JP2022094934A - 電解質膜、触媒層付電解質膜、膜電極複合体および固体高分子形燃料電池 - Google Patents

電解質膜、触媒層付電解質膜、膜電極複合体および固体高分子形燃料電池 Download PDF

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【課題】電解質膜の機械特性を向上させることにより、良好な乾湿サイクル耐久性を実現する電解質膜を提供することを目的とする。【解決手段】多孔質基材と、高分子電解質とを含む電解質膜であって、前記多孔質基材は筋状構造を有している電解質膜。【選択図】図1

Description

本発明は、電解質膜、当該電解質膜両面を触媒層が挟持してなる触媒層付電解質膜、当該電解質膜を含む膜電極複合体および当該電解質膜を含む固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池やレドックスフロー電池などに使用される固体高分子電解質膜は、耐久性を高めるために多孔質基材と複合化することが知られている。例えば、多孔質基材に高分子電解質を含浸(充填)させた複合層の片面もしくは両面に高分子電解質層を設けた電解質膜が提案されている(特許文献1~4)。
再公表特許WO2014/034415号公報 特開2007-329015号公報 特開2006-202532号公報 特開2005-44611号公報
しかしながら、上記した従来の電解質膜は、例えば、固体高分子形燃料電池等に適用した場合、含水状態における機械特性が不十分であり、物理耐久性が不足する課題があった。
そこで、本発明の目的は、かかる背景に鑑み、乾燥状態と含水状態のいずれにおいても良好な機械特性を有する電解質膜を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明の電解質膜は、次の構成を有する。すなわち、
多孔質基材と、高分子電解質とを含む電解質膜であって、前記多孔質基材は筋状構造を有している電解質膜である。
また、好ましく、その両面に触媒層が積層された触媒層付電解質膜である。
また、前記の電解質膜を含んだ膜電極複合体とすることができ、また、前記の電解質膜を含んだ固体高分子形燃料電池とすることができる。
本発明は、乾燥状態と含水状態のいずれにおいても良好な機械特性を有する電解質膜を提供することができる。本発明の電解質膜を燃料電池に適用することによって、燃料電池の乾湿サイクル耐久性を向上させることができる。
本発明の電解質膜の、高分子電解質が被覆された表面側からみたデジタルマイクロスコープ画像である。
以下、本発明について詳細に説明する。以下、本明細書において「~」の記載は、その両端の数値を含む範囲を表すものとする。
[電解質膜]
本発明の電解質膜は、多孔質基材と、高分子電解質を含んでおり、前記の多孔質基材は筋状構造(当該筋状の構造を以下、「本筋状構造」と表記することがある)を有している。
図1は、本発明の一態様である電解質膜の、高分子電解質が存在している側の表面をデジタルマイクロスコープで観察した画像を示したものである。画像には、電解質膜を通して多孔質基材に存在する複数の本筋状構造(1a)~(1f)を観察することができる。なお、図1では、主要な本筋状構造に符号を付した。
なお、多孔質基材の外側に存在する高分子電解質による層の厚みが小さい場合は、本筋状構造を反映した凹凸が高分子電解質の表面に表れることがある。本筋状構造の少なくとも1つは、長さ10μm以上を有していることが好ましい。長さ10μm以上の本筋状構造を有することにより、含水時における電解質膜の膨潤を抑制することにより乾湿サイクル耐久性を向上させることができる。
本発明において、本筋状構造とは、電解質膜において多孔質基材に存在する構造的特徴である。本発明の電解質膜の顕微鏡観察において、本筋状構造は、幅0.2μm以上である線状の構造体が0.35μm以上の平均幅を有していることを特徴とする。
本発明の電解質膜は、幅0.5μm以上の本筋状構造を表面1mmあたり100~2000本有していることが好ましく、200~2000本有していることがより好ましく、200~1000本有していることが特に好ましい。本筋状構造の数が上記好ましい範囲内である場合、プロトン伝導度が高く且つ含水時における膨潤及び軟化を抑制することにより優れた乾湿サイクル耐久性を有する電解質膜を得ることができる。
本筋状構造の平均長さは、10~200μmがより好ましく、10~100μmが更に好ましく、15~70μmが特に好ましい。本筋状構造の平均幅(直径)は、0.4~7.0μmが好ましく、0.4~5.0μmがより好ましく、0.4~3.0μmが更に好ましく、0.5~3.0μmが特に好ましい。このような本筋状構造を有する多孔質基材とすることにより、プロトン伝導度が高く且つ含水時における膨潤及び軟化を抑制することにより優れた乾湿サイクル耐久性を有する電解質膜を得ることができる。
含水状態における電解質膜の軟化を抑制するという観点から、本筋状構造の平均長さを平均幅で除した値は、5倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、20倍以上が特に好ましい。また、上記比率は、100倍以下が好ましく、80倍以下がより好ましく、50倍以下が特に好ましい。このような本筋状構造を有する多孔質基材とすることにより、プロトン伝導度が高く且つ含水時における膨潤及び軟化を抑制することにより優れた乾湿サイクル耐久性を有する電解質膜を得ることができる。
本筋状構造は、そのうちの複数個の筋状構造において、多孔質基材表面に平行な任意の一方向に向かって略並行に配列されていることが好ましい。電解質膜がロール状または長尺のシート状である場合は、長手方向に対して略平行に複数本配列していることがより好ましい。このような配列を有することにより、高分子電解質膜としたときに含水時の膨潤及び軟化を抑制しやすくなると共に、多孔質基材が長手方向に対して高い強度を有するため、多孔質基材や電解質膜の製造において多孔質基材が搬送張力による変形が抑制されやすくなる。
ここで、長手方向(「MD」と表すことがある)は、後述の電解質膜製造工程において多孔質基材、コーター或いは支持基材を動かす方向(搬送方向)となる。一方、膜表面において長手方向に直交する方向が幅方向(「TD」と表すことがある)である。
本筋状構造は、一軸方向(例えば、幅方向)の長さ100μmあたり、1~20本観察されることが好ましく、2~20本観察されることがより好ましく、2~10本観察されることが特に好ましい。1本未満の場合、含水時の膨潤及び軟化を抑制しにくくなることがある。20本を超える場合、プロトン伝導度が低下することがある。
本発明の電解質膜は、多孔質基材と高分子電解質とを含んでいるが、これらが積層されており、また、高分子電解質の一部は多孔質基材に浸入しており(係る多孔質基材に浸入している部分(層)を「複合層」と称することがある)、他の部分(係る多孔質基材に浸入していない部分(層)を「単独層」と称することがある)は多孔質基材の外側に存在する形態をとることが一般的である。単独層は、多孔質基材の片面のみに設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよいが、両面に設けられていることがより好ましい。単独層を有することは、高分子電解質膜表面に触媒層を形成しやすくなったり触媒層や電極層と高分子電解質膜との界面抵抗を低減したりできるため、燃料電池としての性能や耐久性を向上させやすくできる。
単独層が多孔質基材の両面に設けられている場合は、少なくとも一方の単独層からの顕微鏡などを用いた観察において本筋状構造が観察されることが重要であるが、いずれの側の単独層からの観察においても本筋状構造が観察されることが好ましい。いずれの側からの観察においても本筋状構造体が観察される場合、前記複合層が高分子電解質膜の厚み方向において中央付近に存在しており、更に高分子電解質膜の厚みに対して複合層の厚みを大きくすることで、含水時の膨潤や軟化が抑制されやすくなる。
上述の観点から、本発明の電解質膜の好ましい一つの態様として、例えば、多孔質基材と高分子電解質とは、異種の材料(高分子化合物)で構成する態様が挙げられる。本発明は、上記したように、複合層にあたる部分において多孔質基材に比較的大きい本筋状構造が有されていることが重要である。
本発明の電解質膜の厚みは、特に限定されるものでないが、1μm~1000μmが好ましく、2μm~500μmがより好ましく、3μm~200μmが特に好ましい。
本発明の電解質膜は、厚み方向に光線を透過させた際のヘイズ値が20%以上45%以下であることが好ましく、25%以上45%以下であることがより好ましく、30%以上45%以下であることがさらに好ましく、35%以上45%以下であることが特に好ましい。ヘイズ値が上記範囲内である電解質膜は、本発明の筋状構造の密度並びに形状が適切な範囲であり、プロトン伝導度が高く且つ含水時における膨潤及び軟化を抑制することにより優れた乾湿サイクル耐久性を有するものである。
[複合層]
複合層は、高分子電解質が多孔質基材に浸入されて形成された、高分子電解質と多孔質基材とが複合化された層であり、例えば、多孔質基材に高分子電解質を充填(含浸)することによって得られる。
複合層における高分子電解質の充填率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。高分子電解質の充填率が50%以上の場合、電解質膜全体において連続したプロトン伝導パスを形成することにより、発電性能を向上させることができる。なお、複合層の高分子電解質の充填率は複合層の総体積に対し高分子電解質が占める割合を示す値でありイオン交換容量(IEC)より計算できる。具体的には、実施例に記載の方法で行うことができる。
本発明の電解質膜は、複合層を有することにより、面方向の寸法変化率を低下させることができる。面方向の寸法変化率を低下させることにより、燃料電池の電解質膜として用いた際に、乾湿サイクル時に電解質膜のエッジ部分等に発生する膨潤収縮によるストレスを低減し、耐久性を向上させやすくすることができる。電解質膜の面方向の寸法変化率λxyは、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
また、電解質膜における面方向の寸法変化率は、長手方向と幅方向の異方性が小さいことが好ましい。具体的には、幅方向の寸法変化率λTDに対する長手方向の寸法変化率λMDの比(λMD/λTD)が、0.5≦(λMD/λTD)≦2.0を満たすことが好ましい。
幅方向の寸法変化率λTDに対するMDの寸法変化率λMDの比(λMD/λTD)が、0.5≦(λMD/λTD)≦2.0を満たす場合、燃料電池のセルデザインが制約されず、MD、TD方向のうち寸法変化の大きい方向と直交するエッジであっても膨潤収縮によるストレスの集中が小さく、したがって当該エッジが電解質膜破断の起点になりにくく乾湿サイクル耐久性を向上させることができる。
ここで、寸法変化率とは、乾燥状態における電解質膜の寸法と湿潤状態における電解質膜の寸法の変化を表す指標であり、具体的な測定は実施例に記載の方法で行うことができる。
電解質膜における複合層の厚みは、特に限定されるものでないが、0.5μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上40μm以下がより好ましい。複合層が0.5μm以上50μm以下の場合、プロトン伝導度が高く電気短絡や燃料透過を抑制でき物理的耐久性に優れた複合高分子電解質膜を得ることができる。
[高分子電解質]
本発明で使用する高分子電解質とは、イオン性基を有することによりプロトン伝導性を有するポリマーであり、フッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質が知られており、それらのいずれでも用いることができる。
ここで、フッ素系高分子電解質とは、分子中の炭化水素基における水素の大部分または全部がフッ素原子に置換されたものを意味する。イオン性基を有するフッ素系高分子電解質の代表例としては、“ナフィオン”(登録商標)(ケマーズ(株)製)、“アクイビオン”(登録商標)(ソルベイ社製)、“フレミオン”(登録商標)(AGC(株)製)および“アシプレックス”(登録商標)(旭化成(株)製)などの市販品を挙げることができる。
