写性能を有することが確認された。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、75kJ/cmであった。
上記測定結果から、実施例3の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が75kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
(実施例4)
石英基板の上に2つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を63nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、モリブデンターゲットへの印加電圧を徐々に弱めていき、位相層の上に傾斜層を5nmの厚さで成膜した。
続いて、モリブデンターゲットへの電圧印加を止め、傾斜層の上に保護層を8nmの厚さで成膜した。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から63nmの位置まではSi:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であり、次いで位相層側から保護層側に向かい、モリブデン原子及び窒素原子の比率は5nmの厚さでそれぞれ連続的に減少し、且つケイ素原子及び酸素原子の比率は5nmの厚さでそれぞれ連続的に増加し、次いで8nmの厚さでSi:O:N=40:40:20(原子%比)であった。つまり、実施例4の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。また、傾斜層におけるモリブデン原子及び窒素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に減少していた。また、傾斜層におけるケイ素原子及び酸素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に増加していた。さらに、保護層における組成比は、Si:O:N=40:40:20(原子%比)であった。
なお、こうして形成した位相層と傾斜層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が7%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と傾斜層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例4に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行い、位相シフト膜パターンの断面形状を観測したところ、図5(b)に示すようなエッジであり、エッジ後退量は5nmであった。また、実施例4に係る位相シフト膜パターンの段差量は5nmであった。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、130kJ/cmであった。
上記測定結果から、実施例4の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が130kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
また、上記測定結果から、実施例4の位相シフトマスクであれば、エッジ後退量xは5nmであり、且つ段差量yは5nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は10nmであり、優れた転写性能を有することが確認された。
(実施例5)
石英基板の上に3つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を61nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの印加電圧を徐々に弱めながら窒素の導入量を徐々に弱めていき、タンタルターゲットへの印加電圧を徐々に強めながら酸素の導入量を徐々に強めていき、位相層の上に傾斜層を5nmの厚さで成膜した。
続いて、モリブデンターゲットへの電圧印加を止め、アルゴンと酸素と窒素を導入しながらケイ素ターゲットとタンタルターゲットへの電圧印加を続け、傾斜層の上に保護層を8nmの厚さで成膜した。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から61nmの位置まではSi:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であり、次いで位相層側から保護層側に向かい、ケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の比率は5nmの厚さでそれぞれ連続的に減少し、且つタンタル原子及び酸素原子の比率は5nmの厚さでそれぞれ連続的に増加し、次いで8nmの厚さでSi:Ta:O:N=20:20:40:20(原子%比)であった。つまり、実施例5の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。また、傾斜層におけるケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に減少していた。また、傾斜層におけるタンタル原子及び酸素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に増加していた。さらに、保護層における組成比は、Si:Ta:O:N=20:20:40:20(原子%比)であった。
なお、こうして形成した位相層と傾斜層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と傾斜層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例5に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行い、位相シフト膜パターンの断面形状を観測したところ、図5(b)に示すようなエッジであり、エッジ後退量は12nmであった。また、実施例5に係る位相シフト膜パターンの段差量は5nmであった。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、150kJ/cmであった。
上記測定結果から、実施例5の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が150kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
また、上記測定結果から、実施例5の位相シフトマスクであれば、エッジ後退量xは12nmであり、且つ段差量yは5nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は17nmであり、優れた転写性能を有することが確認された。
(実施例6)
石英基板の上に3つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を63nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、ケイ素ターゲットへの電圧印加を維持したままモリブデンターゲットへの印加電圧を徐々に弱めながら窒素の導入量を徐々に弱めていき、また、タンタルターゲットへの印加電圧を徐々に強めながら酸素の導入量を徐々に強めていき、位相層の上に傾斜層を5nmの厚さで成膜した。
続いて、タンタルターゲットへの電圧印加を止め、アルゴンと酸素と窒素を導入しながらケイ素ターゲットへの電圧印加を続け、傾斜層の上に保護層を8nmの厚さで成膜した。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から63nmの位置まではSi:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であり、次いで位相層側から保護層側に向かい、ケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の比率は5nmの厚さでそれぞれ連続的に減少し、且つタンタル原子及び酸素原子の比率は5nmの厚さでそれぞれ連続的に増加し、次いで8nmの厚さでSi:O:N=40:40:20(原子%比)であった。つまり、実施例6の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。また、傾斜層におけるケイ素原子、モリブデン原子及び窒素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に減少していた。また、傾斜層におけるタンタル原子及び酸素原子の各比率は、位相層側から保護層側に向かって連続的に線形的に増加していた。さらに、保護層における組成比は、Si:O:N=40:40:20(原子%比)であった。なお、傾斜層の最表面の組成比、即ち傾斜層と保護層との界面領域における組成比は、Ta:Si:O:N=20:20:40:20(原子%比)であった。ここで、表では、上記組成を有する、傾斜層と保護層との界面領域を「保護層1」と表記し、その膜厚は極めて薄かったため、その値を0nmと表記した。
