JP2022131411A - ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板、ホットスタンプ成形体およびそれらの製造方法 - Google Patents

ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板、ホットスタンプ成形体およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度であり、ホットスタンプ後のスケールの生成が抑制され、且つ優れた溶接性および化成処理性を有するホットスタンプ成形体、およびこれを製造することができるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板、並びに、それらの製造方法の提供。【解決手段】所定の化学組成を有する鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、任意で前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有するホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板、およびこれをホットスタンプすることで得られるホットスタンプ成形体、並びにこれらの製造方法を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板、ホットスタンプ成形体およびそれらの製造方法に関する。
近年、自動車の軽量化のため、鋼板の高強度化を図り、鋼板の厚みを減ずるための方法が検討されている。高強度鋼板等の難成形材料をプレス成形する技術として、成形に供される鋼板材料を予め加熱してから成形する、ホットスタンプ等の熱間成形方法が採用されている。
このような成形方法は、変形抵抗の小さい高温で成形し、成形と同時に焼入れも実施できることから、部材の高強度化と成形性とを両立できる優れた成形方法である。しかし、この成形方法を採用した場合には、成形前に鋼板材料を700℃以上の高温に加熱する必要があるため、ホットスタンプ前の加熱時に鋼板表面が酸化するという問題が生じる。この鋼板表面の酸化によって生じた鉄酸化物からなるスケールが、ホットスタンプ時に脱落して金型に付着することで生産性が低下したり、ホットスタンプ後の成形品の表面に残存して外観不良を引き起こしたりするという問題がある。しかも、このようなスケールが成形品の表面に残存すると、次工程で塗装する場合に、成形品と塗膜との密着性が劣り、耐食性の低下を引き起こす。そのため、ホットスタンプ後は、ショットブラスト等のスケール除去処理が必要となる。
このような問題を解決するため、熱間成形用の鋼板材料として、母材鋼板表面の酸化抑制および/またはプレス成形品の耐食性向上を目的として、亜鉛めっきまたはアルミニウムめっきで被覆しためっき鋼板を使用することが提案されている。熱間成形に亜鉛めっき鋼板を用いた例としては、例えば、特許文献1および特許文献2等に記載の技術が挙げられる。
特許文献3には、鋼中のC濃度、Si濃度、P濃度および/またはTi濃度を制御し、鋼板表面のZn付着量および皮膜中のAl濃度を制御することにより、熱間成形時に形成される酸化被膜の鋼板との密着性を向上させ、プレス成形品表面の酸化物の剥離処理工程を簡便化あるいは不要とした熱間成形用亜鉛鋼板が提案されている。
特開2003-73774号公報 特開2001-353548号公報 特開2005-48254号公報
特許文献1~3では、ホットスタンプ時に形成される亜鉛酸化物層が過度に生成した場合、ホットスタンプ後において溶接性が劣る場合がある。自動車の車体用部品は、各種形状にホットスタンプされた部品同士を抵抗溶接(特にスポット溶接)で接合することにより、組み立てられる。一般的に、めっき鋼板は冷延鋼板よりも溶接性が劣る。
また、自動車の車体用部品は、上記のスポット溶接後、化成処理と電着とからなる塗装処理を行うため、化成処理性に優れることが求められる。
現在の技術水準では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプして得られた成形体において、溶接性および化成処理性を向上させ、且つ液体金属脆性(LME Liquid Metal EmbrittlementまたはLMC Liquid Metal Cracking)を抑制するため、炉内での加熱時間(炉内時間)を約4分間以上とする必要がある。ホットスタンプは冷間プレスに比べてプレス生産性に劣るため、炉内時間を短縮することが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高強度であり、スケールの生成が抑制され、且つ優れた溶接性および化成処理性を有するホットスタンプ成形体、およびこのホットスタンプ成形体を製造することができるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる、ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記ホットスタンプ成形体を製造することができ、且つ炉内時間を短縮することができる、ホットスタンプ成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、を有し、
前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
C :0.02~0.58%、
Mn:0.10~3.00%、
sol.Al:0.001~1.000%、
Si:2.00%以下、
P :0.100%以下、
S :0.005%以下、
N :0.0100%以下、
Ti:0~0.200%、
Nb:0~0.200%、
V :0~1.00%、
W :0~1.00%
Cr:0~1.00%、
Mo:0~1.00%、
Cu:0~1.00%、
Ni:0~1.00%、
B :0~0.0100%、
Ca:0~0.05%、および
REM:0~0.05%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、
Fe濃度が8.0質量%超であり、
Zn量が15.0~40.0g/mであり、
Al量が150mg/m以上、400mg/m未満であり、
Ni量が0~2000mg/mであり、
残部が不純物からなる。
(2)本発明の別の態様に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有し、
前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
C :0.02~0.58%、
Mn:0.10~3.00%、
sol.Al:0.001~1.000%、
Si:2.00%以下、
P :0.100%以下、
S :0.005%以下、
N :0.0100%以下、
Ti:0~0.200%、
Nb:0~0.200%、
V :0~1.00%、
W :0~1.00%
Cr:0~1.00%、
Mo:0~1.00%、
Cu:0~1.00%、
Ni:0~1.00%、
B :0~0.0100%、
Ca:0~0.05%、および
REM:0~0.05%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、
Fe濃度が8.0質量%超であり、
Zn量が15.0~40.0g/mであり、
Al量が400~1000mg/mであり、
Ni量が0~2000mg/mであり、
前記酸化亜鉛含有皮膜は、
片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである。
(3)上記(1)または(2)に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前記鋼板の前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.005~0.200%、
Nb:0.005~0.200%、
V :0.10~1.00%、
W :0.10~1.00%、
Cr:0.05~1.00%、
Mo:0.05~1.00%、
Cu:0.05~1.00%、
Ni:0.05~1.00%、
B :0.0010~0.0100%、
Ca:0.0005~0.05%、および
REM:0.0005~0.05%
からなる群から選ばれる1種または2種を含有してもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜中の前記Ni量が50~2000mg/mであってもよい。
(5)本発明の別の態様に係るホットスタンプ成形体は、鋼板と、前記鋼板上に配されためっき皮膜と、前記めっき層上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有し、
前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
C :0.02~0.58%、
Mn:0.10~3.00%、
sol.Al:0.001~1.000%、
Si:2.00%以下、
P :0.100%以下、
S :0.005%以下、
N :0.0100%以下、
Ti:0~0.200%、
Nb:0~0.200%、
V :0~1.00%、
W :0~1.00%
Cr:0~1.00%、
Mo:0~1.00%、
Cu:0~1.00%、
Ni:0~1.00%、
B :0~0.0100%、
Ca:0~0.05%、および
REM:0~0.05%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
前記鋼板の金属組織が、80面積%以上のマルテンサイトを含み、
前記めっき皮膜は、Fe-Zn固溶相および酸化亜鉛のみからなり、
Zn量が15.0~40.0g/mであり、
Al量が400~1000mg/mであり、
Ni量が0~2000mg/mであり、
残部が不純物からなり、
前記酸化亜鉛含有皮膜は、
片面当たりの酸化亜鉛量が、金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである。
(6)上記(5)に記載のホットスタンプ成形体は、前記鋼板の前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.005~0.200%、
Nb:0.005~0.200%、
V :0.10~1.00%、
W :0.10~1.00%、
Cr:0.05~1.00%、
Mo:0.05~1.00%、
Cu:0.05~1.00%、
Ni:0.05~1.00%、
B :0.0010~0.0100%、
Ca:0.0005~0.05%、および
REM:0.0005~0.05%
からなる群から選ばれる1種または2種を含有してもよい。
(7)上記(5)または(6)に記載のホットスタンプ成形体は、前記酸化亜鉛含有皮膜上に、化成皮膜を有してもよい。
(8)本発明の別の態様に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、上記(1)に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
上記(1)に記載の化学組成を有するスラブに対して熱間圧延を施すことで、熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、
任意で、前記熱延鋼板に対して冷間圧延を施すことで冷延鋼板を得る冷間圧延工程と、
任意で、前記熱延鋼板または前記冷延鋼板に対してNiプレめっきを施すことでNiプレめっき鋼板を得るNiプレめっき工程と、
前記熱延鋼板、前記冷延鋼板または前記Niプレめっき鋼板に対して還元性雰囲気中で460~850℃の温度域で3秒以上保持することで焼鈍鋼板を得る焼鈍工程と、
