1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかる、開閉可能な扉(1)に設けられる戸当り装置(3,600)は、前記扉(1)に取り付けられるケース(310,610)と、前記ケース(310,610)に設けられ、床面(4)の受金具(5)に対して回動自在に取り付けられたフラップ(52)を引き寄せて当接する磁石(350)と、前記ケース(310,610)に対して回動自在に設けられ、前記フラップ(52)に設けられた係合孔(52h)と係合可能な第1突起(321)および第2突起(322)を有する係合体(320)と、前記ケース(310、610)に保持されて前記係合体(320)を回動自在に軸支する係合体ホルダ(330,630)と、前記ケース(310,610)または前記係合体ホルダ(330,630)に設けられ、前記磁石(350)に引き寄せられた前記フラップ(52)と前記ケース(310)との位置関係に基づいて前記係合体(320)が回転し、前記第1突起(321)または前記第2突起(322)と前記フラップ(52)の前記係合孔(52h)とが係合してロック状態を形成するロック機構部(333,633)とを備える。
〔2〕上記戸当り装置(3,600)において、前記係合体(320)は、前記ケース(310,610)に対して回動自在に回動する回動中心に対して左右対称となる位置に前記第1突起(321)および前記第2突起(322)が設けられている。
〔3〕上記戸当り装置(3,600)において、前記ロック機構部(333,633)は、前記係合体(320)と当接する弾性体のアーム部(333a、633a)を有し、前記係合体(320)は、当該係合体(320)が回転する際に前記アーム部(333a、633a)と当接する凸部(323)を有する。
〔4〕前記係合体(320)は、前記磁石(350)と前記フラップ(52)とが当接した状態で前記扉(1)の移動に応じて前記第1突起(321)または前記第2突起(322)が前記フラップ(52)によって押されると前記係合体ホルダ(330,630)に軸支された状態で回動する。
〔5〕前記係合体ホルダ(330,630)は、前記係合体(320)とともに前記ケース(310,610)に対して上下動可能な状態で収容されている。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の代表的な実施の形態にかかる戸当り装置の構成について図1乃至図14を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
ここで、図1は、第1の実施の形態に係る戸当り装置がフラップと当接した状態を示す斜視図である。図2(A)は、第1の実施の形態に係る戸当り装置が受金具のフラップと当接する直前の状態を示す斜視図、および、受金具のフラップと当接したときの状態を表す切断斜視図である。図3は、第1の実施の形態に係る受金具の構成を示す斜視図である。図4は、第1の実施の形態に係る戸当り装置の構成を示す分解斜視図である。図5は、第1の実施の形態に係る戸当り装置の組み立て順序の説明に供する分解斜視図である。図6は、第1の実施の形態に係る戸当り装置のケースに収容されたマグネットの配置を示す断面図である。図7は、第1実施の形態に係る戸当り装置の係合体の構成を示す平面図である。図8は、第1の実施の形態に係る戸当り装置の係合体ホルダの構成を示す斜視図である。図9は、第1の実施の形態に係る戸当り装置の係合体ホルダの構成を示す正面図、上面図、側面図および底面図である。図10は、第1の実施の形態に係る戸当り装置のケースに係合体および係合体ホルダが装着された状態を示す断面図である。図11は、第1の実施の形態に係る戸当り装置の解除位置およびロック位置の状態を示す断面図である。図12は、第1の実施の形態に係る戸当り装置が解除位置からロック位置へ移行するまでの過程を示す断面図である。図13は、第1の実施の形態に係る戸当り装置がロック位置から解除位置へ移行するまでの過程を示す断面図である。図14は、第1の実施の形態に係る戸当り装置がイレギュラーなロック位置から正常なロック位置へ自動的に復帰するまでの過程を示す断面図である。
なお、説明の都合上、図1において戸体(扉)1の開閉方向を開方向(Open)、閉方向(Close)とする。また、図4において、戸当り装置3の構成部材の位置関係について、上述した開方向(Open)と一致する矢印b方向を手前側、戸体(扉)1側と一致する矢印a方向を奥側とし、矢印ab方向を奥行方向とする。また、戸当り装置3を正面に見たときの矢印c方向を左側または左方、矢印d方向を右側または右方とし、矢印cd方向を水平方向と言う場合がある。さらに、矢印e方向を上側または上方、矢印f方向を下側または下方とし、矢印ef方向を上下方向と言う場合がある。なお、これらの方向は、説明の便宜上用いられるのであって、実際の使用状況に対応した方向ではない。
(2-1)第1の実施の形態
図1および図2に示すように、第1の実施の形態に係る戸当り装置が設けられた扉装置10の構成について説明する。扉装置10は、枠体2と、当該枠体2に一端側が軸支された戸体(以下これを「扉」とも言う。)1と、枠体2に対して開閉可能な扉1の先端側の下端外側に取り付けられた戸当り装置3と、床面4に設置され戸当り装置3に設けられた後述するマグネット350(図4等)の吸引力により戸当り装置3と当接する受金具5とを有している。
<受金具の構成>
図3に示すように、受金具5は、円盤形状のカバー部51と、取付部54と、を有している。取付部54は、一端が軸支された略矩形状の薄板状部材からなるフラップ52と、当該フラップ52を回動自在に支持する回動軸53とを有している。
取付部54は、取付用の貫通孔54a、54bを介して床面4に対してネジにより固定される。取付部54のほぼ中央には回動軸53を介してフラップ52が回動自在に支持されている。具体的には、フラップ52は、取付部54に面接触して倒れた横倒状態と、回動軸53を中心に起き上がった起立状態との間で自在に回動する。
カバー部51は、取付部54を覆うように取り付けられる。すなわちカバー部51は、取付部54の貫通孔54a、54bを介してネジにより床面4に固定する部分を隠し、フラップ52および回動軸53だけを露出する化粧板である。また、このカバー部51には、フラップ52および回動軸53を露出するため、フラップ52および回動軸53の大きさと対応したサイズの貫通穴51hが形成されている。
さらに、フラップ52には、略矩形状に貫通した係合孔52hが形成されている。図2(A)に示すように、扉1の開動作により戸当り装置3が移動して受金具5に近接しているが、扉1の戸当り装置3と受金具5とが対向していない状態では、フラップ52は、受金具5の取付部54に面接触して倒れた横倒状態であり、カバー部51とフラップ52とが面一になっている。
