以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体をターゲットとして検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、タクシー、トラック、タクシー、オートバイ、自転車、船舶、航空機、ヘリコプター、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、本開示に含まれる自動車は、全長、全幅、全高、排気量、定員、又は積載量などによって限定されるない。例えば、本開示の自働車には、排気量が660ccより大きい自動車、及び排気量が660cc以下の自動車、いわゆる軽自動車なども含まれる。また、本開示に含まれる自動車は、エネルギーの一部若しくは全部に電気を利用し、モータを利用する自動車も含まれる。
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器を、移動体に設置した例を示している。
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器1が設置されている。また、図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)していてもよい。電子機器1の具体的な構成については後述する。電子機器1は、後述のように、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備える電子機器1が設置されている。図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器1は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、電子機器1が移動体100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、図1に示すような電子機器1を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このような電子機器1の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。電子機器1は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
電子機器1は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば図1に示す物体200)が存在する場合、電子機器1から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えば電子機器1の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体をターゲットとして検出することができる。
送信アンテナを備える電子機器1は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、電子機器1は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係る電子機器1は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200をターゲットとして検出することができる。例えば、図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。
図1において、電子機器1の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、図1において、電子機器1は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、電子機器1は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。
以下、典型的な例として、電子機器1の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、このような実施形態について説明する。
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、信号処理部10を備えている。信号処理部10は、信号発生処理部11、受信信号処理部12、及び通信インタフェース13を備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部として、送信DAC21、送信回路22、ミリ波送信回路23、及び、送信アンテナアレイ24を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、受信部として、受信アンテナアレイ31、ミキサ32、受信回路33、及び、受信ADC34を備えている。一実施形態に係る電子機器1は、図2に示す機能部のうち少なくともいずれかを含まなくてもよいし、図2に示す機能部以外の機能部を含んでもよい。図2に示す電子機器1は、ミリ波帯域等の電磁波を用いた一般的なレーダと基本的に同様に構成した回路を用いて構成してよい。一方で、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10による信号処理は、従来の一般的なレーダとは異なる処理を含む。
