JP2022121207A - 摩擦撹拌接合装置の制御方法および摩擦撹拌接合装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩擦撹拌接合装置におけるピン部材およびショルダ部材の原点合わせを安全かつ高効率に行えるようにする。【解決手段】ショルダ部材12が当接面(151)に当接している状態でさらにピン部材11を当接面に当接させ、ピン部材11の初期位置から当接面までの距離であるピン移動量(β1-β2)と、ピン部材11の当接に伴いショルダ部材12が後退したときの変位量であるショルダ変位量(α2-α1)とをそれぞれ特定する。ピン移動量が第1範囲に含まれるという第1条件と、ショルダ変位量が第2範囲に含まれるという第2条件とがともに成立した場合には、ピン部材11を当接面から予め定められた戻し量Bx後退させ、さらにその状態におけるピン部材11およびショルダ部材12の各位置を基準に両部材の原点合わせを行う。【選択図】図8

Description

本発明は、摩擦撹拌接合装置におけるピン部材およびショルダ部材の原点合わせを行うための制御方法、および摩擦撹拌接合装置に関する。
航空機、鉄道車両または自動車などの構造物を製造する際に、金属または樹脂等からなる二以上の部材を重ね合わせて接合する作業が必要になる場合がある。この接合の一方法として、摩擦撹拌接合が知られている。摩擦撹拌接合とは、回転するツールをワーク(被接合体)に圧入して塑性流動を生じさせることによりワークを接合する方法である。
下記特許文献1では、摩擦撹拌接合を行うための装置の一例として、軸線回りの回転および当該軸線に沿った進退移動が可能なピン部材と、当該ピン部材の外周側に配置されかつ前記軸線回りの回転および前記軸線に沿った進退移動が可能なショルダ部材とを含むツールを備えた摩擦撹拌接合装置が開示されている。ピン部材およびショルダ部材は、それぞれ回転駆動されつつワークに圧入され、その圧入部に塑性流動を生じさせる。
特開2006-187778号公報
ここで、上述した摩擦撹拌接合装置を用いてワークを接合する場合に、接合部の平滑性を確保するには、ピン部材およびショルダ部材の相対位置管理が重要である。そして、この相対位置管理を正確に行うには、接合作業を行う前に、ピン部材およびショルダ部材の原点を一致させる原点合わせ(ゼロイング)の作業を十分な精度で行っておくことが求められる。この原点合わせの作業は、作業者により手動で行われることがある。この場合、作業者は、例えばピン部材をティーチングモードで動かしながら目視や手の感覚で両部材の先端を一致させ、その状態で両部材の原点を設定する。しかしながら、このような方法による原点合わせは、安全面や作業効率の面で問題があり、改善の余地があった。
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、摩擦撹拌接合装置におけるピン部材およびショルダ部材の原点合わせを安全かつ高効率に行えるようにすることを目的とする。
前記課題を解決するためのものとして、本発明の一局面に係る制御方法は、軸線回りの回転および当該軸線に沿った進退移動を行うピン部材と、当該ピン部材の外周側に配置されかつ前記軸線回りの回転および前記軸線に沿った進退移動を行うショルダ部材とを備え、前記ピン部材および前記ショルダ部材を回転させつつワークに圧入することにより当該ワークを接合する摩擦撹拌接合装置を制御する方法であって、前記ショルダ部材の先端が所定の当接面に当接した状態における当該ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第1ショルダ位置として記憶する第1ステップと、前記ピン部材の前記軸線方向の初期位置を第1ピン位置として記憶する第2ステップと、前記ピン部材を前記当接面に向けて前進させ、前記ピン部材の先端が前記当接面に当接したときの当該ピン部材の前記軸線方向の位置を第2ピン位置として記憶する第3ステップと、前記ピン部材の前記当接面への当接に伴い後退した前記ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第2ショルダ位置として記憶する第4ステップと、前記第1ピン位置と前記第2ピン位置との距離であるピン移動量が予め定められた第1範囲に含まれるという第1条件の成否と、前記第1ショルダ位置と前記第2ショルダ位置との距離であるショルダ変位量が予め定められた第2範囲に含まれるという第2条件の成否とを判定する第5ステップと、前記第1条件および前記第2条件が成立した場合に、前記ピン部材を前記当接面から予め定められた戻し量後退させ、後退後の前記ピン部材および前記ショルダ部材のそれぞれの前記軸線方向の位置を基準に前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行う第6ステップと、少なくとも前記第1条件が非成立であった場合に、前記第1ピン位置よりも前記当接面から遠ざかった再スタート位置まで前記ピン部材を後退させる第7ステップとを含み、前記第7ステップの後は、前記再スタート位置まで後退した前記ピン部材の位置を新たな第1ピン位置として前記第2ステップ以降の手順を再実行するものである。
本発明の他の局面に係る摩擦撹拌接合装置は、軸線回りの回転および当該軸線に沿った進退移動を行うピン部材と、前記ピン部材の外周側に配置されかつ前記軸線回りの回転および前記軸線に沿った進退移動を行うショルダ部材と、前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行うゼロイング制御部と、前記ピン部材および前記ショルダ部材を回転させつつワークに圧入することにより当該ワークを接合する接合制御部と、データを格納する記憶部とを備え、前記ゼロイング制御部は、前記ショルダ部材の先端が所定の当接面に当接した状態における当該ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第1ショルダ位置として前記記憶部に記憶させる第1処理と、前記ピン部材の前記軸線方向の初期位置を第1ピン位置として前記記憶部に記憶させる第2処理と、前記ピン部材を前記当接面に向けて前進させ、前記ピン部材の先端が前記当接面に当接したときの当該ピン部材の前記軸線方向の位置を第2ピン位置として前記記憶部に記憶させる第3処理と、前記ピン部材の前記当接面への当接に伴い後退した前記ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第2ショルダ位置として前記記憶部に記憶させる第4処理と、前記第1ピン位置と前記第2ピン位置との距離であるピン移動量が予め定められた第1範囲に含まれるという第1条件の成否と、前記第1ショルダ位置と前記第2ショルダ位置との距離であるショルダ変位量が予め定められた第2範囲に含まれるという第2条件の成否とを判定する第5処理と、前記第1条件および前記第2条件が成立した場合に、前記ピン部材を前記当接面から予め定められた戻し量後退させ、後退後の前記ピン部材および前記ショルダ部材のそれぞれの前記軸線方向の位置を基準に前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行う第6処理と、少なくとも前記第1条件が非成立であった場合に、前記第1ピン位置よりも前記当接面から遠ざかった再スタート位置まで前記ピン部材を後退させる第7処理とを実行可能であり、前記第7処理の後、前記ゼロイング制御部は、前記再スタート位置まで後退した前記ピン部材の位置を新たな第1ピン位置として前記第2処理以降の処理を再実行する。
本発明によれば、原点合わせの精度を担保しつつ当該原点合わせの効率および安全性を高めることができる。
本発明の一実施形態に係る摩擦撹拌装置が装着されたロボットの、要部拡大図を含む斜視図である。 前記摩擦撹拌接合装置の機械的構成を示す模式的な側面図である。 前記摩擦撹拌接合装置の電気的構成を示すブロック図である。 前記摩擦撹拌接合装置を用いてワークを接合する場合の一つの動作例(ピン先行プロセスによる接合方法)を示す概略図である。 前記摩擦撹拌接合装置を用いてワークを接合する場合の他の動作例(ショルダ先行プロセスによる接合方法)を示す概略図である。 前記摩擦撹拌接合装置におけるピン部材およびショルダ部材の原点合わせのためにコントローラが実行する制御(ゼロイング制御)の前半部を示すフローチャートである。 前記ゼロイング制御の後半部を示すフローチャートである。 前記ゼロイング制御の各段階におけるピン部材およびショルダ部材の状態を示す概略図である。 図6のステップS5でピン部材を下降させるときの速度パターンを示すグラフである。 ピン移動量およびショルダ変位量をパラメータとした条件マップを示す図である。