一方、図2(B)に示すように、扉1の開動作により戸当り装置3が受金具5に更に近接し、扉1の戸当り装置3と受金具5とが対向したとき、フラップ52の先端が戸当り装置3の内部に設けられたマグネット350(図4)の吸引力によって上方に引き寄せられ、戸当り装置3のケース310の手前側(矢印a方向)の先端部分318a(図4)に当接する。
<戸当り装置の構成>
図4乃至図10を用いて、戸当り装置3の構成について以下説明する。戸当り装置3は、主に、カバー300、ケース310、係合体320と係合体ホルダ330とが組み合わされた係合部340、および、マグネット350等を有している。
(カバー)
カバー300は、ケース310、係合部340およびマグネット350等の主要部品を全体的に覆う部材であり、角部に面取りが施された略三角筒形状を有している。カバー300は、樹脂またはプラスチックからなり、底部が床面4および受金具5と接触することのないようにから離れている。
(ケース)
図4乃至図6に示すように、ケース310は、扉1の下方端部に取り付けられる部材であり、内部に後述するマグネット350を収容するマグネット収容空間311、係合部340(係合体320および係合体ホルダ330)を収容する係合部収容空間312を有している。マグネット収容空間311および係合部収容空間312は、ケース310の水平方向(矢印cd方向)において並列に設けられている。
また、ケース310は、矢印cで示す左側および矢印dで示す右側にそれぞれ突出したフランジ部313およびフランジ部314を有し、そのフランジ部313、314には縦長状かつ楕円形状の貫通孔313h、314hが形成されている。ケース310のフランジ部313、314は、扉1に押し当てられた状態で当該フランジ部313、314の貫通孔313h、314hを介してネジ等により当該扉1に取り付けられる。
図6に示すように、ケース310は、奥行方向(矢印ab方向)に沿って切った断面において、手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)に向かって僅かに上側(矢印e方向)へ傾斜した略平行四辺形状を有している。
したがってケース310は、手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)に向かって僅かに上側(矢印e方向)へ傾斜した底壁部318を有し、その底壁部318に対してマグネット350およびヨーク360が載置されている。また、ケース310は、マグネット収容空間311を形成する略L字状からなるヨーク係止部319を有し、ヨーク係止部319によりヨーク360の奥行側(矢印ab方向)への移動が規制されている。
ケース310における底壁部318の手前側(矢印b方向)の先端部分318aは、マグネット350によって引き寄せられた受金具5のフラップ52が最初に当接される部分である。扉1が開方向(Open)へ移動すると、フラップ52は底壁部318と当接されたままの状態で先端部分318aから奥側(矢印a)方向へ移動していく。
ここでケース310の底壁部318には、ヨーク360と対応する部分に貫通孔318hが形成されている。これによりケース310では、マグネット350およびヨーク360の磁束により受金具5のフラップ52を引き付け易くしている。ただし、マグネット350およびヨーク360の磁束が十分に強ければ、ケース310の底壁部318に対して貫通孔318hが形成されていなくてもよい。
なお、ケース310の底壁部318には、奥側(矢印a方向)の端部に下側(矢印f方向)に突出した凸部318zが設けられている。凸部318zは、扉1が開いた場合に、戸当り装置3および受金具5によって所定の位置で扉1の動きが規制されることなく移動し続けた場合、マグネット350の作用により底壁部318に当接されたままのフラップ52の先端部と当接し、扉1の移動を停止させるためのストッパとして機能する。これにより扉1の開動作を停止することができる。
さらにケース310は、図10に示すように、手前内壁部316qと、奥内壁部316rと、軸保持部317とを有している。手前内壁部316qは、ケース310の手前側(矢印b方向)の端部に上下方向(矢印ef方向)に沿って直線状に延び、かつ途中から下方(矢印f方向)に向かって奥内壁部316rに近づくように傾斜した部分である。
奥内壁部316rは、手前内壁部316qと対向するように奥側(矢印a方向)の端部に配置され、上下方向(矢印ef方向)に沿って直線状に延びる部分である。軸保持部317は、手前内壁部316qと奥内壁部316rとの中間に設けられ、後述する係合体ホルダ330の回動軸332を回動自在に保持する部分である。
したがってケース310は、手前内壁部316qおよび奥内壁部316rによって後述する係合体ホルダ330を接触しただけの状態で保持しているため、係合体ホルダ330を上下方向(矢印ef方向)へ自在に移動し得る状態かつ下側(矢印f方向)へ抜け落ちることのないように保持している。
(マグネット)
図4および図5に示すように、マグネット350は、磁石からなり受金具5のフラップ52を吸引力(磁力)によって引き寄せるために設けられる。マグネット350は、略直方体形状を有し、ケース310のマグネット収容空間311から挿入される。
このときマグネット350は、断面略U字状からなるヨーク360に覆われた状態でマグネット350およびヨーク360と共にケース310のマグネット収容空間311に収容されて保持される。
図6に示すように、ケース310のマグネット収容空間311に収容されたマグネット350およびヨーク360は、当該ケース310の底壁部318に沿って手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)に向かって僅かに上側(矢印e方向)へ傾斜した状態で保持される。
ここで、ヨーク360は、鉄製であり、マグネット350と組み合わせることにより当該マグネット350から出る磁束を通り易くしてフラップ52を引き寄せる吸着力を高めるものである。因みに、マグネット350だけで十分な吸着力があれば、必ずしもヨーク360を用いる必要はない。
(係合部(係合体および係合体ホルダ))
係合部340は、係合体320と係合体ホルダ330とが組み合わされたアッセンブリである。係合部340は、係合体ホルダ330によって係合体320を回動自在に支持している。すなわち、係合部340の係合体320は、係合体ホルダ330を介してケース310に対して回動自在に設けられている。
(係合体)