これらフッ素系高分子電解質は、一般的に非常に高価且つ、ガスクロスオーバーが大きい傾向にある。そこで、機械強度、乾湿サイクル耐久性、化学的安定性などの点からも、本発明で使用する高分子電解質は炭化水素系高分子電解質であることが好ましい。すなわち、本発明において、高分子電解質がイオン性基を有する炭化水素系高分子電解質であることが好ましい。特に、本発明の複合層において、乾燥状態と含水状態のいずれにおいても優れた機械特性を有する点でも、高分子電解質が炭化水素系高分子電解質である態様は特に好ましい。
炭化水素系高分子電解質としては、主鎖に芳香環を有する芳香族炭化水素系高分子電解質が好ましい。ここで、芳香環としては、ベンゼン環やナフタレン骨格といった炭素原子と水素原子のみからなる炭化水素系芳香環だけでなく、ピリジン環やイミダゾール環、チオール環といったヘテロ環などを含んでいてもよい。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもよい。
芳香族炭化水素系高分子電解質の具体例としては、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリーレンホスフィンオキシド、ポリエーテルホスフィンオキシド、ポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリベンズチアゾール(PBT)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミドスルホンから選択される構造を芳香環とともに主鎖に有するポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有している構造の総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含む。炭化水素骨格は、これらの構造のうち複数の構造を有していてもよい。これらのなかでも、芳香族炭化水素系ポリマーとして特にポリエーテルケトン骨格を有するポリマー、すなわちポリエーテルケトン系ポリマーが最も好ましい。
高分子電解質としては、共連続様またはラメラ様の相分離構造を形成するものが好適である。このような相分離構造は、例えばイオン性基を有する親水性ポリマーとイオン性基を有さない疎水性ポリマーのような非相溶な2種以上のポリマーブレンドからなる成形体や、イオン性基を含有するセグメント(SE1)とイオン性基を含有しないセグメント(SE2)のような非相溶な2種以上のセグメントからなるブロックコポリマーなどにおいて発現し得る。共連続様およびラメラ様の相分離構造においては、親水性ドメインおよび疎水性ドメインがいずれも連続相を形成するため、連続したプロトン伝導チャネルが形成されることによりプロトン伝導性に優れる電解質膜が得られやすい。同時に、連続した疎水性骨格も形成されることにより乾燥状態だけでなく含水状態においても優れた機械特性を有する電解質膜が得られやすい。ここでドメインとは、一つの膜において、類似する物質やセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。
高分子電解質としては特に、イオン性基を含有するセグメント(SE1)と、イオン性基を含有しないセグメント(SE2)をそれぞれ1個以上有するブロックコポリマーが好ましい。ここで、セグメントとは、特定の性質を示す繰り返し単位からなる共重合体ポリマー鎖中の部分構造であって、分子量が2,000以上のものを表すものとする。ブロックコポリマーを用いることで、ポリマーブレンドと比較して微細なドメインを有する共連続様やラメラ様の相分離構造を発現させることが可能となり、より優れた発電性能、乾湿サイクル耐久性が達成できる。
以下、イオン性基を含有するセグメント(SE1)もしくはポリマーを「イオン性ブロック」と表記することがあり、またイオン性基を含有しないセグメント(SE2)もしくはポリマーを「非イオン性ブロック」と表記することがある。もっとも、本明細書における「イオン性基を含有しない」という記載は、当該セグメントもしくはポリマーが相分離構造の形成を阻害しない範囲でイオン性基を少量含んでいる態様を排除するものではない。
このようなブロックコポリマーとしては、非イオン性ブロックに対するイオン性ブロックのモル組成比(SE1/SE2)が、0.20以上であることが好ましく、0.33以上であることがより好ましく、0.50以上であることがさらに好ましい。また、モル組成比(SE1/SE2)は5.00以下であることが好ましく、3.00以下であることがより好ましく2.50以下であることがさらに好ましい。モル組成比(SE1/SE2)が、0.20以上あるいは5.00以下の場合、低加湿条件下でのプロトン伝導性が高く、尚且つ耐熱水性や乾湿サイクル耐久性に優れる複合高分子電解質膜を得ることができる。ここで、モル組成比(SE1/SE2)とは、非イオン性ブロック中に存在する繰り返し単位のモル数に対するイオン性ブロック中に存在する繰り返し単位のモル数の比を表す。「繰り返し単位のモル数」とは、イオン性ブロック、非イオン性ブロックの数平均分子量をそれぞれ対応する構成単位の分子量で除した値とする。
高分子電解質が有するイオン性基は、プロトン交換能を有するイオン性基であればよい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。イオン性基はポリマー中に2種類以上含むことができる。中でも、高プロトン伝導度の点から、ポリマーはスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基から選ばれる少なくとも1つを有することがより好ましく、原料コストの点からスルホン酸基を有することが最も好ましい。
高分子電解質のイオン交換容量(IEC)は、プロトン伝導性と耐水性のバランスから、0.1~5.0meq/gが好ましい。IECは、1.4meq/g以上がより好ましく、1.7meq/g以上がさらに好ましい。またIECは、3.5meq/g以下がより好ましく、3.0meq/g以下がさらに好ましい。IECが前記好ましい範囲内である場合、優れたプロトン伝導性と耐水性を両立することができる。
ここで、IECとは、高分子電解質の単位乾燥重量当たりに導入されたイオン性基のモル量であり、この値が大きいほどイオン性基の導入量が多いことを示す。本発明においては、IECは、中和滴定法により求めた値と定義する。中和滴定によるIECの算出は、実施例に記載の方法で行うことができる。
本発明においては、高分子電解質として芳香族炭化水素系ブロックコポリマーを用いることが特に好ましく、ポリエーテルケトン系ブロックコポリマーであることがより好ましい。特に、下記のようなイオン性基を含有する構成単位(S1)を含むセグメントと、イオン性基を含有しない構成単位(S2)を含むセグメントとを含有するポリエーテルケトン系ブロックコポリマーは特に好ましく用いることができる。
Figure 2022094934000002
一般式(S1)中、Ar~Arは任意の2価のアリーレン基を表し、Arおよび/またはArはイオン性基を含有し、ArおよびArはイオン性基を含有しても含有しなくても良い。Ar~Arは任意にイオン性基以外の基を有するものであっても良く、互いに独立して2種類以上のアリーレン基が用いられても良い。*は他の一般式(S1)で表される構成単位または他の構成単位との結合部位を表す。
Figure 2022094934000003
一般式(S2)中、Ar~Arは任意の2価のアリーレン基を表し、イオン性基を含有しない。Ar~Arは任意にイオン性基以外の基を有するものであっても良く、互いに独立して2種類以上のアリーレン基が用いられても良い。*は他の一般式(S2)で表される構成単位または他の構成単位との結合部位を表す。
ここで、Ar~Arとして好ましい2価のアリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、フェニレン基としてはo-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基の3種類があり得るが、本明細書において特に限定しない場合はこれらの総称として用いる。ナフチレン基やビフェニレン基など、その他の2価のアリーレン基についても同様である。Ar~Arは、好ましくはフェニレン基とイオン性基を含有するフェニレン基、最も好ましくはp-フェニレン基とイオン性基を含有するp-フェニレン基である。また、Ar~Arはイオン性基以外の基で置換されていてもよいが、無置換である方がプロトン伝導性、化学的安定性、乾湿サイクル耐久性の点でより好ましい。
また、十分な寸法安定性、機械強度、乾湿サイクル耐久性、燃料遮断性、耐溶剤性を得るためには、高分子電解質が結晶性を有する芳香族炭化水素系高分子電解質であることが好ましい。ここで、「結晶性を有する」とは昇温すると結晶化されうる結晶化可能な性質を有しているか、あるいは既に結晶化していることを意味する。
結晶性の有無の確認は、示差走査熱量分析法(DSC)あるいは広角X線回折によって実施される。本発明においては、製膜後にDSCによって測定される結晶化熱量が0.1J/g以上であるか、もしくは、広角X線回折によって測定される結晶化度が0.5%以上であることが好ましい。すなわち、DSCにおいて結晶化ピークが認められない場合は、既に結晶化している場合と、高分子電解質が非晶性である場合が考えられるが、既に結晶化している場合は広角X線回折によって結晶化度が0.5%以上となる。
結晶性を有する芳香族炭化水素系高分子電解質は、電解質膜の加工性が不良である場合がある。その場合、芳香族炭化水素系高分子電解質に保護基を導入し、一時的に結晶性を抑制してもよい。具体的には、保護基を導入した状態で製膜し、その後に脱保護することで、結晶性を有する芳香族炭化水素系高分子電解質を本発明において高分子電解質として用いることができる。
[多孔質基材]
本発明に用いられる多孔質基材は、電解質膜としたときに多孔質基材中に筋状構造を有している。この筋状構造(本筋状構造)は、前述したとおり電解質膜において多孔質基材に存在する構造的特徴であり、本筋状構造は電解質膜の顕微鏡観察において、幅0.2μm以上である線状の構造体が0.35μm以上の平均幅を有していることを特徴とする。
多孔質基材は、本筋状構造以外にも平均幅の小さいフィブリル構造を有しているものが好ましく、本筋状構造間が前記フィブリルにより連結されている構造を有するものがより好ましい。
前記フィブリル平均幅の2倍以上の幅を有する本筋状構造を含む多孔質基材が好ましく、フィブリル平均幅の3倍以上の幅を有する本筋状構造を含む多孔質基材がより好ましく、フィブリル平均幅の5倍以上の幅を有する本筋状構造を含む多孔質基材が更に好ましい。また、フィブリル平均幅の20倍以下の幅を有する本筋状構造を含む多孔質基材が好ましく、フィブリル平均幅の10倍以下の幅を有する本筋状構造を含む多孔質基材がより好ましい。この本筋状構造は、電解質膜表面をデジタルマイクロスコープ等の顕微鏡観察において、観察することができ、あるいは、断層写真を撮像し、画像処理によって電解質膜表面側からみた画像を得て観察することができる。その長さおよび幅は、実施例の項において記載の方法によって求められる。
当該本筋状構造を有していれば、多孔質基材を構成する材料は特に限定されない。多孔質基材を構成するに適した材料としては、例えば、炭化水素系高分子化合物を主成分とする炭化水素系多孔質基材、フッ素系高分子化合物を主成分とするフッ素系多孔質基材などが挙げられる。
炭化水素系高分子化合物としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリーレンホスフィンオキシド、ポリエーテルホスフィンオキシド、ポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリベンズチアゾール(PBT)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミドスルホン(PIS)などが挙げられる。
フッ素系高分子化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられる。
