JP2022098473A - 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法 - Google Patents

有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022098473A
JP2022098473A JP2021204329A JP2021204329A JP2022098473A JP 2022098473 A JP2022098473 A JP 2022098473A JP 2021204329 A JP2021204329 A JP 2021204329A JP 2021204329 A JP2021204329 A JP 2021204329A JP 2022098473 A JP2022098473 A JP 2022098473A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light emitting
layer
level
organic
emitting layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021204329A
Other languages
English (en)
Inventor
康宏 関本
Yasuhiro Sekimoto
真一郎 石野
Shinichiro Ishino
利幸 秋山
Toshiyuki Akiyama
智彦 尾田
Tomohiko Oda
宗治 佐藤
Muneharu Sato
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Joled Inc
Original Assignee
Joled Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Joled Inc filed Critical Joled Inc
Priority to US17/557,072 priority Critical patent/US20220199930A1/en
Publication of JP2022098473A publication Critical patent/JP2022098473A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Electroluminescent Light Sources (AREA)
  • Devices For Indicating Variable Information By Combining Individual Elements (AREA)

Abstract

Figure 2022098473000001
【課題】発光層をホスト材料と蛍光材料を用いて形成した有機EL素子において、発光効率を向上し長寿命化を図る。
【解決手段】陽極と、発光層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子において、前記発光層は、蛍光発光材料と、ホスト材料とを含み、前記蛍光発光材料の最低空軌道(LUMO)準位と前記蛍光発光材料の最高被占有軌道(HOMO)準位との差は、前記ホスト材料のLUMO準位とHOMO準位の差以下であり、前記蛍光発光材料のLUMO準位は前記ホスト材料のLUMO準位以上であり、前記蛍光発光材料のHOMO準位は前記ホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差は0.3eV以下である。
【選択図】図2

Description

本開示は、蛍光材料を発光材料として用いる有機EL素子における発光効率と寿命の改善に関する。
近年、表示装置に有機EL素子を利用したものが普及しつつある。
有機EL素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも発光層が挟まれた構造を有している。発光層では、電子と正孔(ホール)との再結合により発生した励起子のエネルギーが光に変換される。有機半導体においては、励起子(励起状態)には電子のスピン状態により、一重項励起子と三重項励起子の2種類が存在し、いわゆる蛍光材料においては、一重項励起子のエネルギーが光に変換される。
従来、有機EL素子の発光効率を向上させるため、電子とホールのバランスを調整する(例えば、特許文献1参照)、三重項励起子により発光する燐光材料を用いる(例えば、特許文献2参照)などの工夫がなされている。
特開2008-187205号公報 特開2010-171368号公報
特にディスプレイ等の用途における青色発光素子において、発光スペクトルが狭く色純度に優れた蛍光材料による発光が適しており、蛍光材料を用いた有機EL素子における効率向上が求められている。そこで、蛍光材料において三重項励起子を発光に利用すべく、三重項励起子から一重項励起子が生成されるTTF(Triplet-Triplet Fusion)現象の利用が検討されている。しかしながら、蛍光材料を発光材料とした従来の有機EL素子は、蛍光材料における励起子の生成に適した構成を有しており、三重項励起子の密度が十分に向上せず、TTF現象を用いた量子効率の向上に適していない。
本開示は、発光層をホスト材料と蛍光材料を用いて形成した有機EL素子において、TTF現象を促進することにより素子量子効率を向上することで、発光効率を向上し長寿命化を図ることを目的とする。
本開示の少なくとも1つの態様に係る有機EL素子は、陽極と、発光層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、前記発光層は、蛍光発光材料と、ホスト材料とを含み、前記蛍光発光材料の最低空軌道(LUMO)準位と前記蛍光発光材料の最高被占有軌道(HOMO)準位との差は、前記ホスト材料のLUMO準位とHOMO準位の差以下であり、前記蛍光発光材料のLUMO準位は前記ホスト材料のLUMO準位以上であり、前記蛍光発光材料のHOMO準位は前記ホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差は0.3eV以下である。
なお、本明細書において、LUMO準位ないしHOMO準位が高いとは、当該準位と電子の真空準位との差が小さいこと、すなわち、当該準位に存在する電子のポテンシャルエネルギーが大きいことを指す。
また、LUMO準位ないしHOMO準位が所定の基準準位以上(又は以下)であるとは、当該LUMO準位ないしHOMO準位と電子の真空準位との差が、所定の基準準位と電子の真空準位との差と同一であるか、又は、所定の基準準位と電子の真空準位との差よりも小さい(又は大きい)ことを指す。すなわち、当該LUMO準位ないしHOMO準位に存在する電子のポテンシャルエネルギーが、所定の基準準位に存在する電子のポテンシャルエネルギーと同一であるか、又は所定の基準準位に存在する電子のポテンシャルエネルギーよりも大きい(又は小さい)ことを指す。
また本明細書の実施例等において、薄膜のイオン化ポテンシャルを光電子分光装置(理研計器(株)製、AC-3)を用いて測定し、材料のHOMO準位の値とした。薄膜の光学吸収端を分光光度計((株)島津製作所製、SolidSpec-3700)を用いて測定し、材料の一重項励起準位、およびエネルギーギャップとした。材料のLUMO準位については、原理的には低エネルギー光電子分光法等による測定・定量化が検討されているが、本明細書では便宜上、前記手法で測定された一重項励起準位の値をHOMO準位の値から減算することによりLUMO準位値とした。
本開示の少なくとも1つの態様に係る有機EL素子は、発光層において密度の高いホスト材料において電子とホールの再結合が行われる。したがって、ホスト材料において三重項励起子の密度の向上が容易であり、TTF現象を用いた発光効率の向上を図ることができるため、発光層の発光効率を向上させることができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