一実施形態に係る電子機器1が備える信号処理部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。特に、信号処理部10は、電子機器1が扱う信号について各種の処理を行う。信号処理部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。信号処理部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、信号処理部10は、例えばCPU(ハードウェア)及び当該CPUで実行されるプログラム(ソフトウェア)として構成してよい。信号処理部10は、信号処理部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
信号処理部10の信号発生処理部11は、電子機器1から送信する信号を発生する。一実施形態に係る電子機器1において、信号発生処理部11は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号発生処理部11は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号発生処理部11は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号発生処理部11は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号発生処理部11が生成する信号は、例えば信号処理部10において予め設定されていてもよい。また、信号発生処理部11が生成する信号は、例えば信号処理部10の記憶部などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号発生処理部11によって生成された信号は、送信DAC21に供給される。このため、信号発生処理部11は、送信DAC21に接続されてよい。
送信DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)21は、信号発生処理部11から供給されるデジタル信号をアナログ信号に変換する機能を有する。送信DAC21は、一般的なデジタル・アナログ・コンバータを含めて構成してよい。送信DAC21によってアナログ化された信号は、送信回路22に供給される。このため、送信DAC21は、送信回路22に接続されてよい。
送信回路22は、送信DAC21によってアナログ化された信号を中間周波数(Intermediate Frequency:IF)の帯域に変換する機能を有する。送信回路22は、一般的なIF帯域の送信回路を含めて構成してよい。送信回路22によって処理された信号は、ミリ波送信回路23に供給される。このため、送信回路22は、ミリ波送信回路23に接続されてよい。
ミリ波送信回路23は、送信回路22によって処理された信号を、ミリ波(RF波)として送信する機能を有する。ミリ波送信回路23は、一般的なミリ波の送信回路を含めて構成してよい。ミリ波送信回路23によって処理された信号は、送信アンテナアレイ24に供給される。このため、ミリ波送信回路23は、送信アンテナアレイ24に接続されてよい。また、ミリ波送信回路23によって処理された信号は、ミキサ32にも供給される。このため、このため、ミリ波送信回路23は、ミキサ32にも接続されてよい。
送信アンテナアレイ24は、複数の送信アンテナをアレイ状に配列させたものである。図2においては、送信アンテナアレイ24の構成を簡略化して示してある。送信アンテナアレイ24は、ミリ波送信回路23によって処理された信号を、電子機器1の外部に送信する。送信アンテナアレイ24は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる送信アンテナアレイを含めて構成してよい。
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナアレイ24を備え、送信アンテナアレイ24から送信波として送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。
例えば、図2に示すように、電子機器1の周囲に物体200が存在する場合を想定する。この場合、送信アンテナアレイ24から送信された送信波の少なくとも一部は、物体200によって反射される。送信アンテナアレイ24から送信された送信波のうち、物体200によって反射されるものの少なくとも一部は、受信アンテナアレイ31に向けて反射され得る。
受信アンテナアレイ31は、反射波を受信する。ここで、当該反射波は、送信アンテナアレイ24から送信された送信波のうち物体200によって反射されたものの少なくとも一部としてよい。
受信アンテナアレイ31は、複数の受信アンテナをアレイ状に配列させたものである。図2においては、受信アンテナアレイ31の構成を簡略化して示してある。受信アンテナアレイ31は、送信アンテナアレイ24から送信された送信波が反射された反射波を受信する。受信アンテナアレイ31は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる受信アンテナアレイを含めて構成してよい。受信アンテナアレイ31は、反射波として受信された受信信号を、ミキサ32に供給する。このため、受信アンテナアレイ31は、ミキサ32に接続されてよい。
