JP2022134339A - 焼結含油軸受とこの軸受を備えた流体動圧軸受装置 - Google Patents

焼結含油軸受とこの軸受を備えた流体動圧軸受装置 Download PDF

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Shinji Komatsubara
冬木 伊藤
Fuyuki Ito
稔明 丹羽
Toshiaki Niwa
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Abstract

【課題】軸方向寸法が小さい軸受であっても、内周面の変形を可及的に抑制して当該軸受をハウジングに固定可能とすることにより、流体動圧軸受装置の薄肉化と高回転精度化を共に達成可能とする。【解決手段】焼結含油軸受8の軸方向寸法Lが4.8mm以下で、厚み寸法tが0.5mm以上でかつ2.0mm以下であって、外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比L/D1が、0.35以上でかつ0.8以下に設定される。【選択図】図3

Description

本発明は、焼結含油軸受とこの軸受を備えた流体動圧軸受装置に関し、特にラジアル動圧発生部を有する焼結含油軸受とこの軸受を備えた流体動圧軸受装置に関する。
焼結含油軸受は、焼結金属で形成される多孔質体の内部空孔に潤滑油を含浸させた軸受であって、内周に挿入された軸部の相対回転に伴い内部空孔に含浸させた潤滑油が軸部との摺動部に滲み出して油膜を形成し、この油膜を介して軸部を回転支持するものである。このような軸受は、その優れた回転精度及び静粛性から、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDDや、CD、DVD、ブルーレイディスク用のディスク駆動装置におけるスピンドルモータ用、これらディスク駆動装置やPC等に組み込まれるファンモータ用、あるいは、レーザビームプリンタ(LBP)に組み込まれるポリゴンスキャナモータ用の軸受装置として好適に使用されている。
また、焼結含油軸受の内周面と軸方向端面の少なくとも一方には、更なる静音性向上並びに高寿命化を狙って、動圧溝などの動圧発生部を形成することがある。ここで、動圧溝を成形する方法としては、いわゆる動圧溝サイジングが知られている。このサイジングは、例えば軸受となる焼結体を上パンチと下パンチとで軸方向に圧迫すると共に、焼結体をダイの内周に圧入することで、予め焼結体の内周に挿入しておいたサイジングピン外周の成形型に焼結体を食い付かせる。これにより、焼結体の内周面に成形型の形状、すなわち動圧溝に対応した形状が転写され、ラジアル動圧発生部としての動圧溝が形成される(例えば、特許文献1を参照)。
また、最近では、情報機器の小型化、薄肉化に伴い、情報機器に搭載される各種モータに対しても小型化が求められている。例えばノートパソコンなどに使用される冷却用ファンモータは薄型化しており、このモータに使用される軸受装置にも薄型化が要求されている。その一方で、冷却性能は従来と同等もしくはそれ以上のレベルが要求されている。軸受装置の薄型化は、軸受面積の減少につながるため、インペラ(ファン)のサイズを大きくする場合はもちろん、インペラのサイズが維持される場合であっても、軸受面積が減少した分だけ軸受剛性の低下を招くおそれが高まる。
ここで、特許文献2には、内周面に動圧溝配列領域を設けた焼結含油軸受であって、軸方向寸法が6mm以下であると共に、軸受全体の密度比が80%以上でかつ95%以下となる焼結含油軸受が記載されている。また、上記構成に係る軸受によれば、軸受全体の密度比が従来に比べて均一化されるので、従来あった動圧溝配列領域間の潤滑流体溜り(凹部)を省略して軸方向寸法を縮小しても、十分な軸受剛性が期待できる旨が記載されている。
上記構成の軸受は、通常、ハウジングの内周に所定の手段で固定される。ここで、ハウジングに対する固定手段として、ハウジングの内周面に軸受の外周面を接着で固定する方法(例えば、特許文献3を参照)や、ハウジングの内周に軸受を圧入して固定する方法(例えば、特許文献4を参照)が知られている。また、他の固定手段として、軸方向一端側が開口し、他端側が閉塞した形状のハウジングの内周に軸受を導入した後、シール部材をハウジングの内周に導入し、このシール部材とハウジングの底部とで軸受を軸方向に挟持し、挟持した状態のシール部材をハウジングの内周面に固定することで、軸受をハウジングの内周でかつ軸方向所定位置に固定する方法(例えば、特許文献5を参照)が知られている。
特許第3607492号公報 特開2015-64019号公報 特開2010-71350号公報 特開2004-232681号公報 特開2004-176815号公報
ところで、最近では、ノートパソコンなどに使用される冷却ファンモータについて、一層の薄型化が進んでおり、当該モータに使用される軸受の軸方向寸法についても更なる低減化が求められている。その一方で、軸受の軸方向寸法が小さくなると、その分だけラジアル動圧発生部を形成可能な面積が減少することになり、ラジアル軸受隙間に発生可能な動圧も小さくなる。そのため、軸部(インペラなどの回転体)を高精度に支持することが困難となり、回転精度(NRRO)の低下を招くおそれがある。例えば特許文献2に記載のように、軸受の両端面にスラスト動圧溝を設けることで軸受剛性ひいては回転精度を向上させることも可能だが、そうすると軸方向で向かい合う面との間に動圧を発生させるためのスラスト軸受隙間を設ける必要が生じる。その場合、特許文献5に記載のように、シール部材とハウジングとで軸受を挟持する手段をハウジングに対する固定手段として採用することはできない。また、接着剤が、軸方向端面に設けたスラスト動圧溝や潤滑油の円滑な循環を図るため軸受外周面に設けた軸方向溝を塞ぐ事態を考慮すると、特許文献3に記載のように、接着を軸受のハウジングに対する固定手段として採用することも難しい。