図7に示すように、係合体320は、金属、薄板状の樹脂またはプラスチック等からなり、略長方形状の係合本体320aと、係合本体320aの下側(矢印f方向)の両端部に形成された第1突起321および第2突起322と、係合本体320aの上側(矢印e方向)の中央に形成された凸部323とを有している。
係合本体320aは、手前側(矢印b方向)の手前側面320afと、奥側(矢印a方向)の奥側面320abを有している。係合本体320aの手前側面320afおよび奥側面320abは、係合体320の回転を規制するストッパ面として機能する。また、係合本体320aのほぼ中央には、係合体ホルダ330の回動軸332が挿通される際に用いられる貫通孔320hが形成されている。
係合体320の第1突起321および第2突起322は、互いに係合本体320aの下側(矢印f方向)の両端部から下方かつ互いに向かい合うように僅かに傾斜した状態で先細状に延びる爪状部材である。これらの第1突起321および第2突起322は、受金具5のフラップ52に設けられた係合孔52hと係合可能な部分である。
2つの第1突起321および第2突起322は、係合本体320aの貫通孔320hを中心として左右対称に設けられている。すなわち、係合体320では、ケース310に対して回動自在に回動する回動中心となる貫通孔320hに対して左右対称となる位置に第1突起321および第2突起322が設けられている。
したがって、係合本体320aと2つの第1突起321と第2突起322との間には、凹状に凹んだ凹空間325が形成されている。係合体320の凹空間325は、後述するが、受金具5のフラップ52の先端が入り込むことが可能な空間であり、そのときフラップ52の先端が凹空間325において第1突起321と当接されることになる。
なお、係合体320では、手前側(矢印b方向)を第1突起321、奥側(矢印a方向)を第2突起322としているが、左右対称形状であるため、説明の便宜上に過ぎず、手前側(矢印b方向)を第2突起322、奥側(矢印a方向)を第1突起321としてもよい。
(係合体ホルダ)
図8乃至図11に示すように、係合部340の係合体ホルダ330は、薄板状の樹脂またはプラスチック等の弾性体からなり、略U字状のホルダ本体331と、当該ホルダ本体331のほぼ中央に設けられた回動軸332と、ホルダ本体331の奥側(矢印a方向)の端部から略逆V字状に折り曲げられて延びるロック機構部333とを有している。
ホルダ本体331は、図6に示したようにケース310の底壁部318と同様に傾斜した底面331bを有している。また、ホルダ本体331は、図10に示したようにケース310の係合部収容空間312を形成する手前側(矢印b方向)の手前内壁部316qと奥側(矢印a方向)の奥内壁部316rに沿って下方(矢印f方向)に向かうに連れて僅かに細くなる略先細形状を有している。
すなわちホルダ本体331は、ケース310の手前内壁部316qの傾斜に沿った傾斜面331kと、ケース310の奥内壁部316rと同様に下方(矢印f方向)向かって真っ直ぐに延びる側面331sとを有している。
したがってホルダ本体331は、ケース310に対して上側(矢印e方向)から下側(矢印f方向)へ向かって挿入されるだけで、ケース310の手前内壁部316qおよび奥内壁部316rによって保持される。すなわち、係合体ホルダ330は、ケース310の係合部収容空間312において上下方向(矢印ef方向)に移動可能に保持されている。
ホルダ本体331の回動軸332は、係合体320の貫通孔320hに挿通され、当該回動軸332を中心として係合体320を時計回り方向又は反時計回り方向に回動させる中心軸である。
図9乃至図11に示すように、ホルダ本体331は、手前側(矢印b方向)の端部にストッパ部334を有している。ストッパ部334は、係合体320が時計回り方向に回転したとき、当該係合体320の手前側面320afが接触して時計回り方向への回転を規制するストッパ面334pを有している。
ストッパ部334のストッパ面334pは、ストッパ部334の上下方向のほぼ中央から下方(矢印f方向)へ向かうに連れて係合体320から離れるように傾斜した傾斜面であり、係合体320の手前側面320af(図7)と当接される面である。
また、ロック機構部333は、奥行方向(矢印ab方向)において、ストッパ部334のストッパ面334pと対向する奥側(矢印a方向)の端部に、係合体320が反時計回り方向に回転したとき、当該係合体320の奥側面320abが接触して反時計回り方向への回転を規制するストッパ面333pを有している。
ロック機構部333のストッパ面333pは、ロック機構部333の下側端部において下方(矢印f方向)へ向かうに連れて係合体320から離れるように傾斜した傾斜面であり、係合体320の奥側面320ab(図7)と当接される面である。
すなわち、ストッパ部334のストッパ面334pおよびロック機構部333のストッパ面333pは、下方(矢印f方向)に向かって互いに離間するように傾斜し、係合体320が回転可能な角度範囲を決定するストッパとして機能する。
ホルダ本体331のロック機構部333は、当該ホルダ本体331の奥側端部と一体に設けられ、そこから上方(矢印e方向)に向かって逆V字状に延びる部材であり、V字の折れ曲がる部分に相当する屈曲部333bを中心として下方(矢印f方向)へ延びるアーム部333aを有している。ロック機構部333は、アーム部333aに負荷がかかると屈曲部333b付近を介して撓むことになる。
図10に示すように、アーム部333aは、ホルダ本体331の回動軸332に軸支された係合体320の凸部323と当接することができる程度の長さを有している。このアーム部333aの先端と係合体320の凸部323とが当接されるが、係合体320の回動に応じてアーム部333aが凸部323の手前側(矢印b方向)または奥側(矢印a方向)へ撓むことになる。
ロック機構部333のアーム部333aは、弾性力を有しているが、図11(A)および(B)に示すように、凸部323の手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)へ、または、奥側(矢印a方向)から手前側(矢印b方向)へ空間的な位置が変化する際には、係合体320の回動に対する抵抗となり得る。なお、アーム部333aは、その太さを変更することにより、係合体320に対する抵抗力を自在に変更することが可能である。
図11(A)に示すように、戸当り装置3のロック解除状態では、係合部340の係合体320は図中時計回り方向(手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)へ向かう方向)へ僅かに回転しており、第1突起321が下方(矢印f方向)に位置し、第2突起322が上方(矢印e方向)に位置することになる。この段階では、係合体320の第1突起321および第2突起322の何れにおいても、受金具5のフラップ52の係合孔52hと係合されていない。