Al濃度が0.155質量%以上、0.190質量%未満である溶融亜鉛浴に、前記焼鈍鋼板を1.0~15.0秒間浸漬することで溶融亜鉛めっき鋼板を得る亜鉛めっき工程と、
前記溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を行うことでホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得る合金化工程と、を備える。
(9)本発明の別の態様に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、上記(2)に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
上記(2)に記載の化学組成を有するスラブに対して熱間圧延を施すことで、熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、
任意で、前記熱延鋼板に対して冷間圧延を施すことで冷延鋼板を得る冷間圧延工程と、
任意で、前記熱延鋼板または前記冷延鋼板に対してNiプレめっきを施すことでNiプレめっき鋼板を得るNiプレめっき工程と、
前記熱延鋼板、前記冷延鋼板または前記Niプレめっき鋼板に対して還元性雰囲気中で460~850℃の温度域で3秒以上保持することで焼鈍鋼板を得る焼鈍工程と、
Al濃度が0.190~0.400質量%である溶融亜鉛浴に、前記焼鈍鋼板を1.0~15.0秒間浸漬することで溶融亜鉛めっき鋼板を得る亜鉛めっき工程と、
前記溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を行う合金化工程と、
片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである酸化亜鉛含有皮膜を形成する酸化亜鉛含有皮膜形成工程と、を備える。
(10)本発明の別の態様に係るホットスタンプ成形体の製造方法は、上記(5)に記載のホットスタンプ成形体の製造方法であって、
鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有し、
前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
C :0.02~0.58%、
Mn:0.10~3.00%、
sol.Al:0.001~1.000%、
Si:2.00%以下、
P :0.100%以下、
S :0.005%以下、
N :0.0100%以下、
Ti:0~0.200%、
Nb:0~0.200%、
V :0~1.00%、
W :0~1.00%
Cr:0~1.00%、
Mo:0~1.00%、
Cu:0~1.00%、
Ni:0~1.00%、
B :0~0.0100%、
Ca:0~0.05%、および
REM:0~0.05%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、
Fe濃度が8.0質量%超であり、
Zn量が15.0~40.0g/mであり、
Al量が400~1000mg/mであり、
Ni量が0~2000mg/mであり、
残部が不純物からなり、
前記酸化亜鉛含有皮膜は、
片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mであるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を加熱して、100℃以上の温度域での保持時間を150秒以下とし、850℃以上の温度域での保持時間を30秒以下とし、782℃以上の温度域でホットスタンプすることでホットスタンプ成形体を得る。
(11)上記(10)に記載のホットスタンプ成形体の製造方法は、前記鋼板の前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.005~0.200%、
Nb:0.005~0.200%、
V :0.10~1.00%、
W :0.10~1.00%、
Cr:0.05~1.00%、
Mo:0.05~1.00%、
Cu:0.05~1.00%、
Ni:0.05~1.00%、
B :0.0010~0.0100%、
Ca:0.0005~0.05%、および
REM:0.0005~0.05%
からなる群から選ばれる1種または2種を含有してもよい。
(12)上記(10)または(11)に記載のホットスタンプ成形体の製造方法は、前記ホットスタンプ成形体の表面に化成皮膜を形成してもよい。
本発明に係る上記態様によれば、高強度であり、ホットスタンプ後のスケールの生成が抑制され、且つ優れた溶接性および化成処理性を有するホットスタンプ成形体、およびこのホットスタンプ成形体を製造することができるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することができる。
また、本発明に係る上記別の態様によれば、上記ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる、ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
また、本発明に係る上記別の態様によれば、上記ホットスタンプ成形体を製造することができ、且つ炉内時間を短縮することができる、ホットスタンプ成形体の製造方法を提供することができる。
実施例における、ガス炉内での材温実績の一例を示す図である。 実施例における、LME割れの有無をSEMで観察した結果の一例を示す図である。 実施例における、化成処理性をSEMで評価した結果の一例を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下に「~」を挟んで記載する数値限定範囲には、下限値および上限値がその範囲に含まれる。「超」、「未満」と示す数値には、その値が数値範囲に含まれない。なお、化学組成についての「%」は全て「質量%」を示す。
まず、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板について説明する。第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、を有する。
以下に、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を構成する鋼板について説明する。なお、鋼板の化学組成はホットスタンプ前後で変化しないため、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を構成する鋼板の化学組成と、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプすることで得られるホットスタンプ成形体を構成する鋼板の化学組成とは同一である。
第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を構成する鋼板は、化学組成が、質量%で、C:0.02~0.58%、Mn:0.10~3.00%、sol.Al:0.001~1.000%、Si:2.00%以下、P:0.100%以下、S:0.005%以下、N:0.0100%以下、並びに、残部:Feおよび不純物を含む。以下、各元素について詳細に説明する。
C:0.02~0.58%
Cは、鋼板の焼入れ性を高め、焼入れ後(ホットスタンプ後)のホットスタンプ成形体の強度を得るために重要な元素である。また、Cは、Ac点を下げ、焼入れ処理温度を低温化させる元素である。C含有量が0.02%未満では、上記効果が十分に得られない。したがって、C含有量は0.02%以上とする。C含有量は、好ましくは、0.10%以上または0.20%以上である。
一方、C含有量が0.58%を超えると、溶接部や、ホットスタンプ後のホットスタンプ成形体の靭性が著しく劣化する。したがって、C含有量は0.58%以下とする。C含有量は、好ましくは0.55%以下または0.50%以下である。
Mn:0.10~3.00%
Mnは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ成形体の強度を安定して得るために重要な元素である。Mn含有量が0.10%未満では上記効果が十分に得られない。したがって、Mn含有量は0.10%以上とする。Mn含有量は、好ましくは0.20%以上、0.30%以上または0.40%以上である。
一方、Mn含有量が過剰であると、上記効果が飽和し合金コストが増加する。したがって、Mn含有量は3.00%以下とする。Mn含有量は、好ましくは2.80%以下、2.60%以下または2.40%以下である。
sol.Al:0.001~1.000%
Alは、鋼を脱酸して鋼材を健全化する(鋼材にブローホールなどの欠陥が生じることを抑制する)作用を有する。sol.Al含有量が0.001%未満では上記作用による効果を得ることができない。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。sol.Al含有量は、好ましくは0.010%以上、0.020%以上または0.030%以上である。
一方、sol.Al含有量が過剰であると、上記効果が飽和して合金コストが増加する。したがって。sol.Al含有量は1.000%以下とする。sol.Al含有量は、好ましくは0.800%以下、0.100%以下、0.075%以下または0.070%以下である。
なお、sol.Alとは、酸可溶性Alを意味し、固溶状態で鋼中に存在する固溶Alのことを示す。
Si:2.00%以下
Siは、過剰に含有させるとホットスタンプ加熱中のフェライトからオーステナイトへの変態を抑制し、ホットスタンプによる焼入硬化を阻害する。そのため、Si含有量は2.00%以下とする。Si含有量は、1.00%以下、0.70%以下または0.50%以下が好ましい。Si含有量は少ない方が好ましく、下限は特に限定しないが、Si含有量を過度に低減すると精錬コストの上昇を引き起こすため、Si含有量は0.01%以上としてもよい。
P:0.100%以下
Pは、不純物として鋼中に含有され、鋼を脆化させる作用を有するため、P含有量は低い方が好ましい。そのため、P含有量は0.100%以下とする。P含有量は、好ましくは、0.050%以下、0.020%以下または0.015%以下である。P含有量の下限は特に限定しないが、P含有量を過度に低減すると精錬コストの上昇を引き起こすため、P含有量は0.001%以上としてもよい。
S:0.005%以下
Sは、不純物として含有される元素であり、MnSを形成し、鋼を脆化させる作用を有するため、S含有量は少ない方が好ましい。そのため、S含有量は0.005%以下とする。好ましくは、0.004%以下、または0.003%以下である。S含有量の下限は特に限定しないが、S含有量を過度に低減すると精錬コストの上昇を引き起こすため、S含有量は0.0003%以上または0.001%以上としてもよい。
N:0.0100%以下
Nは、不純物として含有され、鋼中にて介在物を形成し、ホットスタンプ成形体の靱性を劣化させる元素であるため、N含有量は低い方が好ましい。そのため、N含有量は0.0100%以下とする。N含有量は、好ましくは、0.0080%以下、0.0070%以下、0.0050%以下または0.0045%以下である。N含有量の下限は特に限定しないが、N含有量を過度に低減すると精錬コストの上昇を引き起こすため、N含有量は0.0005%以上としてもよい。
第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を構成する鋼板の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。不純物としては、鋼原料もしくはスクラップから及び/又は製鋼過程で不可避的に混入したもの、あるいは第1の実施形態に係るホットスタンプ成形体の特性を阻害しない範囲で許容される元素が例示される。
