JP2022126062A - 開閉チャックおよびそのフィンガの製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】フィンガに作用する荷重および３次元の様々な軸回りのモーメントによってフィンガに生じる応力集中を緩和することで、ワークの把持力を高めるとともにフィンガの支持位置からより離れた位置でワークを把持することを可能とした開閉チャックおよびそのフィンガの製造方法を提供する。【解決手段】フィンガ１４は、本体部２０から側方に突出する一対の張出部１６、１８を有し、張出部の外周面は、上面１６ａ、１８ａ、側面１６ｂ、１８ｂ、下面１６ｃ、１８ｃ、第１端面１６ｄ、１８ｄおよび第２端面１６ｅ、１８ｅの５つの面からなり、これらの面同士の交差部にクラウニングが施されている。【選択図】図４

Description

本発明は、ワークを把持するための一対のフィンガを備えた開閉チャックおよびそのフィンガの製造方法に関する。

従来から、ワークを把持するための一対のフィンガを相互に接近および離間する方向にスライド自在に支持した開閉チャックが知られている。例えば、特許文献１には、ハウジングに移動可能にガイドされる二つのベースジョーを互いに接近または離間せしめる楔形フック伝動部を設け、楔形フック伝動部をピストンによって調整するパラレルグリッパが記載されている。

また、特許文献２には、一対のスライドを備えたグリップ装置において、各スライドのガイドフランクにランプを設けることによって、スライドの端面に向かって拡がるウエッジギャップを形成することが記載されている。

特表２００３－５２６５２８号公報 欧州特許出願公開第３５６３９８９号明細書

スライド自在に支持された一対のフィンガを利用してワークを把持するとき、フィンガには、ワークからの反力により、所定方向（垂直方向または横方向）の荷重が作用するほか、フィンガを３次元の様々な軸回りで回転させようとするモーメントが作用する。フィンガに作用する荷重やモーメントは、ワークの把持力を高くするほど大きくなる。また、フィンガに作用するモーメントは、フィンガから延長して設けられる把持部材（アタッチメント）におけるワークの把持位置と、フィンガの支持位置との距離が長くなるほど、大きくなる。フィンガに作用する荷重やモーメントが大きいと、フィンガとボデイの接触面に応力集中が生じて過大な面圧が発生し、フィンガおよびボデイ摺動面が損傷する。

然るに、上記フィンガおよびボデイに生じる応力集中について配慮がなされた技術は、まだ十分に開発されていない。特許文献２に記載された技術は、一対のスライドの対向する端部が角度をもって開くように回転しようとする際に生じる応力集中を緩和し、過大な面圧を防ぐにはある程度有効であるが、３次元の様々な軸回りのモーメントがスライドに作用することは考慮されていない。

本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、フィンガに作用する垂直方向等の荷重および３次元の様々な軸回りのモーメントによってフィンガとボデイの接触面に生じる応力集中を緩和することで、ワークの把持力を高めるとともにフィンガの支持位置からより離れた位置でワークを把持することを可能とした開閉チャックおよびそのフィンガの製造方法を提供することを目的とする。

本発明に係る開閉チャックは、ボデイのガイド溝内を摺動し、相互に接近および離間する方向にスライド自在に支持される一対のフィンガを含み、フィンガは、本体部から側方に突出する一対の張出部を有し、張出部の外周面は、上面、側面、下面、第１端面および第２端面の５つの面からなり、これらの面同士の交差部にクラウニングが施されている。

上記開閉チャックによれば、フィンガに作用する垂直方向等の荷重および３軸回りのモーメントによってフィンガに生じる応力集中を緩和し、最大面圧を下げることができる。

また、本発明に係るフィンガの第１の製造方法は、開閉チャックのボデイのガイド溝内を摺動し、相互に接近および離間する方向にスライド自在に支持され、本体部から側方に突出する一対の張出部を有し、張出部の外周面は、上面、側面、下面、第１端面および第２端面の５つの面からなり、上面および下面は側面と垂直であるフィンガに関するものであって、第１加工具による側面に対する研削と、第２加工具による上面および下面に対する研削とを組み合わせることで、上記５つの面同士の交差部にクラウニングを施す工程を含む。

また、本発明に係るフィンガの第２の製造方法は、開閉チャックのボデイのガイド溝内を摺動し、相互に接近および離間する方向にスライド自在に支持され、本体部から側方に突出する一対の張出部を有し、張出部の外周面は、上面、側面、下面、第１端面および第２端面の５つの面からなり、上面および下面は側面に向かうほど互いに近接するテーパ面となっているフィンガに関するものであって、単一の加工具を用いて、側面に対する研削と、上面および下面に対する研削とを同時に行い、それにより、上記５つの面同士の交差部にクラウニングを施す工程を含む。

上記第１の製造方法および第２の製造方法によれば、フィンガに作用する垂直方向等の荷重および３軸回りのモーメントによってフィンガおよびボデイに生じる応力集中を緩和するためのクラウニング加工を少ない工程で容易に行うことができる。

本発明に係る開閉チャックは、フィンガの張出部の外周面を構成する上面、側面、下面、第１端面および第２端面の５つの面同士の交差部にクラウニングが施されたものであるので、フィンガに３軸回りのモーメントや垂直荷重が作用したときの応力集中を緩和することができる。

