スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚した上で、周囲の外枠領域及びその内側のラティス構造を対象とする三次元造形物の製造方法及び当該方法に基づく三次元造形物に関する。
スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法は周知である。
上記三次元造形物の製造方法による三次元造形物のうちには、キャビティタイプの金型製品、フィルター用製品のように、造形物内部において通気性、即ちガス抜き構造を要する場合があり、これらの製品の場合には、密度の低い軽量化三次元造形物を製造することに帰する。
このような通気性を要する三次元造形物の製造方法として、例えば特許文献1においては、多孔質構造、即ちポーラス(porous)構造による気体流路を成形しているが、ポーラス構造の気体流路は、固化した材料の密度を低くすることによって生成されている以上、造形物としての強度が小さい一方、気体の流通する流路が不確定であって直線状ではないため、気体の流量が少ないという欠点を免れることができない。
これに対し、特許文献2においては、特定の金属粉末層について、所定のスポット径を有するレーザビームを所定の間隔にて複数回直線状に走査することによって焼結した(N番目の粉末層における第1のラスタ走査線による焼結)後に、その上側に隣接している金属粉末層については、上記直線状の方向と直交する方向に同様のレーザビームによる焼結(N+1番目の粉末層における第2のラスタ走査線による焼結)を行い、各金属粉末の積層と上記のような直交し合う方向のレーザビームによる走査を繰り返すことによるラティス領域1の製造方法を提供している(請求項3及び図4)。
即ち、特許文献2発明においては、ラティス領域1における通気領域の周囲を成形する横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に沿った焼結は、2層毎に交互に焼結されている。
特許文献2の図2を参照する限り、図17(a)に示すように、レーザビームが走査する縦方向又は横方向の何れか一方の方向における焼結ライン4と、スキージ5のスライド方向とが一致しており、このような一致は、三次元造形物の製造におけるスペースを効率的に使用するという技術常識に立脚している。
然るに、スキージ5は、金属粉末層の表面を平坦化するために所定の押圧力を伴ってスライドしているが、スライドに伴って粉末層3を成形する前段階にて、縦方向及び横方向のうち、当該スライド方向と直交する方向のレーザビームの走査によって焼結ライン4の上側をスキージ5がスライドする場合には、押圧する金属粉末層の厚さが、焼結ライン4の上側の部位と当該領域に挟まれている金属粉末層に更に金属粉末層を重畳する部位との間では、たとえスキージ5のスライド方向の幅が焼結層の幅よりも大きいとしても、スキージ5のスライドする方向側の先端からの押圧によって受ける圧縮の程度に相違が必然的に発生する。
このような相違の結果、スキージ5のスライドの後に行われる上記のライン状の焼結と直交する方向によるレーザビームの走査を行った場合には、図17(b)に示すように、上下方向に微細な凹凸を伴う不均一な焼結層が成形されることにならざるを得ない(尚、理解に資するために、図17(b)の凹凸形状は誇大に表示している。)。
しかも特許文献2発明のような2層毎の交互の焼結の場合には、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)とが上下方向にて接し合う二次元の面に沿った結合が実現しているに過ぎず、同一の各粉末層3における交差に基づく重畳した結合が実現していない結果、ラティス領域1の強度は決して十分ではない。
更には、特許文献2発明においては、外枠領域2を図面上表示するも、ラティス領域1の焼結と外枠領域2の焼結とがどのような関係にあるかについて全く説明されていない。
このような特許文献2記載の発明を改善することを目的として、出願人は、特願2020-095202出願において、全周囲が外枠領域によって囲まれ、かつ同一の各粉末層内にて一方側方向における複数の平行な焼結ラインと他方側方向における複数の平行な焼結ラインとの交差によって、強固な結合によるラティス領域を確保し得る構成(以下「先願構成」と称する。)を提唱している。
しかしながら、先願構成の場合にも、一方側方向及び他方側方向による双方の走査ラインを設定することを必要とするため、制御が多少煩雑であって、作業効率は必ずしも良好ではない。
特許第5776004号公報
特許第6532180号公報
本発明は、ラティス領域及びその外側に配置されている外枠領域を対象とする三次元造形物をシンプルな走査によって強固なラティス構造を製造する方法及び当該方法による三次元造形物の構成を提供することを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層における焼結は、通気性を有するラティス領域及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域を対象としており、ラティス領域については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージがスライドする長手方向に沿って規則的な折線又は曲線による波型形状、若しくは規則的なループ模様を直線又は曲線を介して接続することによる片側又は両側への隆起形状を形成している焼結ラインを、各焼結ラインにおける実在しない概念上の中央ラインが等距離幅によって配置された状態にて複数本計算上設定されており、かつ前記中央ラインは、前記波型形状若しくは前記隆起形状の前記長手方向と直交する方向を基準として、最大幅を形成する両側位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン及び外側ラインによって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法、
(2)隣り合う焼結ラインが長手方向と直交する水平方向にて相互に離れた状態にあることを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(3)2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向にて相互に交差し、かつ当該交差位置において重畳していることを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(4)隣り合う2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(5)2本の焼結ラインが走査方向と直交する水平方向にて相互に交差し、かつ当該交差位置にて重畳すると共に、隣り合う2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(6)同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて相互に接合していることを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(7)同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて一層又は複数層の粉末層の厚みによる幅だけ離れていることを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(8)上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ラインにおける中心直線の位置が長手方向と直交する方向にて相違していることを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(9)外枠領域の形状として、内側ライン及び外側ラインが、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することを特徴とする前記(1)の三次元造形物の製造方法、
(10)基本構成(1)の製造方法によって製造された三次元造形物、
からなる。
基本構成(1)においては、スキージがスライドする長手方向にて焼結ラインを形成するというシンプルな走査によって、特許文献2記載の発明の場合のように、スキージの移動方向と直交する方向の焼結ラインの形成による図17(b)に示すような不均一な焼結層の形成を防止することができる。
しかも、焼結ラインが長手方向に沿って波型形状若しくは隆起形状を形成していることによって、直線状の焼結ラインの場合に比し、強固なラティス構造を得ることができる。
具体的に説明するに、基本構成(2)のように、隣り合う焼結ラインが長手方向と直交する方向にて相互に離れた構成であっても、外枠領域に対し長手方向と直交又は斜交する方向の回転モーメントが作用した場合、波型形状若しくは隆起形状の場合には、長手方向と直交する方向にて当該回転モーメントに伴う外力に対する抗力を形成し、直線状の焼結ラインに比し、当該回転モーメントによる変形の程度を減少することができる。
更には、焼結ラインの方向がスキージの移動方向に沿っているため、先願発明の構成に比し、レーザビーム又は電子ビームの照射における制御がシンプルであり、特に基本構成(2)の場合にはこの点が顕著である。
基本構成(3)、(4)、(5)のように、2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向にて相互に交差しかつ重畳するか、又は相互に接している場合には、シンプルな走査でありながら、基本構成(2)の場合よりも更に強固なラティス構成を確保することができる。
基本構成(6)においては、同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて相互に接合することによって、強固な立体構造を確保し得るだけでなく、上下方向に沿った単純な形状による空洞状態を形成することができる。
基本構成(7)のように、同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて一層又は複数層の粉末層の厚みによる幅だけ離れることによって、単に上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態をも形成することができる。
同様に、基本構成(8)のように、上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ラインにおける中心直線の位置が長手方向と直交する方向にて相違している構成の場合においても、上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態を実現することができる。
基本構成(9)のように、外枠領域の形状として、内側ライン及び外側ラインが、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することによって、色々な形状の三次元造形物を成形することができる。
物の構成である基本構成(10)の場合には、各粉末層において、ラティス領域の焼結と外枠領域の焼結とを順次効率的に実現することができる。
基本構成(1)の製造方法にしたがって、基本構成(10)の三次元造形物の製造工程を示すフローチャートである。
折線の波型形状による焼結ラインを選択した上で、基本構成(2)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。 尚、点線は、各波型形状の焼結ラインにおける中央ラインを示し、かつこの点は以下の平面図においても同様である。 他方、矢印は、焼結ラインの走査方向を示すが、図3以下の平面図においては省略する。
曲線の波型形状による焼結ラインを選択した上で、基本構成(2)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。
ループ模様を直線を介して接続することによって、両側への隆起形状を選択した上で、基本構成(2)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。 尚、中央ラインが焼結ラインと同一位置にあることから、点線によって表示することが不可能であり、かつこの点は、図5(b)においても同様である。
ループ模様を曲線を介して接続することによって、片側への隆起形状を選択した上で、基本構成(2)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。
基本構成(3)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図であり、(a)は、交差しかつ重畳している2本の焼結ラインの単位が相互に離れた状態にある実施形態を示し、(b)は、交差しかつ重畳している2本の焼結ラインの単位が更に交差し、かつ重畳し合う実施形態を示す。 尚、前記平面図は、図2(b)の曲線による波型形状に立脚している。
基本構成(4)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図であり、(a)は、曲線による波型形状が相互に接した状態を示し、(b)は、ループ模様が曲線を介して接続され交差しかつ重畳していることによって片側に隆起した形状が相互に接している場合を示す。
基本構成(5)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図であり、(a)は、曲線による波型形状による交差及び接触状況を示し、(b)は、ループ模様を直線を介した接続によって両側への隆起形状による交差及び接触状態(但し、ループ模様による隆起状態が相互に異なっている。)を示す。
基本構成(6)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、図3(b)の構成に立脚している。
基本構成(7)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、基本構成(2)の構成に立脚している。
基本構成(8)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、基本構成(2)の構成に立脚している。
基本構成(9)の実施形態を示しており、(a)は、内側ライン及び外側ラインが正多角形状の典型例である正方形の場合を示す平面図であり、(b)は、内側ライン及び外側ラインが湾曲形状の典型例である円形の場合を示す平面図である。
CAD/CAMシステムによって特定された外枠領域と接続する両端位置を示す平面図であって、(a)は、実施形態1、2における焼結ラインの両端位置を示しており、(b)は、中央ラインの両端位置を示す。尚、図10(a)は、図2(a)に示す焼結ラインの両端位置に対応しており、図10(b)は、図2(b)に示す中央ラインの両端位置に対応している。