第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を構成する鋼板は、残部のFeに代えて、以下の任意元素を含有しても良い。なお、以下に説明する任意元素は含有しなくても良く、含有しない場合の含有量は0%である。
Ti:0.005~0.200%
Nb:0.005~0.200%
V :0.10~1.00%
W :0.10~1.00%
Ti、Nb、VおよびWは、合金化溶融亜鉛めっき皮膜と鋼板とにおけるFeおよびZnの相互拡散を促進し、ホットスタンプ時に溶融亜鉛合金層を生じにくくさせる元素である。溶融亜鉛合金層が形成されると、ホットスタンプ時に割れが生じる場合があるため、好ましくない。したがって、Ti、Nb、VおよびWを鋼板に含有させてもよい。上記効果を確実に得るためには、Ti:0.005%以上、Nb:0.005%以上、V:0.10%以上、W:0.10%以上の1種以上を含有させることが好ましい。
しかし、Ti含有量またはNb含有量が0.200%を超えると、あるいは、V含有量またはW含有量が1.00%を超えると、上記効果は飽和し、合金コストが増加する。したがって、Ti含有量およびNb含有量はそれぞれ0.200%以下とし、V含有量およびW含有量はそれぞれ1.00%以下とする。好ましくは、Ti含有量およびNb含有量はそれぞれ0.150%以下であり、V含有量およびW含有量はそれぞれ0.50%以下である。
Cr:0.05~1.00%
Mo:0.05~1.00%
Cu:0.05~1.00%
Ni:0.05~1.00%
B :0.0010~0.0100%
Cr、Mo、Cu、NiおよびBは、鋼板の焼入れ性を高め、かつホットスタンプ成形体の強度を向上させる元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。上記効果を確実に得るためには、Cr:0.05%以上、Mo:0.05%以上、Cu:0.05%以上、Ni:0.05%以上およびB:0.0010%以上のいずれか1種以上を含有させることが好ましい。しかし、Cr含有量、Mo含有量、Cu含有量またはNi含有量が1.00%超であると、あるいはB含有量が0.0100%超であると、上記効果は飽和して、合金コストが増加する。したがって、Cr含有量、Mo含有量、Cu含有量およびNi含有量はそれぞれ1.00%以下とし、B含有量は0.0100%以下とする。B含有量は0.0080%以下とすることが好ましい。
Ca:0.0005~0.05%
REM:0.0005~0.05%
CaおよびREMは、鋼中の介在物を微細化し、介在物によるホットスタンプ時の割れの発生を防止する効果を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。上記効果を確実に得るためには、Ca:0.0005%以上およびREM:0.0005%以上の1種以上を含有させることが好ましい。しかし、Ca含有量またはREM含有量が0.05%を超えると、鋼中の介在物を微細化する効果は飽和し、合金コストが増加する。したがって、Ca含有量およびREM含有量はそれぞれ0.05%以下とする。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドからなる合計17元素を指し、REMの含有量は、これらの元素の合計の含有量を指す。REMは、ミッシュメタルにより含有させる場合が多いが、LaおよびCeの他にランタノイド系列の元素を複合的に含有させる場合がある。LaおよびCeの他にランタノイド系列の元素を複合的に含有させる場合であっても、第1の実施形態に係るホットスタンプ成形体は、その効果を発揮することができる。また、金属LaやCeなどの金属REMを含有させても、第1の実施形態に係るホットスタンプ成形体は、その効果を発揮することができる。
上述した鋼板の化学組成は、一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、sol.Alは、試料を酸で加熱分解した後の濾液を用いてICP-AESによって測定すればよい。CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用いて測定すればよい。鋼板が表面に合金化溶融亜鉛めっき皮膜、めっき皮膜、酸化亜鉛含有皮膜、または化成皮膜を有する場合は、これらを機械研削により除去してから、化学組成の分析を行えばよい。
第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板上に合金化溶融亜鉛めっき皮膜を有する。この合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、Fe濃度が8.0質量%超であり、Zn量が15.0~40.0g/mであり、Al量が150mg/m以上、400mg/m未満であり、Ni量が0~2000mg/mであり、残部が不純物からなる。
以下、合金化溶融亜鉛めっき皮膜の詳細について説明する。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度:8.0質量%超
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度が8.0質量%以下であると、合金化溶融亜鉛めっき皮膜の表面にηZn相が残り、反射率が高くなる。その結果、ホットスタンプ前の加熱炉での昇温速度が小さくなり、炉内時間が長くなる。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度は8.0質量%超とする。好ましくは8.5質量%以上、または9.0質量%以上である。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度の上限は特に限定しない。短い炉内時間でFe-Zn固溶相化するためには、Fe濃度は高いほど好ましいが、通常の合金化のための設備能力や加熱時間では18.0質量%が実質的な上限である。
通常の合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、冷間プレスのパウダリング発生を抑制するために、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度が過大にならないよう制御する必要がある。しかし、本実施形態では冷間プレスを行わずにホットスタンプを行うため、Fe濃度の上限を制御する必要はない。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のZn量:15.0~40.0g/m
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のZn量が15.0g/m未満であると、不可避的なめっき付着量のばらつきにより、めっきの少ない箇所で酸化鉄スケールが発生する場合がある。また、Zn量を過度に小さくすると、ワイピング装置の能力にもよるが、ワイピングノズルを鋼板に近づける必要があり、接触リスクが大きくなる。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のZn量は15.0g/m以上とする。好ましくは20.0g/m以上である。
一方、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のZn量が40.0g/m超であると、Fe-Zn固溶相化に時間がかかり、炉内時間が長くなる。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のZn量は40.0g/m以下とする。好ましくは35.0g/m以下である。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量:150mg/m以上、400mg/m未満
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が150mg/m未満であると、ホットスタンプ前の加熱時に合金化溶融亜鉛めっき皮膜の表層に生成するAl酸化物が少なくなる。その結果、Znの酸化が抑制されず、Zn系酸化物が過度に生成して、スポット溶接時にスパークおよび/または溶着が発生してしまい、溶接性が劣化する。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量を150mg/m以上とする。好ましくは、200mg/m以上である。
一方、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が400mg/m以上であると、ホットスタンプ成形体において化成処理性が低下する。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量は400mg/m未満とする。
ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量は、焼鈍前加熱時の雰囲気、浴温、溶融亜鉛浴へ侵入する時の鋼板温度、浸漬時間、めっき付着量、浴中Al濃度等に影響される。そのため、これらの製造条件と合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量との関係を経験的に求め、制御することにより、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量を上述の範囲に制御することができる。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のNi量:0~2000mg/m
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のNi量が2000mg/m超であると、Niめっきの原料および電力コストが過剰に増加する。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のNi量は2000mg/m以下とする。好ましくは1500mg/m以下、1000mg/m以下または800mg/m以下である。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のNi量は0mg/mであってもよい。合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のNi量を50mg/m以上とすることで、浴中Al濃度が比較的高くても合金化に必要な温度および時間を下げることができ、生産効率を上げることができる。また、焼鈍温度を下げることができるため平坦度が向上し、ワイピングノズルと鋼板との接触リスクを低減することができる。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のNi量は50mg/m以上であることが好ましい。より好ましくは、80mg/m以上、100mg/m以上または150mg/m以上である。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中の残部
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中の残部は不純物からなる。不純物は0.1質量%以下であることが好ましい。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度、Zn量、Al量およびNi量は以下の方法により測定する。