図11(B)に示すように、一方、戸当り装置3のロック状態では、係合部340の係合体320は図中反時計回り方向(奥側(矢印a方向)から手前側(矢印b方向)へ向かう方向)へ僅かに回転しており、第1突起321が上方(矢印e方向)に位置し、第2突起322が下方(矢印f方向)に位置することになる。この段階では、係合体320の第2突起322が受金具5のフラップ52の係合孔52hと係合されている。
<戸当り装置の動作>
次に、このような構成の戸当り装置3により開動作中の扉1を受金具5の位置で自動的に停止させるための自動ロック動作、自動ロック動作によって形成されたロック状態の扉1を閉動作に伴って自動的にロック解除させるための自動ロック解除動作について説明する。
(戸当り装置による自動ロック動作)
図12(A)に示すように、扉1の戸当り装置3が受金具5によってロックされていない非ロック状態(待機状態)から、図12(D)に示すように自動的にロック状態へ遷移する自動ロック動作について次に説明する。
図12(A)に示すように、扉1の開方向(Open)への移動により、戸当り装置3と受金具5とが近づき互いに対向配置された状態になると、戸当り装置3のマグネット350の作用により受金具5のフラップ52が立ち上がり、ケース310における底壁部318の先端部分318aとフラップ52の先端とが当接される。ただし、この時点ではフラップ52の先端と係合体320とは接触していない状態である。
この段階では、係合体320の凸部323は、ロック機構部333のアーム部333aに係止された状態であり、時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態にある。このように係合体320の凸部323がアーム部333aに係止され、係合体320が時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態で、かつ、第1突起321および第2突起322の何れもフラップ52の係合孔52hと係合していない状態を正規な非ロック状態(待機状態)と呼ぶ。
図12(B)に示すように、扉1は開方向(Open)へ移動し続けているため、受金具5のフラップ52の先端がケース310における底壁部318と接触した状態のまま係合体320とフラップ52との距離が近づき、係合体320の第1突起321と第2突起322との間に形成された凹空間325の中にフラップ52の先端が入りこみ、第1突起321と接触する。
このとき、係合体320の凸部323は、係合体ホルダ330のロック機構部333のアーム部333aに係止された状態であり、時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態にある。このため、第2突起322が上方(矢印e方向)に位置しており、第2突起322とフラップ52の先端とが接触することはないが、第2突起322はフラップ52の係合孔52hと対向した状態に位置する。
図12(C)に示すように、その後も扉1は開方向(Open)へ移動し続けているため、フラップ52の先端が係合体320の第1突起321を押し、それに応じて係合体320が係合体ホルダ330の回動軸332を中心として反時計回り方向へ回転する。すなわち、フラップ52とケース310との位置関係に基づいて係合体320が反時計回り方向へ回転するのである。
このとき係合体320においては、凸部323がロック機構部333のアーム部333aを押しながら反時計回り方向へ回転するとともに、第2突起322がフラップ52の係合孔52hに挿通される。なお、係合体320が反時計回り方向へ回転する際、凸部323はロック機構部333のアーム部333aの抵抗を受けることになる。
図12(D)に示すように、その後も扉1が開方向(Open)へ移動し続けているため、係合体320の回転する力がロック機構部333のアーム部333aを撓ませ、ついには凸部323がアーム部333aを乗り越えるとともにロック機構部333のストッパ面333pに当接されて停止する。すなわち、係合体320は、時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態から反時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態へ遷移し、凸部323の空間的な位置が変化する。
すなわち、図12(D)において、係合体320の凸部323は、ロック機構部333のアーム部333aとストッパ部334との間に位置された状態で安定し、このとき第2突起322がフラップ52の係合孔52hに対して完全に係合される。
このように係合体320の凸部323がアーム部333aとストッパ部334との間に位置し、係合体320が反時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態で、かつ、第2突起322がフラップ52の係合孔52hと係合した状態を正規なロック状態と呼ぶ。このようにして戸当り装置3が受金具5によって正規なロック状態になると、扉1は開いた状態のまま固定される。
(戸当り装置による自動ロック解除動作)
図13(A)に示すように、扉1の戸当り装置3が受金具5によって自動的にロックされた正規なロック状態(図12(D)と同様)から、図13(D)に示すように自動的にロック解除された正規な非ロック状態(図12(A)と同様)へ遷移する自動ロック解除動作について次に説明する。
図13(A)乃至(B)に示すように、扉1の戸当り装置3が受金具5によって自動的にロックされた正規なロック状態において、扉1の閉方向(Close)への移動が開始される。このとき、係合体320の第2突起322とフラップ52の係合孔52hとが係合した状態のままにあるため、扉1の移動と共にフラップ52の係合孔52hに第2突起322が係合された係合体320は時計回り方向へ回転し始める。この段階では、係合体320の凸部323は、ロック機構部333のアーム部333aとストッパ部334との間に位置している。
図13(C)に示すように、その後も扉1は閉方向(Close)へ移動し続けており、受金具5のフラップ52の係合孔52hに対して係合体320の第2突起322が係合された状態のままであるため、係合体320が更に時計回り方向へ回転し、凸部323がロック機構部333のアーム部333aを押す。
この段階では、係合体320の凸部323は、ロック機構部333のアーム部333aと係合体ホルダ330のストッパ部334との間に位置しているが、さらに扉1が閉方向(Close)へ移動し続けているため、係合体320の時計回り方向へ回転する力がロック機構部333のアーム部333aを撓ませる。
