JP2022105986A - インクジェットヘッド用ノズル板、その製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェットヘッド用ノズル板、その製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板、その製造方法、当該インクジェットヘッド用ノズル板を用いたインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することである。【解決手段】本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、前記ステンレス鋼が、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であるオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。【選択図】図2C

Description

本発明は、インクジェットヘッド用ノズル板、その製造方法、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
より詳しくは、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板等に関する。
インクジェットヘッドは、各インクチャネルにアクチュエーターを配し、各インクチャネルと連通したインク吐出口、すなわちノズルが形成されたノズル板からインクを吐出する。
従来、インクジェットヘッド用ノズル板(以下、単に「ノズル板」ともいう。)の基材として、インクに対する化学的安定性や、機械的な摩擦に対する耐久性に優れたステンレス鋼が用いられている。特に、オーステナイト系ステンレス鋼である、SUS304、SUS316などの鋼種が良く用いられている。これらの鋼種は、汎用的に生産されており、他の鋼種よりもコスト的に優れている。また、Cr含有量が比較的高く、耐腐食性が優れているため、インクに接するノズル板の基材として化学的安定性に優れている。
上記のようなオーステナイト系ステンレス鋼製の基材にノズルを形成する方法として、レーザ加工による方法(非特許文献1)や、ポンチ加工で凹部を形成後、裏面の凸部を研磨除去する方法(特許文献1)が知られている。
しかし、従来のオーステナイト系ステンレス鋼を基材としてレーザ加工によってノズルが形成されたノズル板は、ノズル内壁に微小凹部(ニードルホール)が発生しやすいという問題があった。
また、ポンチ加工で凹部を形成後、裏面の凸部を研磨除去する方法でも、従来のオーステナイト系ステンレス鋼を基材とした場合、凹部を形成する際に、塑性変形に伴いノズル内壁に流路側からノズル先端(吐出方向先端)側に向かってスジ状凹凸部が発生し、裏面の凸部を研磨除去する際にスジ状凹凸部がノズル先端でバリ(突起)となって残ってしまうという問題があった。
ノズル内壁に上記の微小凹部やスジ状凹凸部いった異形が存在すると、インク中に発生した気泡が引っかかってノズル欠が発生しやすくなり、メンテナンスの頻度が高くなってインクジェット記録装置の稼働率が低下してしまう。また、ノズル先端近傍に上記のような微小凹部、スジ状凹凸部及びバリなどの異形が存在すると、当該ノズルから吐出されるインク吐出角が曲がることにより、着弾位置のばらつき、描画ムラ、スジ感及びパターン切れなどが生じやすくなり、描画品質が低下してしまう。
そこで、ノズル内壁やノズル先端における微小凹部、スジ状凹凸部及びバリなどの異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板が求められている。
特許第3755332号公報
Xinbing Liu "Industrial applications of ultrahigh precision short-pulse laser processing (Invited Paper)", Proc. SPIE 5713, Photon Processing in Microelectronics and Photonics IV, (12 April 2005)
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板、その製造方法、当該インクジェットヘッド用ノズル板を用いたインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した結果、特定の結晶構造比率を有するステンレス鋼を用いることで、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板等を提供できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、
前記ステンレス鋼が、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であるオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板。
2.少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、
前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される面心立方晶の面積割合が92.0%以上であり、かつ、体心立方晶の面積割合が5.4%以下であるステンレス鋼であることを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板。
