JP2022030017A - 有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法 - Google Patents

有機el素子、有機el表示パネル、および、有機el素子の製造方法 Download PDF

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真一郎 石野
Shinichiro Ishino
利幸 秋山
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智彦 尾田
Tomohiko Oda
峰樹 長谷川
Mineki Hasegawa
康宏 関本
Yasuhiro Sekimoto
宗治 佐藤
Muneharu Sato
昌和 高田
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Abstract

【課題】有機EL素子において、高温における発光効率を向上させ、動作温度全域で高い発光効率を維持し、長寿命化を図ることを目的とする。【解決手段】陽極と、発光層と、中間層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、前記中間層の前記発光層側に接して配される電子注入制御層をさらに備え、前記中間層と前記電子注入制御層との界面にトラップサイトが形成され、前記トラップサイトのトラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より35meV以上低く、前記トラップサイトの密度は、前記中間層における電子密度の0.1%以上であることを特徴とする有機EL素子。【選択図】図2

Description

本開示は、蛍光材料を発光材料として用いる有機EL素子における発光効率と寿命の改善に関する。
近年、表示装置に有機EL素子を利用したものが普及しつつある。
有機EL素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも発光層が挟まれた構造を有している。発光層では、電子と正孔(ホール)との再結合により発生した励起子のエネルギーが光に変換される。従来、有機EL素子の発光効率を向上させるため、電子とホールのバランスを調整する(例えば、特許文献1参照)などの工夫がなされている。
特開2008-187205号公報
しかしながら、有機EL素子の発光効率には温度依存性があり、動作温度全域で高い発光効率を維持することが難しい。特に、動作温度が上昇すると発光効率が低下することが課題となる。
本開示は、有機EL素子において、高温における発光効率を向上させ、動作温度全域で高い発光効率を維持し、長寿命化を図ることを目的とする。
本開示の一態様に係る有機EL素子は、陽極と、発光層と、中間層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、前記中間層の前記発光層側に接して配される電子注入制御層をさらに備え、前記中間層と前記電子注入制御層との界面にトラップサイトが形成され、前記トラップサイトのトラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より35meV以上低く、前記トラップサイトの密度は、前記中間層における電子密度の0.1%以上であることを特徴とする。
なお、本明細書において、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位、最高被占有軌道(HOMO;Highest Occupied Molecular Orbital)準位、または、トラップ準位が高いとは、当該準位と電子の真空準位との差が小さいこと、すなわち、当該準位に存在する電子のポテンシャルエネルギーが大きいことを指す。
本開示の一態様に係る有機EL素子によれば、中間層から電子注入制御層へ電子が注入される際に電子がトラップサイトを経由し、かつ、トラップ準位と中間層のLUMO準位との差が熱励起のエネルギーに対して十分に高い。したがって、熱励起による中間層から電子注入制御層への電子注入性向上が抑制され、発光層における電子とホールのバランスが温度に依存しない。本構成により、有機EL素子の温度にかかわらず電子とホールのバランスを保つことが容易となり、動作温度全域で高い発光効率を維持することができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
実施の形態に係る有機EL素子1の構成を模式的に示す断面図である。 実施例に係る、正孔輸送層、発光層、電子注入制御層、電子輸送層のバンドダイアグラムを示す簡略模式図である。 比較例1、比較例2、比較例3のそれぞれに係る、印加電圧と電流密度との関係およびその温度依存性を示すグラフである。 比較例1、比較例2、比較例3のそれぞれに係る、電流密度と電圧に対する電流変化度との関係およびその温度依存性を示すグラフである。 実施例および比較例4のそれぞれに係る、印加電圧と電流密度との関係およびその温度依存性の実測値とシミュレーションとの比較結果である。 実施例および比較例に係る、正孔輸送層、発光層、電子注入制御層、電子輸送層のバンドダイアグラムを示す簡略模式図である。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基板上にTFT層が形成された状態、(b)は、基板上に層間絶縁層が形成された状態、(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料が形成された状態、(d)は、画素電極が形成された状態、(e)は、層間絶縁層および画素電極上に隔壁材料層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、隔壁が形成された状態、(b)は、画素電極上に正孔注入層が形成された状態、(c)は、正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、正孔輸送層上に発光層が形成された状態、(b)は、発光層および隔壁層上に電子注入制御層が形成された状態、(c)は、電子注入制御層上に電子輸送層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、電子輸送層上に電子注入層が形成された状態、(b)は、電子注入層上に対向電極が形成された状態、(c)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程を示すフローチャートである。 実施の形態に係る有機EL素子を備えた有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。 (a)は、変形例に係る、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入制御層、電子注入層のバンドダイアグラムである。(b)は、変形例に係る、正孔輸送層、正孔注入制御層、発光層、電子輸送層のバンドダイアグラムである。
≪本開示の一態様に至った経緯≫
有機EL素子を発光素子として使用するためには、発光の始状態となる励起子の生成が不可欠である。したがって、従来、正孔輸送層から発光層への正孔注入性と電子輸送層から発光層への電子注入性を高め、発光層内のキャリア密度を向上させて電子とホールの再結合確率を高めている。また、発光層内のキャリア密度をさらに向上させる構成として、発光層から電子輸送層への正孔漏出と発光層から正孔輸送層への電子漏出を抑制することができるように、電子輸送層のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位、および/または、正孔輸送層のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位を調整した機能層を選定する。このような構成により、発光層内のキャリア密度を向上させて電子と正孔の再結合確率を高めることができるからである。また、発光効率の向上のためには、単に発光層内のキャリア密度を向上させるだけでなく、電子とホールとのバランス調整も重要である。
