JP2022141865A - 糖尿病の予防及び/又は治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】免疫チェックポイント阻害薬投与によって副作用として発症する糖尿病に対して優れた効果を奏し、かつ多くの患者に対して一定の効果が得られる糖尿病の予防及び/又は治療薬を提供する。【解決手段】本発明は、間葉系幹細胞を含有する、糖尿病治療剤である。本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤は、特に免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体によって発症する糖尿病に対して好適に用いられる。【選択図】なし

Description

本発明は、糖尿病の予防及び/又は治療剤に関する。
免疫チェックポイント阻害薬が種々の悪性腫瘍に適用となり、その使用が拡大している。抗CTLA-4抗体のイピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))が悪性黒色腫に、抗PD-1抗体のニボルマブ(オプジーボ(登録商標))が悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頸部癌、胃癌に、抗PD-1抗体のペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))が悪性黒色腫、非小細胞肺癌、尿路上皮癌に、抗PD-L1抗体のアベルマブ(バベンチオ(登録商標))がメルケル細胞癌に、抗PD-L1抗体のアテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))が非小細胞肺癌に、それぞれ日本において保険適用となっている。
これらの薬剤は免疫反応活性化により抗腫瘍効果を示すが、その作用機序から自己免疫疾患を惹起する可能性が考えられており、実際に様々な免疫関連有害事象の発生が報告されている。その一つに内分泌障害があり、これまでに下垂体機能低下症、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能異常症、副甲状腺機能低下症、1型糖尿病が報告されている。「免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害の診療ガイドライン」によれば、1型糖尿病は膵β細胞機能廃絶が不可逆的であること、また急激に血糖が上昇し、適切な治療を行わなければ生命予後に影響することから、早期診断と早期の治療(インスリン治療)開始が必要であり、インスリン治療によって血糖コントロールが改善するまでは免疫チェックポイント阻害薬の休薬を検討する必要があるとされている(非特許文献1)。
免疫チェックポイント阻害薬による糖尿病発症のメカニズムは1型糖尿病自然発症モデルであるNODマウスを用いて明らかにされている(非特許文献2)。即ち、免疫チェックポイント阻害薬によりPD-1を阻害することで、T細胞やマクロファージが活性化され、自己のβ細胞を攻撃することにより1型糖尿病が発症すると考えられている。そのため、免疫チェックポイント阻害薬の悪性腫瘍への効果を保ちつつ、1型糖尿病の発症を抑えることは困難と考えられていた。このような状況下、チェックポイント阻害薬の効果を保ったまま、副作用を抑制することできる治療法が強く望まれている。
近年、人体の様々な部位の組織、細胞、受精卵等の細胞培養を行い、培養された細胞を再生医療等に使用することが実用化されている。その一つに間葉系幹細胞がある。間葉系幹細胞は、Friedensteinによって初めて骨髄から単離された多分化能を有する前駆細胞である(非特許文献3参照)。間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯、脂肪等の様々な組織に存在することが明らかにされており、間葉系幹細胞移植は、様々な難治性疾患に対する新しい治療方法として、期待されている(特許文献1~2参照)。最近では、脂肪組織、胎盤、臍帯、卵膜等の間質細胞に同等の機能を有する細胞が存在することが知られている。従って、間葉系幹細胞を間質細胞(Mesenchymal Stromal Cell)と称することもある。
特開2012-157263号公報 特表2012-508733号公報
日本内分泌学会雑誌、2018、Vol.94、Suppl. November、pp.1-11 Proc. Natl. Acad. Sci. USA、2020、Vol.49、No.117、pp.31319-31330 Pittenger F. M. et al.,Science,1999,284,pp.143-147
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、免疫チェックポイント阻害薬投与によって副作用として発症する糖尿病に対して優れた効果を奏し、かつ多くの患者に対して一定の効果が得られる糖尿病治療薬を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病に対して、間葉系幹細胞を投与することにより、糖尿病の発症を抑制し、また、発症する糖尿病症状を顕著に改善させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。すなわち上記課題を解決するためになされた発明は、以下の通りである。
[1]間葉系幹細胞を含有する、糖尿病の予防及び/又は治療剤。
[2]上記糖尿病が、免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病である、請求項1に記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