また、本発明に係るフィンガの第１の製造方法は、第１加工具による張出部の側面に対する研削と、第２加工具による張出部の上面および下面に対する研削を組み合わせることで、張出部の５つの面同士の交差部にクラウニングを施すものであるから、クラウニング加工を少ない工程で容易に行うことができる。

また、本発明に係るフィンガの第２の製造方法は、単一の加工具を用いて、張出部の側面に対する研削と、張出部の上面および下面に対する研削とを同時に行い、張出部の５つの面同士の交差部にクラウニングを施すものであるから、クラウニング加工をさらに少ない工程で容易に行うことができる。

本発明の第１実施形態に係る開閉チャックの外観斜視図である。 図１の開閉チャックのＩＩ－ＩＩ線に沿った断面図である。 図１の開閉チャックの正面図である。 図１の開閉チャックのフィンガの外観斜視図である。 図３のＶ－Ｖ線に沿うフィンガおよびボデイの断面の一部を示す図である。 図６Ａは、図３のＡ部拡大図であり、図６Ｂは、図３のＢ部拡大図である。 図４のフィンガにクラウニングを施す方法を模式的に示した図である。 図４のフィンガにクラウニングを施す際に第１加工具を移動させる経路を模式的に示した図である。 図４のフィンガにクラウニングを施す際に第２加工具を移動させる経路を模式的に示した図である。 本発明の第２実施形態に係る開閉チャックの正面図である。 図１１Ａは図１０のＣ部拡大図であり、図１１Ｂは図１０のＤ部拡大図である。 図１０の開閉チャックのフィンガにクラウニングを施す方法を模式的に示した図である。 図１０の開閉チャックのフィンガにクラウニングを施す際に第３加工具を移動させる経路を模式的に示した図である。 本発明の第３実施形態に係る開閉チャックのフィンガの斜視図である。 図１４のフィンガにクラウニングを施す際に第３加工具を移動させる経路を模式的に示した図である。

本発明に係る開閉チャックおよびそのフィンガの製造方法について、複数の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向に関する言葉を用いたときは、便宜上、図面上での方向をいうものであって、各部材の実際の配置等を限定するものではない。

（第１実施形態）
本発明の第１実施形態に係る開閉チャック１０について、図１～図６を参照しながら説明する。図１および図２に示すように、開閉チャック１０は、直方体状のボデイ１２と、ボデイ１２の長手方向（Ｘ方向）にスライド自在に支持される一対のフィンガ１４を含む。開閉チャック１０は、ワークを把持するための図示しないアタッチメントがフィンガ１４に接続されて使用される。参照符号１４ａで示されるのは、アタッチメント接続用のねじ孔である。

ボデイ１２の長手方向中央下部にはシリンダ室２４が設けられ、シリンダ室２４よりも上方の部位には、ボデイ１２の長手方向に延在し両端がボデイ１２の端面に開口するガイド溝２２が設けられている。シリンダ室２４には、上下方向（Ｚ方向）に摺動可能なピストン２６が配設されている。シリンダ室２４は、ピストン２６の下側に形成される第１圧力室２４ａとピストン２６の上側に形成される第２圧力室２４ｂとに区画される。第１圧力室２４ａは、キャップ３０によって閉塞される。

ボルト３２によってピストン２６に連結されたピストンロッド２８が第２圧力室２４ｂを通ってさらに上方に延びている。ピストンロッド２８の上部は、ガイド溝２２内に臨み、フィンガ１４を駆動するための公知の構造を有するカム部２８ａとなっている。第１圧力室２４ａにエアが供給されるとともに第２圧力室２４ｂのエアが排出されると、ピストン２６およびピストンロッド２８が上方に移動し、一対のフィンガ１４は互いに離間する方向にスライドする。また、第２圧力室２４ｂにエアが供給されるとともに第１圧力室２４ａのエアが排出されると、ピストン２６およびピストンロッド２８が下方に移動し、一対のフィンガ１４は互いに近接する方向にスライドする。

図３および図４に示すように、各フィンガ１４は、断面逆Ｔ字状の部材で、フィンガ１４の長手方向（Ｘ方向）全長に亘って本体部２０から側方に突出する一対の張出部１６、１８を有する。ボデイ１２のガイド溝２２は、フィンガ１４の断面形状に倣った逆Ｔ字状の断面形状を有する。フィンガ１４は、ボデイ１２のガイド溝２２内を摺動しながらスライド移動する。

フィンガ１４の摺動を可能にするため、各張出部１６、１８の上面１６ａ、１８ａ、側面１６ｂ、１８ｂおよび下面１６ｃ、１８ｃは、微小な隙間を隔ててガイド溝２２の壁面と対向している。本体部２０の側面２０ａ、２０ｂとガイド溝２２の壁面との間には、これよりも大きな隙間が存在する。

本体部２０の底面２０ｃは、張出部１６、１８の下面１６ｃ、１８ｃと略面一となっている。本体部２０の底面２０ｃと対向するガイド溝２２の壁面と、張出部１６、１８の下面１６ｃ、１８ｃと対向するガイド溝２２の壁面との間には、段差部２２ａが設けられている（図６Ｂ参照）。

