JP2022128731A - マルテンサイト系ステンレス鋼粉末およびマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体 - Google Patents

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Abstract

【課題】HIP処理等の高密度化処理を施すことなく高密度の焼結体を製造可能なマルテンサイト系ステンレス鋼粉末、および、高密度で機械的特性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体を提供すること。【解決手段】Cを0.42質量%以上0.80質量%以下で含有し、Crを12.0質量%以上14.0質量%以下で含有し、Nbを1.2質量%以上2.7質量%以下で含有し、残部がFeおよび不純物であり、平均粒径が10μm以下であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼粉末。また、Cを0.50質量%以上0.75質量%以下で含有するのが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末およびマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体に関するものである。
特許文献1には、分散相形成物質と、主成分のFeと、マルテンサイト結合相形成粉末と、硬質相形成物質と、を混合粉砕して、混合粉末を得る工程と、混合粉末を成形して圧粉成形体を得る工程と、圧粉成形体を加熱焼結し、焼結合金とする工程と、を有する焼結合金の製造方法が開示されている。また、特許文献1には、焼結合金中に残留する空孔を減らすため、圧粉成形体または焼結合金にHIP処理を行う工程を追加することが開示されている。これにより、内部に残留空孔がない、高密度で耐摩耗性に優れた焼結合金が得られる。
特開平6-279959号公報
しかしながら、マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼結密度を高めにくいという特徴がある。焼結密度が低い場合、機械的特性に影響を及ぼすため、焼結合金を機械部品等に適用した場合、信頼性を十分に高めることが難しい。
特許文献1に記載の方法では、HIP処理を行うことで、高密度化を図っている。しかしながら、HIP処理は、多くの工数を必要とする。このため、HIP処理等の高密度化処理を施すことなく、高密度の焼結合金を製造する方法が求められている。
本発明の適用例に係るマルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、
Cを0.42質量%以上0.80質量%以下で含有し、
Crを12.0質量%以上14.0質量%以下で含有し、
Nbを1.2質量%以上2.7質量%以下で含有し、
残部がFeおよび不純物であり、
平均粒径が10μm以下であることを特徴とする。
本発明の適用例に係るマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、
Cを0.40質量%以上0.75質量%以下で含有し、
Crを12.0質量%以上14.0質量%以下で含有し、
Nbを1.2質量%以上2.7質量%以下で含有し、
残部がFeおよび不純物であり、
相対密度が99.0%以上であることを特徴とする。
マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体の製造方法を示す工程図である。
以下、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼粉末およびマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体を添付図面に基づいて詳細に説明する。
1.マルテンサイト系ステンレス鋼粉末
まず、実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼粉末について説明する。
粉末冶金技術では、金属粉末とバインダーとを含む組成物を、所望の形状に成形した後、脱脂処理および焼結処理に供することにより、所望の形状の焼結体を得ることができる。このような粉末冶金技術によれば、その他の技術に比べ、複雑で微細な形状の焼結体をニアネットシェイプ、すなわち最終形状に近い形状で製造することができる。
実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、C、CrおよびNbを少なくとも含有し、残部がFeおよび不純物である金属粉末である。具体的には、実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、Cを0.42質量%以上0.80質量%以下で含有し、Crを12.0質量%以上14.0質量%以下で含有し、Nbを1.2質量%以上2.7質量%以下で含有し、残部がFeおよび不純物という粉末である。また、このマルテンサイト系ステンレス鋼粉末の平均粒径は、10μm以下である。
このようなマルテンサイト系ステンレス鋼粉末によれば、HIP処理のような高密度化処理を施すことなく、粉末冶金法により、高密度のマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体を製造することができる。得られたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、マルテンサイト組織を含み、機械的特性に優れるため、例えば機械部品等に適用された場合、信頼性の高い機械部品の実現に寄与する。
以下、実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼粉末について詳述する。なお、以下の説明では、マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体を、単に「焼結体」ということもある。
1.1.C(炭素)
