以下に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。本実施形態の画像形成装置100は、プリンタ101、リーダ400、及び処理装置600により構成される。画像形成装置100(プリンタ101)は、電子写真方式によりシート状の記録材110に画像を形成する。なお、本実施形態のプリンタ101は、インクジェットプリンタや昇華型プリンタであってもよい。
画像形成装置100は、プリンタ101内に画像形成のためのエンジン部を構成する各機構、各機構の動作を制御するエンジン制御部102、及びプリンタコントローラ300を収納する制御ボード収納部104を備える。プリンタ101の上部には操作パネル180が設けられる。操作パネル180はユーザインタフェースであり、ユーザからの指示を受け付ける入力装置と、操作画面等の画面を表示する出力装置とを備える。入力装置は、各種キーボタンやタッチパネル等である。出力装置は、ディスプレイやスピーカである。リーダ400は、画像が形成された記録材(原稿)から該画像を読み取る画像読取装置である。
エンジン部を構成する各機構は、帯電露光処理機構、現像処理機構、転写処理機構、定着処理機構、記録材110の給紙処理機構、及び記録材110の搬送処理機構を含む。帯電露光処理機構は、レーザ光の走査により静電潜像を形成する。現像処理機構は、静電潜像を顕像化する。転写処理機構は、顕像化により生成したトナー像を記録材110へ転写する。定着処理機構は、記録材110に転写されたトナー像を定着させる。
これらの各機構は、プリンタ101内の画像形成部120、121、122、123、中間転写体106、定着器150、給紙カセット113等により構成される。画像形成部120、121、122、123は、形成する画像の色が異なるのみであり、同様の構成で同様の動作を行う。画像形成部120はイエロー(Y)の画像を形成する。画像形成部121はマゼンタ(M)の画像を形成する。画像形成部122はシアン(C)の画像を形成する。画像形成部123はブラック(K)の画像を形成する。画像形成部120、121、122、123は、それぞれ、感光ドラム105、帯電器111、レーザスキャナ107、及び現像器112を備える。
帯電露光処理機構は、感光ドラム105の表面を帯電器111により一様に帯電し、レーザスキャナ107により感光ドラム105の表面に静電潜像を形成する。感光ドラム105は、表面に感光層を有するドラム形状の感光体であり、ドラム軸を中心に回転する。帯電器111は、回転する感光ドラム105の表面の感光層を一様に帯電させる。
レーザスキャナ107は、半導体レーザから出射されるレーザ光を一方向に走査する発光部108と、発光部108からのレーザ光を感光ドラム105に向けて反射する反射ミラー109とを含む。レーザスキャナ107は、プリンタコントローラ300から供給された画像データに応じて、発光部108から出射されるレーザ光を駆動するレーザドライバを備える。半導体レーザから出射されたレーザ光は、発光部108内の回転多面鏡の回転に応じて一方向に振られる。一方向に振られたレーザ光は、反射ミラー109を介して感光ドラム105を照射する。これによりレーザ光が感光ドラム105の表面を一方向(ドラム軸方向)に走査して静電潜像を形成する。レーザスキャナ107が感光ドラム105を走査する一方向(図中奥行き方向)が主走査方向である。
現像処理機構は、現像器112から供給されるトナーにより、静電潜像を顕像化して感光ドラム105上にトナー像を形成する。感光ドラム105上のトナー像は、トナー像とは逆特性の電圧を印加された中間転写体106上に転写される。カラー画像形成時には、各色に対応した画像形成部120、121、122、123のそれぞれの感光ドラム105から、順次、重畳するようにトナー像が中間転写体106に転写される。本実施形態では、中間転写体106は、図中時計回りに回転しており、画像形成部120(イエロー)、画像形成部121(マゼンタ)、画像形成部122(シアン)、画像形成部123(ブラック)の順にトナー像が転写される。これによりフルカラーのトナー像(可視像)が中間転写体106上に形成される。なお、感光ドラム105及び現像器112は、プリンタ101の筐体に対して着脱可能である。
転写処理機構は、中間転写体106上に形成された可視像(トナー像)を給紙カセット113から給送された記録材110に転写する。転写処理機構は、中間転写体106から記録材110にトナー像を転写するために転写ローラ114を備える。各画像形成部120、121、122、123から中間転写体106に転写されたトナー像は、中間転写体106が図中時計回りに回転することで転写ローラ114まで搬送される。記録材110は、トナー像が転写ローラ114に搬送されるタイミングに合わせて、転写ローラ114へ搬送される。転写ローラ114は、記録材110を中間転写体106に圧接すると同時に、トナー像と逆特性のバイアスが印加されることで、記録材110にトナー像を転写する。
中間転写体106の周囲には、画像形成開始位置検出センサ115及び画像濃度センサ117が配置される。画像形成開始位置検出センサ115は、画像形成時の印字開始位置の決定に用いられる。画像形成開始位置検出センサ115は、中間転写体106の回転方向で転写ローラ114の上流側に設けられる。画像濃度センサ117は、画像濃度制御時に、中間転写体106に形成される画像濃度検出用のテスト画像の画像濃度の測定に用いられる。画像濃度センサ117は、中間転写体106の回転方向で画像形成部123の下流側に設けられる。
給送処理機構は、記録材110を収納する給紙カセット113と、記録材110が給送される搬送パスと、記録材110を搬送するための各種ローラとを備える。記録材110は、給紙カセット113から給紙され、搬送パスを搬送されながらトナー像が転写及び定着されることで画像が形成され、プリンタ101の外部に排出される。記録材110の搬送方向は、主走査方向に直交する副走査方向となる。
記録材110は、給紙カセット113から給紙されて、搬送パスを転写ローラ114まで搬送される。給紙カセット113から転写ローラ114までの搬送パスの途中には、記録材110の搬送タイミングを調整するための給紙タイミングセンサ116が設けられる。画像形成開始位置検出センサ115が中間転写体106上の画像を検出するタイミングと、給紙タイミングセンサ116が記録材110を検出するタイミングとにより、記録材110が転写ローラ114へ搬送されるタイミングが調整される。これにより記録材110の所定の位置に、中間転写体106からトナー像が転写される。
トナー像が転写された記録材110は、定着処理機構へ搬送される。本実施形態の定着処理機構は、定着器150を備える。定着器150は、記録材110にトナー像を熱圧着するために、記録材110を加熱するための定着ローラ151、記録材110を定着ローラ151に圧接させるための加圧ベルト152、及び定着完了を検知する定着後センサ153を含む。定着ローラ151は中空ローラであり、内部にヒータを有し、回転することで記録材110を搬送するように構成されている。加圧ベルト152は、記録材110を定着ローラ151に圧接する。定着後センサ153は、画像定着後の記録材110を検出する。