実施の形態に係る有機EL素子1の構成を模式的に示す断面図である。 実施例に係る、正孔輸送層、発光層、電子注入制御層、電子輸送層のバンドダイアグラムを示す簡略模式図である。 実施例と比較例に係る、正孔輸送層、発光層、電子注入制御層、電子輸送層のバンドダイアグラムと電子と正孔の再結合位置との関係を示す簡略模式図である。 (a)は、ホスト材料および蛍光材料の励起子のエネルギーとその状態遷移を示す模式図である。(b)は、励起子の状態遷移と最高効率を示す状態遷移図である。 (a)は、実施例と比較例に係る、ΔHOMOの値と発光効率との関係を示す表である。(b)は、実施例と比較例に係る、ホスト材料と蛍光材料のそれぞれのHOMO準位、LUMO準位の詳細な値を示す表である。 (a)は、パルス発光における発光強度の時間的推移を示す模式グラフであり、(b)は、発光強度の時間的推移に基づくRTTF推定の概略を示す模式グラフである。 (a)は、ΔHOMOの値とRTTFとの関係を示すグラフであり、(b)は、ΔHOMOの値と量子効率との関係を示すグラフである。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基板上にTFT層が形成された状態、(b)は、基板上に層間絶縁層が形成された状態、(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料が形成された状態、(d)は、画素電極が形成された状態、(e)は、層間絶縁層および画素電極上に隔壁材料層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、隔壁が形成された状態、(b)は、画素電極上に正孔注入層が形成された状態、(c)は、正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、正孔輸送層上に発光層が形成された状態、(b)は、発光層および隔壁層上に電子注入制御層が形成された状態、(c)は、電子注入制御層上に電子輸送層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、電子輸送層上に電子注入層が形成された状態、(b)は、電子注入層上に対向電極が形成された状態、(c)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程を示すフローチャートである。 実施の形態に係る有機EL素子を備えた有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
≪本開示の一態様に至った経緯≫
有機EL素子を発光素子として使用するためには、発光の始状態となる励起子の生成が不可欠である。したがって、従来、正孔輸送層から発光層への正孔注入性と電子輸送層から発光層への電子注入性を高め、発光層内のキャリア密度を向上させて電子とホールの再結合確率を高めている。また、発光層内のキャリア密度をさらに向上させる構成として、発光層から電子輸送層への正孔漏出と発光層から正孔輸送層への電子漏出を抑制することができるように、電子輸送層のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位、および/または、正孔輸送層のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位を調整した機能層を選定する。このような構成により、発光層内のキャリア密度を向上させて電子と正孔の再結合確率を高めることができるからである。
有機材料中の励起子には、電子のスピン状態によって、一重項励起子と三重項励起子の2つが存在する。蛍光材料では、上述したように、一重項励起子が発光に寄与し、三重項励起子は発光に寄与しない。一方で、一重項励起子と三重項励起子の生成確率はおよそ1:3であり、一重項励起子の密度の向上が課題となっている。
発光効率の低い蛍光材料、特に、発光波長の短い青色発光材料等において、一重項励起子の密度の向上として、複数の三重項励起子を衝突させて一重項励起子を生成するTTF現象を利用することが検討されている。このTTFを利用するためには、三重項励起子の密度を向上させる必要がある。
従来、蛍光材料をホスト材料内に分散させた発光層を用いる場合、蛍光材料のHOMO準位をホスト材料のHOMO準位より高くする、および/または、蛍光材料のLUMO準位をホスト材料のLUMO準位より低くする構成が一般的である。このような構成を用いることにより、発光層内に注入されたホールおよび/または電子が蛍光材料によってトラップされるため、蛍光材料における再結合が促され、発光に直接寄与する蛍光材料の一重項励起子が生成されるためである。
しかしながら、発明者らは、上述の構成がTTFを利用した発光効率の向上を図る上で最適ではないことを見出した。蛍光材料における再結合が促されると蛍光材料の三重項励起子も生成されるが、蛍光材料は発光層内における空間密度が低いため、TTFによる蛍光材料の一重項励起子の生成効率が低い。また、蛍光材料がキャリア(ホールまたは電子)をトラップする構成では、ホスト材料におけるキャリアの局在化による励起子の局在化が困難であり、ホスト材料の三重項励起子の密度を十分に高めることができない。
そこで、発明者らは、三重項励起子の密度を十分に高めてTTFを最大限に利用するための構成について検討し、本開示の態様に至った。
≪開示の態様≫
本開示の一態様に係る有機EL素子は、陽極と、発光層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、前記発光層は、蛍光発光材料と、ホスト材料とを含み、前記蛍光発光材料の最低空軌道(LUMO)準位と前記蛍光発光材料の最高被占有軌道(HOMO)準位との差の絶対値は、前記ホスト材料のLUMO準位とHOMO準位の差の絶対値以下であり、前記蛍光発光材料のLUMO準位は前記ホスト材料のLUMO準位以上であり、前記蛍光発光材料のHOMO準位は前記ホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差は0.3eV以下であることを特徴とする。
本開示の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、基板上に第1電極を形成し、前記第1電極の上方に発光層を形成し、前記発光層の上方に第2電極を生成する有機EL素子の製造方法であって、前記発光層の形成において、蛍光発光材料とホスト材料とを前記発光層の材料として用い、前記蛍光発光材料の最低空軌道(LUMO)準位と前記蛍光発光材料の最高被占有軌道(HOMO)準位との差の絶対値は、前記ホスト材料のLUMO準位とHOMO準位の差の絶対値以下であり、前記蛍光発光材料のLUMO準位は前記ホスト材料のLUMO準位以上であり、前記蛍光発光材料のHOMO準位は前記ホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差は0.3eV以下であることを特徴とする。
本開示の一態様に係る有機EL素子または有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子は、発光層において密度の高いホスト材料において電子とホールの再結合が行われる。したがって、ホスト材料において三重項励起子の密度の向上が容易であり、TTF現象を用いた発光効率の向上を図ることができるため、発光層の発光効率を向上させることができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記発光層における発光中心と前記発光層の陰極側の面との距離は、前記発光中心と前記発光層の陽極側の面との距離より小さい、としてもよい。
これにより、発光層において発光層の陰極側の面に近い領域において再結合が行われる有機EL素子において、蛍光発光材料によるホールトラップを低減させてホスト材料の三重項励起子の密度を高めることができるため、TTF現象を用いた量子効率の向上をより強く享受することができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記発光層のホール移動度は、前記発光層の電子移動度より大きい、としてもよい。
これにより、ホールの移動度が高く発光層への電子注入が再結合の律速過程となる有機EL素子において、発光層内にホール密度が局所的に高い領域を形成して三重項励起子の密度を向上できるため、TTF現象を用いた量子効率の向上をより強く享受することができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記ホスト材料の一重項励起子のエネルギーは、前記蛍光発光材料の一重項励起子のエネルギー以上である、としてもよい。
これにより、ホスト材料の一重項励起子のエネルギーによって蛍光発光材料が励起され、発光に寄与する蛍光発光材料の一重項励起子が生成されやすくなるため、ホスト材料において再結合やTTFによって生じた一重項励起子が効率よく発光に寄与する。
また、前記発光層と前記陰極との間に、電子注入制御層と中間層とをさらに備え、前記電子注入制御層は、前記発光層と前記中間層とのいずれにも接し、前記中間層は、電子注入性と電子輸送性のうち少なくとも1つを備え、前記電子注入制御層に含まれる機能材料のLUMO準位は前記中間層に含まれる機能材料のLUMO準位より0.1eV以上高く、かつ、前記ホスト材料のLUMO準位以上である、としてもよい。