C(炭素)は、Nbと併用されることで、金属粉末の粒子の表面にNbCを析出させる。このNbCのような炭化物が粒子の表面に析出すると、成形体における急速な焼結の進行が抑制される。これにより、温度ムラに伴って成形体の表面が偏って焼結し、閉塞してしまうのを抑制することができる。その結果、成形体の内部で発生した気体が閉じ込められるのを抑制し、内部の焼結密度も十分に高めることができるので、高密度の焼結体を得ることができる。
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末におけるCの含有率は、0.42質量%以上0.80質量%以下とされるが、好ましくは0.50質量%以上0.75質量%以下とされ、より好ましくは0.53質量%以上0.70質量%以下とされる。Cの含有率が前記下限値を下回ると、Nbの量に対してCの量が不足し、全体の組成比によっては、焼結密度を十分に高めることができない。一方、Cの含有率が前記上限値を上回ると、Nbの量に対してCの量が過剰になり、全体の組成比によっては、焼結反応が阻害され、焼結密度が低下するおそれがある。
1.2.Cr(クロム)
Cr(クロム)は、製造される焼結体に耐食性を付与する元素である。Crを含むことにより、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、良好な機械的特性を長期にわたって維持し得る焼結体を実現する。
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末におけるCrの含有率は、12.0質量%以上14.0質量%以下とされるが、好ましくは12.3質量%以上13.7質量%以下とされ、より好ましくは12.5質量%以上13.5質量%以下とされる。Crの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成比によっては、焼結体の耐食性が不十分になる。一方、Crの含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成比によっては、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の焼結性が低下し、焼結密度が低下する。
1.3.Nb(ニオブ)
Nb(ニオブ)は、Cと併用されることで、金属粉末の粒子の表面にNbCを析出させる。これにより、成形体における急速な焼結の進行を抑制する。その結果、成形体の内部で発生した気体が閉じ込められるのを抑制し、成形体の内部の焼結密度も十分に高めることができるので、最終的に高密度の焼結体を得ることができる。
また、Nbを含有することにより、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の焼結開始温度を高めることができる。これにより、焼結が開始されない程度の高温、例えば800℃以上で焼結開始温度未満の温度範囲に、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末をより長時間滞在させることができる。その結果、焼結を阻害しやすい物質、例えば酸化ケイ素や酸化クロムのような酸化物がマルテンサイト系ステンレス鋼粉末に含まれていたとしても、それを還元する反応を効率よく生じさせることができる。
還元反応としては、以下の反応式で表される反応が挙げられる。
SiO(s)+C(s)→SiO(g)+CO(g)
Cr(s)+3C(s)→2Cr(s)+3CO(g)
上式では、(s)が固体、(g)が気体を表す。この例では、酸化ケイ素SiOが炭素Cと反応し、気化しやすい物質に変化して成形体中から除去される。また、酸化クロムが金属クロムに還元される。その結果、焼結を阻害しやすい酸化物を成形体中から減らすことができ、焼結体の高密度化を図ることができる。なお、この反応は、例えば800℃以上で起こりやすいことから、焼結開始温度を高めることができれば、後述する焼結処理の過程で、還元反応に適した温度域にマルテンサイト系ステンレス鋼粉末をより長時間滞在させることができる。
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末におけるNbの含有率は、1.2質量%以上2.7質量%以下とされるが、好ましくは1.4質量%以上2.5質量%以下とされる。Nbの含有率が前記下限値を下回ると、Cの量に対してNbの量が不足し、全体の組成比によっては、焼結密度を十分に高めることができない。一方、Nbの含有率が前記上限値を上回ると、Cの量に対してNbの量が過剰になり、全体の組成比によっては、焼結反応が阻害され、焼結密度が低下するおそれがある。
また、Nbの含有量に対するCの含有量の比をC/Nbとするとき、C/Nbは、0.18以上0.60以下であるのが好ましく、0.20以上0.50以下であるのがより好ましく、0.23以上0.45以下であるのがさらに好ましい。これにより、Cの含有量とNbの含有量のバランスを最適化することができる。その結果、CやNbに余剰が発生しにくくなり、高密度化と高強度化を高度に両立した焼結体を製造可能なマルテンサイト系ステンレス鋼粉末を実現することができる。
また、Cの含有率とNbの含有率の和をC+Nbとするとき、C+Nbは、1.5以上3.5以下であるのが好ましく、1.7以上3.3以下であるのがより好ましく、2.0以上3.2以下であるのがさらに好ましい。これにより、生成されるNbCの絶対量が少なかったり、過剰量のNbCが生成されたりするのを抑制することができる。その結果、高密度化と高強度化を高度に両立した焼結体を製造可能なマルテンサイト系ステンレス鋼粉末を実現することができる。
1.4.その他の元素
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、上述した各元素の他、必要に応じて、Si、MnおよびNiのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
Siの含有率は、1.0質量%以下であるのが好ましく、0.90質量%以下であるのがより好ましく、0.80質量%以下であるのがさらに好ましい。