従前より、有機EL素子において、動作温度が上昇すると発光効率が低下することが知られている。そこで、発明者らは、発光層への電子注入性と発光層へのホール注入性とのそれぞれにおける温度依存性について着目した。そして、発光層へのホール注入性における温度依存性が低い場合に、発光層への電子注入性における温度依存性を抑止することで発光効率の低下を抑止できるとの知見を得て、本開示の態様に至った。
≪開示の態様≫
本開示の一態様に係る有機EL素子は、陽極と、発光層と、中間層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、前記中間層の前記発光層側に接して配される電子注入制御層をさらに備え、前記中間層と前記電子注入制御層との界面にトラップサイトが形成され、前記トラップサイトのトラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より35meV以上低く、前記トラップサイトの密度は、前記中間層における電子密度の0.1%以上であることを特徴とする。
本開示の一態様に係る有機EL素子によれば、中間層から電子注入制御層へ電子が注入される際に電子がトラップサイトを経由し、かつ、トラップ準位と中間層のLUMO準位との差が熱励起のエネルギーに対して十分に高い。したがって、熱励起による中間層から電子注入制御層への電子注入性向上が抑制され、発光層における電子とホールのバランスが温度に依存しない。本構成により、有機EL素子の温度にかかわらず電子とホールのバランスを保つことが容易となり、動作温度全域で高い発光効率を維持することができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記トラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より50meV以上低い、としてもよい。
上記構成により、発光効率の温度依存性をより低下させるとともに、動作温度の上限を高くすることができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記電子注入制御層の膜厚は1nm以上である、としてもよい。
上記構成により、電子が電子注入制御層をトンネリングして中間層から発光層側に直接流入しトラップサイトの機能が低下することを抑止することができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記中間層の膜厚は1nm以上である、としてもよい。
上記構成により、電子が中間層をトンネリングして陰極側から電子注入制御層に直接流入しトラップサイトの機能が低下することを抑止することができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記電子注入制御層は前記発光層と接しており、前記電子注入制御層に含まれる機能性材料のLUMO準位は、前記発光層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高く、かつ、前記中間層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高い、としてもよい。
上記構成により、陰極側から発光層への電子注入性を中間層から電子注入制御層への電子注入障壁によって制御できるとともに、電子注入制御層の発光層側の界面に電子が集中することによる電子注入制御層の劣化を抑止することができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記電子注入制御層に含まれる機能性材料の最高被占有軌道(HOMO)準位は、前記発光層に含まれる機能性材料のHOMO準位より低い、としてもよい。
上記構成により、電子注入制御層が発光層から電子注入制御層へのホールの流出を防ぐホールブロック層としても機能し、発光効率を向上させることができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記電子注入制御層の前記発光層側に接して配される第2中間層をさらに備え、前記電子注入制御層に含まれる機能性材料のLUMO準位は、前記第2中間層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高く、かつ、前記中間層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高い、としてもよい。
上記構成により、陰極側から発光層への電子注入性を中間層から電子注入制御層への電子注入障壁によって制御できるとともに、第2中間層に電子が集中することによる第2中間層の劣化を抑止することができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、本開示の一態様に係る有機EL素子を基板上に複数備える、としてもよい。
本開示の一態様に係る有機EL素子は、陽極と、中間層と、発光層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、前記中間層の前記発光層側に接して配される正孔注入制御層をさらに備え、前記中間層と前記正孔注入制御層との界面にトラップサイトが形成され、前記トラップサイトのトラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料のHOMO準位より35meV以上高く、前記トラップサイトの密度は、前記中間層における正孔密度の0.1%以上であることを特徴とする。
本開示の一態様に係る有機EL素子によれば、中間層から正孔注入制御層へホールが注入される際にホールがトラップサイトを経由し、かつ、トラップ準位と中間層のHOMO準位との差が熱励起のエネルギーに対して十分に高い。したがって、熱励起による中間層から正孔注入制御層へのホール注入性向上が抑制され、発光層における電子とホールのバランスが温度に依存しない。本構成により、有機EL素子の温度にかかわらず電子とホールのバランスを保つことが容易となり、動作温度全域で高い発光効率を維持することができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
本開示の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、基板を準備し、前記基板の上方に陽極を形成し、前記陽極の上方に発光層を形成し、前記発光層の上方に電子注入制御層を形成し、前記電子注入制御層上に中間層を形成し、前記中間層の上方に陰極を形成する有機EL素子の製造方法であって、前記電子注入制御層と前記中間層との界面に、前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より35meV以上低い準位を有するトラップサイトを、前記中間層における電子密度の0.1%以上の密度で形成することを特徴とする。
≪実施の形態≫
以下、実施の形態に係る有機EL素子について説明する。なお、以下の説明は、本発明の一態様に係る構成および作用・効果を説明するための例示であって、本発明の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。
[1.有機EL素子の構成]
図1は、本実施の形態に係る有機EL素子1の断面構造を模式的に示す図である。有機EL素子1は、陽極13、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20、および、陰極21を備える。本実施の形態において、電子輸送層19は本発明の中間層に相当する。