これにより、発光層において蛍光材料によるホールトラップを減少させるとともに発光層への電子注入性が制御されるため、発光層におけるキャリアバランスを適正に制御することができ、有機EL素子の量子効率をさらに向上させることができる。
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、本開示の一態様に係る有機EL素子を基板上に複数備える、としてもよい。
≪実施の形態≫
以下、実施の形態に係る有機EL素子について説明する。なお、以下の説明は、本発明の一態様に係る構成および作用・効果を説明するための例示であって、本発明の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。
[1.有機EL素子の構成]
図1は、本実施の形態に係る有機EL素子1の断面構造を模式的に示す図である。有機EL素子1は、画素電極13(陽極)、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20、および、対向電極21(陰極)を備える。
有機EL素子1において、画素電極13と対向電極21とは主面同士が向き合うように互いに対向して配されており、画素電極13と対向電極21との間に発光層17が形成されている。
発光層17の陽極(画素電極13)側には、発光層17に接して正孔輸送層16が形成されている。正孔輸送層16と陽極(画素電極13)との間には正孔注入層15が形成されている。
発光層17の陰極(対向電極21)側には、発光層17に接して電子注入制御層18が形成されており、電子注入制御層18に接して電子輸送層19が形成されている。電子輸送層19と陰極(対向電極21)との間に電子注入層20が形成されている。
[1.1 有機EL素子の各構成要素]
<画素電極>
画素電極13は、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素ごとに設けられ、層間絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施形態においては、画素電極13は、光反射性の陽極として機能する。
画素電極13の材料は、例えば、光反射性を具備する金属材料である。金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。なお、画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
なお、対向電極21を光反射性の陰極とする場合には、画素電極13を光透過性の陽極としてもよい。この場合、画素電極13は、金属材料で形成された金属層および金属酸化物で形成された金属酸化物層の少なくとも一方を含んでいる。画素電極13の金属材料としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金(MgAg)、インジウム-銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金(MgAl)、リチウム-アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。金属層の膜厚は、1nm~50nm程度に薄く設定されて光透過性を有している。なお、画素電極13に含まれる金属層は、例えばAg層あるいはMgAg合金層の単層で構成してもよいし、Mg層とAg層の積層構造(Mg/Ag)、あるいは、MgAg合金層とAg層の積層構造(MgAg/Ag)にしてもよい。画素電極13の金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、ITO、IZOが挙げられる。また、画素電極13は、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。
<正孔注入層>
正孔注入層15は、陽極(画素電極13)から発光層17へのホール(正孔)の注入を促進させる機能を有する。正孔注入層15は、例えば、塗布膜であり、例えば、正孔注入材料と溶質とする溶液の塗布および乾燥より形成されている。正孔注入層15は蒸着膜で形成されていてもよい。正孔注入層15は、例えば、PEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの導電性ポリマー材料、あるいは、Ag、Mo、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物からなる。
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入されたホールを発光層17へ輸送する機能を有する。正孔輸送層16は、例えば、塗布膜であり、具体的には、正孔輸送材料を溶質とする溶液の塗布および乾燥より形成されている。または、正孔輸送層16は蒸着膜で形成されていてもよい。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
<発光層>
発光層17は、ホールと電子の再結合により光を出射する機能を有する。発光層17は、例えば、塗布膜であり、例えば、発光層を形成する材料と溶質とする溶液の塗布および乾燥より形成されている。または、発光層17は蒸着膜で形成されていてもよい。
発光層17は、キャリア移動度が高いホスト材料に、蛍光材料がドープされてなる。ここで、キャリア移動度が高いとは、電子移動度が高い、および/または、ホール移動度が高いことを指す。本開示の一態様に係るホスト材料は、ホール移動度が電子移動度より高い。ホスト材料としては、例えば、アミン化合物、縮合多環芳香族化合物、ヘテロ環化合物を用いることができる。アミン化合物としては、例えば、モノアミン誘導体、ジアミン誘導体、トリアミン誘導体、テトラアミン誘導体を用いることができる。縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体、ナフタセン誘導体、フェナントレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、トリフェニレン誘導体、ペンタセン誘導体、ペリレン誘導体を用いることができる。ヘテロ環化合物としては、例えば、カルバゾール誘導体、フラン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロール誘導体、インドール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フタロシアニン誘導体を用いることができる。
発光層17にドープされる蛍光材料としては、公知の蛍光物質である有機材料を利用することができる。例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物等を用いることができる。なお、実施の一態様において、蛍光材料の濃度は1wt%以上である。また、実施の一態様では、蛍光材料の濃度は10wt%以下である。また、実施の一態様では、蛍光材料の濃度は30wt%以下である。
また、蛍光材料は、いわゆる青色発光材料であって、LUMO準位とHOMO準位のエネルギーレベル差(いわゆるバンドギャップ、一重項励起子のエネルギー)は2.6eV以上である。
一般に、生成した励起子は、その励起子よりも高いエネルギーを持つエネルギー状態には遷移しづらい特性がある。そのため、ホスト分子上で再結合した励起子が、蛍光発光材料の励起準位に効率的に遷移するためには、蛍光発光材料の一重項励起準位は、ホスト材料の一重項励起準位よりも小さいことが好ましい。また、同時に、ホスト材料上での高効率なキャリア再結合を促進する構成とするために、蛍光発光材料が発光層に流入した電子をトラップしないことが好ましい。これより、発光層17においては、蛍光発光材料のLUMO準位と蛍光発光材料のHOMO準位との差の絶対値は、ホスト材料のLUMO準位とHOMO準位の差の絶対値以下であり、蛍光発光材料のLUMO準位はホスト材料のLUMO準位以上となるように、蛍光材料とホスト材料が選択される。
なお、蛍光材料のHOMO準位が、ホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差が0.3eV以下となるように、蛍光材料とホスト材料が選択される。本構成により、後述するように、TTFを最大限活用することができ、発光効率を向上することができる。また、ホスト材料の一重項励起子のエネルギーは、蛍光材料の一重項励起子のエネルギー以上であることが好ましい。本構成により、ホスト材料の一重項励起子のエネルギーが蛍光材料に移動して一重項励起子が生成されるため、ホスト材料において一重項励起子の生成効率を高めることで発光効率を向上させることができる。
<電子注入制御層>