3.前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される度数平均結晶粒径が0.9μm以下であるステンレス鋼であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
4.前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される面積比加重平均結晶粒径が2.3μm以下であるステンレス鋼であることを特徴とする第1項から第3項のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
5.前記ステンレス鋼が、ノズル先端の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される度数平均結晶粒径の比率が4.7%以下であるステンレス鋼であることを特徴とする第1項から第4項のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
6.前記ステンレス鋼が、ノズル先端の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される面積比加重平均結晶粒径の比率が12.0%以下であるステンレス鋼であることを特徴とする第1項から第5項のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
7.第1項から第6項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板を製造するインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法であって、
レーザ加工によりノズルを形成する工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法。
8.第1項から第6項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板を製造するインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法であって、
ポンチ加工により凹部を形成し、次いで裏面の凸部を研磨除去することによりノズルを形成する工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法。
9.第1項から第6項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板を用いたことを特徴とするインクジェットヘッド。
10.第9項に記載のインクジェットヘッドを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明の上記手段により、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板、その製造方法、当該インクジェットヘッド用ノズル板を用いたインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明者は、従来使用していたオーステナイト系ステンレス鋼にノズルを形成するときに微小凹部スジ状凹凸部及びバリなどの異形が発生する原因が、微小に含有されるマルテンサイト相にあることを見いだした。具体的には、マルテンサイト相の含有割合が5.4%よりも大きいオーステナイト系ステンレス鋼であり、面心立方晶の面積割合が92.0%より小さく、かつ、体心立方晶の面積割合が5.4%よりも大きいステンレス鋼を用いると、ノズルの形成において異形が顕著に発生しうることを見いだした。
オーステナイト相とマルテンサイト相は結晶構造が異なり、オーステナイト相は面心立方構造、マルテンサイト相は体心立方構造である。体心立方構造と面心立方構造は単位格子の空間充填率が異なるため、材料物性も異なり、それがノズル内壁やノズル先端における異形の発生に影響しうる。
一例として、一般的なマルテンサイト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼よりも融点が低く、熱伝導率も高いことが知られている。このことから、マルテンサイト相はオーステナイト相よりも熱伝導率が高く、レーザ加工時のレーザアブレーション速度が高いと考えられる。
そのため、レーザ加工では、オーステナイト系ステンレス鋼の中にマルテンサイト相が異相として含まれると、微小に含まれるマルテンサイト相が優先的にレーザアブレーションされることになり、結果として、ノズル内壁に微小凹部(ニードルホール)が発生してしまうと考えられる。
また、他の例として、一般的なマルテンサイト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼よりも密度が低く、伸び率が小さい傾向があるので、引っ張り荷重に対して塑性変形し難い。このことから、マルテンサイト相はオーステナイト相よりも塑性変形し難いと考えられる。
そのため、オーステナイト系ステンレス鋼の中にマルテンサイト相が異相として含まれると、ポンチツールによるポンチ加工でステンレス鋼基材が塑性変形する際に、オーステナイト相とマルテンサイト相で塑性変形応答にズレが生じる。これにより、結果として、ノズル内壁に流路側からノズル先端側に向かってスジ状凹凸部が発生してしまうと考えられる。
さらに、このようなスジ状凹凸部がノズル内壁に形成されていると、次いで実施する裏面凸部を研磨除去する際に、ノズル先端の縁にバリが形成される原因となりうる。