有機EL素子1において、陽極13と陰極21とは主面同士が向き合うように互いに対向して配されており、陽極13と陰極21との間に発光層17が形成されている。
発光層17の陽極13側には、発光層17に接して正孔輸送層16が形成されている。正孔輸送層16と陽極13との間には正孔注入層15が形成されている。
発光層17の陰極21側には、発光層17に接して電子注入制御層18が形成されており、電子注入制御層18に接して電子輸送層19が形成されている。電子輸送層19と陰極21との間に電子注入層20が形成されている。
[1.1 有機EL素子の各構成要素]
陽極13は、層間絶縁層12上に形成されている。陽極13は、画素ごとに設けられる画素電極として形成され、層間絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施形態においては、陽極13は、光反射性電極として機能する。
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
陽極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
なお、陰極21を光反射性電極とする場合には、陽極13を光透過性電極としてもよい。この場合、陽極13は、金属材料で形成された金属層および金属酸化物で形成された金属酸化物層の少なくとも一方を含んでいる。陽極13の膜厚は1nm~50nm程度に薄く設定されて光透過性を有している。金属材料は光反射性の材料であるが、金属層の薄膜を50nm以下と薄くすることによって、光透過性を確保することができる。したがって、発光層17からの光の一部は陽極13において反射されるが、残りの一部は陽極13を透過する。
このとき、陽極13に含まれる金属層を形成する金属材料としては、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金(MgAg)、インジウム-銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金(MgAl)、リチウム-アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。
陽極13に含まれる金属層は、例えばAg層あるいはMgAg合金層の単層で構成してもよいし、Mg層とAg層の積層構造(Mg/Ag)、あるいは、MgAg合金層とAg層の積層構造(MgAg/Ag)にしてもよい。
陽極13に含まれる金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、ITO、IZOが挙げられる。
また、陽極13は、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。
<正孔注入層>
正孔注入層15は、陽極13から発光層17へのホール(正孔)の注入を促進させる機能を有する。正孔注入層15は、例えば、塗布膜であり、例えば、正孔注入材料を溶質とする溶液の塗布および乾燥より形成されている。正孔注入層15は蒸着膜で形成されていてもよい。正孔注入層15は、例えば、PEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの導電性ポリマー材料、あるいは、Ag、Mo、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物からなる。
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入されたホールを発光層17へ輸送する機能を有する。正孔輸送層16は、例えば、塗布膜であり、具体的には、正孔輸送材料を溶質とする溶液の塗布および乾燥より形成されている。または、正孔輸送層16は蒸着膜で形成されていてもよい。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物などを用いることができる。
<発光層>
発光層17は、ホールと電子の再結合により光を出射する機能を有する。発光層中でのホールと電子の再結合位置は分布を持つため、発光層膜厚は再結合分布幅よりも大きいことが好ましく、実施の一態様において、発光層17の膜厚は30nm以上である。また、実施の一態様において、発光層17の膜厚は40nm以上である。また、一般に発光材料の移動度は電荷輸送材料の移動度に比べて小さく、発光層膜厚を薄く設計することが素子の駆動電圧低減に寄与するため、実施の一態様において、発光層17の膜厚は80nm以下である。また、実施の一態様において、発光層17の膜厚は120nm以下である。
発光層17は、例えば、塗布膜であり、例えば、発光層を形成する材料と溶質とする溶液の塗布および乾燥より形成されている。または、発光層17は蒸着膜で形成されていてもよい。
発光層17を形成する材料としては、公知の蛍光物質である有機材料を利用することができる。例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物等を用いることができる。
なお、後述するように、発光層17は、電子移動度よりホール移動度が高いことが好ましく、そのような特性を有する蛍光材料を用いるか、または、そのような特性を有する有機材料をホスト材料として用いることが好ましい。蛍光材料をドーパントとして用いる場合のホスト材料としては、例えば、アミン化合物、縮合多環芳香族化合物、ヘテロ環化合物を用いることができる。アミン化合物としては、例えば、モノアミン誘導体、ジアミン誘導体、トリアミン誘導体、テトラアミン誘導体を用いることができる。縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体、ナフタセン誘導体、フェナントレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、トリフェニレン誘導体、ペンタセン誘導体、ペリレン誘導体を用いることができる。ヘテロ環化合物としては、例えば、カルバゾール誘導体、フラン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロール誘導体、インドール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フタロシアニン誘導体を用いることができる。
なお、発光層を蛍光材料とホスト材料とから形成する場合において、実施の一態様では、蛍光材料の濃度は1wt%以上である。また、実施の一態様では、蛍光材料の濃度は10wt%以下である。また、実施の一態様では、蛍光材料の濃度は30wt%以下である。
発光層17の膜厚は、青色発光層の場合、例えば、20~60nmであり、緑色発光層、赤色発光層の場合、例えば、50~150nmである。
<電子注入制御層>
電子注入制御層18は、発光層17から電子注入制御層18へのホールの流出を制限するとともに、電子注入制御層18から発光層17への電子の注入を制御する機能を有する。発光層17から電子注入制御層18へのホールの流出を制限する機能は、後述のエネルギーバンド構造の設計により実現される。
また電子注入制御層18の材料は、LUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差、(バンドギャップ)、すなわち、一重項励起子のエネルギーが、発光層17の材料のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差(一重項励起子のエネルギー)より大きいことが好ましい。本構成により、電子注入制御層18の材料に一重項励起子が生成した場合に発光層17の蛍光材料の一重項励起子への遷移が容易に起きるとともに、発光層17の蛍光材料の一重項励起子が電子注入制御層18へ流出することを抑止することができ、発光効率の向上に寄与する。また、同様に、電子注入制御層18の材料における三重項励起子のエネルギーは、発光層17の材料における三重項励起子のエネルギーより大きいことが好ましい。