フィンガ１４の各張出部１６、１８の外周面は、上面１６ａ、１８ａ、側面１６ｂ、１８ｂ、下面１６ｃ、１８ｃ、第１端面（Ｘ１方向の端面）１６ｄ、１８ｄおよび第２端面（Ｘ２方向の端面）１６ｅ、１８ｅの５つの面からなる。各張出部１６、１８の上面１６ａ、１８ａおよび下面１６ｃ、１８ｃは、本体部２０の側面２０ａ、２０ｂと垂直であり、かつ、張出部１６、１８の側面１６ｂ、１８ｂと垂直である。

上記５つの面同士の交差部には、クラウニングが施されている。具体的には、上面１６ａ、１８ａと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部、側面１６ｂ、１８ｂと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部、および、下面１６ｃ、１８ｃと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部にクラウニングが施されている。同様に、上面１６ａ、１８ａと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部、側面１６ｂ、１８ｂと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部、および、下面１６ｃ、１８ｃと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部にクラウニングが施されている。また、上面１６ａ、１８ａと側面１６ｂ、１８ｂとの交差部、および下面１６ｃ、１８ｃと側面１６ｂ、１８ｂとの交差部にもクラウニングが施されている。

これらのクラウニングは、フィンガ１４の張出部１６、１８とガイド溝２２の壁面との間に、両者の接触部から連続して緩やかに広がる隙間が形成されるようにしたものである。ここで、「両者の接触部から連続して緩やかに広がる隙間が形成されるようにした」の意味について補足する（本明細書中の他の同一記載の箇所も同様）。フィンガがボデイに強い圧力で接触するとき、フィンガおよびボデイの一方または両方が弾性変形し、両者が接触する領域と接触しない領域との境界が移動する。クラウニングは、この境界の始点から想定し得る終点までを含む領域に施され、その全領域で、緩やかな曲線を描くように形成される。すなわち、フィンガがボデイに接触する領域に角（カド）となる箇所を発生させないようにするのである。図５には、張出部１６の下面１６ｃと第１端面１６ｄとの交差部に施されたクラウニングが示されている。図６Ａには、張出部１６の上面１６ａと側面１６ｂとの交差部に施されたクラウニングが示されている。図６Ｂには、張出部１６の下面１６ｃと側面１６ｂとの交差部に施されたクラウニングが示されている。

また、ボデイ１２のガイド溝２２には、張出部１６、１８の上面１６ａ、１８ａと向き合う壁面と、本体部２０の側面２０ａ、２０ｂと向き合う壁面との交差部にクラウニングが施されているほか、段差部２２ａが張出部１６、１８の下面１６ｃ、１８ｃと向き合う箇所にもクラウニングが施されている。

これらのクラウニングも、フィンガ１４の張出部１６、１８とガイド溝２２の壁面との間に、両者の接触部から連続して緩やかに広がる隙間が形成されるようにしたものである。図６Ａには、張出部１６の上面１６ａと向き合うガイド溝２２の壁面と、本体部２０の側面２０ａと向き合うガイド溝２２の壁面との交差部に施されたクラウニングが示されている。図６Ｂには、段差部２２ａが張出部１６の下面１６ｃと向き合う箇所に施されたクラウニングが示されている。

開閉チャック１０を用いてワークを把持するとき、フィンガ１４には、ピッチモーメント（Ｙ軸回りのモーメント）が作用するほか、垂直方向（Ｚ方向）の荷重、横方向（Ｙ方向）の荷重、ロールモーメント（Ｘ軸回りのモーメント）、ヨーモーメント（Ｚ軸回りのモーメント）が作用することがある。

上面１６ａ、１８ａと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部、下面１６ｃ、１８ｃと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部、上面１６ａ、１８ａと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部、および、下面１６ｃ、１８ｃと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部に施されたクラウニングは、主にフィンガ１４にピッチモーメントが作用したときの応力集中を緩和する。これらのクラウニングの曲率半径をＲ１とすると、張出部１６、１８の長手方向（Ｘ方向）の長さをＬとして、Ｒ１／Ｌの値が０．１～２７の範囲にあるのが好ましい。

上面１６ａ、１８ａと側面１６ｂ、１８ｂとの交差部、および、下面１６ｃ、１８ｃと側面１６ｂ、１８ｂとの交差部に施されたクラウニングは、主にフィンガ１４にロールモーメントが作用したときの応力集中を緩和する。これらのクラウニングの曲率半径をＲ２とすると、張出部１６、１８の幅方向（Ｙ方向）の長さをＷとして、Ｒ２／Ｗの値が０．１～２７の範囲にあるのが好ましい。ボデイ１２のガイド溝２２に施されたクラウニングも、フィンガ１４にロールモーメントが作用したときの応力集中を緩和する。

側面１６ｂ、１８ｂと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部、および、側面１６ｂ、１８ｂと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部に施されたクラウニングは、主にフィンガ１４にヨーモーメントが作用したときの応力集中を緩和する。これらのクラウニングの曲率半径をＲ３とすると、張出部１６、１８の長手方向の長さをＬとして、Ｒ３／Ｌの値が０．１～２７の範囲にあるのが好ましい。

下面１６ｃ、１８ｃと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部、下面１６ｃ、１８ｃと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部、および、下面１６ｃ、１８ｃと側面１６ｂ、１８ｂとの交差部に施されたクラウニングは、フィンガ１４に垂直方向の荷重が作用したときの応力集中を緩和する。ボデイ１２のガイド溝２２に施されたクラウニングのうち、段差部２２ａが張出部１６、１８の下面１６ｃ、１８ｃと向き合う箇所に施されたクラウニングも、フィンガ１４に垂直方向の荷重が作用したときの応力集中を緩和する。