耐水性や耐薬品性、機械特性の観点から、PE、PP、PPS、PEK、PBI、PTFE、ポリヘキサフルオロプロピレン、FEP、PFAが好ましい。
フッ素系多孔質基材は、一般的に疎水性が極めて高いフッ素系高分子化合物を主成分とするため、高分子電解質と複合化することにより、電解質膜に耐水性を付与し、含水状態における機械特性を向上させ寸法変化を抑制する効果が高く、また、一般にフッ素原子含有高分子化合物は薬品への溶解性が低く化学反応に対し安定であるため、電解質膜に耐薬品性、化学的耐久性も付与することができるため好ましい。耐薬品性、化学的耐久性の観点からPTFE、ポリヘキサフルオロプロピレン、FEP、PFAがより好ましく、分子配向により高い機械強度を有することから、PTFEが特に好ましい。
耐水性の観点から、多孔質基材の総質量を100質量%としたとき、多孔質基材に含まれるフッ素原子の総質量が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。多孔質基材におけるフッ素原子含有量は、多孔質基材を燃焼させて発生したガスを吸収させた溶液のイオンクロマトグラフィーにより測定した値であるものとし、具体的には後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
多孔質基材は、X線光電子分光法(XPS)により測定される酸素原子含有量が10質量%以下であることが好ましく、酸素原子含有量が8%以下のものがより好ましく、5%以下のものが更に好ましい。酸素原子含有量が10%以下の場合、多孔質基材が良好な耐水性を有しているため、電解質膜の吸水及び膨潤による寸法変化を抑制できる。多孔質基材の酸素原子含有量は、具体的には後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
前記フッ素系多孔質基材、特に前記フッ素原子含有量が50質量%以上の物や前記酸素原子含有量が10質量%以下のものは前述の通り優れた耐水性を有しており電解質膜吸水時の寸法変化を抑制できるため、多孔質基材が本筋状構造を含むことにより電解質膜の吸水とそれに伴う寸法変化を特に大きく低減することができるので電解質膜の乾湿サイクル耐久性をより向上させることができる。
なお、電解質膜中に存在する多孔質基材の分析を行う場合、高分子電解質のみを溶解する溶媒に電解質膜を浸漬することにより多孔質基材のみを取り出すことが可能である。
多孔質基材の態様としては、(イ)空孔形成性をもったフィルムを膜面方向に延伸し微細な空孔を形成させた延伸微多孔膜、(ロ)多孔質基材の原料を溶解した溶液を調製し製膜した後、溶媒を含んだままの状態で当該原料の貧溶媒に浸漬し凝固させた湿式凝固微多孔膜、(ハ)原料溶液を紡糸した溶液紡糸ファイバーからなる不織布、(ニ)多孔質基材の原料を溶融し紡糸した溶融紡糸ファイバーからなる不織布、などが挙げられる。
溶液紡糸の方法としては、口金より高圧を加え繊維状に吐出した原料溶液を熱風により乾燥させる乾式紡糸法や、繊維状に吐出した原料溶液を当該原料の貧溶媒に浸漬し凝固させる湿式紡糸法、高電圧を引加した空間へ原料溶液を吐出し静電気により繊維状に引っ張るエレクトロスピニングなどが挙げられる。
溶融紡糸法としては、溶融した多孔質基材の原料を口金より繊維状に吐出したメルトブロー紡糸が挙げられる。
上記した多孔質基材の形態の中でも、(イ)の延伸微多孔膜が筋状構造を形成しやすいことから好ましい。
本発明の電解質膜は、多孔質基材が本筋状構造を有することを特徴とする。そして、本筋状構造を高分子電解質膜としたときに有するようするために、本発明に使用される多孔質基材は、高分子電解質が含浸される前の状態において、本筋状構造に対応する構造的特徴を有しているべきである。
本筋状構造は、多孔質基材表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で確認することができる。
本筋状構造を有する多孔質基材は、例えば、空孔形成性を有するフィルムを延伸することによって製造することができる。延伸方法としては、一軸方向に比較的強く延伸することによって、延伸方向の直交方向に本筋状構造が形成されやすくなる。上記の延伸倍率は、5~30倍が好ましく、10~25倍がより好ましく、12~20倍が特に好ましい。
空孔形成性を有するフィルム用いて多孔質基材を製造する方法として、(i)多孔質基材の樹脂材料と結晶核剤或いは微粒子を、混錬機等を用いて混合後、押し出し機等を用いて製膜し、延伸により樹脂材料と結晶核剤・微粒子表面との界面を開裂させて空孔を形成、拡大、連結させる乾式法、(ii)多孔質基材の樹脂材料と可塑剤を、混錬機等を用いて混合後、押し出し機等を用いて製膜し、可塑剤を除去し微細な無数の空孔を形成させ、延伸により前記空孔を拡大、連結させる湿式法が挙げられるが、空孔サイズや膜厚を均一に製造しやすいことから湿式法の方が好ましい。
前記湿式法を用いる際の可塑剤としては、多孔質基材の樹脂材料と相分離を起こさず均一に混合でき且つ蒸発や抽出などの手段により除去できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば流動パラフィン、ナフサ、トルエン、キシレン、ケロシンなどの炭化水素系化合物の他、アルコール類、ケトン類、エステル類、フッ素系溶剤などを用いることができる。
前記湿式法を用いる場合、製膜後可塑剤を除去する前に平板プレスやロールプレスを用いて圧延し適宜膜厚を調製しても良い。また、可塑剤を含んだ状態で延伸することもフィルムの強度や弾性率を向上させられるため好適である。
湿式法において可塑剤を除去する方法としては、可塑剤のみを溶解する溶剤を用いて抽出する方法や加熱により可塑剤のみを揮発させる方法が挙げられるが特に限定されるものではない。抽出においては、可塑剤を含むフィルムを前記溶媒に浸漬する方法や前記溶媒を流しかける方法が挙げられるが特に限定されるものではない。また、乾燥においては、熱風乾燥や真空乾燥、赤外線照射による加熱などがあり特に限定されるものではない。この中でも、安全性やコストの観点から乾燥による除去が好ましく、連続搬送によるロールフィルムの作成が容易なことから熱風乾燥と赤外線照射による加熱がより好ましく、可塑剤を含むフィルムを変形させにくいことから熱風乾燥が特に好ましい。
このようにして空孔形成性を有するフィルムを製造した後に、前記方法を用いて当該フィルムを延伸することにより本発明の多孔質基材を得ることができる。
延伸方法は、1軸延伸であっても2軸延伸であってもよいが、多孔質基材及び当該多孔質基材を複合化した高分子電解質膜の前記MD、TD異方性を低減できることから2軸延伸が好ましい。
2軸延伸するときの延伸方法として、例えば、一軸方向(例えば、TD)に比較的強く延伸することによって、直行方向(例えば、MD)に本筋状構造が形成されやすくなる。具体的には、TDの延伸倍率は、5~30倍が好ましく、10~25倍がより好ましく、12~20倍が特に好ましい。MDの延伸倍率は、1.2~10倍が好ましく、1.5~5倍がより好ましく、1.7~4倍が特に好ましい。
多孔質基材は、面内方向において前記本筋状構造間を連結し梯子状の構造を形成する細い繊維状のフィブリルを有することが好ましい。前記フィブリルは前記本筋状構造と略直交に整列しているものを含むことがより好ましい。当該構造を有することにより、面内方向において本筋状構造と平行な方向だけでなく、本筋状構造と直交する方向に対しても、特に含水状態において優れた機械特性を有する電解質膜を得ることができる。
本発明で使用する多孔質基材の厚みに特に制限はなく、電解質膜の用途によって決めるべきものであるが、0.5μm以上50μm以下の膜厚を有するものが実用的に用いられ、1μm以上40μm以下の膜厚を有するものが好ましく用いられる。
高分子電解質と複合化する前の多孔質基材の空隙率は、特に限定されないが、得られる電解質膜のプロトン伝導性と機械強度の両立の観点から、50~98%が好ましく、70~98%がより好ましい。なお、多孔質基材の空隙率Y1(体積%)は下記の数式によって求めた値と定義する。
Y1=(1-Db/Da)×100
(ここで、Daは多孔質基材を構成する原料物質の比重、Dbは多孔質基材全体の比重である。)
[複合層の好ましい態様]
高分子電解質が多孔質基材に浸入されて形成された、多孔質基材と高分子電解質とが複合化された層である複合層の部分において、多孔質基材が本筋状構造を有していることは、含水時における電解質膜の膨潤を抑制することにより乾湿サイクル耐久性を向上させることができる点で重要であり、この観点から、複合層の好ましい一つの態様として、例えば、多孔質基材と高分子電解質とは、異種の材料(高分子化合物)で構成する態様が挙げられる。
多孔質基材および高分子電解質は、前述のそれぞれの高分子化合物の中から異種の組み合わせを選択して採用することができる。上記異種の組み合わせとしては、例えば、フッ素系多孔質基材と炭化水素系電解質との組み合わせ、炭化水素系多孔質基材とフッ素系高分子電解質との組み合わせが挙げられる。
多孔質基材が本筋状構造を有していたとしても、高分子電解質を含浸させた時に、本筋状構造が破壊されることがある。そこで、上記組み合わせの中でも、高分子電解質を含浸させた時に複合層において本筋状構造が破壊され難いこと、および電解質膜の耐水性や機械特性の向上などの観点から、フッ素系多孔質基材と炭化水素系電解質との組み合わせが好ましい。
フッ素系多孔質基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)を含む多孔質基材が好ましく、特に、PTFEを含む多孔質基材が好ましい。さらに、1軸延伸もしくは2軸延伸されたフッ素系多孔質基材が好ましく、2軸延伸されたフッ素系多孔質基材がより好ましい。
炭化水素系電解質としては、主鎖に芳香環を有する芳香族炭化水素系電解質(ポリマー)が好ましく、特に、イオン性基を含有するセグメント(SE1)とイオン性基を含有しないセグメント(SE2)をそれぞれ1個以上有するブロックコポリマーが好ましい。
また、上記したフッ素系多孔質基材と炭化水素系電解質との組み合わせには、さらにノニオン性フッ素系界面活性剤を含有させることが好ましい。
フッ素系多孔質基材と炭化水素系電解質とは、親和性が高くないため、複合層の形成工程(含浸工程)における多孔質基材の筋状構造の減少や縮小化の抑制には有効であるが、その反面、複合化には好ましい組み合わせではない。複合化にノニオン性フッ素系界面活性剤を用いることによって、フッ素系多孔質基材に炭化水素系電解質を隙間なく高効率で充填(含浸)させやすくなる。
また、2層以上の複合層を有する高分子電解質膜を用いることも好適である。本態様は複数の多孔質基材を積層することにより得ることができる。この時、複数の複合層は互いに隣接していても良いし、複合層と複合層の間に後述の単独層を有していても構わない。
[ノニオン性フッ素系界面活性剤]
本発明の電解質膜は、ノニオン性フッ素系界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン性フッ素系界面活性剤を用いることにより、高分子電解質と多孔質基材との親和性が向上することにより、電解質膜を製造しやすくなるだけでなく、電解質膜における高分子電解質と多孔質基材との界面接合が強固となり乾湿サイクルにおける電解質膜の体積変化に伴う両者の界面剥離を抑制することにより燃料電池の乾湿サイクル耐久性を向上させることができる。特に炭化水素系高分子電解質とフッ素系多孔質基材を用いる場合において、両者の親和性を顕著に向上させることができるためより好ましい。
ノニオン性フッ素系界面活性剤を用いた場合、カチオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤と比較して水や酸への溶解性が低いため、燃料電池等の電気化学セルを運転している際に生成する水や酸に溶解しにくくなり、電解質膜からの溶出を抑制でき、高分子電解質と多孔質基材との親和性を長期間にわたり維持することができる。
ノニオン性フッ素系界面活性剤は、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子をフッ素原子で置換した、フッ化アルキル基、フッ化アルケニル基またはフッ化アリール基からなるフッ素含有基と、非イオン性の親媒基(親水性基または親油性基)とを有する化合物であることが好ましい。