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態にかかる摩擦撹拌接合装置について詳細に説明する。本実施形態に係る摩擦撹拌装置は、金属、熱可塑性樹脂、もしくは熱可塑性樹脂に繊維強化材が混合された熱可塑性複合材等からなるプレート、フレーム、外装材或いは柱状材等の構造部材を、二つ以上重ね合わせて点接合してなる各種接合体の製造に適用することができる。製造される接合体は、例えば、航空機、鉄道車両または自動車などの構造物の構成部材となる。
[摩擦撹拌装置の適用例]
図1は、本実施形態に係る摩擦撹拌接合装置Mが装着された多関節ロボット5を示す斜視図であり、図2は、摩擦撹拌接合装置Mの構成を示す模式的な側面図である。なお、図1には「上」「下」の方向表示を付しているが、これは説明の便宜のためであり、装置の使用方向を限定する意図ではない。
多関節ロボット5は、基台上に立設されたロボットアーム51を備える。ロボットアーム51は、複数のアーム片と、これらアーム片を連結する6つの関節軸を有している。すなわち、ロボットアーム51は、図1に示す第1軸AX1、第2軸AX2、第3軸AX3、第4軸AX4、第5軸AX5、および第6軸AX6の各軸回りにそれぞれ回転することができる。
ロボットアーム51のアーム先端部51Tには、ガン52が取り付けられている。ガン52は、ロボットアーム51の第1軸AX1~第6軸AX6回りの回動によって、自在に三次元移動が可能である。このガン52に、摩擦撹拌接合装置Mが組付けられている。
図1には、ガン52の拡大図が付記されている。ガン52は、筐体部53とC型フレーム54とを含む。筐体部53は、摩擦撹拌接合装置Mの駆動機構を収容している。C型フレーム54は、筐体部53のアーム先端部51T側に位置する基端部541と、基端部541から、摩擦撹拌接合装置Mにおける後述するツール1の下方まで延び出した先端部542とを含む。先端部542は、後述する裏当て部材15を保持している。
なお、本発明に係る摩擦撹拌接合装置Mは、多関節ロボット5以外の他の装置に取り付けられてもよい。例えば、1軸に沿って昇降だけを行う機械装置に摩擦撹拌装置が取り付けられる実施態様とすることができる。
[摩擦撹拌接合装置の機械的構成]
図2を参照して、摩擦撹拌接合装置Mの機械的構成について説明する。摩擦撹拌接合装置Mは、接合用のツール1と、ツール1を回転および昇降駆動するツール駆動部2と、ツール1をワークに対して固定するツール固定部55とを含む。本実施形態において前記ワークは、最終的に接合体3を構成する、第1部材31と第2部材32とが上下方向に重ね合わされてなる重なり部30である。
ツール1は、ピン部材11、ショルダ部材12、クランプ部材13、およびスプリング14を含む。
ピン部材11は、円柱状に形成された部材であり、その軸線Zが上下方向に延びるように配置されている。以下、軸線Zのことをツール軸線Zという。ピン部材11は、ツール軸線Zを中心に回転することが可能であり、かつ、ツール軸線Zに沿って矢印Z1で示す上下方向に進退移動することが可能である。なお、進退移動という場合の前提として、本実施形態では、ピン部材11の下方への移動(下降)が前進であり、ピン部材11の上方への移動(上昇)が後退である。このことは、ショルダ部材12およびクランプ部材13でも同様である。
ショルダ部材12は、ピン部材11の外周を覆うように配置されている。ショルダ部材12は、ピン部材11が内挿される中空部を備え、円筒状に形成された部材である。ショルダ部材12の軸心は、ツール軸線Zと同軸上にある。ショルダ部材12は、ピン部材11と同様にツール軸線Z回りに回転することが可能であり、かつ、ツール軸線Zに沿って矢印Z2で示す上下方向に進退移動することが可能である。ショルダ部材12と、前記中空部に内挿されたピン部材11とは、共にツール軸線Z回りに回転しつつ、ツール軸線Z方向に相対移動が可能である。すなわち、ピン部材11およびショルダ部材12は、ツール軸線Zに沿って同時に昇降するだけでなく、一方が下降し他方が上昇するという独立移動が可能である。
クランプ部材13は、ショルダ部材12が内挿される中空部を備え、円筒状に形成された部材である。クランプ部材13の軸心も、ツール軸線Zと同軸上にある。クランプ部材13は、軸回りに回転はしないが、ツール軸線Zに沿って矢印Z3で示す上下方向に進退移動することが可能である。クランプ部材13は、ピン部材11またはショルダ部材12が摩擦撹拌接合を行う際に、これらの外周を囲う役目を果たす。クランプ部材13の囲いにより、摩擦撹拌材料が四散せず、接合部分を平滑に仕上げることができる。
スプリング14は、クランプ部材13の上端部131に、上方へ延び出すように取り付けられている。スプリング14は、クランプ部材13を重なり部30に向かう方向(下方)に付勢している。
ツール固定部55は、回転ツール固定器551と、クランプ固定器552とを含む。回転ツール固定器551は、ピン部材11が内挿されたショルダ部材12の上方に配置され、ピン部材11およびショルダ部材12を支持している。クランプ固定器552は、スプリング14を介してクランプ部材13を支持している。また、クランプ固定器552は、後述の回転駆動部23を介して、回転ツール固定器551を支持している。
ツール1の先端(下端面)に対向して、裏当て部材15が配置されている。裏当て部材15の上面である支持面151は、接合対象のワーク(重なり部30)の下面を支持するための平坦面として形成されている。すなわち、裏当て部材15は、ピン部材11またはショルダ部材12が重なり部30に圧入される際に、当該重なり部30を支持する部材である。裏当て部材15は、C型フレーム54の先端部542により保持されている。スプリング14で付勢されたクランプ部材13は、重なり部30を裏当て部材15に押し当てる。なお、裏当て部材15の支持面151は、本発明における「当接面」に相当する。
以上の通り、ピン部材11の進退移動軸およびショルダ部材12の進退移動軸は、いずれもツール軸線Zである。また、ピン部材11およびショルダ部材12は、ツール軸線Zを中心に回転する。本実施形態では、ロボットアーム51が第1軸AX1~第6軸AX6を有していることから、図1の要部拡大図に示すように、ショルダ部材12の進退移動軸を第7軸AX7、ピン部材11およびショルダ部材12の回転軸を第8軸AX8、ピン部材11の進退移動軸を第9軸AX9として扱う。
ツール駆動部2は、ピン駆動部21、ショルダ駆動部22、および回転駆動部23を含む。
ピン駆動部21は、ツール軸線Zに沿ってピン部材11を進退移動(昇降)させる機構であり、換言すれば第9軸AX9用の駆動機構である。ピン駆動部21により、ピン部材11の下端である先端11Tが重なり部30に向かって下降(前進)する、もしくは重なり部30に対して上昇(後退)するように駆動される。ピン駆動部21は、駆動源としてのサーボモータ21a(図3)と、当該サーボモータ21aの出力軸の回転をツール軸線Zに沿った直線運動(上下運動)に変換するラック/ピニオン等からなるギヤ機構とを含む。
ショルダ駆動部22は、ツール軸線Zに沿ってショルダ部材12を進退移動(昇降)させる機構であり、換言すれば第7軸AX7用の駆動機構である。ショルダ駆動部22により、ショルダ部材12の下端である先端12Tが重なり部30に向かって下降(前進)する、もしくは重なり部30に対して上昇(後退)するように駆動される。ショルダ駆動部22は、駆動源としてのサーボモータ22a(図3)と、当該サーボモータ22aの出力軸の回転をツール軸線Zに沿った直線運動(上下運動)に変換するラック/ピニオン等からなるギヤ機構とを含む。
本実施形態のショルダ駆動部22は、ピン部材11、ショルダ部材12およびクランプ部材13を支持するツール固定部55自体を昇降させる機構とされている。このため、図2に示している、ピン部材11、ショルダ部材12、およびクランプ部材13の矢印Z1、Z2、Z3方向の移動は、全てショルダ駆動部22の駆動によって実現可能である。