定着器150で画像定着された記録材110は、そのまま排出される場合と、搬送パス135に搬送される場合とがある。そのために、定着器150の後にフラッパ132が設けられる。フラッパ132は、記録材110を搬送パス135と搬送パス201とのいずれかに誘導する。搬送パス201は搬送ローラ140、141を備える。搬送パス201へ誘導された記録材110は、搬送ローラ140、141により搬送され、画像が形成された面を上に向けてプリンタ101から処理装置600へ排出される。搬送パス201の搬送ローラ140と搬送ローラ141との間には、記録材110の画像を検出可能な位置にラインセンサ138が設けられる。
ラインセンサ138は、CMOSラインセンサや、CCDラインセンサ等の光学センサである。ラインセンサ138は、搬送ローラ140、141により搬送パス201を搬送される記録材110に形成された画像の読み取りを行う。ラインセンサ138は、読取結果として赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の輝度値を含む読取信号を出力する。これらの読取信号の輝度値は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色の濃度値へ変換して用いられる。一般的に、シアンは赤センサの輝度値、マゼンタは緑センサの輝度値、イエローは青センサの輝度値、ブラックは緑センサの輝度値から算出される。その際、RGBの各輝度値とCMYKの各濃度値との関係性を事前に取得して生成されたLUT(Look Up Table)を用いて、各輝度値から各色濃度値への変換が行われる。このようなLUTは、予め画像形成装置100内に保存される。
搬送パス135は、記録材110の表裏面の反転に用いられる反転パス136まで記録材110を搬送するための経路である。反転パス136には、記録材110を検出する反転センサ137が設けられる。反転センサ137が記録材110の後端を検出すると、記録材110は反転パス136で搬送方向が反転される。搬送方向が反転した記録材110は、搬送パス135と反転パス139とのいずれかに搬送される。そのために搬送パス135と反転パス139との分岐点にフラッパ133が設けられる。搬送パス135に搬送される場合、記録材110は、フラッパ133により搬送パス135へ誘導され、さらにフラッパ134により搬送パス201へ誘導される。これにより記録材110は、表裏面が反転されて(画像が形成された面を下に向けて)プリンタ101から処理装置600へ排出される。反転パス139に搬送される場合、記録材110は、フラッパ133により反転パス139へ誘導される。反転パス139へ誘導された記録材110は、表裏面が反転されて、再度、転写ローラ114へ搬送される。これにより記録材110は、裏面への画像形成が行われる。
(画像濃度センサ)
図2は、画像濃度センサ117の構成説明図である。上述の通り、画像濃度センサ117は、中間転写体106に形成された画像濃度検出用のテスト画像を検出する。画像濃度センサ117は、光源である発光ダイオード(LED)1171及び受光部1172、1173を含む光学センサと、光学センサが実装される電気基板(不図示)とを備える。受光部1172、1173は、例えばフォトダイオードである。
LED1171は、中間転写体106に対して所定の入射角度(ここでは15°)で赤外線光を照射する。受光部1172は、LED1171から中間転写体106やテスト画像に照射された光の反射光を、正反射角度の位置で受光する。受光部1173は、LED1171から中間転写体106やテスト画像に照射された光の反射光のうち、拡散反射光を受光する。電気基板には、LED1171に電流を供給してLED1171を発光させる駆動回路と、受光部1172、1173が受光した反射光の受光量に応じて生じる電流を電圧に変換するIV変換機能を有する受光回路とが実装される。
以上のような構成の画像濃度センサ117は、正反射光と拡散反射光の両方を計測可能である。正反射光を受光する受光部1172及び拡散反射光を受光する受光部1173は、それぞれ、中間転写体106による反射光及びテスト画像による反射光を計測する。
その際、ブラックトナーのテスト画像は、受光部1172により取得した正反射光の検出結果から濃度値へ変換される。シアン、マゼンタ、イエローの有彩色のテスト画像は、受光部1173により取得した拡散反射光の検出結果から濃度値へ変換される。画像形成装置100は、上述の通り、LUTを用いて検出結果に含まれる輝度値を濃度値へ変換する。
なお、画像濃度センサ117は、本実施形態で示した構成に限定するものではない。例えば受光部1172或いは受光部1173は、反射光を受光する光軸が、中間転写体106のテスト画像が形成される面に対して法線方向になるように配置されてもよい。また、受光部1172及び受光部1173は、偏光フィルタを備えた構成でもよい。受光部1172と受光部1173は、本実施形態ではLED1171から照射された赤外線光が中間転写体106で反射される位置に対して対向する位置に配置される構成について説明するが、これらは適宜配置することが可能である。
(プリンタコントローラ)
図3は、本実施形態のプリンタコントローラ300の説明図である。プリンタコントローラ300は、画像形成装置100の外部に設けられた装置であるホストコンピュータ301と通信可能に接続される。ホストコンピュータ301と画像形成装置100とはUSB2.0High-Speed、1000Base-T/100Base-TX/10Base-T(IEEE 802.3準拠)等の通信線や無線によって通信可能に接続されている。
プリンタコントローラ300は、プリンタ101全体の動作を制御する。そのためにプリンタコントローラ300は、操作パネル180、リーダ400、及びエンジン部1011に接続される。エンジン部1011は、プリンタコントローラ300からの指示に応じて、プリンタ101内の各機構の動作を制御して、記録材110への画像形成処理を行う。エンジン部1011は、エンジン制御部102を備える。エンジン制御部102は、エンジン部1011の各機構の動作を制御する。エンジン制御部102は、画像濃度センサ117及びラインセンサ138によるテスト画像の検出動作も制御する。エンジン制御部102は、例えばCPU(Central Processing Unit)により構成される。
