以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
更に、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチング(網掛け)を省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを付す場合もある。
(実施の形態)
<軌道検測装置による軌道検測方法>
初めに、実施の形態の軌道検測装置による軌道検測方法について説明する。本実施の形態の軌道検測装置は、平面視でY軸方向(第1方向)に延在するレールを含む軌道の軌道変位を検測する軌道検測装置である。また、本実施の形態の軌道検測方法は、本実施の形態の軌道検測装置による軌道検測方法であり、平面視でY軸方向(第1方向)に延在するレールを含む軌道の軌道変位を検測する軌道検測方法である。
図1は、実施の形態の軌道検測装置を説明するための図であり、軌道の画像を撮像する撮像部が搭載された鉄道車両を模式的に示す図である。図2は、実施の形態の軌道検測装置により軌道変位が検測される軌道を模式的に示す斜視図である。図3は、実施の形態の軌道検測装置の構成を示すブロック図である。図4は、実施の形態の軌道検測方法の一部のステップを示すフロー図である。
まず、図1乃至図4を参照し、本実施の形態の軌道検測装置、及び、本実施の形態の軌道検測装置による軌道検測方法の詳細について説明する。
図1及び図2に示すように、本実施の形態の軌道検測装置1は、平面視でY軸方向(第1方向)に延在するレール2を含む軌道3の軌道変位を検測するものであり、軌道3の画像を撮像する撮像部4が搭載された鉄道車両5が軌道3上を走行する際に、軌道3の画像を撮像部4により撮像し、撮像された画像を画像処理することにより、軌道変位又は軌道中心間隔を検測するものである。撮像部4として、図1に示すように、鉄道車両5に設置されたカメラ6と、カメラ6により撮像された画像を集録する画像集録装置7と、を含むものを用いることができる。また、本実施の形態の軌道検測装置1として、鉄道車両5の外部又は内部に設置され、画像集録装置7と無線又は有線で接続されたコンピュータ8を用いることができる。
図1乃至図3に示すように、本実施の形態の軌道検測装置1は、第1取得部11と、第1抽出部12と、第1選択部13と、第2取得部14と、検測部15と、付与部16と、を有する。また、前述したように、本実施の形態の軌道検測装置として、コンピュータ8を用いることができ、このような場合、第1取得部11、第1抽出部12、第1選択部13、第2取得部14、検測部15及び付与部16の各々として、コンピュータ8を用いることができる。なお、本実施の形態の軌道検測装置1は、付与部16を有しなくてもよい。
第1取得部11は、軌道3としての軌道3aの表面及び軌道3aの周辺の物体の表面の形状を表す複数の点PN1(後述する図5参照)の各々についての、Y軸方向(第1方向)におけるY座標(第1座標)、平面視でY軸方向(第1方向)と直交するX軸方向(第2方向)におけるX座標(第2座標)、Y軸方向(第1方向)及びX軸方向(第2方向)のいずれとも直交するZ軸方向(第3方向)におけるZ座標(第3座標)、並びに、色値又は輝度値である値VL1(後述する図6参照)、を含む線路沿線の3次元点群データPC1(後述する図5参照)を取得する。ここで、Y座標(第1座標)は軌道3aに含まれるレール2aが延在する方向(レール2aの長手方向)であるY軸方向(第1方向)の座標であり、X座標(第2座標)はレール2aの幅方向であるX軸方向(第2方向)の座標であり、Z座標(第3座標)はレール2aの高さ方向であるZ軸方向(第3方向)の座標である。また、XY座標系は軌道(線路)の平面であるXY平面を表す座標系であり、YZ座標系は軌道の縦断面であるYZ平面を表す座標系である。また、3次元点群データとは、物体の表面の形状を3次元点群で表すデータを意味する。
第1抽出部12は、複数の点PN1(後述する図5参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(後述する図6参照)、が線路沿線の3次元点群データPC1(後述する図5参照)に含まれる複数の点PN1のうち、X座標(第2座標)が範囲RN1(後述する図6参照)内であり、Z座標(第3座標)が範囲RN2(後述する図6参照)内であり、且つ、値VL1が範囲RN3(後述する図6参照)内である点PN1を、レール2aの頭頂面の形状を表す点PN2(後述する図6参照)としてそれぞれ抽出することにより、レール2aの頭頂面の形状を表す複数の点PN2の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1、を含む頭頂面の3次元点群データPC2(後述する図6参照)を取得する。なお、点PN2を抽出した後のデータであるから、頭頂面の3次元点群データPC2は、値VL1を含まなくてもよい。
第1選択部13は、複数の点PN2(後述する図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(後述する図6参照)、が頭頂面の3次元点群データPC2(後述する図6参照)に含まれる複数の点PN2のうち、Y座標(第1座標)がY軸方向(第1方向)において値VL2(後述する図7参照)を中心とする範囲RN4(後述する図7参照)内である点PN2を点PN3(後述する図7参照)としてそれぞれ選択し、選択された複数の点PN3の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)及びZ座標(第3座標)、に基づいて、Y座標(第1座標)が値VL2であり且つレール2aの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上に位置する点PN4(後述する図7参照)の3次元座標(X座標、Y座標及びZ座標)、を算出する第1算出処理を実行する。
第2取得部14は、値VL2(後述する図7参照)を変更しながら第1選択部13による第1算出処理を繰り返すことにより、Y軸方向(第1方向)に間隔を空けて配列され且つレール2aの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上にそれぞれ位置する複数の点PN4(後述する図7参照)の3次元座標を算出し、算出された複数の点PN4の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1、を含む中心線の3次元点群データPC3(後述する図7参照)を取得する。なお、点PN2(後述する図6参照)を抽出した後のデータであるから、中心線の3次元点群データPC3は、値VL1(後述する図6参照)を含まなくてもよい。
検測部15は、レールの頭頂面の中心線の3次元点群データPC3(後述する図7参照)に基づいて、軌道変位を検測する。検測部15による具体的な検測方法については、後述する図5乃至図9を用いて説明する。
付与部16は、検測された軌道変位に3次元座標を付与する。付与部16による具体的な付与方法については、後述する図10及び図11を用いて説明する。
本実施の形態の軌道検測装置1として用いられるコンピュータ8は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)、RAM(Random Access Memory)、記憶部、データ・指令入力部、画像表示部及び出力部等により構成されている。