フッ素含有基は、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の全ての水素原子をフッ素原子で置換した、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基またはパーフルオロアリール基が好ましい。
フッ素含有基としては、界面活性効果が優れることから、フッ化アルケニル基またはフッ化アリール基がより好ましく、柔軟な構造を有し高い界面活性作用を示すことから、フッ化アルケニル基がさらに好ましい。
フッ素含有基は、炭素数が2個以上であることが好ましく、4個以上であることがより好ましく、6個以上であることが特に好ましい。また、炭素数が20個以下であることが好ましく、15個以下であることがより好ましく、10個以下であることが特に好ましい。炭素数が上記好ましい範囲である場合、揮発性、水溶性が適度で電解質膜中に残存して乾湿サイクル耐久性に優れる一方、高分子電解質と相分離し難く乾湿サイクル耐久性に優れる。
具体的には、フッ化アルキル基としては、フッ化エチル基、フッ化プロピル基、フッ化ブチル基、フッ化ペンチル基、フッ化ヘキシル基、フッ化ヘプチル基、フッ化オクチル基、フッ化ノニル基、フッ化デシル基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、フッ化アルケニル基としては、フッ化エテニル基、フッ化プロペニル基、フッ化ブテニル基、フッ化ペンテニル基、フッ化ヘキセニル基、フッ化ヘプテニル基、フッ化オクテニル基、フッ化ノネニル基、フッ化デセニル基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
それらの中でも、揮発性、水溶性が低く電解質膜中に残存し易いことからフッ化ヘキシル基、フッ化ヘプチル基、フッ化オクチル基、フッ化ノニル基、フッ化デシル基、フッ化ヘキセニル基、フッ化ヘプテニル基、フッ化オクテニル基、フッ化ノネニル基、フッ化デセニル基がより好ましい。ここで、フッ化エチル基としては、1官能基中に含まれるフッ素原子の数によりモノフルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基の5種類の官能基が有り得るが、本明細書においてフッ化エチル基はこれらの総称として用いる。フッ化プロピル基やフッ化ブチル基などのその他の官能基についても同様である。また、前記ジフルオロエチル基の場合、2個のフッ素原子を有する官能基であり1,1-ジフルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基という3種類の構造異性体が存在するが、本明細書において、「ジフルオロエチル基」はこれらの総称として用いる。「トリフルオロエチル基」や「テトラフルオロエチル基」などのその他の基についても同様である。
フッ素含有基の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状等であることができるが、中でも分岐鎖状の構造を有する場合、フッ素化合物同士の相互作用が弱くなり、表面張力が低下し易いため好ましい。本発明においては、特に下記式(F1)に示す構造からなるフッ素含有基を有する界面活性剤が特に好ましい。
Figure 2022094934000004
式(F1)において*は他の原子団との結合箇所を意味する。
ノニオン性フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を1分子内に10質量%以上有する化合物が好適に用いられる。フッ素原子を20質量%以上有する化合物はより好ましく、フッ素原子を40質量%以上有する化合物は更に好ましい。1分子内のフッ素原子含有量が10質量%以上の場合、高分子電解質と多孔質基材との親和性が良好であり、優れた発電性能を有する電解質膜を得ることができる。また、水や酸への溶解性が低いため燃料電池等の電気化学セルを運転している際に生成する水や酸に溶解しにくくなり、電解質膜からの溶出を抑制でき、高分子電解質と多孔質基材との親和性を長期間にわたり維持することができる。
親媒基は、親水性基あるいは親油性基であることができるが、親水性基であることが好ましい。
親水性基は、酸素、窒素、リン、硫黄およびホウ素からなる群より選択される親水性元素を有する非イオン性基であれば特に限定されないが、ポリエーテル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、亜リン酸エステル基またはリン酸エステル基を含む基であることが好ましく、イオン性基との水素結合を形成することにより高分子電解質との親和性に優れ且つ化学的安定性にも優れることからポリエーテル基を含む基であることがより好ましい。その中でも、親水性基が下記一般式(C1)に示すポリアルキルエーテル構造または下記一般式(C2)に示すポリアクリレート構造を有する基であることが好ましく、特に高分子電解質との親和性に優れることから下記一般式(C1)に示すポリアルキルエーテルであることがより好ましい。
Figure 2022094934000005
一般式(C1)においてq、rはr=2qを満たす自然数であり、sはアルキルエーテル構造の繰り返し数を意味する1~1,000の整数である。一般式(C2)において、Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基から選ばれる少なくとも一種の基であり、tはアクリレート構造の繰り返し数を意味する1~1,000の整数である。(C1)または(C2)においてsまたはtが2以上である場合、複数のアルキルエーテル構造またはアクリレート構造は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
親油性基としては、フッ素原子を含まない、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基が挙げられる。
本発明において、ノニオン性フッ素系界面活性剤が、150℃における蒸気圧が2kPa未満の化合物であることが好ましく、150℃における蒸気圧が1kPa以下の化合物がより好ましく、沸点を有さない、すなわち沸騰することなく熱分解を開始する化合物が最も好ましい。本発明においては特に、界面活性剤が、熱重量示差熱分析における5%重量減少温度が150℃以上の化合物であることが好ましい。かかる界面活性剤であれば製膜時に揮発・分解しないため電解質膜中に残存させることができる。
本発明において、ノニオン性フッ素系界面活性剤が、重量平均分子量1,000以上の化合物であることが好ましく、1,500以上の化合物であることがより好ましく、2,000以上の化合物であることが更に好ましい。また、ノニオン性フッ素系界面活性剤が、重量平均分子量10,000以下の化合物であることが好ましく、8,000以下の化合物であることがより好ましく、5,000以下の化合物であることが更に好ましい。界面活性剤の重量平均分子量が上記好ましい範囲の場合、揮発性が適度で水などの溶媒に溶解し難くなるため、高分子電解質と多孔質基材や後述の触媒層との親和性を保ち、両者の界面において剥離・破断し難く耐久性に優れる一方、電解質膜の中で界面活性剤のみが凝集して海島様の相分離構造を形成し難く、界面活性剤と高分子電解質や多孔質基材との界面において破断し難く耐久性に優れる。
ノニオン性フッ素系界面活性剤としては、フッ素含有基の分子量が200以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、1,000以上であることが更に好ましい。また、フッ素含有基の分子量が5,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがより好ましく、2,000以下であることが更に好ましい。フッ素含有基の分子量が上記好ましい範囲の場合、フッ素含有基における分子鎖の柔軟性や自由度に優れることにより、多孔質基材や触媒層との親和性を保ち、高分子電解質との界面において剥離・破断し難く耐久性に優れる一方、電解質膜の中で界面活性剤のみが凝集して海島様の相分離構造を形成し難く、界面活性剤と高分子電解質や多孔質基材との界面において破断し難く耐久性に優れる。
親媒基として親水性基を有する界面活性剤の場合、親水性基の分子量が100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましい。また、親水性基の分子量が4,000以下であることが好ましく、2,500以下であることがより好ましく、1,500以下であることが更に好ましい。親水性基の分子量が上記好ましい範囲の場合、親水性基における分子鎖の柔軟性や自由度に優れることにより、高分子電解質との親和性を保ち、多孔質基材との界面において破断し難く耐久性に優れる一方、水溶性が適度であることにより燃料電池等の電気化学セルを運転している際に生成する水や酸に溶解し難く電解質膜からの溶出を防ぐため、高分子電解質と多孔質基材との親和性を保ち、寸法変化時に高分子電解質と多孔質基材との界面において破断し難く耐久性に優れる。
また、ノニオン性フッ素系界面活性剤は、水、10%硫酸、10%水酸化ナトリウム水溶液のいずれかへ溶解しない化合物であることが好ましく、水に溶解しない化合物であることより好ましく、これらのいずれにも溶解しない化合物であることが最も好ましい。ここで、溶解しないとは、25℃における飽和溶解度が0.1質量%未満であることを意味する。界面活性剤が当該溶媒および/または溶液に溶解しない場合、燃料電池等の電気化学セルを運転している際に生成する水や酸に溶解し難くなり電解質膜からの溶出を抑制できるため、高分子電解質と多孔質基材や触媒層との親和性を保持できるので、寸法変化時に高分子電解質と多孔質基材や触媒層との界面における剥離・破断に起因する耐久性の低下を抑制できる。
本発明に用いられるノニオン性フッ素系界面活性剤としては、例えば、DIC(株)製の“メガファック”(登録商標)F-251、同F-253、同F-281、同F-430、同F-477、同F-551、同F-552、同F-553、同F-554、同F-555、同F-556、同F-557、同F-558、同F-559、同F-560、同F-561、同F-562、同F-563、同F-565、同F-568、同F-570、同F-572、同F-574、同F-575、同F-576、同R-40、同R-40-LM、同R-41、同R-94、同RS-56、同RS-72-K、同RS-75、同RS-76-E、同RS-76-NS、同DS-21、同F444、同TF-2066、AGC(株)製の“サーフロン”(登録商標)S-141、同S-145、同S-241、同S-242、同S-243、同S-386、同S-420、同S-611、同S-651、ネオス(株)製の“フタージェント”(登録商標)251、同208M、同212M、同215M、同250、同209F、同222F、同245F、同208G、同218GL、同240G、同212P、同220P、同228P、同FTX-218、同DFX-18、同710FL、同710FM、同710FS、同730FL、同730FM、同610FM、同683、同601AD、同601ADH2、同602A、同650AC、同681、三菱マテリアル電子化成(株)製のEF-PP31N04、EF-PP31N09、EF-PP31N15、EF-PP31N22、3M社製のFC-4430、FC-4432、OMNOVA SOLUTIONS社製のPF-151N、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520、PF-652-NF、PF-3320、ダイキン工業(株)製のTG-9131、“ゼッフル”(登録商標)GH-701、ソルベイジャパン(株)製の“フルオロリンク”(登録商標)A10-P等を挙げることができる。
