以下に、実施の形態にかかる子局、配電制御システムおよび配電制御プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる配電制御システムの構成例を示す図である。図1では、本実施の形態の配電制御システムの制御対象となる配電系統の一例として、変電所に設けられる配電用変圧器5と、配電用変圧器5に直流母線4を介して接続される配電線1-1,1-2とを図示している。配電線1-1,1-2には、配電線1-1,1-2を区分する開閉器2-1~2-6が接続される。なお、図1では、配電系統のうち本実施の形態の配電制御システムに関連する設備を図示しており、配電線1-1,1-2には、図示を省略しているが遮断器、電圧制御機器、柱上変圧器なども接続される。また、配電用変圧器5に接続される配電線の数および開閉器2-1~2-6の数は図1に示した例に限定されない。以下、開閉器2-1~2-6を個別に区別せずに示すときは開閉器2と呼び、配電線1-1,1-2を個別に区別せずに示すときは配電線1と呼ぶ。また、以下、配電線1-1,1-2において配電用変圧器5側すなわち電源側を上流と呼び、配電用変圧器5と逆側を下流と呼ぶ。
図1に示した例では、開閉器2-1~2-3が配電線1-1に接続されており、開閉器2-4~2-6が配電線1-2に接続されている。配電線1-1は、直流母線4と開閉器2-1との間の区間、開閉器2-1と開閉器2-2との間の区間、開閉器2-2と開閉器2-3との間の区間に区分される。なお、図示を省略しているが、配電線1-1の開閉器2-3より下流にも開閉器2が接続されており、以下同様に、配電線1-1が各区間に区分されている。配電線1-2についても、同様に、開閉器2-4~2-6により各区間に区分されており、開閉器2-6より下流にも開閉器2が接続されている。さらに、配電線1は、他の配電線1と図示しない開閉器2を介して接続され、系統切替を行うことが可能であってもよい。
本実施の形態の配電制御システムは、配電線1の各区間を区分する複数の開閉器2を遠隔制御するための制御信号を送信する親局6と、通信ネットワーク7を介して親局6と通信可能な子局8-1~8-6とを備える。子局8-1~8-6は、親局6からの制御信号に基づいて、開閉器2-1~2-6をそれぞれ制御する。通信ネットワーク7は、光回線などの有線ネットワークであってもよいし、無線ネットワークでもよいし、無線と有線とが混在するネットワークでもよい。子局8-1~8-6は、それぞれ開閉器2-1~2-6を制御する。子局8-1~8-6はそれぞれに対応する開閉器2-1~2-6とともに、例えば、電柱に設置されるが、子局8-1~8-6および開閉器2-1~2-6は、例えば、地中配電線用に地上に設置されていてもよく、設置位置は電柱に限定されない。子局8-1~8-6は、親局6から受信した制御信号に応じて開閉器2-1~2-6の投入と開放とを制御するとともに、配電線1の電圧および電流のうち少なくとも1つを計測し、計測したデータを親局6へ送信する。親局6は、各子局8-1~8-6へ制御信号を送信することで、対応する開閉器2-1~2-6の開放と投入を制御する。また、親局6は、各子局8-1~8-6から受信したデータを用いて配電系統を監視する。以下、子局8-1~8-6を個別に区別せずに示すときは子局8と呼ぶ。
本実施の形態では、子局8は、配電系統の事故の発生時に、後述するように、計測したデータに基づいて対応する区間における異常の度合いを示すスコアを算出し、スコアを用いて事故区間を推定し、推定した事故区間を示す情報を親局6へ送信する。また、子局8は、事故区間を示す情報とともに、算出したスコアを親局6へ送信してもよい。
図1では、1つの配電用変圧器5を図示しているが、本実施の形態の配電制御システムの制御対象の配電系統には複数の配電用変圧器5が含まれていてもよい。配電系統に複数の配電用変圧器5が含まれる場合、各配電用変圧器5には、図1と同様に配電線1が直流母線4を介して接続され、各配電線1は開閉器2により区分されており、各開閉器2は対応する子局8により制御される。
図2は、本実施の形態の親局6の構成例を示す図である。親局6は、図2に示すように、通信部61、子局制御部62、子局情報記憶部63、データ記憶部64、情報統合部65および表示部66を備える。
通信部61は、各子局8と通信ネットワーク7を介して通信を行う。通信部61は、子局8から受信した電圧、電流の計測データを各子局制御部62へ渡す。また、通信部61は、受信した計測データと、子局8から受信した事故区間の推定結果を示す情報をデータ記憶部64に記憶する。子局情報記憶部63は、制御対象の配電系統の系統構成図に基づく各子局8の位置と周辺の子局8を示す情報とを含む子局情報を記憶する。子局情報は、オペレータにより入力されてもよいし、図示しない他の装置から送信され、通信部61を介して子局情報記憶部63に記憶されてもよい。子局情報の詳細については後述する。
子局制御部62は、オペレータからの入力、子局8から受信した計測データなどに応じて子局8に対応する開閉器2の制御を要すると判断した場合、開閉器2を制御するための制御信号を生成して通信部61へ渡す。子局制御部62における開閉器2の遠隔制御方法は、一般的な配電自動制御と同様の技術を用いることができるため詳細な説明は省略する。通信部61は、子局制御部62から受けとった制御信号を子局8へ送信する。また、子局制御部62は、子局情報記憶部63に記憶されている子局情報に基づいて、各子局8へ当該子局8の周辺の子局8を示す情報である周辺子局情報を送信する。
情報統合部65は、各子局8から送信されてデータ記憶部64に記憶されている事故区間の推定結果を示す情報を統合して、統合した結果をデータ記憶部64に格納する。例えば、事故区間の推定結果を配電系統図と対応づけて統合結果としてデータ記憶部64に格納する。また、情報統合部65は、子局8からスコアが送信される場合には、推定結果とともに各子局8に対応するスコアを配電系統図と対応づけて統合結果としてデータ記憶部64に格納してもよい。表示部66は、データ記憶部64に記憶されている各計測データを表示する。また、表示部66は、データ記憶部64に格納されている統合結果を表示する。また、表示部66は、各子局8から受信した事故区間の推定結果を、オペレータにより選択された子局8ごとに表示してもよい。
図3は、本実施の形態の子局8の構成例を示す図である。子局8は、図3に示すように、通信部81、開閉器制御部82、計測部83、モデル記憶部84、異常判定部85、事故点推定部86および周辺子局情報記憶部87を備える。
通信部81は、通信ネットワーク7を介して親局6および他の子局8と通信を行う。通信部81は、親局6から制御信号を受信すると、受信した制御信号を開閉器制御部82へ渡す。通信部81は、周辺子局情報を受信すると、受信した周辺子局情報を周辺子局情報記憶部87へ格納する。また、通信部81は、制御信号に対する応答信号をはじめとした親局6宛ての信号を受け取ると、当該信号を、通信ネットワーク7を介して親局6へ送信する。
開閉器制御部82は、親局6から送信され通信部81から受け取った制御信号に基づいて開閉器2を制御し、制御の結果などを含む応答信号を生成して通信部81へ出力する。また、開閉器制御部82は、計測部83から受け取った計測データを、通信部81を介して親局6へ送信する。開閉器制御部82は、計測部83により計測された計測データをそのまま通信部81へ渡してもよいし、計測データの区間平均、移動平均などを算出し算出したデータを計測データとして通信部81へ渡してもよい。開閉器制御部82における開閉器2の制御方法は、一般的な配電自動制御と同様の技術を用いることができるため詳細な説明は省略する。