側面１６ｂ、１８ｂと第１端面１６ｄ、１８ｄとの交差部、側面１６ｂ、１８ｂと第２端面１６ｅ、１８ｅとの交差部、上面１６ａ、１８ａと側面１６ｂ、１８ｂとの交差部、および、下面１６ｃ、１８ｃと側面１６ｂ、１８ｂとの交差部に施されたクラウニングは、フィンガ１４に横方向の荷重が作用したときの応力集中を緩和する。

本実施形態に係る開閉チャック１０によれば、フィンガ１４の張出部１６、１８の外周面を構成する上面１６ａ、１８ａ、側面１６ｂ、１８ｂ、下面１６ｃ、１８ｃ、第１端面１６ｄ、１８ｄおよび第２端面１６ｅ、１８ｅの５つの面同士の交差部にクラウニングが施され、また、ボデイ１２のガイド溝２２における所定の箇所にクラウニングが施されているので、フィンガ１４に３軸回りのモーメントや垂直荷重が作用したときの応力集中を緩和することができる。

次に、開閉チャック１０のフィンガ１４の製造方法について、具体的には、フィンガ１４に上記クラウニングを施す方法（クラウニング加工）について、図７～図９を参照しながら説明する。

このクラウニング加工は、一対の張出部１６、１８の側面１６ｂ、１８ｂに対する研削と、一対の張出部１６、１８の上面１６ａ、１８ａおよび下面１６ｃ、１８ｃに対する研削とを組み合わせることで、前述したすべてのクラウニングを施すことができるものである。一対の張出部１６、１８の側面１６ｂ、１８ｂに対する研削は、砥石またはエンドミルからなる第１加工具３４を用いて行い、一対の張出部１６、１８の上面１６ａ、１８ａおよび下面１６ｃ、１８ｃに対する研削は、砥石またはエンドミルからなる第２加工具３６を用いて行う。

図７に示すように、回転体である第１加工具３４は、被加工物と接触する表面の形状が目的とする張出部１６、１８の側面１６ｂ、１８ｂの形状と一致するように作られたものであり、両端にクラウニング加工部３４ａを有する。第１加工具３４は、その軸線がＺ方向を向くように配置され、該軸線回りに回転駆動させることができる。また、第１加工具３４は、Ｘ方向およびＹ方向に自在に移動させることができる。なお、図７では、便宜上、クラウニング加工後の形状を有するフィンガ１４が示されている。

同じく回転体である第２加工具３６は、被加工物と接触する表面の形状が目的とする張出部１６、１８の上面１６ａ、１８ａおよび下面１６ｃ、１８ｃの形状と一致するように作られたものであり、一端にクラウニング加工部３６ａを有する。第２加工具３６は、その軸線がＹ方向を向くように配置され、該軸線回りに回転駆動させることができる。また、第２加工具３６は、Ｘ方向およびＺ方向に自在に移動させることができる。

クラウニング加工に際しては、まず、一対の張出部１６、１８を上に向けた姿勢でフィンガ１４をクランプ台３８に固定する。このとき、第１加工具３４は、一方の張出部１６の側面１６ｂの長手方向（Ｘ方向）の途中で該側面１６ｂと所定距離隔てた退避位置にあるものとし、第２加工具３６は、他方の張出部１８の下面１８ｃの長手方向（Ｘ方向）の途中で該下面１８ｃと所定距離隔てた退避位置にあるものとする。

次に、第１加工具３４をその軸線回りに回転させながら、Ｙ２方向に移動させて一方の張出部１６の側面１６ｂに近づけ、所定の圧力で該側面１６ｂに接触させる。これにより、第１加工具３４が接触した部位における一方の張出部１６の側面１６ｂが研削される。一方の張出部１６の側面１６ｂ全体および他方の張出部１８の側面１８ｂ全体に亘ってこの研削を行うため、これらの外側を周回するようにして第１加工具３４を移動させる。

具体的には、図８に模式的に示すように、一方の張出部１６の側面１６ｂに沿って第１端面１６ｄ近傍までＸ１方向に移動させた後、フィンガ１４から距離をとりながら他方の張出部１８の側面１８ｂ近傍までＹ２方向に移動させ、さらに、他方の張出部１８の側面１８ｂに沿って第２端面１８ｅ近傍までＸ２方向に移動させる。次いで、フィンガ１４から距離をとりながら一方の張出部１６の側面１６ｂ近傍までＹ１方向に移動させた後、一方の張出部１６の側面１６ｂに沿って元の位置に戻るまでＸ１方向に移動させる。

上記第１加工具３４の移動に際し、一方の張出部１６について側面１６ｂと第１端面１６ｄとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第１加工具３４のＸ１方向移動量およびＹ２方向移動量を制御して追い込みながら研削し、他方の張出部１８について側面１８ｂと第１端面１８ｄとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第１加工具３４のＸ２方向移動量およびＹ２方向移動量を制御して追い込みながら研削する。同様に、他方の張出部１８について側面１８ｂと第２端面１８ｅとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第１加工具３４のＸ２方向移動量およびＹ１方向移動量を制御して追い込みながら研削し、一方の張出部１６について側面１６ｂと第２端面１６ｅとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第１加工具３４のＸ１方向移動量およびＹ１方向移動量を制御して追い込みながら研削する。