電子注入制御層18は、例えば、蒸着膜から構成されている。電子注入制御層18の材料としては、例えば、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キナゾリン誘導体、フェナントロリン誘導体などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。なお、後述するように、電子注入制御層18と電子輸送層19との界面に、電子輸送層19のLUMO準位より50meV以上低い電子トラップ準位が、動作中における電子輸送層19の電子密度の0.1%以上存在する。したがって、トラップ準位が生成しやすいよう、電子注入制御層18と電子輸送層19との間で結晶格子が不整合であることが好ましい。なお、トラップ準位のエネルギーおよび相対的な状態密度は、低エネルギー逆光電子分光法により測定することができる。
また、後述するように、電子注入制御層18と電子輸送層19との界面の蓄積電荷Qを少なくするため、電子輸送層19の誘電率をε19、伝導度をσ19、電子注入制御層18の誘電率をε18、伝導度をσ18としたとき、ΔΤ(=ε19/σ19-ε18/σ18)が小さいことが好ましく、従来材料の1/2以下が好ましい。
電子注入制御層18の膜厚は、電子輸送層19から発光層17への電子のトンネリングを許容しないため、少なくとも1nm以上である。実施の形態では、例えば、10~30nmである。
<電子輸送層>
電子輸送層19は、陰極21からの電子を、電子注入制御層18を経て発光層17へ輸送する機能を有する。電子輸送層19は、電子輸送性が高い有機材料からなる。電子輸送層19は、例えば、蒸着膜で構成されている。電子輸送層19に用いられる有機材料としては、例えば、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キナゾリン誘導体、フェナントロリン誘導体などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
電子輸送層19の膜厚は、電子注入層20から電子注入制御層18への電子のトンネリングを許容しないため、少なくとも1nm以上である。実施の形態では、例えば、20~60nmである。
<電子注入層>
電子注入層20は、陰極21から供給される電子を発光層17側へと注入する機能を有する。電子注入層20は、例えば、蒸着膜で構成されている。電子注入層20は、例えば、電子輸送性が高い有機材料に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または、希土類金属等から選択されるドープ金属がドープされて形成されている。なお、ドープ金属は、金属単体に限られず、フッ化物(例えば、NaF)やキノリニウム錯体(例えば、Alq3、Liq)など化合物としてドープされてもよい。実施の形態では、LiがLiqとしてドープされている。ドープ金属としては、例えば、アルカリ金属に該当するリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、アルカリ土類金属に該当するカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、希土類金属に該当するイットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等である。
電子注入層20に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
<陰極>
陰極21は、光透過性の導電性材料からなり、電子注入層20上に形成されている。陰極21は、各有機EL素子の陽極13に共通して対向する、共通対向電極として形成される。
陰極21の材料としては、金属材料で形成された金属層および金属酸化物で形成された金属酸化物層の少なくとも一方を含む。
陰極21に含まれる金属層を形成する金属材料としては、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金、インジウム-銀合金が挙げられる。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム合金が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。
陰極21に含まれる金属層は、例えばAg層あるいはMgAg合金層の単層で構成してもよいし、Mg層とAg層の積層構造、あるいは、MgAg合金層とAg層の積層構造にしてもよい。
陰極21に含まれる金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、ITO、IZOが挙げられる。
また、陰極21は、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。
なお、陽極13を光透過性電極とする場合には、陰極21を光反射性電極としてもよい。このとき、陰極21は、光反射性の金属材料からなる金属層を含む。光反射性を具備する金属材料の具体例としては、銀、アルミニウム、アルミニウム合金、モリブデン、APC、ARA、MoCr、MoW、NiCrなどが挙げられる。
<その他>
有機EL素子1は基板11上に形成される。基板11は、絶縁材料である基材111からなる。あるいは、絶縁材料である基材111上に配線層112を形成してもよい。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。配線層112を構成する材料としては、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属材料、窒化ガリウム、ガリウム砒素などの無機半導体材料、アントラセン、ルブレン、ポリパラフェニレンビニレンなどの有機半導体材料等が挙げられ、これらを複合的に用いて形成したTFT(Thin Film Transistor)層としてもよい。
また、図示していないが、基板11上には層間絶縁層12が形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、層間絶縁層12には、画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
有機EL表示パネル100がボトムエミッション型である場合には、基材111、層間絶縁層12は光透過性の材料で形成されることが必要となる。さらに、TFT層112が存在する場合には、TFT層112において陽極13の下方に存在する領域の少なくとも一部分は、光透過性を有する必要がある。
また、有機EL素子1上には、封止層22が形成されている。封止層22は、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
有機EL表示パネル100がトップエミッション型である場合には、封止層22は光透過性の材料で形成されることが必要となる。なお図1には示されないが、封止層22の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20を水分および空気などから保護できる。
[2.エネルギーバンド構造]
有機EL素子1は、発光層17、電子注入制御層18、および、電子輸送層19のエネルギーバンド構造に特徴を有する。なお、説明の簡略化のために、「層のエネルギー準位」と記載するが、これは、当該層を形成する有機材料のエネルギー準位を略記したものである。なお、複数の種類の材料からなる層については、電子および/またはホールの輸送を担っている代表的な有機材料のエネルギー準位を「層のエネルギー準位」として表記する。