計測部83は、配電線1の電圧および電流のうちの少なくとも1つを計測し、計測したデータを開閉器制御部82、異常判定部85および事故点推定部86へ出力する。図3に示した例では、計測部83は、配電線1の電圧を計測する電圧計測部831と、配電線1の電流を計測する電流計測部832と、子局8の周囲の環境の状態を計測する環境計測部833とを備える。本実施の形態では、環境計測部833は、温度センサ、音を計測する音センサ、および振動を計測する振動センサである。以下では、環境計測部833が、温度センサ、音センサおよび振動センサを含む例を説明するが、これらのうちの少なくとも1つであってもよい。すなわち、計測部83によって計測される環境の状態は、温度、音および振動のうちの少なくとも1つである。温度センサ、音センサおよび振動センサは、例えば、配電線に取り付けられる。温度センサ、音センサおよび振動センサの設置場所はこれに限らず、事前の実験などにより配電線1の異常と相関が高いと思われる他の箇所に設置されてもよい。また、環境計測部833には、カメラなど画像を取得可能なセンサが含まれていてもよい。また、ここでは、計測部83が、電圧計測部831、電流計測部832および環境計測部833を備える例を説明するが、計測部83は、電圧計測部831および電流計測部832のうち少なくとも1つを備えていればよい。環境計測部833を備える場合には、倒木、落雷、積雪など事故の要因に成り得る外部環境の状態についても考慮することができ、より事故の推定精度を向上させることができる。
モデル記憶部84は、計測部83により計測された計測データから異常の度合いを示すスコアを算出するための学習済みモデルであるスコア算出器を記憶する。詳細には、モデル記憶部84は、計測部83により計測された計測データが前処理された結果を入力として、自身に対応する区間の異常の度合い示すスコアを算出するためのスコア算出器を記憶する。なお、前処理は、時系列データである計測データから一定のデータ長のデータを抽出する処理を含む。スコア算出器は、例えば、子局8の運用開始時などに、図1に示した機械学習装置9によって生成され、親局6を介して各子局8に送信される。また、スコア算出器は子局8の運用開始後に更新された場合には更新されたスコア算出器が機械学習装置9から親局6を介して子局8に送信される。スコア算出器は、電流、電圧、音、振動、温度などといった計測データの種類ごとに作成される。なお、ここではスコア算出器が機械学習によって学習された学習済みモデルであるとして説明するが、過去の実績などを元に人手によって定められた計算式をスコア算出器として用いてもよい。この場合、スコア算出器は、例えば、あらかじめ子局8のモデル記憶部84に格納される。なお、スコアは異常の度合いが高いほど値が大きくなるように設定される。
異常判定部85は、計測部83により計測された計測データを用いて、自身に対応する区間の異常の有無を判定する。異常判定部85は、異常有りと判定した場合は、事故点推定部86に事故点すなわち事故区間の推定を実施するよう指示するとともに、通信部81を介して、周辺の他の子局8へスコアの算出および送信を依頼する。詳細には、異常判定部85は、スコアの算出および送信を依頼することを示す送信依頼信号を生成して、通信部81に周辺の子局8へ当該送信依頼信号を送信するよう指示し、通信部81は、周辺子局情報記憶部87に格納されている周辺子局情報を用いて、周辺の子局8へ当該送信依頼信号を送信する。
事故点推定部86は、異常判定部85から事故点の推定の実施を指示されると、計測部83により計測された計測データに前処理を施し、前処理後のデータとモデル記憶部84に記憶されているスコア算出器とを用いてスコアを算出する。スコア算出器は計測データの種類ごとに作成されるため、スコアは計測データの種類ごとに算出される。この種類ごとのスコアを、種類別スコアと呼ぶ。事故点推定部86は、種類別スコアを重み付け加算することで総合的な異常の度合いを示すスコアを算出する。なお、事故点推定部86は、最新の計測データを前処理してスコア算出器へ入力してもよいし、過去の計測データを前処理してスコア算出器へ入力してもよい。例えば、事故点推定部86は、計測データを一定期間分保持しておく記憶部を有し、保持している一定期間分の計測データのなかから選択した期間の計測データを前処理してスコア算出器へ入力して種類別スコアを算出してもよい。
さらに、事故点推定部86は、送信依頼信号への応答として周辺の子局8から送信されたスコアを、通信部81を介して受け取り、算出したスコアと、周辺の子局8から受信したスコアとを用いて事故点に対応する子局8を推定する。例えば、事故点推定部86は、自身および周辺の子局8のうち最もスコアの高い子局8を事故点に対応する子局8と推定する。事故点推定部86は、推定結果として事故点に対応する子局8を示す情報を、通信部81を介して親局6へ送信する。このとき、事故点推定部86は、自身が算出したスコアおよび周辺の子局8から受信したスコアを推定結果とともに親局6へ送信してもよい。このように、本実施の形態の事故点推定部86は、スコア算出器と、計測部83により計測された計測データとを用いてスコアを算出し、算出したスコアと通信部81によって受信されたスコアとを用いて事故点を推定する。
図4は、本実施の形態の機械学習装置9の構成例を示す図である。図4に示すように、機械学習装置9は、通信部91、データ記憶部92、モデル生成部93、モデル記憶部94、送信制御部95および子局情報記憶部96を備える。
通信部91は、親局6など他の装置と通信を行う。通信部91は、親局6を介して子局8から送信された計測データを受信し、受信した計測データをデータ記憶部92に記憶する。また、通信部91は、あらかじめ行われた実験などにより取得されたデータなどを図示しない他の装置から受信してデータ記憶部92に格納してもよい。実験などで取得されたデータは、子局8によって計測される計測データと同一種類のデータである。また、通信部91は、シミュレーションなどにより生成された、子局8における計測データを模擬したデータを他の装置から受信してデータ記憶部92に記憶してもよい。また、通信部91は、または実験用に設置された子局8から受信した計測データをデータ記憶部92に記憶してもよい。
モデル生成部93は、子局8ごとおよび計測データの種類ごとに、データ記憶部92に記憶された計測データを前処理し、前処理後の時系列データと評価結果とを1組とするデータセットを複数用いて機械学習により学習済みモデルであるスコア算出器を生成し、モデル記憶部94へ格納する。スコア算出器は子局8の識別情報と対応づけられてモデル記憶部94へ格納される。学習済みモデルの生成については後述する。
子局情報記憶部96は、スコア算出器の生成対象となる子局8の識別情報を含む子局情報を記憶する。子局情報は、親局6が記憶している子局情報と同一であってもよいし、親局6が記憶している子局情報と異なっていてもよい。送信制御部95は、子局情報に基づいて、スコア算出器の送信先の子局8を順に選択し、各子局8に対応するスコア算出器をモデル記憶部94から読み出して通信部91を介して、親局6経由で子局8へ送信する。