第１加工具３４を１周させることで、一対の張出部１６、１８の側面１６ｂ、１８ｂに対する研削が完了すると、第１加工具３４の回転を止め、第１加工具３４を一方の張出部１６の側面１６ｂから離間させ退避させる。

次に、第２加工具３６をその軸線回りに回転させながら、Ｚ１方向に移動させて他方の張出部１８の下面１８ｃに近づけ、所定の圧力で該下面１８ｃに接触させる。これにより、第２加工具３６が接触した部位における他方の張出部１８の下面１８ｃが研削される。他方の張出部１８の下面１８ｃ全体および上面１８ａ全体に亘ってこの研削を行うため、これらの外側を周回するようにして第２加工具３６を移動させる。

具体的には、図９に模式的に示すように、他方の張出部１８の下面１８ｃに沿って第１端面１８ｄ近傍までＸ１方向に移動させた後、フィンガ１４から距離をとりながら上面１８ａ近傍までＺ１方向に移動させ、さらに、上面１８ａに沿って第２端面１８ｅ近傍までＸ２方向に移動させる。次いで、フィンガ１４から距離をとりながら下面１８ｃ近傍までＺ２方向に移動させた後、下面１８ｃに沿って元の位置に戻るまでＸ１方向に移動させる。

上記第２加工具３６の移動に際し、下面１８ｃと第１端面１８ｄとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第２加工具３６のＸ１方向移動量およびＺ１方向移動量を制御して追い込みながら研削し、上面１８ａと第１端面１８ｄとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第２加工具３６のＸ２方向移動量およびＺ１方向移動量を制御して追い込みながら研削する。また、上面１８ａと第２端面１８ｅとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第２加工具３６のＸ２方向移動量およびＺ２方向移動量を制御して追い込みながら研削し、下面１８ｃと第２端面１８ｅとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第２加工具３６のＸ１方向移動量およびＺ２方向移動量を制御して追い込みながら研削する。

第２加工具３６を他方の張出部１８の周りに１周させることで、他方の張出部１８の上面１８ａおよび下面１８ｃに対する研削が完了すると、第２加工具３６の回転を止め、第２加工具３６を他方の張出部１８の下面１８ｃから離間させ、一旦退避させる。

次に、第２加工具３６が一方の張出部１６の下面１６ｃと対向する位置となるように、クランプ台３８を水平面内で１８０度回転させる。そして、第２加工具３６を再びその軸線回りに回転させながら、Ｚ１方向に移動させて一方の張出部１６の下面１６ｃに近づけ、所定の圧力で該下面１６ｃに接触させる。これにより、第２加工具３６が接触した部位における一方の張出部１６の下面１６ｃが研削される。一方の張出部１６の上面１６ａ全体および下面１６ｃ全体に亘ってこの研削を行うため、これらの外側を周回するようにして第２加工具３６を移動させる。

具体的には、一方の張出部１６の下面１６ｃに沿って第２端面１６ｅ近傍までＸ２方向に移動させた後、フィンガ１４から距離をとりながら上面１６ａ近傍までＺ１方向に移動させ、さらに、上面１６ａに沿って第１端面１６ｄ近傍までＸ１方向に移動させる。次いで、フィンガ１４から距離をとりながら下面１６ｃ近傍までＺ２方向に移動させた後、下面１６ｃに沿って元の位置に戻るまでＸ２方向に移動させる。

上記第２加工具３６の移動に際し、下面１６ｃと第２端面１６ｅとの交差部、上面１６ａと第２端面１６ｅとの交差部、上面１６ａと第１端面１６ｄとの交差部、および、下面１６ｃと第１端面１６ｄとの交差部では、他方の張出部１８の場合と同様に、Ｘ方向移動量およびＺ方向移動量を制御する。

第２加工具３６を一方の張出部１６の周りに１周させることで、一方の張出部１６の上面１６ａおよび下面１６ｃに対する研削が完了すると、第２加工具３６の回転を止め、第２加工具３６を一方の張出部１６の下面１６ｃから離間・退避させる。以上の工程により、フィンガ１４の一対の張出部１６、１８の外周面を構成する５つの面同士の交差部にクラウニングを施すことができる。

（第２実施形態）
次に、本発明の第２実施形態に係る開閉チャック４０とそのフィンガ４２の製造方法について、図１０～図１３を参照しながら説明する。第２実施形態に係る開閉チャック４０は、フィンガにおける一対の張出部の形状およびボデイに設けられるガイド溝の形状が第１実施形態に係る開閉チャック１０と異なる。

図１０および図１２に示すように、フィンガ４２は、その長手方向全長に亘って本体部４８から側方に突出する一対の台形状の張出部４４、４６を有する。各張出部４４、４６の上面４４ａ、４６ａおよび下面４４ｃ、４６ｃは、側面４４ｂ、４６ｂに向かうほど互いに近接するように傾斜するテーパ面となっている。ボデイ１２のガイド溝５０は、フィンガ４２の断面形状に倣った断面形状を有する。フィンガ４２の摺動を可能とするため、各張出部４４、４６の上面４４ａ、４６ａ、側面４４ｂ、４６ｂおよび下面４４ｃ、４６ｃは、微小な隙間を隔ててガイド溝５０の壁面と対向するとともに、本体部４８の底面４８ｃも微小な隙間を隔ててガイド溝５０の壁面と対向している。