プリンタコントローラ300は、ホストインタフェース(I/F)302、パネルインタフェース(I/F)312、リーダインタフェース(I/F)313、エンジンインタフェース(I/F)319、及び入出力バッファ303を備える。ホストI/F302は、ホストコンピュータ301との間の通信インタフェースである。パネルI/F302は、操作パネル180との間の通信インタフェースである。リーダI/F313は、リーダ400との間の通信インタフェースである。エンジンI/F319は、エンジン部1011との間の通信インタフェースである。入出力バッファ303は、各インタフェースを介して制御コードやデータの送受信を行うための一時記憶領域である。
プリンタコントローラ300は、CPU314、プログラムROM(Read Only Memory)304、及びRAM(Random Access Memory)310を備える。CPU314は、プログラムROM304に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、プリンタコントローラ300の動作を制御する。RAM310は、プリンタコントローラ300が処理を実行する際の作業領域を提供する。
プログラムROM304は、モジュールとして、画像情報生成部305、主走査ムラ補正テーブル生成部306、自動階調補正生成部307、多次色テーブル生成部308、及び画像欠陥検出部309を有する。画像情報生成部305は、ホストコンピュータ301から取得したデータの設定により、各種の画像オブジェクトを生成する。主走査ムラ補正テーブル生成部306は、主走査方向の画像濃度ムラをレーザ発光強度の補正により抑制するための主走査ムラ補正テーブルを生成する。自動階調補正生成部307は、単色の濃度階調補正を行う階調補正テーブル(γLUT)を生成する。多次色テーブル生成部308は、多次色の変動を補正するために、多次元LUTであるICCプロファイルを生成する。画像欠陥検出部309は、ラインセンサ138により読み取られた画像中の画像欠陥を検出する。
RAM310は、画像情報生成部305、主走査ムラ補正テーブル生成部306、自動階調補正生成部307、及び多次色テーブル生成部308による処理結果を一時格納する。RAM310は、テーブル格納部311を有する。テーブル格納部311は、主走査ムラ補正テーブル、γLUT、ICCプロファイル、及び後述の濃度変換テーブルを格納する。
プリンタコントローラ300は、RIP(Raster Image Processor)部315、色処理部316、階調補正部317、及び擬似中間調処理部318を備える。RIP部315は、画像オブジェクト(画像データ)をビットマップ画像に展開する。色処理部316は、RIP部315でビットマップ画像に展開された画像データに対して、ICCプロファイルを用いて多次色の色変換処理を行う。階調補正部317は、γLUTを用いて、色処理部316で色変換処理された画像データに対して、単色の階調補正処理を実行する。擬似中間調処理部318は、階調補正部317で階調補正された画像データに対して、ディザマトリクスや誤差拡散法等の擬似中間調処理を実行する。擬似中間調処理部318で擬似中間処理された画像データは、エンジンI/F319を介してエンジン部1011へ送信される。エンジン部1011のエンジン制御部102は、エンジンI/F319から取得した画像データに基づいて画像形成処理を行う。
以上のようなプリンタコントローラ300の各部は、システムバス320に接続されており、システムバス320を介して通信可能である。CPU314は、システムバス320を介して、画像形成時に使用されるICCプロファイル、γLUT、及び主走査ムラ補正テーブルを管理更新する。CPU314は、色処理部316や階調補正部317等に最新のテーブルを反映させることで所望の色の画像を出力可能にする。
(γLUT)
階調補正用のテスト画像の形成箇所によらないγLUTについて説明する。図4は、階調が再現される様子を説明する4限チャートである。第I象限は、原画像を読み取ったセンサの読取特性を表す。このセンサは、原画像の画像濃度を濃度信号に変換する。第II象限は、濃度信号を、レーザスキャナ107から出力されるレーザ光の光量を表すレーザ出力信号に変換するための、γLUTの変換特性(データ特性)を表す。第III象限は、レーザ出力信号を、記録材に形成される画像の画像濃度に変換するプリンタ101の記録特性を表す。第IV象限は、原画像の画像濃度と記録材に形成した画像の画像濃度との関係を示す。つまり4限チャートは、図1に示す画像形成装置100のトータルの階調再現特性を示す。
図4は、8ビットのディジタル信号で処理する場合であり、階調数が256階調を示している。ここで、第I象限におけるセンサは、記録材110上の階調補正用のテスト画像を読み取るラインセンサ138や、中間転写体106上の階調補正用のテスト画像を読み取る画像濃度センサ117である。プリンタ101によるトータルの階調特性、つまり第IV象限の階調特性をリニアにするために、第III象限のプリンタ特性がノンリニアな分が、第II象限のγLUTによって補正される。γLUTにより階調特性が変換された画像信号は、レーザドライバのパルス幅変調(PWM)回路によってドット幅に対応するパルス信号に変換され、発光部108を駆動制御するレーザドライバへ送信される。本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの全色について、パルス幅変調による階調再現方法が用いられる。
レーザスキャナ107の発光部108から出力されるレーザ光の走査により、感光ドラム105上には、ドット面積が変化することで階調が制御された、所定の階調特性を有する静電潜像が形成される。この静電潜像が現像されてトナー像となり、記録材110に転写及び定着されることで、階調画像が再生される。
(中間転写体106に形成された階調補正用のテスト画像による階調補正)
画像形成装置100は、二つの異なる手法でキャリブレーションを行う。すなわち画像形成装置100は、記録材110の端部領域(非画像領域)に印刷されたテスト画像の読取結果を用いたキャリブレーションと、中間転写体106に形成されたテスト画像の読取結果を用いたキャリブレーションとを行う。これらは従来から行われているキャリブレーションである。
中間転写体106上に階調補正用のテスト画像を形成して行われる階調補正処理(キャリブレーション)は、画像濃度センサ117を制御するエンジン制御部102及びCPU314の協働により行われる。階調補正部317は、プリンタ101により形成される画像の階調特性の調整を行う。階調補正部317は、色処理部316による色補正処理の初期調整を行った後、プリンタ101による一定の処理枚数間隔(例えば100枚)でキャリブレーションを行う。
図5は、中間転写体106に形成される階調補正用のテスト画像の例示図である。中間転写体106に形成される階調補正用のテスト画像(階調補正パターン1061)は、中間転写体106の回転により画像濃度センサ117の検知位置を通過する位置に形成される。階調補正パターン1061は、色毎に、階調値を段階的に異ならせた複数の階調パッチ(図5では11階調)から構成される。複数の階調パッチは、それぞれが例えば一辺が約10[mm]の正方形状であり、中間転写体106の回転方向に一列に配列されている。