ただし、ピン部材11については、ピン駆動部21で駆動されることによって、ショルダ部材12およびクランプ部材13とは独立して進退移動が可能である。すなわち、ピン駆動部21は、ショルダ部材12の内側に固定されており、この固定位置を基準にピン部材11を相対的に昇降させる機構とされている。これにより、例えば、ショルダ部材12が下降もしくは停止している状況でも、ピン部材11はピン駆動部21の駆動により上昇することが可能である。
ショルダ駆動部22によってクランプ部材13が下降されてその先端(下端)13Tが重なり部30に当接した状態で、クランプ部材13にはスプリング14の付勢力が作用する。この付勢力により、クランプ部材13は重なり部30を裏当て部材15に押圧し、重なり部30とツール1との位置関係を固定する。
回転駆動部23は、ピン部材11およびショルダ部材12をツール軸線Z回りに回転させる機構であり、換言すれば第8軸AX8用の駆動機構である。回転駆動部23は、駆動源としてのサーボモータ23a(図3)と、当該サーボモータ23aの出力軸の回転を変速および伝達するギヤ機構とを含む。回転駆動部23は、クランプ固定器552に保持されており、かつ回転ツール固定器551を回転駆動する。この回転駆動により、回転ツール固定器551に支持されているピン部材11およびショルダ部材12は、ツール軸線Z回りに回転する。
[摩擦撹拌接合装置の電気的構成]
図3は、摩擦撹拌接合装置Mの電気的構成を示すブロック図である。摩擦撹拌接合装置Mは、その機能要素として、コントローラ61、入力部62、および記憶部63を備えている。
コントローラ61は、マイクロコンピュータ等からなり、所定の制御プログラムを実行することで、ツール駆動部2およびロボット駆動部51Mの動作を制御する。なお、ロボット駆動部51Mは、ロボットアーム51の第1軸AX1~第6軸AX6を駆動するアクチュエータを含む。
コントローラ61によるツール駆動部2の制御は、次のようにして行われる。すなわち、コントローラ61は、ピン駆動部21のサーボモータ21aを制御して、ピン部材11を独立的に進退移動させる。また、コントローラ61は、ショルダ駆動部22のサーボモータ22aを制御して、ピン部材11、ショルダ部材12、およびクランプ部材13に、それぞれ所要の進退移動を行わせる。さらに、コントローラ61は、回転駆動部23のサーボモータ23aを制御して、ピン部材11およびショルダ部材12をツール軸線Z回りに回転させる。
コントローラ61はまた、ゼロイング制御部61aと接合制御部61bとを備える。接合制御部61bは、ピン部材11およびショルダ部材12等を用いてワーク(重なり部30)を摩擦撹拌接合するための制御モジュールである。すなわち、接合制御部61bは、ピン部材11およびショルダ部材12を回転させつつワーク(重なり部30)に圧入することにより、当該ワークを接合する。ゼロイング制御部61aは、ピン部材11およびショルダ部材12の原点合わせ(ゼロイング)を自動的に行うための制御モジュールである。この原点合わせの詳細については後述する。
入力部62は、コントローラ61に種々のデータや指令を入力するためのインターフェースであり、例えばキーボードやタッチパネル等から構成される。
記憶部63は、摩擦撹拌接合装置Mの制御に必要な各種プログラムやデータを記憶するものである。
[摩擦撹拌接合の動作例]
以上のような構成の摩擦撹拌接合装置Mを用いた摩擦撹拌接合は、ピン先行プロセスによる接合と、ショルダ先行プロセスによる接合とに大別される。ピン先行プロセスとショルダ先行プロセスとは、ピン部材11を先に圧入するかショルダ部材12を先に圧入するかが異なる。各プロセスの概要は以下のとおりである。
図4は、ピン先行プロセスによる接合方法を説明するための概略図である。ピン先行プロセスによる接合方法は、下記の4つの工程P11~P14を含む。
工程P11は、重なり部30の予熱工程である。予熱工程では、第1部材31の表面にツール1の先端(下端)を当接させた状態で、ピン部材11およびショルダ部材12を軸回りに所定の回転数で高速回転させる。この高速回転に伴う摩擦熱より、ピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tと当接している部分の材料が軟化し、重なり部30の上面近傍に塑性流動部が生じる。
工程P12は、ピン部材11の圧入工程である。圧入工程では、図中に白抜き矢印で示すように、ピン部材11を下降させて重なり部30へ圧入させる一方、ショルダ部材12を上昇させる。この動作により、ピン部材11の圧入領域から軟化した材料が溢れ出す。溢れ出した材料OFは、ショルダ部材12の上昇(退避)によって生じた、ピン部材11とクランプ部材13との間の環状領域に逃がされる(矢印a1参照)。
工程P13は、溢れ出し材料OFの埋め戻し工程である。埋め戻し工程では、ピン部材11を上昇させる一方で、ショルダ部材12を下降させる。ショルダ部材12の下降により、矢印a2で示すように、前記環状領域に逃がされた溢れ出し材料OFが、ピン部材11の圧入領域に埋め戻される。
工程P14は、ならし工程である。ならし工程では、ピン部材11およびクランプ部材13の各先端11T,12Tを第1部材31の表面の高さ位置に復帰させた状態で両者を回転させる。これにより、重なり部30の上面が整形され、凹凸がほとんど生じない程度に平滑化される。
以上の工程P11~P14により、上面が平滑な接合部4aが形成され、第1部材31および第2部材32が重なり部30において点接合される。
図5は、ショルダ先行プロセスによる接合方法を説明するための概略図である。ショルダ先行プロセスによる接合方法は、下記の4つの工程P21~P24を含む。
工程P21は、上述した工程P11と同様な、重なり部30の予熱工程である。この予熱工程では、高速回転するピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tと当接している部分の材料が軟化し、重なり部30の上面近傍に塑性流動部が生じる。
工程P22は、ショルダ部材12の圧入工程である。この圧入工程では、ショルダ部材12を下降させて重なり部30へ圧入させる一方、ピン部材11を上昇させる。この動作により、ショルダ部材12の圧入領域から軟化した材料が溢れ出す。溢れ出した材料OFは、ピン部材11の上方(退避)によって生じた、ショルダ部材12の中空空間に逃がされる(矢印b1参照)。
工程P23は、溢れ出し材料OFの埋め戻し工程である。埋め戻し工程では、ショルダ部材12を上昇させる一方で、ピン部材11を下降させる。ピン部材11の下降により、矢印b2で示すように、前記中空空間に逃がされた溢れ出し材料OFが、ショルダ部材12の圧入領域に埋め戻される。
工程P24は、先述の工程P14と同様な、ならし工程である。このならし工程により、重なり部30の上面が整形され、凹凸がほとんど生じない程度に平滑化される。
以上のプロセスにより、上面が平滑な接合部4bが形成され、第1部材31および第2部材32が重なり部30において点接合される。
[ゼロイングの動作例]
上述したとおり、ピン先行プロセスによる接合方法とショルダ先行プロセスによる接合方法のいずれを用いても、重なり部30に平滑な接合部(4aまたは4b)を形成することができる。接合部の平滑性を担保するには、特にならし工程においてピン部材11の先端11Tとショルダ部材12の先端12Tとを十分な精度で位置合わせする(同一の高さに揃える)必要がある。このような位置合わせの精度を確保するには、接合を行う前にピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tの高さを一致させてその状態で両部材11,12の原点を設定する原点合わせ(ゼロイング)を十分な精度で行っておくことが求められる。ここで、ピン部材11およびショルダ部材12の原点とは、両部材11,12の進退移動軸であるツール軸線Zに沿った座標(以下、これをZ軸座標という)の原点のことである。すなわち、ここでいう原点合わせ(ゼロイング)とは、ピン部材11のZ軸座標の原点と、ショルダ部材12のZ軸座標の原点とを一致させる操作のことである。