例えば、特許文献4に記載のように、圧入で軸受をハウジングの内周に固定するのであれば、スラスト軸受隙間が潰れたり、スラスト動圧溝、軸方向溝が塞がれる心配はない。その一方で、圧入により軸受をハウジングに対して強固に固定しようとすると、圧入時の締め代を大きくとる必要が生じるため、圧入時に軸受の内周面が無視できない程度の変形を生じるおそれが高まる。内周面の変形はラジアル動圧発生部の変形につながるため、この種の変形は極力避けるべきである。特に軸受の軸方向寸法が小さくなるほど、圧入時の締め代を大きくとる必要が生じるため、この種の問題は顕在化する傾向にある。
以上の実情に鑑み、本発明により解決すべき技術課題は、軸方向寸法が小さい軸受であっても、内周面の変形を可及的に抑制して当該軸受をハウジングに固定可能とすることにより、流体動圧軸受装置の薄肉化と高回転精度化を共に達成可能とすることである。
前記課題の解決は、本発明に係る焼結含油軸受によって達成される。すなわち、この軸受は、金属粉末を筒状に圧縮成形して圧粉体を形成し、形成した圧粉体を焼結して得られる焼結金属製の軸受であって、内部空孔に潤滑流体が含浸されると共に、内周面にラジアル動圧発生部が形成される焼結含油軸受において、軸方向寸法Lが4.8mm以下で、厚み寸法tが0.5mm以上でかつ2.0mm以下であって、外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比L/D1が、0.35以上でかつ0.8以下である点をもって特徴付けられる。
本発明者らは、焼結金属軸受の軸方向寸法Lを従来よりも小さくした(4.8mm以下にした)場合においても、当該軸受の厚み寸法tと、外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比L/D1をそれぞれ所定の数値範囲内に設定することにより、ハウジング等への圧入により筒状をなす焼結体の内周面に生じる変形を可及的に抑制し得ることを見出した。本発明は、上記知見に鑑みてなされたもので、従来に比べて焼結含油軸受の軸方向寸法Lを縮小した(4.8mm以下とした)場合に、その厚み寸法tを0.5~2.0mmの範囲に設定すると共に、当該軸受の外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比L/D1を1より大幅に小さい値(0.35~0.8)にした。このような形状及びサイズの軸受とすることによって、例えば上述したハウジング内周への圧入時、軸方向寸法Lの大小に関わらず、圧入により上記軸受となる焼結体の内周面に生じる変形を可及的に抑制することができる。これにより、軸方向寸法Lを小さくした分、圧入時の締め代を大きめに設定した場合であっても、ラジアル動圧発生部(溝形状が代表的である)の形状を高精度に維持することができる。よって、軸受をハウジングの内周に強固に固定しつつも、所要のラジアル軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。また、動圧溝サイジング等により軸受内周面に動圧溝等のラジアル動圧発生部を成形する場合、厚み寸法tを2.0mm以下に設定することによって、ダイへの圧入により生じる径方向の圧迫力を上記軸受となる焼結体の内周面表層部にまで十分に伝えることができる。よって、ラジアル動圧発生部を正確にかつ安定的に成形することができる。従って、このことによっても、所要のラジアル軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。また、厚み寸法tを0.5mm以上に設定することにより、軸受の軸方向一方側の端面に必要なスラスト軸受面積を確保することができる。これにより、当該軸受の軸方向一方側にのみスラスト軸受部を設けた場合であっても、優れた回転精度を発揮することができるので、例えば軸受の軸方向他端面をハウジングに当接させて軸方向の位置決めを行うことができ、容易にスラスト軸受隙間の管理が可能となる。従って、所要のスラスト軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。
また、本発明に係る焼結含油軸受においては、密度比が86%以上でかつ92%以下であってもよい。なお、ここでいう「密度比」とは、焼結含油軸受をなす多孔質体の密度を、その多孔質体に気孔がないと仮定した場合の密度で除した値(百分率)を意味する。
このように、焼結含油軸受の密度比を86%以上にすることで、特に動圧溝サイジングの際、ダイへの圧入力が径方向への圧迫力として軸受内周面の表層部に十分に伝わり、十分な深さの動圧溝を軸受内周面に転写形成することが可能となる。また、密度比を92%以下に抑えることで、サイジング用金型への過大な負荷を抑制することができるので、良好な動圧溝サイジングを安定的に継続実施することが可能となる。特に、軸受を上述した軸方向寸法L及び扁平形状とし、かつ密度比を上記範囲内に設定することによって、内周面に対するサイジングピンの食い付き性、ひいては動圧溝等の良好な成形性を得つつも、ハウジングへの圧入による内周面の変形を確実に抑止することが可能となる。
また、本発明に係る焼結含油軸受においては、内径寸法D2に対する外径寸法D1の比D1/D2が、2.0以上でかつ3.0以下であってもよい。
このように、内径寸法D2に対する外径寸法D1の比D1/D2が2.0以上でかつ3.0以下とすることによって、内周面に対するサイジングピンの食い付き性、ひいては動圧溝等の成形性を確保することができる。また、上述した厚み寸法tの好適な数値範囲と併せて内径寸法D2と外径寸法D1の比D1/D2を定めることで、より効果的にダイへの圧入により生じる径方向の圧迫力を焼結体の内周面表層部に付与することが可能となる。
また、本発明に係る焼結含油軸受においては、内径寸法D2が1.5mm以上でかつ2.0mm以下であってもよい。
このように、内径寸法D2を1.5mm以上とすることによっても、内周面に対するサイジングピンの食い付き性、ひいては動圧溝等の成形性を確保することができる。また、上述した厚み寸法tの好適な数値範囲と併せて内径寸法D2の好適な範囲を定めることで、焼結体(多孔質体)に十分な量のスプリングバックを発生させることができる。これにより、例えば相応の深さ(1~4mm程度)の動圧溝であっても、確実に内周面に形成することが可能となる。また、内径寸法D2を2.0mm以下に抑えることで、外径寸法D1ひいては厚み寸法tが必要以上に増大する事態を回避して、ダイの圧入による径方向の圧迫力を確実に内周面表層部に伝えることが可能となる。