ミキサ32は、ミリ波送信回路23によって処理された信号(送信信号)と、受信アンテナアレイ31によって受信された受信信号とを、中間周波数(IF)の帯域に変換する。ミキサ32は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられるミキサを含めて構成してよい。ミキサ32は、合成された結果として生成される信号を、受信回路33に供給する。このため、ミキサ32は、受信回路33に接続されてよい。
受信回路33は、ミキサ32によってIF帯域に変換された信号をアナログ処理する機能を有する。受信回路33は、一般的なIF帯域に変換する受信回路を含めて構成してよい。受信回路33によって処理された信号は、受信ADC34に供給される。このため、受信回路33は、受信ADC34に接続されてよい。
受信ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)34は、受信回路33から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。受信ADC34は、一般的なアナログ・デジタル・コンバータを含めて構成してよい。受信ADC34によってデジタル化された信号は、信号処理部10の受信信号処理部12に供給される。このため、受信ADC34は、信号処理部10に接続されてよい。
信号処理部10の受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に各種の処理を施す機能を有する。例えば、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、電子機器1から物体200までの距離を算出する(測距)。また、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、物体200の電子機器1に対する相対速度を算出する(測速)。さらに、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、物体200の電子機器1から見た方位角を算出する(測角)。具体的には、受信信号処理部12には、I/Q変換されたデータが入力されてよい。このようなデータが入力されることにより、受信信号処理部12は、距離(Range)方向及び速度(Velocity)方向の高速フーリエ変換(2D-FFT)をそれぞれ行う。その後、受信信号処理部12は、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、及び/又は、CFAR(Constant False Alarm Rate)などの処理による雑音点の除去による誤警報の抑制と一定確率化を行う。そして、受信信号処理部12は、CFARの基準を満たす点に対して到来角度推定を行うことにより、物体200の位置を得ることとなる。受信信号処理部12によって測距、測速、及び測角された結果として生成される情報は、通信インタフェース13に供給される。
信号処理部10の通信インタフェース13は、信号処理部10の情報を例えば外部の制御部50に出力などするインタフェースを含んで構成される。通信インタフェース13は、物体200の位置、速度、及び角度の少なくともいずれかの情報を、例えばCAN(Controller Area Network)などの信号として、信号処理部10の外部に出力する。物体200の位置、速度、角度の少なくともいずれかの情報は、通信インタフェース13を経て、制御部50に供給される。このため、通信インタフェース13は、信号処理部10に接続されてよい。
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばECU(Electronic Control Unit)のような制御部50に有線又は無線によって接続されてよい。制御部50は、移動体100の様々な動作を制御する。制御部50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。
図3は、信号処理部10の信号発生処理部11が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
図3は、FCM(Fast-Chirp Modulation(高速チャープ変調))方式を用いた場合における1フレームの時間的構造を示す。図3は、FCM方式の受信信号の一例を示している。FCMは、図3においてc1,c2,c3,c4,…,cnのように示すチャープ信号を、短い間隔(例えば最大測距距離から算出される電磁波のレーダと物標との間の往復時間以上)で繰り返す方式である。FCMにおいては、受信信号の信号処理の都合上、図3に示すようなサブフレーム単位に区分けして、送受信の処理を行うことが多い。
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。図3に示す例において、信号発生処理部11は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,c3,c4,…,cnのように示してある。図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