したがって、本発明のように、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であるオーステナイト系ステンレス鋼を用いることで、又は電子線後方散乱解析法によって測定される面心立方晶の面積割合が92.0%以上であり、かつ、体心立方晶の面積割合が5.4%以下であるステンレス鋼を用いることで、ノズル形成時における異形の発生を抑制することができる。
これらの発現機構又は作用機構により、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板を提供することができると考えられる。
ステンレス鋼Aの光学顕微鏡画像 ステンレス鋼Bの光学顕微鏡画像 ステンレス鋼Cの光学顕微鏡画像 EBSD測定で得られたステンレス鋼Aの結晶粒マップ EBSD測定で得られたステンレス鋼Bの結晶粒マップ EBSD測定で得られたステンレス鋼Cの結晶粒マップ ステンレス鋼Aからなるノズル板のノズル全体のSEM画像 ステンレス鋼Bからなるノズル板のノズル全体のSEM画像 ステンレス鋼Cからなるノズル板のノズル全体のSEM画像 ステンレス鋼Aからなるノズル板のノズル内壁のSEM画像 ステンレス鋼Bからなるノズル板のノズル内壁のSEM画像 ステンレス鋼Cからなるノズル板のノズル内壁のSEM画像 異形である微小凹部(ニードルホール)のSEM画像 異形であるスジ状凹凸部及びバリを有するノズルの断面SEM画像 異形を有しないノズルの断面SEM画像
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、一の実施形態として、少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、前記ステンレス鋼が、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であるオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
また、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、一の実施形態として、少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される面心立方晶の面積割合が92.0%以上であり、かつ、体心立方晶の面積割合が5.4%以下であるステンレス鋼であることを特徴とする。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される度数平均結晶粒径が0.9μm以下であるステンレス鋼であることが、異形の発生を抑制することができる点で好ましい。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される面積比加重平均結晶粒径が2.3μm以下であるステンレス鋼であることが、異形の発生を抑制することができる点で好ましい。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、前記ステンレス鋼が、ノズル先端の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される度数平均結晶粒径の比率が4.7%以下であるステンレス鋼であることが、異形の発生を抑制することができる点で好ましい。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、前記ステンレス鋼が、ノズル先端の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される面積比加重平均結晶粒径の比率が12.0%以下であるステンレス鋼であることが、異形の発生を抑制することができる点で好ましい。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法は、一の実施形態として、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板を製造するインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法であって、レーザ加工によりノズルを形成する工程を有することを特徴とする。
また、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法は、一の実施形態として、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板を製造するインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法であって、ポンチ加工により凹部を形成し、次いで裏面の凸部を研磨除去することによりノズルを形成する工程を有することを特徴とする。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板又はそれを用いたインクジェットヘッドは、インクジェット記録装置に好適に用いることができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
(1)本発明のインクジェットヘッド用ノズル板の概要
