JP2022135223A - 人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック - Google Patents

人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック Download PDF

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Abstract

【課題】目標位置に精度良く着底させることができ、また、少ない投入個数でマウンド礁を築造でき、施工費を縮減することができる湧昇流ブロックを提供する。【解決手段】基本形状が直方体であり、水平な天端面11、水平な底面12、及び、四つの垂直な側面13を有するとともに、四隅に、角部が切り欠かれるとともに内側へ抉れるように形成された切欠溝14を有し、横幅寸法(a)に対する奥行寸法(b)の比率(b/a)が0.5~0.8の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する高さ寸法(h)の比率(h/a)が1.0~1.5の範囲内に設定され、また、横幅寸法(a)に対する切欠溝14の寸法の比率が0.1~0.3の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する切欠溝14の深さ寸法の比率が0.03~0.15の範囲内に設定されていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、湧昇流を誘発して海域を肥沃化し、魚介類が集まる好漁場を形成することができる人工湧昇流マウンド礁用のコンクリートブロック(湧昇流ブロック)に関する。
近年、水産資源の回復、維持、増大を目的として、水深100~200m程度の海底に多数のコンクリートブロックを積み上げて、マウンド礁を造成する工事が実施されている。水深の大きい海底にマウンド礁を造成することにより、湧昇流(深層から表層へ海水が湧き上がる流れ)が誘発され、深層水に含まれる豊富な栄養塩を表層に供給することができ、その結果、海域の肥沃化、ひいては魚介類が集まる好漁場の形成を期待することができる。
水深が大きい海底に人工湧昇流マウンド礁を形成する場合、大量の湧昇流ブロックを、バージ船にて海上の投入予定位置(例えば、計画位置の直上位置)まで移送し、海中へ投入し、沈降させて、海底の計画位置に湧昇流ブロックを山状に積み上げるという方法が採用されている。
意匠登録第1433149号公報 意匠登録第1433150号公報 意匠登録第1433151号公報 意匠登録第1433363号公報 意匠登録第1433364号公報 特開2011-250747号公報
従来の一般的な湧昇流ブロックとしては、三方向の外径寸法(横幅、奥行、及び、高さの寸法)がすべて同一のもの(キューブ型)が知られているが、このキューブ型の湧昇流ブロックは着底精度に問題がある。具体的には、キューブ型の湧昇流ブロックは、海上から投入した際、真っ直ぐに海中を沈降させることが難しく、多くのブロックが計画位置の周囲へ拡散してしまうという事態が生じ、その結果、設計通りの大きさのマウンド礁を築造するために、計画数量よりも多くのブロックが必要となり、材料費を含む施工費、及び、工期が増大してしまうという問題がある。
尚、材料費を節減できるように、天端面から底面まで貫通する垂直な空洞部を中央に形成した湧昇流ブロックも存在するが、着底精度が更に悪化してしまうという問題がある。
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、目標位置に精度良く着底させることができる湧昇流ブロックを提供することを目的とする。
本発明に係る人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック(湧昇流ブロック)は、基本形状が直方体であり、水平な天端面、水平な底面、及び、四つの垂直な側面を有するとともに、四隅に、角部が切り欠かれるとともに内側へ抉れるように形成された切欠溝を有し、横幅寸法(a)に対する奥行寸法(b)の比率(b/a)が0.5~0.8の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する高さ寸法(h)の比率(h/a)が1.0~1.5の範囲内に設定されていることを特徴としている。
尚、横幅寸法(a)に対する奥行寸法(b)の比率(b/a)を0.8~0.9の範囲内に設定することもでき、この場合、横幅寸法(a)に対する高さ寸法(h)の比率(h/a)を1.1~1.5の範囲内に設定することが好ましい。
また、横幅寸法(a)に対する奥行寸法(b)の比率(b/a)を0.9~1.0の範囲内に設定することもでき、この場合、横幅寸法(a)に対する高さ寸法(h)の比率(h/a)を1.3~1.5の範囲内に設定することが好ましい。