各張出部４４、４６の外周面を構成する上面４４ａ、４６ａ、側面４４ｂ、４６ｂ、下面４４ｃ、４６ｃ、第１端面４４ｄ、４６ｄおよび第２端面４４ｅ、４６ｅの５つの面同士の交差部には、クラウニングが施されている。具体的には、上面４４ａ、４６ａと第１端面４４ｄ、４６ｄとの交差部、側面４４ｂ、４６ｂと第１端面４４ｄ、４６ｄとの交差部、および、下面４４ｃ、４６ｃと第１端面４４ｄ、４６ｄとの交差部にクラウニングが施されている。同様に、上面４４ａ、４６ａと第２端面４４ｅ、４６ｅとの交差部、側面４４ｂ、４６ｂと第２端面４４ｅ、４６ｅとの交差部、および、下面４４ｃ、４６ｃと第２端面４４ｅ、４６ｅとの交差部にクラウニングが施されている。また、上面４４ａ、４６ａと側面４４ｂ、４６ｂとの交差部、および、下面４４ｃ、４６ｃと側面４４ｂ、４６ｂとの交差部にもクラウニングが施されている。

これらのクラウニングは、フィンガ４２の張出部４４、４６とガイド溝５０の壁面との間に、両者の接触部から連続して緩やかに広がる隙間が形成されるようにしたものである。図１１Ａには、張出部４４の上面４４ａと側面４４ｂとの交差部に施されたクラウニングが示されている。図１１Ｂには、張出部４４の下面４４ｃと側面４４ｂとの交差部に施されたクラウニングが示されている。

また、ボデイ１２のガイド溝５０には、張出部４４、４６の上面４４ａ、４６ａと向き合う壁面と、本体部４８の側面４８ａ、４８ｂと向き合う壁面との交差部にクラウニングが施されているほか、段差部５０ａが張出部４４、４６の下面４４ｃ、４６ｃと向き合う箇所にクラウニングが施されている。

これらのクラウニングも、フィンガ４２の張出部４４、４６とガイド溝５０の壁面との間に、両者の接触部から連続して緩やかに広がる隙間が形成されるようにしたものである。図１１Ａには、張出部４４の上面４４ａと向き合うガイド溝５０の壁面と、本体部４８の側面４８ａと向き合うガイド溝５０の壁面との交差部に施されたクラウニングが示されている。図１１Ｂには、段差部５０ａが張出部４４の下面４４ｃと向き合う箇所に施されたクラウニングが示されている。

本実施形態に係る開閉チャック４０によれば、フィンガ４２の張出部４４、４６の外周面を構成する上面４４ａ、４６ａ、側面４４ｂ、４６ｂ、下面４４ｃ、４６ｃ、第１端面４４ｄ、４６ｄおよび第２端面４４ｅ、４６ｅの５つの面同士の交差部にクラウニングが施され、また、ボデイ１２のガイド溝５０における所定の箇所にクラウニングが施されているので、フィンガに３軸回りのモーメントや垂直荷重が作用したときの応力集中を緩和することができる。

次に、フィンガ４２に上記クラウニングを施す方法（クラウニング加工）について、図１２および図１３を参照しながら説明する。このクラウニング加工は、砥石またはエンドミルからなる第３加工具５２（単一の加工具）を用いて、一対の張出部４４、４６の側面４４ｂ、４６ｂに対する研削と、一対の張出部４４、４６の上面４４ａ、４６ａおよび下面４４ｃ、４６ｃに対する研削とを同時に行い、前述したすべてのクラウニングを施すものである。

図１２に示すように、回転体である第３加工具５２は、被加工物と接触する表面の形状が目的とする張出部４４、４６の上面４４ａ、４６ａ、側面４４ｂ、４６ｂおよび下面４４ｃ、４６ｃの形状と一致するように作られたものである。第３加工具５２は、その軸線がＺ方向を向くように配置され、該軸線回りに回転駆動させることができる。また、第３加工具５２は、Ｘ方向およびＹ方向に自在に移動させることができる。

第３加工具５２には、第１クラウニング加工部５２ａおよび第２クラウニング加工部５２ｂが設けられている。第１クラウニング加工部５２ａは、張出部４４、４６の上面４４ａ、４６ａと側面４４ｂ、４６ｂとの交差部にクラウニングを施すためのものであり、第２クラウニング加工部５２ｂは、張出部４４、４６の下面４４ｃ、４６ｃと側面４４ｂ、４６ｂとの交差部にクラウニングを施すためのものである。

クラウニング加工に際しては、まず、一対の張出部４４、４６を上に向けた姿勢でフィンガ４２をクランプ台３８に固定する。このとき、第３加工具５２は、一方の張出部４４の長手方向（Ｘ方向）の途中で該張出部４４と対向する位置にあるものとする。

次に、第３加工具５２をその軸線回りに回転させながら、Ｙ２方向に移動させて一方の張出部４４に近づけ、所定の圧力でその上面４４ａ、側面４４ｂおよび下面４４ｃに接触させる。これにより、第３加工具５２が接触した部位における一方の張出部４４の上面４４ａ、側面４４ｂおよび下面４４ｃが同時に研削される。一方の張出部４４全体および他方の張出部４６全体に亘ってこの研削を行うため、これらの外側を周回するようにして第３加工具５２を移動させる。

