JP2022128211A - 選鉱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】片刃鉱物粒子を含む鉱石に対する選鉱処理において、選鉱試験結果をMLA解析するときの解析の信頼性を向上させ、処理条件を適切に設定して本選鉱処理を行うことが可能な選鉱処理方法を提供する。【解決手段】本発明は、鉱石に対する選鉱処理によって精鉱と尾鉱とを分離する方法であって、処理条件を設定するための試験としての選鉱処理を行う試験処理工程と、試験により回収される尾鉱に対してMLA装置を用いた解析を行う解析工程と、解析によるデータに基づいて選鉱処理の条件を設定する条件設定工程と、設定した条件に基づいて選鉱処理を行う本選鉱処理工程と、を有する。解析工程では、尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径をその片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得し、条件設定工程では、取得した粒度分布データに基づいて選鉱処理の条件を設定する。【選択図】図3
Description
本発明は、浮遊選鉱等の選鉱処理の方法に関する。
鉱山から採掘された鉱石中には、有用鉱物(鉱脈の中で目的金属を多く含む鉱物)以外に、不用鉱物(目的金属をほとんど含まない鉱物)や鉱脈以外の脈石鉱物が多く含まれている。
鉱石から目的金属を回収するための最初の処理として、選鉱がある。選鉱とは、有用鉱物と不用鉱物及び脈石鉱物が、それぞれ単一の粒子となることを目指して粉砕され、各種鉱物の混合物粉粒体を得て、各種鉱物の比重や磁性、濡れ性等の物理的性状を利用することによって、精鉱(有用鉱物の比率を高めた粉粒体産物)と尾鉱(不用物残渣としての粉粒体産物)とに分離する処理である。
ところが最近では、選鉱処理が容易な優良鉱石は減少傾向にあり、選鉱による分離が困難な鉱石が多くなっている。例えば、有用鉱物の粒子径が小さく、従って粉砕により100μm程度の微細な粉末にまで粉砕し、得られる混合物粉粒体の粒径が小さく、または通常の粉砕技術では単一の粒子とすることが困難な鉱石が多くなっている。このような微細な粉粒体に対しては、濡れ性を利用した選鉱である浮遊選鉱が有効となる。
浮遊選鉱では、鉱石の粉砕後に得られる混合物粉粒体に水を加えて鉱物スラリーとし、浮遊選鉱処理における添加剤である浮選剤の添加、気泡の導入、及び撹拌操作により、濡れ性の低い粒子を泡に付着させて浮上させて浮鉱として回収する。一方で、濡れ性の高い粒子は沈降させて沈鉱として分離する。また、浮遊選鉱は、通常多段階の処理からなり、例えば第1段目で得られた浮鉱を第2段目に供給するというような処理が行われる。
浮遊選鉱の処理条件として、例えば、粉砕粒度、添加剤の選定や添加のタイミング、気泡サイズや流量、適切な段数といったように非常に多くのパラメータがある。したがって、選鉱処理(以下、「本選鉱処理」ともいう)に先立ち、条件設定のために浮遊選鉱試験(以下、単に「選鉱試験」ともいう)を設け、その試験において最も効率よく分離が可能な処理条件を定めることが重要となる。
例えば、特許文献1には、浮選剤の検討として、銅鉱物とモリブデン鉱物とを含む鉱物スラリーに表面処理剤として亜硫酸塩を添加する条件付け工程を備えた選鉱方法が開示されている。また、特許文献2には、粉粒体サイズの問題点に対して、粒子径D50が5μm以下の銅鉱物の微細粒子を含む鉱物スラリーにケロシンを添加して、銅鉱物の微細粒子を凝集させる凝集工程を備えた選鉱方法が開示されている。
選鉱試験では、具体的に、その試験処理の結果として得られる産物、すなわち精鉱、尾鉱、及び試験途中における各段の粉粒体産物について、例えば重量測定及び化学分析を行い、目的金属の含有量と品位を確認することにより解析される。そして、同様な解析を様々な浮選条件による試験に対して実施することで、主に精鉱中の目的金属品位を向上させる条件を探索する。
ところが、化学分析による解析では、分離後に得られる各種産物に含有される全体的な金属品位は判明するものの、混合物粉粒体(鉱石を粉砕して得られる各種鉱物の混合物粉粒体)を選鉱した結果として、鉱物種類ごとの分離状態は確認できない。
また、選鉱処理は、物理的に分離するための処理であるため、選鉱処理の条件に直接的に対応するのは各種鉱物が分離された状態であり、良好な処理条件を探索するためには、各種鉱物の分離状態を把握することが重要となる。
ところで、鉱物粒子解析装置(Mineral Liberation Analyzer, MLA)は、鉱石中に含まれる鉱物の種類、含有比率、粒度、及び鉱物同士の結合状態を解析する装置であり、選鉱試験で得られた各種産物の重量及び品位を組み合わせて解析することで、各種産物中の鉱物粒子が選鉱試験によってどのように分離しているかを把握することができる。