[3]上記糖尿病が、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体によって発症する糖尿病である、[1]又は[2]に記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
[4]上記間葉系幹細胞が、被験体に対して同種異系である、[1]から[3]のいずれかに記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
[5]上記間葉系幹細胞が、脂肪由来、臍帯由来又は骨髄由来である、[1]から[4]のいずれかに記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
[6][1]から[5]のいずれかに記載の糖尿病治療剤、容器及びラベルを含む、糖尿病の予防及び/又は治療用キット。
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療薬によると、間葉系幹細胞を投与することにより、免疫チェックポイント阻害薬による糖尿病の発症を抑制することができ、また免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病に対して、症状を顕著に改善させることができる。上記間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定した一定の効果を得られ易いという利点もある。
図1は、抗PD-L1抗体(CTRL)、抗PD-L1抗体及びADMSC(MSC)を投与したマウスの血糖値推移を示す図である。 図2は、抗PD-L1抗体(CTRL)、抗PD-L1抗体及びADMSC(MSC)を投与したマウスの糖尿病発症推移を示す図である。 図3は、抗PD-L1抗体(CTRL)、抗PD-L1抗体及びADMSC(MSC)を投与したマウスの体重推移を示す図である。 図4は、抗PD-L1抗体を投与したマウス(CTRL)の膵臓のヘマトキシリンエオジン染色(左)及びインスリン免疫染色(右)を示す図である。 図5は、抗PD-L1抗体及びADMSCを投与したマウス(MSC)の膵臓のヘマトキシリンエオジン染色(左)及びインスリン免疫染色(右)を示す図である。 図6は、抗PD-L1抗体(CTRL)、抗PD-L1抗体及びADMSC(MSC)を投与したマウスの膵切片中の膵島面積の比較を示す図である。 図7は、実施例1で糖尿病を発症しなかったCNTL群及びMSC群の膵切片中の膵島面積の比較を示す図である。
以下に、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤について詳細に説明する。
<糖尿病の予防及び/又は治療剤>
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤は、間葉系幹細胞を含有する。また、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤が対象とする糖尿病は免疫チェックポイント阻害薬の投与によって発症する糖尿病である。本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤は、免疫チェックポイント阻害薬による糖尿病の発症を抑制することができ、また免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病に対して、症状を顕著に改善させることができる。
免疫チェックポイント阻害薬とは、免疫細胞の働きを抑制する「免疫チェックポイント」を標的としたがん治療薬である。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイントを阻害する薬剤であればよいが、PD-1とそのリガンド(PD-L1、PD-L2)との結合を阻害する薬剤、PD-L1とその受容体であるPD-1との結合を阻害する薬剤、CTLA-4とそのリガンドである抗原提示細胞上のB7.1(CD80)及びB7.2(CD86)分子との結合を阻害する薬剤等が挙げられる。免疫チェックポイント阻害薬として、PD-1抗体、PD-L1抗体及び細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体が例示され、具体的にはニボルマブ(Nivolumab、オプジーボ(登録商標)、OPDIVO(登録商標)、小野薬品工業)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab、キイトルーダ(登録商標)、KEYTRUDA(登録商標)、MSD)、スパルタリズマブ(Spartalizumab、ノバルティスファーマ)、セミプリマブ(Cemiplimab、サノフィ)、アベルマブ(Avelumab、バベンチオ(登録商標)、BAVENCIO(登録商標)、メルクバイオファーマ)、アテゾリズマブ(Atezolizumab、テセントリク(商標登録)、TECENTRIQ(登録商標)、中外製薬)、デュルバルマブ(Durvalumab、イミフィンジ(登録商標)、IMFINZI(登録商標)、アストラゼネカ)、イビリマブ(Ipilimumab、ヤーボイ(登録商標)、YERVOY(登録商標)、ブリストル・マイヤーズ、スクイブ)及びトレメリムマブ(Tremelimumab、アストラゼネカ)等が例示される。
〈間葉系幹細胞〉