具体的には、図１３に模式的に示すように、一方の張出部４４の側面４４ｂ等に沿って第１端面４４ｄ近傍までＸ１方向に移動させた後、フィンガ４２から距離をとりながら他方の張出部４６の側面４６ｂ近傍までＹ２方向に移動させ、さらに、他方の張出部４６の側面４６ｂ等に沿って第２端面４６ｅ近傍までＸ２方向に移動させる。次いで、フィンガ４２から距離をとりながら一方の張出部４４の側面４４ｂ近傍までＹ１方向に移動させた後、一方の張出部４４の側面４４ｂ等に沿って元の位置に戻るまでＸ１方向に移動させる。

上記第３加工具５２の移動に際し、一方の張出部４４について、上面４４ａと第１端面４４ｄとの交差部、側面４４ｂと第１端面４４ｄとの交差部、および、下面４４ｃと第１端面４４ｄとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第３加工具５２のＸ１方向移動量およびＹ２方向移動量を制御して追い込みながら研削し、他方の張出部４６について、上面４６ａと第１端面４６ｄとの交差部、側面４６ｂと第１端面４６ｄとの交差部、および、下面４６ｃと第１端面４６ｄとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第３加工具５２のＸ２方向移動量およびＹ２方向移動量を制御して追い込みながら研削する。

また、他方の張出部４６について、上面４６ａと第２端面４６ｅとの交差部、側面４６ｂと第２端面４６ｅとの交差部、および、下面４６ｃと第２端面４６ｅとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第３加工具５２のＸ２方向移動量およびＹ１方向移動量を制御して追い込みながら研削し、一方の張出部４４について、上面４４ａと第２端面４４ｅとの交差部、側面４４ｂと第２端面４４ｅとの交差部、および、下面４４ｃと第２端面４４ｅとの交差部にクラウニングを施すため、該交差部では、第３加工具５２のＸ１方向移動量およびＹ１方向移動量を制御して追い込みながら研削する。

このように、第３加工具５２を１周させるだけで、フィンガ４２の一対の張出部４４、４６の外周面を構成する５つの面同士の交差部にクラウニングを施すことができる。

（第３実施形態）
次に、本発明の第３実施形態に係る開閉チャックのフィンガ６２とその製造方法について、図１４および図１５を参照しながら説明する。第３実施形態に係るフィンガ６２は、各張出部に凹部とグリース溜りが設けられる点が第２実施形態に係る開閉チャックのフィンガ４２と異なる。

図１４に示すように、一方の張出部６４の上面６４ａ、側面６４ｂおよび下面６４ｃの長手方向中央には、凹部７２が設けられるとともに、凹部７２の両端にクラウニング領域ＣＲ１、ＣＲ２が設けられている。そして、上面６４ａに形成された凹部７２の底面に開口するグリース溜り７０が設けられている。他方の張出部６６にも、同様な構成によってグリース溜り７０が設けられている。グリース溜り７０に貯留されるグリースは、各張出部６４、６６の摺動面に供給され、潤滑機能が維持される。

グリース溜り７０は、凹部７２の底面に開口するので、その縁部がガイド溝の壁面に接触して応力集中が発生することはない。また、凹部７２は、クラウニングが施されたクラウニング領域ＣＲ１、ＣＲ２を経て、上面６４ａ、側面６４ｂおよび下面６４ｃにおける摺動面（ガイド溝の壁面と接触する面）に連なるので、凹部７２が設けられることによってガイド溝との間で応力集中が発生することもない。

各張出部６４、６６の外周面を構成する上面６４ａ、６６ａ、側面６４ｂ、６６ｂ、下面６４ｃ、６６ｃ、第１端面６４ｄ、６６ｄおよび第２端面６４ｅ、６６ｅの５つの面同士の交差部には、クラウニングが施されている。また、ボデイ１２のガイド溝には、張出部６４、６６の上面６４ａ、６６ａと向き合う壁面と、本体部６８の側面６８ａ、６８ｂと向き合う壁面との交差部にクラウニングが施されているほか、ガイド溝の段差部が張出部６４、６６の下面６４ｃ、６６ｃと向き合う箇所にクラウニングが施されている。

次に、フィンガ６２に上記クラウニングを施す方法（クラウニング加工）について、図１５を参照しながら説明する。このクラウニング加工は、第２実施形態の場合と同じ第３加工具（単一の加工具）５２を用いて、一対の張出部６４、６６の側面６４ｂ、６６ｂに対する研削と、一対の張出部６４、６６の上面６４ａ、６６ａおよび下面６４ｃ、６６ｃに対する研削とを同時に行い、前述したすべてのクラウニングを施すものである。

第３加工具５２をその軸線回りに回転させながら、一方の張出部６４の長手方向（Ｘ方向）の所定位置において、その上面６４ａ、側面６４ｂおよび下面６４ｃに接触させ、それらを同時に研削する。一方の張出部６４全体および他方の張出部６６全体に亘ってこの研削を行うため、これらの外側を周回するようにして第３加工具５２を移動させる。