Mnの含有率は、1.0質量%以下であるのが好ましく、0.90質量%以下であるのがより好ましく、0.85質量%以下であるのがさらに好ましい。
Niの含有率は、0.60質量%以下であるのが好ましく、0.40質量%以下であるのがより好ましく、0.30質量%以下であるのがさらに好ましい。
Si、MnおよびNiの各含有率を前記範囲内に設定することにより、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の製造に用いられる原料の精製度を必要以上に高めることなく、焼結性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼粉末を実現することができる。つまり、Si、MnおよびNiの各含有率を前記範囲内に設定することにより、比較的安価な原料を用いても、高密度の焼結体を製造可能なマルテンサイト系ステンレス鋼粉末を得ることができる。
また、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、上述した各元素の他、必要に応じて、MoまたはPbを含んでいてもよい。
Moの含有率は、0.60質量%以下であるのが好ましい。Pbの含有率は、0.30質量%以下であるのが好ましい。
1.5.Fe(鉄)および不純物
Fe(鉄)は、実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼粉末に含まれる元素のうち、前述した各元素以外の残部である。したがって、Feの含有率は、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末において最も高い。すなわち、Feは、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の主成分であり、焼結体の特性に大きな影響を及ぼす。
Feの含有率は、特に限定されないが、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましい。
また、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、上述した各元素およびFe以外のあらゆる元素を不純物として含有していてもよい。不純物は、原料に意図せず含まれていたり、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の製造過程で不可避的に混入したりする。不純物の濃度は、それぞれ上述した各元素の含有率より低ければよいが、それぞれ0.10質量%以下であるのが好ましく、0.05質量%以下であるのがより好ましい。なお、Si、Mn、Ni、Mo、Pbおよび不純物は、その濃度が前記範囲内であれば、意図的に添加されていてもよい。
1.6.分析方法
以上、実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼粉末の組成について詳述したが、上記した各元素は、以下のような分析手法により特定される。
分析手法としては、例えば、JIS G 1257:2000に規定された鉄及び鋼-原子吸光分析法、JIS G 1258:2007に規定された鉄及び鋼-ICP発光分光分析法、JIS G 1253:2002に規定された鉄及び鋼-スパーク放電発光分光分析法、JIS G 1256:1997に規定された鉄及び鋼-蛍光X線分析法、JIS G 1211~G 1237に規定された重量・滴定・吸光光度法等が挙げられる。
具体的には、例えばSPECTRO社製固体発光分光分析装置、特にスパーク放電発光分光分析装置、モデル:SPECTROLAB、タイプ:LAVMB08Aや、株式会社リガク製ICP装置CIROS120型が挙げられる。
また、特にC(炭素)およびS(硫黄)の特定に際しては、JIS G 1211:2011に規定された酸素気流燃焼(高周波誘導加熱炉燃焼)-赤外線吸収法も用いられる。具体的には、LECO社製炭素・硫黄分析装置、CS-200が挙げられる。
さらに、特にN(窒素)およびO(酸素)の特定に際しては、JIS G 1228:1997に規定された鉄及び鋼-窒素定量方法、JIS Z 2613:2006に規定された金属材料の酸素定量方法通則も用いられる。具体的には、LECO社製酸素・窒素分析装置、TC-300/EF-300が挙げられる。
1.7.粉末特性
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の平均粒径D50は、10μm以下とされるが、好ましくは1μm以上9μm以下とされ、より好ましくは2μm以上8μm以下とされる。このような粒径のマルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、良好な焼結性を有するため、高密度の焼結体を製造することができる。
なお、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の平均粒径D50が前記下限値を下回った場合、粉末が凝集しやすく、焼結密度が低下するおそれがある。一方、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の平均粒径D50が前記上限値を上回った場合、成形時の充填性が低下するため、焼結密度が低下するおそれがある。
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の平均粒径D50は、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において、累積量が小径側から50%になるときの粒径として求められる。
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末について、レーザー回折法により取得された質量基準の粒度分布において、小径側から累積10%となるときの粒径をD10とし、小径側から累積90%となるときの粒径をD90としたとき、(D90-D10)/D50は1.0以上2.5以下程度であるのが好ましく、1.2以上2.3以下程度であるのがより好ましい。(D90-D10)/D50は粒度分布の広がりの程度を示す指標であるが、この指標が前記範囲内であることにより、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の充填性が良好になる。