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系に属する細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)への分化能を有し、当該能力を維持したまま増殖できる細胞を意味する。本発明において用いる間葉系幹細胞なる用語は、間質細胞と同じ細胞を意味し、両者を特に区別するものではない。間葉系幹細胞を含む組織としては、例えば、脂肪組織、臍帯、骨髄、臍帯血、胎盤、歯髄等が挙げられる。従って、例えば脂肪組織由来間葉系幹細胞とは、脂肪組織に含有される間葉系幹細胞を意味し、脂肪組織由来間質細胞と称してもよい。これらのうち、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤の作用効果の観点、及び入手容易性の観点等から、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、胎盤由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞が好ましく、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞がより好ましく、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞がさらに好ましく、臍帯由来間葉系幹細胞が特に好ましい。
本発明における間葉系幹細胞は、被験体に対して同種同系又は同種異系であることが好ましい。間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定して一定の効果を得られ易いという観点から、本発明における間葉系幹細胞は、同種異系であることがより好ましい。
本発明において、間葉系幹細胞とは、間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%以上が間葉系幹細胞である。
本発明において脂肪組織とは、脂肪細胞、及び微小血管細胞等を含む間質細胞を含有する組織を意味し、例えば、哺乳動物の皮下脂肪を外科的切除又は吸引して得られる組織である。脂肪組織は、皮下脂肪より入手され得る。後述する脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与対象と同種動物から入手されることが好ましく、ヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの皮下脂肪である。皮下脂肪の供給個体は、生存していても死亡していてもよいが、本発明において用いる脂肪組織は、好ましくは、生存個体から採取された組織である。個体から採取する場合、脂肪吸引は、例えば、PAL(パワーアシスト)脂肪吸引、エルコーニアレーザー脂肪吸引、又は、ボディジェット脂肪吸引などが例示され、細胞の状態を維持するという観点から、超音波を用いないことが好ましい。
本発明において臍帯とは、胎児と胎盤を結ぶ白い管状の組織であり、臍帯静脈、臍帯動脈、膠様組織(ウォートンジェリー;Wharton’s Jelly)、臍帯基質自体等から構成され、間葉系幹細胞を多く含む。臍帯は、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤を使用する被験体(投与対象)と同種動物から入手されることが好ましく、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤をヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの臍帯である。
本発明において骨髄とは、骨の内腔を満たしている柔組織のことをいい、造血器官である。骨髄中には骨髄液が存在し、その中に存在する細胞を骨髄細胞と呼ぶ。骨髄細胞には、赤血球、顆粒球、巨核球、リンパ球、脂肪細胞等の他、間葉系幹細胞、造血幹細胞、血管内皮前駆細胞等が含まれている。骨髄細胞は、例えば、ヒト腸骨、長管骨、又はその他の骨から採取することができる。
本発明において、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞とは、それぞれ脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%以上が、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞である。
本発明における間葉系幹細胞は、例えば、成長特徴(例えば、継代から老化までの集団倍加能力、倍加時間)、核型分析(例えば、正常な核型、母体系統又は新生児系統)、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)による表面マーカー発現、免疫組織化学及び/又は免疫細胞化学(例えば、エピトープ検出)、遺伝子発現プロファイリング(例えば、遺伝子チップアレイ;逆転写PCR、リアルタイムPCR、従来型PCR等のポリメラーゼ連鎖反応)、miRNA発現プロファイリング、タンパク質アレイ、サイトカイン等のタンパク質分泌(例えば、血漿凝固解析、ELISA、サイトカインアレイ)、代謝産物(メタボローム解析)、本分野で知られている他の方法等によって、特徴付けられてもよい。
〈間葉系幹細胞の調製方法〉
本発明における間葉系幹細胞は、当業者に周知の方法により調製することができる。以下に、一つの例として、脂肪組織由来間葉系幹細胞の調製方法を説明する。脂肪組織由来間葉系幹細胞は、例えば米国特許第6,777,231号に記載の製造方法によって得られて良く、例えば、以下の工程(i)~(iii)を含む方法で製造することができる:
(i) 脂肪組織を酵素による消化により細胞懸濁物を得る工程;
(ii) 細胞を沈降させ、細胞を適切な培地に再懸濁する工程;ならびに
(iii) 細胞を固体表面で培養し、固体表面への結合を示さない細胞を除去する工程。
選択された細胞について、本発明における脂肪組織由来間葉系幹細胞であることを確認するために、表面抗原についてフローサイトメトリー等を用いて従来の方法で解析してもよい。さらに、各細胞系列に分化する能力について検査してもよく、このような分化は、従来の方法で行うことができる。
本発明における間葉系幹細胞は、上述の通り調製することができるが、次の特性を持つ細胞として定義してもよい;
(1)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す、
