JP2022131947A - 不織布の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】支持体からのウエブの浮き上がりを抑えて、良好な凹凸形状を付与できる凹凸不織布の製造方法を提供する。【解決手段】凸部又は凹部を有する支持体と、該支持体に噛合い可能な押し込み部を有する押込み部材とを噛合い可能に合わせることにより、繊維を含む集合体からなるウエブを凹凸賦形するに当たり、賦形されたウエブを前記支持体から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力を300cN/m2以上20000cN/m2以下とする、凹凸不織布の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は不織布の製造方法に関する。
従来から、凹部と凸部とを有する凹凸形状の不織布を作製する種々の製造方法が開示されている。
例えば、特許文献1には、突起体を有する支持体上に未融着の繊維ウエブを載置し、押込み部材を用いて繊維ウエブを押し込み賦形後、熱風により繊維同士を熱融着させる凹凸不織布の製造方法が記載されている。繊維に対する引っ掛け性を高くして支持体突起の頂部に残る繊維量を高めると共に、繊維が部分的に薄くなるのを抑制するため、支持体突起を粗面化する方法が記載されており、具体的には頂部のみの一部、頂部のみの全体、頂部から壁面の上部の一部にまで粗面化処理が施されてもよいことが記載されている。繊維に対する引っ掛け性と壁面への繊維の沿い易さを考慮した場合は、支持体突起の頂部の全体が粗面化されていることが好ましく、不織布化後の引き剥がし易さを考慮した場合は、頂部のみが粗面化され、壁面は粗面化されていないことが好ましいことが記載されている。
特許文献2には、支持体雄材及び支持体雌材を用いて未融着ウエブをかみ合い賦形後、熱風により繊維同士を熱融着させる凹凸不織布の製造方法が記載されている。この製造方法では、支持体雌材の表面粗さを小さくすることで、支持体雌材に繊維をまとわりつかせずに支持体雌材の取り外しを円滑に行い得ることが記載されている。
特許文献3記載の不織布の製造方法では、ドラムの外周に賦形のための支持体を配し、ドラム内部に吸引部を配することが記載されている。該吸引部によって支持体に配される繊維ウエブに負圧を加えることで、繊維ウエブの繊維が支持体の周面に沿い易くすることが記載されている。
特許文献4には、構造化されていないウエブを雄型ロール及び雌型ロールを用いて賦形し、厚手のフリースウエブまたは起毛フィルムを製造する方法が記載されている。該雄型ロールの表面には、ウエブの付着を防止するように施工される熱間ロールが配されることが記載されている。
特許文献5には、第1及び第2のロールの噛み合わせにより上層を凹凸賦形し、下層と接合する表面シートの製造方法が記載されている。該第1のロールにおける各歯車の歯溝部に吸引口が形成されており、凹凸賦形された上層は、吸引口による吸引力によって第1のロール周面に密着することが記載されている。
特許文献6には、繊維間の摩擦以外は内部接着を有していないランダム配向された不織布ウエブと溶融状態の裏貼り層とを接着させて不織布繊維シートを成形する方法が記載されている。成形に用いる第一波形部材が粗い仕上げ(例えばサンドブラストにより形成される)を有し、第二波形部材が滑らかな研磨仕上げを有し、不織布繊維シートは、第一波形部材の表面に沿って優先的に止まることが記載されている。また、両波形部材が有する隆起部は軸に対して0(軸に平行)~90°の範囲に配向させうることが記載されている。
特許文献7には、第1及び第2のロールの噛み合わせにより上層を凹凸賦形し、下層と接合する表面シートの製造方法が記載されている。該第1のロールの凹部内に係止材が配設されて、押し込まれたシート状物の一部を機械的に係止することで上層が第1のロールの周面から浮かび上がることを防止できることが記載されている。
特開2019-112748号公報 特開2020-000467号公報 特開2019-112747号公報 特表2002-531726号公報 特開2004-174234号公報 特表2001-522700号公報 特開2010-111003号公報
従来、凹凸形状を有する不織布の製造方法において、一対の支持体又はロール(以下、支持体等)の噛合いによる凹凸賦形を行った後、ウエブが支持体等への押し込みから戻って浮き上がることがある。押込みが戻ると凹凸高さの高い賦形不織布を得ることが困難となる。この現象は、加工速度が増すにつれ遠心力等により生じ易く、きれいな成形パターンが得られ難くなる。この浮きの現象は、繊維同士が熱融着される前の熱融着性ウエブ、繊維同士が熱融着された不織布など種々のシート状の繊維集合体(以下、本発明においてはこれらをまとめてウエブという)を凹凸賦形する場合に起こり得る。
この点、上記特許文献3及び5に記載の吸引によりウエブの戻りを抑えようとすると、支持体等の表面温度が下がったり温度ムラが生じたりして加工性の低下につながりかねない。温度を維持するため加熱媒体を追加しようとすると吸引装置と干渉するため、支持体表面近傍に加熱媒体を配置することが困難であり、十分な温度維持が難しい。また、吸引口は繊維詰まりを起こし易く、更には吸引口により支持体等の肉厚が実質的に薄くなり強度が落ち、撓み易くなる。
また、上記特許文献1においては、支持体突起の壁面は粗面化していないことが好ましいとあり、粗面化されているとしても頂部から壁面の上部の一部までである。ウエブが支持体上に保持されている間に働く遠心力等によるウエブの戻りを抑えるまでは考慮されていない。同様に、上記特許文献2には雌材(押込み部材)の表面粗さの記載があるが、雄材(支持体)については記載がなく、ウエブが支持体上に保持されている間に働く遠心力等によるウエブの戻りを抑えるまでは考慮されていない。単にウエブの戻りを抑えるために、上記特許文献1及び2に記載されるような熱風処理を利用する場合、風速を高めるとウエブの実厚みが薄くなり、熱風の温度を上げると得られる不織布の表面が硬くなるという問題が生じる。
したがって、従来の製造技術では、良好に凹凸賦形された肌触りの良い不織布を得ることが難しかった。この点、上記の特許文献1~4には、ウエブの戻りを抑える賦形は記載されていない。特に特許文献4に記載の技術では、雄型ロール(支持体)の表面がウエブの付着を防止するようにされ、むしろウエブが浮き易くなる。また、上記特許文献5に記載の方法だけではウエブとの相互作用に関する点が不十分であるとともに、高速加工時の遠心力によってウエブの浮きを抑えるには十分ではなかった。上記特許文献6には支持体に相当する第一波形部材を粗い仕上げにすることが記載され、上記特許文献7には支持体に相当する第1ロールに係止材を設けることが記載されているが、特許文献5と同様の理由に加え、ウエブの強度が低い場合の剥離時に破れなどが生じる問題が発生し、更に詳細に検討する必要があった。
本発明は、上記の点に鑑み、支持体からのウエブの浮き上がりを抑えて、良好な凹凸形状を付与できる凹凸不織布の製造方法に関する。
本発明は、凸部又は凹部を有する支持体と、該支持体に噛合い可能な押し込み部を有する押込み部材とを噛合い可能に合わせることにより、繊維を含む集合体からなるウエブを凹凸賦形するに当たり、賦形されたウエブを前記支持体から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力を300cN/m以上20000cN/m以下とする、凹凸不織布の製造方法を提供する。
本発明の凹凸不織布の製造方法によれば、支持体からのウエブの浮き上がりを抑えて、良好な凹凸形状を備えた凹凸不織布を製造することができる。
(A)及び(B)は、本発明の凹凸不織布の製造方法における凹凸賦形工程の一例を示す説明図である。 賦形によってウエブを支持体の凹凸形状に沿わせて一時保持した状態で、ウエブに作用する力について模式的に示す説明図である。 支持体における凸部形状の好ましい一実施形態をウエブと共に示す断面図である。 (A)は支持体の凸部に配されるマイクロ凹凸形状を模式的に示す斜視図であり、(B)~(D)はマイクロ凹凸形状の具体例を示す断面図である。 支持体と押込み部材との噛合い量及び凸部間の隙間距離をウエブと共に模式的に示す断面図である。 支持体と押込み部材との噛合い時における支持体の凸部とウエブとが接触するCD方向への投影断面積を模式的示す説明図であり、(A)は凸部に対し上方から見た平面図であり、(B)は凸部に対し側面から見た側面図である。 支持体の好ましい実施形態を示す斜視図である。 図7に示す支持体をCD方向に見た側面図である。 ウエブを複数層構造とした場合の該ウエブを支持体に沿わせて一時保持した状態を示す断面図である。 押込み部材における押し込み部の形状の好ましい一実施形態を支持体及びウエブと共に示す断面図である。 本発明の凹凸不織布の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す概略図である。
本発明に係る凹凸不織布の製造方法の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
なお、本明細書において、不織布の製造時の搬送方向をMD方向(Machine Direction)といい、該搬送方向に直交する幅方向をCD方向(Cross Direction)という。
本発明の凹凸不織布の製造方法は、凸部又は凹部を有する支持体と、支持体に噛合い可能な押し込み部を有する押込み部材を噛合い可能に合わせることにより、繊維を含む集合体からなるウエブを凹凸賦形する工程を有する。
支持体とは、凹凸形状を有し、押込み部材と噛合い可能であり、不織布や熱融着性ウエブを一時的に保持するものである。前述の凸部と凹部とは互いに相対的な高低差を有する関係にある部分を意味し、例えば支持体を構成する基材よりも高く突出している部分が凸部であり、凸部間が凹部となる。また、支持体を構成する基材が部分的に窪んだ部分が凹部となる場合、該凹部に囲まれた部分が凸部となる(図示せず)。支持体は、コンベアやネットの形態など可撓性のものや、ドラムロールやプレートの形態などの非可撓性のものでもよい。支持体の材質は種々のものを用いることができる。例えば樹脂、金属、カーボン、セラミックが挙げられる。非可撓性のエンボスロールであると、支持体上でエンボス熱融着又はエンボス圧着することができる点で好ましい。