電解質膜におけるノニオン性フッ素系界面活性剤の含有量は、電解質膜に含まれる高分子電解質の総量に対する質量比として、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましい。また、上記質量比は、0.20以下が好ましく、0.10以下がより好ましい。上記質量比が上記好ましい範囲の場合、高分子電解質と多孔質基材や触媒層との親和性を保ち、寸法変化時に高分子電解質と多孔質基材や触媒層との界面において剥離・破断し難く耐久性に優れる一方、ノニオン性フッ素系界面活性剤の量が適度で電解質膜のプロトン伝導度に優れる。なお、ここでのノニオン性フッ素系界面活性剤の含有量は、完成した電解質膜中に残存しているノニオン性フッ素系界面活性剤の量であり、製造過程で脱落したノニオン性フッ素系界面活性剤は除外した量を意味するものとする。
電解質膜に含まれるノニオン性フッ素系界面活性剤の分析方法としては、高分子電解質膜と共に界面活性剤を所定の溶媒に溶解させる方法を挙げることができる。高分子電解質膜の溶液及び溶媒を除去した乾固物に対して、赤外線分光(IR)分析、1H核磁気共鳴(NMR)分析、19F-NMR分析、MALDI-MS分析、熱分解GC/MS分析を行うことにより、各種界面活性剤の化学構造を分析するとともに、界面活性剤の含有量を算出することができる。また、前記溶液及び乾固物に対して溶媒抽出や再沈殿といった一般的な精製処理を施しノニオン性フッ素系界面活性剤のみを抽出した上での分析も好適である。
前記ノニオン性界面活性剤の分析に用いる溶媒は、電解質膜を構成する高分子電解質種によって適宜選択することができる。例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、パークロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化炭化水素系溶媒、水などが好適に用いられる。また、これらの溶媒を二種以上の混合した混合溶媒を用いてもよい。ここで、「プロパノール」としては、プロパン分子に含まれる水素原子の内一つがヒドロキシル基に置換された構造を有しており、1-プロパノール、2-プロパノールという2種類の構造異性体が存在するが、本明細書において「プロパノール」はこれらの総称として用いる。「ブタノール」や「キシレン」などのその他の溶媒についても同様である。
電解質膜が不溶性である場合は異なる分析手法を用いることができる。ノニオン性フッ素系界面活性剤を含む電解質膜そのものに対してIR分析、固体NMR分析、MALDI-MS分析、熱分解GC/MS分析を行うことにより界面活性剤の化学構造や含有量を分析することができる。電解質膜を溶媒に浸漬しノニオン性フッ素系界面活性剤のみを溶解、抽出した上での分析も好適である。
本発明に用いられるノニオン性フッ素系界面活性剤としては、不純物として金属類を含有しないものが好ましい。ここで金属類とは金属元素の単体や金属イオン、非イオン性金属化合物、金属酸化物などが挙げられるがこれらに限定されない。金属類を含まない場合、ノニオン性フッ素系界面活性剤の親水基や親油基と金属類との相互作用が起こりにくくなるため、高分子電解質膜中でも高い自由度を有しており界面活性剤としての機能を保持することができるため、寸法変化時に高分子電解質と多孔質基材や触媒層との界面における剥離・破断に起因する耐久性の低下を抑制できる。
[単独層]
高分子電解質が多孔質基材に浸入していない部分(層)である単独層は、先述の複合層に隣接して存在することとなる。単独層は多孔質基材の両面において形成されていることが好ましい。単独層を有することにより、電解質膜と電極の接合性を向上させ、界面での剥離を抑制することができる。
単独層に用いられる高分子電解質としては、前述の複合層に用いられる高分子電解質と同様のものが挙げられる。単独層に用いられる高分子電解質と複合層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよく、すなわち、高分子電解質による層は2種以上の高分子電解質を用いて形成しても構わないが、単独層と複合層は同じ高分子電解質が用いられていることが好ましい。
また、複合層の両面に高分子電解質の層を設ける場合、一方の高分子電解質層と複合層の高分子電解質を同一にし、他方の高分子電解質層には異なる高分子電解質を用いることができる。この場合、他方の高分子電解質層に用いられる高分子電解質イオン交換容量(IEC)は、複合層の高分子電解質のイオン交換容量(IEC)より大きくすることも小さくすることもできるが、小さいことが好ましい。
高分子電解質層の一層あたりの厚みは、0.1~20.0μmが好ましく、0.3~10.0μmがより好ましく、0.5~5.0μmが特に好ましい。
[電解質膜の製造方法]
本発明の電解質膜の製造方法としては、多孔質基材の片面あるいは両面から高分子電解質を含浸させる方法が一般的に用いうる。含浸する高分子電解質の液は適度な流動性を有していることが好ましく、溶液あるいは分散液として用いることができる。この際に、単独層は、多孔質基材には含浸されない部分を残すようにして高分子電解質を多孔質基材に含浸して一回の操作で複合層とそれに隣接する単独層を設ける方法や、多孔質基材中に高分子電解質を含浸して複合層を形成し、該複合層が形成された面の側に高分子電解質を付与して複合層とそれに隣接する単独層を設ける方法などにより形成することができる。
高分子電解質を付与する方法について、さらに詳細に説明する。
複合層は、例えば、高分子電解質溶液を多孔質基材に含浸した後に、乾燥させて高分子電解質溶液に含まれる溶媒を除去することによって得ることができる。
上記含浸方法としては、次のような方法が挙げられる。
(1)高分子電解質溶液の浴に多孔質基材を浸漬させ、引き上げた多孔質基材から余剰の高分子電解質溶液を除く方法
(2)多孔質基材上に高分子電解質溶液を流延塗布する方法
(3)高分子電解質溶液を流延塗布した支持基材上に多孔質基材を貼り合わせて含浸させる方法
多孔質基材に高分子電解質溶液を付与する際、多孔質基材の一方の面に流延塗布を行って後に他方の面に流延塗布を行っても良く、両方の面から同時に流延塗布を行っても良い。
高分子電解質溶液を流延塗布する方法としては、ナイフコート、ダイレクトロールコート、マイヤーバーコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、バキュームダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷、インクジェットコートなどの手法が適用できる。ここで高分子電解質溶液を流延塗布するために使用する装置をコーターと呼ぶ。
支持基材上に高分子電解質溶液を塗布した後は、乾燥工程を経ることで、複合層を形成することができる。乾燥工程では、多孔質基材に含侵した高分子電解質溶液の塗膜を加熱し、溶媒を蒸発させる。加熱手段は、溶媒が蒸発できれば特に限定されることはないが、例えば、オーブンやヒーター等の加熱装置、赤外線、温風等を用いて複合層の近傍の温度を制御する装置等を用いることができる。また、基材を介して塗膜に熱を伝導してもよい。加熱の温度範囲は、溶媒の沸点に近く、電解質のガラス転移温度以下であることが好ましい。また、加熱せず、減圧や気流の導入のみで溶媒を除去することも可能である。
乾燥工程における乾燥時間や乾燥温度は適宜実験的に決めることができるが、少なくとも支持基材から剥離しても自立膜になる程度に乾燥することが好ましい。乾燥の方法は支持基材の加熱、熱風、赤外線ヒーター等の公知の方法が選択できる。乾燥温度は、高分子電解質や界面活性剤の分解を考慮して200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
溶液中の高分子電解質は、イオン性基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンと塩を形成している状態のものを用いてもよい。この場合、基材上に膜を形成し乾燥工程を経た後に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンをプロトンと交換する工程を有することも好ましい。この工程は、形成された膜を酸性水溶液と接触させる工程であることがより好ましい。また、当該接触は、形成された膜を酸性水溶液に浸漬する工程であることが更に好ましい。この工程においては、酸性水溶液中のプロトンがイオン性基とイオン結合している陽イオンと置換されるとともに、残留している水溶性の不純物や、残存モノマー、溶媒、残存塩などが同時に除去される。酸性水溶液は特に限定されないが、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸などを用いることが好ましい。酸性水溶液の温度や濃度等も適宜決定すべきであるが、生産性の観点から0℃以上80℃以下の温度で、3質量%以上、30質量%以下の硫酸水溶液を使用することが好ましい。
複合層の製造工程(含浸工程)において、高分子電解質溶液の濃度は、3~40質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましい。この範囲の濃度であれば、多孔質基材の空隙に高分子電解質を充分に充填するための塗工回数を1~2回程度まで減少させることができ、かつ表面平滑性に優れた複合層が得られやすくなる。
高分子電解質溶液の粘度は100~50,000mPa・sが好ましく、300~10,000mPa・sがより好ましい。粘度が100mPa・s未満の場合、複合層の膜厚が不均一となることがある。粘度が上記好ましい範囲の場合、多孔質基材の空隙に対し高分子電解質を充填しやすく、複合層の膜厚を均一とすることも容易であり、また、複合層の表面平滑性に優れる。
高分子電解質溶液に使用する溶媒は、ポリマー種によって適宜選択することができる。溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、パークロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化炭化水素系溶媒、水などが好適に用いられる。また、これらの溶媒を二種以上の混合した混合溶媒を用いてもよい。
浸漬法や流延塗布法において、単独層の厚みは除去する、あるいは、付与する高分子電解質溶液の量によって調節可能である。
また、単独層は、別途で、高分子電解質の膜を作製しておき、複合層が形成されている面に貼り合わせることで作製することもできる。
[触媒層]
触媒層は、電解質膜の両面に接して形成された触媒粒子を含む層であり、一般的には触媒粒子およびフッ素系高分子電解質からなる高分子電解質を含む層である。フッ素系高分子電解質としては、前述のものを用いることができる。
本発明の触媒層付電解質膜において、触媒層がイオン性基を有するパーフルオロ系ポリマーを含むことが、発電性能及び化学的耐久性の点で好ましい。イオン性基を有するパーフルオロ系ポリマーを用いることで、触媒層に含まれるイオン性基の酸性度が高くなりプロトン伝導度がより向上するとともに、化学的に安定なC-F結合を多数有することから触媒層の化学的耐久性をより向上させることができる。
触媒粒子としては、触媒物質が炭素粒子に担持された触媒担持炭素粒子が一般的に用いられる。触媒物質としては、白金だけでなく、白金族元素のパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、又は酸化物、複酸化物等があげられる。炭素粒子の種類は、微粒子状で導電性を有し、触媒との反応により腐食、劣化しないものであれば特に限定されることはないが、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、及びフラーレン粒子が使用できる。
触媒層における、触媒粒子の含有量に対する高分子電解質の含有量の質量比は、0.2~2.5の範囲が好ましく、0.5~2.0が特に好ましい。触媒粒子の含有量に対する高分子電解質の含有量の質量比が上記好ましい範囲の場合、触媒層が割れ難い一方、ガス拡散性が損なわれることなく、発電性能に優れる。
触媒層の厚みは、好ましくは0.03μm~2,000μmである。良好な発電性能および耐久性を得やすくするには、触媒層の厚みが0.5μm以上であることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
[触媒層付電解質膜の製造方法]