図6および図7は、ゼロイングの際にコントローラ61が実行する制御(ゼロイング制御)の具体的手順を示すフローチャートである。ゼロイング制御は、摩擦撹拌接合装置Mの組立完了後であって、当該摩擦撹拌接合装置Mをユーザに出荷する前に実行される。また、ゼロイング制御は、記憶部63に予め記憶されたプログラムに従って実行される制御であり、当該プログラムを開始する指令であるゼロイング指令が作業者から入力部62を介してコントローラ61に入力されるのに応じて開始される。
前記ゼロイング指令の入力を受けて図6に示す制御がスタートすると、コントローラ61のゼロイング制御部61aは、ショルダ部材12を裏当て部材15に向けて下降させる(ステップS1)。すなわち、ゼロイング制御部61aは、ショルダ駆動部22のサーボモータ22aをショルダ部材12が下降する方向に回転駆動して、ショルダ部材12の先端12Tが裏当て部材15の支持面151に当接するまでショルダ部材12を下降(前進)させる。
ただし、前記ステップS1でショルダ部材12の下降を開始する時点では、ショルダ部材12におけるZ軸座標の原点は不明であり、仮の原点が存在するに過ぎない。すなわち、ショルダ部材12のZ軸座標上の位置は、サーボモータ22aに備わるエンコーダ(位置検出部)からの出力に基づき認識されるが、このときのZ軸座標の原点は摩擦撹拌接合装置Mの組立て時にデフォルトで設定された仮の原点である。このため、初期位置のショルダ部材12の先端12Tから裏当て部材15の支持面151までの距離はゼロイング制御部61aにとって不明である。そこで、ゼロイング制御部61aは、サーボモータ22aを駆動する直前のZ軸座標の値(つまりZ軸座標の初期値)に基づいて、ショルダ部材12の先端12Tが裏当て部材15の支持面151に必ず当接するようなZ軸座標の仮想目標値を設定し、この仮想目標値までショルダ部材12が下降するようにサーボモータ22aを制御する。ここでは、Z軸座標の正方向は上方向であるものとする。この場合、Z軸座標の仮想目標値は、例えば、ショルダ部材12の最大進退移動量以上の値をZ軸座標の初期値から減じた値とすることができる。なお、ショルダ部材12の最大進退移動量とは、ショルダ部材12をその進退可動域の上限(上側のメカストッパに当接する位置)から裏当て部材15の支持面151まで移動させたときのZ軸方向の移動量のことである。
次いで、ゼロイング制御部61aは、ショルダ部材12の先端12Tが裏当て部材15の支持面151に当接したか否かを判定する(ステップS2)。例えば、ゼロイング制御部61aは、サーボモータ22aの作動電流に基づいてショルダ部材12の当接を判定する。すなわち、ショルダ部材12が裏当て部材15に当接すると、サーボモータ22aの負荷が増大する結果、当該サーボモータ22aの作動電流が増大する。そこで、ゼロイング制御部61aは、作動電流が所定値まで増大したことが確認された場合に、ショルダ部材12が裏当て部材15に当接したと判定する。ここで、本実施形態の摩擦撹拌接合装置Mではショルダ部材12が加圧軸として機能付けられており、サーボモータ22aの作動電流から加圧力を判定する制御ロジックがコントローラ61に実装されている。前記ステップS2の判定は、このような制御ロジックを利用して支障なく行うことができる。
前記ステップS2でYESと判定されてショルダ部材12が裏当て部材15に当接したことが確認された場合、ゼロイング制御部61aは、このときのショルダ部材12のZ軸座標の値を第1ショルダ軸値α1として記憶部63に記憶させる(ステップS3)。図8(a)は、ショルダ部材12の先端12Tが裏当て部材15の支持面151に当接した状態を示している。ゼロイング制御部61aは、このような当接状態におけるショルダ部材12のZ軸座標の値を第1ショルダ軸値α1として記憶部63に記憶させる。なお、第1ショルダ軸値α1は、本発明における「第1ショルダ位置」に対応している。
次いで、ゼロイング制御部61aは、図8(b)に示すように、ピン部材11のZ軸座標の現在値を第1ピン軸値β1として記憶部63に記憶させる(ステップS4)。このステップS4の時点においてピン部材11は上昇も下降もしていないから、第1ピン軸値β1はピン部材11のZ軸座標の初期値ということができる。なお、第1ピン軸値β1は、本発明における「第1ピン位置」に対応している。
次いで、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11を裏当て部材15に向けて下降させる(ステップS5)。すなわち、ゼロイング制御部61aは、ピン駆動部21のサーボモータ21aをピン部材11が下降する方向に回転駆動して、ピン部材11の先端11Tが裏当て部材15の支持面151に当接するまでピン部材11を下降(前進)させる。
ただし、前記ステップS5でピン部材11の下降を開始する時点では、ピン部材11におけるZ軸座標の原点は不明であり、仮の原点が存在するに過ぎない。すなわち、ピン部材11のZ軸座標上の位置は、サーボモータ21aに備わるエンコーダ(位置検出部)からの出力に基づき認識されるが、このときのZ軸座標の原点は摩擦撹拌接合装置Mの組立て時にデフォルトで設定された仮の原点である。そこで、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS1でショルダ部材12を下降させたときと同様に、サーボモータ21aを駆動する直前のZ軸座標の値(つまりZ軸座標の初期値)に基づいて、ピン部材11の先端11Tが裏当て部材15の支持面151に必ず当接するようなZ軸座標の仮想目標値(例えばピン部材11の最大進退移動量以上の値をZ軸座標の初期値から減じた値)を設定し、この仮想目標値までピン部材11が下降するようにサーボモータ21aを制御する。
図9に示すように、前記ステップS5において、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11の下降速度(以下、ピン下降速度という)が所定の速度パターンで変化するようにサーボモータ21aを制御する。すなわち、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS5の開始と同時にピン部材11を加速させ、ピン下降速度を予め定められた目標速度V1に向けて増大させる。そして、ピン下降速度が目標速度V1に達すると、ゼロイング制御部61aは、その時点t1以降、ピン下降速度が目標速度V1で一定となるようにピン部材11を等速移動させる。なお、目標速度V1は、ピン下降速度の上限値に対し十分に低い値(例えば数mm/s)に設定される。
次いで、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11の先端11Tが裏当て部材15の支持面151に当接したか否かを判定する(ステップS6)。例えば、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS5で設定した仮想目標値と現在のピン部材11のZ軸座標との偏差の時間変化をサーボモータ21aのエンコーダからの出力値に基づき調べ、当該偏差が所定期間に亘って実質的に変化しないことが確認された場合に、ピン部材11が裏当て部材15に当接したと判定する。このように、ピン部材11の当接判定は、上述したショルダ部材12の当接判定(ステップS2)と異なり、モータ電流に基づく判定ではなく、座標位置偏差に基づく判定とされる。これは、ピン部材11とショルダ部材12との制御ロジックの相違によるものである。すなわち、本実施形態の摩擦撹拌接合装置Mでは、ピン部材11が直動軸として機能付けられており、加圧軸であるショルダ部材12の場合と異なり、モータ電流から加圧力を判定する制御ロジックはピン部材11には適用されない。このため、前記ステップS6では、モータ電流ではなく座標位置偏差に基づきピン部材11の当接を判定することとしている。
前記ステップS6でYESと判定されてピン部材11が裏当て部材15に当接したことが確認された場合、ゼロイング制御部61aは、このときのピン部材11のZ軸座標の値を第2ピン軸値β2として記憶部63に記憶させる(ステップS7)。図8(c)は、ピン部材11の先端11Tが裏当て部材15の支持面151に当接した状態を示している。ゼロイング制御部61aは、このような当接状態におけるピン部材11のZ軸座標の値を第2ピン軸値β2として記憶部63に記憶させる。なお、第2ピン軸値β2は、本発明における「第2ピン位置」に対応している。