各色の階調パッチは、中間転写体106の地合いを検知するための階調パッチ(つまり階調値が0の階調パッチ)が、中間転写体106の回転方向の両端に配置される。階調値が0の階調パッチに挟まれて、階調値が均等に割り振られた9個の階調パッチが配置される。階調値が0~255で表される場合、階調補正パターン1061は、階調値が0、16、32、64、86、104、128、176、224、255、0の各色の階調パッチにより構成される。なお、階調補正パターン1061は、画像濃度センサ117が主走査方向(中間転写体106の回転方向に直交する方向)に複数設けられる場合に、各画像濃度センサ117に対応して複数形成されてもよい。
階調補正パターン1061は、画像形成装置100が画像形成を行わないタイミングで形成される。階調補正パターン1061は、画像形成装置100が所定枚数の記録材110に画像を形成したタイミングで印刷ジョブに割り込んで、或いは印刷ジョブの終了後に形成される。つまり、画像形成装置100が所定枚数の記録材110に画像を形成したタイミングで印刷ジョブに割り込んで、或いは印刷ジョブの終了後に、中間転写体106に形成されたテスト画像の読取結果を用いたキャリブレーションが行われる。
中間転写体106上の階調補正パターン1061から読み取られた濃度値に基づいてγLUTを更新する方法について説明する。
自動階調補正処理の実行直後のように記録材110に形成される画像が目標となる階調再現特性となっているときに、画像濃度センサ117で読み取った階調補正パターン1061の値が中間転写体106上の階調ターゲットとして保持される。自動階調補正処理とは、印刷ジョブ中に実行される階調補正処理ではなく、ユーザが所定のタイミングで行う階調補正処理のことである。自動階調補正処理は、各色の最大濃度と各色、各スクリーンパターンにおける階調特性を予め定められた目標値になるように調整する。階調ターゲットと階調補正パターン1061から読み取った濃度値とを比較して作成した中間転写体106における変換LUTが記録材110に対するγLUTに合成される。ここで「合成」とは、記録材110上で目標となる階調再現特性が得られているときの中間転写体106の階調ターゲットと記録材110におけるγLUTとの関係を紐づけることで、記録材110に対するγLUTを作成することである。記録材110に対するγLUTは、中間転写体106上の階調補正パターン1061の濃度値から作成される。
(記録材110に形成された階調補正用のテスト画像)
図6は、ユーザからの指示に応じたユーザ画像とともに記録材110に形成される階調補正用のテスト画像の例示図である。記録材110は、図6に示す矢印方向(搬送方向)に搬送される。記録材110に形成される階調補正用のテスト画像(階調補正パターン1104)は、ユーザ画像が形成される画像領域1101を除く記録材110の端部領域(非画像領域1102)に形成される。本実施例の階調補正パターン1104は、搬送方向において記録材110の端部領域(非画像領域1102)に形成される。画像領域1101は、図6においてドットで示された領域である。記録材110には、断裁用マーク1103が予め付与される。断裁用マーク1103は、L字形のマークが2つ組み合わされて構成され、画像領域1101の四隅に設けられる。記録材110は、断裁用マーク1103で断裁される。なお、画像領域1101のドットは説明のために示したものであり、実際には記録材110に印字されない。
階調補正パターン1104は、記録材110の一方の面に色毎に形成される。階調補正パターン1104は、通常は画像領域1101に重複しないようにその外側の非画像領域1102に形成される。しかし、CPU314が画像領域1101に重複して形成すると判定した場合、階調補正パターン1104は、画像領域1101に重複して形成されることもある。本実施形態において画像領域1101に重複するとは、画像領域1101のみに重複して形成される場合のみならず、画像領域1101と非画像領域1102とに跨って形成される場合も含む。
階調補正パターン1104は、記録材110の周縁部のいずれに形成されてもよい。本実施形態では、階調補正パターン1104は、記録材110の搬送方向(記録材110の長手方向)に直交する方向(記録材110の短手方向)の記録材110の両端部に形成される。すなわち、2色の階調補正パターン1104が記録材110の短手方向の一端部に形成され、残りの2色の階調補正パターン1104が記録材110の短手方向の他端部に形成される。本実施形態では、シアン及びマゼンタの階調補正パターン1104が記録材110の短手方向の一端部に形成され、イエロー及びブラックの階調補正パターン1104が記録材110の短手方向の他端部に形成される。これにより、記録材110の搬送方向の先端部に階調補正パターン1104が形成されず、定着処理時の記録材110の巻き付きの発生をより確実に抑制することができる。
階調補正パターン1104は、各色の階調値を段階的に異ならせた複数の階調パッチ(図6では11階調)から構成される。複数の階調パッチは、それぞれが例えば一辺が約8[mm]の正方形状であり、搬送方向に一列に配列されている。
各色の階調パッチは、記録材110の地合いを検知するための階調パッチ(つまり階調値が0の階調パッチ)が、記録材110の搬送方向の両端に配置される。階調値が0の階調パッチに挟まれて、階調値が均等に割り振られた9個の階調パッチが配置される。階調値が0~255で表される場合、階調補正パターン1104は、階調値が0、16、32、64、86、104、128、176、224、255、0の各色の階調パッチにより構成される。なお、階調補正パターン1104は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに限らず、赤、緑、青の各色やプロセスブラックにより構成されてもよい。また、サイズや階調順序も限定されるものではない。
(濃度変換テーブル)
記録材110の目標階調と中間転写体106のような像担持体の目標階調とは、測定箇所が異なるために同じ目標値にならない。そのために、記録材110を用いたキャリブレーションの実行後に、像担持体(中間転写体106)に形成されたテスト画像を用いてキャリブレーションを実行すると、記録材110に形成する画像の画像濃度が変化する可能性がある。これは、記録材110上のテスト画像の画像濃度の変化と、像担持体上のテスト画像の画像濃度の変化が同じとはならないためである。
本実施形態の画像形成装置100は、記録材110のキャリブレーションの目標階調に像担持体の目標階調を使用する。そのために画像形成装置100は、記録材110上の画像の画像濃度を像担持体上の画像の画像濃度に置き換えるための変換条件として濃度変換テーブルを必要とする。この濃度変換テーブルにより、記録材110上の画像の画像濃度を像担持体上で検出した画像の画像濃度と見なすことができる。そのために目標階調は、記録材110毎に設定する必要はなく、像担持体の目標階調を使用することができる。