更に、横幅寸法(a)に対する切欠溝の横幅方向の寸法(e1)の比率(e1/a)、及び、奥行方向の寸法(e2)の比率(e2/a)が、いずれも0.1~0.3の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する切欠溝の深さ寸法(d)の比率(d/a)が、0.03~0.15の範囲内に設定されていることが好ましい。
また、中央に空洞部を形成することもでき、この場合、天端面側の開口幅(c)に対する底面側の開口幅(c’)の比率(c’/c)を0.6以下に設定することが好ましい。
本発明に係る人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック(湧昇流ブロック)は、従来のものと比較して、目標位置に対し精度良く着底させることができ、従って、工事の進捗管理、ブロック投入計画立案の効率化を図ることができる。また、少ない投入個数でマウンド礁を築造できるため、施工費を縮減することができる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る湧昇流ブロック1の斜視図である。 図2は、図1に示す湧昇流ブロック1の平面図である。 図3は、実施例1の実験で使用した水槽の写真である。 図4は、実施例1の実験で使用したブロック模型M01(従来のキューブ型の湧昇流ブロックと同じ寸法比)、M06、M11、及び、M20の斜視図である。 図5は、実施例2の実験で想定したマウンド礁の斜視図である。 図6は、実施例2の実験における、標準偏差σが「13.4」の湧昇流ブロックのシミュレーション結果を示す図及びグラフである。 図7は、実施例2の実験における、標準偏差σが「5.0」の湧昇流ブロックのシミュレーション結果を示す図及びグラフである。 図8は、実施例2の実験における、標準偏差σが「7.0」の湧昇流ブロックのシミュレーション結果を示す図及びグラフである。 図9は、実施例3の実験で使用したブロック模型M21~M27の断面図である。
以下、添付図面に沿って、本発明に係る人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック(湧昇流ブロック)の実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る湧昇流ブロック1の斜視図、図2は、その平面図である。この湧昇流ブロック1は、基本形状が直方体であり、水平な天端面11、水平な底面12、及び、四つの垂直な側面13を有し、更に、四隅(隣接する二つの側面13,13の間の部分)に、角部が切り欠かれるとともに内側へ抉れるように形成された切欠溝14を有している。
本実施形態の湧昇流ブロック1は、横幅寸法a(長辺の寸法)に対する奥行寸法b(短辺の寸法)の比率(b/a)が0.8に設定され、かつ、横幅寸法aに対する高さ寸法hの比率(h/a)が1.5に設定されている。尚、b/aは0.5~0.8の範囲内とすることが好ましく、この場合、h/aを1.0~1.5の範囲内に設定することが好ましい。また、b/aを0.8~0.9の範囲内に設定することもでき、この場合、h/aを1.1~1.5の範囲内に設定することが好ましい。更に、b/aを0.9~1.0の範囲内に設定することもでき、この場合、h/aを1.3~1.5の範囲内に設定することが好ましい。
また、横幅寸法aに対する切欠溝14の横幅方向の寸法e1の比率(e1/a)(図2参照)、及び、奥行方向の寸法e2の比率(e2/a)は、いずれも0.2に設定され(0.1~0.3の範囲内とすることが好ましい)、かつ、横幅寸法aに対する切欠溝14の深さ寸法dの比率(d/a)は0.07に設定されている(0.03~0.15の範囲内とすることが好ましい)。
尚、図1に示す湧昇流ブロック1には、従来の湧昇流ブロックのような空洞部(天端面から底面まで貫通する空洞部)(特許文献1~5参照)は形成されていないが、空洞部を形成することも可能である。但し、天端面11側の開口幅cに対する底面12側の開口幅c’の比率(c’/c)を0.6以下に設定することが好ましい(本発明の第二実施形態)。
上記実施形態の湧昇流ブロック1は、従来のブロックと比較して、目標位置に対して精度良く着底させることができる。以下、この点について発明者らが行った各種実験の結果を、実施例1~3として説明する。
図3(1)に示すような実験水槽を用意するとともに、諸元の異なる複数種類の湧昇流ブロックの模型(縮尺:1/80)を種類毎に多数個用意し、水槽の底面に設定した目標位置の直上の位置(水面)から、各ブロック模型を種類別に1個ずつ水中に投入して落下させ、目標位置から着底位置までの距離(散らばり距離)を計測し、それらの平均(標準偏差σ)を種類別に算出した。