電子注入制御層18は、発光層への電子注入を担う層であり、1層あるいは複数の層を用いて構成される。本開示では、一例として以下の層構成としている。電子注入制御層18は、発光層17から電子注入制御層18へのホールの流出を制限するとともに、電子輸送層19から発光層17への電子の注入を制御する機能を有する。これにより電子輸送層19から注入された電子は電子注入制御層18と電子輸送層19の界面近傍に蓄積されるため、発光層17の界面近傍での電子蓄積による発光材料劣化が抑制され、素子の長寿命化に寄与する。発光層17からのホールの流出を制限するとともに、発光層17への電子の注入を制御する機能は、後述のエネルギーバンド構造の設計により実現される。電子注入制御層による電子制御を安定的に実現するためには、キャリアのトンネル効果を抑制できる電子注入制御層膜厚設計が好ましく、実施の一態様において、電子注入制御層18の膜厚は、5nm以上である。また、実施の一態様において、電子注入制御層18の膜厚は、10nm以上である。また、素子駆動電圧低減の観点から、電子注入制御層の膜厚は薄いことが好ましく、実施の一態様において、電子注入制御層18の膜厚は、50nm以下である。また、実施の一態様において、電子注入制御層18の膜厚は、30nm以下である。また、電子ブロック性の観点から電子注入制御層18は電子輸送層19よりも高いLUMO準位をもち、電子注入制御層18と電子輸送層19とのLUMO準位の差は0.1eV以上である。一方で大きなLUMO障壁は駆動電圧の上昇や過剰な電子注入抑制の原因となるため、電子注入制御層18と電子輸送層19とのLUMO準位の差は0.5eV以下である。
また、電子注入制御層18の材料は、一重項励起子のエネルギーが、発光層17のホスト材料の一重項励起子のエネルギーより大きいことが好ましい。本構成により、電子注入制御層18の材料に一重項励起子が生成した場合に発光層17のホスト材料、または蛍光材料へのエネルギー移動により蛍光材料の一重項励起子が生成しやすくなり、一方で、発光層17のホスト材料の一重項励起子や蛍光材料の一重項励起子が生成した場合に電子注入制御層18の材料にエネルギー移動することを抑止することができる。同様に、電子注入制御層18の材料における三重項励起子のエネルギーは、発光層17の材料における三重項励起子のエネルギーより大きいことが好ましい。電子注入制御層18は、例えば、蒸着膜から構成されている。
電子注入制御層18の材料としては、例えば、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キナゾリン誘導体、フェナントロリン誘導体などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
<電子輸送層>
電子輸送層19は、陰極(対向電極21)からの電子を、電子注入制御層18を経て発光層17へ輸送する機能を有する。電子輸送層19は、電子輸送性が高い有機材料からなる。電子輸送層19は、例えば、蒸着膜で構成されている。電子輸送層19に用いられる有機材料としては、例えば、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キナゾリン誘導体、フェナントロリン誘導体などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
<電子注入層>
電子注入層20は、陰極(対向電極21)から供給される電子を発光層17側へと注入する機能を有する。電子注入層20は、例えば、蒸着膜で構成されている。電子注入層20は、例えば、電子輸送性が高い有機材料に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または、ランタノイド等から選択されるドープ金属がドープされて形成されている。なお、ドープ金属は、金属単体に限られず、フッ化物(例えば、NaF)やキノリニウム錯体(例えば、Alq3、Liq)など化合物としてドープされてもよい。実施の形態では、LiがLiqとしてドープされている。ドープ金属としては、例えば、アルカリ金属に該当するリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、アルカリ土類金属に該当するカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、イットリウム(Y)、ランタノイドに該当するサマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等である。
電子注入層20に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
<対向電極>
対向電極21は、電子注入層20上に形成されている。
本実施形態においては、対向電極21は、光半透過性の陰極として機能する。
対向電極21の材料としては、金属材料で形成された金属層および金属酸化物で形成された金属酸化物層の少なくとも一方を含む。金属層を形成する金属材料としては、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金、インジウム-銀合金が挙げられる。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム合金が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。対向電極21に含まれる金属層は、例えばAg層あるいはMgAg合金層の単層で構成してもよいし、Mg層とAg層の積層構造、あるいは、MgAg合金層とAg層の積層構造にしてもよい。対向電極21に含まれる金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、ITO、IZOが挙げられる。また、対向電極21は、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。
なお、画素電極13を光透過性の陽極とする場合には、対向電極21を光反射性の電極としてもよい。このとき、対向電極21は、光反射性の金属材料からなる金属層を含む。光反射性を具備する金属材料の具体例としては、銀、アルミニウム、アルミニウム合金、モリブデン、APC、ARA、MoCr、MoW、NiCrなどが挙げられる。
<その他>
有機EL素子1は基板11上に形成される。基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT層112からなる。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。TFT層112を構成する材料としては、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属材料、窒化ガリウム、ガリウム砒素などの無機半導体材料、アントラセン、ルブレン、ポリパラフェニレンビニレンなどの有機半導体材料等が挙げられる。
また、図示していないが、基板11上には層間絶縁層12が形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、層間絶縁層12には、画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
有機EL表示パネル100がボトムエミッション型である場合には、基材111、層間絶縁層12は光透過性の材料で形成されることが必要となる。さらに、TFT層112が存在する場合には、TFT層112において画素電極13の下方に存在する領域の少なくとも一部分は、光透過性を有する必要がある。
また、有機EL素子1上には、封止層22が形成されている。封止層22は、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
有機EL表示パネル100がトップエミッション型である場合には、封止層22は光透過性の材料で形成されることが必要となる。なお図1には示されないが、封止層22の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20を水分および空気などから保護できる。
[2.エネルギーバンド構造]
有機EL素子1は、発光層17内のエネルギーバンド構造に特徴を有する。発光層17については、蛍光材料とホスト材料とのそれぞれについてエネルギー準位を示す、それ以外の層については、説明の簡略化のために、単一の有機材料からなる場合については当該有機材料のエネルギー準位を、複数の有機材料からなる場合については電子および/またはホールの輸送を担っている代表的な有機材料のエネルギー準位を「層のエネルギー準位」として表記する。