押込み部材とは、凹凸形状を有し、支持体に押し込み可能(噛合い可能)なものである。押込み部材は、可撓性のものや非可撓性のものでもよく、例えばリングロール、凹凸ロール、ネット、ベルト、チェーン、板バネ(弾性板状体)、可動式の荷重プレートが挙げられる。押込み部材の材質は種々のものを用いることができ、例えば樹脂、金属、カーボン、セラミックが挙げられる。
「噛合い可能に合わせる」とは、支持体の凹部と押込み部材の押し込み部とを対応させた配置にて、支持体の凸部と押込み部材の押し込み部との間にウエブが入り込む程度の隙間を有しながら前記凹部に対して前記押し込み部が入り込むことを意味する。言い換えると、支持体の凹凸形状と押込み部材の凹凸形状とが、噛み合うように合わせられることを意味する。この時、支持体と押込み部材の摩耗や変形を低減するため、支持体と押込み部材は互いに直接接触しないことが好ましい。
「単位面積当たりの剥離抵抗力」とは、賦形されたウエブを支持体または押込み部材から剥離する際、ウエブの単位面積当たりに掛かる抵抗力を意味する。該剥離抵抗力は、後述する方法により、測定することができる。
「ウエブ」とは、不織布や熱融着性ウエブを含むシート状の繊維集合体である。このウエブには、構成繊維として熱可塑性繊維を含むことが好ましい。
「不織布」とは、熱的融着、機械的交絡、化学的結合(接着剤、ケミカルボンドなど)によって繊維集合体を形成したシートを意味する。
「熱融着性ウエブ」とは、熱(熱風、水蒸気、熱エンボス、超音波エンボスなど)により融着可能な未融着繊維の集合体を意味し、融着処理工程前に水流交絡やニードルパンチなどの機械交絡をされたものは除外する。より具体的には、不織布としての強度を有しないものであり、MD方向及びCD方向に沿った引張最大強度が100cN/50mm以下のものは熱融着性ウエブとする。例えばカードウエブが含まれる。
上記の「熱融着」した状態とは、熱融着性ウエブが溶融することで、熱融着性ウエブの構成繊維が融着処理前の繊維形態を有しなくなることを意味する。繊維形態を有するとは、繊維の長さと繊維の断面積から求めた直径(真円として計算)との比(前者/後者)が300倍以上となっているものとする。例えば、「熱融着」した状態では熱融着性ウエブの構成繊維の外周面の少なくとも一部分が溶融し、他の繊維の外周面との境界が判別できなくなり、融着処理前の繊維形態を有しなくなる。複合繊維等、熱融着性ウエブの構成繊維が2種以上の樹脂からなる場合は、特定の樹脂が溶融せずに繊維形態を保っていても、他の樹脂が溶融し、熱融着性ウエブの構成繊維の外周面同士の境界が判別できなくなり、融着処理前の繊維形態を有しなくなる。これらは繊維融着部の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により観察することで可能である。
ウエブを構成する繊維材料は、任意の一般繊維及び熱伸長繊維を用いることができる。繊維材料は、毛羽立ち及び強度の観点から連続繊維であることが好ましいが、これに限定されず、長繊維や短繊維であってもよい。
連続繊維は、製品部材の端面での繊維切断箇所や毛羽立ち部の一部の繊維の切断を除き、実質的に繊維が連続しているものであり、スパンボンド法に見られるものである。
長繊維は、有効長(80mm以上)の繊維長を有するものであり、メルトブローン法に見られるものである。
短繊維は、77mm長以下の繊維であり、エア-スルー不織布やスパンレース不織布、エアレイド不織布に用いられる。
熱融着性ウエブの供給方法としては、スパンボンド法(エンボス前のもの、連続繊維)、エレクトロスピニング法(連続繊維)、スパンメルト法(熱風伸長と冷風延伸を組み合わせた方法、長繊維)、メルトブローン法(長繊維)、カード法(短繊維)、エアレイド法(短繊維)が挙げられる。特にスパンボンド法、カード法によるものが嵩高な立体賦形不織布が得られるため好ましい。また、これらの供給方法を組み合わせることも可能である。
繊維材料は、熱可塑性繊維を含むことが好ましく、例えば、ポリエチレン(以下、PEともいう)繊維、ポリプロピレン(以下、PPともいう)繊維等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維が挙げられる。また、芯鞘型、サイドバイサイド型等の構造の複合繊維を用いることも可能である。本発明では複合繊維を用いることが好ましい。ここでいう複合繊維としては、高融点成分が芯部分で低融点成分が鞘部分とする芯鞘繊維、高融点成分と低融点成分とが並列するサイドバイサイド繊維が挙げられる。その好ましい例として、鞘成分がポリエチレンまたは低融点ポリプロピレンである芯鞘構造の繊維が挙げられ、該芯鞘構造の繊維の代表例としては、PET(芯)とPE(鞘)、PP(芯)とPE(鞘)、PP(芯)と低融点PP(鞘)等の繊維が挙げられる。さらに具体的には、上記構成繊維は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン複合繊維を含むことが好ましい。ここで、該ポリエチレン複合繊維の複合組成は、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンであり、該ポリプロピレン複合繊維の複合組成が、ポリエチレンテレフタレートと低融点ポリプロピレンであることが好ましく、より具体的には、PET(芯)とPE(鞘)、PET(芯)と低融点PP(鞘)が挙げられる。用いられる樹脂の融点は断りのない限り大気圧下(Nガス雰囲気中)で測定された融点を意味する。
これらの繊維は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いて、熱融着性ウエブを構成することができる。また、熱融着性ウエブには、コットン、パルプ等の天然繊維やレーヨン、キュプラ等の再生繊維等の熱可塑性繊維以外の繊維が含まれていてもよい。したがって、本発明の製造方法によって製造される不織布には、上記の繊維を含むことが好ましい。
本発明の凹凸不織布の製造方法における凹凸賦形工程の一例として図1(A)及び(B)に示すものが挙げられる。すなわち図1(A)に示すように、複数の凸部11が基材13上に所定間隔で配されて、凸部11間が凹部12となった支持体10上にウエブ30を載置する。次いで図1(B)に示すように、ウエブ30に対し上方から押込み部材20を押し付ける。押込み部材20は複数の押し込み部21を基材23上に所定間隔で有しており、押し込み部21は支持体10の凹部12に噛合わされる。これにより、ウエブ30が部分的に凹部12に押し込まれる。これに伴い、支持体10の凸部11が押込み部材20における押し込み部21、21間の空間部22に噛合わされる。これにより、ウエブ30が部分的に空間部22に押し込まれる。このようにして、ウエブ30が凹凸賦形される。
支持体10及び押込み部材20によって賦形されたウエブ30は、支持体10の凹凸形状に沿わされて一旦保持されたまま搬送方向(MD方向)に搬送される。賦形後の搬送途中で、繊維同士の熱融着処理工程又は圧着処理工程を行ってウエブの凹凸形状を固定化し、凹凸不織布を形成する。この熱融着処理又は圧着処理としては、不織布における繊維同士を融着または圧着、好ましくは圧着できる種々の方法にて行うことができ、例えば、熱風処理、エンボス熱融着処理、エンボス圧着処理が挙げられる。これらは、単独または複数を組み合わせて行うことができるが、エンボス熱融着処理またはエンボス圧着処理の後に熱風処理することが、賦形された状態で繊維同士を熱融着させることができるため、出来上がった不織布において賦形形状が加圧によって一旦潰れても圧力を開放されたときに形状が回復し易くなるため好ましい。
エンボス熱融着処理工程、エンボス圧着処理工程は、支持体10と押込み部材20とによる賦形工程と同時に行ってもよく、賦形工程後に支持体10に一旦保持されたウエブ30に対し、ポイント接合手段(図示せず)を用いて行ってもよい。
また、賦形されたウエブに他のシートを積層して一体化するようにしてもよい。
得られた凹凸不織布は、例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の表面シート、着衣側の裏面シート、吸汗シート、生理用ナプキンのウイング等に適用することができる。表面シートとして用いる場合、どちらの面を着用者の肌面に向けて用いてもよい。おむつの例示としては、表面シートのほか、着衣側の裏面シート、表面シート及び裏面シートに挟まれた吸収体を有し、さらに、サイドシートがなす横漏れ防止ギャザーが設けられている。おむつは、背側のファスニングテープを腹側に固定して装着するテープタイプやパンツタイプのものであってもよい。また、おむつ以外の例えば生理用ナプキン等、種々の吸収性物品に適用できる。
本発明の凹凸不織布の製造方法において、賦形を行うに当たり、支持体及びウエブに関して下記の構成をとる。これにより賦形後における支持体からのウエブの浮き上がりを抑えて、良好な凹凸形状を付与した凹凸不織布を製造することができる。
まず支持体に関し、賦形されたウエブを支持体から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力(以下、支持体剥離抵抗力E1ともいう)を300cN/m以上20000cN/m以下としている。
これにより、賦形後の搬送に伴う遠心力によって賦形されたウエブが浮き上がるのを抑制することができる。また、一旦支持体により賦形されたウエブが熱融着又は圧着される前に平らに戻ろうとして支持体からウエブが浮くことを抑制することができる。そのため、支持体の凹部に押込み部材の押し込み部を噛合わせた時点でのウエブの凹凸形状を保ち易い。賦形時の凹凸形状を良好に保持できるため、ウエブ賦形工程から熱融着又は圧着工程に至るまでの間に凹凸形状が乱れにくく、賦形時の凹凸形状を良好に固定化することができる。
このとき、凹凸形状を保持するための流体による吸引や吹き付けの処理を併用してもよい。流体には熱風、常温風、冷風、水蒸気風が挙げられる。支持体は流体を通すため、支持体の凹部の底部に配された開孔を有することが好ましい。本発明においてはウエブが浮き難くされているため、吹き付けと吸引の風の速度を落とすことができ、ウエブが支持体に押しつけられる力が低くなり、より繊維間距離が長く厚み(肉厚が厚い)のある凹凸不織布を得ることができる。ただし、吸引では吸引穴が繊維粉などの蓄積により詰まり易いため該吸引処理は無いことが好ましい。更には吸引処理が無い場合、吸引なしで吹き付けを行うとウエブの乱れにもなる。そのため、吸引処理が無い場合は、吹き付け処理も無いことが好ましい。これらの観点から、吸引や吹き付けの風速は、それぞれ好ましくは2m/s以下、より好ましくは1m/s以下、更に好ましくは0.5m/s以下とすることが好ましい。また、風速は0m/s以上であること(吸引や吹き付けを行わない)が好ましい。