外枠領域の焼結に際し、内側ライン及び外側ラインと相似関係にある軌跡に沿って焼結ラインを形成する実施例1の構成を示す平面図である(湾曲した片側方向矢印は、ビームの走査方向を示す。)。 尚、ラティス領域については基本構成(2)に立脚しており、外枠領域については図9(b)の円形に立脚している。
外枠領域を所定幅だけ離れ、所定の方向に選択されている平行ラインによって区分し、ラティス領域における焼結層の成形の前段階、又は後段階、又はその中間段階にて、前記平行方向と直交する方向にて焼結ラインを形成するという実施例2の構成を示す平面図であって、(a)は、当該平行ラインと直交する焼結ラインが等距離である場合を示し、(b)は、特に、焼結ラインの方向が内側ライン及び外側ラインによって囲まれる領域内にて最大距離を形成し得るような方向である場合を示す平面図である。 尚、ラティス領域については基本構成(2)に立脚しており、外枠領域については図9(a)の正方形に立脚している。
ビームのスポット径及びビームのパワー又は走査スピードを変化させることによって、積層にしたがって通気口のサイズを順次小さくする実施例3の構成を示しており、(a)は、造形幅が順次大きくなることを示す平面図であり、(b)は、上下方向断面図である(点線は、ビームの間隔が段階的に小さくなる領域において、他方側方向に走査されているビームにつき、当該変化の前段階のビームと当該変化の後段階のビームとが相互に水平方向にて重畳し合っている状態を示す。)。
所定のスポット径を有するビームを選択した上で、一方側方向及び他方側方向に平行にて走査するビームの間隔を順次段階的に小さく設定することによって、通気領域のサイズを順次段階的に小さく設定している実施例4の構成を示しており、(a)は、ビームの間隔が順次段階的に小さくなることを示す平面図であり、(b)は、(a)の場合と同様の状態を示す上下方向断面図である。
ラティス領域に囲まれた一部領域をテーパ形状とする実施例5の構成を示す上下方向断面図である。
外側領域の外側ライン及び/又は内側ラインの水平領域の位置が高さ方向の変化に従って、傾斜する実施例6の構成を示す上下方向断面図であり、(a)は、外側ラインのみが変化する場合を示し、(b)は、内側ラインのみが変化する場合を示し、(c)は、双方が変化する場合を示す。
特許文献2発明の構成を示しており、(a)は、スキージがスライドする段階における平面図であり、(b)は、前記段階における上下方向断面図である。 尚、白線矢印は、スキージが粉末を散布しながらスライドする方向を示す。
基本構成(1)の製造方法によって製造された基本構成(10)の外枠領域2及び内側のラティス領域1による三次元造形物を金型として使用する場合には、粉末は須く金属粉末が使用される。
これに対し、前記三次元造形物がフィルター等の金型以外の製品である場合には、粉末が必ずしも金属粉末である必要はなく、プラスチック粉末等を典型例として使用することができ、この点は、小さい密度を選択している三次元造形物の場合においても同様である。
このような材料を適宜選択した上で、基本構成(1)は、図1のフローチャートに示すように、スキージ5のスライドを伴う粉末の散布による粉末層3の成形及び当該粉末層3に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層3における焼結は、通気性を有するラティス領域1及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域2を対象としており、ラティス領域1については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージ5がスライドする長手方向に沿って規則的な折線又は曲線による波型形状、若しくは規則的なループ模様を直線又は曲線を介して接続することによる片側又は両側への隆起形状を形成している焼結ライン4を、各焼結ライン4における実在しない概念上の中央ライン40が等距離幅によって配置された状態にて複数本計算上設定されており、かつ前記中央ライン40は、前記波型形状若しくは前記隆起形状の前記長手方向と直交する方向を基準として、最大幅を形成する両側位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域2については、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法であり、基本構成(10)は前記フローチャートによって製造された三次元造形物である。
基本構成(1)において、各焼結ライン4における中央ライン40が等距離幅にて配置された状態を設定しているのは、このような等距離幅によって、ラティス領域1が均一な形状及び強度を実現し得ることに由来している。
尚、中央ライン40は、前記のように各焼結ライン4の位置を特定するために計算上設定された実在しない概念上のラインであって、焼結の対象ではない。
基本構成(1)におけるビームのスポット径、即ち焼結ライン4の太さについては、通常0.05mmφ~0.6mmφの範囲にて選択される一方、焼結ライン4同士の平均幅、即ち各焼結ライン4における中央ライン40同士の幅による間隔としては、0.06mm~1.0mmを選択し、通気領域11の幅については0.01mm~0.4mmの範囲に設定する場合が多い。
基本構成(2)は、図2(a)、(b)、(c)、(d)の各平面図に示すように、隣り合う焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向にて相互に離れた状態にあることを特徴としている。
尚、図2(a)、(b)、(c)、(d)は、波型形状の焼結ライン4同士及び隆起形状の焼結ライン4同士が離れた状態を示すが、波型形状の焼結ライン4と隆起形状の焼結ライン4との離れた状態をも採用可能であり、かつこの点は、基本構成(3)~(5)の場合においても妥当する。
このような離れた状態を形成するためには、図2(a)、(c)、(d)に示すように、各焼結ライン4の長手方向と直交する幅が各中央ライン40の幅よりも狭幅とするか、又は図2(b)に示すように、各焼結ライン4同士を相互に平行状態とすることによって実現することができる。
このように複数本の焼結ライン4が相互に離れていることによって、基本構成(2)は、基本構成(1)のうち最もシンプルな製造方法に該当する。
図2(a)、(b)、(c)、(d)においては、水平方向に隣り合う焼結ライン4の走査方向が相互に反対であって、往復移動を採用しているが、このような往復移動は製造効率が良好であることに由来している。
尚、このような往復移動が通常採用されることについては、基本構成(3)~(8)においても変わりはない。
但し、隣り合う焼結ライン4の走査方向が同一方向であるという片道移動もまた当然採用可能である。
尚、図2(a)、(c)の場合には、焼結ライン4の長手方向と直交する方向にて外枠領域2と離れた状態を示す一方、図2(b)、(d)においては、焼結ライン4が外枠領域2と接触した状態を示すが、焼結ライン4においては、前記の離れた状態及び接触した状態の何れをも採用することができ、この点は基本構成(3)~(9)においても変わりはない。
基本構成(2)においては、水平方向に隣り合う焼結ライン4が相互に離れているにも拘らず、直線状の焼結ライン4に比し、強固なラティス構造を形成することについては、既に効果の項において指摘した通りである。
基本構成(3)は、図3(a)、(b)の平面図に示すように、2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向にて相互に交差し、かつ当該交差位置において重畳していることを特徴としている。
基本構成(3)の場合には、図3(a)のように、単に2本の焼結ライン4同士が交差し、かつ重畳する実施形態だけでなく、図3(b)のように、全ての隣り合う焼結ライン4が交差し、かつ重畳し合う実施形態をも採用することが可能である。
何れの実施形態においても、スキージ5の移動方向に沿った長手方向のみというシンプルな走査方法にも拘らず、前記交差による重畳によって強固なラティス構造を確保し得ることは、既に効果の項において指摘した通りであるが、図3(a)の実施形態よりも図3(b)の実施形態の方が、更に強固なラティス構造を確保することができる。
尚、図3(a)、(b)の何れも、波型形状の場合を図示しているが、基本構成(3)は、図2(c)、(d)に示すような隆起形状の場合においても当然採用可能である。
基本構成(4)は、図4(a)、(b)の平面図に示すように、隣り合う2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴としている。
基本構成(4)において、水平方向に隣り合う焼結ライン4が相互に接する状態は、焼結ライン4が波型形状若しくは隆起形状を形成していることに由来している。
基本構成(4)においても、基本構成(3)の場合と同様に、シンプルな走査方法でありながら強固なラティス構造を確保し得る点は、既に効果の項において説明した通りであるが、基本構成(3)のような交差による重畳状態に比し、基本構成(4)の接触は、結合の強度においてやや劣る傾向にある。
しかしながら、基本構成(4)は、長手方向と直交する幅方向において広く設定し得ることによって、基本構成(3)の場合よりも更に良好な製造効率を発揮することができる。
基本構成(5)は、図5(a)、(b)の平面図に示すように、2本の焼結ライン4が走査方向と直交する水平方向にて相互に交差し、かつ当該交差位置にて重畳すると共に、隣り合う2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴としている。
基本構成(5)は、基本構成(3)と基本構成(4)との双方の構成に立脚しており、双方の作用効果を発揮することができる。
基本構成(6)は、図6(a)、(b)に示すように、同一形状の複数本の焼結ライン4が上下方向にて相互に接合していることを特徴としている。
基本構成(6)においては、強固な立体構造を確保し得ると共に、上下方向に沿った単純な形状による空洞状態を形成し得ることについては、既に効果の項において説明した通りである。
このような空洞状態は、複数本の平行な通水経路又は通風経路の形成に適合している。
基本構成(7)は、図7(a)、(b)に示すように、同一形状の複数本の焼結ライン4が上下方向にて一層又は複数層の粉末層3の厚みによる幅だけ離れていることを特徴としている。
基本構成(7)においては、単に上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態をも形成し得ることについては、効果の項において既に指摘した通りである。
このような両側の空洞状態の形成は、フィルターを形成する場合に好適である。
基本構成(8)は、図8(a)、(b)に示すように、上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ライン4における中心直線の位置が長手方向と直交する方向にて相違していることを特徴としている。
基本構成(8)においても、上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態を実現し得ることは、既に効果の項において説明した通りであるが、基本構成(8)もまたフィルターを形成する場合に好適である。
図8(a)、(b)は、上下方向2段毎に焼結ライン4の水平方向の位置が同一であるような規則的な配置状態を示すが、上下方向3段以上の規則的な配置もまた当然採用可能である。
基本構成(9)は、図9(a)、(b)に示すように、外枠領域2の形状として、内側ライン21及び外側ライン22が、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することを特徴としている。
そして、基本構成(9)の外枠領域2は、層状態にある内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれており、双方のラインによって形成される幅を有している。
このような内側ライン21及び外側ライン22によって形成される外枠領域2の形状は、色々な実施形態を採用することができるが、最もシンプルな典型例は、内側ライン21及び外側ライン22が、図9(a)に示す正方形状及び図9(b)に示す円形状である。
但し、多角形状として、六角形状、長方形状もまた正方形状に準じて採用することができ、湾曲形状としては、楕円形状もまた円形状に準じて採用することができる。
外枠領域2は、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた領域において焼結ライン4に基づく連続した焼結層によって成形されるが、当該成形については、ラティス領域1の焼結ライン4の形成の前段階、又は後段階、又は並行した状態の段階の何れをも選択することができる。
基本構成(1)の三次元造形物の製造方法においては、必然的にCAD/CAMシステムのコントロールに立脚しているが、当該コントロールにおいて特定すべき指摘事項は、各焼結ライン4の配置状態及び波型形状若しくは隆起形状の形成にある。
このようなCAD/CAMシステムの典型例として、基本構成(1)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(a)に示すようにレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成される焼結ライン4の外枠領域2と接続する複数個の両端位置41に関する情報をメモリに記録した上で、当該焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成すると共に、記録されている複数個の両端位置の情報と結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムの実施形態1を採用することができる。
焼結ライン4が外枠領域2と接続する複数個の両端位置に関する情報は、当該両端位置における座標の集合によって特定されるが、当該集合は、1個だけでなく、複数個採用した上で選択される場合が多い。
他方、焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状の情報については、レーザビーム又は電子ビームが走査座標の設定によって作成し得るが、予め波型形状若しくは隆起形状の単位情報を予めコンピュータの制御部及び演算部の協働によって作成した上で、当該単位情報を結合することによって作成することもできる。