上記第３加工具５２の移動に際し、一方の張出部６４における側面６４ｂ等と第１端面６４ｄとの交差部、他方の張出部６６における側面６６ｂ等と第１端面６６ｄとの交差部、他方の張出部６６における側面６６ｂ等と第２端面６６ｅとの交差部、および、一方の張出部６４における側面６４ｂ等と第２端面６４ｅとの交差部では、第２実施形態の場合と同様に、第３加工具５２のＸ方向移動量およびＹ方向移動量を制御して追い込みながら研削する。

また、一方の張出部６４について、クラウニング領域ＣＲ１、ＣＲ２および凹部７２を形成するため、一方の張出部６４の長手方向中央付近では、第３加工具５２のＹ１方向移動量またはＹ２方向移動量を制御して追い込みながら研削する。同様に、他方の張出部６６の長手方向中央付近では、第３加工具５２のＹ１方向移動量またはＹ２方向移動量を制御して追い込みながら研削する。

このように、第３加工具５２を１周させるだけで、一対の張出部６４、６６の外周面を構成する５つの面同士の交差部にクラウニングを施すとともに、一対の張出部６４、６６にクラウニング領域ＣＲ１、ＣＲ２および凹部７２を形成することができる。

本発明に係る開閉チャックおよびそのフィンガの製造方法は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。

１０、４０…開閉チャック １２…ボデイ
１４、４２、６２…フィンガ
１６、１８、４４、４６、６４、６６…張出部
１６ａ、１８ａ、４４ａ、４６ａ、６４ａ、６６ａ…上面
１６ｂ、１８ｂ、４４ｂ、４６ｂ、６４ｂ、６６ｂ…側面
１６ｃ、１８ｃ、４４ｃ、４６ｃ、６４ｃ、６６ｃ…下面
１６ｄ、１８ｄ、４４ｄ、４６ｄ、６４ｄ、６６ｄ…第１端面
１６ｅ、１８ｅ、４４ｅ、４６ｅ、６４ｅ、６６ｅ…第２端面
２０、４８、６８…本体部
２０ａ、２０ｂ、４８ａ、４８ｂ、６８ａ、６８ｂ…本体部の側面
２０ｃ、４８ｃ…本体部の底面
２２、５０…ガイド溝 ２２ａ、５０ａ…段差部
３４…第１加工具 ３６…第２加工具
５２…第３加工具（単一の加工具） ７０…グリース溜り
７２…凹部 ＣＲ１、ＣＲ２…クラウニング領域

Claims (9)

1. ボデイのガイド溝内を摺動し、相互に接近および離間する方向にスライド自在に支持される一対のフィンガを含む開閉チャックであって、
   前記フィンガは、本体部から側方に突出する一対の張出部を有し、前記張出部の外周面は、上面、側面、下面、第１端面および第２端面の５つの面からなり、これらの面同士の交差部にクラウニングが施されている開閉チャック。
2. 請求項１記載の開閉チャックにおいて、
   前記上面および前記下面は、前記側面と垂直である開閉チャック。
3. 請求項１記載の開閉チャックにおいて、
   前記上面および前記下面は、前記側面に向かうほど互いに近接するテーパ面となっている開閉チャック。
4. 請求項１記載の開閉チャックにおいて、
   前記ボデイの前記ガイド溝には、前記上面と向き合う壁面と、前記本体部の側面と向き合う壁面との交差部にクラウニングが施されている開閉チャック。
5. 請求項１記載の開閉チャックにおいて、
   前記ボデイの前記ガイド溝に設けられた段差部が前記下面と向き合う箇所にクラウニングが施されている開閉チャック。
6. 請求項３記載の開閉チャックにおいて、
   前記上面、前記側面および前記下面の長手方向中央には、凹部が設けられるとともに、前記凹部の両端にクラウニング領域が設けられ、前記凹部の底面に開口するグリース溜りが設けられる開閉チャック。
7. 開閉チャックのボデイのガイド溝内を摺動し、相互に接近および離間する方向にスライド自在に支持される一対のフィンガの製造方法であって、
   前記フィンガは、本体部から側方に突出する一対の張出部を有し、前記張出部の外周面は、上面、側面、下面、第１端面および第２端面の５つの面からなり、前記上面および前記下面は、前記側面と垂直であり、
   第１加工具による前記側面に対する研削と、第２加工具による前記上面および前記下面に対する研削とを組み合わせることで、上記５つの面同士の交差部にクラウニングを施す工程を含むフィンガの製造方法。
8. 開閉チャックのボデイのガイド溝内を摺動し、相互に接近および離間する方向にスライド自在に支持されるフィンガの製造方法であって、
   前記フィンガは、本体部から側方に突出する一対の張出部を有し、前記張出部の外周面は、上面、側面、下面、第１端面および第２端面の５つの面からなり、前記上面および前記下面は、前記側面に向かうほど互いに近接するテーパ面となっており、
   単一の加工具を用いて、前記側面に対する研削と、前記上面および前記下面に対する研削とを同時に行い、それにより、上記５つの面同士の交差部にクラウニングを施す工程を含むフィンガの製造方法。
9. 請求項８記載のフィンガの製造方法であって、
   前記上面、前記側面および前記下面の長手方向中央には、凹部が設けられるとともに、前記凹部の両端にクラウニング領域が設けられ、前記凹部の底面に開口するグリース溜りが設けられ、
   前記工程により、前記クラウニング領域のクラウニングが施されるフィンガの製造方法。

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