CPUは、図示は省略するが、各種データに対して、四則演算(加算、減算、乗算及び除算)、論理演算(論理積、論理和、否定及び排他的論理和等)、又は、データ比較、若しくはデータシフト等の処理を実行する部分である。なお、記憶部は、図示は省略するが、ハードディスク装置(Hard Disk Drive:HDD)、又は、ROM(Read Only Memory)等を有しており、CPUを制御するための制御プログラム、及び、CPUが用いる各種データ等を格納している部分である。また、ROMは、一般に、半導体チップ等により構成される。
また、本実施の形態の軌道検測装置1として用いられるコンピュータ8は、以下に説明する軌道検測方法の各ステップの動作及び処理を行うためのプログラムを実行するものである。
本実施の形態の軌道検測装置1による軌道検測方法では、軌道3aの表面及び軌道3aの周辺の物体の表面の形状を表す複数の点PN1(後述する図5参照)の各々についての、Y軸方向(第1方向)におけるY座標(第1座標)、平面視でY軸方向(第1方向)と直交するX軸方向(第2方向)におけるX座標(第2座標)、Y軸方向(第1方向)及びX軸方向(第2方向)のいずれとも直交するZ軸方向(第3方向)におけるZ座標(第3座標)、並びに、色値又は輝度値である値VL1(後述する図6参照)、を含む線路沿線の3次元点群データPC1(後述する図5参照)を、第1取得部11により取得する(図4のステップS1)。
線路沿線の3次元点群データPC1(後述する図5参照)を取得する詳細な方法については、後述する図5を用いて説明するものの、図1及び図2に示すように、軌道3aの画像を撮像する撮像部4が搭載された鉄道車両5が軌道3a上を走行する際に、軌道3aの画像を撮像部4により撮像する撮像処理を繰り返すことにより、互いに異なる複数の時点の各々で軌道3aがそれぞれ撮像された複数の画像を含む画像群を取得し、取得された画像群に含まれる複数の画像に基づいて、線路沿線の3次元点群データPC1を、第1取得部11により取得することができる。
次に、複数の点PN1(後述する図5参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(後述する図6参照)、が線路沿線の3次元点群データPC1(後述する図5参照)に含まれる複数の点PN1のうち、X座標(第2座標)が範囲RN1(後述する図6参照)内であり、Z座標(第3座標)が範囲RN2(後述する図6参照)内であり、且つ、値VL1が範囲RN3(後述する図6参照)内である点PN1を、レール2aの頭頂面の形状を表す点PN2(後述する図6参照)としてそれぞれ第1抽出部12により抽出することにより、レール2aの頭頂面の形状を表す複数の点PN2の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1、を含む頭頂面の3次元点群データPC2(後述する図6参照)を、第1抽出部12により取得する(図4のステップS2)。
次に、複数の点PN2(後述する図5参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(後述する図6参照)、が頭頂面の3次元点群データPC2(後述する図6参照)に含まれる複数の点PN2のうち、Y座標(第1座標)がY軸方向(第1方向)において値VL2(後述する図7参照)を中心とする範囲RN4(後述する図7参照)内である点PN2を点PN3(後述する図7参照)としてそれぞれ選択し、選択された複数の点PN3の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)及びZ座標(第3座標)、に基づいて、Y座標(第1座標)が値VL2であり且つレール2aの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上に位置する点PN4(後述する図7参照)の3次元座標、を算出する第1算出処理を、第1選択部13により実行する(図4のステップS3)。
次に、値VL2(後述する図7参照)を変更しながら図4のステップS3を第1選択部13により繰り返すことにより、Y軸方向(第1方向)に間隔を空けて配列され且つレール2aの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上にそれぞれ位置する複数の点PN4(後述する図7参照)の3次元座標を算出し、算出された複数の点PN4の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1、を含む中心線の3次元点群データPC3(後述する図7参照)を、第2取得部14により取得する(図4のステップS4)。なお、点PN2(後述する図6参照)を抽出した後のデータであるから、中心線の3次元点群データPC3は、値VL1(後述する図6参照)を含まなくてもよい。
次に、レールの頭頂面の中心線の3次元点群データPC3(後述する図7参照)に基づいて、軌道変位を検測部15により検測する(図4のステップS5)。検測部15による具体的な検測方法については、後述する図5乃至図9を用いて説明する。
次に、検測された軌道変位に3次元座標を付与部16により付与する(図4のステップS6)。付与部16による具体的な付与方法については、後述する図10及び図11を用いて説明する。
ここで、レールを含む軌道の軌道変位又は軌道中心間隔を検測する際の問題点について説明する。
撮像装置により撮像された軌道の画像を画像処理することにより、軌道変位(軌道狂い)を検測する軌道検測方法が提案されている。しかし、従来は、カメラにより撮像された軌道の画像を画像処理することにより軌道変位を検測するためには、地上側に器具又は基準点となる被写体を設置する必要があり、長い区間に亘って軌道変位を検測する場合には、多大な時間と労力が必要になるという問題があった。また、従来は、カメラにより撮像された画像のみから軌道中心間隔を検測することができず、投光器と受像カメラを組み合わせた撮像装置を備えた特殊な車両を用いる必要があり、車両を改造して運用する必要があるという問題があった。また、従来は、計測車両にレーザスキャナを設ける必要があり、カメラにより撮像された画像のみから軌道変位を検測することはできないという問題があった。
上記特許文献1に記載された技術では、カメラが撮影した基準被写体の画像データに基づいて基準点の座標を求め、この基準点の座標に基づいて通り方向及び高低差方向の少なくとも一方の計測誤差最小位置の座標を求める。しかし、上記特許文献1に記載された技術では、レール上に器具又は基準点となる被写体を設置する必要があり、カメラにより撮像された画像のみから軌道変位を検測することはできない。
上記特許文献2に記載された技術では、軌道検測車の走行中に、隣接軌道を照射したスリット光帯を、2個の受像カメラにより適当な時間間隔で撮像し、受像カメラが出力する画像信号に対して、車体の左右動揺データと該軌道検測車の走行距離データとを並列に付加して、データ処理/収録装置に収録する。しかし、上記特許文献2に記載された技術では、投光器と受像カメラとを組み合わせた撮像装置を用いる必要があり、カメラにより撮像された画像のみから軌道中心間隔を検測することはできない。
上記特許文献3に記載された技術では、走行軌跡位置データを基準とした抽出フィルタを設定し、3次元点群データのうちの設定された抽出フィルタに基づいて抽出された領域点群データのうち反射強度の大きさに基づいて軌条頭部を抽出する反射強度フィルタを設定し、抽出された2本の軌条の軌条頭部に基づいて軌条間の中心位置を算出する。しかし、上記特許文献3に記載された技術では、計測車両にレーザスキャナを設ける必要があり、カメラにより撮像された画像のみから軌道変位を検測することはできない。