実施形態1の場合には、波型形状又は隆起形状に関する情報を、既に記録されている両端位置に関する情報と直ちに結合し得る点において、シンプルなコントロールを実現することができる。
前記実施形態1とは別に、基本構成(1)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(a)に示すようにレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成される焼結ライン4の外枠領域2と接続する複数個の両端位置41に関する情報をメモリに記録すると共に、当該焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成し、かつ当該情報をメモリに記録した上で、記録されている両端位置に関する情報と波型形状若しくは隆起形状に関する情報とを結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態2を採用することができる。
前記の実施形態2の場合には、両端位置の組み合わせ及びその個数、並びに波型形状若しくは隆起形状の情報の作成に関する技術的事項は、実施形態1の場合と同一であるが、記録されている焼結ライン4の両端位置に関する情報及び記録されている隆起形状を単に結合することによって焼結ライン4に関する情報を作成し得る点において、スピーディーなコントロールをすることができる。
実施形態1とは別に、基本構成(1)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(b)に示すように計算上設定された中央ライン40の外枠領域2と接続する複数個の両端位置401に関する情報をメモリに記録した上で、当該中央ライン40を基準とする焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成すると共に、記録されている複数個の両端位置の情報と結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態3を採用することができる。
実施形態3は、実施形態1におけるメモリに記録する両端位置の対象を、焼結ライン4ではなく、中央ライン40としていることにおいて相違しているが、実施形態3は、実施形態1と同様のシンプルなコントロールを実現することができる。
実施形態2とは別に、基本構成(1)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(b)に示すように計算上設定された中央ライン40の外枠領域2と接続する複数個の両端位置401に関する情報をメモリに記録すると共に、当該中央ライン40を基準とする焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成し、かつ当該情報をメモリに記録した上で、記録されている両端位置に関する情報と波型形状若しくは隆起形状に関する情報とを結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態4を採用することができる。
実施形態4は、実施形態2におけるメモリに記録する両端位置の対象を、焼結ライン4ではなく、中央ライン40としていることにおいて相違しているが、実施形態4は、実施形態2と同様のスピーディーなコントロールを実現することができる。
実施形態1~4においては、通常、焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報が、個別の焼結ライン4における長手方向と直交する方向の幅、及び長手方向に沿って規則的に変化する数を不可欠なパラメータとして設定し、かつ前記両端位置の幅に対応して選択している。
但し、前記不可欠なパラメータに付加して、隣り合う焼結ライン4同士における変化する位置の長手方向に沿った相違である位相差を更なるパラメータとして設定し、かつ当該位相差の程度を調整した場合には、基本構成(2)~(8)の各ラティス領域1を形成する焼結ライン4を選択し、かつ成形することができる。
以下、実施例にしたがって説明する。
実施例1は、図11に示すように、基本構成(9)に立脚した上で、外枠領域2の焼結に際し、内側ライン21及び外側ライン22と相似関係にある軌跡に沿って焼結ライン4を形成することを特徴としている。
このような相似型の焼結ライン4の形成によって、実施例1の場合には、極めてシンプルな制御によって外枠領域2を焼結することができる。
実施例2は、図12(a)に示すように、外枠領域2を所定幅だけ離れ、所定の方向に選択されている平行ラインによって区分し、ラティス領域1における焼結層の成形の前段階、又は後段階、又はその中間段階にて、前記平行方向と直交する方向にて焼結ライン4を形成することを特徴としている。
このような実施例2においては、図12(a)に示すように、特定の辺については、前記平行な方向と直交する方向に焼結ライン4を形成し、他の辺についても、前記区分された領域内における焼結ライン4と同一方向に焼結ライン4を形成するというシンプルな走査を実現することができる。
実施例2においては、特に図12(b)に示すように、焼結ライン4の方向が内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれる領域が最大距離を形成するような方向を選択した場合には、外枠領域2を極めて効率的に焼結することができる。
実施例3は、図13(a)、(b)に示すように、積層を重ねるにしたがって、ラティス領域1を走査するビームのスポット径を順次大きくすると共に、ビームのパワーを順次大きくするか又はビームの走査のスピードを順次小さくするか、又はその双方を採用することによって、通気領域11の幅を順次小さく設定していることを特徴としている。
このような実施例3の構成によってキャビティ金型を製造した場合には、気流を噴入する入口に対し、気流が噴出する出口の面積を小さくすることによって、必要な圧力を成形している気流の噴出を実現することができる。
実施例4は、図14(a)、(b)に示すように、積層を重ねるにしたがって、ラティス領域1における焼結ライン4同士の間隔を順次段階的に小さく設定することによって、通気領域11の幅を順次段階的に小さく設定することを特徴としている。
実施例4の構成によってキャビティ金型を製造する場合においても、実施例3と同様の効果を実現することができる。
実施例5は、図15に示すように、ラティス領域1が、内側の空隙を囲んだ状態とし、かつ当該空隙の大きさを積層にしたがって順次小さくすることによって、内側へのテーパ形状を呈するラティス領域1を成形することを特徴としている。
このようなテーパ形状を採用している実施例5の場合には、ラティス領域1を形成する下側の領域にベースプレートを設置せずに、必要な上下方向の幅を有し、かつ所定の強度を伴うラティス領域1を実現することができる。
実施例6は、図16(a)、(b)、(c)に示すように、外枠領域2における外側ライン22及び/又は内側ライン21であるラティス領域1との境界領域の水平方向の位置が高さ方向の変化に従って斜傾していることを特徴としている。
図16(a)、(b)及び(c)は、斜方向の形成がそれぞれ外側ライン22のみ、内側ライン21のみ、及び双方の場合を示すが、このような特徴点によって、実施例6においては、外枠領域2の強度及び配置位置を高さ方向によって選択することができる。
尚、図16(a)、(b)、(c)においては、斜方向として、直線状の変化状態を示すが、曲線状の変化状態も選択可能である。
更には、斜方向に変化する外側ライン22及び内側ライン21については、一部領域の場合と全領域の場合との双方を包摂している。
実施例7は、外枠領域2を走査するレーザビーム又は電子ビームについて、ラティス領域1におけるスポット径よりも大きなスポット径を選択することによって焼結ライン4を形成すると共に、焼結ライン4における単位面積当たりのビームのパワーがラティス領域1におけるビームのパワーと同一となるようなパワー密度を設定していることを特徴としている。
このような特徴によって、実施例7の場合には、外枠領域2についてもラティス領域1と同様の強固な焼結による焼結状態を実現することができる。
本発明は、ラティス領域をスキージの移動方向を長手方向とするシンプルな焼結ラインによって実現する一方、均一な形状であり、しかも強固なラティス構造を実現すると共に、効率的な外枠領域の成形及び効率的なレーザビーム又は電子ビームの走査のコントロールを可能としている点において画期的であり、ラティス構造を伴う三次元造形の利用範囲は広範である。
1 ラティス領域
11 通気領域
12 テーパ領域
2 外枠領域
21 内側ライン
22 外側ライン
3 粉末層
4 焼結ライン
41 焼結ラインの両端位置
40 中央ライン
401 中央ラインの両端位置
5 スキージ
本発明は、スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚した上で、周囲の外枠領域及びその内側のラティス構造を対象とする三次元造形物の製造方法及び当該方法に基づく三次元造形物を対象としている。
スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法は周知である。
上記三次元造形物の製造方法による三次元造形物のうちには、キャビティタイプの金型製品、フィルター用製品のように、造形物内部において通気性、即ちガス抜き構造を要する場合があり、これらの製品の場合には、密度の低い軽量化三次元造形物を製造することに帰する。
このような通気性を要する三次元造形物の製造方法として、例えば特許文献1においては、多孔質構造、即ちポーラス(porous)構造による気体流路を成形しているが、ポーラス構造の気体流路は、固化した材料の密度を低くすることによって生成されている以上、造形物としての強度が小さい一方、気体の流通する流路が不確定であって直線状ではないため、気体の流量が少ないという欠点を免れることができない。
これに対し、特許文献2においては、特定の金属粉末層について、所定のスポット径を有するレーザビームを所定の間隔にて複数回直線状に走査することによって焼結した(N番目の粉末層における第1のラスタ走査線による焼結)後に、その上側に隣接している金属粉末層については、上記直線状の方向と直交する方向に同様のレーザビームによる焼結(N+1番目の粉末層における第2のラスタ走査線による焼結)を行い、各金属粉末の積層と上記のような直交し合う方向のレーザビームによる走査を繰り返すことによるラティス領域1の製造方法を提供している(請求項3及び図4)。
即ち、特許文献2発明においては、ラティス領域1における通気領域の周囲を成形する横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に沿った焼結は、2層毎に交互に焼結されている。
特許文献2の図2を参照する限り、図15(a)に示すように、レーザビームが走査する縦方向又は横方向の何れか一方の方向における焼結ライン4と、スキージ5のスライド方向とが一致しており、このような一致は、三次元造形物の製造におけるスペースを効率的に使用するという技術常識に立脚している。
然るに、スキージ5は、金属粉末層の表面を平坦化するために所定の押圧力を伴ってスライドしているが、スライドに伴って粉末層3を成形する前段階にて、縦方向及び横方向のうち、当該スライド方向と直交する方向のレーザビームの走査によって焼結ライン4の上側をスキージ5がスライドする場合には、押圧する金属粉末層の厚さが、焼結ライン4の上側の部位と当該領域に挟まれている金属粉末層に更に金属粉末層を重畳する部位との間では、たとえスキージ5のスライド方向の幅が焼結層の幅よりも大きいとしても、スキージ5のスライドする方向側の先端からの押圧によって受ける圧縮の程度に相違が必然的に発生する。
このような相違の結果、スキージ5のスライドの後に行われる上記のライン状の焼結と直交する方向によるレーザビームの走査を行った場合には、図15(b)に示すように、上下方向に微細な凹凸を伴う不均一な焼結層が成形されることにならざるを得ない(尚、理解に資するために、図15(b)の凹凸形状は誇大に表示している。)。
しかも特許文献2発明のような2層毎の交互の焼結の場合には、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)とが上下方向にて接し合う二次元の面に沿った結合が実現しているに過ぎず、同一の各粉末層3における交差に基づく重畳した結合が実現していない結果、ラティス領域1の強度は決して十分ではない。
更には、特許文献2発明においては、外枠領域2を図面上表示するも、ラティス領域1の焼結と外枠領域2の焼結とがどのような関係にあるかについて全く説明されていない。
このような特許文献2記載の発明を改善することを目的として、出願人は、特願2020-095202出願において、全周囲が外枠領域によって囲まれ、かつ同一の各粉末層内にて一方側方向における複数の平行な焼結ラインと他方側方向における複数の平行な焼結ラインとの交差によって、強固な結合によるラティス領域を確保し得る構成(以下「先願構成」と称する。)を提唱している。
しかしながら、先願構成の場合にも、一方側方向及び他方側方向による双方の走査ラインを設定することを必要とするため、制御が多少煩雑であって、作業効率は必ずしも良好ではない。
特許第5776004号公報
特許第6532180号公報
本発明は、ラティス領域及びその外側に配置されている外枠領域を対象とする三次元造形物をシンプルな走査によって強固なラティス構造を製造する方法及び当該方法による三次元造形物の構成を提供することを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層における焼結は、通気性を有するラティス領域及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域を対象としており、ラティス領域については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージがスライドする長手方向に沿って規則的な曲線による波型形状を形成している2本の焼結ラインが、計算上等距離幅によって配置された実在しない中央ラインにて交差状態に設定されており、かつ前記中央ラインは、前記長手方向と直交する方向を基準として、最大幅を形成する両側位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン及び外側ラインによって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法。