また、本発明に係る焼結含油軸受においては、軸方向一方側の端面にスラスト動圧発生部が形成され、軸方向他方側の端面は平坦な形状をなしてもよい。
上述のように、本発明に係る焼結含油軸受によれば、当該軸受の軸方向一方側にのみスラスト軸受部を設けた場合であっても、優れた回転精度を発揮することができるので、平坦な軸受の軸方向他端面をハウジングに当接させて軸方向の位置決めを行うことができ、容易にスラスト軸受隙間の管理が可能となる。従って、軸方向一方側の端面に設けたスラスト動圧発生部により発生させた動圧により、スラスト剛性を向上させることができ、優れたスラスト軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。
また、以上の説明に係る焼結含油軸受は、例えば当該焼結含油軸受と、焼結含油軸受が内周に固定されるハウジングと、焼結含油軸受の内周に挿入される軸部を有する回転体と、ラジアル動圧発生部の動圧作用により、焼結含油軸受の内周面と軸部の外周面との間のラジアル軸受隙間に形成される潤滑流体の膜で軸部をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた流体動圧軸受装置として好適に提供可能である。
また、本発明に係る流体動圧軸受装置においては、焼結含油軸受の内径寸法をD2、ハウジングに対する焼結含油軸受の圧入時の締め代をMとした場合、締め代Mと焼結含油軸受の内径寸法D2との間に、数式1に示す関係が成立してもよい。
Figure 2022134339000002
締め代M(すなわち焼結含油軸受の外径寸法D1とハウジングの内径寸法D0との差異)と焼結含油軸受の内径寸法D2との間に数式1に示す関係が成り立つよう、締め代Mと内径寸法D2の値をそれぞれ定めることによって、ハウジングに対して焼結含油軸受を強固に固定しつつも、ハウジングへの圧入により筒状をなす焼結体の内周面に生じる変形を非常に効果的に抑制(円筒度でいえば1μm以下に)することができる。従って、高回転精度な流体動圧軸受装置を歩留まり良く量産することが可能となる。
また、本発明に係る流体動圧軸受装置は、スラスト方向で向かい合う回転体の軸方向他方側の端面と焼結含油軸受の軸方向一方側の端面との間のスラスト軸受隙間に形成される潤滑流体の膜で軸部をスラスト方向に非接触支持する第一スラスト軸受部をさらに備えたものであってもよい。
また、この場合、本発明に係る流体動圧軸受装置は、回転体としてのハブ部の円盤部とスラスト方向で向かい合う焼結含油軸受の軸方向一方側の端面にスラスト動圧発生部が設けられていてもよい。
また、本発明に係る流体動圧軸受装置は、軸部の軸方向他方側の端部を、ハウジングの軸方向一方側の端面でスラスト方向に接触支持する第二スラスト軸受部をさらに備えたものであってもよい。
このように、スラスト方向で向かい合う回転体と焼結含油軸受との間に第一スラスト軸受部を設けると共に、同じくスラスト方向で向かい合う軸部とハウジングとの間に軸部を接触支持する第二スラスト軸受部を設けることで、焼結含油軸受を極力単純な形状としつつ十分なスラスト方向の軸受剛性を発揮することが可能となる。また、この際、回転体としてのハブ部の円盤部とスラスト方向で向かい合う焼結含油軸受の軸方向一方側の端面にスラスト動圧発生部を設けることで、スラスト動圧発生部を高精度に成形することができる。よって、非常に優れたスラスト軸受性能を発揮させることが可能となる。
以上の説明に係る流体動圧軸受装置は、上述のように、流体動圧軸受装置の薄肉化と高回転精度化を共に達成可能とするものであるから、例えばこの流体動圧軸受装置を備えたモータとして好適に提供可能である。
以上より、本発明によれば、軸方向寸法が小さい軸受であっても、内周面の変形を可及的に抑制して当該軸受をハウジングに固定することができる。よって、流体動圧軸受装置の薄肉化を図りつつも高回転精度化を達成することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るファンモータの断面図である。 図1に示す流体動圧軸受装置の断面図である。 図2に示す焼結含油軸受の断面図である。 図2に示す焼結含油軸受の平面図である。 図2に示す焼結含油軸受の底面図である。 焼結含油軸受のハウジングに対する圧入工程を説明するための断面図である。 本発明の他の実施形態に係る流体動圧軸受装置の断面図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明においては、焼結含油軸受から見て、ハブ部の円盤部の側を「上側」、ハウジングの底部の側を「下側」として取り扱う。もちろん、この上下方向は、実際の製品の設置態様、使用態様を限定するものではない。
図1は、本実施形態に係るファンモータ1の一構成例を概念的に示したものである。このファンモータ1は、流体動圧軸受装置2と、流体動圧軸受装置2の回転体3に設けられた複数枚のファン4と、これらファン4を回転体3と一体に回転させるための駆動部5とを備える。駆動部5は、例えば半径方向のギャップを介して対向させたコイル5a及びマグネット5bからなり、本実施形態では、コイル5aがファンモータ1の固定側となるベース部6に、マグネット5bがファンモータ1の回転側となる回転体3にそれぞれ固定される。
上記構成のファンモータ1において、コイル5aに通電すると、コイル5aとマグネット5bとの間の励磁力でマグネット5bが回転し、この回転によって、回転体3の外周縁に立設された複数枚のファン4が回転体3と一体に回転する。この回転により、各ファン4はその形状に応じた向きの気流(ここでは例えば径方向外側への気流)を生じ、この気流に引き込まれる形で、ファンモータ1の軸方向上側から下側に向かう気流が二次的に生じる。このようにしてファンモータ1の周囲に気流を発生させることで、ファンモータ1が取り付けられる情報機器(図示は省略)を冷却可能としている。