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、一の実施形態として、少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、前記ステンレス鋼が、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であるオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
また、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、一の実施形態として、少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される面心立方晶の面積割合が92.0%以上であり、かつ、体心立方晶の面積割合が5.4%以下であるステンレス鋼であることを特徴とする。
なお、本願において、「インク」とは、染料又は顔料を含有する液体に限定されず、例えば、ニス等の高分子材料や、金属微粒子を含有する液体なども含む印刷、記録、染色等のために用いる液体をいう。したがって、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板が吐出するインクは、染料又は顔料を含有する液体に限定されない。
(2)ステンレス鋼の結晶構造
本願において、「オーステナイト系ステンレス鋼」とは、常温でオーステナイトを主要組織とするステンレス鋼を指す。例えば、SUS301、SUS304、SUS316等のJIS G 4304に規定されたオーステナイト鋼が挙げられる。本発明においては、インクに対する化学的安定性の点でSUS304が好ましい。
「オーステナイト相」とは、ステンレス鋼において、結晶構造が面心立方晶(FCC:Face Centered Cubic Lattice)である相のことをいう。また、「マルテンサイト相」とは、結晶構造が体心立方晶(BCC:Body Centered Cubic Lattice)である相のことをいう。
ステンレス鋼の組成比は微視的には完全には一様ではなく、オーステナイト系ステンレス鋼であっても、微視的には熱力学的に準安定な状態の領域を含んでいる。そのような領域においては常温ではオーステナイト相よりもマルテンサイト相の自由エネルギーが小さい状態にあり、冷間圧延など塑性変形を受けることで、加工誘起マルテンサイト変態が生じ、オーステナイト相の中に、若干量のマルテンサイト相を含むことがある。
ステンレス鋼の結晶構造が面心立方晶であるか、体心立方晶であるかは、電子線後方散乱解析法(EBSD:Electron backscatter diffraction)によって測定することができる。
「電子線後方散乱解析法」とは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)内で傾斜したサンプルに電子線を照射することで得られる結晶方位に応じた電子線散乱パターン(菊池線)を解析して、結晶情報を得る方法である。隣接する測定点の間で一定以上の方位差を持つ箇所を各結晶粒の境界として識別し、結晶粒マップを作製することができる。また、各結晶粒の結晶構造及び結晶粒径を測定することができる。
なお、電子線後方散乱解析法による測定(以下、「EBSD測定」ともいう。)では結晶構造を決定できない結晶粒も存在するが、本発明における面心立方晶の面積割合[%]及び体心立方晶の面積割合[%]は、結晶構造を決定できない結晶粒を除いた面積に対する割合である。
本発明の一の実施形態に係るステンレス鋼は、上記の方法で測定される面心立方晶の面積割合が92.0%以上であり、かつ、体心立方晶の面積割合が5.4%以下であるステンレス鋼であることを特徴とする。これにより、ノズル形成時の異形の発生を抑制することができる。
なお、本発明における面心立方晶の面積割合[%]及び体心立方晶の面積割合[%]は、小数点以下第2位を四捨五入した値である。
また、電子線後方散乱解析法によって測定される面心立方晶の面積割合[%]及び体心立方晶の面積割合[%]を、それぞれオーステナイト相の含有割合[%]及びマルテンサイト相の含有割合[%]とみなすことができる。
なお、本発明におけるオーステナイト相の含有割合[%]及びマルテンサイト相の含有割合[%]は、小数点以下第2位を四捨五入した値である。
すなわち、本発明の一の実施形態に係るステンレス鋼は、結晶構造が体心立方晶であるマルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であるオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。これにより、ノズル形成時の異形の発生を抑制することができる。
また、本発明に係るステンレス鋼には、炭素濃度が低いステンレス鋼を用いることもできる。ポンチ加工においては、加工誘起マルテンサイト変態が生じ、結晶粒径が微細化してステンレス鋼が硬化し、異形が発生しやすくなる。炭素濃度が低いステンレス鋼では加工誘起マルテンサイト変態が生じにくいため、異形の発生を抑制することができる。炭素濃度が低いステンレス鋼としては、例えば、SUS304L、SUS316L等を挙げることができる。
(3)ステンレス鋼の結晶粒径
本発明に係るステンレス鋼は、電子線後方散乱解析法によって測定される平均結晶粒径が小さいことが、異形の発生を抑制することができる点で好ましい。具体的には、度数平均結晶粒径が0.9μm以下、又は面積比加重平均結晶粒径が2.3μm以下であることが好ましい。
なお、本発明における度数平均結晶粒径[μm]及び面積比加重平均結晶粒径[μm]は、小数点以下第2位を四捨五入した値である。