しかしながら、選鉱試験で得られる各種産物に、片刃鉱物粒子(1つの粒子内に複数の鉱物が結合している状態のもの)が含まれる場合には、MLA解析結果の信頼性が低くなるという問題点があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、片刃鉱物粒子を含む鉱石に対する選鉱処理において、選鉱試験結果をMLA解析するときの解析の信頼性を向上させ、処理条件を適切に設定して本選鉱処理を行うことが可能な選鉱処理方法を提供することを目的とする。
本発明者による鋭意検討の結果、選鉱試験で回収される尾鉱に対してMLA解析を行う際に、尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径をその片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、その尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得することによって、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、鉱石に対する選鉱処理によって精鉱と尾鉱とを分離する方法であって、処理条件を設定するための試験としての選鉱処理を行う試験処理工程と、前記試験により回収される尾鉱に対してMLA装置を用いた解析を行う解析工程と、前記解析によるデータに基づいて選鉱処理の条件を設定する条件設定工程と、設定した条件に基づいて選鉱処理を行う本選鉱処理工程と、を有し、前記解析工程では、前記尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径を該片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、該尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得し、前記条件設定工程では、前記粒度分布データに基づいて選鉱処理の条件を設定する、選鉱処理方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記解析工程にて取得される前記粒度分布データを第1データとするとき、前記解析工程では、さらに、前記尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子の粒径を、該片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒子サイズとしたときの、該尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データ(第2データ)を併せて取得し、前記条件設定工程では、前記第1データと前記第2データとを比較し、その比較結果を含めて選鉱処理の条件を設定する、選鉱処理方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記選鉱処理では、浮遊選鉱の処理を行う、選鉱処理方法である。
本発明によれば、片刃鉱物粒子を含む鉱石に対する選鉱処理において、選鉱試験結果をMLA解析するときの解析の信頼性を向上させ、処理条件を適切に設定して本選鉱処理を行うことが可能な選鉱処理方法を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
≪1.概要≫
本発明に係る選鉱処理方法は、鉱石に対して浮遊選鉱等の選鉱処理を行うことによって精鉱と尾鉱とを分離し、精鉱を回収する方法である。精鉱とは有用鉱物の比率を高めた粉粒体産物をいい、尾鉱とは不用物残渣としての粉粒体産物をいう。
本発明に係る選鉱処理方法は、鉱石に対して浮遊選鉱等の選鉱処理を行うことによって精鉱と尾鉱とを分離し、精鉱を回収する方法である。精鉱とは有用鉱物の比率を高めた粉粒体産物をいい、尾鉱とは不用物残渣としての粉粒体産物をいう。
例えば、浮遊選鉱の処理では、鉱物スラリー中に気泡を導入し、有用鉱物の粒子と不用鉱物や脈石鉱物の粒子との表面性状(濡れ性)の差を利用し、疎水性の表面をもつ有用鉱物に気泡に付着させてその有用鉱物を浮鉱として回収し、一方で、不用鉱物や脈石鉱物を沈鉱として分離する。ここで、「有用鉱物」とは、鉱脈鉱物のうちの所望とする金属(目的金属)が含まれる鉱物をいう。また、「不用鉱物」とは、有用鉱物とは反対に、鉱脈鉱物のうちの目的金属をほとんど含まない鉱物をいい、「脈石鉱物」とは、鉱脈鉱物ではない鉱物であり、目的金属を含まない鉱物をいう。