一方、本実施の形態の軌道検測装置1による軌道検測方法では、軌道検測装置1は、軌道3の周辺の物体の表面の形状を表す複数の点PN1(後述する図5参照)についての3次元座標及び色値又は輝度値を含む線路沿線の3次元点群データPC1(後述する図5参照)を取得し、複数の点PN1のうちレールの頭頂面の形状を表す複数の点PN2(後述する図6参照)を抽出する。また、軌道検測装置1は、抽出された複数の点PN2のうち、Y座標(第1座標)が値VL2(後述する図7参照)を中心とする範囲RN4(後述する図7参照)内である点PN2を点PN3(後述する図7参照)として選択し、選択された点PN3の3次元座標に基づいて、Y座標(第1座標)が値VL2であり且つレールの頭頂面の中心線上に位置する点PN4(後述する図7参照)を算出する第1算出処理を、値VL2を変更しながら繰り返すことにより、レールの長さ方向において間隔を空けて配列され且つレールの頭頂面の中心線上にそれぞれ位置する複数の点PN4についての中心線の3次元点群データPC3(後述する図7参照)を取得し、取得された中心線の3次元点群データPC3に基づいて、軌道変位を検測する。
即ち、本実施の形態の軌道検測装置による軌道検測方法は、営業車両等としての鉄道車両に設置されたカメラにより撮像した線路沿線の画像から画像処理により作成され、色情報又は輝度情報を備えた3次元点群情報に基づいて、軌道変位又は軌道中心間隔を計測することにより、前述した課題を解決するものである。
このような場合、営業車両若しくは保守用車両等の鉄道車両の車上又は地上で撮影した線路沿線の画像から軌道変位を容易に計測することができる。そのため、カメラにより撮像された画像のみから軌道変位を検測することができ、地上側に器具又は基準点となる被写体を設置する必要がないので、長い区間に亘って軌道の軌道変位を検測する場合でも、軌道変位を検測するために必要な時間及び労力を低減することができる。また、カメラにより撮像された画像のみから軌道中心間隔を検測することができ、投光器又は受像カメラを備えた特殊な鉄道車両を用いる必要がないので、鉄道車両を改造して運用する必要がない。また、カメラにより撮像された画像のみから軌道変位を検測することができ、計測車両にレーザスキャナを設ける必要がない。
なお、本実施の形態の軌道検測装置による軌道検測方法は、前述したように、カメラにより撮像された画像から画像処理により作成された3次元点群情報の他、画像処理以外の方法により作成され、色情報又は輝度情報を備えた3次元点群情報に基づいて、軌道変位又は軌道中心間隔を計測する場合にも、適用可能である。
<線路沿線の3次元点群データの取得方法>
次に、本実施の形態の軌道検測装置による軌道検測方法の好適例及び具体例について説明する。初めに、図5を参照し、線路沿線の3次元点群データを取得する方法(図4のステップS1)について説明する。
図5は、線路沿線の3次元点群データの一例を示す図である。図5(a)は、線路沿線の3次元点群データの一例を示している。図5(b)は、図5(a)に示す線路沿線の3次元点群データをXY座標系(XY平面)で示し、図5(c)は、図5(a)に示す線路沿線の3次元点群データをXZ座標系(XZ平面)で示している。
図3に示すように、好適には、本実施の形態の軌道検測装置1は、第3取得部17を有する。第3取得部17として、前述した第1取得部11等と同様に、コンピュータ8を用いることができる。
図4のステップS1の前に、第3取得部17は、軌道3aの画像を撮像する撮像部4が搭載された鉄道車両5が軌道3a上を走行する際に、軌道3aの画像を撮像部4により撮像する撮像処理を繰り返すことにより、互いに異なる複数の時点の各々で軌道3aがそれぞれ撮像された複数の画像を含む画像群を取得する(図4のステップS7)。
また、第3取得部17は、図4のステップS7では、取得された画像群に含まれる複数の画像に基づいて、軌道3aの表面及び軌道3aの周辺の物体の表面の形状を表す複数の点PN1の各々についての、Y´軸方向(第4方向)におけるY´座標(第4座標)、Y´軸方向(第4方向)と交差するX´軸方向(第5方向)におけるX´座標(第5座標)、Y´軸方向(第4方向)及びX´軸方向(第5方向)のいずれとも交差するZ´軸方向(第6方向)におけるZ´座標(第6座標)、並びに、値VL1(後述する図6参照)、を含む線路沿線の3次元点群データPC4を取得する。
また、第1取得部11は、図4のステップS1では、ステップS7にて取得された線路沿線の3次元点群データPC4に含まれるY´座標(第4座標)、X´座標(第5座標)及びZ´座標(第6座標)について座標変換を行うことにより、複数の点PN1の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(後述する図6参照)、を含む線路沿線の3次元点群データPC1を取得する。なお、図5(a)では、理解を簡単にするために、X´Y´Z´座標系をXYZ座標系と同一の座標系として示しているが、実際には、X´Y´Z´座標系はXYZ座標系と異なる座標系である。
これにより、鉄道車両若しくは保守用車等の車上若しくは地上で撮影した各種の画像から画像処理により、又は、その他の各種の方法により、作成し、輝度値又はRGB値を備えた3次元点群に対して、Y軸がレールが延在する方向(線路長手方向)であり、XY座標系(平面)が軌道(線路)を含む平面であり、YZ座標系(平面)が軌道(線路)の縦断面になるように、容易に座標変換を行うことができる。
更に好適には、撮像部4は、鉄道車両5の先頭に搭載され、X軸方向(第2方向)に間隔を空けて設置され、Y軸方向(第1方向)における前方をそれぞれ向くように設置され、且つ、軌道3aの画像をそれぞれカメラ6として撮像するステレオカメラであるカメラ6a及びカメラ6bを含む。
また、第3取得部17は、図4のステップS7では、第1取得処理(図4のステップS11)と、ステレオマッチング処理(図4のステップS12)と、繰り返し処理(図4のステップS13)と、を含む第2取得処理(図4のステップS14)を実行することにより、画像群に含まれる複数の画像に基づいて、線路沿線の3次元点群データPC4を取得する。
まず、第3取得部17は、第1取得処理(図4のステップS11)では、鉄道車両5が軌道3a上を走行する際に、軌道3aの画像をカメラ6a及びカメラ6bにより撮像する撮像処理を繰り返すことにより、互いに異なる複数の時点(位置)の各々で軌道3aがカメラ6aによりそれぞれ撮像された複数の左画像、及び、互いに異なる複数の時点(位置)の各々で軌道3aがカメラ6bによりそれぞれ撮像された複数の右画像、を含む画像群を取得する。
次に、第3取得部17は、ステレオマッチング処理(図4のステップS12)では、第1取得処理(図4のステップS11)にて取得された画像群に含まれる複数の左画像及び複数の右画像のうち、第1時点(同一時点)でそれぞれ撮像された左画像及び右画像の第1組を選択し、選択された第1組に含まれる左画像及び右画像に共通する特徴点をペアリングすることで、ステレオマッチングを行う。
具体的には、カメラにより撮像される画像は、撮影条件の変化により、光学的又は幾何学的に変動しやすく、単純に複数の画像(フレーム)の間で被写体が一致する一致点を特徴として取得することは、容易ではない。そのため、ステレオカメラにより撮像される左右画像(左右映像)に対して、比較的一致点を取得しやすい物体の輪郭又は物体の色変化の端点を特徴点として抽出し、左右画像の各々で抽出された特徴点のうち類似した特徴点をペアリングすることで、ステレオマッチングを行う。