支持体剥離抵抗力E1は、賦形されたウエブの浮きあがりをより効果的に抑制する観点から、1000cN/m以上とすることが好ましく、6000cN/m以上とすることがより好ましい。
また、支持体剥離抵抗力E1は、ウエブ強度を考慮して、20000cN/m以下とすることで、低いウエブ強度を有するものでも、賦形されたウエブを破損することなく支持体から剥がし易くなる。そのため、凹凸形状を良好に保持した状態で円滑に剥がすことができる。
この観点から、支持体剥離抵抗力E1は、15000cN/m以下とすることが好ましく、10000cN/m以下とすることがより好ましい。
加えて、賦形されたウエブを押込み部材から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力(以下、押込み部材剥離抵抗力E2)よりも、賦形されたウエブを支持体から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力(支持体剥離抵抗力E1)が大きいことが好ましい。
これにより、賦形後に押込み部材をウエブから引き離す際に、ウエブの浮きが抑えられ、支持体に沿った凹凸形状が残り易い。
この観点から、支持体剥離抵抗力E1の押込み部材剥離抵抗力E2に対する比(E1/E2)は、4以上とすることが好ましく、10以上とすることがより好ましく、50以上とすることが更に好ましい。
また、前記比(E1/E2)は、特に上限はないが、押込み部材の表面粗さを小さくしたり、押込み部材の外周方向に向かって凸部の断面積を小さくなるようにクサビ状にテーパーを設けたりするには加工コストも含め限界があるため、100000以下とすることが好ましく、1000以下とすることがより好ましく、100以下とすることが更に好ましい。
更に、押込み部材剥離抵抗力E2は、0cN/m以上2000cN/m以下とすることが好ましい。これにより、賦形されたウエブが押込み部材の引き抜き方向に引っ張られることがより抑えられる。その結果、賦形されたウエブの凹凸高さがより効果的に維持される。
上記の観点から、押込み部材剥離抵抗力E2は、10cN/m以上とすることが好ましく、50cN/m以上とすることがより好ましく、100cN/m以上とすることが更に好ましい。
また、押込み部材剥離抵抗力E2は、2000cN/m以下とすることが好ましく、1000cN/m以下とすることがより好ましく、500cN/m以下とすることが更に好ましく、280cN/m以下とすることがより更に好ましい。
賦形後に、高速で加工する際にも賦形したウエブを支持体に沿わせて搬送する観点から、支持体剥離抵抗力E1は、搬送に伴ってウエブに加わる遠心力よりも大きいことが好ましい。支持体剥離抵抗力E1の遠心力に対する比(支持体剥離抵抗力E1/遠心力)は好ましくは25以上3000以下、より好ましくは400以上1500以下であると支持体10からウエブ30を引きはがす際に引っかからないため好ましい。この遠心力は下記式により算出される。
遠心力(cN/m)=0.1×W×(v/r)
W:単位面積当たりのウエブ質量(g/m
v:加工速度(m/s)
r:半径(m)
遠心力は加工速度vの二乗に比例することから、加工速度vが速くなるほど遠心力の値が大きくなる。加工速度vが好ましくは50m/min以上、より好ましくは80m/min以上、更に好ましくは120m/min以上であると本願の効果がより顕著となる。現実的な加工速度vとしては、好ましくは1000m/min以下、より好ましくは600m/min以下である。また、遠心力としては、好ましくは10cN/m以上、より好ましくは100cN/m以上、更に好ましくは200cN/m以上であると本願の効果がより顕著となる。前記支持体剥離抵抗力E1よりも遠心力を低くする観点から、遠心力は20000cN/m以下とすることが好ましく、15000cN/m以下とすることがより好ましく、10000cN/m以下とすることが更に好ましい。
賦形後、支持体からウエブを剥がす際に、支持体剥離抵抗力E1に0.1mを掛けた値が支持体から剥離したウエブのMD方向強度よりも低いことが、引き剥がしによるウエブの伸びやちぎれが起きにくいため好ましい。剥離したウエブのMD方向強度と支持体剥離抵抗力E1に0.1mを掛けた値との差(前者-後者)が好ましくは100cN/m幅以上、より好ましくは1000cN/m幅以上である。また、ウエブを硬くしすぎない観点から、10万cN/m幅以下が好ましく、6万cN/m幅以下がより好ましい。ここで、0.1mは支持体からのウエブの引き剥がし開始から終了するまでのMD方向支持体長さを想定した値である。支持体剥離抵抗力E1に0.1mを掛けた値は1m幅あたりの支持体剥離抵抗力に相当する。
支持体から剥離したウエブのMD方向強度(cN/m幅)は、支持体から剥離された後のウエブを用い、引張試験機によりチャック間150mm、引張測度300mm/minにてサンプルのMD方向に引張最大強度を測定し、その値をサンプルのCD幅で割ることで求められる。サンプルのCD幅は、幅が0.5m以下である場合はその全幅で行い、0.5m以上である場合は0.5mにカットして行う。測定に用いるチャック幅は50mmとし、サンプルはCD方向に折りたたまれて測定される。測定環境は温度23℃±2℃、湿度65%RH±5%RHとする。サンプル数は5点としその平均値を求める。
前述の支持体剥離抵抗力E1は下記に示す方法により測定することができる。また、押込み部材剥離抵抗力E2は、同型の押込み部材同士で実施の噛合い量にて噛合わせ、下記と同様の方法により測定する。ただし、同型の押込み部材同士では、噛合わせることができない場合(例えばネット同士)、支持体と同形状をした表面粗さの小さいもの(例えば支持体の凸部側面の表面粗さRzを0.1μm以下にしたもの)を用いて、押込み部材側にウエブが残るようにして同様の方法により測定する。
(賦形ウエブの剥離抵抗力測定法)
(1)対象とするウエブを用意し、支持体と押し込み部とによって実施の噛合い量にて前記ウエブの賦形を行う。支持体吸引、吹き付け、支持体加熱、押込み部材加熱等を行っている場合は、不織布を実施製造している条件で行う。
(2)加工速度(ロール周速)は5m/minとし、押込み部から解放され、支持体上のウエブが賦形された状態で停止する。このとき、支持体吸引、吹き付け、支持体加熱、押込み部材加熱を行っている場合は、これらを停止する。
(3)厚み1mm、30mm×30mmのステンレスプレートを用意する。支持体がロールなど曲率を有する場合は、プレートが支持体の曲率に添うように加工する。ステンレスプレートの裏面四角にひも等を取付け、プッシュブルゲージに連結する。次いで、ステンレスプレートの下面表面に両面粘着テープ30×30mm角(TERAOKA No777(商品名、株式会社寺岡製作所製)、または同等品)を貼りつけ、ステンレスプレートの上部に重りを載せて、プッシュブルゲージに掛かる重量を併せて50gfとなるようにする。この状態でプッシュブルゲージのゼロ点を行う。
(4)停止直後に下記(5)~(7)の測定を迅速に行う。測定部はほぼ水平となるようにする。この測定は不織布を実施製造している温度条件で行う。
(5)支持体上のウエブ表面に両面粘着テープ側が接するようにステンレスプレートを軽くのせ、ウエブ表面にステンレスプレートを貼りつける。次いで、先端が鋭利な小型ハサミ等でプレート周囲のウエブをウエブが支持体から浮かないようにカットする。
(6)プッシュブルゲージにより垂直方向へ300mm/minの速度で支持体からウエブが剥離する時の最大強度を測定する。その後、剥離したウエブ質量を測定し、このウエブ質量を測定値から差し引き、剥離強度(cN/900mm)を求める。
ウエブが支持体より剥離する前に破断する場合は、破断までの最大強度を測定する。開孔ウエブや目付ムラの大きなウエブなど、粘着テープが支持体と直接粘着する箇所を有する場合は、引張により粘着箇所が剥離した後の最大強度を測定する。
(7)異なる箇所にて点測定し、その平均値を面積1mあたりの強度に換算してウエブ剥離抵抗力(cN/m)とする。
前述の支持体剥離抵抗力E1は、ウエブの構成繊維と支持体との摩擦力を意味する。
この摩擦力は、下記の関係にある。
[摩擦力]=[摩擦係数]×[反発力]
「摩擦係数」は、ウエブの構成繊維と支持体の凸部との間に生じる摩擦の摩擦係数である。「反発力」は、ウエブが凸部間の凹部に押し込まれたときに、凹部の限られた空間の中で構成繊維が広がろうとする弾性力であり、凸部を押す力である(図2に示す矢印F2)。
この摩擦力(すなわち支持体剥離抵抗力E1)は、図2に示すように、支持体10の凹部12に押し込まれたウエブ30の構成繊維が支持体10の凸部11の突出方向に沿う壁面11Sに引っ掛かる力を意味する。この摩擦力が特定の値以上あることで、押し込まれたウエブ30の構成繊維が凸部11の壁面11Sに対して滑り難くなる。すなわち、前記摩擦力が、ウエブ30に対して凸部11の底部11Bからウエブ30を剥がす際の反作用F1として働き、凸部11の頂部11Tへの浮き上がりを抑える。
摩擦係数の因子及び反発力の因子はそれぞれ、支持体側に由来するものと、ウエブ側に由来するものとがある。以下に、それぞれの因子について説明する。
まず、摩擦係数を高める支持体側の因子について、下記〔1〕~〔4〕を挙げて説明する。
〔1〕凸部11における底部断面積の頂部断面積に対する百分率(%)([頂部断面積]/[底部断面積])×100
図3に示すように、支持体10の凸部11が、底部11Bよりも頂部11Tにおいて周方向の断面積が大きいことが好ましい。すなわち、底部11Bにおける周方向の断面積を「底部断面積」、頂部11Tにおける周方向の断面積を「頂部断面積」としたときに、頂部断面積>底部断面積の関係にあることが好ましい。これは凸部11が底部11Bよりも頂部11Tにおいて太くなっていることを意味し、底部11Bから頂部11Tに向かって太くなるテーパー形状を有することが好ましい。これにより、支持体10とウエブ30との摩擦力が高まり、すなわち支持体剥離抵抗力E1が増す。また、上記の形状が、支持体10の凹部12に押し込まれたウエブ30が頂部11T側に浮こうとする力を抑制する。
凸部11の頂部11Tとは、凸部11の突出方向における先端を意味する。凸部11の頂部11Tにおける周方向の断面積は、頂部11T側の一番太い箇所を測定する。なお、凸部11の先端が平面でその部分が最も太い場合、該平面が頂部11Tにおける周方向の断面と見なす。凸部11の底部11Bとは、凸部11の、凹部12の底部12Bに隣接する位置の部分(付け根部)を意味する。それぞれの周方向の断面積は、周方向のうち、2方向以上からマイクロスコープにより凸部11周辺,凹部12周辺を観察して測定することができる。