図7は、濃度変換テーブルの作成処理を表すフローチャートである。濃度変換テーブルは、中間転写体106と記録材110のそれぞれに階調補正パターン(パターン画像)を形成し、各階調補正パターンの読取結果の関係に基づいて作成(生成)される。濃度変換テーブルの作成は、当該種類の記録材が初めて画像形成装置100により画像形成されて出力されるタイミングで行われることが好適である。濃度変換テーブルは、記録材の種類毎に作成されて格納されるルックアップテーブルである。
濃度変換テーブルにより像担持体上の画像濃度と、当該種類の記録材の画像濃度とが紐付けられる。濃度変換テーブルは、記録材110の画像の画像濃度と像担持体の画像の画像濃度との紐付けであるため、その実行タイミングは別途定めてもよく、ユーザが実行を指示するボタンが用意されていてもよい。濃度変換テーブルは、種々の条件に応じて再生成されることが好適である。そのために濃度変換テーブルは、後述する再生成判断により適切なタイミングで再び生成される。
濃度変換テーブルの作成処理が開始されると、CPU314は、エンジン制御部102によりエンジン部1011を制御して、記録材110上に、図6に例示する階調補正パターン1104(第1パターン画像)を形成する(S71)。CPU314は、エンジン制御部102によりラインセンサ138を制御して、記録材110に形成した階調補正パターン1104を読み取る(S72)。ラインセンサ138による階調補正パターン1104の読取結果(センサ信号値)は、エンジンI/F319を介してCPU314へ送信される。CPU314は、センサ信号値に含まれる輝度値を濃度値へ変換する。
CPU314は、エンジン制御部102によりエンジン部1011を制御して、中間転写体106上に、図5に例示する階調補正パターン1061(第2パターン画像)を形成する(S73)。CPU314は、エンジン制御部102により画像濃度センサ117を制御して、中間転写体106に形成した階調補正パターン1061を読み取る(S74)。画像濃度センサ117による階調補正パターン1061の読取結果(センサ信号値)は、エンジンI/F319を介してCPU314へ送信される。CPU314は、センサ信号値に含まれる輝度値を濃度値へ変換する。
CPU314は、階調補正パターン1104の読取結果から得られた濃度値と、階調補正パターン1061の読取結果から得られた濃度値との関係に基づいて、濃度変換テーブルを作成する(S75)。なお、階調補正パターン1104と階調補正パターン1061の各階調パッチは同じ階調値としているが、これに限定する必要はない。階調補正パターン1104と階調補正パターン1061の各階調パッチの階調値が異なる場合、濃度変換テーブルは、それぞれの読取結果から得られた濃度値を線形補間し、線形保管後の濃度値同士を関連付けて作成される。
本実施形態の画像形成装置100は、濃度変換テーブルを生成するために階調補正用のテスト画像(階調補正パターン1104、1061)を用いている。これに限らず、階調補正用のテスト画像と濃度変換テーブルを生成するための画像(パターン画像)とは異なる画像であってもよい。濃度変換テーブルを生成するための画像(パターン画像)は、例えば、階調補正用のテスト画像より階調数の少ない画像であってもよい。また、本実施形態の画像形成装置100は、濃度変換テーブルを生成するために階調補正パターン1104と階調補正パターン1061とを別々に形成しているが、1種類のパターン画像を濃度センサ117とラインセンサ138によって検知してもよい。この場合、中間転写体106に形成されたパターン画像が記録材110へ転写された後に、ラインセンサ138が記録材110上のパターン画像を読み取る。そして、濃度変換テーブルはラインセンサ138の検知結果と濃度センサ117の検知結果とに基づいて生成される。
図8は、濃度変換テーブルの説明図である。濃度変換テーブルは、中間転写体106上の階調補正パターン1061の画像濃度センサ117による読取結果(濃度値)と、記録材110上の階調補正パターン1104のラインセンサ138による読取結果(濃度値)との関係(変換条件)を示す。作成された濃度変換テーブルは、テーブル格納部311に格納される。所定の画像をラインセンサ138で読み取って得られる濃度値Aは、濃度変換テーブルを通すことで、画像濃度センサ117の読み取り結果である濃度値A’に変換される。
(階調補正処理)
画像形成装置100は、記録材110を用いて、1ページ毎に階調補正処理等のキャリブレーションを実行する。中間転写体106を用いた階調補正処理は上述した通りである。本発明の特徴部分は、記録材110を用いてリアルタイムに行う階調補正処理である。
記録材110上に階調補正パターン1104(検知用画像)を形成して行う階調補正処理は、ラインセンサ138を制御するエンジン制御部102及びCPU314の協働により行われる。階調補正部317は、プリンタ101により画像が形成される記録材110毎に階調特性の調整を行う。すなわち、階調補正部317は、記録材110が1枚通紙されるたびにキャリブレーションを行う。図6に例示するように、記録材110の階調補正パターン1104は記録材110の非画像領域1102に形成される。そのために1枚の記録材110毎に階調補正が実行可能である。
図9は、階調補正処理を表すフローチャートである。この階調補正処理は、印刷ジョブに応じて記録材110に画像を形成している間、記録材110毎に行われる。
CPU314は、印刷ジョブに応じて印刷処理を開始すると(S81)、ユーザにより記録材110による階調補正(紙上補正)が指示されているか否かを判断する(S82)。
紙上補正が指示されていない場合(S82:N)、CPU314は、中間転写体106(像担持体)による階調補正を設定する。CPU314は、所定のタイミングで、エンジン制御部102によりエンジン部1011を制御して、中間転写体106に階調補正パターン1061を形成する(S91)。階調補正パターン1061は、例えばユーザ画像が形成された記録材110の枚数が20頁間隔で形成される。記録材110に複数頁の画像が形成される場合、N頁目の画像とN+1頁目の画像との間に階調補正パターン1061が形成される。このとき、20の倍数である。なお、階調補正パターン1061の形成される間隔は20頁間隔に限定されない。
CPU314は、画像濃度センサ117による中間転写体106上の階調補正パターン1061の読取結果から濃度値を検知する(S92)。CPU314は、階調補正パターン1061から検知した濃度値に基づいて、中間転写体106に形成する画像の画像濃度が目標値になるようにγLUTを作成する(S93)。CPU314は、作成したγLUTをテーブル格納部311に格納する。γLUTは、次の画像形成のタイミングで、階調補正部317による階調補正処理に用いられる。