また、上述のようにファンモータ1の軸方向に気流が生じると、この気流と反対向きの力(反力)が流体動圧軸受装置2の回転体3に発生する。コイル5aとマグネット5bとの間には、上記反力を打ち消す方向の磁力(斥力)を作用させており、上記反力と磁力の大きさの差により生じたスラスト荷重が流体動圧軸受装置2のスラスト軸受部T1,T2(後述する図2を参照)に作用する。上記反力を打ち消す方向の磁力は、例えば、コイル5aとマグネット5bとを軸方向にずらして配置することにより発生させることができる(詳細な図示は省略)。また、回転体3の回転時には、後述する流体動圧軸受装置2の軸部10にラジアル荷重が作用する。このラジアル荷重は、流体動圧軸受装置2のラジアル軸受部R1,R2に作用する。
図2は、ファンモータ1に組み込まれた流体動圧軸受装置2の断面図を示している。この流体動圧軸受装置2は、ハウジング7と、ハウジング7の内周に固定される焼結含油軸受8、及び、焼結含油軸受8に対して相対回転する回転体3とを備える。
回転体3は、ハウジング7の上端開口側に配置されるハブ部9と、焼結含油軸受8の内周に挿入される軸部10とを有する。
ハブ部9は、図1及び図2に示すように、ハウジング7の上端開口側を覆う円盤部9aと、円盤部9aから軸方向下側に伸びる第1筒状部9bと、第1筒状部9bよりも径方向外側に位置し、円盤部9aから軸方向下側に伸びる第2筒状部9cと、第2筒状部9cの軸方向下端からさらに径方向外側に伸びる鍔部9dとで構成される。円盤部9aは、ハウジング7の内周に固定された焼結含油軸受8の一方の端面(上端面8b)と対向している。また、複数枚のファン4は、鍔部9dの外周縁から立設する形でハブ部9と一体的に設けられている。
軸部10は、本実施形態ではハブ部9と別体に形成され、ハブ部9に設けた取付け穴9eにその上端を固定している。ここで、軸部10は、外径寸法が一定の外周面10aを有すると共に、外周面10aの下端と連続する例えば部分球面状の下端部10bとを有する。すなわち、軸部10は、焼結含油軸受8の内周に軸方向一方側から挿入可能な形状をなしている。上記構成の軸部10は、例えばハブ部9とを同一材料で一体に形成してもよい。あるいは、互いに異なる材料で形成される軸部10とハブ部9の一方をインサート部品として他方を金属又は樹脂の射出成形で形成してもよい。
ハウジング7は、その上端を開口すると共に下端を閉塞した形状をなしている。また、ハウジング7の内周面7aには焼結含油軸受8が固定されると共に、ハウジング7の外周面7bはベース部6に固定されている(図1を参照)。ハウジング7の上端面7cと、ハブ部9の円盤部9aの下端面9a1との軸方向の対向間隔は、焼結含油軸受8の上端面8bと円盤部9aの下端面9a1との対向間隔より大きく、ここでは、回転駆動時のロストルク増加に実質的に影響しないとみなせる程度の大きさに設定されている。
ハウジング7の外周上側には、上方に向かうにつれて外径寸法が増加するテーパ状のシール面7dが形成される。このテーパ状のシール面7dは、第1筒状部9bの内周面9b1との間に、ハウジング7の閉塞側(下側)から開口側(上側)に向けて径方向の対向間隔を漸次縮小させた環状のシール空間Sを形成する。このシール空間Sは、軸部10及びハブ部9の回転時、後述する第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間の外径側と連通しており、各軸受隙間を含む軸受内部空間との間で潤滑油の流通を可能としている。また、潤滑油を焼結含油軸受8の内部空孔及び軸受内部空間に充填した状態では、潤滑油の油面(気液界面)は、常にシール空間S内に維持されるよう、潤滑油の充填量が調整される(図2を参照)。
また、ハウジング7が上述の如きシール構造をとる場合、コイル5aは、ハブ部9の第一筒状部9bよりも径方向外側に位置し、第一筒状部9bとコイル5aとが軸方向で一部重複するように配置される。これにより、ハウジング7ひいては流体動圧軸受装置2の薄肉化(軸方向寸法の低減化)を図っている。
また、本実施形態では、ハウジング7の底部7eに、球面状をなす軸部10の下端部10bを受けるスラスト受け部11が設けられている。すなわち、このスラスト受け部11は、流体動圧軸受装置2の完成状態では常に軸部10の下端部10bと接触し、軸部10を回転支持可能としている。なお、軸部10とスラスト受け部11との当接位置は、例えば焼結含油軸受8の内側面取り部8eの上下方向領域内にあるように、ハウジング7の軸受当接面7fに対するスラスト受け部11の上下方向位置を設定するのがよい。
ハウジング7の材質、組成は原則として任意であり、例えば後述する焼結含油軸受8のハウジング7に対する固定手段に応じて樹脂、金属など公知の材質を適宜採用することが可能である。
焼結含油軸受8は、所定の原料粉末を圧縮成形し、焼結してなる焼結金属の多孔質体であり、筒形状をなす。本実施形態では、図4等に示すように円筒形状をなす。焼結含油軸受8の内周面8aの全面又は一部には、ラジアル動圧発生部として複数の動圧溝8a1を配列した領域が形成される。本実施形態では、この動圧溝8a1配列領域は、図3に示すように、円周方向に対して所定角傾斜させた複数の動圧溝8a1と、これら動圧溝8a1を円周方向に区画する傾斜丘部8a2と、円周方向に伸びて各動圧溝8a1を軸方向で区画する帯部8a3(傾斜丘部8a2、帯部8a3ともに図3でクロスハッチングを付した部分)とをヘリングボーン形状に配列してなるもので、軸方向に連続して2箇所に形成される。この場合、上側の動圧溝8a1配列領域A1と、下側の動圧溝8a1配列領域A2はともに、軸方向中心線(帯部8a3の軸方向中央を円周方向につなぐ仮想線)に対して軸方向対称に形成されており、その軸方向寸法は互いに等しい。
焼結含油軸受8の上端面8bの全面又は一部には、スラスト動圧発生部としての複数の動圧溝8b1を配列した領域が形成される。本実施形態では、例えば図4に示すように、スパイラル状に伸びる複数の動圧溝8b1を円周方向に並べて配列した領域が形成されている。この際、動圧溝8b1のスパイラルの向きは、回転体3の回転方向に対応した向きに設定される。上記構成の動圧溝8b1配列領域は、図2に示す流体動圧軸受装置2を回転駆動させた状態では、対向するハブ部9の円盤部9aの下端面9a1との間に後述する第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する。