(2)表面抗原CD44、CD73、CD90が陽性であり、CD31、CD34、CD45、が陰性であり、及び
(3)培養条件にて骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化可能。
本発明の間葉系幹細胞は、いずれの状態の細胞であってもよいが、例えば培養中の細胞を剥離して回収された細胞でもよいし、凍結保存液中に凍結された状態の細胞でもよい。拡大培養して得られる同ロットの細胞を小分けして凍結保存したものを使用すると、安定した作用効果が得られる点、取扱い性に優れる点等において好ましい。凍結保存状態の間葉系幹細胞は、使用直前に融解し、凍結保存液に懸濁したまま直接投与してもよいし、輸液もしくは培地に懸濁した後に、投与してもよい。また、遠心分離等の方法により凍結保存液を除去してから輸液もしくは培地に混合してもよい。
本発明の糖尿病治療剤は、糖尿病の治療に用いることができる。特に、免疫チェックポイント阻害薬の投与により発症する糖尿病の治療に対して好適に用いることができ、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体の投与によって発症する糖尿病に対してより好適に用いられる。また、本発明の糖尿病予防剤は、糖尿病の予防に用いることができる。特に、免疫チェックポイント阻害薬による糖尿病の発症の予防剤として好適に用いることができ、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体の投与によって発症する糖尿病の予防剤としてより好適に用いられる。
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤の投与経路は、有効性の観点から、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与が好ましい。
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤において、間葉系幹細胞の用量(投与量)は、患者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、及び本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤の剤形等によって異なりうるが、十分な糖尿病の予防及び/又は治療剤剤の治療効果を奏する観点からは、間葉系幹細胞量は多い方が好ましい傾向にあり、一方、副作用の発現を抑制する観点からは間葉系幹細胞の量は少ない方が好ましい傾向にある。通常、成人に投与する場合には、間葉系幹細胞の細胞数として、1x10~1x1012個/回、好ましくは1x10~1x1011個/回、より好ましくは1x10~1x1010個/回、さらに好ましくは5x10~1x10個/回である。また、患者の体重あたりの間葉系幹細胞の投与量としては、1x10~5x1010個/kg、好ましくは1x10~5x10個/kg、より好ましくは1x10~5x10個/kg、さらに好ましくは1x10~5x10個/kgである。なお、本用量を1回量として、間葉系幹細胞複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与してもよい。
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤は、糖尿病の発症前に予防的に使用してもよいし、糖尿病の発症後に治療の目的で使用してもよい。即ち、患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬の使用と並行して本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤を使用してもよいし、免疫チェックポイント阻害薬投与によって糖尿症が発症した後で、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤を使用してもよい。
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤は、1又は2以上の他の薬剤と共に投与してもよい。他の薬剤としては、糖尿病の予防及び/又は治療剤として用いることができる任意の薬剤が挙げられる。なお、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤が、1又は2以上の他の薬剤と共に投与される場合とは、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤と他の薬剤とを同時に使用する場合、どちらか一方を投与した後に一定の時間が経過してから他方の薬剤を投与する場合、これらの組み合わせ等、種々の場合を含む。
<糖尿病の予防及び/又は治療剤の調製方法>
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤は、それぞれの剤型に合わせて、常法に従って、上述の調製方法によって準備した間葉系幹細胞と、適切な細胞懸濁用液体等(薬学的に許容される担体や添加物を含む)とを混合することによりに得られる。
<糖尿病の予防及び/又は治療用キット>
本発明は、上述した本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤、容器及びラベルを含む糖尿病治療用のキットも含む。本発明のキットが含む適切な容器としては、特に限定されないが、例えば、間葉系幹細胞凍結用のクライオチューブ、間葉系幹細胞懸濁用溶液、バイアル、試験管等が挙げられる。これらの容器は、ガラス、金属、プラスチック又はこれらの組み合わせ等の多様な材料から形成されていてもよい。これらの容器上のラベルには、内容物を説明する内容が記載されている。
本発明のキットは、その他の添加剤、その他の薬剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用法を記載した添付文書を含めた、商業的、及び利用者の観点から望ましい他の材料を包含することができる。