次に、本実施の形態の親局6のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の親局6は、コンピュータシステム上で、親局6における処理が記述されたプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが親局6として機能する。親局6の動作を実現するプログラムは、開閉器2を制御するための配電自動制御のためのプログラムと本実施の形態の配電制御システムの事故点推定にかかる処理における親局6として動作するためのプログラムとを含む。図5は、本実施の形態の親局6を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図5に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
図5において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の親局6における処理が記述された託送業務プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタなどである。なお、図5は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図5の例に限定されない。
ここで、本実施の形態の親局6としての機能を実現するためのプログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、託送業務プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、託送業務プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された託送業務プログラムが記憶部103に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の親局6としての処理を実行する。
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、親局6における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
図2に示した子局制御部62および情報統合部65は、図5に示した記憶部103に記憶されたプログラムが図5に示した制御部101により実行されることにより実現される。また、子局制御部62および情報統合部65の実現には、図5に示した記憶部103も用いられる。図2に示した表示部66は、図5に示した表示部104により実現される。子局情報記憶部63およびデータ記憶部64は、図5に示した記憶部103の一部である。図2に示した通信部61は、図5に示した通信部105により実現される。親局6は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。複数のコンピュータシステムで構成されるクラウドシステムでプログラムが実行されることで親局6が実現されてもよい。
例えば、本実施の形態の子局8における事故点推定に関する動作を実現するための配電制御プログラムは、子局8に、計測部83により計測された計測データから異常の度合いを示すスコアを算出するための学習済みモデルであるスコア算出器を記憶するステップと、他の子局8から子局8において算出された異常の度合いを示すスコアを受信するステップと、スコア算出器と、計測部83により計測された計測データとを用いてスコアを算出し、算出したスコアと受信されたスコアとを用いて事故点を推定するステップと、を実行させる。
次に、本実施の形態の子局8のハードウェア構成について説明する。子局8のうち図3に示した計測部83は、各種のセンサなどにより実現される。子局8の計測部83以外の各部は、コンピュータシステムまたは専用の処理回路により実現される。また、例えば、図3に示した開閉器制御部82と、モデル記憶部84、異常判定部85、事故点推定部86および周辺子局情報記憶部87とが別のユニットとして構成されてもよい。例えば、子局8は、通信機能を有する通信回路であり通信部81を実現する通信ユニットと、開閉器制御部82としての機能を実現する制御ユニットと、モデル記憶部84、異常判定部85、事故点推定部86および周辺子局情報記憶部87とを実現する拡張ユニットとで構成されてもよい。制御ユニットは、一般的な開閉器2の制御を行うための処理を行う。このように、モデル記憶部84、異常判定部85、事故点推定部86および周辺子局情報記憶部87を拡張ユニットにより実現することで、既存の子局に拡張ユニットを追加することで本実施の形態の子局8として動作させることができる。なお、子局8のハードウェア構成はこれに限らず、制御ユニットと拡張ユニットに分割されずにこれらが1つのユニットとして構成されてもよい。
上述した拡張ユニットは、コンピュータシステムの一例であり、例えば、図5に示した構成から入力部102、表示部104および出力部106を削除したものである。すなわち、拡張ユニットは、制御部101、記憶部103および通信部105を備える。ただし、この場合、通信部105は外部との通信を行うかわりに、他のユニットとの通信を行う。なお、拡張ユニットは、表示部104および入力部102を備えていてもよい。また、上述した制御ユニットについても、同様に、図5に示した構成から入力部102、表示部104および出力部106を削除したものであってもよいし、専用の処理回路であってもよい。制御ユニットと拡張ユニットに分割されずにこれらが1つのユニットとして構成される場合、このユニットは、同様に、図5に示した構成から入力部102、表示部104および出力部106を削除したものである。
図3に示した子局8の異常判定部85および事故点推定部86は、例えば、図5に示した記憶部103に記憶されたプログラムが制御部101により実行されることにより実現される。異常判定部85および事故点推定部86の実現には記憶部103も用いられる。また、図3に示したモデル記憶部84および周辺子局情報記憶部87は、記憶部103の一部である。このプログラムは、子局8における本実施の形態の事故点推定ための動作を実行させるためのプログラムである。本実施の形態の子局8としての機能を実現するためのプログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例は親局6と同様である。また、このプログラムもCD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体により提供されてもよいし通信媒体により提供されてもよい。
次に、本実施の形態の機械学習装置9のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の機械学習装置9は、コンピュータシステム上で、機械学習装置9における処理が記述されたプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが親局6として機能する。機械学習装置9を実現するコンピュータシステムは、親局6を実現するコンピュータシステムと同様であり、例えば、図5に示したコンピュータシステムである。