次いで、ゼロイング制御部61aは、図8(c)に示すように、ショルダ部材12のZ軸座標の現在値を第2ショルダ軸値α2として記憶部63に記憶させる(ステップS8)。すなわち、前記のようにピン部材11が裏当て部材15に当接すると、その影響でショルダ部材12がわずかに上方に変位する(浮き上がる)現象が見られることが分かっており、前記ステップS8では、この上方変位後のショルダ部材12の位置を確認するべく、ショルダ部材12のZ軸座標の現在値が調べられる。なお、第2ショルダ軸値α2は、本発明における「第2ショルダ位置」に対応している。
ここで、前記のようなショルダ部材12の上方変位は、ショルダ部材12の内側に固定されたピン駆動部21によりピン部材11がショルダ部材12に対し相対的に昇降されるという本実施形態の摩擦撹拌接合装置Mの構造に起因して生じる現象であると考えられる。例えば、ピン部材11が裏当て部材15に当接して当該裏当て部材15を押圧すると、その反力がピン駆動部21におけるラック/ピニオン等のギヤ機構を介してショルダ部材12に作用する結果、ショルダ部材12がわずかに上方変位すると考えられる。なお、このときのショルダ部材12の変位量は微小であるが、図8(c)ではこれを誇張して示している。
次いで、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS4で取得された第1ピン軸値β1と、前記ステップS7で取得された第2ピン軸値β2とに基づいて、ピン移動量(β1-β2)を算出する(図7のステップS9)。すなわち、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11の初期位置を表す第1ピン軸値β1から、ピン部材11が裏当て部材15に当接したときの位置を表す第2ピン軸値β2を減じることにより、ピン部材11の初期位置から裏当て部材15までの距離であるピン移動量(β1-β2)を算出する。
次いで、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS3で取得された第1ショルダ軸値α1と、前記ステップS8で取得された第2ショルダ軸値α2とに基づいて、ショルダ変位量(α2-α1)を算出する(ステップS10)。すなわち、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11の裏当て部材15への当接に応じ上方変位(後退変位)したショルダ部材12の位置を表す第2ショルダ軸値α2から、ショルダ部材12が裏当て部材15に当接したときの位置を表す第1ショルダ軸値α1を減じることにより、ショルダ部材12の裏当て部材15からの上方変位量であるショルダ変位量(α2-α1)を算出する。
次いで、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS9で算出されたピン移動量(β1-β2)が予め定められた基準移動量Xβ以上であるという第1条件が成立するか否かを判定する(ステップS11)。ここで用いられる基準移動量Xβは、ピン部材11を図9に示した速度パターンに沿って下降させた場合に、ピン部材11の下降速度を目標速度V1まで増大させるのに必要な距離以上に設定される。言い換えると、ピン移動量(β1-β2)が基準移動量Xβ以上であれば、裏当て部材15に当接する直前のピン部材11は目標速度V1で等速運動していたことになる。逆に、ピン移動量(β1-β2)が基準移動量Xβ未満であれば、裏当て部材15に当接した時点のピン部材11の下降速度は目標速度V1に達していない(加速の途中である)可能性がある。
前記ステップS11でYESと判定されて前記第1条件が成立すること(β1-β2≧Xβ)が確認された場合、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS10で算出されたショルダ変位量(α2-α1)が予め定められた基準変位量Xα以下であるという第2条件が成立するか否かを判定する(ステップS12)。ここで用いられる基準変位量Xαは、ピン部材11が図9に示した目標速度V1で裏当て部材15に当接したときに通常生じ得るショルダ部材12の上方変位量の最大値に相当し、実験的に定めることができる。
前記ステップS11,S12の各判定の結果(前記第1・第2条件の成否)次第で、ゼロイング制御部61aは、3種類の異なる制御を実行する。まず、前記ステップS12でYESと判定された場合、つまり前記第2条件が成立したことが確認された場合の制御について説明する。
前記ステップS12で第2条件の成立が確認されたということは、前記第1条件および前記第2条件の双方が成立すること、つまりβ1-β2≧Xβかつα2-α1≦Xαであることを意味する。すなわち、図10に示すように、ピン移動量(β1-β2)を横軸、ショルダ変位量(α2-α1)を縦軸とした場合の条件マップ上において、右下の第1領域R1に該当する条件が成立したことを意味する。この場合、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11を既定戻し量Bxだけ上昇させる(ステップS13)。既定戻し量Bxは、予め定められた一定値であり、ピン部材11の先端11Tの高さをショルダ部材12の先端12Tの高さと一致させるために実験的に求められた値である。このような既定戻し量Bxだけピン部材11が上昇することにより、図8(d)に示すように、ピン部材11の先端11Tとショルダ部材12の先端12Tとが面一に揃えられる。
ここで、一定値である既定戻し量Bxは、裏当て部材15からのショルダ部材12の浮き上がり量であるショルダ変位量(α2-α1)と必ずしも一致しないが、図8(c)の状態におけるピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tの高さのずれ(位置ずれ)は、ショルダ変位量(α2-α1)よりもむしろ既定戻し量Bxとの一致性が高い。すなわち、本願発明者の知見によれば、エンコーダから特定されるショルダ変位量(α2-α1)は、ピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tの実際の高さずれと正確には一致しない。これは、部材のひずみ等により生じる誤差が原因であると考えられる。このため、図8(c)の状態からショルダ変位量(α2-α1)と同じ量だけピン部材11を上昇させても、ピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tの高さが一致するとは限らない。むしろ、前記第1条件および前記第2条件の双方が成立する状況では、各先端11T,12Tの高さずれは実質的に同一の値をとるという知見が得られており、このような知見に基づき実験的に求められた一定の既定戻し量Bxが本ゼロイング制御用のプログラムに予め定められている。前記ステップS13では、このようにして定められた既定戻し量Bxだけピン部材11が上昇することにより、図8(d)に示すように、ピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tが面一に揃えられる。
次いで、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11およびショルダ部材12のZ軸座標の原点合わせ、つまりゼロイングを行う(ステップS14)。すなわち、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11を既定戻し量Bxだけ上昇させる前記ステップS13の実行後、このときのピン部材11およびショルダ部材12の各位置を基準に両部材11,12の原点合わせを行う。より詳しくは、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS13が実行された後の図8(d)の状態で、サーボモータ21aのエンコーダ出力値から特定されるピン部材11のZ軸座標値と、サーボモータ22aのエンコーダ出力値から特定されるショルダ部材12のZ軸座標値とが一致するように、ピン部材11およびショルダ部材12の各原点をリセットする。