上記の頂部断面積>底部断面積の関係において、凸部11における([頂部断面積]/[底部断面積])×100は、101%以上が好ましく、105%以上がより好ましく、110%以上が更に好ましい。
また、凸部11における([頂部断面積]/[底部断面積])×100は、支持体10からウエブ30を引きはがす際にウエブ30の凹凸が乱れないようにするため、180%以下が好ましく、150%以下がより好ましく、120%以下が更に好ましい。
〔2〕凸部11の角部11Eや頂部近辺11Pにおける凹凸形状
図4(A)に示すように、凸部11の壁面11Sが角部11Eを有する場合、角部11Eに微細な凹凸形状(以下、支持体10の凹凸形状との区別するためマイクロ凹凸形状という)が配されていることが好ましい。同様に、頂部近辺11Pにマイクロ凹凸形状が配されていることが好ましい。角部11Eや頂部近辺11Pは、凸部11の中でもウエブの構成繊維が引っ掛かり易い部分であり、この部分にマイクロ凹凸形状を配することで、より効果的に摩擦係数を高めることができる。
また、このようなマイクロ凹凸形状は、凸部11の角部11Eや頂部近辺11Pに加え、角部11E間の壁面11Sに配されていることが更に好ましい。
マイクロ凹凸形状は、研削加工、サンドブラスト加工、メッキ加工、溶射加工、エッチング加工など、通常用いられる種々の方法により形成することができる。特に研削加工が耐久性と好ましい表面粗さRzのものが得られる点で好ましい。なお、これらの加工方法において、ロールなど回転させながら表面を加工することから、凸部11のCD方向に平行な面に隣接する角部等よりも、MD方向に平行な面に隣接する角部等にマイクロ凹凸形状を形成し易い。マイクロ凹凸形状は、MD方向に平行な面に沿って形成することが、後述する図6に示されるように繊維が凸部11の壁面11Sとその角部11Eと接し、その際の摩擦力を上げる点で好ましい。
マイクロ凹凸形状は、図4(B)~(D)に示すように、次のような傾斜角度を有することが好ましい。傾斜角度には、凸部11の突出方向に沿って見たときに、頂部側の傾斜角度と底部側の傾斜角度とがある。これらの傾斜角度は、傾斜部を直線で近似した線を引いて測定され、それぞれを頂部側近似傾斜角度A、底部側近似傾斜角度Bという。
図4(B)に示す凸部11のマイクロ凹凸形状は研削により形成した例である。頂部側近似傾斜角度Aは、凸部11の底部11B側に向かう傾斜角度を有する。底部側近似傾斜角度Bは、凸部11の頂部11T側に向かう傾斜角度を有する。
図4(C)に示す凸部11のマイクロ凹凸形状は研削により形成した別の例である。頂部側近似傾斜角度A及び底部側近似傾斜角度Bは共に、凸部11の底部11B側に向かう傾斜角度を有する。
図4(D)に示す凸部11のマイクロ凹凸形状は溶射により形成した例である。頂部側近似傾斜角度Aは、凸部11の底部11B側に向かう傾斜角度を有する。底部側近似傾斜角度Bは、凸部11の頂部11T側に向かう傾斜角度を有する。
上記のような頂部側近似傾斜角度A及び底部側近似傾斜角度Bは、次の方法によって測定することができる。
(頂部側近似傾斜角度A及び底部側近似傾斜角度Bの測定方法)
まず、マイクロスコープにより20倍~400倍に拡大して観察を行う。
測定部位は繊維と接する凸部11の壁部又は角部とする。
凸部11の壁部又は角部に対して、マイクロ凹凸形状の頂部側の傾斜部と底部側の傾斜部を直線で近似した直線を引く。マイクロ凹凸形状が、例えば図4(B)に示すような山形である場合、図4(C)に示すようなノコギリ刃状である場合、図4(D)に示すような丸みを帯びている場合、それぞれの斜面に沿って近似した直線L1及びL2を引く。
支持体10の平面方向と前記近似直線とのなす角をそれぞれ測定する。異なる10点の凸部11についてマイクロ凹凸形状を測定し、その平均値をそれぞれ頂部側近似傾斜角度A、底部側近似傾斜角度Bとする。
マイクロ凹凸形状が図4(B)に示す山形の例の場合、図4(D)に示す丸みを帯びた例の場合、底部11B側に向かう頂部側近似傾斜角度A、頂部11T側に向かう底部側近似傾斜角度Bそれぞれの値を正とする。
マイクロ凹凸形状が図4(C)に示す底部側に傾斜したノコギリ刃形状である場合、底部11B側に向かう頂部側近似傾斜角度Aの値を正とし、底部11B側に向かう底部側近似傾斜角度Bの値を負とする。
逆にマイクロ凹凸形状が頂部側に傾斜したノコギリ刃形状である場合(図示せず)、頂部11T側に向かう頂部側近似傾斜角度Aの値を負とし、頂部11T側に向かう底部側近似傾斜角度Bの値を正とする。
上記に定義される頂部側近似傾斜角度A及び底部側近似傾斜角度Bは次の範囲にあることが好ましい。
まず、底部側近似傾斜角度Bは、支持体10からウエブを引きはがす際に引っ掛からないようにする観点から、-45°以上が好ましく、-30°以上がより好ましく、0°以上が更に好ましい。底部側近似傾斜角度Bは、ウエブ30の浮き方向における壁部と繊維との摩擦が増してウエブ30の浮きをより効果的に抑制する観点から、85°以下が好ましく、80°以下がより好ましく、75°以下が更に好ましい。
また、頂部側近似傾斜角度Aは、ウエブ30を支持体10に押し込む際に繊維が引っ掛からないようにする観点から、0°以上が好ましく、50°以上がより好ましく、60°以上が更に好ましい。頂部側近似傾斜角度Aは、例えば山形の場合、角度Aが小さくなるほど山と谷の深さが大きくなる傾向にあり、繊維が谷部に入るスペースができるため、ウエブ30の浮きをより効果的に抑制する観点から、85°以下が好ましく、80°以下がより好ましく、75°以下が更に好ましい。
更に、頂部側近似傾斜角度Aは底部側近似傾斜角度Bよりも大きいことが好ましい。この大小関係において、頂部側近似傾斜角度Aと底部側近似傾斜角度Bとの差(A-B)は、ウエブ30を支持体10に押し込む際に繊維が引っ掛からないようにする観点から、5°以上が好ましく、10°以上がより好ましく、15°以上が更に好ましい。また、前記差(A-B)は、ウエブの浮きをより効果的に抑制する観点から、90°以下が好ましく、60°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。
〔3〕凸部11の壁面11Sの表面粗さRz
凸部11の壁面11Sの表面粗さRzが高いことで摩擦係数が高まり、ウエブの構成繊維の引っ掛かりを生じさせ易くし、ウエブの浮きを更に効果的に抑制することができる。
この観点から、凸部11の壁面11Sの少なくとも一部の表面粗さRzは、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。
また、凸部11の壁面11Sの少なくとも一部の表面粗さRzは、支持体10からウエブを引きはがす際に引っ掛からないようにする観点から、75μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。
上記の表面粗さRzは、凸部11の壁面11Sの面積の20%以上の領域にあることが好ましく、30%以上の領域にあることがより好ましく、40%以上の領域にあることが更に好ましい。
上記の表面粗さRzは、研削加工、サンドブラスト加工、メッキ加工、溶射加工、エッチング加工等、この種の支持体10に対して施す種々の方法を用いて形成することができる。特に研削加工が耐久性と好ましいマイクロ凹凸形状のものが得られる点で好ましい。
(表面粗さの測定方法)
ISO4287-1997に準拠して支持体突起壁部の表面粗さ(最大高さ)Rzを測定する。
測定条件はλc0.8mm、λs2.5mm、区間5、GAUSSフィルタ、曲線R、速度0.5mm/s、測定範囲4.8mm、スタイラス測定子の先端角度90度、先端半径2μm、測定力4mNとする。
測定器は例えば株式会社ミツトヨ製のSJ210(商品名)を用いることができる。
測定方向は、凸部のウエブ30の引き剥がし方向に測定する。
異なる凸部11の壁面11Sの粗さを3点測定し、平均値を表面粗さRzとする。
〔4〕支持体10と押込み部材20との噛合い量D
図5に示すように、噛合い量Dは、支持体10の凸部11、11間の凹部12に対して、押込み部材20の押し込み部21が入り込む深さを意味する。この噛合い量Dが大きいことはウエブ30が凹部12により深く押し込まれることを意味し、凸部11の壁面11S等との接触面積が増す。これにより、押し込まれたウエブ30と凸部11との摩擦力すなわち支持体剥離抵抗力E1が高められる。また、噛合い量Dを大きくすることで、賦形されるウエブ30の凹凸の高低差をより大きくでき、よりふっくらとしてクッション性がある凹凸不織布を形成することができる。
この観点から、噛合い量Dは、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が更に好ましい。
また、噛合い量Dは、凹凸不織布における地合いムラによる穴あきやクッション性の低下を抑制する観点から、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、8mm以下が更に好ましい。
次いで、反発力を高める支持体側の因子について、下記〔1〕及び〔2〕を挙げて説明する。
〔1〕凸部11、11間の隙間距離W1
図5に示すように、凸部11、11間の隙間距離W1を小さくすることにより、押し込み部21によって凹部12に押し込まれたウエブ30がより鋭角に湾曲し、湾曲したウエブ30の曲率半径が小さくなる。これにより、ウエブ30の凸部11に対する反発力が高まり、支持体10とウエブ30との摩擦力すなわち支持体剥離抵抗力E1が増す。特に、凸部11の頂部11T側にある湾曲したウエブ30の曲率半径R2が、凸部11の底部11B側にある湾曲したウエブ30の曲率半径R1よりも小さくなる。
この観点から、支持体の凸部11、11間の隙間距離W1は、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。
また、隙間距離W1は、凹凸不織布における凹凸ピッチを適正な範囲にし、また押込み部材20の凸部を薄くする場合の強度を保持する観点から、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上が更に好ましい。