インヒビターを添加した5体積%HCl水溶液を用いてホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の合金化溶融亜鉛めっき皮膜のみを溶解除去する。ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて、得られた溶解液中のFe濃度、Zn量、Al量およびNi量をICP分析することで、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度、Zn量、Al量およびNi量を得る。
ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板が酸化亜鉛含有皮膜を有する場合は、ショットブラストまたは機械研削により酸化亜鉛含有皮膜を除去してから、上述の測定を行う。
次に、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板について説明する。第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有する。以下、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板について説明する。
なお、上述した第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板と異なる点についてのみ説明し、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板と重複する点については説明を省略する。
第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が400~1000mg/mである。第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は後述する酸化亜鉛含有皮膜を有するため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が高くても、ホットスタンプ成形体において優れた化成処理性を得ることができる。
通常の製造条件で合金化溶融亜鉛めっき皮膜のAl量が1000mg/mを超えることは考えにくい。そのため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜のAl量は1000mg/m以下とする。
上述したように、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に酸化亜鉛含有皮膜を有する。以下、酸化亜鉛含有皮膜について詳細に説明する。
酸化亜鉛含有皮膜は、片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で、0.3~1.5g/mである。片面当たりの酸化亜鉛量を金属亜鉛換算で0.3g/m以上とすることで、熱間潤滑性、塗装後耐食性および化成処理性をより向上することができる。
また、片面当たりの酸化亜鉛量を金属亜鉛換算で1.5g/m以下とすることで、酸化亜鉛含有皮膜の厚みを薄くすることができ、ホットスタンプ成形体の溶接性をより高めることができる。そのため、片面当たりの酸化亜鉛量を金属亜鉛換算で1.5g/m以下とする。
酸化亜鉛含有皮膜は、酸化亜鉛以外には、例えば、亜鉛化合物として、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛等の亜鉛化合物を含んでもよい。これらの亜鉛化合物は、酸化亜鉛に加えて1種のみを酸化亜鉛含有皮膜に含有させてもよく、酸化亜鉛に加えて複数の亜鉛化合物を混合して含有させてもよい。
酸化亜鉛含有皮膜中の酸化亜鉛の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、粒径が50~300nmであることが好ましい。酸化亜鉛の粒径として、粉末自体の粒径と、粉末をゾルにした時のゾル中の粒径の2種類があるが、本実施形態では、ゾル中の粒径が50~300nmであることが好ましい。一般的に、ゾル中では微細粉末の二次凝集が起こるため、ゾル中の粒径は粉末自体の粒径よりも大きくなる。粉末自体の粒径が50nm未満である場合には、混練しにくいだけでなく、二次凝集し易くなるため、結果的に粗大化する。そのため、ゾル中の酸化亜鉛の粒径を50nm未満とすることは困難である場合がある。また、ゾル中の酸化亜鉛の粒径が300nm超である場合には、粒子が沈殿し易くなるため、ムラが発生する場合がある。
酸化亜鉛の粒径は、動的光散乱法、誘導回折格子法、レーザー回折・散乱法等の公知の方法により測定することができる。
酸化亜鉛含有皮膜中の酸化亜鉛の付着量は、例えば重クロム酸アンモニウム水溶液など、金属亜鉛は溶解しないが酸化亜鉛は溶解する水溶液に浸漬し、その亜鉛含有量を測定し、面積当たりの酸化亜鉛の金属亜鉛換算量を算出することで得る。
次に、本実施形態に係るホットスタンプ成形体について説明する。本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、上述した第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプすることで得ることができる。以下、本実施形態に係るホットスタンプ成形体について説明する。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、上述した化学組成を有する鋼板と、前記鋼板上に配されためっき皮膜と、前記めっき層上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有する。なお、本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、前記酸化亜鉛含有皮膜上に化成皮膜を有してもよい。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、前記鋼板の金属組織が、80面積%以上のマルテンサイトを含み、前記めっき皮膜は、Fe-Zn固溶相および酸化亜鉛のみからなり、Zn量が15.0~40.0g/mであり、Al量が400~1000mg/mであり、Ni量が0~2000mg/mであり、残部が不純物からなり、前記酸化亜鉛含有皮膜は、片面当たりの酸化亜鉛量が、金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである。
鋼板
ホットスタンプ成形体を構成する鋼板の化学組成は、上述したホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の化学組成と同一であるため、説明を省略する。
金属組織:マルテンサイトの面積率が80%以上
マルテンサイトの面積率が80%未満であると、所望の強度を得ることができない。そのため、マルテンサイトの面積率は80%以上とする。好ましくは85%以上である。マルテンサイトの面積率の上限は特に規定しないが、100%以下、または95%以下としてもよい。
マルテンサイト以外の残部組織としては、フェライト、パーライト、残留オーステナイトおよびベイナイトが挙げられる。マルテンサイトの面積率との関係から、これら残部組織の面積率は20%以下とすることが好ましい。
マルテンサイトの面積率は以下の方法により得る。
ホットスタンプ成形体のエッジから50mm以上離れた任意の位置(この位置から採取できない場合はエッジを避けた位置)から表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるように試料を切り出す。なお、ホットスタンプ成形体が溶接部を含む場合には、溶接部および溶接部近傍を避けた位置からサンプルを採取する。
上記試料の断面をレペラー試薬にてエッチングする。レペラー試薬にてエッチングした断面のt/4(tは板厚)の位置を500倍の倍率にて10視野観察し、得られた光学顕微鏡写真について、Adobe社製「Photoshop CS5」の画像解析ソフトを用いて画像解析を行い、マルテンサイトの面積率を求める。画像解析手法として、画像の最大明度値Lmaxと最小明度値Lminとを画像から取得し、明度がLmax-0.3(Lmax-Lmin)からLmaxまでの画素を持つ部分を白色領域、LminからLmin+0.3(Lmax-Lmin)の画素を持つ部分を黒色領域、それ以外の部分を灰色領域と定義して、白色領域であるマルテンサイトの面積率を算出する。合計10箇所の観察視野について、上記と同様に画像解析を行ってマルテンサイトの面積率を測定し、これらの面積率の平均値を算出する。得られた平均値を、マルテンサイトの面積率とみなす。これにより、マルテンサイトの面積率を得る。
また、100%からマルテンサイトの面積率を引くことで、残部組織の面積率を得る。
めっき皮膜
Fe-Zn固溶相および酸化亜鉛のみからなる
本実施形態に係るめっき皮膜は、Fe-Zn固溶相および酸化亜鉛のみからなる。Fe-Zn固溶相および酸化亜鉛のみからなるめっき皮膜とすることで、ホットスタンプ成形体の溶融金属脆性(LME Liquid Metal EmbrittlementまたはLMC Liquid Metal Cracking)を抑制することができる。Fe-Zn固溶相は、溶融亜鉛浴中の亜鉛と、鋼板中のFeとが合金化して生成する相であり、比較的Fe濃度が高い相である。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体では、Cu管球を用いて行うX線回折測定により検出されるピークが、Fe-Zn固溶相および酸化亜鉛のピークのみである。酸化亜鉛のピーク位置はJCPDSカード00-036-1451 ZnO-Zinciteを参照し、記載された角度にX線回折強度ピークが出現していれば酸化亜鉛が存在すると判断する。Fe-Zn固溶相は、本来のピーク位置はJCPDSカード 00-006-0696 Ironに記載されているが、Fe中にZnを約30%固溶するため結晶格子が拡大し、実際にX線回折強度ピークが出現する角度はそれより1~3%小さくなる。そのため、本実施形態では、上記JCPDSカードに記載の角度から1~3%小さい角度にX線回折強度ピークが出現していれば、Fe-Zn固溶相が存在すると判断する。
なお、本実施形態に係るめっき皮膜には、Γ相(FeZn,FeZn10)、Γ1相(Fe11Zn40)、δ相(FeZn,Fe13Zn126)、およびζ相(FeZn13)は含まれない。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜の合金化が進まず、炉加熱中のめっき皮膜中に液相が含まれると、ホットスタンプ加工中に液相が鋼板結晶粒界に侵入してLMEが起き、液相はΓ相やδ相として凝固する。
めっき皮膜中のZn量:15.0~40.0g/m
めっき皮膜中のZn量が15.0g/m未満であると、炉加熱中に酸化鉄スケールが生成する場合がある。そのため、めっき皮膜中のZn量は15.0g/m以上とする。好ましくは20.0g/m以上である。
一方、めっき皮膜中のZn量が40.0g/m超であると、炉加熱中に固溶相化が進まず液相が残り、LMEが発生する場合、および炉内時間を長くする必要が生じ、生産効率能率が低下する場合がある。そのため、めっき皮膜中のZn量は40.0g/m以下とする。好ましくは35.0g/m以下である。
めっき皮膜中のAl量:400~1000mg/m
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は酸化亜鉛含有皮膜を有するため、めっき皮膜中のAl量が高くても、ホットスタンプ成形体において優れた化成処理性を得ることができる。
通常の製造条件でめっき皮膜のAl量が1000mg/mを超えることは考えにくい。そのため、めっき皮膜のAl量は1000mg/m以下とする。
めっき皮膜中のNi量:0~2000mg/m