例えば、ゼロイング制御部61aは、サーボモータ21aのエンコーダ出力値とZ軸座標値との関係、およびサーボモータ22aのエンコーダ出力値とZ軸座標値との関係をそれぞれ修正して、ピン部材11およびショルダ部材12の各原点をリセットすることにより、上述した図8(d)の状態におけるピン部材11のZ軸座標値とショルダ部材12のZ軸座標値とを一致させる。リセット後のピン部材11およびショルダ部材12の各原点は、図8(d)の状態でZ軸座標値が一致する限りにおいて適宜の位置に設定し得る。例えば、ピン部材11およびショルダ部材12が図8(d)の状態にあるときに両部材11,12のZ軸座標値がともに原点を表す値(0)になるように原点リセットを行ってもよいし、同じく図8(d)の状態にあるときに両部材11,12のZ軸座標値がともに既定戻し量Bxに対応する微小プラス値になるように原点リセットを行ってもよい。後者のようにした場合には、ピン部材11およびショルダ部材12が裏当て部材15に当接した状態でピン部材11およびショルダ部材12の各Z軸座標値が0になることが期待される。
次に、前記ステップS11でNOと判定されて前記第1条件が非成立であることが確認された場合の制御について説明する。前記ステップS11で第1条件の非成立が確認されたということは、前記第1条件および前記第2条件の双方が非成立である(つまりβ1-β2<Xβかつα2-α1>Xαである)か、または前記第1条件が非成立で前記第2条件が成立する(つまりβ1-β2<Xβかつα2-α1≦Xαである)ことを意味する。すなわち、ピン移動量(β1-β2)を横軸、ショルダ変位量(α2-α1)を縦軸とした図10の条件マップ上において、左下の第2領域R2または左上の第3領域R3に該当する条件が成立したことを意味する。この場合、ゼロイング制御部61aは、ピン部材11を基準移動量Xβ以上の距離だけ上昇させる(ステップS15)。
前記ステップS15が実行される直前において、ピン部材11は、図8(c)に示すように裏当て部材15に当接した状態にある。このため、ピン部材11は、前記ステップS15の実行により、裏当て部材15から基準移動量Xβ以上の距離だけ上昇することになる。なお、以下では、当該上昇が完了したときのピン部材11の位置を、再スタート位置という。再スタート位置は、裏当て部材15(支持面151)から基準移動量Xβと同一の距離だけ離れた位置に設定してもよいが、余裕を見て基準移動量Xβをある程度上回る距離だけ離れた位置に設定してもよい。もしくは、ピン部材11の進退可動域の上限(メカストッパに当接する位置)を再スタート位置として設定してもよい。
前記ステップS15の後、フローは前記ステップS4まで戻される。この場合のステップS4において、ゼロイング制御部61aは、前記ステップS15の制御により再スタート位置まで上昇した後のピン部材11のZ軸座標値を新たな第1ピン軸値β1として記憶部63に記憶させる。すなわち、ゼロイング制御部61aは、記憶部63に記憶される第1ピン軸値β1を、前回のステップS4によって既に記憶された値から、ピン部材11が再スタート位置まで上昇したときのZ軸座標値に書き換える。
これ以後は、ステップS5以降の制御が同様に繰り返される。すなわち、ゼロイング制御部61aは、再スタート位置まで上昇したピン部材11を裏当て部材15に当接するまで下降させ(ステップS5,S6)、その時点のピン部材11およびショルダ部材12の各Z軸座標値を新たな第2ピン軸値β2および第2ショルダ軸値α2として記憶する(ステップS7,S8)。そして、各軸値を用いて算出したピン移動量(β1-β2)およびショルダ変位量(α2-α1)に基づき前記第1・第2条件の成否を判定し(ステップS9~S12)、その判定結果に応じた適切な制御(ステップS13~S16)を実行する。
次に、前記ステップS12でNOと判定されて前記第2条件が非成立であることが確認された場合の制御について説明する。前記ステップS12で第2条件の非成立が確認されたということは、前記第1条件が成立して前記第2条件が非成立である(つまりβ1-β2≧Xβかつα2-α1>Xαである)ことを意味する。すなわち、ピン移動量(β1-β2)を横軸、ショルダ変位量(α2-α1)を縦軸とした図10の条件マップ上において、右上の第4領域R4に該当する条件が成立したことを意味する。この場合、ゼロイング制御部61aは、所定のエラーメッセージを表示する(ステップS16)。例えば、ゼロイング制御部61aは、液晶パネル等からなる図外の表示装置に、摩擦撹拌接合装置Mに異常が存在する可能性を示す所定のエラーメッセージを表示させる。
すなわち、本願発明者の知見によれば、ピン移動量(β1-β2)に関する第1条件が成立していれば、高い確率でショルダ変位量(α2-α1)に関する第2条件も成立する。逆に、第1条件が成立するにもかかわらず第2条件が成立しない事態は、通常は想定されない事態であり、摩擦撹拌接合装置Mに何らかの異常が生じている可能性がある。そこで、前記ステップS16では、そのことを作業者に知らせるべくエラーメッセージを表示する。
以上のようなゼロイング制御において、図6のステップS3は本発明における「第1ステップ」または「第1処理」に対応し、図6のステップS4は本発明における「第2ステップ」または「第2処理」に対応し、図6のステップS5~S7は本発明における「第3ステップ」または「第3処理」に対応し、図6のステップS8は本発明における「第4ステップ」または「第4処理」に対応し、図7のステップS11,S12は本発明における「第5ステップ」または「第5処理」に対応し、図7のステップS13,S14は本発明における「第6ステップ」または「第6処理」に対応し、図7のステップS15は本発明における「第7ステップ」または「第7処理」に対応する。
[作用効果等]
以上説明したように、本実施形態では、摩擦撹拌接合装置Mにおけるピン部材11およびショルダ部材12の原点合わせが次のような手順で行われる。
・ショルダ部材12が裏当て部材15に当接している状態でさらにピン部材11を裏当て部材15に当接させ、ピン部材11の初期位置から裏当て部材15までの距離であるピン移動量(β1-β2)と、ピン部材11の当接に伴いショルダ部材12がわずかに上昇変位したときの変位量であるショルダ変位量(α2-α1)とをそれぞれ調べる。
・ピン移動量(β1-β2)が基準移動量Xβ以上という第1条件の成否と、ショルダ変位量(α2-α1)が基準変位量Xα以下という第2条件の成否とを判定する。
・第1条件および第2条件の双方が成立した場合(ステップS12でYES判定の場合)には、ピン部材11を裏当て部材15から既定戻し量Bxだけ上昇させ、その状態におけるピン部材11およびショルダ部材12の位置を基準に両部材11,12の原点合わせを行う。
・第1条件が成立しなかった場合(ステップS11でNO判定の場合)には、ピン部材11を基準移動量Xβ以上の距離だけ上昇させ、上昇後の再スタート位置から同様の手順を繰り返す。
このような方法で原点合わせを行う本実施形態では、原点合わせの精度を担保しつつ当該原点合わせの効率および安全性を高めることができるという利点がある。
既に説明したとおり、ショルダ部材12が裏当て部材15に当接している状態でさらにピン部材11を裏当て部材15に当接させると、このピン部材11の当接に伴いショルダ部材12がわずかに上昇(後退)することが分かっており、さらに、この上昇変位により生じるピン部材11およびショルダ部材12の各先端11T,12Tの高さずれ(図8(c)参照)は、前記第1条件および前記第2条件がともに成立する状況では一意的に定まることが分かっている。本実施形態では、前記第1条件および前記第2条件の双方の成立が確認された場合に、一定の既定戻し量Bxだけピン部材が上昇駆動されるので、上昇後のピン部材11の先端11Tの高さをショルダ部材12の先端12Tの高さと精度よく一致させることができる。そして、この状態でピン部材11およびショルダ部材12の原点合わせが行われることにより、原点合わせの精度を高めることができ、これらピン部材11およびショルダ部材12を備えた摩擦撹拌接合装置Mの接合性能を向上させることができる。例えば、第1部材31と第2部材32との重なり部30を接合する際に、接合部の上面を平滑に仕上げる性能を向上させることができる。
しかも、ショルダ部材12およびピン部材11を同一の裏当て部材15に順に当接させる動作を行うだけで、各段階でのショルダ部材12およびピン部材11の位置(第1・第2ショルダ軸値α1,α2および第1・第2ピン軸値β1,β2)から前記第1条件および前記第2条件の成否を判定できるとともに、両条件が成立した場合には既定戻し量Bxだけピン部材11を上昇させるだけでピン部材11およびショルダ部材12の高さを一致させることができるので、一連の手順を自動化しつつ容易に原点合わせを行うことができ、当該原点合わせの効率および安全性を高めることができる。