2.焼結体の製造方法
図1は、マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体の製造方法を示す工程図である。
図1に示すマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体の製造方法は、組成物調製工程S102と、成形工程S104と、脱脂工程S106と、焼結工程S108と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
2.1.組成物調製工程
組成物調製工程S102では、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末と有機バインダーとを含む成形用組成物を得る。
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末は、アトマイズ法により製造されたものであるのが好ましく、水アトマイズ法または回転水流アトマイズ法により製造されたものであるのがより好ましい。アトマイズ法は、溶湯を、高速で噴射された液体または気体に衝突させることにより、微粉化するとともに冷却して、金属粉末を製造する方法である。マルテンサイト系ステンレス鋼粉末をアトマイズ法によって製造することにより、極めて微小な粉末を効率よく製造することができる。
有機バインダーとしては、脱脂処理および焼結処理において短時間で分解可能な樹脂が用いられる。かかる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはこれらの共重合体、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
なお、成形用組成物の形態としては、例えば、混練物、造粒粉末等が挙げられる。
有機バインダーの混合比率は、成形用組成物の0.2質量%以上20.0質量%以下程度であるのが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下程度であるのがより好ましい。
組成物中には、これらの他に、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物が添加されていてもよい。
2.2.成形工程
成形工程S104では、成形用組成物を目的とする形状に成形する。これにより、成形体が得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、積層造形法等が挙げられる。このうち、積層造形法としては、例えば、材料押出堆積法やバインダージェッティング法が挙げられる。
2.3.脱脂工程
脱脂工程S106では、成形体の脱脂処理を施し、脱脂体を得る。
脱脂処理としては、例えば、成形体を加熱して有機バインダーを分解する方法、有機バインダーを分解するガスに成形体を曝す方法等が挙げられる。脱脂処理により、成形体中の有機バインダーの全部または一部が除去される。
成形体を加熱する方法を用いる場合、成形体の加熱条件は、有機バインダーの組成や配合量によって若干異なるものの、温度が100℃以上750℃以下、時間が0.1時間以上20時間以下であるのが好ましく、温度が150℃以上600℃以下、時間が0.5時間以上15時間以下であるのがより好ましい。
成形体を加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、窒素、アルゴンのような不活性雰囲気、大気のような酸化性雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
有機バインダーを分解するガスに成形体を曝す方法としては、例えば酸脱脂法が用いられる。酸脱脂法は、酸含有雰囲気下で成形体を加熱することにより、酸の触媒作用を利用して脱脂する方法である。酸脱脂法によれば、有機バインダーを低温でも短時間で分解することができるので、体積の大きな成形体であっても、効率よく脱脂処理を施すことができる。
酸含有雰囲気とは、有機バインダーを分解可能な酸を含む雰囲気のことをいう。かかる酸としては、例えば、硝酸、シュウ酸、オゾン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの酸と他のガスとを混合した混合ガスを用いるようにしてもよい。混合ガスの一例としては、発煙硝酸が挙げられる。なお、雰囲気圧力は、大気圧下であっても、減圧下であっても、加圧下であってもよい。
酸含有雰囲気下における成形体の加熱条件は、前述した加熱条件よりも低温または短時間で済む。このため、成形体に加える熱量を減らすことができ、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の酸化を抑制しやすい。
2.4.焼結工程
焼結工程S108では、脱脂体に焼結処理を施し、焼結体を得る。
焼結温度は、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の組成比や粒径等によって異なるが、一例として980℃以上1330℃以下程度とされる。また、好ましくは1050℃以上1260℃以下程度とされる。
また、焼結時間は、0.2時間以上7時間以下とされるが、好ましくは1時間以上6時間以下程度とされる。
焼結処理の雰囲気は、例えば、水素等の還元性雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。減圧雰囲気の圧力は、常圧(100kPa)未満であれば、特に限定されないが、10kPa以下であるのが好ましく、1kPa以下であるのがより好ましい。これにより、脱脂体中に残留するガスを特に効率よく排出し、最終的に得られる焼結体の高密度化を図ることができる。