このような方法により、カメラにより撮像される画像が、撮影条件の変化により、光学的又は幾何学的に変動した場合でも、複数の画像(フレーム)の間で被写体が一致する一致点を特徴点として精度良く取得することができる。
また、第3取得部17は、繰り返し処理(図4のステップS13)では、選択される第1組を変更しながらステレオマッチング処理を繰り返す。このような方法により、前後2つのフレームの間に鉄道車両が移動した移動量を、精度良く算出することができるので、軌道周辺の物体の表面の形状を表す複数の点PN1の各々について、3次元座標を精度良く算出することができ、高精度の3次元座標を含む線路沿線の3次元点群データPC4を容易に取得することができる。即ち、本実施の形態の軌道検測装置は、車載カメラの進行方向(線路長手方向)に対してステレオマッチングを繰り返して3次元計測を行い、レールを含む線路沿線の点群データを取得するものである。
<頭頂面の3次元点群データの取得方法>
次に、図6を参照し、線路沿線の3次元点群データから、レールの頭頂面の形状を表す、頭頂面の3次元点群データを取得する方法(図4のステップS2)について説明する。
図6は、線路沿線の3次元点群データから頭頂面の3次元点群データを抽出して取得する方法を説明するための図である。図6(a)は、線路沿線の3次元点群データ、レールの頭頂面上の4点のX座標、Z座標及びRGBの各値、並びに、X座標、Z座標及びRGBの各値の範囲を示している。図6(a)に示す線路沿線の3次元点群データは、図5(a)に示す線路沿線の3次元点群データの一部に相当する。図6(b)は、頭頂面の3次元点群データを示し、図6(c)は、図6(b)に示す頭頂面の3次元点群データをXY座標系(XY平面)で示し、図6(d)は、図6(b)に示す頭頂面の3次元点群データをYZ座標系(YZ平面)で示している。なお、X座標、Z座標及びRGB値の各値及び各範囲として図6に記載された具体的数値は、あくまで一例を示したものであり、X座標、Z座標及びRGB値の各値及び各範囲は、図6に記載された数値に限定されるものではない。
前述したように、第1抽出部12は、図4のステップS2では、複数の点PN1の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1、が線路沿線の3次元点群データPC1に含まれる複数の点PN1のうち、X座標(第2座標)が範囲RN1内であり、Z座標(第3座標)が範囲RN2内であり、且つ、値VL1が範囲RN3内である点PN1を、レール2aの頭頂面の形状を表す点PN2としてそれぞれ抽出することにより、レール2aの頭頂面の形状を表す複数の点PN2の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1、を含む頭頂面の3次元点群データPC2を取得する。
言い換えれば、第1抽出部12は、図4のステップS2では、色情報又は輝度情報を備えた線路沿線の物体の表面の形状を表す複数の点PN1についての線路沿線の3次元点群データPC1のうち、一定の範囲内の値を有する色情報又は輝度情報を指定することにより、レールの頭頂面の形状を表す複数の点PN2についての頭頂面の3次元点群データPC2のみを抽出する。
更に言い換えれば、第1抽出部12は、図4のステップS2では、図4のステップS1にて取得された線路沿線の3次元点群データPC1のうち、レールの頭頂面の形状を表す複数の点PN2が取り得るX軸方向(レールの幅方向)のX座標、Z軸方向(レールの高さ方向)のZ座標、及び、色値であるRGB値の範囲を指定することにより、一定の範囲内の値を有する3次元点群データのみを抽出することにより、レールの頭頂面の形状を表す複数の点PN2のみについての3次元座標を取得する。
図6に示す例では、複数の点PN1のうち、X座標が10≦X≦16の範囲内であり、Z座標が130≦Z≦136の範囲内であり、R値(赤色値)が30≦R≦42の範囲内であり、G値(緑色値)が45≦G≦52の範囲内であり、B値(青色値)が58≦B≦65の範囲内である点PN1を、レール2aの頭頂面の形状を表す点PN2としてそれぞれ抽出することにより、レール2aの頭頂面の形状を表す4つの点PN2として、図6(a)の頭頂面上の4点である点P1乃至点P4の各々を抽出した例を示している。
前述したように、上記特許文献3に記載された技術では、走行軌跡位置データを基準とした抽出フィルタを設定し、3次元点群データのうちの設定された抽出フィルタに基づいて抽出された領域点群データのうち反射強度の大きさに基づいて軌条頭部を抽出する。反射強度に基づいて抽出する場合、画像を撮像された日時の天候即ち日照条件等によって、反射強度が異なるため、範囲の設定が困難であるか、適切に範囲を設定できないおそれがあり、レールの頭頂面の形状を表す3次元点群データを正確に抽出することができないおそれがある。
一方、本実施の形態では、RGB値の範囲を指定して、範囲内の点群のみを抽出することでレール頭頂面のみのXYZ座標を取得する。このような場合、RGBの3つの値の範囲を個別に設定することができるので、単に反射強度の範囲を設定して、範囲内の点群のみを抽出する場合よりも、範囲を細かく設定することができ、画像を撮像された日時の天候即ち日照条件等によって、反射強度が異なる場合でも、レールの頭頂面の形状を表す3次元点群データをより正確に抽出することができる。
<中心線の3次元点群データの取得方法>
次に、図7及び図8を参照し、レールの頭頂面の中心線を表す、中心線の3次元点群データを算出する方法(図4のステップS3及びステップS4)について説明する。
図7は、中心線の3次元点群データを取得する方法を説明するための図である。図7(a)は、頭頂面の3次元点群データを近似する近似範囲をXY座標系(XY平面)で示している。図7(b)は、頭頂面の3次元点群データを近似する近似範囲をYZ座標系(YZ平面)で示している。図7(a)及び図7(b)では、近似範囲を、破線で表された矩形により示している。図7(c)は、中心線の3次元点群データをXY座標系(XY平面)で示している。図7(d)は、中心線の3次元点群データをYZ座標系(YZ平面)で示している。図8は、分岐器に含まれるレールを示す平面図である。
好適には、第1選択部13は、図4のステップS3では、複数の点PN2の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が頭頂面の3次元点群データPC2に含まれる複数の点PN2のうち、Y座標(第1座標)がY軸方向(第1方向)において値VL2を中心とする範囲RN4内である点PN2を点PN3としてそれぞれ選択し、選択された複数の点PN3の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)及びZ座標(第3座標)、に基づいて、レール2aの頭頂面を近似する第1近似面(図示は省略)を算出し、算出された第1近似面と、Y座標(第1座標)が値VL2に等しい点PN5を通り且つY軸方向(第1方向)に垂直な第1垂直面(図示は省略)と、の第1交線(図示は省略)を算出し、第1交線上の点PN6であって第1交線をZ軸方向(第3方向)から視たときにX軸方向(第2方向)において第1交線上の中央に位置する点PN6を、点PN4として算出する第1算出処理を実行する。
また、前述したように、第2取得部14は、図4のステップS4では、値VL2を変更しながら第1選択部13による第1算出処理を繰り返すことにより、Y軸方向(第1方向)に間隔を空けて配列され且つレール2aの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上にそれぞれ位置する複数の点PN4を算出し、算出された複数の点PN4の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、を含む中心線の3次元点群データPC3を取得する。