本発明の触媒層付電解質膜(Catalyst Coated Membrane:CCM)は、本発明の電解質膜の両面に触媒層が形成されてなる。触媒層を形成する方法は特に限定されるものではないが、工程が簡便であることやプロセスコストを抑制できることから、触媒層インクを塗布して乾燥する方法や、予めデカール基材上に触媒層が形成されてなる触媒層デカールを用いて触媒層を転写した後に乾燥する方法が好ましい。
触媒層インクを塗布する方法の場合、塗布方法は、目的の形状に塗工できる方法であれば特に限定されることはなく、前述の高分子電解質溶液の塗布工程で述べた方法を用いることができる。
触媒層インクに含まれる溶媒は、高分子電解質および触媒担持炭素粒子を分散する溶媒であれば特に限定されることはないが、加熱により蒸発させて除去しやすい溶媒が好ましい。例えば、沸点が140℃以下の溶媒であることが好ましい。触媒層インクの溶媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノ―ル、ブタノ-ル、ペンタノ-ルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジブチルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールなどを一種または二種以上混合したものを用いることができる。
触媒層デカールを用いて転写する方法の場合、まず、基材上に触媒層インクを塗布し、必要に応じて乾燥工程を経ることで触媒層デカールを作製する。そして、電解質膜をカソード電極側の触媒層デカールと、アノード電極側の触媒層デカールで挟み、両デカールの触媒層が設けられた面と電解質膜とが接するようにしてホットプレスすることで、触媒層付電解質膜を得ることができる。ホットプレスの温度や圧力は、電解質膜の厚さ、水分率、触媒層やデカール基材により適宜選択すればよいが、工業的生産性や電解質膜材料の熱分解抑制などの観点から0℃~250℃の範囲で行うことが好ましく、触媒層に含有される高分子電解質のガラス転移温度より大きく、なおかつ200℃以下で行うことがより好ましい。ホットプレスにおける加圧は、電解質膜や電極保護の観点からできる限り弱い方が好ましく、平板プレスの場合、10MPa以下の圧力が好ましい。
触媒層インク塗布時に使用するデカール基材としては、電解質膜製膜時に使用する基材と同様の樹脂フィルムや基板が使用できるほか、PTFE、ポリヘキサフルオロプロピレン、ETFE、エチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、FEP、PFA、PVdF等のフッ素樹脂を用いることができる。耐熱性、耐溶剤性に加えて、化学的安定性や離型性の点から、フッ素樹脂フィルムを用いることが好ましい。
触媒層の乾燥は、前述の高分子電解質溶液の乾燥で述べた方法と同様の方法を用いることができる。
[用途]
本発明の電解質膜は、種々の用途に適用可能である。例えば、人工皮膚などの医療用途、ろ過用途、耐塩素性逆浸透膜などのイオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途、加湿膜、防曇膜、帯電防止膜、脱酸素膜、太陽電池用膜、ガスバリアー膜に適用可能である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、固体高分子形燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置、電気化学式水素ポンプ、水電解式水素発生装置が挙げられる。
固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプ、および水電解式水素発生装置において、電解質膜は、両面に触媒層、電極基材及びセパレータが順次積層された状態で使用される。特に、電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散基材を順次積層させたもの(即ち、ガス拡散基材/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散基材の層構成のもの)は、膜電極複合体(MEA)と称されている。本発明の電解質膜は、前記CCMおよびMEAを構成する電解質膜として好適に用いられる。
本発明の膜電極複合体、および本発明の固体高分子形燃料電池は、本発明の電解質膜を用いてなる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各種測定条件は次の通りである。
(1)ポリマーの分子量
ポリマー溶液の数平均分子量及び重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー(株)製HLC-8022GPCを用いた。また、GPCカラムとして東ソー(株)製TSK gel SuperHM-H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用いた。N-メチル-2-ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN-メチル-2-ピロリドン溶媒)にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
(2)イオン交換容量(IEC)
中和滴定法により測定した。測定は3回実施し、その平均値を取った。
プロトン置換し、純水で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12時間以上真空乾燥し、乾燥重量を求めた。
電解質膜に5質量%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12時間静置してイオン交換した。
0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定した。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v%を加え、薄い赤紫色になった点を終点とした。
イオン交換容量(IEC)は下記式により求めた。
IEC(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/mL)×滴下量(mL)〕/試料の乾燥重量(g)
(3)電解質膜の断面SEM測定
下記条件に従い、断面SEM測定を行った。得られた画像から中央の白色領域を複合層、両隣の黒色領域を高分子電解質層としその厚みを測定した。
装置:電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ製)
加速電圧:2.0kV
前処理:BIB法にて作製した断面試料にPtコートして測定した。
BIB法:アルゴンイオンビームを使用した断面試料作製装置。
試料直上に遮蔽板を置き、その上からアルゴンのブロードイオンビームを照射してエッチングを行うことで観察面・分析面(断面)を作製する。
(4)複合層における高分子電解質の充填率(複合層の充填率)
前記(3)項に従いSEMを用いて電解質膜の断面を観察し、高分子電解質と多孔質基材からなる複合層の厚みT1、複合層の外側に高分子電解質層がある場合はそれらの厚みT2、T3を各々算出した(なお、片面にしか単独層が存在しない場合は、T2をその厚みとし、T3の厚みは0とする)。複合層を形成する高分子電解質の比重をD1、高分子電解質層を形成する高分子電解質の比重をそれぞれのD2、D3(なお、D2は厚みT2を与える単独層の、D3は厚みT3を与える単独層の比重である)、電解質膜の比重をDとした。それぞれの層を形成するポリマーのIECをI1、I2、I3(なお、I1は複合層の、I2は厚みT2を与える単独層の、I3は厚みT3を与える単独層のIECである)、電解質膜のIECをIとして、複合層中の高分子電解質の充填率Y2(体積%)は下式で求めた。
Y2=[(T1+T2+T3)×D×I-(T2×D2×I2+T3×D3×I3)]/(T1×D1×I1)×100 。
(5)透過型電子顕微鏡(TEM)トモグラフィーによる相分離構造の観察
染色剤として2質量%酢酸鉛水溶液中に電解質膜の試料片を浸漬させ、25℃下で48時間静置して染色処理を行った。染色処理された試料を取りだし、エポキシ樹脂で包埋し、可視光を30秒照射し固定した。ウルトラミクロトームを用いて室温下で薄片100nmを切削し、以下の条件に従って観察を実施した。
装 置:電界放出型電子顕微鏡 (HRTEM) 日本電子(株)製 JEM2100F
画像取得:Digital Micrograph
システム:マーカー法
加速電圧 :200 kV
撮影倍率 :30,000 倍
傾斜角度 :+61°~-62°
再構成解像度:0.71 nm/pixel
3次元再構成処理は、マーカー法を適用した。3次元再構成を実施する際の位置合わせマーカーとして、コロジオン膜上に付与した金コロイド粒子を用いた。マーカーを基準として、+61°から-62°の範囲で、試料を1°毎に傾斜しTEM像を撮影する連続傾斜像シリーズより取得した計124枚のTEM像を基にCT再構成処理を実施し、3次元相分離構造を観察した。
(6)熱水試験による寸法変化率(λxy)測定
電解質膜を約5cm×約5cmの正方形に切り取り、温度23℃±5℃、湿度50±5%RHの調温調湿雰囲気下に24時間静置後、ノギスでMDの長さとTDの長さ(それぞれ、MD1、TD1)を測定した。該電解質膜を80℃の熱水中に8時間浸漬後、再度ノギスでMDの長さとTDの長さ(それぞれ、MD2、TD2)を測定し、面方向におけるMDとTDの寸法変化率(λMDとλTD)および面方向の寸法変化率(λxy)(%)を下式より算出した。
λMD=(MD2-MD1)/MD1×100
λTD=(TD2-TD1)/TD1×100
λxy=(λMD+λTD)/2 。
(7)プロトン伝導度
電解質膜を25℃の純水に24時間浸漬した後、80℃、相対湿度25%RHの恒温恒湿槽中に30分保持し、定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。測定装置としては、Solartron社製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用し、2端子法で定電位インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。交流振幅は、50mVとした。サンプルは幅10mm、長さ50mmの膜を用いた。測定治具はフェノール樹脂で作製し、測定部分は開放させた。電極として、白金板(厚さ100μm、2枚)を使用した。電極は電極間距離10mm、サンプル膜の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置した。
(8)電解質膜を使用した膜電極複合体(MEA)の作製
田中貴金属工業(株)製白金触媒担持炭素粒子TEC10E50E(白金担持率50質量%)と、ケマーズ(Chemours)(株)製“ナフィオン”(登録商標)(“Nafion”(登録商標))を2:1の質量比となるように調整した触媒インクを、市販のポリテトラフルオロエチレン製フィルムに白金量が0.3mg/cmとなるように塗布し、触媒デカールを作製した。
上記触媒デカールを5cm角にカットしたものを2枚準備し、電解質膜を挟むように対向して重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、触媒層付電解質膜を得た。市販のSGL社製ガス拡散電極24BCHを5cm角にカットし得られた触媒層付電解質膜を挟持することにより、一方の面をカソード極、もう一方の面をアノード極としてMEAを作製した。
(9)乾湿サイクル耐久性
前記(8)で作製したMEAを英和(株)製JARI標準セル“Ex-1”(電極面積25cm)にセットし、セル温度80℃の状態で、両極に160%RHの窒素を2分間供給し、その後両電極に0%RHの窒素(露点-20℃以下)を2分間供給するサイクルを繰り返した。1,000サイクルごとに水素透過量の測定を実施し、水素透過電流が初期電流の10倍を越えた時点を乾湿サイクル耐久性とした。
水素透過量の測定は、一方の電極に燃料ガスとして水素、もう一方の電極に窒素を供給し、加湿条件:水素ガス90%RH、窒素ガス:90%RHで試験を行った。開回路電圧が0.2V以下になるまで保持し、0.2~0.7Vまで1mV/secで電圧を掃引し0.7Vにおける電流値を水素透過電流とした。
