JP7495075B2 - 高血圧性心疾患治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は高血圧性心疾患に関する。
高血圧性心疾患(HHD)は、高血圧を原因とし、それに伴って併発する心疾患である。高血圧のために左心室には圧、容積負荷が加わり、その結果として左心室肥大、冠不全状態となる。高血圧症の末期には腎硬化による腎機能不全により水分、塩分の排泄障害も起こる。したがって、高血圧症患者は左心室不全(LVF)を起こしやすく、かつ重症になりやすい。高血圧性心疾患の治療は、血圧管理により治療を行うものであり、既に左心室肥大等を起こした心臓の機能に対して効果を奏するとはいい難い。そのため、高血圧性心疾患の新規治療法の開発が望まれている。
一方、間葉系幹細胞は、Friedenstein(1982)によって初めて骨髄から単離された多分化能を有する前駆細胞である(非特許文献1)。この間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯、脂肪等の様々な組織に存在することが明らかにされており、間葉系幹細胞移植は、様々な難治性疾患に対する新しい治療方法として、期待されている(特許文献1~4)。最近では、脂肪組織、胎盤、臍帯、卵膜等の胎児付属物の間質細胞に同等の機能を有する細胞が存在することが知られている。従って、間葉系幹細胞を間質細胞(Mesenchymal Stromal Cell)と称することもある。
ピオグリタゾンはインスリン抵抗性改善血糖降下剤である。その作用機序は、末梢組織及び肝におけるインスリン作用増強、インスリン受容体作用増強、TNF-α産生抑制作用である(非特許文献2~5)。
特表2002-506831号公報 特表2000-508911号公報 特開2012-157263号公報 特表2012-508733号公報 国際公開第2018/074381号 国際公開第2018/225440号
Pittenger F. M. et al.,Science,1999,284,pp.143-147 Sugiyama Y. et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res., 40(1), 3:263, 1990. Sugiyama Y. et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res., 40(1), 4:436, 1990. Hayakawa T. et al.:Biochem. Biophys. Res. Commun., 223(2):439, 1996. Murase K. et al.:Diabetologia, 41(3):257, 1998.
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、高血圧性心疾患患の治療において優れた効果を奏し、かつ多くの患者に対して一定の効果が得られる高血圧性心疾患治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高血圧性心疾患に対して、間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを投与することにより、心機能等を顕著に改善させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。すなわち上記課題を解決するためになされた発明は、以下の通りである。
[1]間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを含有する、高血圧性心疾患治療剤。
[2]上記ピオグリタゾンがピオグリタゾン塩酸塩である、[1]に記載の高血圧性心疾患治療剤。
[3]上記間葉系幹細胞が、被験体に対して同種異系である、[1]もしくは[2]に記載の拡高血圧性心疾患治療剤。
[4]上記間葉系幹細胞が、脂肪由来、臍帯由来又は骨髄由来である、[1]から[3]のいずれかに記載の高血圧性心疾患治療剤。
[5]上記間葉系幹細胞が、凍結された細胞である、[1]から[4]のいずれかに記載の高血圧性心疾患治療剤。
[6]間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを含有する、高血圧性心疾患における心肥大抑制剤。
[7][1]から[5]のいずれかに記載の高血圧性心疾患治療剤、[6]に記載の心肥大抑制剤、容器及びラベルを含む、高血圧性心疾患治療用キット。
本発明の高血圧性心疾患治療剤によると、高血圧性心疾患の疾患に対して、間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを投与することにより、心臓等の疾患部位の機能、構造等を顕著に改善させることができる。上記間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の高血圧性心疾患治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定した一定の効果を得られ易いという利点もある。