具体的に、本発明に係る選鉱処理方法は、処理条件を設定するための試験としての選鉱処理を行う試験処理工程と、試験により回収される尾鉱に対してMLA装置を用いた解析を行う解析工程と、解析によるデータに基づいて選鉱処理の条件を設定する条件設定工程と、設定した条件に基づいて選鉱処理を行う本選鉱処理工程と、を有する。
そして、この選鉱処理方法では、解析工程において、尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径をその片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得する。条件設定工程では、粒度分布データに基づいて選鉱処理の条件を設定する、ことを特徴としている。
このような方法によれば、選鉱試験で回収された鉱物に対するMLA解析の信頼性を向上させることができ、その解析結果に基づいて本選鉱処理での処理条件を適切に設定することができる。これにより、例えば、不用鉱物が精鉱産物として回収されてしまうことを抑制することができ、有用鉱物を選択的にかつ高い回収率で回収することができる。
本発明に係る選鉱処理方法は、選鉱処理の種類に依らず広く適用することができるが、特に浮遊選鉱の処理に好ましく適用することができる。浮遊選鉱は、微細な鉱物を含む鉱石を対象とする場合において効果的に適用できる。そのため、微細な鉱物のうちから有用鉱物を適切に回収できる本発明に係る方法を適用することが特に有用となる。以下では、浮遊選鉱による選鉱処理を具体例に挙げてより詳しく説明する。
≪2.選鉱処理方法の各工程について≫
[試験処理工程]
上述したように、浮遊選鉱の処理条件としては、例えば、粉砕粒度、添加剤の選定や添加のタイミング、気泡サイズや流量、適切な段数といったように非常に多くのパラメータがある。したがって、選鉱処理(以下、「本選鉱処理」ともいう)に先立ち、条件設定のための浮遊選鉱試験(以下、単に「選鉱試験」ともいう)を設け、その試験において最も効率よく分離が可能な処理条件を定めることが重要となる。
[試験処理工程]
上述したように、浮遊選鉱の処理条件としては、例えば、粉砕粒度、添加剤の選定や添加のタイミング、気泡サイズや流量、適切な段数といったように非常に多くのパラメータがある。したがって、選鉱処理(以下、「本選鉱処理」ともいう)に先立ち、条件設定のための浮遊選鉱試験(以下、単に「選鉱試験」ともいう)を設け、その試験において最も効率よく分離が可能な処理条件を定めることが重要となる。
試験処理工程は、浮遊選鉱の処理条件を設定するための試験(選鉱試験)として浮遊選鉱の処理を行う工程である。
選鉱試験では、任意の処理条件に基づいて浮遊選鉱を行い、例えばその浮遊選鉱により得られる尾鉱を回収し、その尾鉱に対してMLA(Mineral Liberation Analyzer(鉱物粒子解析装置)を用いた解析を行うことによって鉱石中に含まれる鉱物の種類、含有比率、粒度、及び鉱物同士の結合状態を解析する。
より具体的に、選鉱試験では、本選鉱処理と同様に、例えば図1に示すように通常多段の分離操作が行われ、各処理段から尾鉱(尾鉱産物)と精鉱(精鉱産物)とが得られる。
[解析工程]
解析工程では、試験処理工程での選鉱試験により得られた尾鉱又は精鉱に対してMLA解析を行う工程である。
解析工程では、試験処理工程での選鉱試験により得られた尾鉱又は精鉱に対してMLA解析を行う工程である。
例えば、上述した選鉱試験における、第1段の分離操作から得られる尾鉱産物を対象としてMLAにより解析を行うと、図2に例示するように、浮遊選鉱試験で得られた尾鉱産物について、粒度ごとに各鉱物の分離状態を確認することが可能になる。
解析結果例としての図2のグラフからは、尾鉱に有用鉱物が含まれており、その粒子サイズは100μm以下の範囲であることがわかる。このことから、本選鉱処理を行うにあたっては、当該サイズの有用鉱物が浮遊し易くなるように、浮遊選鉱の処理条件を調整すればよいことがわかる。
ところが、浮遊選鉱では微細な粉粒体が処理されており、通常そのサイズは100μm程度(図3(A))であるところ、このサイズまでの粉砕では、図3(B)に示すように、複数の単一鉱物(Grain)が結合した鉱物粒子(片刃鉱物粒子)となっている場合がある。図3は、浮遊選鉱に供される粉粒体の模式図であり、単一鉱物が結合した状態の鉱物粒子(片刃鉱物粒子)1を模式的に示すものである。また、図3(B)では、片刃鉱物粒子1が、符号11~15で示す5種の単一鉱物が結合して構成されている例を示す。
選鉱処理が、粒子単位で物理的に分類する操作であるという性質の処理であるため、例えば、図3中の鉱物15が有用鉱物であって、鉱物11~鉱物14が不用鉱物であったとしても、MLAで解析するにあたっての、鉱物15の粒子サイズとしては、片刃鉱物粒子1全体のサイズと見做すことが従来一般的であった。