図4に示した機械学習装置9の送信制御部95およびモデル生成部93は、例えば、図5に示した記憶部103に記憶されたプログラムが制御部101により実行されることにより実現される。送信制御部95およびモデル生成部93の実現には図5に示した記憶部103も用いられる。また、図4に示したデータ記憶部92、モデル記憶部94および子局情報記憶部96は、図5に示した記憶部103の一部である。図4に示した通信部91は、図5に示した通信部105により実現される。コンピュータシステムを機械学習装置9として動作させるためのプログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例は親局6と同様である。また、このプログラムもCD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体により提供されてもよいし通信媒体により提供されてもよい。また、機械学習装置9は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。複数のコンピュータシステムで構成されるクラウドシステムでプログラムが実行されることで機械学習装置9が実現されてもよい。
次に、本実施の形態の動作について説明する。本実施の形態では、配電系統における事故が発生した場合に、子局8が事故点を推定する。図6は、倒木による配電線1の障害発生を示す模式図である。図6に示した例では、倒木によって配電線1に木200が接触したり配電線1が断線したりすることにより、停電が発生する事故を模式的に示している。図6では、子局8-1~8-3を図示しており、図示は省略しているが、各子局8-1~8-3にはそれぞれ開閉器2-1~2-3が接続されている。図6に示した例では、開閉器2-2と開閉器2-3との間の区間、すなわち子局8-2と子局8-3との間の区間で事故が発生している。このような事故が発生すると、開閉器2-1~2-3の接続される配電線1における開閉器2-1より上流に設けられている遮断器が開放となることで、この配電線1全体が停電する。親局6では、遮断器が開放となることで事故が発生したことはわかるが、遮断器の下流のどこの区間で事故が生じたかを特定することはできない。
事故点すなわち事故区間を特定するためには、親局6が、各子局8から計測データ、開閉器2の状態などを収集して、事故点を特定することが考えられるが、多数の子局8から情報を収集すると、通信ネットワーク7の通信帯域を圧迫し、状況によっては処理の遅延なども生じる可能性がある。また、事故点がどこに存在するかわからない状態で多数の子局8から収集したデータを用いて事故区間を推定するには処理時間を要する。本実施の形態では、異常を検出した子局8が周辺の子局8から取得した情報を用いて、事故点を推定して親局6へ推定結果を送信する。例えば、子局8は、計測データが前処理された結果を入力として異常度を示すスコアを算出する学習済みモデルであるスコア算出器を保持する。子局8は、スコア算出器と、計測データを前処理した結果とを用いてスコアを算出し、算出したスコアと周辺の子局8から収集したスコアとを用いて事故点を推定する。このため、本実施の形態では、通信ネットワーク7の通信帯域を抑制して事故点を推定することができる。
以下、各装置における動作の詳細を説明する。図7は、本実施の形態の機械学習装置9におけるスコア算出器の生成処理手順の一例を示すフローチャートである。図7に示すように、機械学習装置9は、まず、各子局8から計測データを取得する(ステップS1)。詳細には、通信部91は各子局8から送信された計測データを、親局6を介して受信してデータ記憶部92に格納する。なお、この計測データは各子局8で計測された全ての計測データである必要はなく、事故が発生していない場合には1日1回または1週間に一度程度、例えば、1分分などの短い期間の計測データが送信されてもよい。また、機械学習装置9は、事故などの異常が発生したときのデータも収集するが、スコア算出器の生成のための計測データはリアルタイムまたは準リアルタイムに収集する必要はないため、通信帯域を圧迫しないように、時間をかけて送信されればよい。また、上述したように、データ記憶部92には、運用中の子局8から受信する計測データの代わりに、シミュレーションなどにより生成された模擬データ、実験により取得された計測データなどが用いられてもよく、運用中の子局8から受信する計測データの代わりに、シミュレーションなどにより生成された模擬データ、実験により取得された、木データおよび実験により取得された計測データのうち2つ以上の組み合わせのデータが記憶されてもよい。
次に、機械学習装置9は、モデルの生成対象の子局8を選択する(ステップS2)。詳細には、モデル生成部93が、配電制御システムの監視対象の全ての子局8のうちモデルを生成していない子局8のなかから任意の方法で1つの子局8を選択する。本実施の形態では、子局8ごとに学習済みモデルであるスコア算出器を生成するため、ステップS2でモデルの生成対象の子局8を選択し、順次、選択する子局8を変更することで、配電制御システムの監視対象の全ての子局8のスコア算出器を生成する。
次に、機械学習装置9は、計測データの種類ごとに、各計測データの時系列データに前処理を行い、標本データを抽出する(ステップS3)。詳細には、モデル生成部93が、計測データの種類ごとに、各計測データの時系列データに前処理を行い、標本データを抽出する。なお、標本データは、一定のデータ長のデータであり、スコア算出器に入力されるデータ長である。前処理は、このように、時系列データから一定のデータ長のデータを抽出する処理を含むが、この処理以外にトレンドの除去の処理などを含んでいてもよい。例えば、計測データの種類が温度である場合、正常な場合でも気温の変化に依存して長期的に温度が変化することが考えられる。このような場合には、気温の変化に伴う変化と想定される長周期の変動をトレンドとして扱い、トレンドを除去してもよい。また、電圧、電流についても、一日の長期的な変化などがある場合には、このようなトレンドを除去してもよい。なお、トレンドを除去する必要が無い場合にはトレンド除去を行わなくてもよい。
図8は、本実施の形態の前処理を模式的に示す図である。図8に示すように、計測データの種類ごとに、前処理としてトレンド除去、標本データの抽出などが行われる。図8では、電圧に関して、前処理の内容を図示しているが、他の種類の計測データについても電圧と同様に前処理が行われる。ただし、上述したように、トレンド除去についてはトレンドの除去が必要ない場合には行われなくてよい。
図7の説明に戻る。機械学習装置9は、標本データに対応する評価結果を取得する(ステップS4)。詳細には、機械学習装置9は、図4では図示しない入力手段などによりオペレータから入力されることで、各標本データに対応する評価結果を取得してデータ記憶部92に格納してもよいし、通信部91を介して他の装置から評価結果を取得してデータ記憶部92に格納してもよい。評価結果は、スコア算出器が算出するスコアの正解値に相当するものである。
例えば、計測データごとに、当該計測データをエンジニアなどが確認し、エンジニアが計測データごとのスコアを定めてもよい。また、実験において正常な状態と異常な状態との両方において計測データを取得し、実験における状態に対応した評価結果としてオペレータなどにより機械学習装置9に入力される。または、例えば、実験において異常な状態に設定されたときに取得された計測データの評価結果すなわちスコアを高い値に設定し、正常な状態に設定されたときに取得された計測データの評価結果すなわちスコアを低い値に設定する。また、環境計測部833の計測データに関しては、対応する同一時刻の電圧または電流の計測データを用いてスコアを算出してもよい。例えば、計測された電圧に関して、あらかじめ定められた適正範囲からの逸脱量が増えるほどスコアが高くなるように評価結果を定め、電圧を用いて算出された評価結果を、温度、音、振動などの計測データに対する評価結果として用いてもよい。また、電圧の変化率が大きいほどスコアが高くなるように評価結果を定めてもよい。