なお、得られた焼結体には、必要に応じて、焼き入れ処理、サブゼロ処理、焼き戻し処理等を施すようにしてもよい。これにより、安定したマルテンサイト組織を生成することができる。
焼き入れ処理では、焼結体に対し、950℃以上1200℃以下程度、0.2時間以上3時間以下程度の加熱を行った後、急冷する処理を行う。焼き入れ処理における急冷には、水冷、油冷等が用いられる。
サブゼロ処理は、焼き入れ処理においてマルテンサイトの結晶構造に変化せず、残留したオーステナイトの結晶構造を、冷却によってマルテンサイト化する処理のことである。残留したオーステナイトの結晶構造は、時間の経過とともにマルテンサイト化することが多いが、このとき、焼結体の体積変化を伴うため、経時的に焼結体の寸法が変化してしまうことがある。そこで、焼き入れ処理後にサブゼロ処理を行うことで、残留したオーステナイトの結晶構造を半ば強制的にマルテンサイト化することができ、経時的な寸法変化の発生を予防することができる。
サブゼロ処理の温度は0℃以下とされ、時間は0.2時間以上3時間以下程度であるのが好ましい。焼結体の冷却には、例えばドライアイスや炭酸ガス、液体窒素等を用いる。
焼き戻し処理は、焼き入れ処理後の焼結体に対して、焼き入れ処理よりも低温で再び加熱する処理のことである。これにより、焼結体の硬度を下げつつ靭性を付与することができる。
焼き戻し処理の温度は100℃以上250℃以下程度、時間は0.3時間以上5時間以下程度であるのが好ましい。
2.マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体
実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体について説明する。
実施形態に係るマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、C、CrおよびNbを少なくとも含有し、残部がFeおよび不純物である金属焼結体である。具体的には、マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、Cを0.40質量%以上0.75質量%以下で含有し、Crを12.0質量%以上14.0質量%以下で含有し、Nbを1.2質量%以上2.7質量%以下で含有し、残部がFeおよび不純物という金属焼結体である。また、このマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体の相対密度は、99.0%以上である。
このようなマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、粉末冶金法により製造可能であり、かつ、HIP処理のような高密度化処理を施すことなく製造可能なものである。このため、高密度で機械的特性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体を実現することができる。
なお、前述したCによる還元反応により、マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体におけるCの含有率は、前述したマルテンサイト系ステンレス鋼粉末におけるCの含有率よりも低下する場合がある。具体的には、焼結体におけるCの含有率は、金属粉末におけるCの含有率の30%以上100%未満となることがあるが、60%以上90%以下に収まっているのが好ましい。これにより、Cの含有率が低くなりすぎるのを避けることができ、焼結体の機械的特性の低下を抑制することができる。
これを踏まえると、焼結体におけるCの含有率は、前述したように0.40質量%以上0.75質量%以下とされるが、0.45質量%以上0.65質量%以下であるのが好ましく、0.50質量%以上0.60質量%以下であるのがより好ましい。
上述したマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、例えば、自動車用部品、自転車用部品、鉄道車両用部品、船舶用部品、航空機用部品、宇宙輸送機用部品のような輸送機器用部品、パソコン用部品、携帯電話端末用部品、タブレット端末用部品、ウェアラブル端末用部品のような電子機器用部品、冷蔵庫、洗濯機、冷暖房機のような電気機器用部品、工作機械、半導体製造装置のような機械用部品、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、製油所、化学コンビナートのようなプラント用部品、時計用部品、金属食器、宝飾品、眼鏡フレームのような装飾品の全体または一部を構成する材料として用いられる。
以上、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼粉末およびマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末と、それ以外の粉末と、を含む混合粉末から製造された焼結体であってもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
3.マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体の製造
3.1.実施例1
まず、水アトマイズ法により製造されたマルテンサイト系ステンレス鋼粉末と有機バインダーとを含む混練物(成形用組成物)を調製した。なお、金属粉末には、平均粒径6.0μmのマルテンサイト系ステンレス鋼粉末を用いた。また、有機バインダーには、ポリプロピレンとワックスの混合物を使用した。混練物における有機バインダーの混合比率は8質量%とした。
次に、混練物を射出成形機で成形し、成形体を得た。なお、成形体の形状は、縦15mm、横15mm、高さ3mmの直方体とした。
次に、成形体に脱脂処理を施し、脱脂体を得た。脱脂処理は、窒素雰囲気下、450℃で2時間、成形体を加熱する処理である。
次に、脱脂体に焼結処理を施し、焼結体を得た。焼結処理は、アルゴン雰囲気下、1250℃で3時間、脱脂体を加熱する処理である。
次に、焼結体に対し、焼き入れ処理および焼き戻し処理を施した。
3.2.実施例2~11