図2は、有機EL素子1のエネルギーバンド構造を示すバンドダイアグラムである。図2では、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、および、電子輸送層19のLUMOのエネルギー準位(以下、「LUMO準位」と表記する)とHOMOのエネルギー準位(以下、「HOMO準位」と表記する)とを示し、他の層は記載を省略している。なお、図2では電子の真空準位を図示していないが、LUMO準位、HOMO準位のそれぞれは、バンドダイアグラムの下側であるほど、電子の真空準位からの差が大きく、エネルギーレベルが低い。
[2.1 発光層]
発光層17はホスト材料に蛍光材料がドープされてなる。発光層17において、ホスト材料がキャリア(電子および/またはホール)の輸送を担っている。したがって、ホスト材料のHOMO準位172bより蛍光材料のHOMO準位172dのエネルギーレベルが大きい場合、蛍光材料はホールのトラップ性を有する。蛍光材料のHOMO準位172dとホスト材料のHOMO準位172bの差ΔHOMOは、下記の式(1)を満たすことが好ましい。
ΔHOMO≦0.3eV …式(1)
また、発光層17において、ホスト材料の一重項励起子のエネルギーが蛍光材料に移動することで、蛍光材料の一重項励起子が生成されることが好ましい。したがって、ホスト材料の一重項励起子のエネルギーS1(emlb)と蛍光材料の一重項励起子のエネルギーS1(emld)は、下記の式(2)を満たすことが好ましい。
S1(emlb)≧S1(emld) …式(2)
また、発光層17は電子移動度よりホール移動度が高い。発光層17の電子移動度をμe(eml)とし、ホール移動度をμh(eml)としたとき、下記の式(3)を満たすことが好ましい。
μh(eml)>μe(eml) …式(3)
[2.2 電子注入障壁]
陰極(対向電極21)側から発光層17へ電子を注入するためのエネルギー障壁が、陰極(対向電極21)から発光層17までの各層の界面に存在する。このエネルギー障壁は、界面の陽極(画素電極13)側の層と陰極(対向電極21)側の層とのLUMO準位の差に起因する。以下、隣り合う2つの層の界面において陰極(対向電極21)側から陽極(画素電極13)側へ電子を注入するためのエネルギー障壁を「電子注入障壁」という。
電子輸送層19から電子注入制御層18への電子注入障壁Eg(eicl)は、電子注入制御層18の有機材料のLUMO準位181と電子輸送層19の有機材料のLUMO準位191との差によって規定される。Eg(eicl)は下記の式(4)を満たすことが好ましい。また、Eg(eicl)は下記の式(5)を満たすことがより好ましい。本実施の形態では、電子注入障壁Eg(eicl)は0.1eVである。
Eg(eicl)≧0.1eV …式(4)
Eg(eicl)≧0.2eV …式(5)
電子注入制御層18から発光層17への電子注入障壁Eg(eml)は、発光層17のホスト材料のLUMO準位171bと電子注入制御層18の有機材料のLUMO準位181との差によって規定される。発光層17のホスト材料のLUMO準位171bは、電子注入制御層18の有機材料のLUMO準位181以下であり、LUMO準位171bはLUMO準位181と比較してエネルギーレベルが同一又は低く、Eg(eml)は下記の式(6)を満たすことが好ましい。また、Eg(eml)は下記の式(7)を満たすことがより好ましい。本実施の形態では、電子注入障壁Eg(eml)は-0.1eVである。
Eg(eml)≦0 …式(6)
Eg(eml)≦-0.1eV …式(7)
[2.3 ホール注入障壁]
一方、陽極(画素電極13)側から発光層17を経て陰極(対向電極21)側へホールを注入するためのエネルギー障壁が、陽極(画素電極13)から電子注入制御層18までの各層の界面に存在する。このエネルギー障壁は、界面の陰極(対向電極21)側の層と陽極(画素電極13)側の層とのHOMO準位の差に起因する。以下、隣り合う2つの層の界面において陽極(画素電極13)側から陰極(対向電極21)側へホールを注入するためのエネルギー障壁を「ホール注入障壁」という。
正孔輸送層16
から発光層17へのホール注入障壁Hg(eml)は、発光層17のホスト材料のHOMO準位172bと正孔輸送層16の有機材料のHOMO準位162との差によって規定される。本実施の形態では、ホール注入障壁Hg(eml)が0.1eVである。
発光層17から電子注入制御層18へのホール注入障壁Hg(eicl)は、電子注入制御層の有機材料のHOMO準位182と発光層のホスト材料のHOMO準位172bとの差によって規定される。Hg(eicl)は下記の式(8)を満たすことが好ましい。また、Hg(eicl)は下記の式(9)を満たすことがより好ましい。本実施の形態では、ホール注入障壁Hg(eicl)は0.3eVである。
Hg(eicl)>0 …式(8)
Hg(eicl)≧0.3eV …式(9)
[3.構成がもたらす効果]
[3.1 設計から予測される効果]
図3(a)~(b)、および、(c)は、それぞれ、実施例および比較例に係る、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19のバンドダイアグラム及び電子と正孔の再結合を示した簡易模式図である。
実施の形態に係る有機EL素子では、図3(a)の模式図に示すように、ホールは正孔輸送層16から発光層17のホスト材料に注入される。発光層17の蛍光材料のHOMO準位172bとホスト材料のHOMO準位172dとの差ΔHOMOは0.3eV以下と小さいため、発光層17に注入されたホールは蛍光材料によってトラップされず、発光層17の電子注入制御層18との界面付近まで移動する。そして、発光層17から電子注入制御層18へのホール注入障壁Hg(eicl)により図3(b)の模式図に示すように、発光層17の電子注入制御層18との界面付近にホールが蓄積する。一方で、電子輸送層19から電子注入制御層18への電子注入障壁Eg(eicl)により、電子輸送層19から電子注入制御層18への電子注入が発光層17への電子注入の律速過程となる。したがって、発光層17における電子とホールの再結合領域は発光層17の電子注入制御層18との界面近傍の狭い領域に制限されるため、励起子密度の向上が容易となりTTF現象を利用しやすくなる。
これに対し、図3(c)は、発光層17の蛍光材料のHOMO準位172bとホスト材料のHOMO準位172dとの差ΔHOMOが0.3eVより大きい場合の模式図である。この場合も、電子輸送層19から電子注入制御層18への電子注入が発光層17への電子注入の律速過程となる。しかしながら、発光層17の蛍光材料のHOMO準位172bとホスト材料のHOMO準位172dとの差ΔHOMOが0.3eVより大きいため、正孔輸送層16から発光層17へ注入されたホールは蛍光材料によりトラップされる。したがって、ホールをトラップした蛍光材料において再結合が生じるため、発光層における励起子密度が実施例ほど向上せず、TTF現象が生じづらい。
[3.2 発光に関与するエネルギー移動]
以下、発光層17がホスト材料と蛍光材料とを含み、ホスト材料の一重項励起子のエネルギーが蛍光材料の一重項励起子のエネルギー以上である場合の、再結合から発光に至るまでのエネルギー移動について説明する。
図4(a)は、ホスト材料および蛍光材料の電子のエネルギー状態とその遷移を示す模式バンドダイアグラムである。なお、図4(a)においては、ホスト材料の基底準位、蛍光状態の基底準位をいずれもS0準位とし、他の準位のエネルギーはS0準位を基準とした相対値で示している。
ホスト材料において電子とホールが再結合した場合、ホスト材料において電子がホスト材料の励起準位に移動する。このとき、一部の電子は励起過程351によって一重項励起準位S1_host301に遷移する。そして、ホスト材料の一重項励起子は、その一部または全部が基底状態の蛍光材料へのエネルギー移動381により、蛍光材料における一重項励起子を発生させる。このエネルギー移動は、ホスト材料の電子が基底状態に戻るエネルギーを用いて蛍光材料の電子が基底準位S0から一重項励起準位S1_dopant311に励起されることにより起きる。そして、蛍光材料の一重項励起子の一部または全部が光子に変換されることで、発光過程371によって光が放出される。
一方、ホスト材料において電子とホールが再結合した場合、一部の電子は励起過程352によって三重項励起準位T1_host302に遷移する。一般に三重項状態から一重項状
態への遷移は電子スピンの観点から禁制であり、一重項励起子へのエネルギー移動は極めて起きにくい。しかしながら、三重項励起子の密度が十分に高い場合、複数の三重項励起子の衝突によって一重項励起子が生じるTTF353により、ホスト材料の一重項励起子が生成される。生成されたホスト材料の一重項励起子は、その一部または全部が基底状態の蛍光材料へのエネルギー移動382により、蛍光材料における一重項励起子を発生させる。そして、蛍光材料の一重項励起子の一部または全部が光子に変換されることで、発光過程372によって光が放出される。