図3に示す例において、c1,c2,c3,c4,…,cnのようにいくつかのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,c3,c4,…,cnのようにいくつかのチャープ信号を含んで構成されている。また、図3に示す例において、サブフレーム1,サブフレーム2,…,サブフレームNのようにいくつかのサブフレームを含めて、1つのフレーム(1フレーム)としている。すなわち、図3に示す1フレームは、N個のサブフレームを含んで構成されている。また、図3に示す1フレームをフレーム1として、その後に、フレーム2,フレーム3,…などが続いてよい。これらのフレームは、それぞれフレーム1と同様に、N個のサブフレームを含んで構成されてよい。また、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
一実施形態に係る電子機器1において、信号発生処理部11は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号発生処理部11が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば信号処理部10の記憶部などに記憶しておいてよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
以下、電子機器1は、図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は任意としてよい。すなわち、一実施形態において、信号発生処理部11は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは任意としてよい。すなわち、一実施形態において、信号発生処理部11は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号発生処理部11は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号発生処理部11は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
図4は、図3に示したサブフレームの一部を、他の態様で示した図である。図4は、信号処理部10の受信信号処理部12(図2)において行う処理である2D-FFT(Two Dimensional Fast Fourier Transform)を行った結果として、図3に示した送信信号を受信した受信信号の各サンプルを示したものである。
図4に示すように、サブフレーム1,…,サブフレームNのような各サブフレームにおいて各チャープ信号c1,c2,c3,c4,…,cnが格納されている。図4において、各チャープ信号c1,c2,c3,c4,…,cnは、それぞれ横方向に配列された升目によって示す各サンプルから構成されている。図4に示す受信信号は、図2に示した受信信号処理部12において、2D-FFT、CFAR、及び各サブフレームの統合信号処理が施される。
図5は、図2に示した受信信号処理部12において、2D-FFT、CFAR、及び各サブフレームの統合信号処理が施された結果、レンジ-ドップラー(距離-速度)平面上の点群が算出された例を示す図である。
図5において、横方向はレンジ(距離)を表し、縦方向は速度を表している。図5に示す、塗りつぶされた点群s1は、CFARの閾値処理を超えた信号を示す点群である。図5に示す、塗りつぶされていない点群s2は、CFARの閾値を超えなかった、点群のないbin(2D-FFTサンプル)を示す。図5において算出されたレンジ-ドップラー平面上の点群は、方向推定によりレーダからの方位を算出されて、物体200を示す点群として、2次元平面上の位置及び速度が算出される。ここで、方向推定は、ビームフォーマ及び/又は部分空間法により算出されてよい。代表的な部分空間法のアルゴリズムには、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及び、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotation Invariance Technique)などがある。
図6は、受信信号処理部12が、方向推定を行った後に、図5に示したレンジ-ドップラー平面から、XY平面への点群座標の変換を行った結果の例を示す図である。図6に示すように、受信信号処理部12は、XY平面上に点群PGをプロットすることができる。ここで、点群PGは、各点Pから構成されている。また、それぞれの点Pは、角度θ、及び、極座標における半径方向の速度Vrを有している。
次に、一実施形態に係る電子機器1が行うCFAR処理について説明する。まず、ミリ波レーダなどの技術において行われる一般的なCFAR処理も部分的に含めて説明する。
図7は、一実施形態に係る電子機器1がCFAR処理を行う際の各セルの配置例を示す図である。図7は、一実施形態に係る電子機器1がCFAR処理を行うに際し、検査セル(テストセル)T、参照セル(リファレンスセル)R、及びガードセルGが配置される態様の一例を、概念的に示す図である。