焼結含油軸受8の下端面8cには、スラスト動圧発生部は形成されていない。すなわち、本実施形態では、図5に示すように、下端面8cは平坦な形状をなしている。下端面8cは、ハウジング7とスラスト受け部11よりもハウジング7の径方向外側で当接する。この場合、ハウジング7の軸受当接面7fの上下方向位置は、焼結含油軸受8の上端面8bとハブ部9の下端面9a1との上下方向隙間がスラスト軸受隙間として機能し得る範囲で適切に設定される。
焼結含油軸受8の外周面8dには、1本又は複数本(本実施形態では5本)の軸方向溝8d1が形成される(例えば図4を参照)。この軸方向溝8d1は、ハウジング7に焼結含油軸受8を固定した状態では、ハウジング7の内周面7aとの間に潤滑油の流路を形成する(図2を参照)。
次に、図3を参照して、焼結含油軸受8の各種寸法について述べる。焼結含油軸受8の軸方向寸法L(両端面8b,8cの軸方向距離)は、流体動圧軸受装置2ひいてはファンモータ1の薄型化の観点から、4.8mm以下に設定され、好ましくは3.0mm以下に設定され、より好ましくは1.8mm以下に設定される。一方で、所要のラジアル軸受剛性を確保する観点からは、軸方向寸法Lは、0.8mm以上に設定され、好ましくは1.1mm以上に設定される。
焼結含油軸受8の内径寸法D2(正確には、内周面8aのうち傾斜丘部8a2と共に最小径部となる帯部8a3の内径寸法)は、焼結含油軸受8の厚み寸法tが後述の範囲内に設定される限りにおいて任意であるが、動圧溝サイジング時における内周面8aに対するサイジングピンの食い付き性を確保する観点からは、1.2mm以上であることが望ましく、1.5mm以上であることがより望ましい。一方で、結果的に厚み寸法tが必要以上に増大することで動圧溝サイジング時の圧入力を確実に内周面8a表層部に伝えることが困難になる事態を回避する観点からは、内径寸法D2は2.5mm以下であることが望ましく、2.0mm以下であることがより望ましい。
焼結含油軸受8の外径寸法D1は、焼結含油軸受け8の厚み寸法t及び外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比が後述の範囲内に設定される限りにおいて任意であるが、必要な内径寸法D2及び厚み寸法tとの兼ね合いから、2.5mm以上であることが望ましく、3.0mm以上であることがより望ましい。同様の観点から、外径寸法D1は6.0mm以下であることが望ましい。
内径寸法D2に対する外径寸法D1の比D1/D2は、内周面8aに対するサイジングピンの食い付き性、ひいては動圧溝8a1の成形性を確保する観点からは、2.0以上でかつ3.0以下に設定するのがよい。
焼結含油軸受8の厚み寸法t{=(D1-D2)/2}は、例えば上端面8bに必要なスラスト軸受面積を確保する観点からは、0.75mm以上に設定されるのがよい。一方で、動圧溝サイジング時にダイからの十分な圧迫力を焼結体の内周面表層部に伝達可能とする観点からは、厚み寸法tは2.0mm以下に設定されるのがよい。
また、外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比は、後述するハウジング7への圧入時における焼結体内周面(ひいては焼結含油軸受8の内周面8a)の変形を抑止する観点から、0.35以上でかつ0.8以下に設定される。
次に、焼結含油軸受8の組成について述べる。この焼結含油軸受8は、銅系粉末と鉄系粉末の一方を最も多く含むと共に他方を二番目に多く含む原料粉末を圧縮成形し、焼結して得られる。言い換えると、焼結含油軸受8の多孔質体は、実質的に、銅と鉄の一方を主成分とし、他方を第二成分(二番目に多い成分)とする組成をなす。なお、ここでいう銅系粉末には、純銅粉末だけでなく銅合金粉末が含まれる。また、純銅には純度100%の銅のみならず工業的に純銅と認められる99.99%以上の銅が含まれる。同様に、ここでいう鉄系粉末には、純鉄粉末だけでなくステンレスなどの鉄合金粉末が含まれる。また、ここでいう純鉄には純度100%の鉄のみならず工業的に純鉄と認められる99.99%以上の鉄が含まれる。上記組成(粉末配合比)が成立する限りにおいて、三番目以降の成分となる粉末の種類及び配合比は任意である。
原料粉末の組成(粉末配合比)として、例えば[銅系粉末:50~70重量%、鉄系粉末:30~48重量%、錫粉末:0~5%]が適用可能であり、具体例として、[140メッシュ以下の純鉄粉末:38~42重量%、330メッシュ以下の錫粉末:1~3%、200メッシュ以下の純銅粉末:残部]を挙げることができる。
次に、焼結含油軸受8の密度比について述べる。この焼結含油軸受8の軸受全体の密度比は80%以上でかつ95%以下に設定され、好ましくは86%以上でかつ92%以下に設定される。密度比の設定は、例えば原料となる金属粉末の材質、粒径(分布)、配合比などを調整することにより可能となる。なお、この際の密度比のばらつきは、密度比と一定の相間が認められる細孔率を用いて評価することが可能である。ここで細孔率とは、当該軸受の単位体積当りに占める細孔の体積割合(百分率)で表され、経験則上、密度比とはほぼ負の相間(-1の相関係数)を示す。
また、内周面8a、特にラジアル軸受面となる傾斜丘部8a2及び帯部8a3の内周面の表面開孔率は、例えば2%以上かつ15%以下に調整される。表面開孔率の調整は、例えば後述する回転サイジングにより可能となる。
上記構成の焼結含油軸受8は、例えば圧粉成形工程S1と、焼結工程S2と、動圧溝サイジング工程S3、及び含油工程S4とを経て製造される。以下では、焼結工程S2の後で動圧溝サイジング工程S3の前に、寸法サイジング工程S21と、回転サイジング工程S22を設ける場合を例にとって、各工程の詳細を説明する。
(S1)圧粉成形工程