紙上補正が指示されている場合(S82:Y)、CPU314は、濃度変換テーブルがすでにテーブル格納部311に格納されているか否かを確認する(S83)。濃度変換テーブルが格納されていない場合(S83:N)、CPU314は、図7で説明した処理に従って濃度変換テーブルを作成し、テーブル格納部311に格納する(S84)。
濃度変換テーブルが格納されている場合(S83:Y)、或いは濃度変換テーブルを作成した場合、CPU314は、印刷ジョブで指示されたユーザ画像と階調補正パターン(検知用画像)を記録材110に形成するようにプリンタ101を制御する(S85)。これにより、図6に例示するように、記録材110にユーザ画像及び階調補正パターン1104が印刷される。このとき、階調補正部317は、前回の階調補正処理で作成されたγLUTにより階調補正を行う。
CPU314は、ラインセンサ138による記録材110上の階調補正パターン1104(検知用画像)の読取結果から濃度値を検知する(S86)。CPU314は、テーブル格納部311に格納されている濃度変換テーブルに基づいて、検知した記録材110上の階調補正パターン1104の濃度値を、中間転写体106上の画像の濃度値へ変換する(S87)。
CPU314は、変換した階調補正パターン1104の濃度値に基づいて、中間転写体106に形成する画像の画像濃度が目標値になるようにγLUTを作成する(S88)。CPU314は、作成したγLUTをテーブル格納部311に格納する。γLUTは、次の画像形成のタイミングで、階調補正部317による階調補正処理に用いられる。
γLUTを作成したCPU314は、印刷ジョブで設定された印刷枚数の記録材110への画像形成が終了したか否かを判断する(S89)。印刷ジョブで設定された印刷枚数の記録材110への画像形成が終了していない場合(S89:N)、CPU314は、S85~S89の処理を、印刷ジョブで設定された印刷枚数の記録材110への画像形成が終了するまで繰り返し行う。なお、S84の濃度変換テーブルの作成処理では、記録材110に形成された階調補正パターンが用いられるため、記録材110が1枚使用される。そのために、S85の処理は2枚目の動作となる。印刷ジョブで設定された印刷枚数の記録材110への画像形成が終了した場合(S89:Y)、CPU314は、階調補正処理を終了する。
上述の通り、階調補正パターン1104は記録材110の非画像領域1102に形成される。そのために、画像形成を行うたびに階調補正処理が実行可能である。したがって、画像形成装置100は、階調補正のために印刷ジョブを停止することなく、適切な階調特性を維持することができる。S87の処理で変換される濃度値は、中間転写体106による階調補正処理で用いる濃度値に相当するため、中間転写体106による階調補正処理に従い、γLUTが作成される。
図10は、以上のような階調補正処理の効果の説明図である。横軸は画像形成された記録材110の枚数(出力枚数)、縦軸は画像濃度を示す指標(D)である。出力条件は、以下の通りである。画像印字信号比率は8%である。2000枚の128gコート紙である記録材110に画像形成が行われる。1000枚目まで、100枚毎に像担持体上(中間転写体106上)に階調補正パターン1061を形成して階調補正処理を行う。1001枚以降は記録材110上に1枚毎に階調補正パターン1104を形成して階調補正処理を行う。
実線は、記録材110上の画像の画像濃度を像担持体上の画像の画像濃度に変換し、その濃度情報に基づいてキャリブレーション(階調補正)を行った場合の画像濃度を表す。点線は、1001枚時点で記録材110上の画像の目標階調を決定してキャリブレーション(階調補正)を行った場合の画像濃度を表す。点線では、本来の目標階調からの差分が生じている。像担持体上の目標階調からずれた所定の時点で記録材110の目標階調を定めて補正を行ったため、ジョブ毎に見ればジョブに設定されたキャリブレーションの違いにより全体として出力された画像の画像濃度がずれていることがわかる。以上のように本実施形態を示す実線では目標階調に補正されつづけることが確認でき、有効であることがわかった。
本実施形態では、記録材110上の画像の濃度値から像担持体上の画像の濃度値への濃度変換を行うための濃度変換テーブルを使用して、階調補正を行う。この場合、記録材110を用いた階調補正を行うことにより補正頻度が向上する。そのために、階調補正をきめ細かく行うことができる。
(濃度変換テーブルの再生成判断)
濃度変換テーブルは、記録材の種類や画像形成条件に変更がなければ更新(再生成)する必要がない。また、生産性の観点からも濃度変換テーブルの再生成は望ましくない。しかし、記録材の種類が同じであっても、画像形成条件の変化や経時的な変動がある場合、画像濃度の特性が変化して階調補正の精度が低下する可能性がある。そのために、画像形成装置100は、濃度変換テーブルの再生成の判断を行い、適切なタイミングで濃度変換テーブルを再生成する。
濃度変換テーブル(変換条件)を再生成する要因の一つである画像形成条件の変化の例を以下に3例説明する。
1つ目は、現像コントラスト設定、転写電流設定、定着設定等が、ユーザやサービスマンからのユーザ指示情報により変更されて、推奨設定からオフセットされた目標に設定された場合である。現像コントラストは、現像時の静電潜像の電位と現像器112に印加される現像バイアスとの差である。転写電流は、トナー像の転写時に転写ローラ114に流れる電流である。転写電流は、トナー像が記録材110に転写される際の転写条件の一つである。定着設定は、定着器150がトナー像を記録材110に定着させる際の定着温度や圧接する圧力である。定着設定は、記録材110へのトナー像の定着条件の一つである。例えば、記録材110に形成する画像の光沢性を調整するために、定着処理時の温度設定が調整された場合に定着条件が制御(定着制御)される。このように設定が変更された場合、中間転写体106上の画像の画像濃度に変化がない場合であっても、記録材110に形成された画像の画像濃度が変わるため、濃度変換テーブルの傾きが変化する。
2つ目は、ディザが変更された場合である。ディザが変更されると、同じ載り量でも線数やディザ形状(ドット、ライン)に応じてドットゲインにより定着後濃度が変化する。そのために濃度変換テーブルの傾きが変化する。
3つ目は、印刷ジョブで片面/両面印刷の設定が変更された場合である。片面/両面設定が変更されると、記録材110が定着器150を通る回数が変化する。そのために、同じ載り量であっても定着後の濃度が変わり、濃度変換テーブルの傾きが変化する。
なお、上述した階調補正処理が行われて目標階調を更新されたときには、保持している全記録材の濃度変換テーブルを破棄し、新規に濃度変換テーブルを取得する。これは、目標階調の変更に合わせて、画像形成階調値や帯電、現像等の画像形成条件も変化しており、記録材を問わず、濃度変換テーブルの傾きが変わり得るためである。