そして、そのような一般的な方法に従って、図2で例示した解析結果をうけて100μm以下の粒子が浮上し易いように選鉱処理条件を調整し設定すると、片刃鉱物粒子1は浮上しやすくなり精鉱産物として回収できるようになるが、有用鉱物である鉱物15以外の単一鉱物(鉱物11~鉱物14)までもが精鉱産物に含まれるようになる。すると、精鉱中において鉱物15の品位が上昇するとは限らない、言い換えると、有用鉱物の回収率が上昇するとは限らないこととなる。
つまり、浮遊選鉱条件の調整は不適切であったという結果になるだけでなく、どのように条件を調整すれば良いか推測自体も精度高く行うことができなくなり、結局は解析方法の信頼性が低くなるという問題点があった。このことに対して、より強力に粉砕して、片刃鉱物粒子を無くすことも容易に考えられるが、粉砕に要するコストが大きく実質的には困難である。また、数μm程度にまで粉砕できたとしても、得られる混合物粉粒体の特性、具体的には乾燥状態では飛散しやすく湿潤状態では凝集し易い等の特性によって取扱いが困難になるため、必ずしも好ましい方法とは言えない。
そこで、本発明に係る選鉱処理方法では、試験により回収される尾鉱に対してMLA装置を用いた解析を行う解析工程において、その尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径(Grain size)をその片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、それに基づき尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得する。そして、条件設定工程では、取得した粒度分布データに基づいて選鉱処理の条件を設定する。
より具体的に、図3に例示する、5種類の単一鉱物(鉱物11~鉱物15)が結合してなっている片刃鉱物粒子1では、例えば、片刃鉱物粒子1を構成する鉱物15の粒径を、片刃鉱物粒子1の全体のサイズである100μm程度ではなく、鉱物15それ自体の部分のサイズ(10μm程度)を当該鉱物15のサイズとして見做す。なお、鉱物15は、有用鉱物であると仮定している。
このようにして片刃鉱物粒子1を構成する有用鉱物の粒径を設定すると、例えば図4に示すようなMLA解析結果が得られ、図2で示す結果とは異なり、有用鉱物の粒径サイズが小さくなる結果が得られることになる。
したがって、図4のMLA解析結果からすると、選鉱処理条件としては50μm程度以下の粒子を回収可能な条件に調整することで、従来のように、不用鉱物である鉱物11~鉱物14が精鉱産物に含まれてしまう選鉱処理となることを防ぐことができる。つまり、選鉱処理に先立って行う選鉱試験の解析結果の信頼性を向上させることができる。
ここで、MLA解析においては、例えば図3に示すような片刃鉱物粒子1の観察結果として、全体のサイズ(片刃鉱物粒子1の粒径)のみならず、片刃鉱物粒子1を構成する単一鉱物(鉱物11~鉱物15)の個々の粒子サイズについて測定し、保管している。そして、解析方法として、全体サイズである片刃鉱物粒子1の粒径や、鉱物11~鉱物15の個々の鉱物粒子の粒径を選択できるようになっている。このため、新たなデータを取得する必要は無い。
[条件設定工程]
条件設定工程は、解析工程を経て得られた解析データに基づいて選鉱処理の条件を設定する工程である。
条件設定工程は、解析工程を経て得られた解析データに基づいて選鉱処理の条件を設定する工程である。
上述したように、解析工程において、例えば図3に示すMLA解析結果が得られたとすると、選鉱試験で回収された尾鉱のうち50μm程度以下の範囲において有用鉱物が含まれるという解析となった場合には、本選鉱処理工程での選鉱処理条件として、50μm程度以下の粒子を効果的に回収するように調整する。つまり、当該サイズの有用鉱物が浮遊しやすくなるように選鉱処理条件を調整すればよいということになる。これにより、本選鉱処理工程での選鉱処理により、有用鉱物を精鉱側の産物として適切にかつ高い回収率で回収することができる。
条件設定の具体的な方法としては、特に限定されず、解析工程で得られた解析データに基づいて、浮選剤の選定や、起泡剤の選定、気泡粒径の調整等を行うことができる。
[本選鉱処理工程]
本選鉱処理工程では、条件設定工程にて設定した選鉱処理条件に基づいて、本選鉱処理を行う工程である。
本選鉱処理工程では、条件設定工程にて設定した選鉱処理条件に基づいて、本選鉱処理を行う工程である。
選鉱処理については、特に限定されないが、選鉱試験と同様に、図1のフローに示すように多段の操作により、各処理段から尾鉱(尾鉱産物)と精鉱(精鉱産物)とを得る。