図1は、高血圧性心疾患のモデルであるTACモデルマウスに対する本発明の高血圧性心疾患治療剤の治療効果を示す図である(超音波心エコー検査)。 図2は、高血圧性心疾患のモデルであるTACモデルマウスに対する本発明の高血圧性心疾患治療剤の治療効果を示す図である(駆出率(ejection fraction (EF)))。 図3は、高血圧性心疾患のモデルであるTACモデルマウスに対する本発明の高血圧性心疾患治療剤の治療効果を示す図である(分数短縮(fractional shortening (FS)))。 図4は、高血圧性心疾患のモデルであるTACモデルマウスに対する本発明の高血圧性心疾患治療剤の治療効果を示す図である(心臓重量)。
以下に、本発明の高血圧性心疾患治療剤、心肥大抑制剤、及び高血圧性心疾患治療用キットについて詳細に説明する。
<高血圧性心疾患治療剤>
本発明の高血圧性心疾患治療剤は、間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを含有する。
〈間葉系幹細胞〉
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系に属する細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)への分化能を有し、当該能力を維持したまま増殖できる細胞を意味する。本発明において用いる間葉系幹細胞なる用語は、間質細胞と同じ細胞を意味し、両者を特に区別するものではない。間葉系幹細胞を含む組織としては、例えば、脂肪組織、臍帯、骨髄、臍帯血、胎盤、歯髄等が挙げられる。従って、例えば脂肪組織由来間葉系幹細胞とは、脂肪組織に含有される間葉系幹細胞を意味し、脂肪組織由来間質細胞と称してもよい。これらのうち、本発明の高血圧性心疾患治療剤の作用効果の観点、及び入手容易性の観点等から、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、胎盤由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞が好ましく、脂肪組織由来間葉系幹細胞がより好ましい。
本発明における間葉系幹細胞は、被験体に対して同種同系又は同種異系であることが好ましい。間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の高血圧性心疾患治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定して一定の効果を得られ易いという観点から、本発明における間葉系幹細胞は、同種異系であることがより好ましい。
間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の高血圧性心疾患治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定して一定の効果を得られ易いという観点から、本発明における間葉系幹細胞は、同種異系であることがより好ましい。
また、本発明において、間葉系幹細胞とは、間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が間葉系幹細胞である。
本発明において脂肪組織とは、脂肪細胞、及び微小血管細胞等を含む間質細胞を含有する組織を意味し、例えば、哺乳動物の皮下脂肪を外科的切除又は吸引して得られる組織である。脂肪組織は、皮下脂肪より入手され得る。後述する脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与対象と同種動物から入手されることが好ましく、ヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの皮下脂肪である。皮下脂肪の供給個体は、生存していても死亡していてもよいが、本発明において用いる脂肪組織は、好ましくは、生存個体から採取された組織である。個体から採取する場合、脂肪吸引は、例えば、PAL(パワーアシスト)脂肪吸引、エルコーニアレーザー脂肪吸引、又は、ボディジェット脂肪吸引などが例示され、細胞の状態を維持するという観点から、超音波を用いないことが好ましい。
本発明において臍帯とは、胎児と胎盤を結ぶ白い管状の組織であり、臍帯静脈、臍帯動脈、膠様組織(ウォートンジェリー;Wharton’s Jelly)、臍帯基質自体等から構成され、間葉系幹細胞を多く含む。臍帯は、本発明の高血圧性心疾患治療剤を使用する被験体(投与対象)と同種動物から入手されることが好ましく、本発明の高血圧性心疾患治療剤をヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの臍帯である。
本発明において骨髄とは、骨の内腔を満たしている柔組織のことをいい、造血器官である。骨髄中には骨髄液が存在し、その中に存在する細胞を骨髄細胞と呼ぶ。骨髄細胞には、赤血球、顆粒球、巨核球、リンパ球、脂肪細胞等の他、間葉系幹細胞、造血幹細胞、血管内皮前駆細胞等が含まれている。骨髄細胞は、例えば、ヒト腸骨、長管骨、又はその他の骨から採取することができる。
本発明において、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞とは、それぞれ脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞である。