また、データ記憶部92に運用中の子局8から取得された計測データが多数蓄積されている場合は、実際に配電系統において過去に事故点として確定された子局8における当該事故発生時刻の周辺の時刻の計測データの評価結果を高い値に設定し、事故が生じていないときの計測データの評価結果を低い値に設定してもよい。なお、本実施の形態では、子局8ごとにスコア算出器を生成するが、単一の子局8において事故が生じる回数は少ないため、条件が類似する他の子局8において取得された過去の事故の際の計測データを用いてもよい。例えば、電圧および電流に関しては、時系列データにおける異常の兆候は子局8および開閉器2の設置されている場所によらずある程度共通であると思われる。このため、電圧および電流のスコア算出器に関しては、子局8および開閉器2によらず共通としてもよい。環境計測部833による計測値は子局8および開閉器2が設置された場所に依存することがある。このため、設置環境が類似する子局8を1つのグループとして扱いグループ単位で計測データを用いてスコア算出器を生成してもよい。例えば、近接する子局8で同一グループを構成するようにしてもよいし、子局情報に子局8ごとの設置環境を含めておき、この設置環境に応じてグループ分けを行ってもよい。設置環境は、例えば、都市部であるか山間部であるか住宅街であるかなどといった区分であるが、これらに限定されない。
次に、機械学習装置9は、計測データの種類ごとに、標本データと対応する評価結果を含むデータセットを複数用いて機械学習により学習済みモデルであるスコア算出器を生成する(ステップS5)。詳細には、例えば、モデル生成部93は、標本データから特徴量を抽出し、特徴量と評価結果とで構成される学習用データに基づいて、スコアを学習することで学習済みモデルであるスコア算出器を生成してモデル記憶部94に格納する。データセットは、標本データすなわち計測データと正解とを互いに関連付けたデータである。なお、モデル生成部93は、スコア算出器に標本データから特徴量を算出する処理も含めておくことで、標本データからスコアを推論する学習済みモデルであるスコア算出器を生成することができる。このように、モデル生成部93は、標本データと評価結果とを含むデータセットを複数用いて、スコアを推論するための学習済みモデルを生成する。モデル生成部93が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、ニューラルネットワークを適用した場合について説明する。
モデル生成部93は、例えば、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、計測データとスコアとの関係を学習する。ここで、教師あり学習とは、入力と結果(ラベル)のデータの組を学習装置に与えることで、それらの学習用データにある特徴を学習し、入力から結果を推論する手法をいう。
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなる中間層(隠れ層)、及び複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層、又は2層以上でもよい。
図9は、ニューラルネットワークの構成例を示す図である。例えば、図9に示すような3層のニューラルネットワークであれば、特徴量として複数の入力が入力層(X1-X3)に入力されると、その値に重みW1(w11-w16)を掛けて中間層(Y1-Y2)に入力され、その結果にさらに重みW2(w21-w26)を掛けて出力層(Z1-Z3)から出力される。この出力結果は、重みW1とW2の値によって変わる。ニューラルネットワークでは、入力層に計測データから得られる特徴量を入力して出力層から出力された結果が、評価結果(正解)に近づくように重みW1とW2を調整することで学習が行われる。特徴量は、例えば、標本データの平均値、最大値、分散値、標準偏差、周波数変換された後のピーク周波数、ピーク周波数成分の大きさなどであるがこれらに限定されない。また、特徴量は標本データ自体であってもよい。なお、図9では、一般的なニューラルネットワークを示しており入力層を3つ、出力層を3つとしているが、本実施の形態では出力層は1つである。また、入力層の数も、図9に示した例に限定されない。
また、本実施の形態では、計測データの種類ごとにスコア算出器を生成するが、計測データの種類ごとではなく、全ての種類の計測データに対応する標本データから算出される特徴量を、入力層に入力してスコアを推論する学習済みモデルを生成することでスコア算出器を生成してもよい。この場合は、スコア算出器は1つの子局8に対して1つ生成され、後述する子局8における種類別スコアの重み付け加算の処理は不要である。
また、モデル生成部93における機械学習はニューラルネットワークに限らず、RNN(Recurrent Neural Network)などであってもよい。また、教師有り学習に限らず、教師なし学習などを用いてもよい。例えば、モデル生成部93は、教師なし学習によりクラスタリングを行い、クラスタリングされた結果、多数のデータが属するクラスタの中心に対応する特徴量を求めておき、この中心からの距離が長いほどスコアが大きくなるようなスコア算出器を生成してもよい。
図7の説明に戻る。機械学習装置9は、子局8へスコア算出器を送信する(ステップS6)。詳細には、通信部91がモデル記憶部94からスコア算出器を読み出して対応する子局8へ送信する。なお、上述したように、スコア算出器は計測データの種類ごとに生成されるため、1つの子局8に計測データの種類の数分のスコア算出器が送信される。次に、機械学習装置9のモデル生成部93は、モデルの生成対象の子局8が有るか否かを判断し(ステップS7)、モデルの生成対象の子局8が有る場合(ステップS7 Yes)、ステップS2からの処理を再び実施する。ステップS7では、モデル生成部93は、配電制御システムの監視対象の全ての子局8のうちモデルを生成していない子局8が有る場合に、モデルの生成対象の子局8が有ると判断する。
モデルの生成対象の子局8が無い場合(ステップS7 No)、機械学習装置9は、スコア算出器の生成処理を終了する。なお、ステップS6の子局8へのスコア算出器の送信は、ステップS7でNoと判定され、全ての子局8のスコア算出器の生成が終了してから行われてもよい。以上の処理によって、各子局8へスコア算出器が送信される。各子局8では、親局6を介して通信部81がスコア算出器を受信してモデル記憶部84に格納する。なお、一度スコア算出器が生成された後に、新たな計測データなどに基づいてスコア算出器の更新が行われてもよい。スコア算出器の更新では、図7と同様の処理が行われているが、全ての子局8に関して同時に更新される必要はなく、更新対象の子局8に関してスコア算出器の生成が行われればよい。