本発明に係る選鉱処理方法によれば、解析工程における選鉱試験の解析結果の信頼性を向上させることができ、その解析結果に基づいて選鉱処理条件を設定しているため、有用鉱物をより選択的に精鉱側に分離して回収することができる。
≪3.解析工程における解析の変形例について≫
上述したように、本発明に係る選鉱処理方法では、解析工程において、選鉱試験で回収された尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径を、その片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得する。そして、条件設定工程では、その粒度分布データに基づき選鉱処理の条件を設定する。このような方法を適用することで、MLA解析の信頼性を向上させることができる。
上述したように、本発明に係る選鉱処理方法では、解析工程において、選鉱試験で回収された尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径を、その片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得する。そして、条件設定工程では、その粒度分布データに基づき選鉱処理の条件を設定する。このような方法を適用することで、MLA解析の信頼性を向上させることができる。
ここで、選鉱処理方法では、解析工程における解析の手法として、従来の解析手法と組み合わせた手法を行うこともできる。なお、従来の解析手法とは、選鉱試験を経て回収された尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子の粒径(全体のサイズ)を、その片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒子サイズとして、尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得するというものである。
具体的には、図4に例示した本発明に係る選鉱処理方法における解析工程での手法に基づく粒度分布データ(第1データ)を取得するとともに、例えば図2に例示したように従来の解析手法に基づく粒度分布データ(第2データ)を併せて取得する。そして、取得した第1データと第2データとを組み合わせた解析を行う。すると、図5(A)に示すような粒度分布データの比較を行うことができる。なお、図5(A)中の[a]が従来の解析手法による粒度分布データであり、[b]が本発明に係る方法における解析手法による粒度分布データである。図5(A)に示す比較から明らかなように、尾鉱中の有用鉱物の粒度分布に差があることを判断でき、片刃鉱物粒子に含まれる有用鉱物のほとんどの粒径が片刃鉱物粒子に対して細粒であることを、視覚的にも把握することができる。
また、図5(B)は、別の尾鉱を解析対象としてMLA解析を行ったものであり、[a]が従来の解析手法による粒度分布データであり、[b]が本発明に係る方法における解析手法による粒度分布データである。図5(B)に示す両者の粒度分布データからは、その解析結果に大きな差が認められないことがわかる。このような結果から、片刃鉱物粒子に含まれる有用鉱物のほとんどの粒径が、その片刃鉱物全体の粒径と大差ないということを、視覚的に把握することができる。
このように、従来の解析手法と組み合わせた手法を組み合わせ、それぞれの手法で得られた粒度分布データを比較した結果から、より精度を高めた解析結果を得ることができる。そして、これにより、選鉱処理条件の設定の精度をより一層高めることができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
30~150μm程度の粒度分布を有する銅精鉱を処理対象として浮遊選鉱による選鉱処理を行った。
30~150μm程度の粒度分布を有する銅精鉱を処理対象として浮遊選鉱による選鉱処理を行った。
具体的には、まず、試験処理工程として、処理対象である鉱石の一部に対して、任意の処理条件を設定して浮遊選鉱の試験処理を行った(図1参照)。
次に、解析工程として、試験処理における1段目の分離処理を経て得られた尾鉱(CLT1)を回収して、MLA装置を用いた解析を行った。図3がMLAによる観察された、尾鉱中に含まれる片刃鉱物粒子の模式図であり、その片刃鉱物粒子(粒径:約100μm)は、5種類の単一鉱物(図3中の鉱物11~鉱物15)が結合して構成されていた。また、そのうちの鉱物15が、有用鉱物であることがわかっている。