まず、最終的な製品となる焼結含油軸受8の材料となる原料粉末を用意し、これを金型プレス成形により所定の形状に圧縮成形する。具体的には、図示は省略するが、ダイと、ダイの孔内に挿入配置されるコアピンと、ダイとコアピンとの間に配設され、ダイに対して昇降可能に構成された下パンチ、および、ダイと下パンチの何れに対しても相対変位(昇降)可能に構成された上パンチとで構成される成形金型を用いて原料粉末の圧縮成形を行う。この場合、ダイの内周面とコアピンの外周面、および、下パンチの上端面とで区画形成される空間に原料粉末を充填し、下パンチを固定した状態で上パンチを下降させ、充填状態の原料粉末を軸方向に加圧する。そして、加圧しながら所定の位置まで上パンチを下降させ、原料粉末を所定の軸方向寸法にまで圧縮することで、圧粉体が成形される。この際、圧粉体の軸方向寸法は、上パンチの下端面と、下パンチの上端面との距離、より具体的には上パンチの下死点を、目標とすべき軸方向寸法(より厳密には、この後の焼結処理、及び各種サイジングによる寸法変化を加味して設定)に応じて制御することで、適切な範囲に設定可能となる。
(S2)焼結工程
上述のようにして、圧粉体を得た後、この圧粉体を原料粉末の種類(主成分の金属の融点)に応じた温度で焼結することにより、焼結体を得る。
(S21)寸法サイジング工程、及び(S22)回転サイジング工程
そして、焼結体に対して寸法サイジングを施して、焼結体の外径寸法や内径寸法、及び軸方向寸法を最終製品に準じた寸法に矯正すると共に、内周面8aの表面開孔率を、動圧軸受として好適な割合(例えば上述した数値範囲:2~15%)に調整する。この段階では、焼結体の内周面に所定の動圧溝8a1配列領域A1,A2は未だ形成されてない。同様に、図示は省略するが、焼結体の上端面に所定の動圧溝8b1配列領域は未だ形成されていない。
(S3)動圧溝サイジング工程
上記一連の工程を経て得られた焼結体に対して所定の動圧溝サイジングを施すことで、焼結含油軸受8の内周面8aとなる焼結体の内周面に動圧溝8a1配列領域A1,A2を成形する。ここで使用する成形装置は、図示は省略するが、焼結体の圧入穴を有するダイと、ダイの圧入穴に挿入可能に配置されるサイジングピンと、ダイとサイジングピンとの間に配設され、ダイに対して相対的に昇降可能に構成された下パンチ、および、ダイと下パンチの何れに対しても昇降可能に構成された上パンチとを有する。この場合、ダイの圧入穴の内径寸法は、サイジングすべき焼結体の圧入代に応じて適宜設定される。また、サイジングピンの外周面には、成形すべき動圧溝8a1配列領域A1,A2(図3を参照)に対応する形状の成形型が設けられると共に、上パンチの下端面には、成形すべき動圧溝8b1配列領域(図4を参照)に対応する形状の成形型が設けられる。
次に、上記成形装置を用いた動圧溝サイジングの一例を説明する。まず、ダイの上端面に焼結体を配置した状態で、その上方から上パンチとサイジングピンを下降させる。これにより、焼結体の内周にサイジングピンを挿入し、サイジングピンの外周に設けておいた成形型を焼結体の内周面と半径方向で対向させる。そして、この成形型が内周面の軸方向所定位置にまで到達した後、上パンチのみを引き続き下降させて焼結体の上端面を押圧する。これにより、焼結体がダイの圧入穴に押込まれ、焼結体の外周面が圧迫されると共に、予め内周に挿入したサイジングピンの成形型に焼結体の内周面が食い付く。また、この状態から、さらに上パンチを下降させて、焼結体を上パンチと下パンチとで挟持し、外径方向への変形をダイにより拘束された状態の焼結体を軸方向に圧迫することで、さらに内周面が成形型に食い付く。このようにして、成形型の形状が焼結体の内周面に転写され、この内周面に動圧溝8a1配列領域A1,A2が成形される。また、この際、上パンチの下端面に設けた成形型が焼結体の上端面に食い込むことで、上端面に上パンチの成形型の形状が転写され、対応する動圧溝8b1の配列領域が成形される。
このようにして焼結体の内周面及び上端面に所定の動圧溝8a1,8b1配列領域を成形した後、ダイを下パンチに対して相対的に下降させて、ダイによる焼結体の拘束状態を解除する。これにより、焼結体は外径方向へのスプリングバックを生じ、サイジングピンから焼結体を取り外すことが可能となる。この際、要求されるスプリングバック量は、サイジングピンに設けた成形型がサイジング後の焼結体内周面(特に動圧溝8a1配列領域A1,A2)と軸方向で引っ掛かりを生じない程度の大きさになるため、成形すべき動圧溝8a1の溝深さ(数μm)を考慮して、焼結体の厚み寸法、すなわち焼結含油軸受8の厚み寸法t(図3を参照)が設定される。本実施形態では、上述の如く厚み寸法tを0.5mm以上でかつ2.0mm以下とすることで、必要な深さの動圧溝8a1を成形しつつ、成形に供したサイジングピンをサイジング後の焼結体から引っ掛かりなく引抜くことができる。
(S4)含油工程
以上のようにして得た焼結体の内部空孔に潤滑流体としての潤滑油を含浸させることで、焼結含油軸受8が完成する。
ここで、潤滑油としては、種々のものが使用可能であり、例えば、蒸発率が小さく、かつ低温時の粘度低下が少ないエステル系の潤滑油や、エステル系よりも耐性に優れたフッ素系の潤滑油などが好適に使用される。また、動粘度の観点からは、例えば40℃での動粘度が20cSt以上でかつ170cSt以下を示し、100℃での動粘度が2cSt以上でかつ50cSt以下を示す潤滑油が好適に使用される。
上記焼結含油軸受8を、ハウジング7の内周に圧入(接着を伴う圧入を含む)、接着、溶着など公知の手段で固定する。本実施形態では、焼結含油軸受8をハウジング7の内周に圧入することで、焼結含油軸受8をハウジング7に対して位置決め固定する。図6は、圧入工程の概要を説明するための図である。図6に示すように、焼結含油軸受8をハウジング7の開口側から導入し、圧入することで、焼結含油軸受8をハウジング7の内周に固定する。ここで、圧入時の締め代Mの大きさは、焼結含油軸受8の外径寸法D1からハウジング7の内径寸法D0を減じた値であり、締め代Mと焼結含油軸受の外径寸法D2とが上述した数式1に示す関係を満たすように、締め代Mが設定される。
上記圧入時、焼結含油軸受8の下端面8cがハウジング7の軸受当接面7fに当接する位置まで焼結含油軸受8を押込むことで、ハウジング7に対する焼結含油軸受8の上下方向の位置決めがなされた状態で、焼結含油軸受8がハウジング7に固定される。然る後、回転体3の軸部10を焼結含油軸受8の内周に挿入することで、流体動圧軸受装置2が完成する。この場合、潤滑油の界面はシール空間Sに保持される(図2を参照)。
なお、上述した含油工程S4は、例えば焼結含油軸受8となる焼結体をハウジング7の内周に固定した後に実施してもよい。