めっき皮膜中のNi量は0mg/mであってもよい。めっき皮膜中のNi量を50mg/m以上とすることで、浴中Al濃度が比較的高くても合金化に必要な温度および時間を下げることができ、生産効率を上げることができる。また、焼鈍温度を下げることができるため平坦度が向上し、ワイピングノズルと鋼板との接触リスクを低減することができる。そのため、めっき皮膜中のNi量を50mg/m以上とすることが好ましい。より好ましくは、80mg/m以上、100mg/m以上または150mg/m以上である。
めっき皮膜中のNi量が2000mg/m超であると、Niめっきの原料および電力コストが過剰に増加する。そのため、めっき皮膜中のNi量は2000mg/m以下とする。好ましくは1500mg/m以下、1000mg/m以下または800mg/m以下である。
めっき皮膜中の残部
めっき皮膜中の残部は不純物からなる。不純物は0.1質量%以下であることが好ましい。
めっき皮膜中のFe濃度、Zn量、Al量およびNi量は以下の方法により測定する。
インヒビターを添加した5体積%HCl水溶液を用いてホットスタンプ成形体のめっき皮膜のみを溶解除去する。ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて、得られた溶解液中のFe濃度、Zn量、Al量およびNi量を測定することで、めっき皮膜中のFe濃度、Zn量、Al量およびNi量を得る。
ホットスタンプ成形体が酸化亜鉛含有皮膜および/または化成皮膜を有する場合は、ショットブラストまたは機械研削によりこれらの皮膜を除去してから、上述の測定を行う。
酸化亜鉛含有皮膜
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、めっき皮膜上に酸化亜鉛含有皮膜を有する。
酸化亜鉛含有皮膜については、上述した第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板のものと同一のため、説明は省略する。
化成皮膜
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、酸化亜鉛含有皮膜上に化成皮膜を有してもよい。化成皮膜を有することで、塗膜との密着性および塗装後耐食性を向上することができる。
化成皮膜の付着量は、酸化亜鉛含有皮膜中のZn、およびめっき皮膜中のZnの熱処理中の酸化に由来する酸化亜鉛量に支配される。また、化成処理の前処理条件、化成処理薬剤の種類、濃度、温度、処理時間にも影響される。一般的な自動車用鋼材では、所定条件で化成処理して化成結晶が2.0~3.0g/m、条件によっては2.0~2.5g/m形成されるものが適正とみなされている。
化成皮膜の付着量は、蛍光X線分析等の公知の分析方法により測定することができる。例えば、リンの付着量が化学分析により測定済みである試料を用いて、蛍光X線強度と付着量との関係を示す検量線を予め作成しておき、この検量線を用いて、蛍光X線強度の測定結果から化成皮膜の付着量を決定すればよい。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、引張強さが1000MPa以上であることが好ましい。引張強さを1000MPa以上とすることで、自動車部品に好適に適用することができる。引張強さは、好ましくは1400MPa以上、1500MPa以上、1800MPa以上である。引張強さの上限は特に限定しないが、2500MPa以下としてもよい。
ホットスタンプ成形体の引張強さは、ホットスタンプ成形体のエッジから10mm以内の領域を除く位置からJIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241:2011に準拠して引張試験を行うことで得る。
以上、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプして得られるホットスタンプ成形体について説明したが、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプすることでホットスタンプ成形体を得てもよい。このホットスタンプ成形体は、上述した化学組成を有する鋼板と、前記鋼板上に配されためっき皮膜と、を有し、前記めっき皮膜は、Al量が150mg/m以上、400mg/m未満である。ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板における合金化溶融亜鉛めっき皮膜に含まれる有機酸亜鉛は、ホットスタンプ時の熱処理により、有機物成分が燃焼して酸化亜鉛に変化する場合がある。そのため、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板のホットスタンプ後には、めっき皮膜上に酸化亜鉛含有皮膜が形成される。この酸化亜鉛含有皮膜は、片面当たりの酸化亜鉛量が、金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mであり、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプして得られるホットスタンプ成形体のものと同様の特徴を有する。
その他の点は第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプすることで得られるホットスタンプ成形体と同様である。
なお、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が多いため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜および酸化亜鉛含有皮膜に含まれる有機酸亜鉛は酸化亜鉛に変化しにくい。そのため、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、ホットスタンプ前後において、酸化亜鉛含有皮膜中の酸化亜鉛量は大きく変化しない。
次に、本実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。まず、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、上述の化学組成を有するスラブに対して熱間圧延を施すことで、熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、任意で、前記熱延鋼板に対して冷間圧延を施すことで冷延鋼板を得る冷間圧延工程と、任意で、前記熱延鋼板または前記冷延鋼板に対してNiプレめっきを施すことでNiプレめっき鋼板を得るNiプレめっき工程と、前記熱延鋼板、前記冷延鋼板または前記Niプレめっき鋼板に対して還元性雰囲気中で460~850℃の温度域で3秒以上保持することで焼鈍鋼板を得る焼鈍工程と、Al濃度が0.155質量%以上、0.190質量%未満である溶融亜鉛浴に、前記焼鈍鋼板を1.0~15.0秒間浸漬することで溶融亜鉛めっき鋼板を得る亜鉛めっき工程と、前記溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を行うことでホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得る合金化工程と、を備える。
以下、各工程について詳細に説明する。
熱間圧延工程
上述した化学組成を有するスラブに対して熱間圧延を施すことで、熱延鋼板を得る。スラブの加熱温度は1200℃以上とし、1200℃以上での保持時間5分以上とすることが好ましい。熱間圧延後は、スケール除去のため酸洗を行ってもよい。
冷間圧延工程
熱延鋼板に対して冷間圧延を施すことで、冷延鋼板を得る。なお、冷間圧延は行っても、行わなくてもよい。冷間圧延を行う場合、冷間圧延における累積圧下率は30~80%とすることが好ましい。
なお、累積圧下率は、冷間圧延前の熱延鋼板の板厚をtとし、冷間圧延後の冷延鋼板の板厚をtとしたとき、{(t-t)/t}×100(%)で表すことができる。
Niプレめっき工程
前記熱延鋼板または前記冷延鋼板に対してNiプレめっきを施すことで、Niプレめっき鋼板を得る。なお、Niプレめっきは行っても、行わなくてもよい。Niプレめっきを行うことで、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中にNiを含ませることができる。合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のNi量を好ましく制御すれば、後述の合金化処理において温度および時間を低減することができる。また、焼鈍工程における温度低減することができ、平坦度を向上させ、めっき付着量をワイピング制御する際にワイピングノズルと鋼板が接触するリスクを低減することができる。
Niプレめっきは、合金化工程後の片面当たりの付着量が0.05~2000mg/mとなるように行うことが好ましい。また、Niプレめっき工程後の片面当たりの付着量は0.3~2.0mg/mとなるように行うことが好ましい。Niプレめっき量のうち約半分以上は溶融亜鉛めっき中に溶出する。
Niプレめっきの方法は特に限定されず、電気めっき、無電解めっきまたは蒸着等が挙げられる。電気めっきでは、例えば、熱延鋼板または冷延鋼板を電解脱脂して、10%塩酸に10秒浸漬して酸洗活性化した後、一般的なNi電気めっき浴(ワット浴やウッド浴)中で通電する方法が考えられる。
焼鈍工程
前記熱延鋼板、前記冷延鋼板または前記Niプレめっき鋼板に対して、還元性雰囲気中で460~850℃の温度域で3秒間以上保持することで焼鈍鋼板を得る。還元性雰囲気とは、窒素およびアルゴンのような不活性ガスと水素とで構成される還元性ガスが主体であり、酸素のような酸化性ガスの濃度は不可避的不純物程度の混合ガスのことをいう。露点は-50~-10℃とすればよい。
通常の焼鈍条件では、水素:10体積%以下、酸素:100体積ppm以下、残部:窒素である。通常のめっき鋼板では、鋼板中で再結晶させ、所望の機械特性を得る目的、および表面の酸化鉄を還元して、亜鉛めっきとの反応性を確保する目的で還元性雰囲気での焼鈍を行う。本実施形態では、鋼中で再結晶させ、所望の機械特性を得る必要がない。そのため、表面の酸化鉄を還元して、亜鉛めっきとの反応性を確保する目的で、焼鈍を行う。
焼鈍工程における保持温度が460℃未満であると、溶融亜鉛浴侵入時の鋼板温度が不可避的に460℃未満となり、通板とともに溶融亜鉛浴から熱が奪われ、浴温を維持することが困難となる。そのため、保持温度は460℃以上とする。好ましくは500℃以上である。
一方、保持温度を850℃超としても、還元効果および機械特性改善効果が飽和し、炉体の損耗および燃料消費を促進する。そのため、保持温度は850℃以下とする。好ましくは800℃以下である。
なお、Niプレめっき鋼板に対して焼鈍を行う場合は、亜鉛めっきとの濡れ性は、Niプレめっき中のNiで確保されるため、表面の酸化鉄を還元する必要は無い。そのため、焼鈍工程における保持温度は、浴温維持ができる範囲でよい。
また、平坦度の観点から、平坦度悪化の原因は鋼板中の不均一な再結晶であるため、保持温度はAc点以下とすることが好ましい。すなわち、Niプレめっき鋼板に対して焼鈍を行う場合は、保持温度は460℃以上、Ac点以下とすることが好ましい。
また、Niプレめっきを行っていない場合、すなわち熱延鋼板または冷延鋼板に対して焼鈍を行う場合は、めっき性を確保するため、保持温度は、酸化鉄を還元できる温度域とすることが好ましい。通常の水素濃度および水蒸気濃度においては、保持温度はAc点以上とすることが好ましい。すなわち、熱延鋼板または冷延鋼板に対して焼鈍を行う場合は、保持温度はAc点以上とすることが好ましい。より正確には、水蒸気とFeOとの生成自由エネルギー式より、水素濃度と水蒸気濃度とに応じて、「17895-9.79×T+R×T×ln(PHO/PH)<0」となる温度を選択することが好ましい。なお、Tは絶対温度、Rは気体定数8.31J/mol・K、PHOは水蒸気分圧、PHは水素分圧である。