一方、少なくとも前記第1条件が非成立であった場合には、裏当て部材15からより遠ざかった再スタート位置までピン部材11が上昇してその位置から同様の手順が繰り返されるので、ピン部材11およびショルダ部材12の高さが一致する状況をできる限り再現することができ、原点合わせが自動的に達成される確率を高めることができる。
また、前記実施形態では、前記第1条件の判定閾値である基準移動量Xβが、ピン部材11が一定の目標速度V1で裏当て部材15に当接したことが保証される距離(ピン部材11を目標速度V1まで加速させるのに必要な距離以上)に設定されるので、前記第1条件および前記第2条件が成立したときの前記高さずれ(図8(c)の状態での各先端11T,12Tの高さの差)をより安定化させることができ、原点合わせの精度を十分に高めることができる。
なお、前記実施形態では、ピン移動量(β1-β2)が基準移動量Xβ以上であれば第1条件が成立したと判定し、ショルダ変位量(α2-α1)が基準変位量Xα以下であれば第2条件が成立したと判定したが、第1条件は、ピン移動量が所定の第1範囲に含まれるという条件であればよく、第2条件は、ショルダ変位量が所定の第2範囲に含まれるという条件であればよい。例えば、第1範囲は、下限だけでなく上限をもった範囲であってもよいし、第2範囲は、ゼロより大きい下限と上限をもった範囲であってもよい。
前記実施形態では、ピン部材11を裏当て部材15に当接させる際に、ピン部材11のZ軸座標値の偏差(目標値と現在値との偏差)を調べ、当該偏差が所定期間に亘って実質的に変化しない場合にピン部材11が裏当て部材15に当接したと判定するようにしたが、ピン部材11の当接を判定する方法はこのような方法に限られない。例えば、ショルダ部材12の当接を判定する場合と同様に、ピン部材11を駆動するサーボモータ21aの作動電流に基づいてピン部材11の当接を判定してもよい。
[まとめ]
上述した実施形態およびその変形例には主に以下の発明が含まれている。
本発明の一局面に係る制御方法は、軸線回りの回転および当該軸線に沿った進退移動を行うピン部材と、当該ピン部材の外周側に配置されかつ前記軸線回りの回転および前記軸線に沿った進退移動を行うショルダ部材とを備え、前記ピン部材および前記ショルダ部材を回転させつつワークに圧入することにより当該ワークを接合する摩擦撹拌接合装置を制御する方法であって、前記ショルダ部材の先端が所定の当接面に当接した状態における当該ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第1ショルダ位置として記憶する第1ステップと、前記ピン部材の前記軸線方向の初期位置を第1ピン位置として記憶する第2ステップと、前記ピン部材を前記当接面に向けて前進させ、前記ピン部材の先端が前記当接面に当接したときの当該ピン部材の前記軸線方向の位置を第2ピン位置として記憶する第3ステップと、前記ピン部材の前記当接面への当接に伴い後退した前記ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第2ショルダ位置として記憶する第4ステップと、前記第1ピン位置と前記第2ピン位置との距離であるピン移動量が予め定められた第1範囲に含まれるという第1条件の成否と、前記第1ショルダ位置と前記第2ショルダ位置との距離であるショルダ変位量が予め定められた第2範囲に含まれるという第2条件の成否とを判定する第5ステップと、前記第1条件および前記第2条件が成立した場合に、前記ピン部材を前記当接面から予め定められた戻し量後退させ、後退後の前記ピン部材および前記ショルダ部材のそれぞれの前記軸線方向の位置を基準に前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行う第6ステップと、少なくとも前記第1条件が非成立であった場合に、前記第1ピン位置よりも前記当接面から遠ざかった再スタート位置まで前記ピン部材を後退させる第7ステップとを含む。前記第7ステップの後は、前記再スタート位置まで後退した前記ピン部材の位置を新たな第1ピン位置として前記第2ステップ以降の手順を再実行する。
本発明によれば、ピン部材が初期位置から当接面まで前進したときの移動距離であるピン移動量と、ピン部材の当接面への当接に伴いショルダ部材が後退したしたときの変位量であるショルダ変位量とがそれぞれ調べられ、これら各量に基づいてピン部材およびショルダ部材の原点合わせが行われる。具体的には、ピン移動量が第1範囲に含まれるという第1条件と、ショルダ変位量が第2範囲に含まれるという第2条件とがともに成立した場合に、ピン部材が当接面から既定戻し量だけ後退駆動され、さらにその状態におけるピン部材およびショルダ部材の各位置を基準に両部材の原点合わせが行われる。これにより、原点合わせの精度を担保しつつ当該原点合わせの効率および安全性を高めることができる。
本願発明者が鋭意研究した結果、ショルダ部材が当接面に当接している状態でさらにピン部材を当接面に当接させると、このピン部材の当接に伴いショルダ部材がわずかに後退すること、および、この後退により生じるピン部材およびショルダ部材の各先端の位置ずれが特定の条件では一意的に定まることが見出された。詳しくは、前記ピン移動量および前記ショルダ変位量がそれぞれ特定の範囲内にあれば、前記位置ずれが一意的に定まることが見出された。このような知見を受けて、本発明では、前記ピン移動量および前記ショルダ変位量がそれぞれ特定の範囲(第1範囲・第2範囲)にあるという第1条件および第2条件の成否が判定され、両条件の成立が確認された場合に、予め定められた戻し量だけピン部材が後退駆動される。これにより、後退後のピン部材の先端の位置をショルダ部材の先端の位置と精度よく一致させることができる。そして、この状態でピン部材およびショルダ部材の原点合わせが行われることにより、原点合わせの精度を高めることができ、これらピン部材およびショルダ部材を備えた摩擦撹拌接合装置の接合性能を向上させることができる。例えば、接合部を平滑に仕上げる性能を向上させることができる。
しかも、ショルダ部材およびピン部材を同一の当接面に順に当接させる動作を行うだけで、各段階でのショルダ部材およびピン部材の位置(第1・第2ショルダ位置および第1・第2ピン位置)から前記第1条件および前記第2条件の成否を判定できるとともに、両条件が成立した場合には既定の戻し量だけピン部材を後退させるだけでピン部材およびショルダ部材の位置を揃えることができるので、一連の手順を自動化しつつ容易に原点合わせを行うことができ、当該原点合わせの効率および安全性を高めることができる。
一方、少なくとも前記第1条件が非成立であった場合には、当接面からより遠ざかった再スタート位置までピン部材が後退してその位置から同様の手順が繰り返されるので、ピン部材およびショルダ部材の位置が揃う状況をできる限り再現することができ、原点合わせが自動的に達成される確率を高めることができる。
ここで、前記ピン移動量が大きくかつ前記ショルダ変位量が小さい方が、上述した位置ずれ(ショルダ部材の後退変位により生じるピン部材およびショルダ部材の各先端の位置ずれ)が安定化し易いことが分かっている。このため、前記第1範囲は、予め定められた基準移動量以上の範囲であり、前記第2範囲は、予め定められた基準変位量以下の範囲であり、前記再スタート位置は、前記当接面から前記基準移動量以上の距離だけ遠ざかった位置に設定することが好ましい。
この構成によれば、前記位置ずれが一意的に定まる状況であるか否かを前記第1条件および前記第2条件の成否によって的確に判定することができる。また、前記第1条件が非成立であった場合でも、ピン部材を再スタート位置まで後退させれば必ず前記第1条件が成立することになるので、リトライの回数を削減することができる。
より好ましくは、前記第3ステップでは、前記ピン部材が所定の目標速度に達するまで加速した後等速で移動するように前記ピン部材を駆動し、前記基準移動量は、前記ピン部材の移動速度を前記目標速度まで増大させるのに必要な距離以上に設定される。
この構成によれば、前記第1条件の成立により、ピン部材が当接面に対し一定速度で当接したことが保証されるので、前記第1条件および前記第2条件が成立したときの前記位置ずれをより安定化させることができ、原点合わせの精度を十分に高めることができる。