これにより、図13(D)に示すように、係合体320の凸部323がアーム部333aを乗り越えることになり、このとき第2突起322とフラップ52の係合孔52hとの係合状態が解消される。すなわち戸当り装置3と受金具5との間のロック状態が自動的に解除された正規な非ロック状態(待機状態)となり、扉1は閉方向(Close)へ移動することが可能となる。
(自動復帰動作)
続いて、図14(A)に示すように、戸当り装置3と受金具5との間において、係合体320の凸部323がアーム部333aとストッパ部334との間に位置し、係合体320が反時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態でありながら、第2突起322がフラップ52の係合孔52hと係合していない状態をイレギュラーなロック状態と呼ぶ。
このようなイレギュラーなロック状態では、係合体320が正規なロック状態にありながら、係合体320の第2突起322はフラップ52の係合孔52hと係合していないという通常は起こり得ない状態にある。しかしながら、戸当り装置3では、イレギュラーなロック状態にあっても、図14(D)に示すような正規なロック状態へ自動的かつ容易に復帰させることができる。
具体的には、図14(A)に示すように、係合体320がイレギュラーなロック状態にある場合、扉1を開方向(Open)へ移動させればよい。これにより、戸当り装置3と受金具5とが近づき互いに対向配置された状態になり、戸当り装置3のマグネット350の作用により受金具5のフラップ52が立ち上がり、ケース310における底壁部318の先端部分318aとフラップ52の先端とが当接される。
図14(B)に示すように、その後も扉1を開方向(Open)へ移動させ続けると、フラップ52の先端が係合体320の第2突起322に接触した後、当該第2突起322を側方から押す。このとき係合体320の奥側面320abがロック機構部333のストッパ面333pに当接されており、第2突起322が押された場合でも係合体320が回転することはない。
そのため、扉1の開方向(Open)への移動に伴ってフラップ52の先端が第2突起322を側方から押し続けることにより、図14(C)に示すように、ケース310の係合部収容空間312の内部で係合体320および係合体ホルダ330が共に上方(矢印e方向)へ押し上げられる。
図14(D)に示すように、その後も扉1が開方向(Open)へ移動しているので、フラップ52の係合孔52hが係合体320の第2突起322の下側(矢印f方向)を通過する際、係合体320および係合体ホルダ330が自重で下方(矢印f方向)へ下がり、係合体320の第2突起322がフラップ52の係合孔52hと係合される。
このように戸当り装置3は、係合体320がイレギュラーなロック状態にある場合でも、扉1の開方向(Open)への移動により、正規なロック状態へ自動的かつ容易に復帰させることができる。すなわち戸当り装置3は、上述したような自動復帰機能を有しているのである。
<効果>
第1の実施の形態における戸当り装置3では、扉1の開動作に基づいて受金具5とマグネット350とが対向配置されると、マグネット350がフラップ52を引き寄せ、係合体320の凹空間325にフラップ52の先端を入り込ませる。
そして戸当り装置3では、扉1の移動と共にフラップ52が第1突起321を押し、係合体320を回転させて第2突起322をフラップ52の係合孔52hに係合させることにより正規なロック状態を形成する。
すなわち、戸当り装置3は、扉1の開動作のみで自動的に正規なロック状態を形成することができるので、従来のように手動のロック機構を備えている場合のように、ロック状態にあるかロック解除状態にあるかをユーザは目視確認する必要がない。
また、戸当り装置3は、係合体320の回転に対して係合体ホルダ330のロック機構部333におけるアーム部333aが当該係合体320の凸部323と当接したときの抵抗となるため、ロック機構部333により係合体320の係止力を強く作用させることができる。
このように戸当り装置3のロック機構部333は、係合体320の凸部323とアーム部333aとの係止状態を強くすることができるので、扉1を強い力かつ速い速度で開動作したときでも扉1が受金具5の上を通過してしまうことなく正規な非ロック状態から正規なロック状態へ切り替えることができる。
さらに戸当り装置3は、図14(A)に示したように、係合体320がイレギュラーなロック状態(待機状態)にある場合でも、扉1を開動作させるだけで破損させることなく容易に正規なロック状態(図14(D))に移行させることができる。また、戸当り装置3は、その後、扉1を閉動作させるだけで容易に正規な非ロック状態(図12(A)および図13(D))に戻すことができる。
さらに戸当り装置3は、従来のように操作部を必要としない構成であるため、部品点数を削減して簡素化し得、かくして小型かつ安価に製造することができる。因みに戸当り装置3において操作部を設けた場合、ユーザの脚で操作部が操作されることを想定し、十分な強度を必要とすることになる。しかしながら戸当り装置3では、そもそも操作部を有しない構成であるため、構成部品に対して不必要に強度を持たせる必要がなく、その分だけ小型化および軽量化を図ることができる。
(2-2)第2の実施の形態
次に、第2の実施の形態に係る戸当り装置の構成について、図15乃至図20を参照しながら説明する。図15は、第2の実施の形態に係る戸当り装置とフラップの構成を示す斜視図である。図16は、第2の実施の形態に係る戸当り装置の構成を示す分解斜視図である。図17は、第2の実施の形態に係る戸当り装置の上下調整機能により上側に位置した状態および下側に位置した状態を示す斜視図である。図18は、第2の実施の形態に係る戸当り装置の係合体ホルダの構成を示す斜視図である。図19は、第2の実施の形態に係る戸当り装置において扉が右側から左側へ向かって開いた場合の解除位置からロック位置へ移行するまでの過程を示す断面図である。図20は、第2の実施の形態に係る戸当り装置において扉が左側から右側へ向かって開いた場合の解除位置からロック位置へ移行するまでの過程を示す断面図である。
第2の実施の形態に係る戸当り装置600が設けられた扉装置500の構成について説明する。図1との対応部分に同一符号を付した図15に示すように、扉装置500は、枠体2と、当該枠体2に一端側が軸支された扉1と、枠体2に対して開閉可能な扉1の先端側の下端であって当該扉1の木口に収容した状態で取り付けられた戸当り装置600と、床面4に設置され戸当り装置600に設けられたマグネット350の吸引力により当接する受金具5とを有している。受金具5の構成は第1の実施の形態と同じであるため説明を省略する。