次に、各子局8における事故点の推定処理について説明する。図10は、本実施の形態の子局8における事故点の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、各子局8は、定期的に図10に示した処理を実施するようにしてもよいし、親局6から事故点の推定処理の実施が指示された場合に、図10に示した処理を実施してもよい。後者の場合、親局6は、例えば、遮断器が開放となることにより停電が生じるなどにより事故が検出されると、事故点の推定の実施を各子局8へ指示する。なお、親局6は、停電に関係する子局8に事故点の推定の実施を指示してもよいし、全子局8に事故点の推定に実施を指示してもよい。
図10に示すように、子局8は、まず、計測データを用いて異常の有無を判定する(ステップS11)。詳細には、異常判定部85が、計測部83により計測された電圧および電流のうち少なくとも1つに基づいて自局に対応する区間における異常の有無を判定する。例えば、異常判定部85は、計測データのうち電流および電圧のうち少なくとも1つがあらかじめ定められた正常範囲から逸脱したら、異常であると判断する。
次に異常判定部85は、ステップS11の判定により異常有りと判定されたか否かを判断し(ステップS12)、異常無しと判断した場合(ステップS12 No)、事故点の推定処理を終了する。異常判定部85が異常有りと判断した場合(ステップS12 Yes)、子局8は、計測データの種類ごとに、各計測データの時系列データに前処理を行い、標本データを抽出する(ステップS13)。詳細には、異常判定部85は異常有りと判断した場合、事故点の推定処理の実施を事故点推定部86へ指示し、事故点推定部86が、計測データの種類ごとに、計測部83の電圧計測部831、電流計測部832および環境計測部833から各計測データを取得し、計測データの種類ごとに、計測データである時系列データに前処理を行い、標本データを抽出する。
次に、事故点推定部86は、計測データの種類ごとに、標本データをスコア算出器へ入力して異常度を示す種類別スコアを算出する(ステップS14)。詳細には、事故点推定部86は、計測データの種類ごとに、モデル記憶部84に記憶されているスコア算出器を読み出し対応する標本データを入力することでスコアを推論し、推論したスコアを種類別スコアとする。
次に、事故点推定部86は、種類別スコアを用いて総合的な異常度を示すスコアを算出する(ステップS15)。詳細には、例えば、種類別スコアを以下の式(1)のように重み付け加算により算出する。なお、kを子局8の識別情報(識別番号)とし、STOTAL(k)をk番目の子局8の総合的なスコアとし、SA(k),SB(k),SC(k),SD(k),SE(k)を、k番目の子局8のそれぞれ電圧、電流、振動、音、温度の種類別スコアとする。また、wA,wB,wC,wD,wEは、電圧、電流、振動、音、温度のそれぞれに対応する重み係数である。
STOTAL(k)=wA・SA(k)+wB・SB(k)+wC・SC(k)
+wD・SD(k)+wE・SE(k) ・・・(1)
重み係数については、wA,wB,wC,wD,wEを例えば、0.8,0.8,0.2,0.2,0,2と設定するといったようにあらかじめ定められる。一般的には重み係数は、電流、電圧の重み係数は振動、音、温度の重み係数より大きな値に設定されるが具体的な値は上述した例に限定されない。重み係数は全ての子局8で同じ値が用いられてもよいし、子局8の環境に応じて子局8ごとに定められてもよい。また、事故が発生した場合に、当該事故に対応する箇所の計測データを用いて、これらの重み係数が更新されてもよい。なお、上述したように、計測データの種類別ではなく全ての種類の計測データが入力されるようにスコア算出器を生成する場合には、事故点推定部86は、上述した総合的なスコアの算出処理を実施することなく、スコア算出器に全ての種類の計測データの標本データを入力して得られるスコアを総合的なスコアとする。
また、子局8は、周辺の子局8へスコアの算出を依頼する(ステップS16)。詳細には、異常判定部85は、スコアの算出と送信を依頼することを示す送信依頼信号を生成して、通信部81に周辺の子局8へ当該送信依頼信号を送信するよう指示し、通信部81は、周辺子局情報記憶部87に格納されている周辺子局情報を用いて、周辺の子局8へ当該送信依頼信号を送信する。すなわち、事故点推定部86は、異常判定部85によって異常があると判定された場合に、他の子局8にスコアの算出および送信を依頼する送信依頼信号を生成し、通信部81に送信依頼信号を送信させる。なお、ステップS16は、ステップS12でYesと判定された後に行われればよいため、図10に示した順に限らず、ステップS13の前に行われてもよくステップS13と並行して行われてもよい。周辺子局情報は、例えば、子局8の運用開始時などに、親局6から各子局8へ送信される。親局6は、子局8ごとに当該子局8の周辺の子局8を示す情報を含む子局情報を保持している。ここで、ある子局8の周辺の子局8とは、例えば、ある子局8が接続される配電線1において当該子局8から一定区間数以内の範囲にある子局8である。すなわち、ある子局8にとって周辺の子局8とは、配電線1を含む配電系統において自局から一定範囲内の子局である。または、ある子局8が接続される配電線1の方向(上流側、下流側)ごとに周辺の範囲内とする区間数の値が異なっていてもよく、複数の配電線1に接続可能な子局8の場合には、配電線1ごとに周辺の範囲内とする区間数の値が異なっていてもよい。また、親局6が各子局8の地理的位置を把握している場合には、地理的距離が閾値以下の範囲を周辺の範囲内としてもよい。
図11は、本実施の形態の親局6が保持する子局情報の一例を示す図である。図11に示した例では、子局情報は、子局ID(IDentifier:識別情報)、位置、設置環境、周辺子局、および隣接する子局8との平均距離の各情報を含んでいる。子局IDは子局8の識別情報であり、位置は子局8の配電系統における位置である。位置は、例えば、識別番号Xの配電線の何番目の子局8であるかなどの情報である。設置環境は、都市部、山間部、住宅地といったようにどのような環境に設置されているかを示す。また、周辺子局は、各子局8へ周辺子局情報として送信する周辺の子局8を示す情報である。隣接する子局8との平均距離は、例えば、各子局8に関して、当該子局8と隣接する子局8と間の距離の平均値を求めることで算出されてもよいし、設置環境ごとに、おおよその隣接する子局8との平均距離を設定してもよい。一般的に都市部では開閉器2で区分される区間は山間部より狭い。したがって、このような一般的な傾向を反映して隣接する子局8間の距離の平均値を設定してもよい。子局情報における周辺子局は、隣接する子局8との平均距離を用いて決定されてもよい。
後述するように、本実施の形態では、子局8は周辺の子局8から取得したスコアと自身が算出したスコアを比較して事故点を推定するが、環境計測部833により計測される環境の状態は、子局8が設置される場所に依存すると考えられるため、距離的に離れている子局8のスコアと比較すると設置環境の違いによる誤差が発生する可能性がある。したがって、環境計測部833による計測データも用いてスコアを算出する場合には、周辺の子局8を隣接する子局8との平均距離に応じて定めておくことが望ましい。ただし、上述したように、計測データの種類ごとに重み係数を決定しているため、環境計測部833による計測データに対応する重み係数が小さい値である場合には、隣接する子局8との平均距離を考慮せずに周辺の子局8を一律の定義で決定してもよい。また、環境計測部833による計測データを用いず、電圧および電流のうち少なくとも1つの計測データを用いてスコアを算出する場合、隣接する子局8との平均距離を考慮せずに周辺の子局8を一律の定義で決定してもよい。