本発明の他の局面に係る摩擦撹拌接合装置は、軸線回りの回転および当該軸線に沿った進退移動を行うピン部材と、前記ピン部材の外周側に配置されかつ前記軸線回りの回転および前記軸線に沿った進退移動を行うショルダ部材と、前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行うゼロイング制御部と、前記ピン部材および前記ショルダ部材を回転させつつワークに圧入することにより当該ワークを接合する接合制御部と、データを格納する記憶部とを備える。前記ゼロイング制御部は、前記ショルダ部材の先端が所定の当接面に当接した状態における当該ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第1ショルダ位置として前記記憶部に記憶させる第1処理と、前記ピン部材の前記軸線方向の初期位置を第1ピン位置として前記記憶部に記憶させる第2処理と、前記ピン部材を前記当接面に向けて前進させ、前記ピン部材の先端が前記当接面に当接したときの当該ピン部材の前記軸線方向の位置を第2ピン位置として前記記憶部に記憶させる第3処理と、前記ピン部材の前記当接面への当接に伴い後退した前記ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第2ショルダ位置として前記記憶部に記憶させる第4処理と、前記第1ピン位置と前記第2ピン位置との距離であるピン移動量が予め定められた第1範囲に含まれるという第1条件の成否と、前記第1ショルダ位置と前記第2ショルダ位置との距離であるショルダ変位量が予め定められた第2範囲に含まれるという第2条件の成否とを判定する第5処理と、前記第1条件および前記第2条件が成立した場合に、前記ピン部材を前記当接面から予め定められた戻し量後退させ、後退後の前記ピン部材および前記ショルダ部材のそれぞれの前記軸線方向の位置を基準に前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行う第6処理と、少なくとも前記第1条件が非成立であった場合に、前記第1ピン位置よりも前記当接面から遠ざかった再スタート位置まで前記ピン部材を後退させる第7処理とを実行可能である。前記第7処理の後、前記ゼロイング制御部は、前記再スタート位置まで後退した前記ピン部材の位置を新たな第1ピン位置として前記第2処理以降の処理を再実行する。
この摩擦撹拌接合装置の発明によれば、上述した方法の発明と同様の効果を得ることができる。
M 摩擦撹拌接合装置
11 ピン部材
11T (ピン部材の)先端
12 ショルダ部材
12T (ショルダ部材の)先端
30 重なり部(ワーク)
61a ゼロイング制御部
61b 接合制御部
63 記憶部
151 支持面(当接面)

Claims (4)

  1. 軸線回りの回転および当該軸線に沿った進退移動を行うピン部材と、当該ピン部材の外周側に配置されかつ前記軸線回りの回転および前記軸線に沿った進退移動を行うショルダ部材とを備え、前記ピン部材および前記ショルダ部材を回転させつつワークに圧入することにより当該ワークを接合する摩擦撹拌接合装置を制御する方法であって、
    前記ショルダ部材の先端が所定の当接面に当接した状態における当該ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第1ショルダ位置として記憶する第1ステップと、
    前記ピン部材の前記軸線方向の初期位置を第1ピン位置として記憶する第2ステップと、
    前記ピン部材を前記当接面に向けて前進させ、前記ピン部材の先端が前記当接面に当接したときの当該ピン部材の前記軸線方向の位置を第2ピン位置として記憶する第3ステップと、
    前記ピン部材の前記当接面への当接に伴い後退した前記ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第2ショルダ位置として記憶する第4ステップと、
    前記第1ピン位置と前記第2ピン位置との距離であるピン移動量が予め定められた第1範囲に含まれるという第1条件の成否と、前記第1ショルダ位置と前記第2ショルダ位置との距離であるショルダ変位量が予め定められた第2範囲に含まれるという第2条件の成否とを判定する第5ステップと、
    前記第1条件および前記第2条件が成立した場合に、前記ピン部材を前記当接面から予め定められた戻し量後退させ、後退後の前記ピン部材および前記ショルダ部材のそれぞれの前記軸線方向の位置を基準に前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行う第6ステップと、
    少なくとも前記第1条件が非成立であった場合に、前記第1ピン位置よりも前記当接面から遠ざかった再スタート位置まで前記ピン部材を後退させる第7ステップとを含み、
    前記第7ステップの後は、前記再スタート位置まで後退した前記ピン部材の位置を新たな第1ピン位置として前記第2ステップ以降の手順を再実行する、摩擦撹拌接合装置の制御方法。
  2. 請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置の制御方法において、
    前記第1範囲は、予め定められた基準移動量以上の範囲であり、
    前記第2範囲は、予め定められた基準変位量以下の範囲であり、
    前記再スタート位置は、前記当接面から前記基準移動量以上の距離だけ遠ざかった位置である、摩擦撹拌接合装置の制御方法。
  3. 請求項2に記載の摩擦撹拌接合装置の制御方法において、
    前記第3ステップでは、前記ピン部材が所定の目標速度に達するまで加速した後等速で移動するように前記ピン部材を駆動し、
    前記基準移動量は、前記ピン部材の移動速度を前記目標速度まで増大させるのに必要な距離以上に設定される、摩擦撹拌接合装置の制御方法。
  4. 軸線回りの回転および当該軸線に沿った進退移動を行うピン部材と、
    前記ピン部材の外周側に配置されかつ前記軸線回りの回転および前記軸線に沿った進退移動を行うショルダ部材と、
    前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行うゼロイング制御部と、
    前記ピン部材および前記ショルダ部材を回転させつつワークに圧入することにより当該ワークを接合する接合制御部と、
    データを格納する記憶部とを備え、
    前記ゼロイング制御部は、
    前記ショルダ部材の先端が所定の当接面に当接した状態における当該ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第1ショルダ位置として前記記憶部に記憶させる第1処理と、
    前記ピン部材の前記軸線方向の初期位置を第1ピン位置として前記記憶部に記憶させる第2処理と、
    前記ピン部材を前記当接面に向けて前進させ、前記ピン部材の先端が前記当接面に当接したときの当該ピン部材の前記軸線方向の位置を第2ピン位置として前記記憶部に記憶させる第3処理と、
    前記ピン部材の前記当接面への当接に伴い後退した前記ショルダ部材の前記軸線方向の位置を第2ショルダ位置として前記記憶部に記憶させる第4処理と、
    前記第1ピン位置と前記第2ピン位置との距離であるピン移動量が予め定められた第1範囲に含まれるという第1条件の成否と、前記第1ショルダ位置と前記第2ショルダ位置との距離であるショルダ変位量が予め定められた第2範囲に含まれるという第2条件の成否とを判定する第5処理と、
    前記第1条件および前記第2条件が成立した場合に、前記ピン部材を前記当接面から予め定められた戻し量後退させ、後退後の前記ピン部材および前記ショルダ部材のそれぞれの前記軸線方向の位置を基準に前記ピン部材および前記ショルダ部材の原点合わせを行う第6処理と、
    少なくとも前記第1条件が非成立であった場合に、前記第1ピン位置よりも前記当接面から遠ざかった再スタート位置まで前記ピン部材を後退させる第7処理とを実行可能であり、
    前記第7処理の後、前記ゼロイング制御部は、前記再スタート位置まで後退した前記ピン部材の位置を新たな第1ピン位置として前記第2処理以降の処理を再実行する、摩擦撹拌接合装置。
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