図2は、有機EL素子1のエネルギーバンド構造を示すバンドダイアグラムである。図2では、正孔輸送層16、発光層17、電子注入制御層18、および、電子輸送層19のLUMOのエネルギー準位(以下、「LUMO準位」と表記する)とHOMOのエネルギー準位(以下、「HOMO準位」と表記する)、ならびに、電子注入制御層18と電子輸送層19との界面におけるトラップサイトの準位(以下、「トラップ準位」と表記する)とを示し、それ以外は記載を省略している。なお、図2では電子の真空準位を図示していないが、LUMO準位、HOMO準位、トラップ準位のそれぞれは、バンドダイアグラムの下側であるほど、電子の真空準位からの差が大きく、エネルギーレベルが低い。
[2.1 電子注入障壁]
陰極21側から発光層17へ電子を注入するためのエネルギー障壁が、陰極21から発光層17までの各層の界面に存在する。このエネルギー障壁は、界面の陽極13側の層と陰極21側の層とのLUMO準位の差に起因する。以下、隣り合う2つの層の界面において陰極21側から陽極13側へ電子を注入するためのエネルギー障壁を「電子注入障壁」という。
電子輸送層19から電子注入制御層18への電子注入障壁Eg(eicl)は、電子注入制御層18の有機材料のLUMO準位181と、トラップ準位185との差によって規定される。本実施の形態では、LUMO準位181とLUMO準位191との差が0.2eVであり、トラップ準位185とLUMO準位191との差Etが50meVであるため、電子注入障壁Eg(eicl)は0.25eVである。
電子注入制御層18から発光層17への電子注入障壁Eg(eml)は、発光層17の有機材料のLUMO準位171と電子注入制御層18の有機材料のLUMO準位181との差によって規定される。本実施の形態では、電子注入障壁Eg(eml)は-0.1eVである。
[2.2 ホール注入障壁]
一方、陽極13から発光層17を経て陰極21側へホールを注入するためのエネルギー障壁が、陽極13から第2電子輸送層19までの各層の界面に存在する。このエネルギー障壁は、界面の陰極21側の層と陽極13側の層とのHOMO準位の差に起因する。以下、隣り合う2つの層の界面において陽極13側から陰極21側へホールを注入するためのエネルギー障壁を「ホール注入障壁」という。
正孔輸送層16から発光層17へのホール注入障壁Hg(eml)は、発光層17の有機材料のHOMO準位172と正孔輸送層16の有機材料のHOMO準位162の際によって規定される。本実施の形態では、ホール注入障壁Hg(eml)が0.11eVである。
発光層17から電子注入制御層18へのホール注入障壁Hg(eicl)は、電子注入制御層の有機材料のHOMO準位182と発光層の有機材料のHOMO準位172との差によって規定される。Hg(eicl)は下記の式(1)を満たすことが好ましい。本実施の形態では、ホール注入障壁Hg(etl1)は0.31eVである。また、Hg(etl1)は下記の式(2)を満たすことがより好ましい。
Hg(etl1)≧0.2eV …式(1)
Hg(etl1)≧0.4eV …式(2)
[3.構成がもたらす効果]
[3.1 電子注入特性とホール注入特性の温度依存性]
以下、実施例の一部のみを採用した比較例のそれぞれに係る、印加電圧と電流密度との関係およびその温度依存性を示す。図3は、比較例1、比較例2、比較例3のそれぞれに係る、温度ごとの、印加電圧と電流密度との関係を示すグラフである。また、図4は、比較例1、比較例2、比較例3のそれぞれに係る、温度ごとの印加電圧と電流密度との関係を、電流密度と変化率との関係で表記したものであり、温度による影響(キャリア密度向上に起因する導電率上昇)を除いてキャリア注入度の電圧依存性のみを示したものである。
ここで、比較例1は、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20を省き、発光層17上に陰極21を直接接触させたHOD(Hole Only Device)である。当該構成により、陰極21から発光層17への電子注入性は著しく低下するため、比較例1内のキャリアはすべてホールとみなすことができる。したがって、比較例1の電流密度は、ほぼ実施例におけるホール密度と同一と考えることができる。
図3(a)は、比較例1に係る、印加電圧と電流密度との関係およびその温度依存性を示すグラフである。すなわち、これは実施例における印加電圧と電流密度との関係およびその温度依存性を示したものである。図3(a)に示されるように、25℃の場合と、85℃の場合とで、電圧変化に対する電流密度の増加(グラフの傾き及びその傾向)は大きく変化しない。これは、図4(a)に示される、電流密度と電圧変化に対する電流密度の増加との関係ではより明らかである。すなわち、実施例において、ホールの注入特性の温度依存性が低い。
また、比較例2は、正孔注入層15、正孔輸送層16を省き、陽極13上に発光層17を直接接触させたEOD(Electron Only Device)である。当該構成により、陽極13から発光層17へのホール注入性は著しく低下するため、比較例2内のキャリアはすべて電子とみなすことができる。したがって、比較例2の電流密度は、ほぼ、実施例における電子密度と同一と考えることができる。
次に、比較例3は、正孔注入層15、正孔輸送層16、電子注入制御層18を省き、陽極13上に発光層17を直接接触させ、発光層17と電子輸送層19が直接接触させたEODである。したがって、比較例3の電流密度は、ほぼ、実施例から電子注入制御層18を省いた比較例4における電子密度と同一と考えることができる。
比較例2と比較例3とを比較すると、図3(b)に示されるように、比較例2では、25℃の場合と、85℃の場合とで、電圧変化に対する電流密度の増加は大きく変化しない。すなわち、電子の注入特性の温度依存性が低い。これに対し、図3(c)に示されるように、比較例3では、25℃の場合に対し、85℃の場合で、電圧変化に対する電流密度の増加が大きい。図4(b)、(c)に示される、電流密度と電圧変化に対する電流密度の増加との関係ではこの差はより顕著で、比較例2では、比較例1と同様に電流密度と電圧変化に対する電流密度の増加との関係の温度依存性が低いのに対し、比較例3では、電流密度と電圧変化に対する電流密度の増加との関係の温度依存性が高い。したがって、電子注入制御層18を省いた比較例では、動作温度が上昇すると、ホール注入性の増加に対して電子注入性の増加が大きい。すなわち、25℃においてホールと電子の注入バランスを最適化している場合、85℃で動作させると、発光層において電子が供給過剰となるため発光効率が低下する。一方、85℃においてホールと電子の注入バランスを最適化すると、25℃で動作させたとき、発光層において電子が供給不足となって発光効率が低下する。つまり、実施例から電子注入制御層18を省いた比較例4では、全ての動作温度でホールと電子の注入バランスを最適化できず、発光効率の向上に限りがある。これに対し、実施例の構成では、動作温度が上昇したときに、ホール注入性と電子注入性とが同程度に増加する。すなわち、25℃においてホールと電子の注入バランスを最適化している場合、85℃で動作させた場合においてもホールと電子の注入バランスが好適なまま保たれる。つまり、全ての動作温度でホールと電子の注入バランスを最適化することができるため、発光効率を向上させることができ、特に、高温における発光効率の低下を抑止できる。
なお、比較例4では、駆動温度25℃の発光効率に対して85℃の発光効率は94%であり、実施例では、駆動温度25℃の発光効率に対して85℃の発光効率は99%である。また、比較例4における駆動温度85℃における寿命(LT80;発光輝度が当初の80%まで低下するまでの駆動時間)を100としたとき、実施例における駆動温度85℃における寿命(LT80)は2000である。
[3.2 シミュレーションとの比較]