なお、Ac点は以下の式により表すことができる。
Ac(℃)=723-10.7×Mn+29.1×Si-16.9×Ni+16.9×Cr+6.38×W
ここで上記式中の元素記号は、当該元素の質量%での含有量を示す。当該元素を含有しない場合は0を代入する。
焼鈍工程における保持時間が3秒未満であると、板温が追随せず狙い温度に達しない場合がある。そのため、保持時間は3秒以上とする。保持時間の上限は特に限定しないが、100秒以下としてもよい。
なお、Niプレめっきを行っていない場合、すなわち熱延鋼板または冷延鋼板に対して焼鈍を行う場合は、酸化鉄の還元反応を進める時間を確保するため、保持時間は30秒以上とすることが好ましい。
亜鉛めっき工程
Al濃度が0.155質量%以上、0.190質量%未満である溶融亜鉛浴に、前記焼鈍鋼板を1.0~15.0秒間浸漬することで溶融亜鉛めっき鋼板を得る。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜のAl量は、溶融亜鉛浴の組成、浴温度および溶融亜鉛浴への浸漬時間を制御することにより調整することができる。
溶融亜鉛浴のAl濃度が0.155質量%未満であると、溶接性が劣化する。そのため、溶融亜鉛浴のAl濃度は0.155質量%以上とする。好ましくは0.160質量%以上である。
一方、溶融亜鉛浴のAl濃度が0.190質量%以上であると、炉加熱中の表面にAl酸化物が多量に発生し、ホットスタンプ成形体の化成処理性が劣化する。そのため、溶融亜鉛浴のAl濃度は0.190質量%未満とする。
合金化工程
前記溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を行うことで、ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得る。合金化処理では、500~600℃の温度域に5~30秒間保持することが好ましい。
以上説明した製造方法により、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
次に、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。以下では、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法と異なる点についてのみ説明し、重複する点については説明を省略する。
亜鉛めっき工程
第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛浴中のAl濃度を0.190~0.400質量%とする。第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に酸化亜鉛含有皮膜を形成するため、溶融亜鉛浴中のAl濃度を高くすることができる。ただし、溶融亜鉛浴中のAl濃度が0.400質量%超となると、Al量が過大になり、Niプレめっきを行った場合であっても、合金化に必要な温度および時間が増加し、加熱のための電力コストおよび燃料コストが増加することで、生産性が低下する。そのため、溶融亜鉛浴中のAl濃度は0.400質量%以下とする。好ましくは0.300質量%以下である。
溶融亜鉛浴中のAl濃度が高く、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl濃度が高いほど、合金化に必要な温度および時間が増化する。しかし、Niプレめっきには、合金化に必要な温度および時間を減じる効果があるため、生産性の観点から、溶融亜鉛浴中のAl濃度が高い場合には、Niプレめっきを施すことが好ましい。
酸化亜鉛含有皮膜形成工程
第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、合金化工程の後に、表面(合金化溶融亜鉛めっき皮膜の表面)に、片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである酸化亜鉛含有皮膜を形成する。
酸化亜鉛含有皮膜は、例えば、酸化亜鉛を含有する塗料を塗布し、その後焼付け・乾燥による硬化処理を行うことで形成することができる。酸化亜鉛を含有する塗料の塗布方法としては、例えば、酸化亜鉛を含有するゾルと有機性バインダーとを混合してホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に塗布する方法、および粉体塗装による塗布方法などが挙げられる。
有機性バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの有機性バインダーは、酸化亜鉛を含有するゾルと溶解できるように水溶性とすることが好ましい。
以上説明した製造方法により、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
ホットスタンプ成形体の製造方法
本実施形態に係るホットスタンプ成形体の製造方法は、上述した化学組成を有する鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有するホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を加熱して、100℃以上の温度域での保持時間を150秒以下とし、850℃以上の温度域での保持時間を30秒以下とし、782℃以上の温度域でホットスタンプするものである。
以下、ホットスタンプ成形体の製造方法について詳細に説明する。
ホットスタンプに供するホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上述した第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。そのため、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、Fe濃度が8.0質量%超であり、Zn量が15.0~40.0g/mであり、Al量が400~1000mg/mであり、Ni量が0~2000mg/mであり、前記酸化亜鉛含有皮膜は、片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体の製造方法では、従来技術よりも炉内時間を短縮することで、生産性を向上することができる。100℃以上の温度域での保持時間が150秒超であると、生産性が低下する。そのため、ホットスタンプ前の加熱において、100℃以上の温度域での保持時間は150秒以下とする。好ましくは130秒以下である。
100℃以上の温度域での保持時間の下限は特に限定しない。
850℃以上での温度域での保持時間が30秒超であると、生産性が低下する。そのため、ホットスタンプ前の加熱において、850℃以上の温度域での保持時間は30秒以下とする。好ましくは25秒以下、または20秒以下である。
850℃以上の温度域での保持時間の下限は特に限定しないが、3秒以上としてもよい。
ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を加熱する方法としては、電気炉やガス炉等による加熱、火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等が挙げられるが、特に限定されない。
次に、782℃以上の温度域でホットスタンプする。782℃は、溶融亜鉛浴中のめっき用融液がΓ相へ凝固する温度である。LMEを回避するためには、Zn-Fe固溶相化を進め液相が無い状態とするか、782℃以下の温度域で液相を凝固させる必要がある。後者により焼入硬化するためには、鋼中に合金元素を含有させることで、Ac点を782℃以下にする必要があり、合金コストが増化する。本実施形態では、Zn-Fe固溶相化を進め液相が無い状態とするため、782℃以上の温度域でホットスタンプする。これにより、合金コストを抑えて生産性を向上することができる。
ホットスタンプ後は、250℃以下の温度域まで20℃/s以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。250℃以下の温度域まで20℃/s以上の平均冷却速度で冷却することで、ホットスタンプ成形体において所望量のマルテンサイトを得ることができる。
ホットスタンプ後の冷却方法としては、例えば水冷管を通した金型を用いてホットスタンプを行い、その際に金型との接触により急冷する方法が挙げられる。
本実施形態では、上述の冷却後に、ホットスタンプ成形体の表面(酸化亜鉛含有皮膜の表面)に化成皮膜を形成してもよい。
化成皮膜は、ホットスタンプ成形体を、公知のリン酸塩を含む化成処理液に浸漬することで形成すればよい。化成処理液に浸漬することで、酸化亜鉛を含む酸化亜鉛含有皮膜中の亜鉛と、化成処理液に含まれるリン酸塩とが反応し、酸化亜鉛含有皮膜上に化成皮膜が形成される。
以上、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いたホットスタンプ成形体の製造方法について説明したが、第1の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いてホットスタンプしてもよい。このホットスタンプ成形体の製造方法は、鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、を有し、前記めっき皮膜は、Al量が150mg/m以上、400mg/m未満であるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプするものである。その他の点は、第2の実施形態に係るホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いたホットスタンプ成形体の製造方法と同様である。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学組成を有するスラブに対し、熱間圧延、酸洗および冷間圧延を施し、板厚1.6mmのフルハード板(冷延未焼鈍板、すなわち焼鈍を行っていない冷延鋼板)を製造した。熱間圧延において、スラブの加熱温度は1200℃以上とし、1200℃以上の温度域での保持時間を5分以上とした。冷間圧延では、累積圧下率を30~80%とした。
表2に記載の条件で、一部の例についてNiめっき工程を行い、全ての例について焼鈍工程および亜鉛めっき工程を行った。また、一部の例について、酸化亜鉛含有皮膜を形成した。表2において、Niプレめっき工程のNi量が0.0g/mの例は、Niプレめっき工程を行っていない例であり、金属亜鉛換算での酸化亜鉛量が0.0g/mの例は、酸化亜鉛含有皮膜を形成していない例である。
なお、Niプレめっきでは、冷延未焼鈍板を電解脱脂して、10体積%塩酸に10秒浸漬して酸洗活性化した。次に、ワット浴(硫酸Ni:240g/L、塩化Ni:45g/L、硼酸:35g/L、PH:調整なし、実測pH:4.0~4.3、浴温:50℃)内にて、電流密度4A/dmで3.2秒間通電することで、Niプレめっきを片面当たり0.3g/m付着させた。Niプレめっきを片面当たり1.0g/m付着させる際は量に比例して通電時間を長くした。
次に、焼鈍工程を行った。焼鈍工程では、N-10%Hで露点-40℃、酸素濃度100ppm以下の雰囲気中で、平均加熱速度10℃/sで表2に記載の保持温度まで加熱した。保持時間は、保持時間が800℃の例では30秒間、保持時間が500℃の例では3秒間とした。
次に、亜鉛めっき工程を行った。溶融亜鉛浴は、浴温460℃で一定とし、組成はZn-(0.130~0.205)質量%Alとし、Feを0.04質量%添加した。