(2)スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層における焼結は、通気性を有するラティス領域及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域を対象としており、ラティス領域については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージがスライドする長手方向に沿って規則的なループ模様を直線を介して接続することによる両側への隆起形状を形成している2本の焼結ラインが、計算上所定の距離幅によって配置された実在しない中央ラインにて重畳した状態に設定されており、かつ前記中央ラインは、前記長手方向と直交する方向を基準として、最大幅を形成する両側位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン及び外側ラインによって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法、
(3)隣り合う2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向にて相互に離れた状態にあることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の三次元造形物の製造方法、
(4)隣り合う2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の三次元造形物の製造方法、
(5)隣り合う2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に当接した状態にあることを特徴とする請求項1記載の三次元造形物の製造方法、
(6)同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて相互に接合していることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の三次元造形物の製造方法、
(7)同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて一層又は複数層の粉末層の厚みによる幅だけ離れていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の三次元造形物の製造方法、
(8)上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ラインにおける中心直線の位置が長手方向と直交する方向にて相違していることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の三次元造形物の製造方法、
(9)外枠領域の形状として、内側ライン及び外側ラインが、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の三次元造形物の製造方法、
からなる。
基本構成(1)及び(2)においては、スキージがスライドする長手方向にて焼結ラインを形成するというシンプルな走査によって、特許文献2記載の発明の場合のように、スキージの移動方向と直交する方向の焼結ラインの形成による図15(b)に示すような不均一な焼結層の形成を防止することができる。
しかも、焼結ラインが長手方向に沿って波型形状若しくは隆起形状を形成していることによって、直線状の焼結ラインの場合に比し、強固なラティス構造を得ることができる。
具体的に説明するに、基本構成(3)のように、隣り合う2本の焼結ラインが長手方向と直交する方向にて相互に離れた構成であっても、外枠領域に対し長手方向と直交又は斜交する方向の回転モーメントが作用した場合、波型形状若しくは隆起形状の場合には、長手方向と直交する方向にて当該回転モーメントに伴う外力に対する抗力を形成し、直線状の焼結ラインに比し、当該回転モーメントによる変形の程度を減少することができる。
更には、焼結ラインの方向がスキージの移動方向に沿っているため、先願発明の構成に比し、レーザビーム又は電子ビームの照射における制御がシンプルであり、特に基本構成(3)の場合にはこの点が顕著である。
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)のように、曲線による波型形状を形成している2本の焼結ラインが計算上配置された実在しない中央ラインにて相互に交差しかつ重畳するか、又は規則的なループ模様による片側へ隆起形状が前記中央ラインにて重畳している場合には、シンプルな走査でありながら、強固なラティス構成を確保することができる。
基本構成(6)においては、同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて相互に接合することによって、強固な立体構造を確保し得るだけでなく、上下方向に沿った単純な形状による空洞状態を形成することができる。
基本構成(7)のように、同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて一層又は複数層の粉末層の厚みによる幅だけ離れることによって、単に上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態をも形成することができる。
同様に、基本構成(8)のように、上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ラインにおける中心直線の位置が長手方向と直交する方向にて相違している構成の場合においても、上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態を実現することができる。
基本構成(9)のように、外枠領域の形状として、内側ライン及び外側ラインが、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することによって、色々な形状の三次元造形物を成形することができる。
基本構成(1)及び(2)の製造方法にしたがって、三次元造形物の製造工程を示すフローチャートである。
基本構成(1)及び(3)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。 尚、点線は、各波型形状の焼結ラインにおける中央ラインを示し、かつこの点は以下の平面図においても同様である。
基本構成(1)及び(4)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。
基本構成(1)及び(5)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。
基本構成(2)及び(4)、(5)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。
尚、中央ラインが焼結ラインと同一位置にあることから、点線によって表示することが不可能である。
基本構成(6)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、図2(c)の構成に立脚している。
基本構成(7)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、基本構成(2)の構成に立脚している。
基本構成(8)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、基本構成(2)の構成に立脚している。
基本構成(9)の実施形態を示しており、(a)は、内側ライン及び外側ラインが正多角形状の典型例である正方形の場合を示す平面図であり、(b)は、内側ライン及び外側ラインが湾曲形状の典型例である円形の場合を示す平面図である。
CAD/CAMシステムによって特定された外枠領域と接続する両端位置を示す平面図であって、(a)は、実施形態1、2における焼結ラインの両端位置を示しており、(b)は、中央ラインの両端位置を示す。 尚、図8(a)は、図3に示す焼結ラインの両端位置に対応しており、図8(b)は、図2(a)に示す中央ラインの両端位置に対応している。
外枠領域の焼結に際し、内側ライン及び外側ラインと相似関係にある軌跡に沿って焼結ラインを形成する実施例1の構成を示す平面図である(湾曲した片側方向矢印は、ビームの走査方向を示す。)。 尚、ラティス領域については基本構成(5)に立脚しており、外枠領域については図7(b)の円形に立脚している。
外枠領域を所定幅だけ離れ、所定の方向に選択されている平行ラインによって区分し、ラティス領域における焼結層の成形の前段階、又は後段階、又はその中間段階にて、前記平行方向と直交する方向にて焼結ラインを形成するという実施例2の構成を示す平面図であって、(a)は、当該平行ラインと直交する焼結ラインが等距離である場合を示し、(b)は、特に、焼結ラインの方向が内側ライン及び外側ラインによって囲まれる領域内にて最大距離を形成し得るような方向である場合を示す平面図である。 尚、ラティス領域については基本構成(5)に立脚しており、外枠領域については図7(a)の正方形に立脚している。
ビームのスポット径及びビームのパワー又は走査スピードを変化させることによって、積層にしたがって通気口のサイズを順次小さくする実施例3の構成を示しており、(a)は、造形幅が順次大きくなることを示す平面図であり、(b)は、上下方向断面図である(点線は、ビームの間隔が段階的に小さくなる領域において、他方側方向に走査されているビームにつき、当該変化の前段階のビームと当該変化の後段階のビームとが相互に水平方向にて重畳し合っている状態を示す。)。
所定のスポット径を有するビームを選択した上で、一方側方向及び他方側方向に平行にて走査するビームの間隔を順次段階的に小さく設定することによって、通気領域のサイズを順次段階的に小さく設定している実施例4の構成を示しており、(a)は、ビームの間隔が順次段階的に小さくなることを示す平面図であり、(b)は、(a)の場合と同様の状態を示す上下方向断面図である。
ラティス領域に囲まれた一部領域をテーパ形状とする実施例5の構成を示す上下方向断面図である。
外枠領域の外側ライン及び/又は内側ラインの水平領域の位置が高さ方向の変化に従って、傾斜する実施例6の構成を示す上下方向断面図であり、(a)は、外側ラインのみが変化する場合を示し、(b)は、内側ラインのみが変化する場合を示し、(c)は、双方が変化する場合を示す。
特許文献2発明の構成を示しており、(a)は、スキージがスライドする段階における平面図であり、(b)は、前記段階における上下方向断面図である。 尚、白線矢印は、スキージが粉末を散布しながらスライドする方向を示す。
基本構成(1)及び(2)の製造方法によって製造された外枠領域2及び内側のラティス領域1による三次元造形物を金型として使用する場合には、粉末は須く金属粉末が使用される。
これに対し、前記三次元造形物がフィルター等の金型以外の製品である場合には、粉末が必ずしも金属粉末である必要はなく、プラスチック粉末等を典型例として使用することができ、この点は、小さい密度を選択している三次元造形物の場合においても同様である。
このような材料を適宜選択した上で、基本構成(1)は、図1のフローチャートに示すように、スキージ5のスライドを伴う粉末の散布による粉末層3の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層3における焼結は、通気性を有するラティス領域1及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域2を対象としており、ラティス領域1については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージ5がスライドする長手方向に沿って規則的な曲線による波型形状を形成している2本の焼結ライン4が、計算上等距離幅によって配置された実在しない中央ライン40にて交差状態に設定されており、かつ前記中央ライン40は、前記長手方向と直交する方向を基準として、最大幅を形成する両側位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法であり、
同様に、基本構成(2)もまた、図1のフローチャートに示すように、スキージ5のスライドを伴う粉末の散布による粉末層3の成形及び当該粉末層3に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層3における焼結は、通気性を有するラティス領域1及び当該領域1の両側端と接続し、かつ当該領域1の全周囲にて配置されている外枠領域を対象としており、ラティス領域1については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージ5がスライドする長手方向に沿って規則的なループ模様を直線を介して接続することによる両側への隆起形状を形成している2本の焼結ライン4が、計算上所定の距離幅によって配置された実在しない中央ライン40にて重畳した状態に設定されており、かつ前記中央ライン40は、前記長手方向と直交する方向を基準として、最大幅を形成する両側位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法である。
基本構成(1)において、各焼結ライン4における中央ライン40が特に等距離幅にて配置された状態を設定しているのは、このような等距離幅によって、ラティス領域1が均一な形状及び強度を実現し得ることに由来している。
尚、中央ライン40は、前記のように各焼結ライン4の位置を特定するために計算上設定された実在しない概念上のラインであって、焼結の対象ではない。
基本構成(1)及び(2)におけるビームのスポット径、即ち焼結ライン4の太さについては、通常0.05mmφ~0.6mmφの範囲にて選択される一方、焼結ライン4同士の平均幅、即ち各焼結ライン4における中央ライン40同士の幅による間隔としては、0.06mm~1.0mmを選択し、通気領域11の幅については0.01mm~0.4mmの範囲に設定する場合が多い。
基本構成(3)は、図2(a)の各平面図に示すように、隣り合う焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向にて相互に離れた状態にあることを特徴としている。
尚、図2(a)は、2本の波型形状の焼結ライン4同士が離れた状態を示すが、2本の隆起形状の焼結ライン4との離れた状態をも採用可能である。
このような離れた状態を形成するためには、図2(a)に示すように、各2本の焼結ライン4の長手方向と直交する幅が各中央ライン40の幅よりも狭幅とするか、各2本の焼結ライン4同士を相互に平行状態とすることによって実現することができる。
このように複数本の焼結ライン4が相互に離れていることによって、基本構成(3)は、基本構成(1)及び(2)のうち最もシンプルな製造方法に該当する。