本発明における間葉系幹細胞は、例えば、成長特徴(例えば、継代から老化までの集団倍加能力、倍加時間)、核型分析(例えば、正常な核型、母体系統又は新生児系統)、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)による表面マーカー発現、免疫組織化学及び/又は免疫細胞化学(例えば、エピトープ検出)、遺伝子発現プロファイリング(例えば、遺伝子チップアレイ;逆転写PCR、リアルタイムPCR、従来型PCR等のポリメラーゼ連鎖反応)、miRNA発現プロファイリング、タンパク質アレイ、サイトカイン等のタンパク質分泌(例えば、血漿凝固解析、ELISA、サイトカインアレイ)、代謝産物(メタボローム解析)、本分野で知られている他の方法等によって、特徴付けられてもよい。
〈間葉系幹細胞の調製方法〉
当該間葉系幹細胞は、当業者に周知の方法により調製することができる。以下に、一つの例として、脂肪組織由来間葉系幹細胞の調製方法を説明する。脂肪組織由来間葉系幹細胞は、例えば米国特許第6,777,231号に記載の製造方法によって得られて良く、例えば、以下の工程(i)~(iii)を含む方法で製造することができる:
(i) 脂肪組織を酵素による消化により細胞懸濁物を得る工程;
(ii) 細胞を沈降させ、細胞を適切な培地に再懸濁する工程;ならびに
(iii) 細胞を固体表面で培養し、固体表面への結合を示さない細胞を除去する工程。
再懸濁において用いる培地は、間葉系幹細胞を培養できる培地であれば、特に限定されないが、このような培地は、基礎培地に、血清を添加する、及び/又は、アルブミン、トランスフェリンなどの1つ以上の血清代替物を添加して作製してもよい。本発明において得られる脂肪由来間葉系幹細胞を細胞移植に用いるという観点から、血清等の異種由来成分を含まない(ゼノフリー)培地を用いることが好ましい。
本発明では、最終的に固体表面に結合した状態で留まる細胞を、脂肪組織由来間葉系幹細胞の細胞集団として選択することができる。
選択された細胞について、本発明における脂肪組織由来間葉系幹細胞であることを確認するために、表面抗原についてフローサイトメトリー等を用いて従来の方法で解析してもよい。さらに、各細胞系列に分化する能力について検査してもよく、このような分化は、従来の方法で行うことができる。
る間葉系幹細胞は、上述の通り調製することができるが、次の特性を持つ細胞として定義してもよい;
(1)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す、
(2)表面抗原CD44、CD73、CD90が陽性であり、CD31、CD45、が陰性であり、及び
(3)培養条件にて骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化可能。
〈間葉系幹細胞の凍結保存〉
本発明における間葉系幹細胞は、疾患治療効果を備えていれば、適宜、凍結保存及び融解を繰り返した細胞であってもよい。本発明において、凍結保存は、当業者に周知の凍結保存液へ間葉系幹細胞を懸濁し、冷却することによって行い得る。懸濁は、細胞をトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、凍結保存容器に移し、適宜、処理した後、凍結保存液を加えることによって行い得る。
上述の懸濁した細胞を凍結保存する場合、-80℃~-100℃の間の温度(例えば、-80℃)で保管することで良く、当該温度に達成しえる任意のフリーザーを用いて行い得る。特に限定されないが、急激な温度変化を回避するため、プログラムフリーザーを用いて、冷却速度を適宜制御してもよい。冷却速度は、凍結保存液の成分によって適宜選択しても良く、凍結保存液の製造者指示に従って行われ得る。
保存期間は、上記条件で凍結保存した細胞が融解した後、凍結前と同等の性質を保持している限り、特に上限は限定されない。より低い温度で保存することで細胞障害を抑制することができるため、液体窒素上の気相(約-150℃以下から-180℃以上)へ移して保存してもよい。液体窒素上の気相で保存する場合、当業者に周知の保存容器を用いて行うことができる。特に限定されないが、例えば、2週間以上保存する場合、液体窒素上の気相で保存することが好ましい。
融解した間葉系幹細胞は、次の凍結保存までに適宜、培養してもよい。間葉系幹細胞の培養は、間葉系幹細胞を培養できる培地を用いて行われ、特に限定されないが、約30~40℃、好ましくは約37℃の培養温度で、CO含有空気の雰囲気下で行われてもよい。CO濃度は、約2~5%、好ましくは約5%である。
凍結保存した細胞の融解は、当業者に周知の方法によって行い得る。例えば、37℃の恒温槽内又は湯浴中にて静置又は振とうすることによって行う方法が例示される。
〈間葉系幹細胞の形態〉
本発明の間葉系幹細胞は、いずれの状態の細胞であってもよいが、例えば培養中の細胞を剥離して回収された細胞でもよいし、凍結保存液中に凍結された状態の細胞でもよい。拡大培養して得られる同ロットの細胞を小分けして凍結保存したものを使用すると、安定した作用効果が得られる点、取扱い性に優れる点等において好ましい。凍結保存状態の間葉系幹細胞は、使用直前に融解し、凍結保存液に懸濁したまま直接投与してもよいし、輸液もしくは培地に懸濁した後に、投与してもよい。また、遠心分離等の方法により凍結保存液を除去してから輸液もしくは培地に混合してもよい。
本発明の高血圧性心疾患治療剤は、高血圧性心疾患の治療に好適に用いることができる。
本発明の高血圧性心疾患治療剤の投与経路は、有効性の観点から、間葉系幹細胞については、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、心臓表面への直接投与が好ましく、ピオグリタゾンについては、経口投与が好ましい。