また、蛍光材料において電子とホールが再結合した場合、蛍光材料において電子が蛍光材料の励起準位に移動する。このとき、一部の電子は励起過程371によって一重項励起準位S1_dopant311に遷移する。そして、蛍光材料の一重項励起子の一部または全部が光子に変換されることで、発光過程371によって光が放出される。一方、一部の電子は励起過程362によって三重項励起準位T1_dopant312に遷移する。蛍光材料は物理的に密度が小さいため、TTFがほとんど発生せず、非発光過程373によって熱などにエネルギーが変換される。
[3.3 発光効率]
以上説明したような再結合から発光までの過程を考慮した上で、発光効率について検討する。
図4(b)は、発光層17がホスト材料と蛍光材料とを含み、ホスト材料の一重項励起子のエネルギーが蛍光材料の一重項励起子のエネルギー以上である場合の、再結合から発光までの状態遷移と最大確率を示す模式図である。
電子とホールが結合した際に生成される励起子において、一重項励起子と三重項励起子の比率は約1:3である。したがって、再結合の回数に対し、25%の個数の一重項励起子が生成し、75%の三重項励起子が生成する。したがって、ホスト材料の一重項励起子の発光量子効率(PLQE;Photoluminescence Quantum Efficiency)を100%と仮定した場合、TTFが起きない場合、再結合で生じた励起子の最大25%が発光に寄与する。
一方で、TTFでは、5つの三重項励起子から1つの一重項励起子が生成する。したがって、TTFが発生する場合、三重項励起子の個数に対し、最大20%の個数の一重項励起子が生成する。すなわち、再結合の回数に対し、最大15%の個数の一重項励起子が生成する。したがって、ホスト材料の一重項励起子の発光量子効率(PLQE)を100%と仮定した場合、TTFにより、再結合で生じた励起子の最大15%が発光に寄与する。したがって、内部量子効率(IQE;Internal Quantum Efficiency)の最大値は40%である。以下、発光効率においてTTFの寄与分をRTTFで示す。RTTFは大きいほどTTF現象が効率よく利用できていることを示し、最大値は37.5%(=15/40)である。
[3.4 評価結果]
以下、実施の形態に係る有機EL素子の特性について評価結果とともに説明する。
図5(a)は、実施例および比較例における、発光層17のホスト材料と蛍光材料それぞれのHOMO準位およびΔHOMOの値、算出したRTTFおよび素子効率(EQE)の評価値を示すものである。なお、発光層17のホスト材料と蛍光材料それぞれのHOMO準位、LUMO準位、エネルギーギャップ値は、図5(b)に示した。なお、HOMO準位とLUMO準位のそれぞれは、真空準位からの差の絶対値であり、値が大きいほどエネルギーレベルが低い。なお、実施例と比較例は、蛍光材料のみが異なり、それ以外の構成要件は同一とした。なお、実施例1、実施例2、比較例それぞれに用いた蛍光材料は、全てエネルギーギャップが同一であり、すなわち発光ピーク波長が同一であって、ホスト材料と蛍光材料とのHOMO準位の差、ホスト材料と蛍光材料とのLUMO準位の差のみが異なる。
なお、RTTFについては、以下のような方法で算出した。図6(a)は、RTTFを算出するための評価試験の概略を示す図である。評価試験では、有機EL素子をパルス電流により発光させ、電流を遮断した直後の発光輝度の推移を測定した。一重項励起子の寿命は三重項励起子の寿命より短いため、再結合によって直接的に生じた蛍光材料の一重項励起子による発光、および、再結合によって直接的に生じたホスト材料の一重項励起子が蛍光材料にエネルギー移動したことによる発光は、電流が遮断されると極めて短時間のうちに消光する。一方、TTF過程を経て生じた一重項励起子による発光は寿命が長く、TTFによらない一重項励起子による蛍光が消光した後にも続く。したがって、電流を遮断した時刻(図6(a)、(b)におけるt=0)以降の発光強度の減衰プロファイルより、RTTFを推定することができる。より具体的には、図6(b)に示すように、時刻tにおける
発光強度I(t)とRTTFとの関係は、以下の式(10)により近似することができる。
Figure 2022098473000002
…式(10)
実施例1、2、比較例それぞれについて、10mA/cm2の矩形パルス電流において測定したRTTFは図5(a)の通りであり、図7(a)は、当該結果をΔHOMOとRTTFとの関係として示したものである。図5(a)、図7(a)に示すように、ΔHOMOが小さくなるほど、RTTFが大きくなる。上述したように、RTTFの最大値は37.5%なので、特に、RTTFが約30%またはそれ以上となることが、量子効率を高めるうえで好ましい。したがって、ΔHOMOは0.3eV以下であることが好ましい。また、図5(a)のEQE相対値は、実施例1、2、比較例それぞれの外部量子効率(EQE)について比較例のEQEを1とした相対値で示したものであり、図7(b)は、EQEの相対値をΔHOMOとの関係として示したものである。図5(a)および図7(b)に示すように、実施例では、EQEは比較例の1.4倍以上の高効率を実現している。
なお図5(a)において、EQE相対値は印加電流10mA/cm2における測定値を基に算出している。
[3.5 発光中心]
ここで、発光層における発光中心について説明する。発光中心とは、以下に説明する発光のピークとなる代表位置を指す。発光ピークの位置は、ホスト材料の励起子が集中する位置であり、一般に、発光層の陰極側の界面と、発光層の陽極側の界面との、いずれか一方、または、両方である。発光層におけるホールの移動度が電子の移動度より十分に高い場合、ホールは発光層の陰極側の界面まで移動する一方で、電子は発光層の陰極側の界面付近で再結合によって消費されるため、励起子は発光層の陰極側の界面付近で集中的に生成する。一方、発光層における電子の移動度がホールの移動度より十分に高い場合、電子は発光層の陽極側の界面まで移動する一方で、ホールは発光層の陽極側の界面付近で再結合によって消費されるため、励起子は発光層の陽極側の界面付近で集中的に生成する。また、発光層におけるホールの移動度と電子の移動度との関係によっては、励起子が、発光層の陰極側の界面付近と陽極側の界面付近の双方で集中的に生成することもある。一般には、励起子が集中的に生成した位置が、そのまま発光ピークの位置となる。
なお、ホスト材料の励起子の拡散特性が高く、励起子寿命が長い場合は、励起子の拡散により、励起子が集中的に生成する位置と発光ピークの位置が必ずしも一致しない場合がある。この場合は、励起子が集中的に生成する位置ではなく、励起子のエネルギーから光子のエネルギーへの遷移が集中的に発生する位置が発光中心となる。
[4.まとめ]
以上説明したように、本開示の一態様に係る有機EL素子は、発光層17がホスト材料と蛍光発光材料とを含み、蛍光発光材料のHOMO準位がホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差は0.3eV以下である。したがって、蛍光発光材料によりトラップされるホールを低減させ、発光層17の陰極側の面付近の狭い領域においてホール密度を高めることで励起子密度を高めることができる。そして、励起子密度の向上によってTTFの発生効率を高めることで、有機EL素子の量子効率を高め、発光効率の向上とそれによる素子の長寿命化を図ることができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、電子輸送層と発光層との間に電子注入輸送層を設け、電子注入輸送層のLUMO準位は電子輸送層のLUMO準位より0.1eV以上高く、かつ、発光層のホスト材料のLUMO準位より高い構成である。したがって、発光層17より陰極側における再結合を抑止して発光効率の低下や電子輸送層の劣化を抑止するとともに、発光層17への電子注入を好適に制御することでキャリアバランスを好適に保ち再結合確率の向上を図ることができる。
[5.有機EL素子の製造方法]
有機EL素子の製造方法について、図面を用いて説明する。図8(a)~図11(c)は、有機EL素子を備える有機EL表示パネルの製造における各工程での状態を示す模式断面図である。図12は、有機EL素子を備える有機EL表示パネルの製造方法を示すフローチャートである。
なお、有機EL表示パネルにおいて、画素電極(下部電極)は有機EL素子の陽極として、対向電極(上部電極、共通電極)は有機EL素子の陰極として、それぞれ機能する。
(1)基板11の形成
まず、図8(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成する(ステップS10)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