第2の実施の形態における戸当り装置600では、第1の実施の形態における戸当り装置3と異なる部分の構成について主に説明する。第2の実施の形態においては、戸当り装置600が取り付けられた扉1は、枠体2の一端側に軸支された場合および枠体2の他端側に軸支された場合のいずれであっても対応することができる。すなわち、戸当り装置600は、扉1の開閉方向は特に問わず、左右どちらの方向に開動作する場合にも対応可能である。
図15に示したように、扉1が図中左側(矢印a方向)から図中右側(矢印b方向)へ開動作する場合、および、図中右側(矢印b方向)から図中左側(矢印a方向)へ開動作する場合でも正規な非ロック状態(待機状態)から正規なロック状態へ遷移することができ、また、正規なロック状態から正規な非ロック状態(待機状態)へ遷移することができる。
なお、説明の都合上、図15乃至図20において扉1の開閉方向を開方向(Open)、閉方向(Close)とする。また、戸当り装置600の構成部材の位置関係について、上述した開方向(Open)と一致する矢印a方向を左側、矢印b方向を右側とし、矢印ab方向を水平方向とする。また、戸当り装置3を正面に見たときの矢印c方向を手前側、矢印d方向を奥側とし、矢印cd方向を奥行方向と言う場合がある。さらに、矢印e方向を上側または上方向、矢印f方向を下側または下方向とし、矢印ef方向を上下方向と言う場合がある。なお、これらの方向は、第2の実施の形態において説明の便宜上用いられるのであって、第1の実施の形態における方向とは一部異なっている。
<戸当り装置の構成>
図16乃至図19を用いて、戸当り装置600の構成について説明する。図16に示すように、戸当り装置600は、ケース610と、カバー620と、係合体320および係合体ホルダ630が組み合わせられた係合部640と、マグネット350と、ボルト650を主に有している。
(ケース)
ケース610は、当該ケース610の底面部に相当するベース611、および、当該ベース611の上に一体に取り付けられた略直方体形状からなるケース本体612を有している。
ベース611は、奥行方向(矢印cd方向)に延びる矩形状からなる薄板状部材であり、戸当り装置600が受金具5のフラップ52の先端をマグネット350の磁力によって引き寄せて当接させる底面部として機能する。
ケース本体612は、上側(矢印e方向)および奥側(矢印d方向)が開放された直方体の箱形状を有している。ケース本体612には、係合体320および係合体ホルダ630からなる係合部640を収容可能であり、かつ、当該係合部640と隣接してマグネット350およびヨーク361を収容可能な収容空間610kを有している。
マグネット350は、断面略U字状からなるヨーク361に覆われた状態で係合部640に隣接した状態で係合部640とともに収容空間610kに収容される。ヨーク361は、下側の開放端部分に係止爪362を有し、マグネット350を覆った状態でベース611に係止爪362を嵌め込むことにより取り付けられる。なお、ヨーク361の機能は、第1の実施の形態におけるヨーク360と同一である。
ケース本体612は、収容空間610kを形成する前壁部613、および、互いに平行配置された一対の側壁部614を備えている。前壁部613には、上側(矢印e方向)の中央部分に上下方向(矢印ef方向)に長く形成された楕円形状の貫通孔からなる長孔613hが形成されている。この長孔613hにはボルト650が挿通される。前壁部613は、戸当り装置600の正面として露出する部分である。
ケース本体612における1対の側壁部614には、係合体ホルダ630を取り付けるために上下方向(矢印ef方向)に沿って形成されたスリット614sがそれぞれ設けられている。
(カバー)
カバー620は、ケース本体612の開放された上側(矢印e方向)を覆う部材であり、前壁部622および互いに平行配置された一対の側壁部623を有している。前壁部622はケース体612の前壁部61と対向配置される部分であり、ボルト650を挿通させるための貫通孔622hが形成されている。
カバー620は、ケース本体612を覆うように取り付けられた際、前壁部622の貫通孔622hとケース本体612の前壁部613の長孔613hとが対向配置される。ここで、カバー620の前壁部622は、ケース本体612の前壁部613よりも奥側(矢印d方向)に配置されて露出することはない。
図17(A)および(B)に示すように、ケース610に対してカバー620が装着された戸当り装置600は、ケース本体612の前壁部613の長孔613hおよびカバー620の前壁部622の貫通孔622hに挿通させたボルト650によって扉1に取り付けられる。カバー620の側壁部623は、戸当り装置600の側壁の一部を形成し、ケース本体612の側壁部614を外側から部分的に覆う。
ここで、図17(A)および(B)に示すように、ボルト650は、前壁部613の長孔613hを介してケース610のケース本体612に挿通されているため、長孔613hの上下方向(矢印ef方向)の長さ範囲内でケース610を上下方向へ移動可能に支持している。
具体的には、図17(A)は、カバー620に対してケース610が上側(矢印e方向)へ持ち上げられた状態を示しており、図17(B)はカバー620に対してケース610が自重によって下側(矢印f方向)へ下げられたデフォルト状態を示している。
(係合体ホルダ)
図18に示すように、係合体ホルダ630は、ホルダ本体631、回動軸632、ロック機構部633を有している。ホルダ本体631は、略直方体形状を有する樹脂からなる部材であり、手前側(矢印c方向)の正面631fの中央下側に回動軸632が一体に形成されている。
またホルダ本体631は、1対の側面631sの上方にそれぞれ係合凸部631stを有している。ホルダ本体631の係合凸部631stは、ケース本体612の側壁部614に設けられたスリット614sに係合される部分である。したがって、ホルダ本体631の係合凸部631stがケース本体612のスリット614sと係合することにより、係合体ホルダ630がケース610の収容空間610kに収容された状態で保持される。
ホルダ本体631は、正面631fのほぼ中央に矩形状の貫通孔631fhを有している。ホルダ本体631の背面631bの上方端部には、奥側(矢印d方向)へ向かって突出した後に略V字状に折り曲げられ、貫通孔631fhから手前側(矢印c方向)へ先端部633asを飛び出させたアーム部633aが一体に形成されている。アーム部633aの先端部633asは、ホルダ本体631の回動軸632に回動自在に軸支される係合体320の凸部323と係止可能程度に貫通孔631fhから飛び出ていればよい。