図5(a)は、実施例および実施例のシミュレーションそれぞれに係る、印加電圧と電流密度との関係およびその温度依存性を示す。実施例については、実測値をプロットして印加電圧と電流密度との関係とを示している。一方、実施例のシミュレーションについては、電子輸送層19と電子注入制御層18との間に、深さEt=50meVのトラップ準位を有するトラップサイトが、1×1011個/cm3だけ存在すると仮定して、電子の分布をシミュレートした結果を印加電圧と電流密度との関係として示したものである。図5(a)に示すように、シミュレーション結果と実測値との乖離は少なく、シミュレーションが実施例の内部状態を再現している可能性の高いことが示されている。
図5(b)は、比較例4および比較例4のシミュレーションそれぞれに係る、印加電圧と電流密度との関係およびその温度依存性を示す。比較例4については、実測値をプロットして印加電圧と電流密度との関係とを示している。一方、比較例のシミュレーションについては、電子輸送層19と発光層17との間にトラップが存在しないものと仮定して、電子の分布をシミュレートした結果を印加電圧と電流密度との関係として示したものである。図5(b)に示すように、シミュレーション結果と実測値との乖離は少なく、シミュレーションが実施例の内部状態を再現している可能性の高いことが示されている。
以上の結果により、実施例の効果が、電子輸送層19と電子注入制御層18との間に存在するトラップ準位により生み出されていると考えられる。
[3.3 トラップ準位に関する考察]
上記トラップサイトにより電子注入性の温度依存性が低下することは、以下のように考えられる。
まず、電子注入制御層18が存在しない場合には、図6(c)に示されるように、陰極21側から電子輸送層19に注入された電子は、注入障壁なく発光層17に注入される。その一方、電子注入制御層18が存在する場合には、図6(a)または(b)に示されるように、電子輸送層19から電子注入制御層18への注入障壁によって、注入量が制御できる。
次に、電子輸送層19と電子注入制御層18との間に、電子輸送層19のLUMO準位より低いトラップ準位を有するトラップサイトが十分に存在する場合と存在しない場合とを比較する。
電子輸送層19と電子注入制御層18との間に、電子輸送層19のLUMO準位より低いトラップ準位を有するトラップサイトが十分に存在する場合、図6(a)に示されるように、陰極21側から電子輸送層19に注入された電子は、トラップサイトを経由して電子注入制御層18に注入される。したがって、トラップ準位から電子注入制御層18のLUMO準位への注入障壁が、電子注入性に大きく影響する。
ここで、電子輸送層19のLUMO準位とトラップ準位とのエネルギー差Etが50meV以上である場合は、トラップサイトから電子輸送層19のLUMO準位への遷移に必要なエネルギーが熱エネルギーkTより十分大きいため、トラップサイトが電子注入性に与える影響が大きくなる。なお、電子の存在確立がボルツマン分布に従うとした場合、95℃において、Etが35meV以上であれば、トラップサイトから電子輸送層19のLUMO準位に遷移する電子の存在確立は1/e以下となる。すなわち、電子輸送層19のLUMO準位とトラップ準位とのエネルギー差Etは、下記の式(3)を満たすことが好ましい。また、エネルギー差Etは、下記の式(4)を満たすことが好ましい。
Et≧35meV …式(3)
Et≧50meV …式(4)
また、電子輸送層19と電子注入制御層18との界面に蓄積する蓄積電荷Qが大きい場合には、トラップが十分に機能しないと考えられる。蓄積電荷Qが大きい場合には、図6(b)に示されるように、蓄積電荷Qによってトラップサイトが占有される確率が高まるため、トラップサイトを経由せず電子輸送層19のLUMO準位から電子注入制御層18のLUMO準位に直接遷移する電子の割合が増加する。すなわち、蓄積電荷Qによってトラップサイトが占有されることにより、トラップサイトによる電子注入性の制御効果が抑制される。トラップサイトの密度は、電子輸送層19の電子密度の0.1%以上であることが好ましい。例えば、電子輸送層19の電子密度が1×1014個/cm3である場合には、1×1011個/cm3以上であることが好ましい。さらに、蓄積電荷Qは小さいことが好ましい。ここで、電子輸送層19の誘電率をε19、伝導度をσ19、電子注入制御層18の誘電率をε18、伝導度をσ18としたとき、蓄積電荷QはΔΤ(=ε19/σ19-ε18/σ18)に比例する(マクスウェル・ワグナー効果)。したがって、ΔΤはより小さいことが好ましく、従来材料の1/2以下が好ましい。
なお、電子が電子輸送層19および/または電子注入制御層18をトンネリング効果によって電子が通過しない場合には、当然ながら、電子輸送層19と電子注入制御層18との界面のトラップサイトが有効に機能しないと考えられる。したがって、電子輸送層19と電子注入制御層18は、電子のトンネリングを許容しない膜厚を有することが必要であり、膜厚は少なくとも1nm以上であることが好ましい。
[3.4 発光中心]
ここで、発光層における発光中心について説明する。発光中心とは、以下に説明する発光のピークとなる代表位置を指す。発光ピークの位置は、発光材料の励起子が集中する位置であり、一般に、発光層の陰極側の界面と、発光層の陽極側の界面との、いずれか一方、または、両方である。発光層におけるホールの移動度が電子の移動度より十分に高い場合、ホールは発光層の陰極側の界面まで移動する一方で、電子は発光層の陰極側の界面付近で再結合によって消費されるため、励起子は発光層の陰極側の界面付近で集中的に生成する。一方、発光層における電子の移動度がホールの移動度より十分に高い場合、電子は発光層の陽極側の界面まで移動する一方で、ホールは発光層の陽極側の界面付近で再結合によって消費されるため、励起子は発光層の陽極側の界面付近で集中的に生成する。また、発光層におけるホールの移動度と電子の移動度との関係によっては、励起子が、発光層の陰極側の界面付近と陽極側の界面付近の双方で集中的に生成することもある。一般には、励起子が集中的に生成した位置が、そのまま発光ピークの位置となる。
なお、発光材料の励起子の拡散特性が高く、励起子寿命が長い場合は、励起子の拡散により、励起子が集中的に生成する位置と発光ピークの位置が必ずしも一致しない場合がある。この場合は、励起子が集中的に生成する位置ではなく、励起子のエネルギーから光子のエネルギーへの遷移が集中的に発生する位置が発光中心となる。
[4.有機EL素子の製造方法]
有機EL素子の製造方法について、図面を用いて説明する。図7(a)~図10(c)は、有機EL素子を備える有機EL表示パネルの製造における各工程での状態を示す模式断面図である。図11は、有機EL素子を備える有機EL表示パネルの製造方法を示すフローチャートである。
なお、有機EL表示パネルにおいて、画素電極(下部電極)は有機EL素子の陽極として、対向電極(上部電極、共通電極)は有機EL素子の陰極として、それぞれ機能する。
(1)基板11の形成
まず、図7(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成する(図11のステップS10)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
次に、図7(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(図11のステップS20)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するように形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
(2)陽極13の形成
次に、図7(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する(図11のステップS31)。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる
次に、図7(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極として陽極13を形成する(図11のステップS32)。この陽極13は、各有機EL素子の陽極として機能する。
なお、陽極13の形成方法は上述の方法に限られず、例えば、画素電極材料層130上に正孔注入材料層150を形成し、画素電極材料層130と正孔注入材料層150とをエッチングによりパターニングすることで、陽極13と正孔注入層15とをまとめて形成してもよい。
(3)隔壁14の形成
次に、図7(e)に示すように、陽極13および層間絶縁層12上に、隔壁14の材料である隔壁用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を陽極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される(図11のステップS41)。そして、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで隔壁14を形成し(図8(a)、図11のステップS42)、隔壁14を焼成する。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。隔壁14の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
また、隔壁14の形成工程においては、さらに、隔壁14の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部14aに塗布するインク(溶液)に対する隔壁14の接触角を調節する目的で、もしくは、表面に撥水性を付与する目的で行われる。
(4)正孔注入層15の形成
次に、図8(b)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔注入層15の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド401のノズルから吐出して開口部14a内の陽極13上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔注入層15を形成する(図11のステップS50)。
(5)正孔輸送層16の形成
次に、図8(c)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド402のノズルから吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(図11のステップS60)。
(6)発光層17の形成
次に、図9(a)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド403のノズルから吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って発光層17を形成する(図11のステップS70)。
(7)電子注入制御層18の形成
次に、図9(b)に示すように、発光層17および隔壁14上に、電子注入制御層18を形成する(図11のステップS80)。電子注入制御層18と電子輸送層19との界面に、電子輸送層19のLUMO準位より50meV以上低い電子トラップ準位が、動作中における電子輸送層19の電子密度の0.1%以上存在する。したがって、トラップ準位が生成しやすいよう、電子注入制御層18と電子輸送層19との間で結晶格子が不整合であるよう、電子注入制御層18の材料を選択することが好ましい。また、電子輸送層19の誘電率をε19、伝導度をσ19、電子注入制御層18の誘電率をε18、伝導度をσ18としたとき、ΔΤ(=ε19/σ19-ε18/σ18)が小さくなるよう、特に、従来材料の1/2以下となるよう、電子注入制御層18の材料を選択することが好ましい。
電子注入制御層18は、例えば、電子注入制御層18の材料となる有機化合物を蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(8)電子輸送層19の形成
次に、図9(c)に示すように、電子注入制御層18上に、電子輸送層19を形成する(図11のステップS90)。電子注入制御層18と電子輸送層19との界面に、電子輸送層19のLUMO準位より50meV以上低い電子トラップ準位が、動作中における電子輸送層19の電子密度の0.1%以上存在する。したがって、トラップ準位が生成しやすいよう、電子注入制御層18と電子輸送層19との間で結晶格子が不整合であるよう、電子輸送層19の材料を選択することが好ましい。また、電子輸送層19の誘電率をε19、伝導度をσ19、電子注入制御層18の誘電率をε18、伝導度をσ18としたとき、ΔΤ(=ε19/σ19-ε18/σ18)が小さくなるよう、特に、従来材料の1/2以下となるよう、電子輸送層19の材料を選択することが好ましい。
電子輸送層19は、例えば、電子輸送性の有機材料を蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(9)電子注入層20の形成
次に、図10(a)に示すように、電子輸送層19上に、電子注入層20を形成する(図11のステップS100)。電子注入層20は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属またはその化合物を共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(10)陰極21の形成
次に、図10(b)に示すように、電子注入層20上に、陰極21を形成する(図11のステップS110)。陰極21は、ITO、IZO、銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。なお、陰極21は、各有機EL素子の陽極に共通して対向する陰極として機能する。
(11)封止層22の形成
最後に、図10(c)に示すように、陰極21上に、封止層22を形成する(図11のステップS120)。封止層22は、SiON、SiN等を、スパッタリング法、CVD法などにより成膜することにより形成することができる。なお、SiON、SiNなどの無機膜上に封止樹脂層をさらに塗布、焼成等により形成してもよい。
なお、封止層22の上にカラーフィルタや上部基板を載置し、接合してもよい。
[5.有機EL表示装置の全体構成]
図12は、有機EL表示パネル100を備えた有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。図12に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを含む構成である。駆動制御部200は、4つの駆動回路210~240と、制御回路250とから構成されている。
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
[6.その他の変形例]