次に、図8(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(ステップS20)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するように形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
(2)画素電極13の形成
次に、図8(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する(ステップS31)。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる
次に、図8(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極13を形成する(ステップS32)。この画素電極13は、各有機EL素子の陽極として機能する。
なお、画素電極13の形成方法は上述の方法に限られず、例えば、画素電極材料層130上に正孔注入材料層150を形成し、画素電極材料層130と正孔注入材料層150との積層構造に対して単一のパターニング工程を実施することで、画素電極13と正孔注入層15との積層構造を形成してもよい。
(3)隔壁14の形成
次に、図8(e)に示すように、画素電極13および層間絶縁層12上に、隔壁14の材料である隔壁用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される(ステップS41)。そして、図9(a)に示すように、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで隔壁14を形成し(ステップS42)、隔壁14を焼成する。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。隔壁14の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
また、隔壁14の形成工程においては、さらに、隔壁14の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部14aに塗布するインク(溶液)に対する隔壁14の接触角を調節する目的で、もしくは、表面に撥水性を付与する目的で行われる。
(4)正孔注入層15の形成
次に、図9(b)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔注入層15の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド401のノズルから吐出して開口部14a内の画素電極13上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔注入層15を形成する(ステップS50)。
(5)正孔輸送層16の形成
次に、図9(c)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド402のノズルから吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(ステップS60)。
(6)発光層17の形成
次に、図10(a)に示すように、発光層17の構成材料であるホスト材料と蛍光材料とを含むインクを、インクジェットヘッド403のノズルから吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って発光層17を形成する(ステップS70)。
(7)電子注入制御層18の形成
次に、図10(b)に示すように、発光層17および隔壁14上に、電子注入制御層18を形成する(ステップS80)。電子注入制御層18は、例えば、電子注入制御層18の材料となる有機化合物を蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(8)電子輸送層19の形成
次に、図10(c)に示すように、電子注入制御層18上に、電子輸送層19を形成する(ステップS80)。電子輸送層19は、例えば、電子輸送層19の材料となる有機化合物を蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(9)電子注入層20の形成
次に、図11(a)に示すように、電子輸送層19上に、電子注入層20を形成する(ステップS100)。電子注入層20は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属またはその化合物を共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(10)対向電極21の形成
次に、図11(b)に示すように、電子注入層20上に、対向電極21を形成する(ステップS110)。対向電極21は、ITO、IZO、銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。なお、対向電極21は、各有機EL素子の陰極として機能する。
(11)封止層22の形成
最後に、図11(c)に示すように、対向電極21上に、封止層22を形成する(ステップS120)。封止層22は、SiON、SiN等を、スパッタリング法、CVD法などにより成膜することにより形成することができる。なお、SiON、SiNなどの無機膜上に封止樹脂層をさらに塗布、焼成等により形成してもよい。
なお、封止層22の上にカラーフィルタや上部基板を載置し、接合してもよい。
[6.有機EL表示装置の全体構成]
図13は、有機EL表示パネル100を備えた有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。図13に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを含む構成である。駆動制御部200は、4つの駆動回路210~240と、制御回路250とから構成されている。
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
[7.その他の変形例]
(1)上記実施の形態において、発光層17のホスト材料はホール輸送性が電子輸送性より高いとした。しかしながら、発光層17のホスト材料として電子輸送性がホール輸送性より高い材料を用いてもよい。この場合、陽極側から発光層17へのホール注入が発光層17における再結合の律速過程となるため、蛍光材料による電子のトラップが発生しないことが好ましい。したがって、ホスト材料のLUMO準位と、蛍光材料のLUMO準位との差が小さいことが好ましい。また、この場合、発光層17と正孔輸送層16との間に正孔注入制御層を設けることが好ましく、正孔注入輸送層のHOMO準位は正孔輸送層のHOMO準位より0.1eV以上低く、かつ、発光層のホスト材料のHOMO準位より低い構成であることが好ましい。当該構成により、発光層17より陽極側における再結合を抑止して発光効率の低下や正孔輸送層の劣化を抑止するとともに、発光層17へのホール注入を好適に制御することでキャリアバランスを好適に保ち再結合確率の向上を図ることができる。
(2)上記実施の形態において、有機EL素子は電子注入輸送層を備えるとしたが、必須構成ではない。電子注入輸送層がない有機EL素子においても、蛍光材料のHOMO準位がホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差が0.3eV以下であることにより、蛍光材料によるホールトラップを減少させ発光層17の励起子密度の向上の効果を奏する。
(3)上記実施の形態においては、正孔注入層15や正孔輸送層16を必須構成であるとしたが、これに限られない。例えば、正孔輸送層16を有しない有機EL素子であってもよい。また、例えば、正孔注入層15と正孔輸送層16とに替えて、単一層の正孔注入輸送層を有していてもよい。また、上記実施の形態において、電子輸送層19とは別に電子注入層20を設けたが、電子輸送層19は電子注入層を兼ねてもよい。
(4)上記実施の形態においては、有機EL表示パネルはトップエミッション構成であるとしたが、陽極を光透過型電極、陰極を光反射型電極とすることでボトムエミッション構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、陽極が画素電極、陰極が対向電極であるとしたが、陰極が画素電極、陽極が対向電極であるとしてもよい。
以上、本開示に係る有機EL素子および有機ELパネルについて、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本発明は、高効率、長寿命の有機EL素子およびそれを備える有機EL表示パネル、表示装置を製造するのに有用である。
1 有機EL素子
11 基板
111 基材