尚、実験水槽としては、水深160mを想定して、深さ2m(縮尺:1/80)の水を貯留したものを用意した。また、実験水槽の底部には、縦横5cm間隔の格子(実物大換算:4m)が描かれた板(大きさ:1m×1m)を配置し、その中央部を目標位置とした(図3(2)参照)。
ブロック模型としては、図1に示す湧昇流ブロック1と外形的な特徴が共通するブロック(即ち、基本形状が直方体であり、水平な天端面11と底面12、及び、四つの垂直な側面13を有し、四隅に切欠溝14を有するブロック)であって、横幅寸法a(長辺の寸法)を2.5cm(実物大換算:2m)とし、横幅寸法a(長辺の寸法)に対する奥行寸法b(短辺の寸法)の比率(b/a)を0.5~1.0の範囲内で数段階に変化させるとともに、横幅寸法aに対する高さ寸法hの比率(h/a)を1.0~1.5の範囲内で数段階に変化させて製作した20種類のブロック模型M01~M20を用意した(図4参照)。
ブロック模型M01~M20の散らばり距離の測定結果から算出した種類別の平均散らばり距離(標準偏差σ)(単位:m(実物大換算))は、次の通りである。
Figure 2022135223000002
ブロック模型M01は、従来の一般的な湧昇流ブロックと同様に、三方向の外径寸法(横幅、奥行、及び、高さの寸法)がすべて同一であるキューブ型であり、その標準偏差σは上表の通り13.4mであった。これに対し、ブロック模型M09~M20(b/a=0.5~0.8、h/a=1.0~1.5)の標準偏差σは、キューブ型のブロック模型M01の1/2以下となった。また、ブロック模型M04(b/a=1.0、h/a=1.5)の標準偏差σは5.0m、ブロック模型M07(b/a=0.9、h/a=1.3)の標準偏差σは5.3m、ブロック模型M08(b/a=0.9、h/a=1.5)の標準偏差σは5.8mとなり、これらもキューブ型のブロック模型M01の1/2以下となった。
また、ブロック模型M03(b/a=1.0、h/a=1.3)の標準偏差σは7.4m、ブロック模型M06(b/a=0.9、h/a=1.1)の標準偏差σは7.3mとなり、いずれもキューブ型のブロック模型M01の約55%となった。
標準偏差σ(平均散らばり距離)の値が異なる複数種類の湧昇流ブロックを対象として、コンピュータ解析プログラムを用いた海中落下シミュレーション実験を行った。
ここでは、図1に示す湧昇流ブロック1と外形的な特徴が共通するブロック(即ち、基本形状が直方体であり、水平な天端面11と底面12、及び、四つの垂直な側面13を有し、四隅に切欠溝14を有するブロック)であって、横幅寸法a(長辺の寸法)を2.0mとしたものを実験対象とし、標準偏差σの値として、13.4(実施例1のブロック模型M01(キューブ型)を想定)、5.0(実施例1のブロック模型M04、M07、M10等を想定)、及び、7.0(実施例1のブロック模型M03、M06を想定)の三種類を設定した。また、上記湧昇流ブロックを使用する場合において、直径60m、中央部の高さ15mのマウンド礁(図5参照)を築造するために必要となるブロックの個数(計画数量)を1000個と算出し、解析プログラムにおいて、一種類につき1000個の湧昇流ブロックを海面(目標位置の直上の位置)から投入し、落下させ、水深160mの海底に堆積させるシミュレーションを行った。
図6は、標準偏差σが13.4の湧昇流ブロックのシミュレーション結果を示す図及びグラフである。標準偏差σが13.4の湧昇流ブロックを使用した場合、図示されているように、多数のブロックが直径60mの計画線の外側へ広く散らばってしまい、その結果、十分な高さのマウンド礁を形成することができず、より多くの(少なくともあと1000個以上の)ブロックが必要になることが分かった。
図7は、標準偏差σが5.0の湧昇流ブロックのシミュレーション結果を示す図及びグラフであり、図8は、標準偏差σが7.0の湧昇流ブロックのシミュレーション結果を示す図及びグラフである。標準偏差σが5.0又は7.0の湧昇流ブロックを使用した場合、殆どのブロックが直径60mの計画線の内側に収まり、かつ、十分な高さのマウンド礁を形成できることが確認された。つまり、標準偏差σが7.0程度(或いはそれ以下)の湧昇流ブロックであれば、従来のもの(標準偏差σ:13.4)と比較して、目標位置に対し精度良く着底させることができ、より少ない投入個数でマウンド礁を築造できるという効果を期待することができると考えられる。
この実施例2の実験結果と、実施例1の実験結果(表1)とを合わせて検討してみると、b/aを0.5~0.8の範囲内に設定した場合には、h/aを1.0~1.5の範囲内に設定することにより(表1のブロック模型M09~M20参照)、また、b/aを0.8~0.9の範囲内に設定した場合には、h/aを1.1~1.5の範囲内に設定することにより(表1のブロック模型M06~M08参照)、更に、b/aを0.9~1.0の範囲内に設定した場合には、h/aを1.3~1.5の範囲内に設定することにより(表1のブロック模型M03、M04参照)、上記のような効果を期待することができると考えられる。