一実施形態に係る電子機器1は、図7の左から右に示す距離方向に配列されたセルを用いてCFAR処理を行うものとしてよい。図7に示すセルTは、電子機器1によってCFAR検査が行われる検査セル(テストセル)を示す。図7に示すセルRは、電子機器1が検査セルTについてCFAR処理を行う際の閾値を算出するための参照セル(リファレンスセル)を示す。図7に示すセルGは、電子機器1がCFAR処理を行う際の閾値の算出に検査セルTが影響しないようにするために配置されるガードセルを示す。
図7に示す例においては、ガードセルGは、検査セルTの前後に2個ずつ、合成4個配置されている。また、図7に示す例においては、参照セルRは、検査セルTを挟んで配置されるガードセルGの前後に4個ずつ、合成8個配置されている。しかしながら、一実施形態において、ガードセルG及び/又は参照セルRは、図7に示す例とは異なる態様で配置してもよい。例えば、参照セルRは、検査セルTの前後に、合計でM個配置されてよい。また、ガードセルGは、検査セルTの前後に、合計でN個配置されてよい。ここで、ガードセルGは、検査セルTと参照セルRとの間に配置されてよい。
図7に示したような参照セルRから、CFAR処理のための閾値を算出する方式に応じて、いくつかのCFAR処理が提案されている。例えば、CFAR処理として、CA(Cell Averaging)-CFAR、OS(Order Static)-CFAR、ワイブルCFAR、対数正規CFARなどの方式が提案されている。レーダ技術において、誤警報率(FAR)を低減して定数化するCFARの処理は非常に重要である。レーダ技術において、目標となる物体からの反射のみならず、目標となる物体以外からの反射、すなわちクラッタも検出される。目標となる物体以外からの反射すなわちクラッタは、誤検知情報をもたらす。誤警報率(FAR)をある一定割合に抑える処理として、CFAR処理が存在する。
CFAR処理は、上述のように、様々な方式が存在する。中でも、クラッタの統計的性質に基づくOS-CFARは、多くの場面で用いられている。例えば、クラッタの統計的性質、すなわちクラッタの強度分布の確率密度関数(probability density function:PDF)が、レイリー分布等の1パラメータで記述される場合を想定する。この場合、OS-CFARは、参照セルRをその強度に応じてソートしたうちの1つのランク(順番)の値に所定の係数を乗算して、CFARの閾値を設定する。クラッタの確率密度は、厳密には、ワイブル分布などの2つのパラメータで記述されるPDFに従う場合もある。しかしながら、ワイブル分布などの2つのパラメータで記述されるPDFは、対数増幅器等を用いることにより、1パラメータのPDFに変換することが可能である。したがって、そのような場合でも、OS-CFARの適用は可能である。1パラメータで記述されるPDFの分布は、その尤度が極めて簡易な代数式で記述される。
以下、一実施形態に係る電子機器1の好適な動作の一例として、OS-CFAR処理を行う場合について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、例えばCA-CFARのような他の処理を実行するものとしてもよい。
ここで、一実施形態に係る電子機器1によるOS-CFAR処理の手順について、さらに説明する。まず、図7に示すような参照セルRの順序を並べ替えて、それぞれ参照セルRの各値が、次の式(1)に示すような順序になるようにする。ここで、x
iは、昇順に並べたi番目の参照セルを示すものとする。
以下、確率密度関数p(x)が、1パラメータによる解析式で表現される場合について説明する。OS-CFAR処理においては、ある実数の定数α及びk番目の参照セルRの値x
kを用いて、閾値Thを、以下の式(2)のように決定する。
ここで、検査セルTの値x
testが次の式(3)を満たす場合、CFARの基準を満たしたすものと定義する。この場合、検査セルTの値x
testは。ブーリアン値の1になるものとしてよい。
例として、確率密度関数がレイリー分布となる場合について検討する。すなわち、確率密度関数p(x)が、次の式(4)のように表すことができるものとする。
この場合、上記式(2)及び式(3)に示したようなOS-CFAR処理による誤警報率P
Nは、ガンマ関数Γを用いて、次の式(5)にように表すことができる。
すなわち、上記式(2)において、αの値を決定し、さらに何番目の参照セルRを用いて閾値Thを設定するかを決定すれば、誤警報率P
Nが決定されることになることが分かる。また、誤警報率P
Nを求めるには、α及びkを決定すればよいことが分かる。
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作の説明に際し、まず、一般的なミリ波レーダの技術の現状について説明する。
現在、ミリ波レーダの技術は、例えば車両用途等において急速に普及している。以下、ミリ波帯域とは、24GHz帯域(21.65GHzから26.65GHz)、60GHz帯域(60GHzから61GHz)、76GHz帯域(76GHzから77GHz)、及び79GHz帯域(77GHzから81GHz)を含むものとする。ミリ波レーダを含むレーダ技術は、航空管制、軍事、船舶、及び車両等、非常に多くの用途に使用され得る。航空用レーダ及び船舶用レーダにおけるクラッタには、グランドクラッタ、シークラッタ、及びウェザークラッタなどが想定される。CFAR処理は、クラッタの検知率を、各々の統計的性質を利用して定数化及び低減するものである。このため、統計的性質を有しない物標が空間的に密に発生していない場合であれば、CFAR処理は、適切に動作し易い。しかしながら、CFAR処理は、仮定された統計的性質から外れたレーダの応答が検知すべき空間に多く存在する場合、その処理結果が良好にならないことがある。