親局6は、子局情報に格納されている周辺の子局8を示す情報を、子局8の運用開始時などに周辺子局情報として各子局8へ送信する。また、親局6は、子局情報のうち周辺の子局8の情報が更新されると、更新された情報に基づき周辺子局情報を対応する子局8へ送信する。
図10の説明に戻る。子局8は、周辺の子局8からスコアを受信し(ステップS17)、算出したスコアと周辺の子局8から受信したスコアとを用いて事故点を推定し(ステップS18)、推定結果を親局6へ送信し(ステップS19)、処理を終了する。詳細には、ステップS17では、通信部81が周辺の子局8から受信したスコアを事故点推定部86へ渡し、ステップS18では、事故点推定部86が、ステップS15で算出したスコアと通信部81から受け取った周辺の子局8によって算出されたスコアとを比較し、スコアの値が最も大きい子局8を事故点と推定する。また、ステップS19では、事故点推定部86が、推定結果を、通信部81を介して親局6へ送信する。なお、このとき、事故点推定部86は、算出したスコアおよび周辺の子局8から受信したスコアについても親局6へ送信してもよい。このように、本実施の形態では、事故点推定部86は、計測データの種類ごとにスコア算出器を用いてスコアを種類別スコアとして算出し、算出した種類別スコアを重み付け加算することで総合的なスコアを算出し、総合的なスコアを用いて事故点を推定する。
次に、他の子局8からスコア算出を依頼された場合の子局8の動作について説明する。図12は、本実施の形態のスコア算出を依頼された場合の子局8における動作の一例を示すフローチャートである。子局8は、例えば、一定周期で図12に示す処理を実施する。図12に示すように、子局8は、スコアの算出の依頼が有ったか否かを判断し(ステップS21)、スコア算出の依頼が無い場合(ステップS21 No)、処理を終了する。詳細には、ステップS21では、通信部81が他の子局8から送信依頼信号を受信したか否かを判断する。
スコアの算出の依頼が有った場合(ステップS21 Yes)、子局8は、上述したステップS13と同様に、計測データの種類ごとに、各計測データの時系列データに前処理を行い、標本データを抽出し(ステップS22)、ステップS14,S15と同様にステップS23,S24を実施する。ステップS22~S24は、上述したステップS13~S15と同様であるため、詳細な説明は省略する。
次に、子局8は、スコア算出の依頼元に算出したスコアを送信し(ステップS25)、処理を終了する。詳細には、事故点推定部86が、算出したスコアを通信部81へ渡し、通信部81が、送信依頼信号の送信元の子局8へスコアを送信する。このように、事故点推定部86は、通信部81がスコアの算出および送信を依頼する送信依頼信号を受信すると、スコアの算出と事故点の推定を行い、通信部61に算出したスコアを送信依頼信号の送信元へ送信させる。以上の処理を、スコアの算出を依頼する送信依頼信号を受信した各子局8が行うことで、スコアの算出の依頼元の子局8は、周辺の子局8からスコアを収集することができる。
なお、上述した例では、周辺子局情報をあらかじめ親局6が送信しておき、子局8が保持している周辺子局情報を用いて周辺の子局8へスコアの算出を依頼するようにしたが、これに限らず、親局6が事故の発生後に、事故に関連すると推定される子局8に関して、当該子局8の周辺の他の子局8を示す周辺子局情報を送信するようにしてもよい。この場合、子局8は、親局6から受信した周辺子局情報を用いて上述した例と同様に周辺の子局8へスコアの算出を依頼する。また、上述した例では、スコア算出の依頼があった場合に他の子局8が算出したスコアを送信するようにしたが、これに限らず、全子局8または親局6から指定された全子局8がスコアの算出を行い、スコア算出の依頼がない場合にも例えば定期的にスコアを周辺の子局8へ送信してもよい。
また、図10に示した処理を行う子局8を限定してもよい。例えば、配電線1における並び順で1つおきの子局8が図10に示した処理を行い、他の子局8は図10に示した処理は実施せずにスコア算出の依頼があったときにスコアの算出を実施するようにしてもよい。これにより、複数の子局8が同時に図10に示した処理を行うことを避けることができ、重複する処理を抑制することができる。
図13は、本実施の形態のスコアに基づく事故点推定を模式的に示す図である。図13において、黒丸は図10に示したステップS12で異常有りと判定した子局8である異常判定子局を示しており、白丸は異常判定子局がスコアの算出を依頼した周辺の子局8を示す。各丸の右上に記載された数値は、各子局8で算出されたスコアを示している。また、図13では、異常判定子局と、異常判定子局に配電系統図上で隣接する子局8との間の配電線1を実線で示し、当該隣接する子局8と当該隣接する子局8に隣接する子局8との間の配電線1を破線で示している。図13に示した例では、異常判定子局は複数の配電線1に接続されており、配電線1によって周辺の範囲内とする区間数が異なっている。図13に示した例では、異常判定子局は、白丸で示される8つの子局8へスコアの算出を依頼し、これらの8つの子局8からスコアを取得しており、異常判定子局によって算出されたスコアを含む9つのスコアのうち異常判定子局によって算出されたスコアの値が最も大きい。このため、異常判定子局は、自身を事故点と推定する。図13に示した例では、異常判定子局のスコアの値が最も高いが、周辺の他の子局8から取得したスコアが異常判定子局のスコアの値より大きい場合には当該他の子局8を事故点と推定する。
なお、一般には、このような場合、事故点と推定された他の子局8においても、図10に示したステップS12でYesと判定されて、異常判定子局と同様の処理が行われている可能性が高いが、この処理では、当該他の子局8は自身を事故点と推定することになる。したがって、親局6は、1つの事故に関して複数の子局8から事故点の推定結果を受信することもあるが、スコアの算出処理が正常に行われていれば、親局6が受信する推定結果は一致する。各子局8の処理における異常、通信エラーなどにより、親局6が複数の子局8から受信した推定結果が一致しない場合、親局6の情報統合部65は、推定結果が3つ以上あれば多数決により事故点を推定してもよい。
図14は、本実施の形態の親局6が事故点の推定結果を受信した場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。図14に示すように、親局6は、子局8から推定結果を受信したか否かを判断する(ステップS31)。詳細には、通信部61は推定結果を受信すると、受信した推定結果をデータ記憶部64に格納し、情報統合部65がデータ記憶部64に推定結果が格納されたことを検知すると、子局8から推定結果を受信したと判断する。また、ここでは、推定結果とともに送信元の子局8のスコアと周辺の子局8のスコアとが子局8から送信されるとする。
子局8から推定結果を受信した場合(ステップS31 Yes)、親局6は、推定結果に対応する子局8の位置を特定する(ステップS32)。詳細には、情報統合部65が、データ記憶部64に格納された推定結果すなわち事故点として推定された子局8の識別情報を用いて、子局情報記憶部63に格納されている子局情報から子局8の位置を抽出することで、子局8の位置を特定する。