〈ピオグリタゾン〉
ピオグリタゾン(Pioglitazone)は、チアゾリジン系の経口血糖降下薬として知られている薬剤である。本発明においてピオグリタゾンは、薬学的に許容される塩であってもよく、例えばピオグリタゾン塩酸塩等が好ましい塩として挙げられる。
本発明の高血圧性心疾患治療剤において、間葉系幹細胞、ピオグリタゾンの用量(投与量)は、患者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、及び本発明の高血圧性心疾患治療剤の剤形等によって異なりうるが、十分な高血圧性心疾患治療剤の治療効果を奏する観点からは、間葉系幹細胞、ピオグリタゾンの量は多い方が好ましい傾向にあり、一方、副作用の発現を抑制する観点からは間葉系幹細胞の量は少ない方が好ましい傾向にある。通常、成人に投与する場合には、間葉系幹細胞の細胞数として、1×10~1×1012個/回、好ましくは1×10~1×1011個/回、より好ましくは1×10~1×1010個/回、さらに好ましくは5×10~1×10個/回である。また、患者の体重あたりの間葉系幹細胞の投与量としては、1×10~5×1010個/kg、好ましくは1×10~5×10個/kg、より好ましくは1×10~5×10個/kg、さらに好ましくは1×10~5×10個/kgである。なお、本用量を1回量として、間葉系幹細胞複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与してもよい。また、ピオグリタゾンの用量としては、0.1mg~300mg/回、好ましくは1mg~200mg/回、より好ましくは5mg~100mg/回、さらに好ましくは10mg~50mg/回である。患者の体重あたりのピオグリタゾンの投与量としては、2μg~6mg/kg、好ましくは20μg~4mg/kg、より好ましくは100μg~2mg/kg、さらに好ましくは200μg~1mg/kgである。なお、本用量を1回量として、ピオグリタゾンを複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与してもよい。例えば、患者に対してピオグリタゾンを1~2回/日、間葉系幹細胞を2~3回/週で、合計2週間投与するスケジュール等が挙げられる。なお、ピオグリタゾンは、浮腫、肝機能障害等のいくつかの副作用が報告されているが、本発明においては、そのような副作用が生じないように用法・用量を調整する必要がある。
本発明の高血圧性心疾患治療剤は、1又は2以上の他の薬剤と共に投与してもよい。他の薬剤としては、心臓疾患治療剤として用いることができる任意の剤を薬剤が挙げられる。なお、本発明の高血圧性心疾患治療剤が、1又は2以上の他の薬剤と共に投与される場合とは、本発明の高血圧性心疾患治療剤と他の薬剤とを同時に使用する場合、どちらか一方を投与した後に一定の時間が経過してから他方の薬剤を投与する場合、これらの組み合わせ等、種々の場合を含む。
〈高血圧性心疾患治療剤の調製方法〉
本発明の高血圧性心疾患治療剤は、それぞれの剤型に合わせて、常法に従って、間葉系幹細胞及びピオグリタゾンと、適切な細胞懸濁用液体等(薬学的に許容される担体や添加物を含む)とを混合することによりに得られる。また、間葉系幹細胞と、ピオグリタゾンとは、それぞれ常法に従って、別々に調製してもよい。
<心肥大抑制剤>
本発明は、間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを含有する、高血圧性心疾患における心肥大抑制剤も含む。上述した本発明の高血圧性心疾患治療剤は、高血圧性心疾患における心肥大を特に効果的に抑制する効果を有することから、高血圧性心疾患における心肥大抑制剤としても有効である。なお、本発明の高血圧性心疾患における心肥大抑制剤が含有する間葉系幹細胞及びピオグリタゾン、その他の具体的な説明については、上述した高血圧性心疾患治療剤の説明を適用できる。
<高血圧性心疾患治療用キット>
本発明は、上述した本発明の高血圧性心疾患治療剤又は心肥大抑制剤、容器及びラベルを含む高血圧性心疾患治療用のキットも含む。本発明のキットが含む適切な容器としては、特に限定されないが、例えば、間葉系幹細胞凍結用のクライオチューブ、間葉系幹細胞懸濁用溶液、ピオグリタゾン用のボトル、バイアル、試験管等が挙げられる。これらの容器は、ガラス、金属、プラスチック又はこれらの組み合わせ等の多様な材料から形成されていてもよい。これらの容器上のラベルには、内容物を説明する内容が記載されている。
本発明のキットは、その他の添加剤、その他の薬剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用法を記載した添付文書を含めた、商業的、及び利用者の観点から望ましい他の材料を包含することができる。
以下の実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
[1]本発明の高血圧性心疾患治療剤の調製
(脂肪組織由来間葉系幹細胞の調製)