なお、凸部11が、前述のように底部11Bよりも頂部11Tにおいて周方向の断面積が大きい形状を有する場合、凸部11、11間の隙間距離W1は、凸部11がこのようなテーパー形状を有することにより隙間距離W1による反発力に対してより摩擦力が増すため、遠心力によって更にウエブが浮きにくくなるようにする観点から、1mm以上8mm以下が好ましく、1.5mm以上4mm以下がより好ましい。凸部11がテーパー形状等である場合、隙間距離W1は頂部11Tから噛合い量Dまでの範囲における凸部11、11間の平均間隔距離とする。
〔2〕支持体10と押込み部材20との噛合い時における支持体10の凸部11とウエブ30とが接触するCD方向への投影断面積率
上記のCD方向への投影断面積率とは、支持体10と押込み部材20との噛合いによって押し込まれたウエブ30に対してCD方向に観察したときに、ウエブ30が凸部11(主に壁面11S)と重なる部分11Mの面積を意味する。言い換えると、押込み部材20において、噛合い量D分の押し込み部21が支持体10における凸部11に投影して重なる面積ということもできる。
なお、CD方向に観察するのは、図6(A)に示すようにMD方向に連続的に延出する凹部12に対し、押込み部材による押込みをMD方向に沿って行う場合を前提としていることによる。このとき図6(A)、図7及び図8に示すように、支持体10の凸部11がMD方向及びCD方向に等間隔で升目状に配置されていて押込みをMD方向に沿って行う場合、ウエブ30を押し込む力が、隣接する凸部11のMD方向に並ぶ列における凸部11間の凹部12に波及する。その凹部12の位置においてウエブ30に対する弱い押し込みがCD方向に沿って生じる。これにより、得られる凹凸不織布においては、MD方向に沿う畝部に加え、該畝部をCD方向に繋ぐ中間畝部が形成され、縦横の畝が格子状に配される畝溝構造が形成される。
このCD方向への投影断面積率は次の式で算出することができる。
投影断面積率=(凸部間で1ピッチあたりの対抗する平均長さ×対抗部の噛合い量)/(1ピッチ長×対抗部の噛合い量)×100
ここで、「1ピッチ長」とはMD方向に並ぶ凸部11、11の列における凸部11のピッチ長さを意味し、図6(B)において1ピッチ長8Wとして示される。「対抗部の噛合い量」とは、凸部11と押し込み部21との噛合い量を意味し、図6(B)において噛合い量8Dとして示される。また、「凸部間で1ピッチあたりの対抗する平均長さ」とは、前述の1ピッチ長8W内において、凸部11に対して押し込み部21をCD方向に投影したときに互いに対抗するMD方向の長さを意味し、図6(B)において対抗する平均長さ11Wとして示される。平均長さ11Wは、凸部11の頂部から噛合い量8D(11D)間において投影したとき、MD方向の平均的な長さを意味する。
上記の式における分母(1ピッチ長×各部の噛合い量)は、図6(B)において符号8Mで示され、分子(凸部間で1ピッチあたりの対抗する平均長さ×対抗部の噛合い量)は、図6(B)において符号11Mで示される。すなわち上記の投影断面面積率は、11M/8Mとなる。
上記に定義するCD方向への投影断面積率が大きい程、ウエブ30と支持体10との接触面積が増す。これにより、ウエブ30の凸部11に対する反発力が高まり、支持体10とウエブ30との摩擦力すなわち剥離抵抗力が増す。
この観点から、上記のCD方向への投影断面積率は、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。
また、上記のCD方向への投影断面積率は、凸部11、11間でCD方向に延びる中間畝部を形成して凹凸不織布における圧縮潰れ難さを高める観点から、100%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。
次に、支持体剥離抵抗力E1を高めるウエブ側の因子について、下記に説明する。
〔1〕ウエブ30に含有される繊維油剤(繊維処理剤)
ウエブ30に含有される繊維油剤として摩擦係数の高いものを用いることで、ウエブ30の支持体10に対する摩擦係数が高まり、支持体10とウエブ30との摩擦力すなわち剥離抵抗力が増す。
特に図9に示すようにウエブ30を複数層構造とし、支持体10における凸部11の底部11B側の第1層31の繊維油剤として摩擦係数の高いものを用い、凸部11の頂部11T側の第2層32の繊維油剤として摩擦係数の低いものを用いることが好ましい。このような繊維油剤量として、上記観点から例えば繊維重量に対する繊維油剤量を、好ましくは0.2質量%以上0.6質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上0.5質量%以下とすることで支持体10からのウエブ30の引き剥がしや、支持体10への繊維油剤の付着による蓄積が減少し良好となる。
これにより、支持体10とウエブ30との摩擦力すなわち剥離抵抗力が増すと同時に、ウエブ30と押込み部材20との剥離時にウエブ30の凹凸形状が崩れにくくなる。この確認方法としては、フラットなウエブ30を、凹凸形状に賦形することなしにコンベアネット上でエアースルー熱処理した不織布を第1層と第2層にそれぞれの繊維を用いて、第1層がネット面になるようにしたものと、第2層がネット面になるようにしたものをそれぞれ作成したものを平均摩擦係数の測定に用いる。
また、繊維油剤は、製造工程の稼働時間の経過とともに、支持体10に蓄積していくため、剥離抵抗力は徐々に増加する。製造工程の稼働開始の剥離抵抗力を適度な値とするため、平均摩擦係数(MIU)を0.2以上0.33以下とすることが好ましい。
(平均摩擦係数(MIU)の測定方法)
平均摩擦係数(MIU)は、以下の方法により測定することができる。すなわち、自動表面試験機(カトーテック株式会社製のKES FB4-AUTO-A)を用いて、直径0.5mmのSTEELピアノ線を用いた測定子により、測定子面積1cm、荷重50gf/cmにて、速度1mm/sにて、30mm長を往復移動させたときの摩擦力を測定する。解析距離は両端の5mmのデータをカットして20mm長とする。表面摩擦係数をMIUとして求める。測定面は対象面側が測定子側となるようにし、測定方向は前記MD方向とCD方向として、その測定値を平均する。初期のサンプル張力は10cN/cmとする。それぞれの測定値はシートを5点測定して、その平均値とする。
〔2〕ウエブ30における繊維径の異なる構成繊維を用いた複数層構造
図9に示すようにウエブ30を複数層構造とし、支持体10における凸部11の頂部11T側(押し込まれたウエブ30の曲率半径が小さいR2側)の第2層32の構成繊維の繊維径を太くすることが好ましい。この場合、支持体10における凸部11の底部11B側(押し込まれたウエブ30の曲率半径が大きいR1側)の第1層31の構成繊維の繊維径を細くすることが好ましい。これにより、凹部12に押し込まれ凸部11、11間に挟まれたウエブ30の凸部11に対する反発力が高まり、支持体10とウエブ30との摩擦力すなわち剥離抵抗力が増す。上記観点から支持体10側の平均繊維径に対する押込み部材20側の平均繊維径の比(後者/前者)が好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以上であることが好ましく、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下であることが地合いムラの少ない不織布が得られる点で好ましい。
(平均繊維径の測定方法)
平均繊維径は、以下の方法により測定することができる。すなわち、不織布の厚み方向断面から走査電子顕微鏡(SEM)により観察する。観察範囲内でほぼ平均と思われる繊維径を代表繊維径として求める。観察倍率は繊維径によって異なり、観察倍率(倍)=6000/代表繊維径(μm)として、この値の±50%の範囲の倍率にて観察する。例えば代表繊維径が20μmの場合、150倍以上450倍以下にて観察する。上部側、すなわち電子線照射側の繊維にフォーカスを合わせて画像を撮影する。2層以上の繊維層からなる場合は、それぞれの繊維層の繊維径を測定する。1画像について、繊維交点における融着部と繊維の端部を除いた部分において、ランダムに選んだ異なる繊維における繊維の太さ、すなわち繊維の長手方向に垂直な方向の幅を10ヶ所測定し、平均した値を繊維径とする。異なるサンプル5点について同様に測定した値を平均して、平均繊維径を求める。なお、繊維断面が円形でない場合は不織布の厚さ方向の断面観察により、SEM画面に対して垂直に向いている繊維を10ヶ所選び、それらの断面形状から断面積を求め、それを円形に仮定したときの直径から繊維径を求める。
〔3〕ウエブ30の厚み
賦形前のウエブの厚み(0.5g/cm荷重時)を厚くすることが好ましい。これにより、凸部11、11間に押し込み部21が噛合いされてウエブ30が押し込まれた際に、ウエブ30の反発力が高くなり、摩擦力すなわち支持体剥離抵抗力E1が増す。
上記の観点から、ウエブ30の厚みは0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。また、ウエブ30の厚みは、支持体10の凸部間の隙間への円滑な押し込みを可能にする観点から、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましい。
本発明の凹凸不織布の製造方法において、前述の要件を具備することにより、支持体からウエブの浮きが抑えられ、ウエブ賦形工程から繊維融着又は繊維圧着工程に至るまでの間に凹凸形状が乱れ難くなる。これにより、良好な凹凸形状を備えた凹凸不織布を好適に製造することができる。
また、支持体10とウエブ30との剥離抵抗力を適度に高めるのとは反対に、押込み部材20は、ウエブ30との剥離抵抗力を低減させたものであることが好ましい。すなわち、押込み部材20は、支持体10の前述の構成とは逆の構成をとることが好ましい。これにより、支持体10の凹部12に押し込まれたウエブ30から押込み部材20を引き抜く際、ウエブ30が支持体10の頂部11T側に良好に残り易くなり好ましい。
押込み部材20の剥離抵抗力E2を低減させる方法について、下記〔1〕~〔5〕を挙げて説明する。
〔1〕押し込み部21における底部断面積の頂部断面積に対する百分率(%)([頂部断面積]/[底部断面積])×100
図10に示すように、押込み部材20の押し込み部21が、底部21Bよりも頂部21Tにおいて周方向の断面積が小さいことが好ましい。すなわち、底部21Bにおける周方向の断面積を「底部断面積」、頂部21Tにおける周方向の断面積を「頂部断面積」としたときに、頂部断面積<底部断面積の関係にあることが好ましい。これは押し込み部21が底部21Bよりも頂部21Tにおいて細くなっていることを意味し、底部21Bから頂部21Tに向かって細くなるテーパー形状を有することが好ましい。これにより、押込み部材20とウエブ30との摩擦力が低減し、すなわち押込み部材剥離抵抗力E2が減少する。上記の頂部断面積<底部断面積の関係において、押し込み部21における([頂部断面積]/[底部断面積])×100は、99%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下が更に好ましい。