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の組成比を表1~3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
3.3.比較例1~16
マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の組成比を表1~3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
Figure 2022128731000001
Figure 2022128731000002
Figure 2022128731000003
4.マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体の評価
4.1.合金組成
各実施例および各比較例で得られたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体について、その合金組成を分析した。その結果、焼結体の製造に使用した金属粉末の合金組成とほぼ同じであった。なお、焼結体におけるCの含有率は、金属粉末におけるCの含有率の70~90%であり、具体的には0.40~0.75質量%の範囲内に収まっていた。
4.2.相対密度
各実施例および各比較例で得られたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体について、JIS Z 2501:2000に規定の方法に準じて相対密度を算出した。算出結果を表4~6に示す。
4.3.引張強さ
各実施例および各比較例で得られたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体について、JIS Z 2241:2011に規定された金属材料引張試験方法に準じて、引張強さを測定した。なお、引張試験速度は、5mm/分とした。
そして、測定した引張強さを以下の評価基準に照らして評価した。
A:焼結体の引張強さが1800MPa以上である
B:焼結体の引張強さが1600MPa以上1800MPa未満である
C:焼結体の引張強さが1400MPa以上1600MPa未満である
D:焼結体の引張強さが1200MPa以上1400MPa未満である
E:焼結体の引張強さが1000MPa以上1200MPa未満である
F:焼結体の引張強さが800MPa以上1000MPa未満である
G:焼結体の引張強さが800MPa未満である
以上の評価結果を表4~6に示す。
4.4.ビッカース硬さ
各実施例および各比較例で得られたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体を、ファインカッターにより切断した。そして、切断面の中央について、JIS Z 2244:2009に規定されたビッカース硬さ試験の方法に準じて、ビッカース硬さを測定した。なお、測定荷重は200gfとした。
そして、測定したビッカース硬さを以下の評価基準に照らして評価した。
A:ビッカース硬さが480以上である
B:ビッカース硬さが450以上480未満である
C:ビッカース硬さが420以上450未満である
D:ビッカース硬さが420未満である
以上の評価結果を表4~6に示す。
4.5.酸素含有率
各実施例および各比較例で得られたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体について、酸素含有率を測定した。測定には、LECO社製酸素・窒素分析装置、TC-300/EF-300を使用した。そして、測定した酸素含有率を以下の評価基準に照らして評価した。
A:酸素含有率が0.010質量%未満である
B:酸素含有率が0.010質量%以上0.030質量%未満である
C:酸素含有率が0.030質量%以上0.050質量%未満である
D:酸素含有率が0.050質量%以上である
以上の評価結果を表4~6に示す。
Figure 2022128731000004
Figure 2022128731000005
Figure 2022128731000006
表4~6に示すように、実施例の金属粉末を用いて得られたマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体は、比較例の金属粉末を用いて得られた焼結体に比べて、相対密度が十分に高く、機械的強度も高かった。したがって、本発明によれば、HIP処理のような高密度化処理を施すことなく、粉末冶金法により、高密度の焼結体を製造可能であることが認められた。
S102…組成物調製工程、S104…成形工程、S106…脱脂工程、S108…焼結工程

Claims (4)

  1. Cを0.42質量%以上0.80質量%以下で含有し、
    Crを12.0質量%以上14.0質量%以下で含有し、
    Nbを1.2質量%以上2.7質量%以下で含有し、
    残部がFeおよび不純物であり、
    平均粒径が10μm以下であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼粉末。
  2. Cを0.50質量%以上0.75質量%以下で含有する請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼粉末。
  3. Siの含有率が1.0質量%以下であり、
    Mnの含有率が1.0質量%以下であり、
    Niの含有率が0.60質量%以下である請求項1または2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼粉末。
  4. Cを0.40質量%以上0.75質量%以下で含有し、
    Crを12.0質量%以上14.0質量%以下で含有し、
    Nbを1.2質量%以上2.7質量%以下で含有し、
    残部がFeおよび不純物であり、
    相対密度が99.0%以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼焼結体。
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