基本構成(4)は、図2(b)及び図3の一部の隆起形状の平面図に示すように、隣り合う2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴としている。
基本構成(4)において、水平方向に隣り合う焼結ライン4が相互に接する状態は、焼結ライン4が波型形状若しくは隆起形状を形成していることに由来している。
基本構成(4)においても、基本構成(3)の場合と同様に、シンプルな走査方法でありながら強固なラティス構造を確保し得る点は、既に効果の項において説明した通りであるが、後述する基本構成(5)のような交差による重畳状態に比し、基本構成(4)の接触は、結合の強度においてやや劣る傾向にある。
しかしながら、基本構成(4)は、長手方向と直交する幅方向において広く設定し得ることによって、基本構成(5)の場合よりも更に良好な製造効率を発揮することができる。
基本構成(5)は、図2(c)の波型形状、及び図3の一部の隆起形状の平面図に示すように、2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向にて相互に交差し、かつ当該交差位置において重畳していることを特徴としている。
基本構成(5)の場合には、図3に示すように、一部の焼結ライン4が交差し、かつ重畳する実施形態だけでなく、図2(c)のように、全ての隣り合う2本の焼結ライン4が交差し、かつ重畳し合う実施形態を採用することが可能である。
何れの実施形態においても、スキージ5の移動方向に沿った長手方向のみというシンプルな走査方法にも拘らず、前記交差による重畳によって強固なラティス構造を確保し得ることは、既に効果の項において指摘した通りであるが、図3に示す一部の焼結ライン4が交差し、かつ重畳する実施形態よりも図2(c)に示すような全ての焼結ライン4の交差による実施形態の方が、更に強固なラティス構造を確保することができる。
基本構成(6)は、図4(a)、(b)に示すように、同一形状の複数本の焼結ライン4が上下方向にて相互に接合していることを特徴としている。
基本構成(6)においては、強固な立体構造を確保し得ると共に、上下方向に沿った単純な形状による空洞状態を形成し得ることについては、既に効果の項において説明した通りである。
このような空洞状態は、複数本の平行な通水経路又は通風経路の形成に適合している。
基本構成(7)は、図5(a)、(b)に示すように、同一形状の複数本の焼結ライン4が上下方向にて一層又は複数層の粉末層3の厚みによる幅だけ離れていることを特徴としている。
基本構成(7)においては、単に上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態をも形成し得ることについては、効果の項において既に指摘した通りである。
このような両側の空洞状態の形成は、フィルターを形成する場合に好適である。
基本構成(8)は、図6(a)、(b)に示すように、上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ライン4における中心直線の位置が長手方向と直交する方向にて相違していることを特徴としている。
基本構成(8)においても、上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態を実現し得ることは、既に効果の項において説明した通りであるが、基本構成(8)もまたフィルターを形成する場合に好適である。
図6(a)、(b)は、上下方向2段毎に焼結ライン4の水平方向の位置が同一であるような規則的な配置状態を示すが、上下方向3段以上の規則的な配置もまた当然採用可能である。
基本構成(9)は、図7(a)、(b)に示すように、外枠領域2の形状として、内側ライン21及び外側ライン22が、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することを特徴としている。
そして、基本構成(9)の外枠領域2は、層状態にある内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれており、双方のラインによって形成される幅を有している。
このような内側ライン21及び外側ライン22によって形成される外枠領域2の形状は、色々な実施形態を採用することができるが、最もシンプルな典型例は、内側ライン21及び外側ライン22が、図7(a)に示す正方形状及び図7(b)に示す円形状である。
但し、多角形状として、六角形状、長方形状もまた正方形状に準じて採用することができ、湾曲形状としては、楕円形状もまた円形状に準じて採用することができる。
外枠領域2は、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた領域において焼結ライン4に基づく連続した焼結層によって成形されるが、当該成形については、ラティス領域1の焼結ライン4の形成の前段階、又は後段階、又は並行した状態の段階の何れをも選択することができる。
基本構成(1)及び(2)の三次元造形物の製造方法においては、必然的にCAD/CAMシステムのコントロールに立脚しているが、当該コントロールにおいて特定すべき指摘事項は、各焼結ライン4の配置状態及び波型形状若しくは隆起形状の形成にある。
このようなCAD/CAMシステムの典型例として、基本構成(1)及び(2)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図8(a)に示すようにレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成される焼結ライン4の外枠領域2と接続する複数個の両端位置41に関する情報をメモリに記録した上で、当該焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成すると共に、記録されている複数個の両端位置の情報と結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムの実施形態1を採用することができる。
焼結ライン4が外枠領域2と接続する複数個の両端位置に関する情報は、当該両端位置における座標の集合によって特定されるが、当該集合は、1個だけでなく、複数個採用した上で選択される場合が多い。
他方、焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状の情報については、レーザビーム又は電子ビームが走査座標の設定によって作成し得るが、予め波型形状若しくは隆起形状の単位情報を予めコンピュータの制御部及び演算部の協働によって作成した上で、当該単位情報を結合することによって作成することもできる。
実施形態1の場合には、波型形状又は隆起形状に関する情報を、既に記録されている両端位置に関する情報と直ちに結合し得る点において、シンプルなコントロールを実現することができる。
前記実施形態1とは別に、基本構成(1)及び(2)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図8(a)に示すようにレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成される焼結ライン4の外枠領域2と接続する複数個の両端位置41に関する情報をメモリに記録すると共に、当該焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成し、かつ当該情報をメモリに記録した上で、記録されている両端位置に関する情報と波型形状若しくは隆起形状に関する情報とを結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態2を採用することができる。
前記の実施形態2の場合には、両端位置の組み合わせ及びその個数、並びに波型形状若しくは隆起形状の情報の作成に関する技術的事項は、実施形態1の場合と同一であるが、記録されている焼結ライン4の両端位置に関する情報及び記録されている隆起形状を単に結合することによって焼結ライン4に関する情報を作成し得る点において、スピーディーなコントロールをすることができる。
実施形態1とは別に、基本構成(1)及び(2)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図8(b)に示すように計算上設定された中央ライン40の外枠領域2と接続する複数個の両端位置401に関する情報をメモリに記録した上で、当該中央ライン40を基準とする焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成すると共に、記録されている複数個の両端位置の情報と結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態3を採用することができる。
実施形態3は、実施形態1におけるメモリに記録する両端位置の対象を、焼結ライン4ではなく、中央ライン40としていることにおいて相違しているが、実施形態3は、実施形態1と同様のシンプルなコントロールを実現することができる。
実施形態2とは別に、基本構成(1)及び(2)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図8(b)に示すように計算上設定された中央ライン40の外枠領域2と接続する複数個の両端位置401に関する情報をメモリに記録すると共に、当該中央ライン40を基準とする焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成し、かつ当該情報をメモリに記録した上で、記録されている両端位置に関する情報と波型形状若しくは隆起形状に関する情報とを結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態4を採用することができる。
実施形態4は、実施形態2におけるメモリに記録する両端位置の対象を、焼結ライン4ではなく、中央ライン40としていることにおいて相違しているが、実施形態4は、実施形態2と同様のスピーディーなコントロールを実現することができる。
実施形態1~4においては、通常、焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報が、個別の焼結ライン4における長手方向と直交する方向の幅、及び長手方向に沿って規則的に変化する数を不可欠なパラメータとして設定し、かつ前記両端位置の幅に対応して選択している。
但し、前記不可欠なパラメータに付加して、隣り合う2本の焼結ライン4同士における変化する位置の長手方向に沿った相違である位相差を更なるパラメータとして設定し、かつ当該位相差の程度を調整した場合には、基本構成(1)~(8)の各ラティス領域1を形成する焼結ライン4を選択し、かつ成形することができる。
以下、実施例にしたがって説明する。
実施例1は、図9に示すように、基本構成(9)に立脚した上で、外枠領域2の焼結に際し、内側ライン21及び外側ライン22と相似関係にある軌跡に沿って焼結ライン4を形成することを特徴としている。
このような相似型の焼結ライン4の形成によって、実施例1の場合には、極めてシンプルな制御によって外枠領域2を焼結することができる。
実施例2は、図10(a)に示すように、外枠領域2を所定幅だけ離れ、所定の方向に選択されている平行ラインによって区分し、ラティス領域1における焼結層の成形の前段階、又は後段階、又はその中間段階にて、前記平行方向と直交する方向にて焼結ライン4を形成することを特徴としている。
このような実施例2においては、図10(a)に示すように、特定の辺については、前記平行な方向と直交する方向に焼結ライン4を形成し、他の辺についても、前記区分された領域内における焼結ライン4と同一方向に焼結ライン4を形成するというシンプルな走査を実現することができる。
実施例2においては、特に図10(b)に示すように、焼結ライン4の方向が内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれる領域が最大距離を形成するような方向を選択した場合には、外枠領域2を極めて効率的に焼結することができる。
実施例3は、図11(a)、(b)に示すように、積層を重ねるにしたがって、ラティス領域1を走査するビームのスポット径を順次大きくすると共に、ビームのパワーを順次大きくするか又はビームの走査のスピードを順次小さくするか、又はその双方を採用することによって、通気領域11の幅を順次小さく設定していることを特徴としている。
このような実施例3の構成によってキャビティ金型を製造した場合には、気流を噴入する入口に対し、気流が噴出する出口の面積を小さくすることによって、必要な圧力を成形している気流の噴出を実現することができる。
実施例4は、図12(a)、(b)に示すように、積層を重ねるにしたがって、ラティス領域1における焼結ライン4同士の間隔を順次段階的に小さく設定することによって、通気領域11の幅を順次段階的に小さく設定することを特徴としている。
実施例4の構成によってキャビティ金型を製造する場合においても、実施例3と同様の効果を実現することができる。
実施例5は、図13に示すように、ラティス領域1が、内側の空隙を囲んだ状態とし、かつ当該空隙の大きさを積層にしたがって順次小さくすることによって、内側へのテーパ形状を呈するラティス領域1を成形することを特徴としている。
このようなテーパ形状を採用している実施例5の場合には、ラティス領域1を形成する下側の領域にベースプレートを設置せずに、必要な上下方向の幅を有し、かつ所定の強度を伴うラティス領域1を実現することができる。
実施例6は、図14(a)、(b)、(c)に示すように、外枠領域2における外側ライン22及び/又は内側ライン21であるラティス領域1との境界領域の水平方向の位置が高さ方向の変化に従って斜傾していることを特徴としている。
図14(a)、(b)及び(c)は、斜方向の形成がそれぞれ外側ライン22のみ、内側ライン21のみ、及び双方の場合を示すが、このような特徴点によって、実施例6においては、外枠領域2の強度及び配置位置を高さ方向によって選択することができる。
尚、図14(a)、(b)、(c)においては、斜方向として、直線状の変化状態を示すが、曲線状の変化状態も選択可能である。
更には、斜方向に変化する外側ライン22及び内側ライン21については、一部領域の場合と全領域の場合との双方を包摂している。
実施例7は、外枠領域2を走査するレーザビーム又は電子ビームについて、ラティス領域1におけるスポット径よりも大きなスポット径を選択することによって焼結ライン4を形成すると共に、焼結ライン4における単位面積当たりのビームのパワーがラティス領域1におけるビームのパワーと同一となるようなパワー密度を設定していることを特徴としている。