(1)上記実施の形態では、発光層17、電子注入制御層18、電子輸送層19、電子注入層20の順に積層されるとしたが、層の種類や積層順はこれに限られない。例えば、発光層17と電子注入制御層18との間にホールブロック層40など他の中間層が存在してもよいし、電子輸送層19が発光層17と電子注入制御層18との間に存在してもよい。例えば、図13(a)のバンドダイアグラムに示すように、発光層17、ホールブロック層40、電子輸送層19、電子注入制御層18、電子注入層20のように積層してもよい。この場合、電子注入層20と電子注入制御層18との間に電子注入障壁が存在し、かつ、電子注入層20のLUMO準位より35meV以上低い、または、50meV以上低い、トラップ準位を持つトラップサイトが、電子注入層20の電子密度の0.1%以上の密度で存在していることが好ましい。なお、発光層17と電子注入制御層18との間には任意の中間層が存在してよく、また、一つも中間層がないとしてもよい。同様に、電子注入制御層18の陰極側に接する中間層は電子輸送層19、電子注入層20に限らず、(i)当該中間層のLUMO準位が電子注入制御層18のLUMO準位より低い、(ii)電子注入制御層18と当該中間層との間に、当該中間層のLUMO準位より35meV以上低い、または、50meV以上低い、トラップ準位を持つトラップサイトが、当該中間層の電子密度の0.1%以上の密度で存在する、の条件を満たす中間層であれば、任意の中間層であってよい。なお、電子のトンネリングを防ぐため、電子注入制御層18と当該中間層の膜厚は、いずれも、1nm以上であることが好ましい。
(2)上記実施の形態において、発光層17においてホール輸送性が電子輸送性より高いとしたが、発光層17において電子輸送性がホール輸送性より高い場合においても、本開示に係る構成が可能である。
図13(b)は、発光層17において電子輸送性がホール輸送性より高い場合におけるバンドダイアグラムである。この場合、正孔輸送層16と発光層17との間に、正孔注入制御層31を設ける。このとき、正孔輸送層16と正孔注入制御層31との間に、正孔輸送層16のHOMO準位より35meV以上高い、または、50meV以上高い、トラップ準位165を持つトラップサイトが、正孔輸送層16のホール密度の0.1%以上の密度で存在することが好ましい。当該構成により、実施の形態と同様に、発光層17へのホール注入性を制御することが可能となる。
なお、上述の(1)と同様、正孔注入制御層31は発光層17と直接接している必要はなく、正孔注入制御層31と発光層17との間に電子ブロック層等の任意の中間層が存在してよい。また、正孔注入制御層31の陽極側に接する中間層は正孔輸送層16に限られず、(i)当該中間層のHOMO準位が正孔注入制御層31のHOMO準位より高い、(ii)正孔注入制御層31と当該中間層との間に、当該中間層のHOMO準位より35meV以上高い、または、50meV以上高い、トラップ準位を持つトラップサイトが、当該中間層のホール密度の0.1%以上の密度で存在する、の条件を満たす中間層であれば、任意の中間層であってよい。なお、ホールのトンネリングを防ぐため、正孔注入制御層31と当該中間層の膜厚は、いずれも、1nm以上であることが好ましい。
(3)上記実施の形態においては、有機EL表示パネルはトップエミッション構成であるとしたが、陽極を光透過型電極、陰極を光反射型電極とすることでボトムエミッション構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、陽極が画素電極、陰極が対向電極であるとしたが、陰極が画素電極、陽極が対向電極であるとしてもよい。
また、上記実施の形態においては、正孔注入層、正孔輸送層、発光層を塗布方式で形成、陽極、電子注入制御層、電子輸送層、電子注入層、陰極を蒸着方式で形成するとしたが、電極及び各機能層は任意の成膜方法により成膜されてよい。
以上、本開示に係る有機発光パネルおよび表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本発明は、長寿命の有機EL素子およびそれを備える有機EL表示パネル、表示装置を製造するのに有用である。
1 有機EL素子
13 陽極
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子注入制御層
19 電子輸送層
20 電子注入層
21 陰極
100 有機EL表示パネル
1000 有機EL表示装置

Claims (10)

  1. 陽極と、発光層と、中間層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、
    前記中間層の前記発光層側に接して配される電子注入制御層をさらに備え、
    前記中間層と前記電子注入制御層との界面にトラップサイトが形成され、
    前記トラップサイトのトラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より35meV以上低く、
    前記トラップサイトの密度は、前記中間層における電子密度の0.1%以上である
    ことを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記トラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より50meV以上低い
    ことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記電子注入制御層の膜厚は1nm以上である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子。
  4. 前記中間層の膜厚は1nm以上である
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  5. 前記電子注入制御層は前記発光層と接しており、
    前記電子注入制御層に含まれる機能性材料のLUMO準位は、前記発光層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高く、かつ、前記中間層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高い
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  6. 前記電子注入制御層に含まれる機能性材料の最高被占有軌道(HOMO)準位は、前記発光層に含まれる機能性材料のHOMO準位より低い
    ことを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子。
  7. 前記電子注入制御層の前記発光層側に接して配される第2中間層をさらに備え、
    前記電子注入制御層に含まれる機能性材料のLUMO準位は、前記第2中間層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高く、かつ、前記中間層に含まれる機能性材料のLUMO準位より高い
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の有機EL素子を基板上に複数備える
    有機EL表示パネル。
  9. 陽極と、中間層と、発光層と、陰極とがこの順に積層されてなる有機EL素子であって、
    前記中間層の前記発光層側に接して配される正孔注入制御層をさらに備え、
    前記中間層と前記正孔注入制御層との界面にトラップサイトが形成され、
    前記トラップサイトのトラップ準位は前記中間層に含まれる機能性材料のHOMO準位より35meV以上高く、
    前記トラップサイトの密度は、前記中間層における正孔密度の0.1%以上である
    ことを特徴とする有機EL素子。
  10. 基板を準備し、
    前記基板の上方に陽極を形成し、
    前記陽極の上方に発光層を形成し、
    前記発光層の上方に電子注入制御層を形成し、
    前記電子注入制御層上に中間層を形成し、
    前記中間層の上方に陰極を形成する有機EL素子の製造方法であって、
    前記電子注入制御層と前記中間層との界面に、前記中間層に含まれる機能性材料の最低空軌道(LUMO)準位より35meV以上低い準位を有するトラップサイトを、前記中間層における電子密度の0.1%以上の密度で形成する
    ことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
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