濃度変換テーブルを再生成する要因の一つである経時的な変動の例を以下に2例説明する。経時的とは、濃度変換テーブルの作成時点からの、経過時間や画像形成枚数のことを指す。つまり濃度変換テーブルの作成したからの経過時間や画像形成枚数に基づいて、再生成の判断が行われる。経過時間が所定時間以上経過している場合や、画像形成枚数が所定枚数以上の場合に、濃度変換テーブルが再生成される。
1つ目は、トナー(現像剤)や部品の劣化である。現像剤が劣化するとトリボが変化し、転写効率や飛び散り量が変わり、定着後の画像濃度が変わる。そのために濃度変換テーブルの傾きが変化する。部品の劣化、例えば中間転写体106の抵抗が変化すると、転写効率が変わり、定着後の画像濃度が変わる。そのために濃度変換テーブルの傾きが変化する。なお、経時的な変動において、部品交換を行う際には記録材の種類を問わずに濃度変換テーブルの傾きが変わり得るため、保持している全記録材の濃度変換テーブルを破棄し、新規に濃度変換テーブルを取得する。
2つ目は、画像濃度センサ117やラインセンサ138の光源の劣化や窓汚れ等による、検知特性の変化である。画像形成装置100で画像形成した記録材の枚数が増加すると、トナーが画像形成装置100内で飛散して受光面のガラスに付着する。そのため、画像濃度センサ117やラインセンサ138は、定期的に光量調整を行うことで受光量が一定になるように制御され、一定濃度までの読取性能を担保している。しかし絶対光量に応じて、ハイライト部やシャドウ部の精度が変わってくる。例えば、光量が大きい場合にハイライト部の受光量は飽和しやすくなる。このような場合、実際の中間転写体106上の画像の画像濃度と記録材上の画像の画像濃度の関係が一定であっても、センサの検知特性変化によって濃度変換テーブルの傾きが変化する。
(再生成前の階調補正)
画像形成装置100が階調補正を長期間行っていない場合、現像剤の状態変化等の影響により、図4で示した第III象限のプリンタ特性が大きく変動し、第IV象限の階調特性がリニアになっていないことがある。この状態で濃度変換テーブルの作成を行うと、サンプリングする階調補正パターンに偏りが生じ、補間部分の精度が低下してしまう。そのため、前回の階調補正から所定時間経過している場合、濃度変換テーブルの再生成の前に階調補正を行うことが望ましい。
図11は、濃度変換テーブルの再生成をともなう階調補正処理を表すフローチャートである。濃度変換テーブルの再生成は、上述の通り、画像形成条件の変化や経時的な変動に応じて判断される。図9の階調補正処理と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。
図9のS81~S83の処理と同様に、印刷が開始されて濃度変換テーブルの有無が判断される(S81~S83)。なお、紙上補正が指示されていない場合(S82:N)、図9のS91~S93の処理と同様の処理が行われてγLUTが作成される(S91~S93)。濃度変換テーブルが格納されていない場合(S83:N)、図9のS84の処理と同様の処理が行われて、濃度変換テーブルが作成されてテーブル格納部311に格納される(S84)。
濃度変換テーブルが格納されている場合(S83:Y)、CPU314は、濃度変換テーブルの再生成を行うか否かを示す再生成フラグを確認する(S101)。再生成フラグに濃度変換テーブルの再生成が設定されている場合(S101:Y)、CPU314は、図9のS84の処理と同様の処理により濃度変換テーブルを作成する(S84)。再生成フラグに濃度変換テーブルの再生成が設定されていない場合(S101:N)、CPU314は、図9のS85~S89の処理と同様の処理によりγLUTを作成する(S85~S89)。
図12は、再生成の判断に用いられる情報の説明図である。本実施形態では、濃度変換テーブル作成時刻、濃度変換テーブル作成後の画像形成枚数(出力枚数)、現像コントラスト設定、転写電流設定、定着設定、ディザ、片面/両面印刷設定、像担持体上センサ光量、及び定着後センサ光量が、再生成の判断に用いられる。
濃度変換テーブル作成時刻及び濃度変換テーブル作成後の出力枚数は、作成時刻からの経過時間や出力枚数が所定値を超えた場合に、濃度変換テーブルの再生成を行うと判断される。本実施形態では、それぞれ1日以上、50000枚以上の閾値が設けられる。経過時間が1日以上或いは出力枚数が50000枚以上になると、濃度変換テーブルの再生成フラグが設定される。
現像コントラスト設定、転写電流設定、及び定着設定は、ユーザやサービスマンからのユーザ指示情報により推奨設定からオフセットされた目標が設定された場合に、濃度変換テーブルの再生成を行うと判断される。推奨設定からオフセットされた目標が設定されると、濃度変換テーブルの再生成フラグが設定される。ユーザ指示情報は操作パネル180から入力される。
ユーザやサービスマンの調整によりディザが変更された場合、濃度変換テーブルの再生成を行うと判断される。ディザが変更されると、濃度変換テーブルの再生成フラグが設定される。片面/両面印刷の印刷ジョブが切り替わった場合、濃度変換テーブルの再生成を行うと判断される。片面印刷と両面印刷の設定が変更されると、濃度変換テーブルの再生成フラグが設定される。
画像濃度センサ光量及びラインセンサ光量については、各センサから出力される光量が所定の閾値以上が変化した場合に、濃度変換テーブルの再生成を行うと判断される。本実施形態では、それぞれ10%の閾値が設けられる。画像濃度センサ光量及びラインセンサから出力される光量の少なくとも一方が10%以上変化すると、濃度変換テーブルの再生成フラグが設定される。
各項目に関して条件の切り替わりが発生した場合であっても、内部メモリに同条件の濃度変換テーブルが保持されており、経過時間等の条件に該当しなければ、再生成は行わずに保持されている濃度変換テーブルが用いられる。
濃度変換テーブルのリセット方法について説明する。ユーザやサービスマンによる部品交換や、ユーザによる階調補正処理が行われると、CPU314は、テーブル格納部311に格納されている濃度変換テーブルを削除する。これにより、次回の印刷ジョブの際に、濃度変換テーブルが新規に作成されることになる。この場合、印刷ジョブ開始前に階調補正を行うことが望ましい。階調補正が行われていない場合には、濃度変換テーブルの取得前に階調補正が行われてもよい。
以上説明したように、階調補正を行うために利用する濃度変換テーブルの取得判断を行うことで、取得に要するダウンタイムが削減でき、適切なタイミングで取得することで階調補正精度の低下を抑制することができる。