ミリ波レーダは、密集した市街地及び駐車場等の交通環境において使用されることが多い。このため、車両及び/又は人等の検出すべき交通環境のアクター及び/又はその他建造物等は、大抵の場合、密に配置されている。このように、多くの物体がミリ波レーダの検出範囲に存在する場合、ミリ波レーダの参照セルR内に物標からの反射を持つセルが複数含まれることも想定される。ミリ波レーダの検出範囲に多くの物体が存在すると、これらの物体は、クラッタの確率密度分布には従わなくなる。このため、式(2)に示したxkは、上記式(5)に示した誤警報率PNによって表すことができなくなる。この場合、CFAR処理に用いられる閾値を決定するランクを定数kで一律とすると、CFAR処理に用いられる閾値が大幅に増大して、数学的前提が破綻してしまう。このため、本来のクラッタの統計的性質により、誤警報率を抑えて定数化するという、CFAR処理を適切に実行することができなくなる。このような場合、OS-CFARの処理も適切に実行できなくなり得る。具体的には、例えば、若干の路面の凹凸等に起因するクラッタをCFAR処理により除去しようとする際、空間全体としてのクラッタの統計的性質が乱され得る。このような場合、クラッタが除去しきれずに、誤警報の問題が生じ得る。また、例えば、検査セルTにおいて仮に物体が存在したとしても、CFAR処理の閾値で切り捨てられてしまい、未検出になることも想定される。このような場合、物体を検出しきれずに、未警報の問題も生じ得る。
上述の内容は、クラッタの受信レベルを表す確率密度関数p(x)が1パラメータで記述される場合を想定した。しかしながら、クラッタの受信レベルを表す確率密度関数p(x)の分布が、ワイブル分布等の2パラメータで記述される場合も、同様である。OS-CFARの処理において、クラッタが2パラメータの確率密度関数に従う場合、閾値を決定する際に、k番目の参照セルxkの値に加え、l番目の参照セルxlの値も用いることになる。
上述したように、一般的なミリ波レーダにおいて、複数物体、特異的ノイズ、及び/又は、マルチパスが存在する環境でOS-CFARを含むCFAR処理を実行すると、参照セルR内にこれらの物体などが含まれる場合に、不都合が生じ得る。
そこで、一実施形態に係る電子機器1は、上記の1パラメータで記述できる確率密度関数の性質を利用して、CFAR閾値を各検査セルTに応じて、アダプティブに変化させる。以下、このような動作について、さらに説明する。
図8は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。図8は、図1に示したような状況において、物体200を他の物体に置き換えた様子を示す図である。図8に示すように、電子機器1は、例えば自動車などのような移動体100の前方に設置されているものとする。また、電子機器1は、例えば自動車などのような移動体100の後方などに設置されてもよい。ここで、電子機器1は、地面(路面)から高さ50cmの位置に設置されているものとする。
図8に示すように、移動体100(電子機器1)の前方4.5mの位置には、例えばコンクリート壁などのような比較的大きな物体210があるものとする。また、図8に示すように、移動体100(電子機器1)の前方3.0mの位置には、例えば車止めなどのような比較的小さな物体220が置かれているものとする。ここで、物体210及び物体220は、いずれも静止しているものとする。また、移動体100(電子機器1)も静止しているものとする。このような状況において従来のOS-CFAR処理を行うと、(比較的小さな)物体220は、(比較的大きな)物体210にマスキングされて、検出されにくくなる。
図9は、図8に示すような状況において、従来の(一般的な)OS-CFAR処理を行った結果の例を示す図である。図9は、図8に示すような状況において、従来のOS-CFAR処理の手順に従って2D-FFTを行った結果を、受信信号の各サンプルとして示したものである。図9において、横方向はレンジ(距離)を表し、縦方向は速度(相対速度)を表している。
図9に示すように、速度ゼロで距離4.5mの領域付近において物体が検出されている。すなわち、図9に示す例では、図8に示した(比較的大きな)物体210は適切に検出されたことが示されている。一方、図9に示すように、速度ゼロで距離3.0mの領域付近においては物体が検出されていない。すなわち、図9に示す例では、図8に示した(比較的小さな)物体220は適切に検出されていないことが示されている。このように、従来のOS-CFAR処理においては、小さい物体は壁のような大きな物体にマスキングされて検出されず、大きな物体のみが検出されることがある。
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。以下、一実施形態に係る電子機器1において、従来の(一般的な)OS-CFAR処理と異なる点について重点的に説明する。以下の説明において簡略化又は省略されている内容については、従来の(一般的な)OS-CFAR処理と同様、又はこれに基づいて行うものとしてよい。