ここで、解析工程では、尾鉱中の鉱物粒子の粒度分布データを取得するに際して、尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する単一鉱物である鉱物15の粒径(約10μm)を、その片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して粒度分布データを取得した。図4が、MLA解析の結果として得られた粒度分布データである。図4のグラフから、尾鉱を構成する鉱物粒子のうち、50μm未満の粒子中にのみ有用鉱物が含まれていることがわかった。
次に、条件設定工程では、次工程の本選鉱処理工程での選鉱処理条件を、解析工程で取得した粒度分布データに基づいて設定した。
次に、本選鉱処理工程では、条件設定工程にて設定した処理条件に基づいて、処理対象の銅精鉱に水を添加して得られた鉱石スラりーに対して選鉱処理を行った(図1参照)。なお、スラリー濃度は50質量%とし、温度20℃、pH8.0とした。
このような選鉱処理によって精鉱と尾鉱に分離し、その尾鉱に含まれる有用鉱物と不用鉱物の割合を測定し、有用鉱物のロス率を算出した。下記表1に結果を示す。なお、有用鉱物のロス率は、給鉱質量に対する尾鉱中の有用鉱物質量の割合として算出した。
[比較例1]
比較例1では、実施例1で用いた処理対象と同じものを用いて選鉱処理を行ったが、解析工程では、従来同様に、尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子の粒径(約100μm)を、片刃鉱物粒子を構成する有用鉱物である鉱物15の粒子サイズとして、尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得した。図2が、MLA解析の結果として得られた粒度分布データである。そして、解析工程で取得した粒度分布データに基づいて選鉱処理条件を設定し、設定した処理条件により本選鉱処理を行った。
比較例1では、実施例1で用いた処理対象と同じものを用いて選鉱処理を行ったが、解析工程では、従来同様に、尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子の粒径(約100μm)を、片刃鉱物粒子を構成する有用鉱物である鉱物15の粒子サイズとして、尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得した。図2が、MLA解析の結果として得られた粒度分布データである。そして、解析工程で取得した粒度分布データに基づいて選鉱処理条件を設定し、設定した処理条件により本選鉱処理を行った。
このような選鉱処理によって精鉱を回収し、実施例1と同様に、精鉱に含まれる有用鉱物と不用鉱物の割合を測定し、有用鉱物の回収率を算出した。下記表1に結果を示す。
表1に示す結果からわかるように、実施例1では比較例1と比べて、有用鉱物のロス率が低減し、したがって精鉱に回収される有用鉱物量が増加した。このことは、実施例1の選鉱処理方法において、選鉱試験で得られた尾鉱に対するMLA解析の信頼性が向上し、その解析結果に基づいて本選鉱処理の処理条件を設定したことから、処理条件がより適切なものとなったことによると考えられる。
Claims (3)
- 鉱石に対する選鉱処理によって精鉱と尾鉱とを分離する方法であって、
処理条件を設定するための試験としての選鉱処理を行う試験処理工程と、
前記試験により回収される尾鉱に対してMLA装置を用いた解析を行う解析工程と、
前記解析によるデータに基づいて選鉱処理の条件を設定する条件設定工程と、
設定した条件に基づいて選鉱処理を行う本選鉱処理工程と、
を有し、
前記解析工程では、前記尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒径を該片刃鉱物粒子の粒子サイズと見做して、該尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データを取得し、
前記条件設定工程では、前記粒度分布データに基づいて選鉱処理の条件を設定する、
選鉱処理方法。 - 前記解析工程にて取得される前記粒度分布データを第1データとするとき、
前記解析工程では、さらに、
前記尾鉱に含まれる片刃鉱物粒子の粒径を、該片刃鉱物粒子を構成する任意の単一鉱物の粒子サイズとしたときの、該尾鉱を構成する鉱物粒子の粒度分布データ(第2データ)を併せて取得し、
前記条件設定工程では、前記第1データと前記第2データとを比較し、その比較結果を含めて選鉱処理の条件を設定する、
請求項1に記載の選鉱処理方法。 - 前記選鉱処理では、浮遊選鉱の処理を行う、
請求項1又は2に記載の選鉱処理方法。
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