<戸当り装置の動作>
次に、このような構成の戸当り装置600においては、開動作に応じて扉1が左側から右側へ移動する場合に当該扉1を受金具5の位置で自動的に停止させるための自動ロック動作、開動作に応じて扉1が右側から左側へ移動する場合に当該扉1を受金具5の位置で自動的に停止させるための自動ロック動作について説明する。
(戸当り装置による自動ロック動作)
図19(A)に示すように、扉1の戸当り装置600が受金具5によってロックされていない正規な非ロック状態(待機状態)において、扉1が右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)へ移動することにより開動作が行われる場合に、図19(D)に示すように自動的に正規なロック状態へ遷移する自動ロック動作について次に説明する。
図19(A)に示すように、扉1の開方向(Open)への移動すなわち扉1の右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)への移動により、戸当り装置600と受金具5とが互いに近づいていく。
この段階では、係合体320の凸部323がアーム部633aの先端部633asと係止され、係合体320が時計回り方向(左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)へ向かう方向)へ僅かに回転した傾斜状態で、かつ、第1突起321および第2突起322の何れも受金具5におけるフラップ52の係合孔52hと係合していない正規な非ロック状態(待機状態)にある。
その後、扉1の右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)への移動により、戸当り装置600と受金具5とが対向配置された状態になると、戸当り装置600のマグネット350の作用により受金具5のフラップ52が立ち上がり、ケース610におけるベース611とフラップ52の先端とが当接される。
図19(B)に示すように、その後も扉1は開方向(Open)へ移動し続けているため、受金具5のフラップ52の先端がケース610におけるベース611と接触した状態のまま係合体320とフラップ52とが近づき、係合体320の第1突起321と第2突起322との間に形成された凹空間325の中にフラップ52の先端が入りこみ、第1突起321と接触する。
図19(C)に示すように、その後も扉1は開方向(Open)へ移動し続けているため、フラップ52の先端が係合体320の第1突起321を押し、それに応じて係合体320が係合体ホルダ630の回動軸632を中心として反時計回り方向(右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)へ向かう方向)へ回転する。
このとき係合体320においては、凸部323がロック機構部633のアーム部633aの先端部633asを押しながら反時計回り方向へ回転するとともに、第2突起322がフラップ52の係合孔52hに挿通される。なお、係合体320が反時計回り方向へ回転する際、凸部323はロック機構部633のアーム部633aの抵抗を受ける。
図19(D)に示すように、その後も扉1が開方向(Open)へ移動し続けているため、係合体320の回転する力がロック機構部633のアーム部633aを撓ませ、ついには凸部323がアーム部633aの先端部633asを乗り越えて停止すると共に、係合体320の第2突起322がフラップ52の係合孔52hと係合される。このとき、アーム部633aが屈曲部分633bを介して撓むことになる。
これにより、係合体320の凸部323がアーム部633aと係止され、係合体320が反時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態で、かつ、第2突起322がフラップ52の係合孔52hと係合した正規なロック状態となる。このようにして戸当り装置600が受金具5によって正規なロック状態になると、扉1は受金具5の位置で開いた状態のまま固定される。
その後、扉1が左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)へ移動されると、図19(D)から図19(A)の順番で係合体320は逆の動きを示し、戸当り装置600は正規な非ロック状態(待機状態)に戻ることができる。
続いて、図20(A)に示すように、扉1の戸当り装置600が受金具5によってロックされていない正規な非ロック状態(待機状態)において、扉1が左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)へ移動することにより開動作が行われる場合に、図20(D)に示すように自動的に正規なロック状態へ遷移する自動ロック動作について説明する。
図20(A)に示すように、扉1の開方向(Open)への移動すなわち扉1の左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)への移動により、戸当り装置600と受金具5とが互いに近づいていく。
この段階では、係合体320の凸部323がアーム部633aの先端部633asと係止され、係合体320が反時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態で、かつ、第1突起321および第2突起322の何れも受金具5におけるフラップ52の係合孔52hと係合していない正規な非ロック状態(待機状態)にある。
その後、扉1の左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)へ移動により、戸当り装置600と受金具5とが対向配置された状態になると、戸当り装置600のマグネット350の作用により受金具5のフラップ52が立ち上がり、ケース610におけるベース611とフラップ52の先端とが当接される。
図20(B)に示すように、その後も扉1は開方向(Open)へ移動し続けているため、受金具5のフラップ52の先端がケース610におけるベース611と接触した状態のまま係合体320とフラップ52とが近づき、係合体320の第1突起321と第2突起322との間に形成された凹空間325の中にフラップ52の先端が入りこみ、第2突起322と接触する。
図20(C)に示すように、その後も扉1は開方向(Open)へ移動し続けているため、フラップ52の先端が係合体320の第2突起322を押し、それに応じて係合体320が係合体ホルダ630の回動軸632を中心として時計回り方向へ回転する。