このような方法でレールの頭頂面の中心線の3次元座標を算出する場合、Y軸方向(レールが延在する方向)にある程度の広がりを持たせた近似範囲でレールの頭頂面を近似する近似面を算出し、算出された近似面の中央に位置する点の3次元座標を、レールの頭頂面の中心線上の点の3次元座標として算出することになる。そのため、レールの頭頂面の中心線の3次元座標を正確に算出することができる。
ここで、複数の点PN1(図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が線路沿線の3次元点群データPC1に含まれる複数の点PN1が、Z軸方向(第3方向)から視たときにY軸方向(第1方向)及びX軸方向(第2方向)に配列されているものの、複数の点PN1のY軸方向(第1方向)における間隔が、一定でない場合を考える。例えば、軌道の画像を撮像する撮像部4が搭載された鉄道車両5が軌道3a上を走行する際に、鉄道車両5の走行速度が一定でない場合には、複数の点PN1のY軸方向(第1方向)における間隔が、一定でないことがあり得る。
このような場合、第2取得部14は、図4のステップS4では、値VL2を値VL3ずつ増加させながら第1選択部13による第1算出処理を繰り返すことにより、Y軸方向(第1方向)に値VL3に等しい一定の間隔を空けて配列され且つレール2aの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上にそれぞれ位置する複数の点PN4を算出し、算出された複数の点PN4の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、を含む中心線の3次元点群データPC3を取得する。
言い換えれば、第2取得部14は、図4のステップS3及びステップS4では、図4のステップS2にて抽出されたレールの頭頂面の形状を表す、頭頂面の3次元点群データPC2に対して、XY座標系及びYZ座標系の各々において、近似範囲をY軸方向に移動しながら、最小二乗法又はスプライン補間等の一般的な数式又は関数で近似する。このような方法により、撮像部4が搭載された鉄道車両5が軌道3a上を走行する際に、鉄道車両5の走行速度が一定でない場合でも、Y座標が等距離間隔となるようなレールの頭頂面の中心線の3次元座標を算出することができ、軌道変位を等距離間隔で検測することができる。
また、言い換えれば、第2取得部14は、図4のステップS3及びステップS4では、図4のステップS2にて抽出されたレールの頭頂面の形状を表す、頭頂面の3次元点群データPC2に対して、近似範囲をY軸方向に一定間隔で移動させながら、適切な関数で近似する。このような方法により、撮像部4が搭載された鉄道車両5が軌道3a上を走行する際に、鉄道車両5の走行速度が一定でない場合でも、Y座標の間隔が等距離間隔となるようなレールの頭頂面の中心線の3次元座標を算出することができ、軌道変位を等距離間隔で検測することができる。
図8に示すように、軌道3aには、軌道3a即ちレール2aを分岐させるための分岐器21が存在し、分岐器21には、車輪のフランジが通過することができるように、レール22が欠損した欠線部23と称される隙間が存在する。なお、図8は、レール22としてのリードレール22a、ウィングレール22b、ノーズレール22c、レール24としてのリードレール24a、ウィングレール24b及びノーズレール24cを示している。
このような場合、軌道3aは、Y軸方向(第1方向)に延在するレール22を含む分岐器21と接続され、レール2aは、レール22と接続され、レール22は、欠線部23を含むことになる。また、好適には、Y軸方向(第1方向)における範囲RN4の長さは、Y軸方向(第1方向)における欠線部23の長さLN1よりも長い。このような場合、近似範囲が欠線部23の長さよりも長くなるので、分岐器21においても、レールの頭頂面の中心線の3次元座標を正確に算出することができる。
即ち、Y軸方向(レールが延在する方向)にある程度の広がりを持たせた近似範囲でレールの頭頂面を近似することにより、レール継目部又は分岐器のクロッシング部のように、レールの頭頂面の3次元点群データが欠損する箇所、又は、レールの頭頂面の3次元点群データが粗になる箇所が存在した場合でも、レールの頭頂面の中心線を安定して算出することができる。
<軌道変位及び軌道中心間隔の算出方法>
次に、図3、図4及び図9を参照し、軌道変位及び軌道中心間隔を算出する方法(図4のステップS5)について説明する。
図9は、軌道変位及び軌道中心間隔を算出する方法を説明するための図である。図9(a)は、高低変位を算出する方法を説明するための図である。図9(b)は、通り変位を算出する方法を説明するための図である。図9(c)は、軌間変位及び水準変位を算出する方法を説明するための図である。
まず、高低変位及び通り変位を算出する方法を説明する。
図3に示すように、検測部15は、第2選択部31と、第1算出部32と、を含む。第2選択部31及び第1算出部32として、前述した第1取得部11等と同様に、コンピュータ8を用いることができる。
第2選択部31は、図4のステップS5では、複数の点PN4の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が中心線の3次元点群データPC3に含まれる複数の点PN4のうち、Y軸方向(第1方向)に値VL3(図7参照)のN倍(Nは2以上の整数)である値VL4に等しい一定の間隔を空けて順次配置された3つの点PN4である、点PN5、点PN6及び点PN7を選択する。
また、第1算出部32は、図4のステップS5では、点PN5である点PN4のZ座標(第3座標)、点PN6である点PN4のZ座標(第3座標)、及び、点PN7である点PN4のZ座標(第3座標)、に基づいて、点PN6におけるレール2aの高低変位を算出する。
言い換えれば、検測部15は、図4のステップS5では、図4のステップS4にて取得された片側のレールの頭頂面の中心線の3次元座標のうち、YZ平面上の任意の2点の中点の3次元座標と、中心線上の点であって中点のY座標と等しいY座標を有する点(中点の中心線上へのZ軸方向における投影点)の3次元座標と、に基づいて、中点と投影点とのZ軸方向における距離から高低変位を算出する。この処理をY軸方向に連続して行うことにより、即ち選択される点PN5、点PN6及び点PN7を変更しながら高低変位の算出を繰り返すことにより、3次元点群データが取得された軌道区間の全体における高低変位を計測する。
具体的には、図9(a)に示すように、点A(点PN5)の3次元座標を(xA,yA,zA)とし、点B(点PN6)の3次元座標を(xB,yB,zB)とし、点C(点PN7)の3次元座標を(xC,yC,zC)とする。このような場合において、点B(点PN6)の高低変位は、以下の数式(1)で表される。
高低変位=zB-(zA+zC)/2・・・(1)
(但し、|yA-yB|=|yB-yC|)
このような方法により、3次元点群データが取得された軌道区間の全体に亘り、高低変位を、容易且つ精度良く検測することができる。
また、第1算出部32は、図4のステップS5では、点PN5である点PN4のX座標(第2座標)、点PN6である点PN4のX座標(第2座標)、及び、点PN7である点PN4のX座標(第2座標)、に基づいて、点PN6におけるレール2aの通り変位を算出する。