112 TFT層
12 層間絶縁層
13 画素電極(陽極)
14 隔壁
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子注入制御層
19 電子輸送層
20 電子注入層
21 対向電極(陰極)
22 封止層
100 有機EL表示パネル
1000 有機EL表示装置

Claims (7)

  1. 陽極と、発光層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、
    前記発光層は、蛍光発光材料と、ホスト材料とを含み、
    前記蛍光発光材料の最低空軌道(LUMO)準位と前記蛍光発光材料の最高被占有軌道(HOMO)準位との差は、前記ホスト材料のLUMO準位とHOMO準位の差以下であり、
    前記蛍光発光材料のLUMO準位は前記ホスト材料のLUMO準位以上であり、
    前記蛍光発光材料のHOMO準位は前記ホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差は0.3eV以下である
    有機EL素子。
  2. 前記発光層における発光中心と前記発光層の陰極側の面との距離は、前記発光中心と前記発光層の陽極側の面との距離より小さい
    請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記発光層のホール移動度は、前記発光層の電子移動度より大きい
    請求項2に記載の有機EL素子。
  4. 前記ホスト材料の一重項励起子のエネルギーは、前記蛍光発光材料の一重項励起子のエネルギー以上である
    請求項1から3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  5. 前記発光層と前記陰極との間に、電子注入制御層と中間層とをさらに備え、
    前記電子注入制御層は、前記発光層と前記中間層とのいずれにも接し、
    前記中間層は、電子注入性と電子輸送性のうち少なくとも1つを備え、
    前記電子注入制御層に含まれる機能材料のLUMO準位は前記中間層に含まれる機能材料のLUMO準位より0.1eV以上高く、かつ、前記ホスト材料のLUMO準位以上である
    請求項1から4のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の有機EL素子を基板上に複数備える有機ELパネル。
  7. 基板上に第1電極を形成し、
    前記第1電極の上方に発光層を形成し、
    前記発光層の上方に第2電極を生成する有機EL素子の製造方法であって、
    前記発光層の形成において、蛍光発光材料とホスト材料とを前記発光層の材料として用い、前記蛍光発光材料の最低空軌道(LUMO)準位と前記蛍光発光材料の最高被占有軌道(HOMO)準位との差は、前記ホスト材料のLUMO準位とHOMO準位の差以下であり、前記蛍光発光材料のLUMO準位は前記ホスト材料のLUMO準位以上であり、前記蛍光発光材料のHOMO準位は前記ホスト材料のHOMO準位以上であり、エネルギーレベルの差が0.3eV以下であるように、前記蛍光発光材料と前記ホスト材料とを選択する
    有機EL素子の製造方法。
JP2021204329A 2020-12-21 2021-12-16 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法 Pending JP2022098473A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US17/557,072 US20220199930A1 (en) 2020-12-21 2021-12-21 Organic el element, organic el display panel, and organic el element manufacturing method

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020211429 2020-12-21
JP2020211429 2020-12-21

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022098473A true JP2022098473A (ja) 2022-07-01

Family

ID=82165548

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021204329A Pending JP2022098473A (ja) 2020-12-21 2021-12-16 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022098473A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4837958B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP7492820B2 (ja) 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法
JP6387566B2 (ja) 有機el素子
JP2005100921A (ja) 有機el素子および表示装置
US9490444B2 (en) Organic light-emitting element with regulation insulating layer and two-component electron transport layer and method of making
US20110291156A1 (en) Organic electroluminescent element
US10665806B2 (en) Organic EL element and organic EL display panel
US10381589B2 (en) Organic EL element and organic EL display panel
US20110210323A1 (en) Organic electroluminescent element and display device
JP2010205434A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2022098473A (ja) 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法
US20220199930A1 (en) Organic el element, organic el display panel, and organic el element manufacturing method
JP7493931B2 (ja) 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法
CN111952465B (zh) 有机el元件及其制造方法、有机el显示面板
US10756308B2 (en) Organic electroluminescence element and method of manufacturing the same
US20220158112A1 (en) Organic el element, organic el panel, and organic el element manufacturing method
JP2021093472A (ja) 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法
JP2022030017A (ja) 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法
JP2022080879A (ja) 有機el素子、有機elパネル、および、有機el素子の製造方法
US11462707B2 (en) Display panel utilizing self-luminous elements and method of manufacturing same
JP2022075153A (ja) 有機el素子、有機elパネル、および、有機el素子の製造方法
JP2010199504A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2018174162A (ja) 有機el発光装置
JP2014182933A (ja) 有機el発光装置

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20231031