また、本発明に係るステンレス鋼は、ノズル先端(吐出方向先端)の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される度数平均結晶粒径の比率が4.7%以下、又はノズル先端(吐出方向先端)の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される面積比加重平均結晶粒径の比率が12.0%以下であることが好ましい。これにより、ノズル形成時の異形の発生を抑制することができる。
なお、ノズル先端の開口径に対する度数平均結晶粒径の比率[%]及びノズル先端の開口径に対する面積比加重平均結晶粒径の比率[%]は、小数点以下第2位を四捨五入した値である。
「度数平均結晶粒径」とは、測定領域内における結晶粒径の合計値を、度数(粒子の個数)で割った値である。
「面積比加重平均結晶粒径」とは、測定領域内に占める面積の割合によりデータに重み付けを行って算出したものであり、結晶粒径に結晶粒面積をかけたものの合計値を、結晶粒面積の合計値で割った値である。
ここで、「ノズル先端の開口径」とは、ノズル先端の開口形状が円形の場合はその直径を指し、円形でない場合は、開口面積と同じ面積の円に置き換えた場合のその円の直径とする。
(4)ノズルの形成
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法は、一の実施形態として、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板を製造する方法であって、レーザ加工によりノズルを形成する工程を有することを特徴とする。
また、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法は、一の実施形態として、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板を製造する方法であって、ポンチ加工により凹部を形成し、次いで裏面の凸部を研磨除去することによりノズルを形成する工程を有することを特徴とする。
形成するノズルの形状は、インク吐出安定性の点から、漏斗型であることが好ましい。例えば特開2017-19174号公報の段落[0037]に記載の形状とすることができる。ノズル形状を漏斗型とすることで、インク吐出に伴いメニスカス面を引き込んだ際に、ノズル内に気泡を巻き込むことを抑制することができる。
<レーザ加工によるノズルの形成>
レーザ加工によるノズルの形成方法については、例えば、特許4455884号公報の段落[0014]~[0035]、特開2017-19174号公報の段落[0016]~[0036]等に記載の方法を用いることができる。
具体的には、パルス幅が30ピコ秒以下のレーザ光を放射するレーザ光源、レーザ光をスキャニングするためのピエゾ制御ミラー、及びレーザビームを集光するための集光レンズを用い、レーザ光のステンレス鋼基材への集光とスキャニングをしながらレーザアブレーション加工することでノズルを形成する。ノズルの三次元形状は、レーザビームのスキャンパターンで制御することができる。
レーザ光のパルス幅は短パルスになるほどステンレス鋼への熱影響が少ない。ピコ秒パルスよりはフェムト秒パルスを用いることが好ましい。また、レーザアブレーション加工に伴い、ステンレス鋼の粉塵が発生するため、粉塵をノズル加工位置から除去するために、空気などの気体を吹付けながらレーザ加工していくことが好ましい。また、回折光学素子(DOE:diffractive optical element)などを用いてレーザビームを分割することで、多数のノズルを同時に加工することができるため、ノズル加工工程の生産性を向上させることができる。
ステンレス鋼基材のアブレーション加工の進行に伴い、レンズの焦点位置が基材表面にあたるように、ステンレス鋼基材の高さ、あるいはレンズの高さを変えることが好ましい。ノズル加工高さとレンズ焦点高さを同期して合わせることで、デフォーカス状態で加工されることを防ぎ、レンズの収差影響を低減することでノズル加工形状の異常を低減することができる。
<ポンチ加工+研磨除去によるノズルの形成>
ポンチ加工+研磨除去によるノズルの形成は、例えば、特許第3755332号公報の段落[0008]~[0014]に記載の方法で行うことができる。
ポンチ加工による凹部の形成には、ポンチツールを用いる。ポンチツールはノズル形状に準じた形状とする。ステンレス鋼基材の流路側の面にポンチツールを押し込むことで、ステンレス鋼基材を塑性変形させ、ノズル形状が転写された凹部形状を形成できる。また、ポンチツールの押し込みの際に、変形して突出するステンレス鋼基材を受け入れて把持するために、抜き型を形成したダイを用いる。
次いで、吐出面側の形成された凸部を研磨により削り取ることで、ノズルを形成する。具体的には、粗研磨と仕上げ研磨の2段階により凸部の研磨除去を行うことができる。
粗研磨には、テープ研磨を用いることが好ましい。テープ研磨は微細な砥粒を固着させたフィルムを押し付けて研磨する方法であり、砥粒の摩耗や目詰まりが進む前にフィルムを送りだすことで、仕上がりが安定し、さらに、自動化することができる。
仕上げ研磨には化学的機械的研磨(CMP:chemical mechanical polishing)を用いることが好ましい。研磨剤の入った研磨液の供給、研磨パッドの押し当て、及びワークの相対的な移動、を並行して行うことで、化学作用と機械的研磨の複合作用により、粗研磨で残った凹凸を削って非常に平坦な表面を得ることができる。
(5)インクジェットヘッド用ノズル板の利用