このとき係合体320においては、凸部323がロック機構部633のアーム部633aの先端部633asを押しながら時計回り方向へ回転するとともに、第1突起321がフラップ52の係合孔52hに挿通される。なお、係合体320が時計回り方向へ回転する際、凸部323はロック機構部633のアーム部633aの抵抗を受ける。
図20(D)に示すように、その後も扉1が開方向(Open)へ移動し続けているため、係合体320の回転する力がロック機構部633のアーム部633aを撓ませ、ついには凸部323がアーム部633aの先端部633asを乗り越えて停止すると共に、係合体320の第1突起321がフラップ52の係合孔52hと係合される。
これにより、係合体320の凸部323がアーム部633aと係止され、係合体320が時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態で、かつ、第1突起321がフラップ52の係合孔52hと係合した正規なロック状態となる。このようにして戸当り装置600が受金具5によって正規なロック状態になると、扉1は受金具5の位置で開いた状態のまま固定される。
その後、扉1が右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)へ移動されると、図20(D)から図20(A)の順番で係合体320は逆の動きを示し、戸当り装置600は正規な非ロック状態(待機状態)に戻ることができる。
上述したように戸当り装置600は、扉1の右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)への移動、および、扉1の左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)への移動の何れに対しても正規な非ロック状態から正規なロック状態へと遷移させることができる。
因みに、図19(A)に示したように、扉1が右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)へ移動する際、係合体320の凸部323がアーム部633aの先端部633asと係止され、係合体320が時計回り方向へ僅かに回転した傾斜状態であれば正規な非ロック状態(待機状態)にある。
一方、図20(A)に示したように、扉1が左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)へ移動する場合、係合体320の凸部323がアーム部633aの先端部633asと係止され、係合体320が反時計回り方向に僅かに回転した傾斜状態であれば、このときも正規な非ロック状態(待機状態)にあるといえる。
しかしながら、仮に、図19(A)に示すように、扉1が右側(矢印b方向)から左側(矢印a方向)へ移動する際、係合体320の凸部323がアーム部633aの先端部633asと係止されているが、図とは異なり、係合体320が反時計回り方向に僅かに回転した傾斜状態であればイレギュラーな非ロック状態(待機状態)にあることになる。
同様に、図20(A)に示すように、扉1が左側(矢印a方向)から右側(矢印b方向)へ移動する際、係合体320の凸部323がアーム部633aの先端部633asと係止されているが、図とは異なり、係合体320が時計回り方向に僅かに回転した傾斜状態であればイレギュラーな非ロック状態(待機状態)にあることになる。
このような場合でも、戸当り装置600は、図14に示したように、扉1の開動作によってフラップ52の先端によって係合体320の第1突起321または第2突起322が押されることにより、係合体320および係合体ホルダ630が上側(矢印e方向)に持ち上げられるので、正規なロック状態へ自動的かつ容易に復帰させることができる。すなわち戸当り装置600においても、自動復帰機能を有しているのである。
<効果>
第2の実施の形態における戸当り装置600では、扉1の開動作に基づいて受金具5とマグネット350とが対向配置されると、マグネット350がフラップ52を引き寄せ、係合体320の凹空間325にフラップ52の先端を入り込ませる。
そして戸当り装置600では、扉1の移動と共にフラップ52が第1突起321を押すことにより係合体320を回転させて第2突起322をフラップ52の係合孔52hに係合させることにより正規なロック状態を形成する。
すなわち、戸当り装置600においても、扉1の開動作のみで自動的に正規なロック状態を形成することができるので、従来のように手動のロック機構を備えている場合のように、ロック状態にあるかロック解除状態にあるかをユーザは目視確認する必要がない。特に、戸当り装置600は、操作部を有しない分だけ小型化およびスリム化することができるので、扉1の木口に収容した状態で一体に取り付けることができる。
また、戸当り装置600は、第1の実施の形態における戸当り装置3と同様に、係合体320の回転に対して係合体ホルダ630のロック機構633におけるアーム部633aが当該係合体320の凸部323と当接したときの抵抗となるため、ロック機構633により係合体320の係止力を強く作用させることができる。
このように戸当り装置600のロック機構633は、係合体320の凸部323とアーム部633aとの係止状態を強くすることができるので、扉1を強い力かつ速い速度で開動作したときでも扉1が受金具5の上を通過してしまうことなく正規な非ロック状態から正規なロック状態へ切り替えることができる。
さらに戸当り装置600は、第1の実施の形態における戸当り装置3と同様に、係合体320がイレギュラーな非ロック状態(待機状態)にある場合でも、扉1を開動作させるだけで破損させることなく容易に正規なロック状態に移行させることができる。かつ、戸当り装置600は、その後、扉1を閉動作させるだけで容易に正規な非ロック状態に戻すことができる。
さらに戸当り装置600においても、従来のように操作部を必要としない構成であるため、部品点数を削減して簡素化し得、かくして小型かつ安価に製造することができる。
(3)他の実施の形態
なお、上述した第1および第2の実施の形態においては、係合体ホルダ330および係合体ホルダ630に対してロック機構部333およびロック機構部633が一体に固定されているようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ロック機構部333および633がケース310およびケース610に一体に固定されているようにしてもよい。
本発明に係る戸当り装置3、600は、上記第1および第2の実施の形態に限定されるものではない。なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の戸当り装置3、600を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。