このような特徴によって、実施例7の場合には、外枠領域2についてもラティス領域1と同様の強固な焼結による焼結状態を実現することができる。
本発明は、ラティス領域をスキージの移動方向を長手方向とするシンプルな焼結ラインによって実現する一方、均一な形状であり、しかも強固なラティス構造を実現すると共に、効率的な外枠領域の成形及び効率的なレーザビーム又は電子ビームの走査のコントロールを可能としている点において画期的であり、ラティス構造を伴う三次元造形の利用範囲は広範である。
1 ラティス領域
11 通気領域
12 テーパ領域
2 外枠領域
21 内側ライン
22 外側ライン
3 粉末層
4 焼結ライン
41 焼結ラインの両端位置
40 中央ライン
401 中央ラインの両端位置
5 スキージ
スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚した上で、周囲の外枠領域及びその内側のラティス構造を対象とする三次元造形物の製造方法及び当該方法に基づく三次元造形物に関する。
スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法は周知である。
上記三次元造形物の製造方法による三次元造形物のうちには、キャビティタイプの金型製品、フィルター用製品のように、造形物内部において通気性、即ちガス抜き構造を要する場合があり、これらの製品の場合には、密度の低い軽量化三次元造形物を製造することに帰する。
このような通気性を要する三次元造形物の製造方法として、例えば特許文献1においては、多孔質構造、即ちポーラス(porous)構造による気体流路を成形しているが、ポーラス構造の気体流路は、固化した材料の密度を低くすることによって生成されている以上、造形物としての強度が小さい一方、気体の流通する流路が不確定であって直線状ではないため、気体の流量が少ないという欠点を免れることができない。
これに対し、特許文献2においては、特定の金属粉末層について、所定のスポット径を有するレーザビームを所定の間隔にて複数回直線状に走査することによって焼結した(N番目の粉末層における第1のラスタ走査線による焼結)後に、その上側に隣接している金属粉末層については、上記直線状の方向と直交する方向に同様のレーザビームによる焼結(N+1番目の粉末層における第2のラスタ走査線による焼結)を行い、各金属粉末の積層と上記のような直交し合う方向のレーザビームによる走査を繰り返すことによるラティス領域1の製造方法を提供している(請求項3及び図4)。
即ち、特許文献2発明においては、ラティス領域1における通気領域の周囲を成形する横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に沿った焼結は、2層毎に交互に焼結されている。
特許文献2の図2を参照する限り、図17(a)に示すように、レーザビームが走査する縦方向又は横方向の何れか一方の方向における焼結ライン4と、スキージ5のスライド方向とが一致しており、このような一致は、三次元造形物の製造におけるスペースを効率的に使用するという技術常識に立脚している。
然るに、スキージ5は、金属粉末層の表面を平坦化するために所定の押圧力を伴ってスライドしているが、スライドに伴って粉末層3を成形する前段階にて、縦方向及び横方向のうち、当該スライド方向と直交する方向のレーザビームの走査によって焼結ライン4の上側をスキージ5がスライドする場合には、押圧する金属粉末層の厚さが、焼結ライン4の上側の部位と当該領域に挟まれている金属粉末層に更に金属粉末層を重畳する部位との間では、たとえスキージ5のスライド方向の幅が焼結層の幅よりも大きいとしても、スキージ5のスライドする方向側の先端からの押圧によって受ける圧縮の程度に相違が必然的に発生する。
このような相違の結果、スキージ5のスライドの後に行われる上記のライン状の焼結と直交する方向によるレーザビームの走査を行った場合には、図17(b)に示すように、上下方向に微細な凹凸を伴う不均一な焼結層が成形されることにならざるを得ない(尚、理解に資するために、図17(b)の凹凸形状は誇大に表示している。)。
しかも特許文献2発明のような2層毎の交互の焼結の場合には、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)とが上下方向にて接し合う二次元の面に沿った結合が実現しているに過ぎず、同一の各粉末層3における交差に基づく重畳した結合が実現していない結果、ラティス領域1の強度は決して十分ではない。
更には、特許文献2発明においては、外枠領域2を図面上表示するも、ラティス領域1の焼結と外枠領域2の焼結とがどのような関係にあるかについて全く説明されていない。
このような特許文献2記載の発明を改善することを目的として、出願人は、特願2020-095202出願において、全周囲が外枠領域によって囲まれ、かつ同一の各粉末層内にて一方側方向における複数の平行な焼結ラインと他方側方向における複数の平行な焼結ラインとの交差によって、強固な結合によるラティス領域を確保し得る構成(以下「先願構成」と称する。)を提唱している。
しかしながら、先願構成の場合にも、一方側方向及び他方側方向による双方の走査ラインを設定することを必要とするため、制御が多少煩雑であって、作業効率は必ずしも良好ではない。
特許第5776004号公報
特許第6532180号公報
本発明は、ラティス領域及びその外側に配置されている外枠領域を対象とする三次元造形物をシンプルな走査によって強固なラティス構造を製造する方法及び当該方法による三次元造形物の構成を提供することを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層における焼結は、通気性を有するラティス領域及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域を対象としており、ラティス領域については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージがスライドする長手方向に沿って規則的な折線又は曲線による波型形状を形成している2本の焼結ラインが、前記長手方向と直交する方向に沿って等距離にて配置された実在しない基準ラインに沿って交差状態に設定されており、かつ前記基準ラインは、前記長手方向と直交する方向を基準として、前記2本の各焼結ラインにおいて最大幅を形成する両端位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン及び外側ラインによって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法、
(2)スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層における焼結は、通気性を有するラティス領域及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域を対象としており、ラティス領域については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージがスライドする長手方向に沿って規則的なループ模様を直線を介して接続することによる両側への隆起形状を形成している2本の焼結ラインが、前記長手方向と直交する方向に沿って所定の距離にて配置された実在しない基準ラインに沿って重畳した状態に設定されており、かつ前記基準ラインは前記直線と重畳すると共に、前記長手方向と直交する方向を基準として、前記2本の各焼結ラインにおいて最大幅を形成する両端位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン及び外側ラインによって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法、
(3)スキージのスライドを伴う粉末の散布による粉末層の成形及び当該粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層における焼結は、通気性を有するラティス領域及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域を対象としており、ラティス領域については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージがスライドする長手方向に沿って規則的な折線又は曲線による波型形状、若しくは規則的なループ模様を曲線を介して接続することによる両側への隆起形状を形成している焼結ラインが前記長手方向と直交する方向に沿って等距離にて配置された実在しない基準ラインに沿って設定されており、しかも隣り合う基準ラインに沿っている焼結ラインが前記長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあり、かつ前記基準ラインは、前記長手方向と直交する方向を基準として、前記最大幅を形成する両端位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域については、内側ライン及び外側ラインによって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法、
(4)隣り合う基準ラインに沿っている2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向にて相互に離れた状態にあることを特徴とする前記(1)又は(2)の三次元造形物の製造方法、
(5)隣り合う基準ラインに沿っている2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向の前記最大幅の位置にて相互に交差し、かつ重畳した状態にあることを特徴とする前記(1)又は(2)の三次元造形物の製造方法、
(6)同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて相互に接合していることを特徴とする前記(1)又は(2)又は(3)の三次元造形物の製造方法、
(7)同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて一層又は複数層の粉末層の厚みによる幅だけ離れていることを特徴とする前記(1)又は(2)又は(3)の三次元造形物の製造方法、
(8)上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ラインにおける基準ラインの位置が長手方向と直交する方向にて相違していることを特徴とする前記(1)又は(2)又は(3)の三次元造形物の製造方法、
(9)外枠領域の形状として、内側ライン及び外側ラインが、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することを特徴とする前記(1)又は(2)又は(3)の三次元造形物の製造方法、
からなる。
基本構成(1)、(2)、(3)においては、スキージがスライドする長手方向にて焼結ラインを形成するというシンプルな走査によって、特許文献2記載の発明の場合のように、スキージの移動方向と直交する方向の焼結ラインの形成による図17(b)に示すような不均一な焼結層の形成を防止することができる。
しかも、焼結ラインが長手方向に沿って波型形状若しくは隆起形状を形成していることによって、直線状の焼結ラインの場合に比し、強固なラティス構造を得ることができる。
具体的に説明するに、基本構成(4)のように、隣り合う焼結ラインが長手方向と直交する方向にて相互に離れた構成であっても、外枠領域に対し長手方向と直交又は斜交する方向の回転モーメントが作用した場合、波型形状若しくは隆起形状の場合には、長手方向と直交する方向にて当該回転モーメントに伴う外力に対する抗力を形成し、直線状の焼結ラインに比し、当該回転モーメントによる変形の程度を減少することができる。
更には、焼結ラインの方向がスキージの移動方向に沿っているため、先願発明の構成に比し、レーザビーム又は電子ビームの照射における制御がシンプルであり、特に基本構成(2)の場合にはこの点が顕著である。
基本構成(5)のように、2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向にて相互に交差しかつ重畳するか、又は相互に接している場合には、シンプルな走査でありながら、基本構成(4)の場合よりも更に強固なラティス構成を確保することができる。
基本構成(6)においては、同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて相互に接合することによって、強固な立体構造を確保し得るだけでなく、上下方向に沿った単純な形状による空洞状態を形成することができる。
基本構成(7)のように、同一形状の複数本の焼結ラインが上下方向にて一層又は複数層の粉末層の厚みによる幅だけ離れることによって、単に上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態をも形成することができる。
同様に、基本構成(8)のように、上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ラインにおける中心直線の位置が長手方向と直交する方向にて相違している構成の場合においても、上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態を実現することができる。
基本構成(9)のように、外枠領域の形状として、内側ライン及び外側ラインが、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することによって、色々な形状の三次元造形物を成形することができる。
基本構成(1)、(2)、(3)の製造方法にしたがって、三次元造形物の製造工程を示すフローチャートである。
折線の波型形状による焼結ラインを選択した上で、基本構成(4)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図である。 尚、点線は、各波型形状の焼結ラインにおける中央ラインを示し、かつこの点は以下の平面図においても同様である。 他方、矢印は、焼結ラインの走査方向を示すが、図3以下の平面図においては省略する。
曲線の波型形状による焼結ラインを選択した上で、基本構成(4)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示し、かつ本発明の参考に資するための平面図である。