その後、合金化工程を行った。合金化工程は、500~600℃の電気炉に入れ、500~600℃の温度域での保持時間を5~30秒間とした。
一部の例について、酸化亜鉛含有皮膜形成工程を行った。酸化亜鉛含有皮膜は、ZnO含有液と有機性バインダーとを含む塗料をバーコーターで塗布し、熱風炉で乾燥させることで形成した。
以上の方法により、ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
酸化亜鉛含有皮膜について、金属亜鉛換算での酸化亜鉛量は、あらかじめZnO含有液中のZnOと有機性バインダーの成分との比を測定しておき、ZnO含有液の塗布・乾燥前後の鋼板の重量差を測定し、塗膜組成は液の固形物成分に等しいと仮定して算出した。
また、重クロム酸アンモニウム水溶液に浸漬して酸化亜鉛だけを溶解させ、液中の亜鉛含有量をICPで測定することで、金属亜鉛換算での酸化亜鉛量を算出した。この酸化亜鉛量は、ZnO含有液の塗布・乾燥前後の鋼板の重量差から算出したものと一致した。
合金化溶融亜鉛めっき皮膜の組成は、所定サイズに切り出したホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、インヒビターを添加した5体積%塩酸に浸漬することで、合金化溶融亜鉛めっき皮膜のみを溶解除去し、その溶解液中のFe濃度、Zn量、Al量およびNi量をICP分析することで得た。
得られたホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板、並びに、後述するLME評価用の金型および平板金型を用いて、ホットスタンプを行った。まず、ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板から所定サイズの試験片を採取した。ホットスタンプでは、ガス炉を空燃比1.1で炉温を910℃に保持した。上記試験片に熱電対を溶接して、試験片を炉内へ入れ、試験片の温度が900℃に到達したらガス炉から取り出し、直ちに金型でホットスタンプを行った。ホットスタンプ後は、250℃以下の温度域まで20℃/s以上の平均冷却速度で冷却した。
なお、同じ製造No.において、LME評価用の金型および平板金型で行うホットスタンプの条件が同じになるように、ホットスタンプを行った。
以上の方法により、ホットスタンプ成形体を得た。
熱電対により得られた温度実績から、100℃以上の温度域での保持時間、850℃以上の温度域での保持時間、成形開始温度を読み取った。これらのホットスタンプ条件を表3Aおよび表3Bに示す。
LME評価用の金型(90度で曲げ半径=0の金型)を用いて得られたホットスタンプ成形体から、LME割れを評価した。ホットスタンプ成形体からLME評価用の曲げサンプルを採取し、この曲げサンプルの断面が観察できるように樹脂埋めし、SEMを用いて、LME割れを観察した。後述する図2のように深さ50μm以上の割れが観察された場合、LME割れが発生したとみなして不合格と判定し、表中にNGと記載した。一方、深さ50μm以上の割れが観察されなかった場合、LME割れが発生しなかったとみなして合格と判定し、表中にOKと記載した。
平板金型を用いて得られたホットスタンプ成形体からサンプルを採取し、鋼板の金属組織、めっき皮膜の組成、酸化亜鉛含有皮膜の金属亜鉛換算での酸化亜鉛量、引張強さ、溶接性および化成処理性を評価した。
引張強さが1000MPa未満であった場合、強度に劣るとして不合格と判定した。一方、引張強さが1000MPa以上であった場合、強度に優れるとして合格と判定した。
ホットスタンプ成形体において、鋼板の金属組織が、80面積%以上のマルテンサイトを含む場合は、表中の焼入れ組織にOKと記載し、80面積%以上のマルテンサイトを含まなかった場合は、表中の焼入れ組織にNGと記載した。
スケール評価は次の方法により行った。
ホットスタンプ成形体の表面を目視で観察し、酸化鉄スケールが生成していた場合、またはスケールの剥離が見られた場合は、不合格と判定し、表中にスケール「あり」と記載した。酸化鉄スケールが生成せず、且つスケールの剥離が見られなかった場合、合格と判定し、表中にスケール「なし」と記載した。
溶接性は、溶接抵抗により評価した。ホットスタンプ成形体から採取したサンプルの片面を面研削して母材(鋼板)を露出させた。母材表面に、DRφ6mm、R40mmの溶接電極を加圧力250kgfで抑え、電流2A、4秒間の通電終了後の電圧から、電気抵抗値(mΩ)を測定した。現行量産GA鋼板を現行ホットスタンプ量産条件で処理したものの溶接抵抗は0.57mΩであった。溶接抵抗が、この現行材の溶接抵抗の1.5倍である0.86mΩを超えた例は、溶接性に劣るとして不合格と判定した。一方、溶接抵抗が0.86mΩ以下であった例は、溶接性に優れるとして合格と判定した。
化成処理性は、次の方法により評価した。ホットスタンプ成形体から採取したサンプルを水洗して脱脂し、表面調整液PL-Xに浸漬した。次に、化成処理液SX35に浸漬することで、リン酸亜鉛化成処理を行った。リン酸亜鉛化成処理後のサンプルをSEMで二次電子像観察し、後述する図3の製造No.1、2および3のように、燐酸塩結晶が緻密に表面を覆っていた場合、化成処理性に優れるとして合格と判定し、表中にOKと記載した。合格と判定された例については、ホットスタンプ成形体の表面に、化成皮膜を有していた。
一方、後述する図3の製造No.5のように、表面に燐酸塩結晶が覆っていない5μm以上の領域が観察された場合、化成処理性に劣るとして不合格と判定した。
なお、スケールが発生した例、LME割れが発生した例および焼入組織が不適切であった例のうち一部については、溶接性および化成処理性を評価しなかった。
ガス炉内での材温実績の一部を図1に示す。
LME割れの有無をSEMで観察した結果の一部を図2に示す。
化成処理性をSEMで評価した結果の一部を図3に示す。
Figure 2022131411000001
Figure 2022131411000002
Figure 2022131411000003
Figure 2022131411000004
Figure 2022131411000005
製造No.2および3より、溶融亜鉛浴中のAl濃度が0.155質量%を下回ると、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が155mg/mを下回り、ホットスタンプ成形体の溶接抵抗が上昇し溶接性に劣ることが分かる。また、製造No.1および2より、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のZn量が40.0g/mを上回ると、850℃以上の温度域での滞在時間が30秒以下ではLME割れが発生することが分かる。
製造No.5より、溶融亜鉛浴中のAl濃度が0.190質量%~0.400質量%であり、且つ合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が400~1000mg/mであっても、酸化亜鉛含有皮膜が形成されていなければ、ホットスタンプ成形体において化成処理性が劣ることが分かる。
製造No.6より、めっき皮膜中のZn量が15.0g/mを下回ると、ホットスタンプ成形体において鉄スケールが生成することが分かる。
製造No.7より、めっき皮膜中のZn量が40.0g/mを上回ると、ホットスタンプ成形体においてLME割れが発生することが分かる。
製造No.8より、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度が8質量%を下回ると、炉内での昇温速度が遅くなり、短い炉内時間では十分に温度を上昇させることができないことが分かる。その結果、引張強さが劣ることが分かる。
製造No.9より、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中にNiが含まれなくても、Zn量、Al量およびFe濃度が所望の範囲内であれば、ホットスタンプ後の特性を満足することが分かる。
製造No.10より、溶融亜鉛浴中のAl濃度が0.190~0.400%であり、且つ合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が400~1000mg/mであっても、酸化亜鉛含有皮膜が形成されていれば化成処理性が確保され、所望の特性を満足することが分かる。
また、製造No.11より、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中にNiが含まれなくても、製造No.10と同様の結果が得られることが分かる。
製造No.12より、溶融亜鉛浴中のAl濃度が0.155質量%を下回ったため、合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のAl量が下限を下回った結果、ホットスタンプ成形体において溶接抵抗が増したことが分かる。
製造No.14より、溶融亜鉛浴中のAl濃度が0.205質量%であったが、酸化亜鉛含有皮膜を形成しなかったため、ホットスタンプ成形体において化成処理性が劣ることが分かる。
製造No.15より、製造No.8と同様に合金化溶融亜鉛めっき皮膜中のFe濃度が8質量%を下回ったため、短い炉内時間では十分に温度を上昇させることができなかったことが分かる。その結果、引張強さが劣ることがわかる。
製造No.4、13、16~27、30、32および33より、化学組成、製造条件等が本発明の範囲内であれば好ましい特性が得られることが分かる。
製造No.28より、Si含有量が過剰だったためAc点が上昇し、マルテンサイトが80面積%未満となり、引張強さが劣ったことが分かる。
製造No.29より、Mn含有量が不足したためAc点が上昇し、マルテンサイトが80面積%未満となり、引張強さが劣ったことが分かる。
製造No.31より、酸化亜鉛含有皮膜中の酸化亜鉛量が過剰であったため、溶接抵抗が上昇したことが分かる。
本発明に係る上記態様によれば、高強度であり、ホットスタンプ後のスケールの生成が抑制され、且つ優れた溶接性および化成処理性を有するホットスタンプ成形体、およびこのホットスタンプ成形体を製造することができるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板、並びに、それらの製造方法を提供することができる。

Claims (12)

  1. 鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、を有するホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、
    前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
    C :0.02~0.58%、
    Mn:0.10~3.00%、
    sol.Al:0.001~1.000%、
    Si:2.00%以下、
    P :0.100%以下、
    S :0.005%以下、
    N :0.0100%以下、
    Ti:0~0.200%、
    Nb:0~0.200%、
    V :0~1.00%、
    W :0~1.00%
    Cr:0~1.00%、
    Mo:0~1.00%、
    Cu:0~1.00%、
    Ni:0~1.00%、
    B :0~0.0100%、
    Ca:0~0.05%、および
    REM:0~0.05%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、
    Fe濃度が8.0質量%超であり、
    Zn量が15.0~40.0g/mであり、