上記構成の流体動圧軸受装置2において、軸部10(回転体3)の回転時、焼結含油軸受8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2ヶ所の動圧溝8a1配列領域A1,A2)は、軸部10の外周面10aとラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部10の回転に伴い、ラジアル軸受隙間の潤滑油が各動圧溝8a1配列領域A1,A2の軸方向中心側に押し込まれ、軸方向中心側の領域(ここでは帯部8a3)において潤滑油の圧力が上昇する。このような動圧溝8a1の動圧作用によって、軸部10をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第一ラジアル軸受部R1と第二ラジアル軸受部R2とが軸方向に離隔してそれぞれ構成される。
また、焼結含油軸受8の上端面8b(動圧溝8b1を配列した領域)とこれに対向するハブ部9の下端面9a1との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝8b1の動圧作用により潤滑油の油膜が形成される。そして、この油膜の圧力によって、回転体3をスラスト方向に非接触支持する第一スラスト軸受部T1が構成される。また、軸部10の下端部10bがハウジング7の底部7eに設けたスラスト受け部11で回転可能に接触支持され、これにより回転体3をスラスト方向に接触支持する第二スラスト軸受部T2が構成される。
以上述べたように、本実施形態に係る焼結含油軸受8では、従来に比べてその軸方向寸法Lを縮小した(4.8mm以下とした)場合に、その厚み寸法tを0.5mm以上でかつ2.0mm以下に設定すると共に、その外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比を1より大幅に小さい値(0.35以上でかつ0.8以下)にした。このような形状及びサイズの焼結含油軸受8とすることによって、上述したハウジング7内周への圧入時、軸方向寸法Lの大小に関わらず、圧入により焼結含油軸受8の内周面8aに生じる変形を可及的に抑制することができる。これにより、軸方向寸法Lを小さくした分、圧入時の締め代Mを大きめに設定した場合であっても、ラジアル動圧発生部としての動圧溝8a1配列領域A1,A2の形状を高精度に維持することができる。よって、焼結含油軸受8をハウジング7の内周に強固に固定しつつも、所要のラジアル軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。また、動圧溝サイジング等により焼結含油軸受8の内周面8aに動圧溝8a1配列領域A1,A2(図3を参照)を成形する場合、厚み寸法tを2.0mm以下に設定することによって、ダイへの圧入により生じる径方向の圧迫力を焼結含油軸受8となる焼結体の内周面表層部にまで十分に伝えることができる。よって、動圧溝8a1配列領域A1,A2を正確にかつ安定的に成形することができる。従って、このことによっても、所要のラジアル軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。また、厚み寸法tを0.5mm以上に設定することにより、焼結含油軸受8の軸方向一方側の端面(ここでは上端面8b)に必要なスラスト軸受面積を確保することができる。これにより、焼結含油軸受8の軸方向一方側にのみスラスト軸受部(ここでは第一スラスト軸受部T1)を設けた場合であっても、優れた回転精度を発揮することができるので、焼結含油軸受8の下端面8cをハウジング7に当接させて軸方向の位置決めを行うことができ、容易にスラスト軸受隙間の管理が可能となる。従って、所要のスラスト軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。
また、本実施形態のように、焼結含油軸受8をハウジング7に圧入で固定して流体動圧軸受装置2を組み立てる場合、焼結含油軸受8の内径寸法をD2、ハウジング7に対する焼結含油軸受8の圧入時の締め代をMとした場合、締め代Mと内径寸法D2とが、上述した数式1に示す関係を満たすように、締め代Mと内径寸法D2の値をそれぞれ定めることによって、ハウジング7に対して焼結含油軸受8を強固に固定しつつも、ハウジング7への圧入により筒状をなす焼結体の内周面に生じる変形を非常に効果的に抑制(円筒度でいえば1μm以下に)することができる。従って、高回転精度な流体動圧軸受装置2を歩留まり良く量産することが可能となる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る焼結含油軸受及びこの軸受を備えた流体動圧軸受装置は上記例示の形態に限定されることなく、本発明の範囲内において任意の形態を採り得る。
図7は、本発明の他の実施形態に係る流体動圧軸受装置12の断面図を示している。図7に示すように、本実施形態における流体動圧軸受装置12は、第一スラスト軸受部T1のみを有する点で、図2に示す流体動圧軸受装置2と相違する。詳述すると、本実施形態に係る流体動圧軸受装置2において、軸部10の下端面10cとハウジング7の底部7eの上端面7e1との間には、常に所定のスラスト方向隙間が存在する。ここで、底部7eの上端面7e1と、軸部10の下端面10cとの間の対向間隔(スラスト方向隙間)の大きさは、焼結含油軸受8の上端面8bと円盤部9aの下端面9a1との対向間隔より大きく、ここでは、回転駆動時のロストルク増加に実質的に影響しないとみなせる程度の大きさに設定されている。これ以外の構成については図2等に示す流体動圧軸受装置2と同じであるので、詳細な説明を省略する。
本実施形態に係る流体動圧軸受装置12においても、軸方向寸法Lを4.8mm以下とした場合に、その厚み寸法tを0.5mm以上でかつ2.0mm以下に設定すると共に、外径寸法D1に対する軸方向寸法Lの比を1より大幅に小さい値(0.35以上でかつ0.8以下)にした。そのため、ラジアル動圧発生部としての動圧溝8a1配列領域A1,A2を正確にかつ安定的に成形することができ、所要のラジアル軸受性能を安定的に発揮することが可能となる。また、焼結含油軸受8の上端面8bに必要なスラスト軸受面積を確保することができるので、焼結含油軸受8の上端面8b側にのみスラスト軸受部(第一スラスト軸受部T1)を設けた場合であっても、優れた回転精度を発揮することができる。よって、図7に示すように、軸部10の下端面10cをスラスト方向に支持せずとも、十分なスラスト軸受性能を発揮することができ、スラスト受け部11の省略をはじめ、軸部10の下端形状を単純化した分だけ、コストダウンを図ることが可能となる。