ループ模様を直線を介して接続することによって、両側への隆起形状を選択した上で、基本構成(4)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示し、かつ本発明の参考に資するための平面図である。 尚、中央ラインが焼結ラインと同一位置にあることから、点線によって表示することが不可能であり、かつこの点は、図5(b)においても同様である。
ループ模様を曲線を介して接続することによって、片側への隆起形状を選択した上で、基本構成(4)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示し、かつ本発明の参考に資するための平面図である。
基本構成(1)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図であり、(a)は、基本構成(4)の場合を示し、(b)は、基本構成(5)の場合を示す。 尚、前記平面図は、図2(b)の曲線による波型形状に立脚している。
基本構成(3)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図であり、(a)は、曲線による波型形状の場合を示し、(b)は、ループ模様が曲線を介して接続され交差しかつ重畳していることによって片側に隆起した形状の場合を示す。
基本構成(1)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図であって、隣り合う基準ラインに沿っている2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向の両端の位置によって形成される最大幅の位置にて相互に接した状態にある構成を示す。
基本構成(2)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示す平面図であって、隣り合う基準ラインに沿っている2本の焼結ラインが長手方向と直交する水平方向の両端の位置によって形成される最大幅の位置にて相互に接した状態にある構成を示す。
基本構成(6)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、図3(b)に立脚している。
基本構成(7)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、図2(b)の参考図面に立脚している。
基本構成(8)の製造方法によって成形されたラティス領域及び外枠領域を示しており、(a)は、平面図を示し、(b)は、(a)のA―A方向に沿った上下方向断面図を示す。 尚、(a)の平面図は、図2(b)の参考図面に立脚している。
基本構成(9)の実施形態を示しており、(a)は、内側ライン及び外側ラインが正多角形状の典型例である正方形の場合を示す平面図であり、(b)は、内側ライン及び外側ラインが湾曲形状の典型例である円形の場合を示す平面図である。 尚、(a)の平面図は、図2(b)の参考図面に立脚している。
CAD/CAMシステムによって特定された外枠領域と接続する両端位置を示す平面図であって、(a)は、実施形態1、2における焼結ラインの両端位置を示しており、(b)は、基準ラインの両端位置を示す。尚、図10(a)は、図2(a)の参考図面に示す焼結ラインの両端位置に対応しており、図10(b)は、図2(b)の参考図面に示す基準ラインの両端位置に対応している。
外枠領域の焼結に際し、内側ライン及び外側ラインと相似関係にある軌跡に沿って焼結ラインを形成する実施例1の構成を示す平面図である(湾曲した片側方向矢印は、ビームの走査方向を示す。)。 但し、ラティス領域については、図2(b)の参考図面に立脚しており、外枠領域については図9(b)の円形に立脚している。
外枠領域を所定幅だけ離れ、所定の方向に選択されている平行ラインによって区分し、ラティス領域における焼結層の成形の前段階、又は後段階、又はその中間段階にて、前記平行方向と直交する方向にて焼結ラインを形成するという実施例2の構成を示す平面図であって、(a)は、当該平行ラインと直交する焼結ラインが等距離である場合を示し、(b)は、特に、焼結ラインの方向が内側ライン及び外側ラインによって囲まれる領域内にて最大距離を形成し得るような方向である場合を示す平面図である。 但し、ラティス領域については、図2(b)の参考図面に立脚しており、外枠領域については図9(a)の正方形に立脚している。
ビームのスポット径及びビームのパワー又は走査スピードを変化させることによって、積層にしたがって通気口のサイズを順次小さくする実施例3の構成を示しており、(a)は、造形幅が順次大きくなることを示す平面図であり、(b)は、上下方向断面図である(点線は、ビームの間隔が段階的に小さくなる領域において、他方側方向に走査されているビームにつき、当該変化の前段階のビームと当該変化の後段階のビームとが相互に水平方向にて重畳し合っている状態を示す。)。 但し、(a)の平面図は、図2(b)に立脚している。
所定のスポット径を有するビームを選択した上で、一方側方向及び他方側方向に平行にて走査するビームの間隔を順次段階的に小さく設定することによって、通気領域のサイズを順次段階的に小さく設定している実施例4の構成を示しており、(a)は、ビームの間隔が順次段階的に小さくなることを示す平面図であり、(b)は、(a)の場合と同様の状態を示す上下方向断面図である。 但し、(a)の平面図は、図2(b)に立脚している。
ラティス領域に囲まれた一部領域をテーパ形状とする実施例5の構成を示す上下方向断面図である。
外枠領域の外側ライン及び/又は内側ラインの水平領域の位置が高さ方向の変化に従って、傾斜する実施例6の構成を示す上下方向断面図であり、(a)は、外側ラインのみが変化する場合を示し、(b)は、内側ラインのみが変化する場合を示し、(c)は、双方が変化する場合を示す。
特許文献2発明の構成を示しており、(a)は、スキージがスライドする段階における平面図であり、(b)は、前記段階における上下方向断面図である。 尚、白線矢印は、スキージが粉末を散布しながらスライドする方向を示す。
基本構成(1)及び(2)及び(3)の製造方法によって製造された外枠領域2及び内側のラティス領域1による三次元造形物を金型として使用する場合には、粉末は須く金属粉末が使用される。
これに対し、前記三次元造形物がフィルター等の金型以外の製品である場合には、粉末が必ずしも金属粉末である必要はなく、プラスチック粉末等を典型例として使用することができ、この点は、小さい密度を選択している三次元造形物の場合においても同様である。
このような材料を適宜選択した上で、基本構成(1)は、図1のフローチャート、及び図3(a)、(b)、図5(a)の平面図に示すように、スキージ5のスライドを伴う粉末の散布による粉末層3の成形及び当該粉末層3に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層3における焼結は、通気性を有するラティス領域1及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域2を対象としており、ラティス領域1については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージ5がスライドする長手方向に沿って規則的な折線又は曲線による波型形状を形成している2本の焼結ライン4が、前記長手方向と直交する方向に沿って等距離にて配置された実在しない基準ライン40に沿って交差状態に設定されており、かつ前記基準ライン40は、前記長手方向と直交する方向を基準として、前記2本の各焼結ライン4において最大幅を形成する両端位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域2については、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法であり、
基本構成(2)は、図1のフローチャート及び図5(b)の平面図に示すように、スキージ5のスライドを伴う粉末の散布による粉末層3の成形及び当該粉末層3に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層3における焼結は、通気性を有するラティス領域1及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域2を対象としており、ラティス領域1については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージ5がスライドする長手方向に沿って規則的なループ模様を直線を介して接続することによる両側への隆起形状を形成している2本の焼結ライン4が、前記長手方向と直交する方向に沿って所定の距離にて配置された実在しない基準ライン40に沿って重畳した状態に設定されており、かつ前記基準ライン40は前記直線と重畳すると共に、前記長手方向と直交する方向を基準として、前記2本の各焼結ライン4において最大幅を形成する両端位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域2については、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法であり、
基本構成(3)は、図1のフローチャート及び図4(a)、(b)の平面図に示すように、スキージ5のスライドを伴う粉末の散布による粉末層3の成形及び当該粉末層3に対するレーザビーム又は電子ビームによる焼結という工程を順次繰り返すことに基づく積層に立脚している三次元造形物の製造方法であって、各粉末層3における焼結は、通気性を有するラティス領域1及び当該領域の両側端と接続し、かつ当該領域の全周囲にて配置されている外枠領域2を対象としており、ラティス領域1については、所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって、スキージ5がスライドする長手方向に沿って規則的な折線又は曲線による波型形状、若しくは規則的なループ模様を曲線を介して接続することによる両側への隆起形状を形成している焼結ライン4が前記長手方向と直交する方向に沿って等距離にて配置された実在しない基準ライン40に沿って設定されており、しかも隣り合う基準ライン40に沿っている焼結ライン4が前記長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあり、かつ前記基準ライン40は、前記長手方向と直交する方向を基準として、前記最大幅を形成する両端位置の中央を通過する状態にて前記長手方向に沿っており、外枠領域2については、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた状態にある前記全周囲を所定のスポット径を有するレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成された連続した焼結層によって成形されている三次元造形物の製造方法である。
基本構成(1)及び(3)において、各焼結ライン4における基準ライン40が特に等距離にて配置された状態を設定しているのは、このような等距離によって、ラティス領域1が均一な形状及び強度を実現し得ることに由来している。
尚、基準ライン40は、前記のように各焼結ライン4の位置を特定するために計算上設定された実在しない概念上のラインであって、焼結の対象ではない。
基本構成(1)及び(2)及び(3)におけるビームのスポット径、即ち焼結ライン4の太さについては、通常0.05mmφ~0.6mmφの範囲にて選択される一方、焼結ライン4同士の平均幅、即ち各焼結ライン4における基準ライン40同士の幅による間隔としては、0.06mm~1.0mmを選択し、通気領域11の幅については0.01mm~0.4mmの範囲に設定する場合が多い。
基本構成(4)は、図2(a)、(b)、(c)、(d)の各平面図及び図3(a)の平面図に示すように、隣り合う基準ライン40に沿っている2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向にて相互に離れた状態にあることを特徴としている。
このような離れた状態を形成するためには、図2(a)、(b)、(c)、(d)及び図3(a)に示すように、各2本の焼結ライン4の長手方向と直交する幅が各基準ライン40の幅よりも狭幅とするか、各2本の焼結ライン4同士を相互に平行状態とすることによって実現することができる。
このように複数本の焼結ライン4が相互に離れていることによって、基本構成(4)は、基本構成(1)及び(2)のうち最もシンプルな製造方法に該当する。
図2(a)、(b)、(c)、(d)においては、水平方向に隣り合う焼結ライン4の走査方向が相互に反対であって、往復移動を採用しているが、このような往復移動は製造効率が良好であることに由来している。
尚、このような往復移動が通常採用されることについては、基本構成(1)~(8)においても変わりはない。
但し、隣り合う焼結ライン4の走査方向が同一方向であるという片道移動もまた当然採用可能である。
尚、図2(a)、(c)の場合には、焼結ライン4の長手方向と直交する方向にて外枠領域2と離れた状態を示す一方、図2(b)、(d)においては、焼結ライン4が外枠領域2と接触した状態を示すが、焼結ライン4においては、前記の離れた状態及び接触した状態の何れをも採用することができ、この点は基本構成(1)~(9)においても変わりはない。
基本構成(4)においては、水平方向に隣り合う焼結ライン4が相互に離れているにも拘らず、直線状の焼結ライン4に比し、強固なラティス構造を形成することについては、既に効果の項において指摘した通りである。
基本構成(5)は、図3(b)、図5(b)の平面図に示すように、2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向にて相互に交差し、かつ当該交差位置において重畳していることを特徴としている。
基本構成(5)の場合には、図5(b)に示すように、一部の焼結ライン4同士が交差し、かつ重畳する実施形態だけでなく、図3(b)のように、全ての隣り合う焼結ライン4が交差し、かつ重畳し合う実施形態をも採用することが可能である。
何れの実施形態においても、スキージ5の移動方向に沿った長手方向のみというシンプルな走査方法にも拘らず、前記交差による重畳によって強固なラティス構造を確保し得ることは、既に効果の項において指摘した通りであるが、図3(a)の実施形態よりも図3(b)の実施形態の方が、更に強固なラティス構造を確保することができる。
尚、図3(a)、(b)の何れも、波型形状の場合を図示しているが、基本構成(4)は、図2(c)、(d)に示すような隆起形状の場合においても当然採用可能である。
基本構成(3)は、図4(a)、(b)の平面図に示すように、隣り合う2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴としている。
基本構成(3)において、水平方向に隣り合う焼結ライン4が相互に接する状態は、焼結ライン4が波型形状若しくは隆起形状を形成していることに由来している。
基本構成(3)においても、基本構成(5)の場合と同様に、シンプルな走査方法でありながら強固なラティス構造を確保し得る点は、既に効果の項において説明した通りであるが、基本構成(5)のような交差による重畳状態に比し、基本構成(3)の接触は、結合の強度においてやや劣る傾向にある。
しかしながら、基本構成(3)は、長手方向と直交する幅方向において広く設定し得ることによって、基本構成(5)の場合よりも更に良好な製造効率を発揮することができる。
基本構成(1)及び(2)においては、図5(a)及び図5(b)の平面図に示すように、2本の焼結ライン4が走査方向と直交する水平方向にて相互に交差し、かつ当該交差位置にて重畳すると共に、隣り合う2本の焼結ライン4が長手方向と直交する水平方向の最大幅の位置にて相互に接した状態にあることを特徴とする実施形態を採用することができる。
このような実施形態の場合には、基本構成(5)に立脚し、かつ基本構成(3)の特徴点を利用しており、双方の作用効果を発揮することができる。
基本構成(6)は、図6(a)、(b)に示すように、同一形状の複数本の焼結ライン4が上下方向にて相互に接合していることを特徴としている。
基本構成(6)においては、強固な立体構造を確保し得ると共に、上下方向に沿った単純な形状による空洞状態を形成し得ることについては、既に効果の項において説明した通りである。
このような空洞状態は、複数本の平行な通水経路又は通風経路の形成に適合している。
基本構成(7)は、図7(a)、(b)に示すように、同一形状の複数本の焼結ライン4が上下方向にて一層又は複数層の粉末層3の厚みによる幅だけ離れていることを特徴としている。
基本構成(7)においては、単に上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態をも形成し得ることについては、効果の項において既に指摘した通りである。
このような両側の空洞状態の形成は、フィルターを形成する場合に好適である。
基本構成(8)は、図8(a)、(b)に示すように、上下方向に隣り合う同一形状の複数本の焼結ライン4における基準ライン40の位置が長手方向と直交する方向にて相違していることを特徴としている。
基本構成(8)においても、上下方向だけでなく、水平方向の空洞状態を実現し得ることは、既に効果の項において説明した通りであるが、基本構成(8)もまたフィルターを形成する場合に好適である。
図8(a)、(b)は、上下方向2段毎に焼結ライン4の水平方向の位置が同一であるような規則的な配置状態を示すが、上下方向3段以上の規則的な配置もまた当然採用可能である。
基本構成(9)は、図9(a)、(b)に示すように、外枠領域2の形状として、内側ライン21及び外側ライン22が、それぞれ中心位置が同一であり、かつ相互に相似の関係にある正多角形状又は湾曲形状の何れかを採用することを特徴としている。
そして、基本構成(9)の外枠領域2は、層状態にある内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれており、双方のラインによって形成される幅を有している。
このような内側ライン21及び外側ライン22によって形成される外枠領域2の形状は、色々な実施形態を採用することができるが、最もシンプルな典型例は、内側ライン21及び外側ライン22が、図9(a)に示す正方形状及び図9(b)に示す円形状である。
但し、多角形状として、六角形状、長方形状もまた正方形状に準じて採用することができ、湾曲形状としては、楕円形状もまた円形状に準じて採用することができる。
外枠領域2は、内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれた領域において焼結ライン4に基づく連続した焼結層によって成形されるが、当該成形については、ラティス領域1の焼結ライン4の形成の前段階、又は後段階、又は並行した状態の段階の何れをも選択することができる。
基本構成(1)及び(2)及び(3)の三次元造形物の製造方法においては、必然的にCAD/CAMシステムのコントロールに立脚しているが、当該コントロールにおいて特定すべき指摘事項は、各焼結ライン4の配置状態及び波型形状若しくは隆起形状の形成にある。
このようなCAD/CAMシステムの典型例として、基本構成(1)及び(2)及び(3)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(a)に示すようにレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成される焼結ライン4の外枠領域2と接続する複数個の両端位置41に関する情報をメモリに記録した上で、当該焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成すると共に、記録されている複数個の両端位置41の情報と結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムの実施形態1を採用することができる。
焼結ライン4が外枠領域2と接続する複数個の両端位置41に関する情報は、当該両端位置41における座標の集合によって特定されるが、当該集合は、1個だけでなく、複数個採用した上で選択される場合が多い。
他方、焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状の情報については、レーザビーム又は電子ビームが走査座標の設定によって作成し得るが、予め波型形状若しくは隆起形状の単位情報を予めコンピュータの制御部及び演算部の協働によって作成した上で、当該単位情報を結合することによって作成することもできる。
実施形態1の場合には、波型形状又は隆起形状に関する情報を、既に記録されている両端位置41に関する情報と直ちに結合し得る点において、シンプルなコントロールを実現することができる。
前記実施形態1とは別に、基本構成(1)及び(2)及び(3)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(a)に示すようにレーザビーム又は電子ビームの走査によって形成される焼結ライン4の外枠領域2と接続する複数個の両端位置41に関する情報をメモリに記録すると共に、当該焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成し、かつ当該情報をメモリに記録した上で、記録されている両端位置41に関する情報と波型形状若しくは隆起形状に関する情報とを結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態2を採用することができる。
前記の実施形態2の場合には、両端位置41の組み合わせ及びその個数、並びに波型形状若しくは隆起形状の情報の作成に関する技術的事項は、実施形態1の場合と同一であるが、記録されている焼結ライン4の両端位置41に関する情報及び記録されている隆起形状を単に結合することによって焼結ライン4に関する情報を作成し得る点において、スピーディーなコントロールをすることができる。
実施形態1とは別に、基本構成(1)及び(2)及び(3)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(b)に示すように計算上設定された基準ライン40の外枠領域2と接続する複数個の両端位置401に関する情報をメモリに記録した上で、当該基準ライン40を基準とする焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成すると共に、記録されている複数個の両端位置401の情報と結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態3を採用することができる。
実施形態3は、実施形態1におけるメモリに記録する両端位置401の対象を、焼結ライン4ではなく、基準ライン40としていることにおいて相違しているが、実施形態3は、実施形態1と同様のシンプルなコントロールを実現することができる。
実施形態2とは別に、基本構成(1)及び(2)及び(3)記載の三次元造形物の製造方法をコントロールするCAD/CAMシステムであって、当該CAD/CAMシステム内に設置されているコンピュータにおいて、図10(b)に示すように計算上設定された基準ライン40の外枠領域2と接続する複数個の両端位置401に関する情報をメモリに記録すると共に、当該基準ライン40を基準とする焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報を制御部と演算部との協働によって作成し、かつ当該情報をメモリに記録した上で、記録されている両端位置401に関する情報と波型形状若しくは隆起形状に関する情報とを結合することによって、レーザビーム又は電子ビームの走査指令を出力することを特徴とするCAD/CAMシステムによる実施形態4を採用することができる。
実施形態4は、実施形態2におけるメモリに記録する両端位置401の対象を、焼結ライン4ではなく、基準ライン40としていることにおいて相違しているが、実施形態4は、実施形態2と同様のスピーディーなコントロールを実現することができる。
実施形態1~4においては、通常、焼結ライン4の波型形状若しくは隆起形状に関する情報が、個別の焼結ライン4における長手方向と直交する方向の幅、及び長手方向に沿って規則的に変化する数を不可欠なパラメータとして設定し、かつ前記両端位置401の幅に対応して選択している。
但し、前記不可欠なパラメータに付加して、隣り合う基準ライン40に沿っている2本の焼結ライン4同士における変化する位置の長手方向に沿った相違である位相差を更なるパラメータとして設定し、かつ当該位相差の程度を調整した場合には、基本構成(4)~(8)の各ラティス領域1を形成する焼結ライン4を選択し、かつ成形することができる。
以下、実施例にしたがって説明する。
実施例1は、図11に示すように、基本構成(9)に立脚した上で、外枠領域2の焼結に際し、内側ライン21及び外側ライン22と相似関係にある軌跡に沿って焼結ライン4を形成することを特徴としている。
このような相似型の焼結ライン4の形成によって、実施例1の場合には、極めてシンプルな制御によって外枠領域2を焼結することができる。
実施例2は、図12(a)に示すように、外枠領域2を所定幅だけ離れ、所定の方向に選択されている平行ラインによって区分し、ラティス領域1における焼結層の成形の前段階、又は後段階、又はその中間段階にて、前記平行方向と直交する方向にて焼結ライン4を形成することを特徴としている。
このような実施例2においては、図12(a)に示すように、特定の辺については、前記平行な方向と直交する方向に焼結ライン4を形成し、他の辺についても、前記区分された領域内における焼結ライン4と同一方向に焼結ライン4を形成するというシンプルな走査を実現することができる。
実施例2においては、特に図12(b)に示すように、焼結ライン4の方向が内側ライン21及び外側ライン22によって囲まれる領域が最大距離を形成するような方向を選択した場合には、外枠領域2を極めて効率的に焼結することができる。
実施例3は、図13(a)、(b)に示すように、積層を重ねるにしたがって、ラティス領域1を走査するビームのスポット径を順次大きくすると共に、ビームのパワーを順次大きくするか又はビームの走査のスピードを順次小さくするか、又はその双方を採用することによって、通気領域11の幅を順次小さく設定していることを特徴としている。
このような実施例3の構成によってキャビティ金型を製造した場合には、気流を噴入する入口に対し、気流が噴出する出口の面積を小さくすることによって、必要な圧力を成形している気流の噴出を実現することができる。
実施例4は、図14(a)、(b)に示すように、積層を重ねるにしたがって、ラティス領域1における焼結ライン4同士の間隔を順次段階的に小さく設定することによって、通気領域11の幅を順次段階的に小さく設定することを特徴としている。
実施例4の構成によってキャビティ金型を製造する場合においても、実施例3と同様の効果を実現することができる。
実施例5は、図15に示すように、ラティス領域1が、内側の空隙を囲んだ状態とし、かつ当該空隙の大きさを積層にしたがって順次小さくすることによって、内側へのテーパ形状を呈するラティス領域1を成形することを特徴としている。
このようなテーパ形状を採用している実施例5の場合には、ラティス領域1を形成する下側の領域にベースプレートを設置せずに、必要な上下方向の幅を有し、かつ所定の強度を伴うラティス領域1を実現することができる。
実施例6は、図16(a)、(b)、(c)に示すように、外枠領域2における外側ライン22及び/又は内側ライン21であるラティス領域1との境界領域の水平方向の位置が高さ方向の変化に従って斜傾していることを特徴としている。
図16(a)、(b)及び(c)は、斜方向の形成がそれぞれ外側ライン22のみ、内側ライン21のみ、及び双方の場合を示すが、このような特徴点によって、実施例6においては、外枠領域2の強度及び配置位置を高さ方向によって選択することができる。
尚、図16(a)、(b)、(c)においては、斜方向として、直線状の変化状態を示すが、曲線状の変化状態も選択可能である。
更には、斜方向に変化する外側ライン22及び内側ライン21については、一部領域の場合と全領域の場合との双方を包摂している。
実施例7は、外枠領域2を走査するレーザビーム又は電子ビームについて、ラティス領域1におけるスポット径よりも大きなスポット径を選択することによって焼結ライン4を形成すると共に、焼結ライン4における単位面積当たりのビームのパワーがラティス領域1におけるビームのパワーと同一となるようなパワー密度を設定していることを特徴としている。
このような特徴によって、実施例7の場合には、外枠領域2についてもラティス領域1と同様の強固な焼結による焼結状態を実現することができる。
本発明は、ラティス領域をスキージの移動方向を長手方向とするシンプルな焼結ラインによって実現する一方、均一な形状であり、しかも強固なラティス構造を実現すると共に、効率的な外枠領域の成形及び効率的なレーザビーム又は電子ビームの走査のコントロールを可能としている点において画期的であり、ラティス構造を伴う三次元造形の利用範囲は広範である。
1 ラティス領域
11 通気領域
12 テーパ領域
2 外枠領域
21 内側ライン
22 外側ライン
3 粉末層
4 焼結ライン
41 焼結ラインの長手方向における両端位置
40 基準ライン
401 基準ラインの長手方向における両端位置
5 スキージ