また、押し込み部21における([頂部断面積]/[底部断面積])×100は、押込み部材20の押し込み部21の強度を確保する観点から、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。
〔2〕押し込み部21の角部21Eや頂部近辺21Pにおける形状
押込み部材20の押し込み部21の壁面21Sが角部21Eを有する場合、角部21Eに前述のマイクロ凹凸形状が配されていないことが好ましい。同様に、頂部近辺21Pにもマイクロ凸形状が配されていないことが好ましい。角部21Eや頂部近辺21Pは、押し込み部21の中でもウエブの構成繊維が引っ掛かり易い部分であり、この部分が平滑であることで、より効果的に摩擦係数を低減させることができる。
〔3〕押し込み部21の壁面21Sの表面粗さRz
押込み部材20の押し込み部21の壁面21Sの表面粗さRzが小さいことで摩擦係数が低減し、ウエブの構成繊維の引っ掛かりを生じにくくさせ、ウエブの浮きを更に効果的に抑制することができる。
この観点から、押し込み部21の壁面21Sの少なくとも一部の表面粗さRzは、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下が更に好ましい。
また、押し込み部21の壁面21Sの少なくとも一部の表面粗さRzは、研磨に要する時間を抑制する観点から、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましい。更に上記観点から支持体10の凸部11の壁面11の表面粗さRzよりも押込み部材20の押し込み部21の壁面21Sの表面粗さRzが小さいことが好ましい。前者/後者の比において、2以上100以下であることが好ましく、10以上70以下であることがより好ましい。
上記の表面粗さRzは、押し込み部21の壁面21Sの面積の20%以上の領域にあることが好ましく、30%以上の領域にあることがより好ましく、40%以上の領域にあることが更に好ましい。
上記の表面粗さRzは、研磨加工、メッキ加工、蒸着等、この種の押込み部材20に対して施す種々の方法を用いて形成することができる。測定は、凸部11の場合と同様の方法により行うことができる。
〔4〕押し込み部21、21間の隙間距離W2
押込み部材20の押し込み部21、21間の隙間距離W2を大きくすることにより、押し込み部21によって凹部12に押し込まれたウエブ30がより緩やかに湾曲し、湾曲したウエブ30の曲率半径(R1、R2)が大きくなる。これにより、ウエブ30の押し込み部21に対する押し付け圧が低下し、押込み部材20とウエブ30との摩擦力すなわち剥離抵抗力E2が減少する。この時、支持体10側の剥離抵抗力E1も低下するが、支持体10に対するウエブ30の反発力の低下よりも押込み部材20に対するウエブ30の押し付け圧の方が大きく低下するため、相対的に剥離抵抗力E2の減少割合の方が大きくなる。
この観点から、押込み部材20の押し込み部21、21間の隙間距離W2は、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。
また、隙間距離W2は、凹凸不織布における凹凸ピッチを適正な範囲にする観点から、14mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、7mm以下が更に好ましい。
なお、押し込み部21が、前述のように底部21Bよりも頂部21Tにおいて周方向の断面積が小さい形状を有する場合、押し込み部21、21間の隙間距離W2は、押し込み部21がこのようなテーパー形状を有することにより隙間距離W2による反発力に対してより摩擦力が低減するため、ウエブの浮きを更に効果的に抑制できるようにする観点から、2mm以上8mm以下が好ましく、更には3mm以上6mm以下がより好ましい。押し込み部21がテーパー形状等である場合、隙間距離W2は頂部21Tから噛合い量Dまでの範囲における押し込み部21、21間の平均間隔距離とする。
〔5〕支持体10と押込み部材20との噛合い時における押込み部材20の押し込み部21とウエブ30とが接触するCD方向への投影断面積率
上記のCD方向への投影断面積率は、支持体10の凸部11とウエブ30とが接触するCD方向への投影断面積率と同様の方法によって求められる。
本発明の凹凸不織布の製造方法において、支持体及び押込み部材としては、前述の要件を実現でき、凹凸不織布の目的とする凹凸形状を良好に形成し得る種々の形態のものを用いることができる。
例えば、前述の図7及び図8に示す支持体10が好ましく用いることができる。この支持体10においては、升目状に凸部11が配され、凹部12が格子状に配されている。この凸部11とその間の凹部12に沿って、縦横の畝が格子状に配される畝溝構造の凹凸不織布を形成することができる。また、図7及び図8に示す支持体10において、凸部11は、角部1Eを備えた柱状であり、壁面11Sが基材13に対して垂直に立設されている。これにより得られる凹凸不織布において、構成繊維が垂直方向に沿い易く、凹凸形状の高低差が大きくなる。これにより、凹凸不織布は嵩高く、押圧に対する圧縮性と厚み回復性の両方に優れた高いクッション性を備え、押圧でもへたり難い形状保持性を備えるものとなる。なお、前述の周方向の断面積が底部11Bよりも頂部11Tにおいて大きい場合でも、底部11Bにける壁面11Sと基材13との交差角度θは、75°以上89°以下の範囲にあることが好ましい。また、支持体10がドラムロール状である場合は、凸部11と基材13との交点における接線Jと凸部11との角度が前記の交差角度θとなる。
また、押込み部材20としては、図7及び図8に示す支持体10の格子状の凹部12に対応した格子状の押し込み部21を備えたものでもよいし、支持体10の格子状の凹部12のMD方向に沿って押し込み部21を備えたものでもよい。また、支持体10の凹部12のCD方向に沿って押し込み部21を備えたものでもよい。支持体10の凹部12のMD方向に沿って押し込み部21を備えたものとしては、円盤状のリングをCD方向に複数集めてロール軸に通して束ねたリングロールが挙げられる。また、円盤状のリングに代えて、リングの円周上に更に凹凸があるギアロールを用いたリングロールであってもよい。
さらに、噛合い量Dの半分の位置における押し込み部21の凸部11の存在する長さ割合がMD方向またはCD方向に対して50%以下の場合、「間欠接触」がより顕著になり好ましい。これにより得られる凹凸不織布においては、MD方向またはCD方向に沿う畝部に加え、該畝部をCD方向またはMD方向に繋ぐ中間畝部が形成され、縦横の畝が格子状に配される畝溝構造が形成される点で好ましい。例えば押し込み部21としてのギアロールを複数集めてロール軸に通して束ねたリングロールを押込み部材20として採用した場合、噛合い量Dの半分の位置におけるギアロールの歯の存在するMD方向の周長割合が50%未満の場合が挙げられる。
更に、本発明の凹凸不織布の製造方法において、賦形処理を行って得られた凹凸不織布のみからなるものでもよく、凹凸不織布と他のシートとを積層したものであってもよい。
凹凸不織布と他のシートとを積層したものは、この種の物品において通常用いられる種々の製造方法により得ることできる。例えば、図11に示す製造装置200を用いた製造方法が挙げられる。
図11に示す製造装置200は、不織布の原料となる繊維を用いた熱融着性ウエブ300を供給するウエブ供給部102と、ウエブ供給部102から供給されたウエブ300を搬送するコンベアベルト104と、コンベアベルト104により搬送される熱融着性ウエブ300を加圧するニップローラ106とを備えている。その下流に、熱融着性ウエブ300に対して賦形加工を施して賦形ウエブ301を形成する一対のロール(支持ロール(支持体)10及び押込みロール(押込み部材)20)と、支持ロール10により牽引される賦形ウエブ301の凹部の底部の繊維の一部又は全てを融着させるポイント接合手段130と、ポイント接合手段130により融着された融着部(エンボス部)を冷却させるクーリングロール114とを備えている。また、支持ロール10とポイント接合手段130との間に、賦形ウエブ301の下層として積層される繊維層140を供給する機構を備える。
繊維層140は、熱融着性ウエブであってもよく不織布であってもよい。繊維層140が熱融着性ウエブであるとき、賦形ウエブ301に形成された凸部の内部に繊維層140の繊維が入り込み、二層構造かつ中実構造の凹凸不織布が製造される。繊維層140が不織布であるとき、二層構造かつ閉鎖中空構造の凹凸不織布が製造される。
さらに、クーリングロール114の下流に、第2ベルトコンベア117と、凹凸賦形処理とエンボス処理を行ったエンボスウエブ302に対し加熱流体を吹き付けて繊維交点を融着する、すなわち不織布化する熱流部118を有する。
ウエブ供給部102、コンベアベルト104及びニップローラ106は、支持ロール10及び押込みロール20に向けて、繊維を用いた熱融着性ウエブ300を供給及び搬送するよう構成されている。また、クーリングロール114は、ポイント接合手段130によってエンボス部3が形成されたエンボスウエブ302を冷却させながら下流側に向けて搬送するよう構成されている。コンベアベルト104、ニップローラ106、クーリングロール114は適宜使用しない場合もあり得るが、安定的に生産する上でこれらを設けることが好ましい。このようなウエブ供給部102、コンベアベルト104、ニップローラ106及びクーリングロール114としては、通常用い得る種々の構成を採用可能である。
以上の構成を備える製造装置200において、まず加工原料となる熱融着性ウエブ300をウエブ供給部102からコンベアベルト104上に供給し、該熱融着性ウエブ300をニップローラ106により加圧しつつ、コンベアベルト104により支持ロール10及び押込みロール20間に搬送する。ここで、ニップローラ106は、強固に繊維を接合させるものではなく、熱融着性ウエブ300を搬送できる程度に繊維同士を圧着させるものである。この際の圧着部のほとんどは、支持ロール10及び押込みロール20の噛合い時の引張張力により剥離する傾向にある。このように、剥離により圧着部が減ることで、繊維の自由度が増し風合いに優れるため好ましい。また、仮に圧着部の一部が残るとしても、当該圧着部は融着部ではないため、引っ掛かりに起因する風合いの低下を引き起こすことはほぼ無い。