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法などに利用することができる。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板は、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないため、当該ノズル板を用いたインクジェットヘッドは、ノズル欠が発生しにくく、当該インクジェットヘッドを利用したインクジェット記録装置のメンテナンス頻度を少なくできる。また、着弾位置のばらつき、描画ムラ、スジ感及びパターン切れなどが生じにくいため、描画品質が良好である。
なお、本発明のインクジェットヘッドは、本発明のインクジェットヘッド用ノズル板を用いたこと以外の構成は特に限定されず、一般的なインクジェットヘッドと同様に、圧力室、圧電アクチュエーター、振動板、配線基板、共通インク室及び駆動部などを備えることで構成することができる。
また、本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクジェットヘッドを備えること以外の構成は特に限定されず、一般的なインクジェット記録装置と同様に、当該インクジェットヘッドから構成されるヘッドユニットの他に、搬送ベルト及び搬送ローラーなどを備えることで構成することができる。
本発明のインクジェットヘッド用ノズル板をインクジェット記録方法に利用する場合、当該ノズル板とともに、表面張力が20~40mN/mの範囲内であるインクを使用することが好ましい。また、記録装置にインクの脱気機構を設けたり、脱気済みのインクを使用したりすることで、インク中の溶存酸素量を大気圧下に対して20%以下に低下させてから使用することが好ましい。また、より好ましくは溶存酸素量を3.0g/mL以下にすると良い。
これにより、ノズル欠の原因となる気泡がインク中で発生しにくくなるため、ノズル欠の発生をより減らすことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)実施例1:レーザ加工によりノズルを形成したノズル板
(1.1)ステンレス鋼
ステンレス鋼には日鉄ケミカル&マテリアル製、厚さ50μm、オーステナイト系である下記ステンレス鋼A~Cを用いた。
ステンレス鋼A:SUS304-CSP-H-TA材
ステンレス鋼B:SUS304-CSP-H材 ロット1
ステンレス鋼C:SUS304-CSP-H材 ロット2
上記ステンレス鋼の「H」は硬質材であることを意味する。また、「TA」は、圧延することでステンレス鋼の応力や反りを取り除くテンションアニール処理がされた材であることを意味する。すなわち、ステンレス鋼Aはテンションアニール処理がされた硬質材であり、ステンレス鋼B及びステンレス鋼Cはテンションアニール処理がされていない硬質材である。「CSP」は冷間圧延鋼帯(Cold-rolled steel strip for springs)を意味する。
図1A~Cは、それぞれステンレス鋼A~Cの、倍率を100倍にして撮った光学顕微鏡画像である。表面モフォロジーについては、ステンレス鋼A~Cに違いは見られなかった。
次に、EBSD測定結果について説明する。なお、EBSD測定は、日本電子製SEM JSM-7001F、及びTSL社製OIMソフトウェアVer.7.3を用いて、SEM加速電圧を15kV、試料傾斜角を70°、測定領域を100μm×40μm、測定ステップ(測定点間隔)を0.2μm、結晶粒界の方位差のしきい値を5°にして行った。
図2A~Cは、それぞれステンレス鋼A~Cの、EBSD測定で得られた結晶粒マップである。図2A~Cの各図において、結晶構造の違いが、面心立方晶である領域、体心立方晶である領域、結晶構造を決定できない領域に分けられてマッピングされている。
なお、本発明における面心立方晶の面積割合[%]及び体心立方晶の面積割合[%]は、結晶構造を決定できない結晶粒を除いた面積に対する割合であるため、結晶構造を決定できない領域を含めた全体に対する割合(図中に示されているIron bcc及びIron fccの値)ではなく、これらの値を用いて、以下の計算式で求める必要がある。
面心立方晶の面積割合[%]=Iron fcc/(Iron bcc+Iron fcc)×100
体心立方晶の面積割合[%]=Iron bcc/(Iron bcc+Iron fcc)×100
上記の計算によって求めた面心立方晶の面積割合[%]及び体心立方晶の面積割合[%]は、下記表Iに示すとおりである。
ステンレス鋼の面心立方晶の面積割合[%]及び体心立方晶の面積割合[%]は、それぞれステンレス鋼におけるオーステナイト相の含有割合[%]及びマルテンサイト相の含有割合[%]とみなすことができる。
ステンレス鋼A~Cはいずれも面心立方晶の面積割合が90%を超え、オーステナイト相が主相であることが分かる。また、ステンレス鋼A~Cのいずれにおいても、体心立方晶の面積割合は、面心立方晶の面積割合と比較してかなり小さいことから、マルテンサイト相は異相であるといえる。
EBSD測定で得られた度数平均結晶粒径[μm]及び面積比加重平均結晶粒径[μm]は、下記表Iに示すとおりである。
(1.2)レーザ加工によりノズルを形成したノズル板の作製
上記ステンレス鋼A~Cにそれぞれレーザ加工でノズルを形成することにより、ノズル板No.1~3を作製した。