ヒトドナーから同意を得た後、脂肪吸引法で得た皮下脂肪組織を生理食塩液で洗浄した。細胞外基質の破壊、及び細胞の単離を達成するために、コラゲナーゼ(Roche社)(溶媒は生理食塩液)を添加し、37℃で90分間振倒し、分散した。続いて、この細胞を回収し、細胞懸濁液を800gで5分間、遠心分離して間質血管細胞群の沈殿を得た。上記細胞の沈殿に間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)を加え、当該細胞懸濁液を400gで5分間遠心分離し、上清除去後に間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)に再懸濁し、フラスコに細胞を播種した。細胞を37℃で数日間、5%CO中で培養した。数日後に培養物をPBSで洗浄して、培養液中に含まれていた血球や脂肪組織の残存等を除去し、プラスチック容器に接着している脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。
(脂肪組織由来間葉系幹細胞の凍結保存)
得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を、トリプシンを用いて剥離し、遠沈管に移し、400gで5分間、遠心分離し細胞の沈殿を得た。上清を除去した後、細胞凍結保存液(STEM-CELLBANKER(ゼノアック社))を適量加え懸濁した。当該細胞懸濁液を、クライオチューブに分注した後、フリーザー内で-80度にて保存後、液体窒素上の気相に移し、保存を継続した。
(細胞表面マーカーの解析(フローサイトメトリー))
脂肪組織由来間葉系幹細胞上の種々の表面マーカーの評価は、フローサイトメトリーによって実施した。脂肪組織由来間葉系幹細胞を、FACS染色用バッファーに再懸濁した。FACS分析に用いた抗体は、FITC(蛍光イソシアニン)又はPE(フェコエリスリン)標識のマウス抗ヒト抗体CD11b、CD45、CD73、CD90、及び相当するマウスIgG1アイソタイプコントロール抗体であった。細胞は室温で30分間染色し、次に洗浄し、BD FACSCantoII(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて解析した。データは、BD FACSDiva SoftwCre(BD Biosciences)を用いて分析した。その結果、脂肪組織由来間葉系幹細胞は、CD45は陰性、CD73、CD90は陽性であった。
(圧負荷可心不全(TAC)モデル)
高血圧性心疾患モデルである、圧負荷誘導性心不全モデルに対する脂肪組織由来間葉系幹細胞(以下「MSC」と言う)及びピオグリタゾンの治療効果の検討を行った。マウス(C57BL6J、雄性、9週齢)の心臓横大動脈狭窄(Exp Physiol. 2012 Jul;97(7):822-32)を行い、TACモデルマウス(以下「TACモデル」と言う)を作製した。ピオグリタゾン投与群には、心臓横大動脈狭窄及び偽手術前日から、0.5%W/Vメチルセルロースに懸濁したピオグリタゾンを50mg/kgを1日2回経口投与した。MSC投与群は心臓横大動脈狭窄及び偽手術後に、MSCをDMEM(Low Glucose、P/S、FBS(-))に懸濁して1.67×10cells/bodyで、尾静脈に1週間に3回、2週間(計6回)投与を行った。心臓横大動脈狭窄及び偽手術の2週間後における心臓機能の比較を超音波心エコー検査により行った(図1)。手術後2週間における左室駆出率(ejection fraction% (EF%))及び左室内径短縮率(fractional shortening% (FS%))は偽手術と比較して、ピオグリタゾン投与群でも、ピオグリタゾン非投与群でも心臓横大動脈狭窄により、著しく低下した。TACモデルに対してMSCを投与することにより、駆出率や分数短縮の低下が有意に抑えられた。さらに、TACモデルに対してピオグリタゾン及びMSCを投与することにより駆出率や分数短縮の低下が有意に抑えられた(図2、3)。
また、心臓横大動脈狭窄により、偽手術と比較してピオグリタゾン投与群でも、ピオグリタゾン非投与群でも、心臓重量の大幅な増加が見られた。TACモデルに対してMSCを投与することにより心臓重量の増加が抑えられた。さらに、TACモデルに対してピオグリタゾン及びMSCを投与することにより心臓重量の増加が有意に抑えられた(図4)。
本発明の高血圧性心疾患治療剤によると、高血圧性心疾患の心臓の機能等を顕著に改善させることができる。上記間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ治療効果が確認されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の高血圧性心疾患治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ一定の効果を得られ易いという利点もある。

Claims (5)

  1. 脂肪由来間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを含有する、高血圧性心疾患治療剤。
  2. 上記ピオグリタゾンがピオグリタゾン塩酸塩である、請求項1に記載の高血圧性心疾患治療剤。
  3. 上記脂肪由来間葉系幹細胞が、被験体に対して同種異系である、請求項1もしくは2に記載の高血圧性心疾患治療剤。
  4. 脂肪由来間葉系幹細胞及びピオグリタゾンを含有する、高血圧性心疾患における心肥大抑制剤。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の高血圧性心疾患治療剤、請求項に記載の心肥大抑制剤、容器及びラベルを含む、高血圧性心疾患治療用キット。
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