(10)多孔質基材に含まれるフッ素原子含有量測定
以下の条件に従い、多孔質基材試料を秤量し分析装置の燃焼管内で燃焼させ、発生したガスを溶液に吸収後、吸収液の一部をイオンクロマトグラフィーにより分析した。
<燃焼・吸収条件>
システム:AQF-2100H、GA-210(三菱ケミカル(株)製)
電気炉温度:Inlet 900℃、Outlet 1000℃
ガス:Ar/O 200mL/min、O 400mL/min
吸収液:H 0.1%、内標Br 8μg/mL
吸収液量:20mL
<イオンクロマトグラフィー・アニオン分析条件>
システム:ICS1600(DIONEX社製)
移動相:2.7mmol/L NaCO/0.3mmol/L NaHCO
流速:1.50mL/min
検出器:電気伝導度検出器
注入量:20μL 。
(11)界面活性剤の化学構造分析
赤外線分光(IR)分析、H核磁気共鳴(NMR)分析、19F-NMR分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)を行い、各種界面活性剤の化学構造を分析し、フッ素原子及び親水性元素の含有量(酸素、窒素、リン、硫黄およびホウ素の合計)を算出した。
(12)界面活性剤の重量平均分子量測定
下記条件に従い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により界面活性剤の重量平均分子量を測定した。
装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC(機器No.GPC-27)
検出器:紫外可視吸収分光検出器UV((株)島津製作所製SPD-20AV)
カラム:TSKgel Super HZM-N 2本
SuperHZ4000、2500、1000各1本
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.45mL/min
カラム温度:40℃
注入量:0.02mL
標準試料:東ソー(株)製およびAgilent単分散ポリエチレングリコール(PEG)
データ処理:(株)東レリサーチセンター製GPCデータ処理システム
(13)電解質膜に含まれる界面活性剤量
以下の条件に従い、電解質膜を秤量し分析装置の燃焼管内で燃焼させ、発生したガスを溶液に吸収後、吸収液の一部をイオンクロマトグラフィーにより分析した。本分析値から予め測定しておいた界面活性剤を含まない高分子電解質の寄与および(10)により予め測定しておいた多孔質基材の寄与を除外することにより、界面活性剤の寄与を算出し、界面活性剤に含まれるフッ素原子量から複合電解質膜に含まれる界面活性剤量を算出して、複合膜中に含まれる高分子電解質に対する界面活性剤の比(界面活性剤/高分子電解質)を求めた。
<燃焼・吸収条件>
システム:AQF-2100H、GA-210(三菱ケミカル(株)製)
電気炉温度:Inlet 900℃、Outlet 1000℃
ガス:Ar/O 200mL/min、O 400mL/min
吸収液:H 0.1%、内標Br 8μg/mL
吸収液量:20mL
<イオンクロマトグラフィー・アニオン分析条件>
システム:ICS1600(DIONEX社製)
移動相:2.7mmol/L NaCO/0.3mmol/L NaHCO
流速:1.50mL/min
検出器:電気伝導度検出器
注入量:20μL 。
(14)XPSによる多孔質基材の酸素含有量測定
予め5mm角の大きさに切断した多孔質基材を超純水でリンスし、室温、67Paにて10時間乾燥させた後、液体窒素で30分冷却し、凍結粉砕機にて5分間の処理を2回実施することにより、サンプルを準備した。準備したサンプルの組成を測定し、酸素原子含有量を算出した。測定装置、条件としては、以下の通りである。
測定装置:Quantera SXM
励起X線:monochromatic Al Kα,Kα線(1,486.6eV)
X線径:200μm
光電子脱出角度:45° 。
(15)多孔質基材のSEM観察
検体となる多孔質基材を2mm×2mmのサイズに切り出し、白金イオンスパッタ後、SEM観察を実施し、多孔質基材の面方向における形態を観察した。多孔質基材に含まれるバンドル及びフィブリルの配向は、任意の15μm×15μmの範囲において、SEM観察を行った際の構造に基づき決定した。バンドルの平均長さと平均直径及びフィブリルの平均直径は、任意の15μm×15μmの範囲において、バンドルの長さと直径及びフィブリルの直径を100点測定し、平均値を計算することにより算出した。イオンスパッタ及びSEM観察は以下の装置・条件にて実施した。
<イオンスパッタ>
スパッタ装置:イオンスパッタ E-1045((株)日立ハイテクノロジーズ製)
金属種:Pt
イオン放出電流:15mA
スパッタ時間:60秒
<SEM観察>
測定装置:走査電子顕微鏡 S-5500((株)日立ハイテクノロジーズ製)
加速電圧:5kV
観察倍率:2,000~20,000倍 。
(16)電解質膜のデジタルマイクロスコープ観察
検体となる電解質膜を10cm×10cmのサイズに切り出し、高分子電解質の層が設けられた側の表面からデジタルマイクロスコープ観察を実施し、光反射像を撮影することにより多孔質基材に由来する筋状構造体を観察した。高分子電解質に由来する色の薄い部分と多孔質基材に由来する色の濃い部分とが観察された像において、色が変わる境界箇所を高分子電解質と多孔質基材との境界として多孔質基材に由来する部分の幅を計測した。幅0.5μm以上である筋状構造の1mm当たりにおける本数は、任意の120μm×150μmの範囲において、幅0.5μm以上である筋状構造の本数を計測し1mm当たりの本数に換算することにより算出した。位置により幅が異なる筋状構造においては任意の5箇所における幅を計測し、算術平均を求めることにより各筋状構造の幅とした。筋状構造の配向は、任意の120μm×150μmの範囲において、デジタルマイクロスコープ観察を行った際の構造に基づき決定した。筋状構造の平均長さ及び平均幅(直径)は、任意の120μm×150μmの範囲において、それぞれ100点測定し算術平均を求めることにより算出した。デジタルマイクロスコープ観察は以下の装置・条件にて実施した。
測定装置:KH-1300((株)ハイロックス製)
使用レンズ:MXG-2500REZ High-Range((株)ハイロックス製)
観察倍率:2000倍
(17)電解質膜のヘイズ値及び拡散透過率の測定
検体となる電解質膜を5cm×5cmのサイズに切り出し、ヘーズメーター HGM-20P(スガ試験機(株)製)を用いて、高分子電解質の層が設けられた側の面からC光源の光を照射し、検出器側は積分球を用いて全光線透過率(Tt)(%)と拡散透過率(Td)(%)を測定した。ヘイズ値Hzを下式より算出した。なお、全光線透過率は入射光の光量に対する積分球に補足された全ての光の光量の割合として知られ、拡散透過率は入射光の光量に対する積分球に補足された拡散光(入射光に平行な透過光以外の透過光)の光量の割合として知られる。
Hz=Td/Tt×100(%)
[合成例1]
(下記化学式(G1)で表される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン(K-DHBP)の合成)
攪拌器、温度計及び留出管を備えた500mLフラスコに、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp-トルエンスルホン酸一水和物0.50gを仕込み溶解した。その後78~82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mlで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mlを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して下記化学式(G1)で示される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.9%の2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソランと0.1%の4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンであった。
Figure 2022094934000006
[合成例2]
(下記化学式(G2)で表されるジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノン109.1g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬)を発煙硫酸(50%SO)150mL(富士フイルム和光純薬(株)試薬)中、100℃で10時間反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩(NaCl)200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、下記化学式(G2)で示されるジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。
Figure 2022094934000007
[合成例3]
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた1,000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬、120mmol)、前記合成例1で得たK-DHBP25.8g(100mmol)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン20.3g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬、93mmol)を入れた。窒素置換後、N-メチルピロリドン(NMP)300mLとトルエン100mLを加え、160℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールに再沈殿精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマー(末端:ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は10,000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマー(末端:ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、NMP100mL及びトルエン30mLを加え、100℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬、12mmol)を加え、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G3)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)を得た。数平均分子量は11,000であった。
Figure 2022094934000008
[合成例4]
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa2の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた1,000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬、200mmol)、前記合成例1で得たK-DHBP12.9g(50mmol)および4,4’-ビフェノール9.3g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬、50mmol)、前記合成例2で得たジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン39.3g(93mmol)、および18-クラウン-6 17.9g(富士フイルム和光純薬(株)試薬82mmol)を入れ、窒素置換後、NMP300mL及びトルエン100mLを加え、170℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G4)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa2(末端:ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は16,000であった。