なお、こうして形成した位相層と傾斜層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と傾斜層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例6に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行い、位相シフト膜パターンの断面形状を観測したところ、図5(b)に示すようなエッジであり、エッジ後退量は7nmであった。また、実施例6に係る位相シフト膜パターンの段差量は7nmであった。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、140kJ/cmであった。
上記測定結果から、実施例6の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が140kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
また、上記測定結果から、実施例6の位相シフトマスクであれば、エッジ後退量xは7nmであり、且つ段差量yは7nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は14nmであり、優れた転写性能を有することが確認された。
[比較例]
(比較例1)
石英基板の上に3つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を65nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、ケイ素ターゲットとモリブデンターゲットへの電圧印加を止め、アルゴンと酸素を導入しながらタンタルターゲットへの電圧印加を続け、位相層の上に保護層を8nmの厚さで成膜した。つまり、比較例1では傾斜層を形成しなかった。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から65nmの位置まではSi:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であり、次いで8nmの厚さでTa:O=30:70(原子%比)であった。つまり、比較例1の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。また、保護層における組成比は、Ta:O=30:70(原子%比)であった。
なお、こうして形成した位相層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例1に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行い、位相シフト膜パターンの断面形状を観測したところ、図5(a)に示すようなエッジであり、エッジ後退量は20nmであった。また、比較例1に係る位相シフト膜パターンの段差量は0nmであった。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、135kJ/cmであった。
上記測定結果から、比較例1の位相シフトマスクのドーズ量は135kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。しかしながら、比較例1の位相シフトマスクのエッジ後退量は上述のように20nmであって、各実施例におけるエッジ後退量よりも大きいため、転写性能は十分でないことが確認された。つまり、比較例1の位相シフトマスクは、段差量yは0nmであるが、エッジ後退量xが20nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は20nmとなり、転写性能は十分でないことが確認された。
(比較例2)
石英基板の上に2つのターゲットを用いた多元DCスパッタ装置を用いて、まずケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を66nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。
続いて、モリブデンターゲットへの電圧印加を止め、アルゴンと酸素と窒素を導入しながらケイ素ターゲットへの電圧印加を続け、位相層の上に保護層を8nmの厚さで成膜した。つまり、比較例2では傾斜層を形成しなかった。
このように得られた位相シフト膜をESCAで分析したところ、基板側から66nmの位置まではSi:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であり、次いで8nmの厚さでSi:O:N=40:40:20(原子%比)であった。つまり、比較例2の位相シフト膜をESCAで分析したところ、位相層における組成比は、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。また、保護層における組成比は、Si:O:N=40:40:20(原子%比)であった。
なお、こうして形成した位相層と保護層とから構成される位相シフト膜は、露光光の透過率が7%であり、位相差が180度であった。
次に、この保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、保護層と位相層とで構成された位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜の下層に位置する位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例2に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクパターンに対し、EB修正にて修正加工を行い、位相シフト膜パターンの断面形状を観測したところ、図5(b)に示すようなエッジであり、エッジ後退量は10nmであった。また、比較例2に係る位相シフト膜パターンの段差量は10nmであった。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、100kJ/cmであった。
上記測定結果から、比較例2の位相シフトマスクのドーズ量は100kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。しかしながら、比較例2の位相シフトマスクの段差量は上述のように10nmであって、各実施例における段差量よりも大きいため、転写性能は十分でないことが確認された。つまり、比較例2の位相シフトマスクは、エッジ後退量xが10nmであり、且つ段差量yが10nmであるため、エッジ後退量xと段差量yの総和(x+y)は20nmとなり、転写性能は十分でないことが確認された。
なお、実施例1~6及び比較例1~2の位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクの構成等を下記表1に示す。
Figure 2022144481000002
以上の結果から、各実施例の位相シフトマスクであれば、ヘイズの発生量を低減させるだけでなく、パターンのエッジ後退量及び段差量を抑制できることがわかる。そして、パターンのエッジ後退量及び段差量を抑制できたため、位相シフトマスクに優れた転写性能を付与することができる。
また、各実施例の位相シフトマスクであれば、位相層と保護層とが傾斜層を介して形成されているため、位相層と保護層との間に明確な界面が形成されないため、位相シフトマスクに優れた洗浄耐性を付与することができる。
以上、上記実施例により、本発明の位相シフトマスクブランク及びこれを用いて作成される位相シフトマスクについて説明したが、上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの実施例を変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において他の様々な実施例が可能であることは上記の記載から自明である。