次に、親局6は、事故点と推定された子局8をスコアとともに表示し(ステップS33)、処理を終了する。詳細には、表示部66が、事故点と推定された子局8の識別情報を対応するスコアとともに表示する。なお、スコアについては表示せずに、事故点と推定された子局8の識別情報を表示してもよい。また、データ記憶部64に配電系統図を表示するための表示データを格納しておき、情報統合部65が、ステップS32で事故点と推定された子局8の位置を特定した後に、配電系統図における特定した位置に事故点を示す記号などを重畳するための表示データを生成し、生成した表示データをデータ記憶部64に格納してもよい。この場合、表示部66は、配電系統図の表示データと情報統合部65により生成された表示データとを重畳することで、配電系統図における事故点の位置を表示してもよい。この表示は、例えば、図13に示したような形式で、事故点の推定結果を他の子局8と異なる表示方法で表示してもよい。また、図13は、1つの子局8において算出されたスコアと周辺の子局8から取得されたスコアとを示しているが、表示部66はこのように、1つの子局8から受信したスコアと推定結果とを表示可能であってもよいし、複数の子局8から受信したスコアを表示することで、より広い範囲の子局8のスコアを配電系統図に重畳して表示してもよい。
以上のように、本実施の形態では、子局8が事故点を推定して推定した結果を親局6に送信するため、親局6が各子局8から計測データを収集して事故点を推定する場合に比べて、使用する通信帯域を抑制して事故点を推定することができる。また、計測データとして環境計測部833による計測値を用いる場合には、例えば、電圧、電流に関しては複数の子局8の計測データが異常となり、事故点を判定しにくい場合などにも、倒木、落雷などの環境の急変を検出することができるため、事故点の推定精度を向上させることができる。
なお、上述した例では、ステップS12において、異常判定部85が、電流および電圧の計測データを用いて異常の有無を判定したが、異常であるか否かの判断を、種類別スコアを用いて行ってもよい。図15は、種類別スコアを用いて異常判定を行う場合の本実施の形態の子局8における事故点の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。この例においても、子局8の構成例は図3と同様であるが、事故点推定部86と異常判定部85とを接続する矢印が両側の矢印となる。図15に示したステップS13,S14は、図10に示したステップS13,S14と同様である。ステップS14の後、事故点推定部86は、種類別スコアのうち電圧と電流の種類別スコアを異常判定部85へ出力する。
異常判定部85は、電流および電圧の種類別スコアを用いて部分スコアを算出する(ステップS41)。部分スコアは、電流および電圧の種類別スコアから算出される異常度を示すスコアであり、例えば、電流の種類別スコアと電圧の種類別スコアとを重み付け加算した結果である。なお、電流および電圧の種類別スコアを用いて部分スコアを算出する代わりに、電流または電圧のどちらかの種類別スコアを部分スコアとして用いてもよい。
異常判定部85は、部分スコアが閾値以上であるか否かを判定する(ステップS42)。部分スコアが閾値以上である場合(ステップS42 Yes)、図10と同様にステップS15~S19が実施される。詳細には、部分スコアが閾値以上である場合、異常判定部85は、異常が有ると判定し、事故点推定部86へ事故点の推定の実施を指示する。これにより、ステップS15以降の処理が実施される。なお、ここでは、ステップS14で計測データの全種類に関して種類別スコアが算出される例を示したが、ステップS14では電流および電圧の種類別スコアのみを算出してもよい。この場合、ステップS15では、事故点推定部86は、ステップS14で算出が行われていない種類別スコアを算出し、算出した結果とステップS14で算出した種類別スコアとを用いて総合的なスコアを算出する。このように、上述した例では、異常の判定と事故点の推定とで考慮する種類別スコアを変えている。これは、事故点の推定に関しては、周辺の子局8との比較であるため、環境についてはそれほど差がないと考えられるのに対し、異常の有無の判定では、地理的に離れていたり環境が異なっていたりする子局8の異常を一律に判定するため、環境が異なる場合もあり環境計測部833を考慮すると適切でない場合もあると考えられるためである。ただし、子局8に応じた閾値を設定することにより、部分スコアの代わりに、図10で述べた総合的なスコアを用いて、ステップS42の判定を実施してもよい。
また、上述した例では、子局8がスコアを用いて事故点を推定するようにしたが、各子局8がスコアを親局6へ送信し、親局6が事故点を推定してもよい。この場合、各子局8から親局6へのデータの送信が行われるものの、スコアを示すデータは計測データに比べてデータ量が非常に少ないため、計測データを子局8が親局6に送信する場合に比べて通信帯域を抑制することができる。
図16は、親局6が子局8からスコアを収集して事故点を推定する場合の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。この場合、親局6には、事故点を推定する事故点推定部が追加される。親局6の事故点推定部は、事故が発生したか否かを判断する(ステップS51)。ステップS51では、例えば、事故点推定部は、オペレータから事故の発生を示す情報が入力された場合に事故が発生したと判断する。
事故が発生したと判断した場合(ステップS51 Yes)、親局6は、事故点を含む可能性のある範囲の子局8へスコア算出を依頼する(ステップS52)。詳細には、事故推定部が、スコアの算出と送信を依頼する送信依頼信号を生成して、通信部61を介して事故点を含む可能性のある範囲の子局8へ送信依頼信号を送信する。なお、各子局8は、上述した他の子局8から送信依頼信号を受信した場合と同様に、親局6から送信依頼信号を受信すると、図12に示したステップS22~ステップS25を実施することで、親局6にスコアを送信する。
親局6は、各子局8からスコアを受信し(ステップS53)、各子局8から受信したスコアを用いて事故点を推定する(ステップS54)。詳細には、事故点推定部が通信部61を介して各子局8からスコアを受信して、各子局8から受信したスコアを用いて事故点を推定する。そして、親局6の表示部66が、推定結果を表示し(ステップS55)、処理を終了する。このように、親局6が、子局8によって算出されたスコアを用いて事故点を推定することで、子局8から計測データを収集する場合に比べて通信帯域を抑制して事故点を推定することができる。すなわち、この例では、親局6は、複数の子局8のうち選択した子局8へスコアの送信を指示し、選択した子局8から受信したスコアを用いて事故点を推定する。
以上のように、本実施の形態では、各子局8が計測データを用いて異常の度合いを示すスコアを算出するようにした。そして、本実施の形態では、スコアに基づいて事故点の推定が行われる。これにより、子局8から計測データを収集する場合に比べて通信帯域を抑制して事故点を推定することができる。また、環境計測部833が子局8の周辺の環境の状態を示す音、振動、温度などを計測し、子局8がこれらの計測データに基づいてスコアを算出することで、多様なデータを考慮した事故点の推定を行うことができ、事故点の推定精度の向上を図ることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。