また、以下説明する処理は、一実施形態に係る電子機器1の信号処理部10において実行されるものとしてよい。特に、以下説明する処理は、信号処理部10の受信信号処理部12において実行されるものとしてよい。また、以下、クラッタの分布が1パラメータで記述できるレイリー分布によって近似する場合について説明する。このように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10は、クラッタの分布を、1パラメータで記述されるレイリー分布によって近似してもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、従来のOS-CFAR処理による問題に対処するため、選定される参照セルRの値xk(上記式(2)参照)を、誤警報率PN,LFと比較する。こで、誤警報率PN,LFは、別途推定したレイリー分布をパラメータの最尤推定値から決定したものとしてよい。
クラッタの確率密度関数が上記式(4)に示したレイリー分布で記述される場合、そのパラメータσは、以下の式(6)のように記述される。
ここで、nは、サンプルの総数である。また、x
iは、観測値である。
上記式(6)においてパラメータσの最尤推定値を導出するためのサンプルは、2次元FFTの結果得られるレンジ-ドップラー平面(図5参照)上において、任意の物標の反射を含みにくいと想定される領域のものを使用してよい。任意の物標の反射を含みにくいと想定される領域とは、例えば、時速百数十から200キロのような高速度領域としてよい。上記式(6)においてパラメータσの最尤推定値を導出するためのサンプルは、このような高速度領域において、例えば10~50程度の点を抽出したものを使用してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10は、最尤推定値を導出するためのサンプルを、所定の速度以上の領域から抽出してもよい。
σを用いたレイリー分布の累積分布関数F(x)は、以下の式(7)の通りになる。
したがって、誤警報率の最尤推定値P
N,LFは、以下の式(8)のよう表現できる。
上記式(8)において所望の誤警報率P
N,LFを所望の値に設定することにより、その誤警報率を与える強度Xは、次の式(9)のように逆算するこができる。
ここで、レンジ-ドップラー平面(図5参照)上の全てのセルにおいて、クラッタは同程度であり、同じレイリー分布に近い分布をするものと想定される。このため、OS-CFAR処理を行うために選定された参照セルRの値x
kは、Xと同等程度になると想定される。したがって、x
kがXより著しく大きくなる場合、x
kを再選定するのが望ましい。すなわち、として選定される参照セルRの値x
kは、所定の正の実数係数βを用いて、下記の式(10)に示すような条件を満たすものとするのが望ましい。
ここで、βは、0.1から1程度の範囲で適宜設定してよい。また、βは、例えば用途などに応じて、0.1から1.5程度までの範囲で適宜設定してもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、以上のようにして選定された参照セルRを用いて、OS-CFAR処理の閾値を決定する。その後は、一実施形態に係る電子機器1は、従来のOS-CFAR処理と同様の手順に基づいて、物体検出に係る信号処理を行ってよい。
図10は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。図10は、上述のように、電子機器1によって、一実施形態に係るOS-CFARに使用する参照セルを選定する手順を示している。一実施形態に係る電子機器1において、図10に示す以外の動作は、従来のOS-CFAR処理と同様に、又は従来のOS-CFAR処理に基づいて行ってよい。
図10に示す動作が開始すると、信号処理部10の受信信号処理部12は、所望の誤警報率を与える受信レベル(強度)の最尤推定値Xを算出する(ステップS1)。ステップS1において、受信信号処理部12は、上記式(6)乃至式(9)に基づいて、最尤推定値Xを算出してよい。
ステップS1において最尤推定値Xが算出されたら、受信信号処理部12は、選定するか否か吟味する参照セルRの値xkがβX以下であるか否か判定する(ステップS2)。すなわち、ステップS2において、受信信号処理部12は、選定しようとしている参照セルRの値xkが、上記式(10)を満たすか否かを判定する。
ステップS2において参照セルRの値xkがβX以下である場合、受信信号処理部12は、その参照セルRを選定することを決定してよい(ステップS3)。すなわち、ステップS2において参照セルRの値xkが上記式(10)を満たす場合、受信信号処理部12は、ステップS3に移行してその参照セルRを選定する。このように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10は、参照セルRの値が最尤推定値に基づく値βX以下である場合、当該参照セルを選定してもよい。
ステップS3において当該参照セルRが選定されたら、受信信号処理部12は、図10に示す動作を終了して、その後は従来のOS-CFARと同様に物体検出の処理を行ってよい。例えば、受信信号処理部12は、ステップS3の後、選定された参照セルRの値に基づいて、OS-CFAR処理の閾値を算出して、従来のOS-CFARと同様に物体検出の処理を行ってよい。