言い換えれば、検測部15は、図4のステップS5では、図4のステップS4にて取得された片側のレールの頭頂面の中心線の3次元座標のうち、XY平面上の任意の2点の中点の3次元座標と、中心線上の点であって中点のY座標と等しいY座標を有する点(中点の中心線上へのX軸方向における投影点)の3次元座標と、に基づいて、中点と投影点とのX軸方向における距離から通り変位を算出する。この処理をY軸方向に連続して行うことにより、即ち選択される点PN5、点PN6及び点PN7を変更しながら通り変位の算出を繰り返すことにより、3次元点群データが取得された軌道区間の全体における通り変位を計測する。
具体的には、図9(b)に示すように、点A(点PN5)の3次元座標を(xA,yA,zA)とし、点B(点PN6)の3次元座標を(xB,yB,zB)とし、点C(点PN7)の3次元座標を(xC,yC,zC)とする。このような場合において、点Bの通り変位は、以下の数式(2)で表される。
通り変位=xB-(xA+xC)/2・・・(2)
(但し、|yA-yB|=|yB-yC|)
或いは、点Bの通り変位は、以下の数式(3)で表される。
通り変位=(xA+xC)/2-xB・・・(3)
(但し、|yA-yB|=|yB-yC|)
このような方法により、3次元点群データが取得された軌道区間の全体に亘り、通り変位を、容易且つ精度良く検測することができる。
次に、軌間変位及び水準変位を算出する方法を説明する。軌間変位及び水準変位を算出する場合には、軌道に含まれる2本のレールの中心線同士で2点間距離の最小値を算出する。
軌間変位及び水準変位を算出する場合、軌道検測装置1は、平面視でY軸方向(第1方向)に延在し且つ平面視でX軸方向(第2方向)にレール2aと間隔を空けて配置されたレール2b(図2参照)を含む軌道3aの軌道変位を検測する。また、図3に示すように、軌道検測装置1は、更に、第2抽出部42と、第3選択部43と、第4取得部44と、を有する。第2抽出部42、第3選択部43及び第4取得部44として、前述した第1取得部11等と同様に、コンピュータ8を用いることができる。
第2抽出部42は、図4のステップS2では、複数の点PN1(図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が線路沿線の3次元点群データPC1(図6参照)に含まれる複数の点PN1のうち、X座標(第2座標)が範囲RN5(図6参照)内であり、Z座標(第3座標)が範囲RN6(図6参照)内であり、且つ、値VL1が範囲RN7(図6参照)内である点PN1を、レール2bの頭頂面の形状を表す点PN8(図6参照)としてそれぞれ抽出することにより、レール2bの頭頂面の形状を表す複数の点PN8の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1、を含む頭頂面の3次元点群データPC5(図6参照)を取得する。
第3選択部43は、図4のステップS3では、複数の点PN8(図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が頭頂面の3次元点群データPC5(図6参照)に含まれる複数の点PN8のうち、Y座標(第1座標)がY軸方向(第1方向)において値VL5(図7参照)を中心とする範囲RN8(図7参照)内である点PN8を点PN9(図7参照)としてそれぞれ選択し、選択された複数の点PN9の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)及びZ座標(第3座標)、に基づいて、Y座標(第1座標)が値VL5であり且つレール2bの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上に位置する点PN10(図7参照)、を算出する第2算出処理を実行する。
なお、好適には、第3選択部43は、図4のステップS3では、複数の点PN8(図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が頭頂面の3次元点群データPC5(図6参照)に含まれる複数の点PN8のうち、Y座標(第1座標)がY軸方向(第1方向)において値VL5(図7参照)を中心とする範囲RN8(図7参照)内である点PN8を点PN9(図7参照)としてそれぞれ選択し、選択された複数の点PN9の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)及びZ座標(第3座標)、に基づいて、レール2bの頭頂面を近似する第2近似面(図示は省略)を算出し、算出された第2近似面と、Y座標(第1座標)が値VL5に等しい点PN91(図7参照)を通り且つY軸方向(第1方向)に垂直な第2垂直面(図示は省略)と、の第2交線(図示は省略)を算出し、第2交線上の点PN92(図7参照)であって第2交線をZ軸方向(第3方向)から視たときにX軸方向(第2方向)において第2交線上の中央に位置する点PN92を、点PN10(図7参照)として算出する第2算出処理を実行する。
このような方法でレールの頭頂面の中心線の3次元座標を算出する場合、Y軸方向(レールが延在する方向)にある程度の広がりを持たせた近似範囲でレールの頭頂面を近似する近似面を算出し、算出された近似面の中央に位置する点の3次元座標を、レールの頭頂面の中心線上の点の3次元座標として算出することになる。そのため、レール頭頂面の中心線の3次元座標を正確に算出することができる。
また、第4取得部44は、図4のステップS4では、値VL5(図7参照)を値VL6(図7参照)ずつ増加させながら第3選択部43による第2算出処理を繰り返すことにより、Y軸方向(第1方向)に値VL6に等しい一定の間隔を空けて配列され且つレール2bの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上にそれぞれ位置する複数の点PN10(図7参照)を算出し、算出された複数の点PN10の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、を含む中心線の3次元点群データPC6(図9参照)を取得する。
軌間変位又は水準変位を算出する場合、図3に示すように、検測部15は、第4選択部51と、第2算出部52と、を含む。第4選択部51及び第2算出部52として、前述した第1取得部11等と同様に、コンピュータ8を用いることができる。
第4選択部51は、図4のステップS5では、複数の点PN4の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が中心線の3次元点群データPC3(図7参照)に含まれる複数の点PN4のうち、いずれかの点PN4である点PN11(図9参照)を選択する。
また、第2算出部52は、図4のステップS5では、複数の点PN10の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が中心線の3次元点群データPC6に含まれる複数の点PN10のうち、点PN11との距離が最小になる点PN10である点PN12を探索し、点PN12と点PN11との間の第1距離に基づいて、点PN11における軌間変位を算出するか、又は、点PN12のZ座標(第3座標)、及び、点PN11のZ座標(第3座標)、に基づいて、点PN11における水準変位を算出する。
言い換えれば、検測部15は、図4のステップS5では、左右の2本のレールの頭頂面の中心線の3次元座標に基づいて、2点間の距離が最小になるような2点間の距離から軌間変位を算出するか、又は、同じ2点間のZ座標の差分から水準変位を算出する。この処理をY軸方向に連続して行うことにより、即ち選択される点PN11を変更しながら通り変位の算出を繰り返すことにより、3次元点群データが取得された軌道区間の全体における軌間変位又は水準変位を計測する。