レーザ加工は、ピコ秒レーザ加工で行った。具体的には、YLF(イットリウムリチウムフルオライド)レーザから放出される、波長1053nm、パルス幅25ps、出力:1W、繰り返し周波数:1kHzのレーザビームを、回折光学素子(DOE)により208本に分岐し、焦点距離100mmのf-sinθレンズによりステンレス鋼基材の流路側となる面に集光し、ピエゾ制御ミラーによりビームスキャンしながらアブレーション加工することによって行い、208個のノズルを形成した。
ステンレス鋼基材のアブレーション加工の進行に伴い、レンズの焦点位置が基材表面にあたるように、ステンレス鋼基材の高さを変えた。
ノズル形状は、ノズル板No.1~3のいずれも、2段階でノズル内壁のテーパー角が変化する漏斗型とし、流路側の開口径を90μm、1段階目のテーパー角を約45°、1段階目のテーパー部の深さを30μm、連通する2段階目のテーパー角を約9°、2段階目のテーパー部の深さを約20μm、ノズル先端の開口径を19.1μmとした。
ノズル先端の開口径である19.1μmを基に算出した度数平均結晶粒径/ノズル開口径[%]及び面積比加重平均結晶粒径/ノズル開口径[%]は、下記表Iのとおりである。
(1.3)レーザ加工によりノズルを形成したノズル板の評価
ノズル板No.1~3における異形の発生の様子を評価するために、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡(SEM)S4800を用いて、SEM観察を行った。
図3A~C及び図4A~Cは、ノズル板No.1~3のノズルを流路側から撮ったSEM画像である。図3A~Cは、それぞれノズル板No.1~3を倍率800倍で撮ったノズル全体のSEM画像である。また、図4A~Cは、それぞれノズル板No.1~3を倍率8000倍で撮ったノズル内壁のSEM画像である。
ノズル板No.1~3は、いずれも同様のノズル形状が得られており、概ねの加工性については同等であることが確認された。
しかし、ステンレス鋼Aからなるノズル板No.1には、ノズル内壁に異形である微小凹部(ニードルホール)が発生していた。図5はその微小凹部のSEM画像である。微小凹部の大きさは約1μmであり、異形発生頻度は16/208(208個のノズルを観察して異形の数が16個)であった。
一方で、ステンレス鋼Bからなるノズル板No.2、及びステンレス鋼Cからなるノズル板No.3では、異形発生頻度はともに0/208(208個のノズルを観察して異形の数が0個)であった。
Figure 2022105986000002
ステンレス鋼Aからなるノズル板No.1に発生した異形は、ステンレス鋼に異相として含まれる体心立方晶、すなわちマルテンサイト相の影響である。マルテンサイト相は、オーステナイト相よりも融点が低いため、レーザ加工においてはオーステナイト相よりもアブレーションされやすく、異形を引き起こす要因になる。
実施例1の結果から、ステンレス鋼Aのようにマルテンサイト相の含有割合が5.4%より大きくなると、マルテンサイト相が微小凹部(ニードルホール)のような異形として顕在化することが分かる。
一方、ステンレス鋼B及びステンレス鋼Cのように、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であれば、マルテンサイト相が異形として顕在化しないことが分かる。
ステンレス鋼B及びステンレス鋼Cと比較してステンレス鋼Aの方がマルテンサイト相の含有割合が大きい理由としては、テンションアニール処理の有無や、原材料に含まれていた不純物量の影響などが考えられる。
また、ステンレス鋼Bからなるノズル板No.2、及びステンレス鋼Cからなるノズル板No.3では、ステンレス鋼の度数平均結晶粒径が0.9μm以下であり、さらに面積比加重平均結晶粒径が2.1μm以下であるため、微小凹部がより発生しにくかったと考えられる。
(2)実施例2:ポンチ加工+研磨除去によりノズルを形成したノズル板
(2.1)ステンレス鋼
実施例1で用いたステンレス鋼A及びステンレス鋼Cを用いた。
(2.2)ポンチ加工+研磨除去によりノズルを形成したノズル板の作製
上記ステンレス鋼A、Cにそれぞれポンチ加工により凹部を形成し、次いで裏面の凸部を研磨除去することによりノズルを形成することにより、ノズル板No.4及びNo.5を作製した。
ノズル形状は、実施例1と同様の形状にした。
ポンチ加工は、ノズル形状に準じた形状を有するポンチツールを用いて行った。ステンレス鋼基材の流路側の面にポンチツールを押し込むことで、ステンレス鋼基材を塑性変形させ、ノズル形状を転写した凹部形状を形成した。また、ポンチツールの押し込みの際に、変形して突出するステンレス鋼基材を受け入れて把持するために、抜き型を形成したダイを用いた。
次いで、吐出面側の形成された凸部を研磨により削り取ることでノズルを形成した。具体的には、粗研磨と仕上げ研磨の2段階により凸部の研磨除去を行った。
粗研磨は、テープ研磨で行った。研磨フィルムには、厚さ75μmのポリエステルフィルムの片面に、砥粒が接着されたものを使用した。
仕上げ研磨は化学的機械的研磨(CMP)で行った。研磨剤の入った研磨液の供給、研磨パッドの押し当て、及びワークの相対的な移動、を並行して行うことで、化学作用と機械的研磨の複合作用により、粗研磨で残った凹凸を削って非常に平坦な表面を得た。
(2.3)ポンチ加工+研磨除去によりノズルを形成したノズル板の評価
ノズル板No.4及びNo.5を、実施例1と同様にSEM観察を行った。ノズル板No.4及びNo.5は、いずれも同様のノズル形状が得られており、概ねの加工性については同等であることが確認された。