一方、ステップS2において参照セルRの値xkがβX以下でない場合、受信信号処理部12は、その参照セルRを選定しないことを決定し、ステップS4の処理に移行してよい。すなわち、ステップS4の処理に移行する場合とは、選定しようとしている参照セルRの値xkが上記式(10)を満たさない場合に相当する。このように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10は、参照セルRの値が最尤推定値に基づく値βXを超える場合、当該参照セルを選定しないものとしてよい。
ステップS4において、受信信号処理部12は、当該参照セルRが最小の値の参照セルであるか否かを判定する。すなわち、ステップS4において、受信信号処理部12は、当該参照セルRの値が、選定される候補として複数用意された参照セルRのうち、最小の値であるか否かを判定する。
ステップS4において当該参照セルRの値が最小の値を有する場合、選定される候補として複数用意された参照セルRのうち、より小さな値を有する参照セルは存在しない。したがって、この場合、受信信号処理部12は、ステップS3に移行してその参照セルRを選定する。このように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10は、参照セルRの値が最尤推定値に基づく値βXを超える場合において、当該参照セルRの値の次に小さい値の参照セルがないとき、当該参照セルを選定してもよい。
一方、ステップS4において当該参照セルRの値が最小の値ではない場合、選定される候補として複数用意された参照セルRのうち、より小さな値を有する参照セルが存在する。したがって、この場合、受信信号処理部12は、ステップS5に移行して次に値が小さい参照セルRの値を参照する。このように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10は、参照セルRの値が最尤推定値に基づく値βXを超える場合、当該参照セルRの値の次に小さい値の参照セルを選定してもよい。
ステップS5において次に値が小さい参照セルRの値を参照したら、受信信号処理部12は、ステップS2に戻り、その参照セルRの値xkがβX以下であるか否か判定する。以降、受信信号処理部12は、上述同様に動作を続行することができる。
以上のように、一実施形態に係る電子機器1の信号処理部10は、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、一定誤警報確率で物体を検出する。信号処理部10は、受信信号に基づく信号強度の距離方向及び相対速度方向の2次元的な分布において、検査セルを基準として距離方向に配置される参照セルを、受信信号に基づく信号強度の誤警報率を与える最尤推定値に基づいて選定する。また、信号処理部10は、参照セルRにおける信号強度に基づいて、物体の検出に用いる閾値を設定してもよい。また、信号処理部10は、参照セルRにおける信号強度の順序統計量に基づいて、物体の検出に用いる閾値を設定してもよい。
図11は、図8に示すような状況において、一実施形態に係る電子機器1がOS-CFAR処理を行った結果の例を示す図である。図11は、図8に示すような状況において、一実施形態に係る電子機器1がOS-CFAR処理の手順に従って2D-FFTを行った結果を、受信信号の各サンプルとして示したものである。図11において、横方向はレンジ(距離)を表し、縦方向は速度(相対速度)を表している。
図11に示すように、速度ゼロで距離4.5mの領域付近において物体が検出されている。すなわち、図11に示す例でも、図9に示した例と同様に、図8に示した(比較的大きな)物体210は適切に検出されたことが示されている。また、図11に示すように、速度ゼロで距離3.0mの領域付近においても物体が検出されている。すなわち、図11に示す例では、図9に示した例とは異なり、図8に示した(比較的小さな)物体220も適切に検出されていることが示されている。このように、一実施形態に係る電子機器1のOS-CFAR処理においては、比較的小さい物体であっても、壁のような比較的大きな物体にマスキングされずに検出され得る。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体を良好な精度で検出することができる。
上述のように、一実施形態に係る電子機器1によれば、OS-CFAR処理による未警報率を低減し得る。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、未警報率を低く抑えることができるため、CFAR処理による誤警報率PNを低く設定することも可能になる。
上述の実施形態においては、クラッタの分布が1パラメータで記述できるレイリー分布によって近似する場合について説明した。クラッタの確率密度関数を、例えばワイブル分布などのような2パラメータの関数で近似する場合、数学的処理によりレイリー分布等の1パラメータの分布関数に変換することができる。したがって、クラッタの確率密度関数を2パラメータの関数で近似する場合でも、1パラメータの分布関数に変換することにより、一実施形態に係る電子機器1による処理を実行することができる。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器及び/又は任意のコンピュータが実行するプログラムとして実施してもよい。