具体的には、図9(c)に示すように、点L(点PN11)の3次元座標を(xL,yL,zL)とし、点R(点PN12)の3次元座標を(xR,yR,zR)とする。このような場合において、点Lにおける軌間変位は、以下の数式(4)で表され、点Lにおける水準変位は、以下の数式(5)又は数式(6)で表される。
軌間変位=[(xL-xR)2+(yL-yR)2+(zL-zR)2]1/2・・・(4)
水準変位=zL-zR・・・(5)
水準変位=zR-zL・・・(6)
このような方法により、3次元点群データが取得された軌道区間の全体に亘り、軌間変位又は水準変位を、容易且つ精度良く検測することができる。
次に、軌道中心間隔を算出する方法を説明する。軌道中心間隔を算出する場合にも、軌間変位及び水準変位を算出する場合と同様に、2本のレールの中心線同士で2点間距離の最小値を算出する。
軌道中心間隔を算出する場合、軌道検測装置1は、平面視でY軸方向(第1方向)に延在し且つ平面視においてX軸方向(第2方向)で軌道3aと隣り合う軌道3b(図2参照)の軌道変位を検測する。軌道3aは、平面視でY軸方向(第1方向)に延在し且つ平面視でX軸方向(第2方向)にレール2aと間隔を空けて配置されたレール2bを含み、軌道3bは、平面視でY軸方向(第1方向)にそれぞれ延在し且つX軸方向(第2方向)に互いに間隔を空けて配置されたレール2c(図2参照)及びレール2d(図2参照)を含み、軌道3bに含まれるレール2cは、平面視においてX軸方向(第2方向)で、軌道3aに含まれるレール2bと隣り合う。また、図3に示すように、軌道検測装置1は、更に、第3抽出部62と、第5選択部63と、第5取得部64と、を有する。第3抽出部62、第5選択部63及び第5取得部64として、前述した第1取得部11等と同様に、コンピュータ8を用いることができる。
第1取得部11は、図4のステップS1では、軌道3aの表面、軌道3bの表面、並びに、軌道3a及び軌道3bの周辺の物体の表面、の形状を表す複数の点PN1の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、を含む線路沿線の3次元点群データPC1(図6参照)を取得する。
第3抽出部62は、図4のステップS2では、複数の点PN1(図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が線路沿線の3次元点群データPC1(図6参照)に含まれる複数の点PN1のうち、X座標(第2座標)が範囲RN9(図6参照)内であり、Z座標(第3座標)が範囲RN10(図6参照)内であり、且つ、値VL1が範囲RN11(図6参照)内である点PN1を、レール2cの頭頂面の形状を表す点PN13(図6参照)としてそれぞれ抽出することにより、レール2cの頭頂面の形状を表す複数の点PN13の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、を含む頭頂面の3次元点群データPC7(図6参照)を取得する。
第5選択部63は、図4のステップS3では、複数の点PN13(図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が頭頂面の3次元点群データPC7(図6参照)に含まれる複数の点PN13のうち、Y座標(第1座標)がY軸方向(第1方向)において値VL7(図7参照)を中心とする範囲RN12内である点PN13を点PN14(図7参照)としてそれぞれ選択し、選択された複数の点PN14の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)及びZ座標(第3座標)、に基づいて、Y座標(第1座標)が値VL7であり且つレール2cの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上に位置する点PN15(図7参照)、を算出する第3算出処理を実行する。
なお、好適には、第5選択部63は、図4のステップS3では、複数の点PN13(図6参照)の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が頭頂面の3次元点群データPC7(図6参照)に含まれる複数の点PN13のうち、Y座標(第1座標)がY軸方向(第1方向)において値VL7(図7参照)を中心とする範囲RN12(図7参照)内である点PN13を点PN14(図7参照)としてそれぞれ選択し、選択された複数の点PN14の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)及びZ座標(第3座標)、に基づいて、レール2cの頭頂面を近似する第3近似面(図示は省略)を算出し、算出された第3近似面と、Y座標(第1座標)が値VL7に等しい点PN141(図7参照)を通り且つY軸方向(第1方向)に垂直な第3垂直面(図示は省略)と、の第3交線(図示は省略)を算出し、第3交線上の点PN142(図7参照)であって第3交線をZ軸方向(第3方向)から視たときにX軸方向(第2方向)において第3交線上の中央に位置する点PN142を、点PN15として算出する第3算出処理を実行する。
このような方法でレールの頭頂面の中心線の3次元座標を算出する場合、Y軸方向(レールが延在する方向)にある程度の広がりを持たせた近似範囲でレールの頭頂面を近似する近似面を算出し、算出された近似面の中央に位置する点の3次元座標を、レールの頭頂面の中心線上の点の3次元座標として算出することになる。そのため、レール頭頂面の中心線の3次元座標を正確に算出することができる。
また、第5取得部64は、図4のステップS4では、値VL7(図7参照)を値VL8(図7参照)ずつ増加させながら第5選択部63による第3算出処理を繰り返すことにより、Y軸方向(第1方向)に値VL8に等しい一定の間隔を空けて配列され且つレール2cの頭頂面のX軸方向(第2方向)における中心線上にそれぞれ位置する複数の点PN15を算出し、算出された複数の点PN15の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、を含む中心線の3次元点群データPC8を取得する。
軌道中心間隔を算出する場合、図3に示すように、検測部15は、第6選択部71と、第3算出部72と、を含む。第6選択部71及び第3算出部72として、前述した第1取得部11等と同様に、コンピュータ8を用いることができる。
第6選択部71は、図4のステップS5では、複数の点PN4の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が中心線の3次元点群データPC3に含まれる複数の点PN4のうち、いずれかの点PN4である点PN16を選択する。
また、第3算出部72は、図4のステップS5では、複数の点PN15の各々についての、Y座標(第1座標)、X座標(第2座標)、Z座標(第3座標)及び値VL1(図6参照)、が中心線の3次元点群データPC8に含まれる複数の点PN15のうち、点PN16との距離が最小になる点PN15である点PN17を探索し、点PN17と点PN16との間の第2距離に基づいて、点PN16における軌道中心間隔を算出する。