図13は、画像形成条件の変化や経時的な変動に応じて、濃度変換テーブルを再生成した場合の効果の説明図である。図13(a)は、横軸が出力枚数、縦軸が画像濃度を表す指標(D)である。出力条件は、以下の通りである。画像印字信号率は8%で記録材110は同一の光沢紙である。また、500枚目まで記録材110上に階調補正パターンを形成して階調補正処理を行い、その後に光沢性の調整のために定着温度を上げる設定を行い、501枚以降も記録材110上に階調補正パターンを形成して階調補正処理を行う。実線は、定着温度の設定変更後に濃度変換テーブルの再生成を行った結果を示し、再生成した濃度変換テーブルを用いてキャリブレーション(階調補正)を行った場合の画像濃度を表す。点線は、濃度変換テーブルを再生成せずに1枚目時点の濃度変換テーブルを使い続けて、キャリブレーション(階調補正)を行った場合の画像濃度を表す。
点線に本来の目標階調からの差分が生じている理由について説明する。図13(b)は、中間転写体106上の画像と記録材110上の画像のそれぞれの画像濃度の関係を示す濃度変換テーブルの説明図である。図13(b)の実線は1枚目時点の濃度変換テーブルを表し、点線は定着温度の設定変更後の501枚目時点の濃度変換テーブルを表す。定着温度を上げたことにより、同じ中間転写体106上の画像であっても、点線の方が記録材110上の画像の画像濃度が高いことが分かる。濃度変換テーブルの再生成を行わなかった場合、濃度変換誤差により記録材110から検知した画像濃度が高くなるため、画像濃度を下げるようにγLUTが調整される。そのため、図13(a)の点線は本来の目標階調から下がってしまう。以上のように本実施形態の有効性が示される。
(第2実施形態)
第1実施形態では、濃度変換テーブルに紐付く条件に基づいて、濃度変換テーブルの再生成判断を行う。しかし、条件を満たさない場合であっても、濃度変換テーブルの再生成が必要になる場合があり得る。第2実施形態では、ジョブ中の1枚目や定期的に濃度変換テーブルの比較用のデータを取得し、濃度変換テーブルと比較用データとを比較する。比較結果の差分が大きければ濃度変換テーブルが更新される。比較用データには、前回の階調補正に用いた濃度変換テーブルとは別のタイミングで作成された濃度変換テーブルが用いられる。これにより、より高精度の階調補正が可能となる。
図14は、第2実施形態の階調補正処理を表すフローチャートである。図9の階調補正処理と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。図9のS81~S83の処理と同様に、印刷開始されて濃度変換テーブルの有無が判断される(S81~S83)。なお、紙上補正が指示されていない場合(S82:N)、図9のS91~S93の処理と同様の処理が行われてγLUTが作成される(S91~S93)。濃度変換テーブルが格納されていない場合(S83:N)、図9のS84の処理と同様の処理が行われて、濃度変換テーブルが作成されてテーブル格納部311に格納される(S84)。
濃度変換テーブルが格納されている場合(S83:Y)、CPU314は、印刷ジョブの1枚目の処理であるか或いは所定枚数の印刷を行ったか否かを判断する(S1301)。ジョブの1枚目の処理ではない或いは所定枚数の印刷を行っていない場合(S1301:N)、CPU314は、図9のS85~S88の処理と同様の処理によりγLUTを作成する(S85~S88)。
ジョブの1枚目の処理或いは所定枚数の印刷を行っている場合(S1301:Y)、CPU314は、図9のS85、S86の処理と同様の処理により、記録材110に形成した階調補正パターンの濃度値を検知する(S1302、S1303)。
CPU314は、エンジン制御部102によりエンジン部1011を制御して、中間転写体106上に階調補正パターンを形成する(S1304)。これは濃度変換テーブルを作成するためではなく再生成の判断を行うためである。そのために、ここで形成する階調補正パターンは、図5に示す濃度変換テーブル作成用の階調補正パターン1061よりも階調数が少なくともよい。特定階調のみを用いることで、トナー消費量を抑制することができる。CPU314は、エンジン制御部102により画像濃度センサ117を制御して、中間転写体106に形成された階調補正パターンを読み取る。CPU314は、画像濃度センサ117による検知結果に基づいて階調補正パターンの濃度値を検知する(S1305)。
CPU314は、比較用テーブルを作成する(S1306)。CPU314は、S1305の処理で中間転写体106の階調補正パターンから検知した濃度値と、S1303の処理で記録材110の階調補正パターンから検知した濃度値とにより濃度変換テーブルを作成する。この際、CPU314は、中間転写体106に形成された階調補正パターンの濃度値に対応して記録材110に形成された階調補正パターンの濃度値を選択し、比較用テーブルを作成する。
CPU314は、元の濃度変換テーブルと比較用テーブルを比較する(S1307)。図15は、元の濃度変換テーブルと比較用テーブルの比較処理の説明図である。CPU314は、各階調で元の濃度変換テーブル(実線)と比較用テーブル(×印)を比較して、差分Δ1~Δ4を算出する。CPU314は、比較の結果、差分Δ1~Δ4の総和が閾値を超えていれば濃度変換テーブルの更新を行うと判断する(S1307:Y)。CPU314は、図15の点線で示すように、元の濃度変換テーブルと比較用テーブルとの差分比率を他階調に伝搬することで、濃度変換テーブルの更新を行う(S1308)。CPU314は、差分Δ1~Δ4の総和が閾値を超えていなければ濃度変換テーブルの更新を行わないと判断する(S1307:N)。濃度変換テーブルの作成が完了次第、CPU314は、所定枚数カウンタをリセットする(S1309)。
CPU314は、図9のS89の処理と同様に画像形成が終了したか否かを判断する(S89)。印刷ジョブで設定された印刷枚数の記録材110への画像形成が終了していない場合(S89:N(紙上補正の指示あり))、CPU314は、S1301以降の処理を、印刷ジョブで設定された印刷枚数の記録材110への画像形成が終了するまで繰り返し行う。印刷ジョブで設定された印刷枚数の記録材110への画像形成が終了した場合(S89:Y)、CPU314は、階調補正処理を終了する。
以上説明したように、階調補正を行うために利用する濃度変換テーブルの取得判断を行うことで、取得に要するダウンタイムが削減される。また、適切なタイミングで濃度変換テーブルを取得することで階調補正精度の低下を抑制することができる。
第1、第2実施形態の画像形成装置100は、紙上補正が有効になっている場合に、紙上補正と中間転写体106(像担持体)による階調補正との両方が実行されてもよい。この場合、記録材110の毎ページに階調補正パターン1104が形成されており、且つ、所定の頁間隔で階調補正パターン1061が形成される。
第1、第2実施形態では、キャリブレーションとして階調補正を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。記録材110と像担持体とを用いて異なる手法でそれぞれ行われるキャリブレーションに対して、本発明は有効である。