もちろん、ラジアル軸受部R1,R2を軸部10の外周面10aとの間に形成するラジアル動圧発生部(図3では動圧溝8a1配列領域A1,A2)の何れか一方又は双方についても、いわゆる多円弧状、ステップ状、並びに波型状など、動圧溝以外の形状をなす公知のラジアル動圧発生部を採用することが可能である。
また、以上の説明では、ファンモータ1のベース部6の内周に、流体動圧軸受装置2のハウジング7を固定するようにしたが、例えばファンモータ1が取り付けられる情報機器のベース部(図示は省略)にハウジング7を直接取り付けてもかまわない。あるいは、これらベース部に相当する部位をハウジング7と一体に設けてもよい。
また、以上の説明では、マグネット5bとコイル5aとを軸方向にずらして配置することにより、軸部10(回転体3)に、軸部10をハウジング7の底部7e側に押し付けるための外力を作用させるようにしたが、このような外力を軸部10に作用させるための手段は上記のものに限られない。図示は省略するが、例えば、マグネット5bを引き付け得る磁性部材をマグネット5bと軸方向に対向配置することにより、上記磁力を回転体3に作用させることもできる。また、送風作用の反力としての推力が十分に大きく、この推力のみで軸部10を下方に押し付けることができる場合、軸部10を下方に押し付けるための外力としての磁力(磁気吸引力)は省略しても構わない。
また、以上の説明では、ファン4を有する回転体3が軸部10に固定される流体動圧軸受装置2に本発明を適用した場合について説明を行ったが、本発明は、回転体3として、ディスク搭載面を有するディスクハブ、あるいはポリゴンミラーが軸部10に固定される流体動圧軸受装置2にも好ましく適用することができる。すなわち、本発明は、図1に示すようなファンモータ1のみならず、ディスク装置用のスピンドルモータや、レーザビームプリンタ(LBP)用のポリゴンスキャナモータ等、その他の電気機器に組み込まれる流体動圧軸受装置2にも好ましく適用することが可能である。
1 ファンモータ
2,12 流体動圧軸受装置
3 回転体
4 ファン
5 駆動部
5a コイル
5b マグネット
6 ベース部
7 ハウジング
7c 上端面
7d シール面
8 焼結含油軸受
8a 内周面
8a1 動圧溝
8a2 傾斜丘部
8a3 帯部
8b 上端面
8b1 動圧溝
8c 下端面
8d 外周面
8d1 軸方向溝
9 ハブ部
9a 円盤部
9a1 下端面
9b,9c 筒状部
9d 鍔部
9e 取付け穴
10 軸部
10a 外周面
10b 下端部
10c 下端面
11 スラスト受け部
A1,A2 動圧溝配列領域
D0 ハウジングの内径寸法
D1 焼結含油軸受の外径寸法
D2 焼結含油軸受の内径寸法
L 軸方向寸法
R1,R2 ラジアル軸受部
S シール空間
t 厚み寸法
T1,T2 スラスト軸受部

Claims (11)

  1. 金属粉末を筒状に圧縮成形して圧粉体を形成し、形成した前記圧粉体を焼結して得られる焼結金属製の軸受であって、
    内部空孔に潤滑流体が含侵されると共に、内周面にラジアル動圧発生部が形成される焼結含油軸受において、
    軸方向寸法Lが4.8mm以下で、
    厚み寸法tが0.5mm以上でかつ2.0mm以下であって、
    外径寸法D1に対する前記軸方向寸法の比L/D1が、0.35以上でかつ0.8以下であることを特徴とする焼結含油軸受。
  2. 密度比が86%以上でかつ92%以下である請求項1に記載の焼結含油軸受。
  3. 内径寸法D2に対する前記外径寸法D1の比D1/D2が、2.0以上でかつ3.0以下である請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
  4. 内径寸法D2が1.5mm以上でかつ2.0mm以下である請求項1~3の何れか一項に記載の焼結含油軸受。
  5. 軸方向一方側の端面にスラスト動圧発生部が形成され、軸方向他方側の端面は平坦な形状をなす請求項1~4の何れか一項に記載の焼結含油軸受。
  6. 請求項1~5の何れか一項に記載された焼結含油軸受と、前記焼結含油軸受が内周に圧入で固定されるハウジングと、前記焼結含油軸受の内周に挿入される軸部を有する回転体と、前記ラジアル動圧発生部の動圧作用により、前記焼結含油軸受の内周面と前記軸部の外周面との間のラジアル軸受隙間に形成される前記潤滑流体の膜で前記軸部をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた流体動圧軸受装置。
  7. 前記焼結含油軸受の内径寸法をD2、前記ハウジングに対する前記焼結含油軸受の圧入時の締め代をMとした場合、前記焼結含油軸受の内径寸法D2との間に、数式1に示す関係が成立する請求項6に記載の流体動圧軸受装置。
    Figure 2022134339000003
  8. スラスト方向で向かい合う前記回転体の軸方向他方側の端面と前記焼結含油軸受の軸方向一方側の端面との間のスラスト軸受隙間に形成される前記潤滑流体の膜で前記軸部をスラスト方向に非接触支持する第一スラスト軸受部をさらに備えた請求項6又は7に記載の流体動圧軸受装置。
  9. 前記回転体としてのハブ部の円盤部とスラスト方向で向かい合う前記焼結含油軸受の軸方向一方側の端面にスラスト動圧発生部が設けられている請求項8に記載の流体動圧軸受装置。
  10. 軸部の軸方向他方側の端部を、ハウジングの軸方向一方側の端面でスラスト方向に接触支持する第二スラスト軸受部をさらに備えた請求項8に記載の流体動圧軸受装置。
  11. 請求項1~10の何れか一項に記載の流体動圧軸受装置を備えたモータ。
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