    Al量が150mg/m以上、400mg/m未満であり、
    Ni量が0~2000mg/mであり、
    残部が不純物からなる
    ことを特徴とするホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有するホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、
    前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
    C :0.02~0.58%、
    Mn:0.10~3.00%、
    sol.Al:0.001~1.000%、
    Si:2.00%以下、
    P :0.100%以下、
    S :0.005%以下、
    N :0.0100%以下、
    Ti:0~0.200%、
    Nb:0~0.200%、
    V :0~1.00%、
    W :0~1.00%
    Cr:0~1.00%、
    Mo:0~1.00%、
    Cu:0~1.00%、
    Ni:0~1.00%、
    B :0~0.0100%、
    Ca:0~0.05%、および
    REM:0~0.05%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、
    Fe濃度が8.0質量%超であり、
    Zn量が15.0~40.0g/mであり、
    Al量が400~1000mg/mであり、
    Ni量が0~2000mg/mであり、
    前記酸化亜鉛含有皮膜は、
    片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである
    ことを特徴とするホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記鋼板の前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.005~0.200%、
    Nb:0.005~0.200%、
    V :0.10~1.00%、
    W :0.10~1.00%、
    Cr:0.05~1.00%、
    Mo:0.05~1.00%、
    Cu:0.05~1.00%、
    Ni:0.05~1.00%、
    B :0.0010~0.0100%、
    Ca:0.0005~0.05%、および
    REM:0.0005~0.05%
    からなる群から選ばれる1種または2種を含有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜中の前記Ni量が50~2000mg/mである
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 鋼板と、前記鋼板上に配されためっき皮膜と、前記めっき層上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有するホットスタンプ成形体であって、
    前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
    C :0.02~0.58%、
    Mn:0.10~3.00%、
    sol.Al:0.001~1.000%、
    Si:2.00%以下、
    P :0.100%以下、
    S :0.005%以下、
    N :0.0100%以下、
    Ti:0~0.200%、
    Nb:0~0.200%、
    V :0~1.00%、
    W :0~1.00%
    Cr:0~1.00%、
    Mo:0~1.00%、
    Cu:0~1.00%、
    Ni:0~1.00%、
    B :0~0.0100%、
    Ca:0~0.05%、および
    REM:0~0.05%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    前記鋼板の金属組織が、80面積%以上のマルテンサイトを含み、
    前記めっき皮膜は、Fe-Zn固溶相および酸化亜鉛のみからなり、
    Zn量が15.0~40.0g/mであり、
    Al量が400~1000mg/mであり、
    Ni量が0~2000mg/mであり、
    残部が不純物からなり、
    前記酸化亜鉛含有皮膜は、
    片面当たりの酸化亜鉛量が、金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである
    ことを特徴とするホットスタンプ成形体。
  6. 前記鋼板の前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.005~0.200%、
    Nb:0.005~0.200%、
    V :0.10~1.00%、
    W :0.10~1.00%、
    Cr:0.05~1.00%、
    Mo:0.05~1.00%、
    Cu:0.05~1.00%、
    Ni:0.05~1.00%、
    B :0.0010~0.0100%、
    Ca:0.0005~0.05%、および
    REM:0.0005~0.05%
    からなる群から選ばれる1種または2種を含有する
    ことを特徴とする請求項5に記載のホットスタンプ成形体。
  7. 前記酸化亜鉛含有皮膜上に、化成皮膜を有することを特徴とする請求項5または6に記載のホットスタンプ成形体。
  8. 請求項1に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    請求項1に記載の化学組成を有するスラブに対して熱間圧延を施すことで、熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、
    任意で、前記熱延鋼板に対して冷間圧延を施すことで冷延鋼板を得る冷間圧延工程と、
    任意で、前記熱延鋼板または前記冷延鋼板に対してNiプレめっきを施すことでNiプレめっき鋼板を得るNiプレめっき工程と、
    前記熱延鋼板、前記冷延鋼板または前記Niプレめっき鋼板に対して還元性雰囲気中で460~850℃の温度域で3秒以上保持することで焼鈍鋼板を得る焼鈍工程と、
    Al濃度が0.155質量%以上、0.190質量%未満である溶融亜鉛浴に、前記焼鈍鋼板を1.0~15.0秒間浸漬することで溶融亜鉛めっき鋼板を得る亜鉛めっき工程と、
    前記溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を行うことでホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得る合金化工程と、を備える
    ことを特徴とするホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  9. 請求項2に記載のホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    請求項2に記載の化学組成を有するスラブに対して熱間圧延を施すことで、熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、
    任意で、前記熱延鋼板に対して冷間圧延を施すことで冷延鋼板を得る冷間圧延工程と、
    任意で、前記熱延鋼板または前記冷延鋼板に対してNiプレめっきを施すことでNiプレめっき鋼板を得るNiプレめっき工程と、
    前記熱延鋼板、前記冷延鋼板または前記Niプレめっき鋼板に対して還元性雰囲気中で460~850℃の温度域で3秒以上保持することで焼鈍鋼板を得る焼鈍工程と、
    Al濃度が0.190~0.400質量%である溶融亜鉛浴に、前記焼鈍鋼板を1.0~15.0秒間浸漬することで溶融亜鉛めっき鋼板を得る亜鉛めっき工程と、
    前記溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を行う合金化工程と、
    片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mである酸化亜鉛含有皮膜を形成する酸化亜鉛含有皮膜形成工程と、を備える
    ことを特徴とするホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  10. 請求項5に記載のホットスタンプ成形体の製造方法であって、
    鋼板と、前記鋼板上に配された合金化溶融亜鉛めっき皮膜と、前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜上に配された酸化亜鉛含有皮膜と、を有し、
    前記鋼板は、化学組成が、質量%で、
    C :0.02~0.58%、
    Mn:0.10~3.00%、
    sol.Al:0.001~1.000%、
    Si:2.00%以下、
    P :0.100%以下、
    S :0.005%以下、
    N :0.0100%以下、
    Ti:0~0.200%、
    Nb:0~0.200%、
    V :0~1.00%、
    W :0~1.00%
    Cr:0~1.00%、
    Mo:0~1.00%、
    Cu:0~1.00%、
    Ni:0~1.00%、
    B :0~0.0100%、
    Ca:0~0.05%、および
    REM:0~0.05%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    前記合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、
    Fe濃度が8.0質量%超であり、
    Zn量が15.0~40.0g/mであり、
    Al量が400~1000mg/mであり、
    Ni量が0~2000mg/mであり、
    残部が不純物からなり、
    前記酸化亜鉛含有皮膜は、
    片面当たりの酸化亜鉛量が金属亜鉛換算で0.3~1.5g/mであるホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板を加熱して、100℃以上の温度域での保持時間を150秒以下とし、850℃以上の温度域での保持時間を30秒以下とし、782℃以上の温度域でホットスタンプすることでホットスタンプ成形体を得る
    ことを特徴とするホットスタンプ成形体の製造方法。
  11. 前記鋼板の前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.005~0.200%、
    Nb:0.005~0.200%、
    V :0.10~1.00%、
    W :0.10~1.00%、
    Cr:0.05~1.00%、
    Mo:0.05~1.00%、
    Cu:0.05~1.00%、
    Ni:0.05~1.00%、
    B :0.0010~0.0100%、
    Ca:0.0005~0.05%、および
    REM:0.0005~0.05%
    からなる群から選ばれる1種または2種を含有する
    ことを特徴とする請求項10に記載のホットスタンプ成形体の製造方法。
  12. 前記ホットスタンプ成形体の表面に化成皮膜を形成する
    ことを特徴とする請求項10または11に記載のホットスタンプ成形体の製造方法。
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