また、製造装置200において、ウエブ供給部102は単層の熱融着性ウエブ300を供給するものとして示しているが、これに限定されない。例えば、ウエブ供給部102が2つ以上の装置を備え、2層以上の厚みのある熱融着性ウエブ300を供給できるようにしてもよい。熱融着性ウエブ300が2層以上の積層体としてコンベアベルト104上に供給される場合、製造装置200においては支持ロール10及び押込みロール20による凹凸賦形が積層体全体に対してなされる。
熱融着性ウエブ300が支持ロール10及び押込みロール20の噛合い部分に到達した後は、支持ロール10及び押込みロール20との噛合いによって熱融着性ウエブ300に凹凸形状が賦形され、賦形ウエブ301が形成される(工程(I))。
この賦形ウエブ301に対して、上記の支持ロール10及び押込みロール20によって賦形と同時に、又は好ましくは賦形後にエンボス熱融着工程又はエンボス圧着工程(工程(II))を行う。賦形後にエンボス熱融着工程又はエンボス圧着工程を行う場合、賦形された賦形ウエブ301は、支持ロール10によって該支持ロール10の周面に密着し、支持ロール10の回転により、凹凸形状が賦形された状態が保持されたままポイント接合手段130の位置へと搬送される。ポイント接合手段130と支持ロール10の凸部又は凹部との挟持により、賦形ウエブ301の凹部の底部の繊維がエンボス(加圧融着または圧着)される。このとき、下層として積層される繊維層140を供給して、賦形ウエブ301の凹部と繊維層140とを併せてエンボスする。これにより、エンボス部3が所定のパターンで形成される。
その後、エンボス部3が形成されたエンボスウエブ302は、クーリングロール114に引き渡されて冷却され、その下流の第2コンベアベルト117で搬送され、熱流部118の位置で繊維交点が融着される。得られた不織布の凸部は繊維の交絡点における繊維同士の融着部が形成され、不織布の凹部は、エンボス部及び繊維の交絡点における繊維同士の融着部が形成される(工程(III))。
これにより、凹凸形状をした上層と裏面がフラットな下層とからなる凹凸形状を備えた積層不織布100が製造される。
なお、支持ロール10とポイント接合手段130との間に、賦形ウエブ301の下層として積層される繊維層140を供給しない場合は、賦形ウエブ301のみから得られる凹凸不織布が製造される。
上記エンボス熱融着工程又はエンボス圧着工程に用いるポイント接合手段130としては、加熱されたヒートロール(カレンダーロール)装置、圧着装置の他に超音波によって加熱する超音波装置を採用することができる。ヒートロール装置としては、周面がフラットなものや、周面に凸構造を有するもの等が挙げられる。超音波装置としては、周面がフラット(円弧状や平面状)なものや、周面に凸構造を有するものが挙げられる。このような装置を用いて、噛合い賦形ウエブの凹部の底部の繊維をポイントで加熱してエンボス熱融着することができる。
また、圧着装置としては、上記のヒートロール装置や超音波装置と同様のロール周面形状(凸構造や凸構造を有するロール周面形状、フラットなロール周面形状等)を有し、噛合い賦形ウエブの凹部の底部の繊維をポイントで加圧してエンボス圧着するものが挙げられる。
エンボス熱融着工程又はエンボス圧着工程によって形成されるエンボス部は、底部にある繊維層がエンボス加工によって圧搾され、繊維が加圧融着又は圧着された部分を意味する。エンボス部においては、繊維が周囲よりも高密度化されている。前記「繊維同士の融着部」とは、下記に示す「加圧融着」や「圧着」された部分とは異なり、繊維が潰れずに融着した部分を意味する。
「加圧融着」とは、繊維同士の接合界面における少なくとも一方の繊維の樹脂が圧力と熱(分子間摩擦や圧縮による自己発熱や外部加熱による)によって溶融し、他方の繊維に接合することを意味する(この加圧融着の処理をエンボス熱融着ともいう)。加圧融着では少なくとも挟持によって圧力を外部より繊維に加える。圧力により繊維を構成する樹脂の融点が下がる樹脂もあるため、未荷重下における樹脂の融点よりも低い加熱温度(加工ロールなどの表面温度)であってもよい。
加圧融着されていることは、走査電子顕微鏡にて不織布の断面を観察することで他の部位と比べて繊維が潰れて変形しており、繊維を構成する樹脂の少なくとも1種以上の樹脂が溶融しており繊維形態を有していないことで確かめられる。繊維が潰れて変形している程度に関し、エンボス部と繊維との境界部分の断面(エンボス境界部ともいう)の少なくとも一部において、エンボスされていない箇所にくらべて繊維断面(繊維の長手方向に対して垂直方向の断面)の平均扁平率(長辺/短辺の比)が20%以上高くなっていることが好ましい。平均扁平率の増加量(%)は[(エンボス境界部の平均扁平率-エンボスされていない箇所の平均扁平率)/エンボスされていない箇所の平均扁平率]×100として求められる。繊維断面外周が円形や楕円形状でない場合は、繊維外周を断面積が同じとなるような楕円形状に近似して長辺と短辺を求める。
「圧着」とは、樹脂が熱や圧力によって溶融されずに繊維が他方の繊維に密着することを意味する(この圧着の処理をエンボス圧着ともいう)。圧着においても少なくとも挟持によって圧力を外部より加える。繊維が密着する力(密着力ともいう)は、シートが搬送できる程度以上の強度があればよい。
圧着していることは、走査電子顕微鏡にて不織布の断面を観察することで他の部位と比べて繊維が潰れて変形しており、繊維同士の接触点における繊維断面にて接触長さが圧着されていない箇所よりも増えていることで確かめられる。繊維が潰れて変形している程度については、加圧融着と同様である。溶融されていないことは、圧着箇所において繊維の外周面と他の繊維の外周面との境界が判別できることで確かめられる。また、繊維同士の接触点当たりの接触長さが平均して圧着されていない箇所よりも10%以上増加していることが好ましい。接触長さの増加量(%)は[(圧着されている箇所の繊維外周の接触長さ-圧着されていない箇所の接触長さ)/圧着されていない箇所の接触長さ]×100として求めることができる。繊維同士の接触点断面観察はサンプルを樹脂包埋(エポキシ樹脂やアクリル樹脂など構成繊維を膨潤や変形させにくい樹脂で固めた)後に、鋭利な刃によって断面を形成する。
エンボス部において、一例として繊維は、不織布の平面方向に沿う状態にあり、潰れて扁平になったり、フィルム化したりする傾向にある。また、エンボス部は、他の部分よりも繊維密度が高い。このようなエンボス部は厚みが圧縮された平板形状を有することが好ましい。
ウエブ30は支持ロール(支持体)10及び押込みロール(押込み部材)20との噛合いによって凹凸形状が賦形させる際に、熱的融着、機械的交絡、化学的結合によって繊維が拘束されていない(不織布化されていない)ことが、繊維の自由度が高くなるため、繊維の延伸、穴あき、繊維の破断が起こりにくくなる点で好ましい。特に噛合い量Dが3.5mm以上10mm以下と高い場合に顕著である。
互いに噛合い可能な凹凸形状を有するロールの対(支持体及び押込み部材の対)が一対ではなく複数対ある場合、前記賦形工程としては複数回の凹凸賦形処理を行うこととなる。その形態としては、上記のウエブを首尾よく凹凸形状にし得る種々の形態をとり得る。ウエブを保持する側のロールが支持ロール(支持体)となり、ウエブを保持しないロールが押込みロール(押込み部材)となる。
例えば、噛合うロールが3つ(第1ロール、第2ロール及び第3ロール)ある場合、第1ロールと第2ロールが対をなし、第2ロールと第3ロールとが対をなしてそれぞれで噛み合う。このとき第2ロールは、第1ロールとの噛合い位置とは異なる周面位置で第3ロールと噛合いを行う。このようにしてリレー形式で噛合いを引き継ぎ、複数回の凹凸賦形処理を行う。第2ロールは第1ロールに対して支持ロールとなり、第3ロールに対しては押込みロールとなる。噛み合うロールが4つ以上ある場合、同様にリレー形式の噛合いをしてもよい。または、ロールを共有することなく、2つ1組のロールを複数配置して、それぞれの組で独立の噛合いを行うようにしてもよい。さらに、第1ロールを主ロール(支持ロール)として、第1ロールの周面上に複数のロール(第2ロール、第3ロールなどの押込みロール)を配置し、複数ロールが第1ロールとそれぞれ噛合い可能に配置することもできる。これにより、押し込まれた繊維が戻りにくくなり、ロールから、凹凸賦形された噛合い賦形ウエブが遠心力によって剥離されるのを防ぐことができる。
本発明の凹凸不織布の製造方法は下記にあげる製造方法、及び製造装置に用いた場合、より顕著な効果を示す。
複数の凸部及び該凸部間に位置する凹部を有する吸収性物品用不織布の製造方法であって、複数の突起及び窪みを有し、互いに噛合い可能な凹凸形状を有する一対以上の支持体及び押込み部材を用いて、繊維を用いたウエブ、好ましくは熱融着性ウエブに凹凸賦形加工を施して噛合い賦形ウエブを形成する賦形工程と、
前記賦形工程と同時又は好ましくは該賦形工程後に、複数の前記突起の一部若しくは全部又は複数の前記窪みの一部若しくは全部の位置において、前記噛合い賦形ウエブの凹部の底部の繊維の一部又は全てを接合させるエンボス熱融着工程又は好ましくはエンボス圧着工程と、
前記エンボス熱融着工程又は前記エンボス圧着工程によってエンボスされたウエブに、加熱流体、好ましくは熱風により、繊維交点における融着部を形成する熱融着工程と、
を含む不織布の製造方法があげられる。
また、不織布の原料となる繊維を用いた熱融着性ウエブを供給するウエブ供給部と、該ウエブ供給部から供給された前記熱融着性ウエブを搬送するコンベアベルトとを備え、
前記コンベアベルトの下流に、前記熱融着性ウエブに対して賦形加工を施して噛合い賦形ウエブを形成する押込み部材及び支持体と、前記支持体により牽引される前記噛合い賦形ウエブの凹部の底部の繊維の一部又は全てを融着または好ましくは圧着させるポイント接合手段と、前記融着で形成されるエンボス部を備えたエンボスウエブを冷却させるクーリングロールとを備え、前記クーリングロールの下流に、第2ベルトコンベアと、前記エンボスウエブに対し加熱流体を吹き付けて繊維交点を融着する熱流部を有する、不織布の製造装置があげられる。