図9に示すように、中央に空洞部15を形成した複数種類の湧昇流ブロックの模型M21~27(縮尺:1/80)を多数用意し、実施例1の実験と同様の実験を行い、種類別に散らばり距離を計測し、標準偏差σ(平均散らばり距離)を算出した。
尚、図9(1)のブロック模型M21は、従来の湧昇流ブロックと同様に、天端面11における空洞部15の開口幅cと、底面12における開口幅c’を同一の寸法に設定されている。図9(2)のブロック模型M22~M26は、底面12側における空洞部15の開口幅c’を、天端面11側における開口幅cよりも小さく設定されている。より具体的には、天端面11側の開口幅cに対する底面12側の開口幅c’の比率(c’/c)を、0.4~0.9の範囲内で数段階に変化させて製作したものである。また、図9(3)のブロック模型M27は、空洞部15の底面12側に開口部が形成されないように、底部16をコンクリートで一体的に形成したものである。
ブロック模型M21~M27の散らばり距離の測定結果から算出した種類別の標準偏差σ(単位:m(実物大換算))は、次の通りである。
Figure 2022135223000003
この実施例3の実験結果と、実施例2の実験結果とを合わせて検討してみると、中央に空洞部15を形成した場合であっても、天端面11側の開口幅cに対する底面12側の開口幅c’の比率(c’/c)を0.6以下に設定することにより(表2のブロック模型M25~M27参照)、従来のものと比較して、目標位置に対し精度良く着底させることができ、より少ない投入個数でマウンド礁を築造できるという効果を期待することができると考えられる。
1:湧昇流ブロック、
11:天端面、
12:底面、
13:側面、
14:切欠溝、
15:空洞部、
16:底部

Claims (5)

  1. 基本形状が直方体であり、水平な天端面、水平な底面、及び、四つの垂直な側面を有するとともに、四隅に、角部が切り欠かれるとともに内側へ抉れるように形成された切欠溝を有し、
    横幅寸法(a)に対する奥行寸法(b)の比率(b/a)が0.5~0.8の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する高さ寸法(h)の比率(h/a)が1.0~1.5の範囲内に設定されていることを特徴とする人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック。
  2. 基本形状が直方体であり、水平な天端面、水平な底面、及び、四つの垂直な側面を有するとともに、四隅に、角部が切り欠かれるとともに内側へ抉れるように形成された切欠溝を有し、
    横幅寸法(a)に対する奥行寸法(b)の比率(b/a)が0.8~0.9の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する高さ寸法(h)の比率(h/a)が1.1~1.5の範囲内に設定されていることを特徴とする人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック。
  3. 基本形状が直方体であり、水平な天端面、水平な底面、及び、四つの垂直な側面を有するとともに、四隅に、角部が切り欠かれるとともに内側へ抉れるように形成された切欠溝を有し、
    横幅寸法(a)に対する奥行寸法(b)の比率(b/a)が0.9~1.0の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する高さ寸法(h)の比率(h/a)が1.3~1.5の範囲内に設定されていることを特徴とする人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック。
  4. 横幅寸法(a)に対する切欠溝の横幅方向の寸法(e1)の比率(e1/a)、及び、奥行方向の寸法(e2)の比率(e2/a)が、いずれも0.1~0.3の範囲内に設定され、かつ、横幅寸法(a)に対する切欠溝の深さ寸法(d)の比率(d/a)が、0.03~0.15の範囲内に設定されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック。
  5. 中央に空洞部が形成され、
    天端面側の開口幅(c)に対する底面側の開口幅(c’)の比率(c’/c)が0.6以下に設定されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の人工湧昇流マウンド礁用コンクリートブロック。
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