言い換えれば、例えば複線区間等、当該線と隣接線とが設けられている場合には、本実施の形態の軌道検測装置は、図4のステップS1乃至ステップS4の処理を当該線のみならず隣接線のレールに対しても実行し、検測部15は、図4のステップS5では、当該線及び隣接線の各々の右のレール同士か左のレール同士である2本のレールの頭頂面の中心線の3次元座標に基づいて、2点間の距離が最小になるような2点間の距離から軌道中心間隔を算出する。この処理をY軸方向に連続して行うことにより、即ち選択される点PN16を変更しながら軌道中心間隔の算出を繰り返すことにより、3次元点群データが取得された軌道区間の全体における軌道中心間隔を計測する。
具体的には、図9(c)に示したように、軌間変位を算出する際に軌道に含まれる2本のレール同士の間で2点間距離の最小値を算出した方法を、当該軌道及びその軌道と隣り合う軌道の右レール同士又は左レール同士に対して行うことにより、軌道中心間隔を算出することができる。
このような方法により、複線区間を撮影した線路沿線の画像から3次元点群データが取得された軌道区間の全体に亘り、軌道中心間隔を、容易且つ精度良く検測することができる。
<軌道変位への3次元座標付与方法>
次に、図10及び図11を参照し、検測された軌道変位に3次元座標を付与する方法(図4のステップS6)について説明する。
図10及び図11は、検測された軌道変位に3次元座標を付与する方法を説明するための図である。図10(a)は、高低変位に3次元座標を付与する方法を説明するための図である。図10(b)は、通り変位に3次元座標を付与する方法を説明するための図である。図10(c)は、軌間変位及び水準変位に3次元座標を付与する方法を説明するための図である。図11(a)は、検測された高低変位に3次元座標を付与して得られたデータを、レールの頭頂面の3次元点群データと重ねて示している。図11(b)は、図11(a)に示すデータをYZ座標系(YZ平面)で示している。
付与部16(図3参照)は、図4のステップS6では、図4のステップS4にて取得されたレールの頭頂面の中心線の3次元座標を基準として、図4のステップS5にて得られた軌道変位又は軌道中心間隔の測定値に3次元座標を付与することにより、軌道変位又は軌道中心間隔のY座標依存性を示す波形を、図4のステップS1にて取得された線路沿線の3次元点群データPC1(図6参照)と重ねて表示する。また、同様に、付与部16は、図4のステップS6では、図4のステップS4にて取得されたレールの頭頂面の中心線の3次元座標を基準として、各種の軌道変位又は軌道中心間隔の測定値に対する閾値に3次元座標を付与することにより、閾値を表す基準線を、図4のステップS1にて取得された線路沿線の3次元点群データPC1と重ねて表示する。
言い換えれば、付与部16は、図4のステップS6では、図4のステップS4にて取得されたレールの頭頂面の中心線の3次元座標に対して、図4のステップS5にて算出された軌道変位又は軌道中心間隔の測定値を加算することにより、各測定値に3次元座標を付与する。このような方法により、軌道変位又は軌道中心間隔の測定値を、3次元点群データとして、容易に可視化することができる。
或いは、付与部16は、図4のステップS6では、図4のステップS4にて取得されたレールの頭頂面の中心線の3次元座標に対して、図4のステップS5にて算出された軌道変位又は軌道中心間隔の測定値に一定の倍率を乗じて得た値を加算することにより、各測定値に3次元座標を付与することもできる。このような倍率を乗じることにより、測定値を強調することができるので、軌道変位又は軌道中心間隔の測定値を、3次元点群データとして、更に容易に可視化することができる。
具体的には、図10(a)に示すように、点A(点PN5)の3次元座標を(xA,yA,zA)とし、点B(点PN6)の3次元座標を(xB,yB,zB)とし、点C(点PN7)の3次元座標を(xC,yC,zC)とする。このような場合において、点Bの高低変位の3次元座標は、以下の数式(7)で算出することができる。
高低変位の3次元座標=(xB,yB,zB+(点Bの高低変位))・・・(7)
このような方法により、図11(a)及び図11(b)に示すように、高低変位のY座標依存性を容易に可視化することができる。また、同様にして、高低変位が計測された軌道区間の全体に亘り、高低変位のY座標依存性を容易に可視化することができる。
また、具体的には、図10(b)に示すように、点A(点PN5)の3次元座標を(xA,yA,zA)とし、点B(点PN6)の3次元座標を(xB,yB,zB)とし、点C(点PN7)の3次元座標を(xC,yC,zC)とする。このような場合において、点Bの通り変位の3次元座標は、以下の数式(8)で表される。
通り変位の3次元座標=(xB+(点Bの通り変位),yB,zB)・・・(8)
このような方法により、通り変位が計測された軌道区間の全体に亘り、通り変位のY座標依存性を容易に可視化することができる。
また、具体的には、図10(c)に示すように、点L(点PN11又はPN16)の3次元座標を(xL,yL,zL)とし、点R(点PN12又はPN17)の3次元座標を(xR,yR,zR)とする。このような場合において、点Lにおける軌間変位の3次元座標は、以下の数式(9)で表され、点Lにおける水準変位の3次元座標は、以下の数式(10)で表される。
軌間変位の3次元座標=((xL+xR)/2+(点Lにおける軌間変位),(yL+yR)/2,(zL+zR)/2)・・・(9)
水準変位の3次元座標=((xL+xR)/2,(yL+yR)/2,(zL+zR)/2+(点Lにおける水準変位))・・・(10)
このような方法により、軌間変位又は水準変位が計測された軌道区間の全体に亘り、軌間変位又は水準変位のY座標依存性を容易に可視化することができる。
なお、図10(a)乃至図10(c)は、軌道変位に3次元座標を付与する付与方法の一例を例示したものである。そのため、軌道変位に3次元座標を付与する付与方法としては、レール頭頂面の中心線の3次元座標を基準とするものであればよく、図10(a)乃至図10(c)に示す例には限定されない。従って、軌道変位に3次元座標を付与する付与方法としては、他に多数種類の付与方法が想定される。
また、図4のステップS5にて検測された軌道変位又は軌道中心間隔の検測値を、チャートに表示して確認することに加えて、図4のステップS1にて取得された線路沿線の3次元点群データと重ねて表示することにより、検測値と地上側設備との対応関係を、容易に確認することができる。また、図4のステップS5にて検測された軌道変位の検測値と、別の方法で測定した波形データ(軌道変位又は動揺加速度のデータ)と、を波形マッチングし、波形マッチングされた後者の波形データに3次元座標を付与することにより、後者の波形データも、図4のステップS1にて取得された線路沿線の3次元点群データと重ねて表示して確認することができる。
なお、軌道検測車により測定された軌道変位の測定値、又は、車上で測定された動揺加速度の測定値のように、本実施の形態の軌道検測装置とは異なる種類の別の軌道検測装置により測定された測定値に対しても、本実施の形態の軌道検測装置1に含まれる検測部15により検測された軌道変位又は軌道中心間隔と同様に、3次元座標を付与することができる。即ち、本実施の形態の軌道検測装置1に含まれる検測部15により検測された検測値と、レール長手方向の位置を同期させた上で、図4のステップS4にて取得されたレールの頭頂面の中心線の3次元座標を基準とすることにより、3次元座標を付与することができる。これにより、複数の種類の方法により検測された軌道変位又は軌道中心間隔の検測値を互いに比較することができるので、軌道変位又は軌道中心間隔をより高精度で管理することができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。