さらに、複数の凸部、複数の該凸部の間に配された凹部、及び、該凹部の底部に配された開孔を有し、前記凹部が第一方向に延在し、複数の前記凸部が前記第一方向と交差する第二方向に離間して配された支持体上に、熱融着性繊維ウエブを載置し、前記第一方向に延在する前記凹部に沿って、前記熱融着性繊維ウエブを、押込み部材の押し込み部によって押し込む、押し込み工程と、次いで支持体上において加熱流体、好ましくは熱風を吹き付けて前記熱融着性繊維ウエブ中の繊維交点における融着部を形成する熱融着工程とを有する不織布の製造方法があげられる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。下記表1中における、「-」は、項目に該当する値を有さないこと等を意味する。
(実施例1)
下記に示すように、上層及び下層となる熱融着性ウエブをそれぞれ用意し、本発明に係る凹凸不織布の製造方法を実施した。上層となる熱融着性ウエブは上層A及び上層Bの2層を有するものとした。
上層Aには繊度1.1dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性の同芯タイプの複合短繊維を用いた。上層Bには繊度3.3dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性の同芯タイプの複合短繊維を用いた。下層には繊度2.3dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性の同芯タイプの複合短繊維を用いた。どちらも親水性油剤が塗布されたものを用いた。
カード機により上層A(目付15g/m)と上層B(目付15g/m)の熱融着性ウエブを形成し、上層Aのウエブと上層Bのウエブを積層させ(上層の熱融着性ウエブを形成し)た。図11に示す押込み部材としての押込みロール20と支持体としての支持ロール10により上層A側を支持ロール10と接するようにして凹凸形状を賦形した。支持ロール10には図7及び図8に示したものを用いた。また押込みロール20には、円盤状のリングをCD方向に複数集めてロール軸に通して束ねたリングロールを用いた。各条件は表1及び2に示す通りとした。押込みロール20と支持ロール10の表面温度はそれぞれ50℃、110℃で行った。前記賦形における噛合い量(噛合い深さ)Dを6mmとした。
次いで、カード機により下層(目付10g/m)の熱融着性ウエブを形成した。その後、賦形を行った上層の熱融着性ウエブと賦形をしていない下層の熱融着性ウエブとを上層Bと下層の熱融着性ウエブとが接するようにして積層しながら、支持ロール10上で金属フラットロールとの間でエンボス圧着させた。これにより、ウエブの縦横の畝を格子状に配した畝溝構造における畝に囲まれた溝部にエンボス部を形成した。支持ロール10でのウエブ吸引は行なわずに前記噛合い賦形とエンボス圧着を行った。金属フラットロ-ルの表面温度は100℃で行った。金属フラットロールと接触する面を裏面(下層)側とした。各ロールから剥離後、コンベアネット上で表面(上層)凸部11側から熱風温度136℃、風速1.5m/s、吹き付け時間6sにて熱風処理を行い繊維交点融着部を形成した。これにより、実施例1の不織布試料を作製した。
上記の繊維交点融着部は、日本電子株式会社製「JCM-600」(商品名)を用いて前述の方法により確認した。また、支持ロール(支持体)10及び押込みロール(押込み部材)20の表面粗さRzは、株式会社ミツトヨ製のSJ210(商品名)を用いて前述の方法により測定した。
各剥離抵抗力の測定には上層の熱融着性ウエブを用い、表に示す各支持体および押込み部材を用いて測定した。ウエブ強度の測定には上記のエンボス圧着後のサンプルを用いた。
(実施例2~4)
各条件を表1及び2に示す通りとした以外は実施例1と同様にして、実施例2~4の凹凸不織布の製造方法を実施し、実施例2~4の凹凸不織布試料を作製した。実施例2~4においては、支持体の深さ方向の表面粗さRzを実施例1と異ならせた。
(比較例1~3)
各条件を表1及び2に示す通りとした以外は実施例1と同様にして、比較例1~3の凹凸不織布の製造方法を実施し、比較例1~3の凹凸不織布試料を作製した。比較例1~3においては、支持体の深さ方向の表面粗さRzを実施例1~4と大きく異ならせた。比較例3においては支持体の剥離抵抗力よりも押込み部材の剥離抵抗力の方が高かったため、噛合い後押込み部材側にウエブが保持された。
(実施例5)
下記に示すように、上層及び下層となる熱融着性ウエブをそれぞれ用意し、本発明に係る凹凸不織布の製造方法を実施した。上層となる熱融着性ウエブは上層A及び上層Bの2層を有するものとし、下層となる熱融着性ウエブは下層A及び下層Bの2層を有するものとした。
上層Aに繊度1.8dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性の同芯タイプの複合短繊維を用いた。上層Bには繊度2.3dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性の同芯タイプの複合短繊維を用いた。下層Aと下層Bには繊度2.3dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性の同芯タイプの複合短繊維を用いた。どちらも親水性油剤が塗布されたものを用いた。
カード機により上層A(目付8g/m)と上層B(目付8g/m)の熱融着性ウエブを形成した。これらを積層後、コンベアネット上で表面(上層B)側から熱風温度136℃、風速1.5m/s、吹き付け時間6sにて熱風処理を行い、繊維交点融着部を形成し、フラット形状をした上層の熱風処理不織布を得た。
次にカード機により下層用の繊維を用いて下層A(目付8g/m)と下層B(目付8g/m)の熱融着性ウエブを形成した。これらを積層後、コンベアネット上で表面(下層B)側から熱風温度136℃、風速1.5m/s、吹き付け時間6sにて熱風処理を行い、繊維交点融着部を形成しフラット形状をした下層の熱風処理不織布401を得た。
上層の熱風処理不織布を用い、図11に示す押込み部材である押込みロール20と支持体である支持ロール10により賦形し上層A側が支持ロール10と接するようにして凹凸形状を賦形した。支持ロール10及び押込みロール20は、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。押込みロール20と支持ロール10の表面温度はそれぞれ60℃、130℃で行った。前記賦形における噛合い量(押込み深さ)Dを3mmとした。
その後、賦形を行った上層の熱風処理不織布と賦形をしていない下層の熱風処理不織布とを、上層Bと下層Aとが接するように積層させ、支持ロール10上で金属フラットロールとの間でエンボス融着させてエンボス部3を有するエンボス不織布を得た。支持ロール10でのウエブ吸引は行なわずに前記噛合い賦形とエンボス融着を行った。フラットロ-ルの表面温度は125℃で行った。上記以外は、実施例1と同様とした。このようにして、実施例5の不織布試料を作製した。
各剥離抵抗力の測定には上記熱風処理不織布401を用い、表に示す各支持体および押込み部材を用いて測定した。ウエブ強度の測定にはエンボス融着後の不織布サンプルを用いた。
(実施例6~8)
各条件を表3及び4に示す通りとした以外は実施例5と同様にして、実施例6~8の凹凸不織布の製造方法を実施し、実施例6~8の凹凸不織布試料を作製した。実施例6~8においては、支持体の深さ方向の表面粗さRzを実施例5と異ならせた。
(比較例4及び5)
各条件を表3及び4に示す通りとした以外は実施例5と同様にして、比較例4及び5の凹凸不織布の製造方法を実施し、比較例4及び5の凹凸不織布試料を作製した。比較例4及び5においては、支持体の深さ方向の表面粗さRzを実施例6~8と大きく異ならせた。
各実施例及び各比較例の不織布試料に対して下記の試験を行った。下記(1)~(3)の各試験は前述の各測定方法に基づいて測定した。
(1)賦形したウエブの剥離抵抗力の測定
(2)平均摩擦係数(MIU)の測定
(3)賦形したウエブの剥離状態の評価
支持体からの賦形したウエブの剥離状態について評価した。評価は、賦形したウエブが支持体の凸部の壁面にひっかかるか否かで評価した。評価は、引っ掛からない場合を正常、引っ掛かった場合を異常とした。
上記各評価結果は下記表2、4に示す通りであった。
Figure 2022131947000002
Figure 2022131947000003
Figure 2022131947000004
Figure 2022131947000005
表2、4に示すように、各実施例においては賦形時に浮き上がりがなく、支持体や押込み体からの剥離を正常に行えた。
10 支持体
11 凸部
11B 凸部の底部
11T 凸部の頂部
11S 壁面
11E 角部
11P 頂部近辺
11M 投影部分(凸部に対して押し込み部をCD方向に投影して対抗する部分)
12 凹部
13 基材
20 押込み部材
21 押し込み部
22 空間部
23 基材
30 ウエブ
D 噛合い量(押込み深さ)
W 隙間距離
M 投影断面積

Claims (5)

  1. 凸部又は凹部を有する支持体と、該支持体に噛合い可能な押し込み部を有する押込み部材とを噛合い可能に合わせることにより、繊維を含む集合体からなるウエブを凹凸賦形するに当たり、賦形されたウエブを前記支持体から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力を300cN/m以上20000cN/m以下とする、凹凸不織布の製造方法。
  2. 前記賦形されたウエブを前記押込み部材から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力よりも、前記賦形されたウエブを前記支持体から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力を大きくする、請求項1記載の凹凸不織布の製造方法。
  3. 前記賦形されたウエブを前記押込み部材から剥離する際の単位面積当たりの剥離抵抗力を0cN/m以上1000cN/m以下とする、請求項1又は請求項2に記載の凹凸不織布の製造方法。
  4. 前記支持体の凸部は、底部よりも頂部において周方向の断面積を大きくする、請求項1~3のいずれか1項に記載の凹凸不織布の製造方法。
  5. 前記支持体の凸部の壁面の少なくとも一部の表面粗さRz(最大高さ)を1μm以上75μm以下とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の凹凸不織布の製造方法。
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