しかし、ステンレス鋼Aからなるノズル板No.4には、ノズル内壁にスジ状凹凸部が発生しており、また、ノズル先端の縁にバリが発生していた。図6は、ノズル内壁のスジ状凹凸部やノズル先端のバリの様子が分かるノズルのSEM画像であり、ノズル板No.4が有するノズルの一つを切断し、その断面のノズル先端付近を撮ったものである。図中下側がノズル先端である。
一方で、ステンレス鋼Cからなるノズル板No.5には、スジ状凹凸部やバリは確認されなかった。図7は、スジ状凹凸部やバリのない良品であるノズルのSEM画像であり、ノズル板No.5が有するノズルの一つを切断し、その断面のノズル先端付近を撮ったものである。図中下側がノズル先端である。
ステンレス鋼Aからなるノズル板No.4に発生した異形は、ステンレス鋼に異相として含まれる体心立方晶、すなわちマルテンサイト相の影響である。ポンチ加工でステンレス鋼が塑性変形する際に、周辺のオーステナイト相とマルテンサイト相の塑性変形応答がズレることで、ノズル内壁に流路側からノズル先端側に向かってスジ状凹凸部が発生する。
実施例2から、ステンレス鋼Aのようにマルテンサイト相の含有割合が5.4%より大きくなると、スジ状凹凸部が発生しやすいことが分かる。
さらに、ステンレス鋼Aからなるノズル板No.4では、スジ状凹凸部がノズル内壁に形成されていたことで、次いで実施した裏面の凸部の研磨除去の際に、ノズル先端の縁にバリが形成された。
一方、ステンレス鋼Cのように、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であれば、スジ状凹凸部が発生しないことが分かる。
また、ステンレス鋼Cからなるノズル板No.5では、ステンレス鋼の度数平均結晶粒径が0.9μm以下であり、さらに面積比加重平均結晶粒径が2.1μm以下であるため、スジ状凹凸部がより発生しにくかったと考えられる。
本発明は、ノズル内壁やノズル先端における異形が少ないステンレス鋼製のインクジェットヘッド用ノズル板、その製造方法、当該インクジェットヘッド用ノズル板を用いたインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に利用することができる。

Claims (10)

  1. 少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、
    前記ステンレス鋼が、マルテンサイト相の含有割合が5.4%以下であるオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板。
  2. 少なくともステンレス鋼からなるインクジェットヘッド用ノズル板であって、
    前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される面心立方晶の面積割合が92.0%以上であり、かつ、体心立方晶の面積割合が5.4%以下であるステンレス鋼であることを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板。
  3. 前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される度数平均結晶粒径が0.9μm以下であるステンレス鋼であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
  4. 前記ステンレス鋼が、電子線後方散乱解析法によって測定される面積比加重平均結晶粒径が2.3μm以下であるステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
  5. 前記ステンレス鋼が、ノズル先端の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される度数平均結晶粒径の比率が4.7%以下であるステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
  6. 前記ステンレス鋼が、ノズル先端の開口径に対する電子線後方散乱解析法によって測定される面積比加重平均結晶粒径の比率が12.0%以下であるステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板を製造するインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法であって、
    レーザ加工によりノズルを形成する工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法。
  8. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板を製造するインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法であって、
    ポンチ加工により凹部を形成し、次いで裏面の凸部を研磨除去することによりノズルを形成する工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド用ノズル板の製造方法。
  9. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド用ノズル板を用いたことを特徴とするインクジェットヘッド。
  10. 請求項9に記載のインクジェットヘッドを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。


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