<糖尿病の予防及び/又は治療方法>
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療方法は、間葉系幹細胞を投与することを特徴とする。また、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療方法が対象とする糖尿病は免疫チェックポイント阻害薬の投与によって発症する糖尿病である。本発明の糖尿病の予防及び/又は治療方法は、免疫チェックポイント阻害薬による糖尿病の発症を抑制することができ、また免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病に対して、症状を顕著に改善させることができる。なお、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療方法は、対象に本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤を投与することを含む方法であるため、具体的な内容は、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤についての項の記載を参照されたい。
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
[抗PD-L1抗体誘発糖尿病へのMSCの効果1]
実施例1
マウス(NOD/ShiJcl、雄性、10週齢、n=31)に抗PD-L1抗体をDay0に1,000μg、Day2、5、7、9及び12に500μgを腹腔内投与した。MSC群には脂肪由来幹細胞(ロンザ、以下「MSC」という)をDMEM(Low Glucose、P/S)に懸濁して1.0×10cells/bodyで、尾静脈にDay0、2、5、7、9及び12に投与を行った。CNTL群にはDay0、2、5、7、9及び12にDMEMのみの投与を行った。簡易血糖測定器(デキスター(Dexter))を用いて血糖値の測定を行った。なお、測定限界を超えた個体については600mg/dlとして計算を行った。また、血糖値が250mg/dl以上を糖尿病として、糖尿病発生率を求めた。
図1に示すとおり、MSCを投与することにより、14日目において優位な血糖値の抑制効果が確認された。また、MSCを投与することにより、糖尿病の発症を抑制することができた(図2)。なお、CNTL群及びMSC群のマウスに体重の減少は見られず、両者の体重の推移に差は見られなかった(図3)。
以上の結果より、MSCを投与することにより、抗PD-L1抗体投与によっって起こる血糖値の上昇及び、糖尿病の発症を抑えることができることが明らかとなった。間葉系幹細胞は、免疫チェックポイント阻害剤投与によって発症する糖尿病に対して、優れた治療効果を奏することがわかった。
[抗PD-L1抗体誘発糖尿病へのMSCの効果2]
実施例1のCNTL群及びMSC群の膵臓をヘマトキシリンエオジン染色及びインスリン免疫染色を行った(図4及び図5)。なお、図5の矢印は膵島を指し示している。Control群では膵島が見られないのに対して、MSC群では膵島が明確に確認された。
[抗PD-L1抗体誘発糖尿病へのMSCの効果3]
実施例1のCNTL群及びMSC群の膵切片中の膵島面積の比較を行った(図6)。CNTL群に比べて、MSC群では膵島面積が有意に大きかった。また、実施例1で糖尿病を発症しなかったCNTL群(n=5)及びMSC群(n=9)の膵島面積の比較を行った(図7)。糖尿病を発症しなかった群においてもCNTL群に比べて、MSC群では膵島面積が大きい傾向があった。
本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤によると、免疫チェックポイント阻害薬による糖尿病の発症を抑制することができ、また免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病の各症状を顕著に改善させることができる。上記間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ治療効果が確認されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の糖尿病の予防及び/又は治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ一定の効果を得られ易いという利点もある。

Claims (6)

  1. 間葉系幹細胞を含有する、糖尿病の予防及び/又は治療剤。
  2. 上記糖尿病が、免疫チェックポイント阻害薬によって発症する糖尿病である、請求項1に記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
  3. 上記糖尿病が、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体によって発症する糖尿病である、請求項1又は2に記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
  4. 上記間葉系幹細胞が、被験体に対して同種異系である、請求項1から3のいずれかに記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
  5. 上記間葉系幹細胞が、脂肪由来、臍帯由来又は骨髄由来である、請求項1から4のいずれかに記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の糖尿病の予防及び/又は治療剤、容器及びラベルを含む、糖尿病の予防及び/又は治療用キット。
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