本発明では、位相シフトマスクブランクの組成及び膜厚及び層構造と、これを用いた位相シフトマスクの製造工程及び条件を適切な範囲で選択したので、28nm以下のロジック系デバイス、又は30nm以下のメモリ系デバイス製造に対応した、微細なパターンを高精度で形成した位相シフトマスクを提供することができる。
10・・・位相シフトマスクブランク
11・・・露光波長に対して透明な基板(基板)
12・・・位相シフト膜
13・・・位相層(位相差透過率調整層)
14・・・傾斜層(組成傾斜層)
15・・・保護層(気体透過保護層)
16・・・遮光膜
17・・・レジストパターン
18・・・位相シフト膜パターン
100・・・位相シフトマスク
d1・・・位相層の膜厚
d2・・・傾斜層の膜厚
d3・・・保護層の膜厚

Claims (19)

  1. 波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、
    透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、
    前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、前記位相差透過率調整層と前記気体透過保護層との間に位置し、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量と、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量との比が膜の膜厚方向に連続的に変わる領域である組成傾斜層と、を備え、
    前記組成傾斜層は、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって減少し、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって増加することを特徴とする位相シフトマスクブランク。
  2. 前記位相差透過率調整層は、前記透明基板側に位置し、
    前記位相差透過率調整層の膜厚をd1とし、前記組成傾斜層をd2とし、前記気体透過保護層の膜厚をd3とした場合に、d1及びd2の合計膜厚はd3よりも厚く、d3は15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスクブランク。
  3. 前記位相シフト膜は、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対して耐性を有し、且つフッ素系エッチング(F系)でエッチング可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位相シフトマスクブランク。
  4. 前記位相差透過率調整層は、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有し、
    前記遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
  5. 前記気体透過保護層は、タンタル金属、タンタル化合物、タングステン金属、タングステン化合物、テルル金属、テルル化合物、ケイ素金属、及びケイ素化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
  6. 前記タンタル化合物は、タンタルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項5に記載の位相シフトマスクブランク。
  7. 前記タングステン化合物は、タングステンと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項5に記載の位相シフトマスクブランク。
  8. 前記テルル化合物は、テルルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項5に記載の位相シフトマスクブランク。
  9. 前記ケイ素化合物は、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項5に記載の位相シフトマスクブランク。
  10. 波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスクであって、
    透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、
    前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、前記位相差透過率調整層と前記気体透過保護層との間に位置し、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量と、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量との比が膜の膜厚方向に連続的に変わる領域である組成傾斜層と、を備え、
    前記組成傾斜層は、前記位相差透過率調整層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって減少し、前記気体透過保護層を構成する成分の含有量が、前記基板側から前記気体透過保護層側に向かって増加することを特徴とする位相シフトマスク。
  11. 前記位相差透過率調整層は、前記透明基板側に位置し、
    前記位相差透過率調整層の膜厚をd1とし、前記組成傾斜層をd2とし、前記気体透過保護層の膜厚をd3とした場合に、d1及びd2の合計膜厚はd3よりも厚く、d3は15nm以下であることを特徴とする請求項10に記載の位相シフトマスク。
  12. 前記位相シフト膜は、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対して耐性を有し、且つフッ素系エッチング(F系)でエッチング可能であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の位相シフトマスク。
  13. 前記位相差透過率調整層は、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有し、
    前記遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
  14. 前記気体透過保護層は、タンタル金属、タンタル化合物、タングステン金属、タングステン化合物、テルル金属、テルル化合物、ケイ素金属、及びケイ素化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
  15. 前記タンタル化合物は、タンタルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項14に記載の位相シフトマスク。
  16. 前記タングステン化合物は、タングステンと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項14に記載の位相シフトマスク。
  17. 前記テルル化合物は、テルルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項14に記載の位相シフトマスク。
  18. 前記ケイ素化合物は、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項14に記載の位相シフトマスク。
  19. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランクを用いる位相シフトマスクの製造方法であって、
    前記位相シフト膜上に遮光膜を形成する工程と、
    前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
    前記遮光膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチング(F系)にて前記位相シフト膜にパターンを形成する工程と、
    前記位相シフト膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、
    前記レジストパターンを除去した後、前記位相シフト膜上から、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて前記遮光膜を除去する工程と、を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
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