Figure 2022094934000009
(一般式(G4)において、Mは、H、NaまたはKを表す。)
[合成例5]
(下記化学式(G5)で表される3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルの合成)
攪拌機、冷却管を備えた3Lの三口フラスコに、クロロスルホン酸245g(2.1mol)を入れ、続いて2,5-ジクロロベンゾフェノン105g(420mmol)を加え、100℃のオイルバスで8時間反応させた。所定時間後、反応液を砕氷1,000gにゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、淡黄色の粗結晶3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸クロリドを得た。粗結晶は精製せず、そのまま次工程に用いた。
2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)41.1g(462mmol)をピリジン300mLに加え、約10℃に冷却した。ここに上記で得られた粗結晶を約30分かけて徐々に加えた。全量添加後、さらに30分撹拌し反応させた。反応後、反応液を塩酸水1,000mL中に注ぎ、析出した固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、粗結晶を得た。これをメタノールで再結晶し、下記化学式(G5)で示される3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルの白色結晶を得た。
Figure 2022094934000010
[合成例6]
(下記一般式(G6)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーの合成)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,6-ジクロロベンゾニトリル49.4g(0.29mol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン88.4g(0.26mol)、炭酸カリウム47.3g(0.34mol)をはかりとった。窒素置換後、スルホラン346mL、トルエン173mLを加えて攪拌した。フラスコをオイルバスにつけ、150℃に加熱還流させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を徐々に上げながら大部分のトルエンを除去した後、200℃で3時間反応を続けた。次に、2,6-ジクロロベンゾニトリル12.3g(0.072mol)を加え、さらに5時間反応した。
得られた反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を2Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解した。これをメタノール2Lに再沈殿し、下記一般式(G6)で表される目的のオリゴマー107gを得た。数平均分子量は11,000であった。
Figure 2022094934000011
[合成例7]
(下記化学式(G8)で表されるセグメントと下記一般式(G9)で表されるセグメントからなるポリエーテルスルホン(PES)系ブロックコポリマー前駆体b4’の合成)
無水塩化ニッケル1.62gとジメチルスルホキシド15mLとを混合し、70℃に調整した。これに、2,2’-ビピリジル2.15gを加え、同温度で10分撹拌し、ニッケル含有溶液を調製した。
ここに、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2-ジメチルプロピル)1.49gと下記一般式(G7)で示される、スミカエクセルPES5200P(住友化学(株)製、Mn=40,000、Mw=94,000)0.50gとを、ジメチルスルホキシド5mLに溶解させて得られた溶液に、亜鉛粉末1.23gを加え、70℃に調整した。これに前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、70℃で4時間重合反応を行った。反応混合物をメタノール60mL中に加え、次いで、6mol/L塩酸60mLを加え1時間攪拌した。析出した固体を濾過により分離し、乾燥し、灰白色の下記一般式(G8)と下記一般式(G9)で表されるセグメントを含むブロックコポリマー前駆体b4’を1.62g、収率99%で得た。重量平均分子量は231,000であった。
Figure 2022094934000012
[高分子電解質溶液A]イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G4)で表されるオリゴマー、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G3)で表されるオリゴマーを共重合して得られるブロックコポリマーb1からなる高分子電解質溶液
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬、4mmol)、合成例4で得られたイオン性基を含有するオリゴマーa2(末端:ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N-メチルピロリドン(NMP)100mL及びシクロヘキサン30mLを加え、100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサンを除去し、合成例3で得られたイオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)11g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールへの再沈殿精製により、ブロックコポリマーb1を得た。重量平均分子量は343,000であった。このブロックコポリマーb1のイオン交換容量(IEC)は2.1であった。
得られたブロックコポリマーb1を溶解させた5質量%N-メチルピロリドン(NMP)溶液を、(株)久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機(型番6930)にアングルローターRA-800をセット、25℃、30分間、遠心力20,000Gで重合原液の直接遠心分離を行った。沈降固形物(ケーキ)と上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので上澄み液を回収した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、1μmのポリプロピレン製フィルターを用いて加圧ろ過し、高分子電解質溶液A(高分子電解質濃度13質量%)を得た。高分子電解質溶液Aの粘度は1,300mPa・sであった。
[高分子電解質溶液B]イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G4)で表されるオリゴマー、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G3)で表されるオリゴマーを共重合して得られるブロックコポリマーb2からなる高分子電解質溶液
合成例4で得られたイオン性基を有するオリゴマーa2を20g(1.25mmol)とした以外はブロックコポリマーb1と同様にしてブロックコポリマーb2を合成した。このブロックコポリマーb2の重量平均分子量は372,000、イオン交換容量(IEC)は2.4であった。また、ブロックコポリマーb1に代えてブロックコポリマーb2を用いた以外は高分子電解質溶液Aと同様にして得た高分子電解質溶液Bの粘度は1,600mPa・sであった。
[高分子電解質溶液C]イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G4)で表されるオリゴマー、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G3)で表されるオリゴマーを共重合して得られるブロックコポリマーb3からなる高分子電解質溶液
合成例4で得られたイオン性基を有するオリゴマーa2を25.6g(1.6mmol)とした以外は高分子電解質溶液Aと同様にしてブロックコポリマーb3を合成した。このブロックコポリマーb3の重量平均分子量は389,000、イオン交換容量(IEC)は2.7であった。また、ブロックコポリマーb1に代えてブロックコポリマーb3を用いた以外は高分子電解質溶液Aと同様にして得た高分子電解質溶液Cの粘度は1,800mPa・sであった。
[高分子電解質溶液D]ランダムコポリマーからなる高分子電解質溶液D
撹拌機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた5Lの反応容器に、合成例1で合成した2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン129g、4,4’-ビフェノール93g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬)、および合成例2で合成したジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン422g(1.0mol)を入れ、窒素置換後、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)3,000g、トルエン450g、18-クラウン-6を232g(富士フイルム和光純薬(株)試薬)加え、モノマーが全て溶解したことを確認後、炭酸カリウム304g(シグマアルドリッチジャパン(同)試薬)を加え、還流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、200℃で1時間脱塩重縮合を行った。得られたランダムコポリマーaの重量平均分子量は317,000、イオン交換容量(IEC)は2.1であった。
次に重合原液の粘度が500mPa・sになるようにNMPを添加して希釈し、(株)久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機(型番6930)にアングルローターRA-800をセット、25℃、30分間、遠心力20,000Gで重合原液の直接遠心分離を行った。沈降固形物(ケーキ)と上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので上澄み液を回収した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、ポリマー濃度が14質量%になるまでNMPを除去し、さらに5μmのポリエチレン製フィルターで加圧濾過して高分子電解質溶液Dを得た。この高分子電解質溶液Dの粘度は1,000mPa・sであった。
[高分子電解質溶液E]下記一般式(G10)で表されるポリアリーレン系ブロックコポリマーからなる高分子電解質溶液
乾燥したN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)540mLを、3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.0g(0.336mol)と、合成例6で合成した一般式(G6)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーを40.7g(5.6mmol)、2,5-ジクロロ-4’-(1-イミダゾリル)ベンゾフェノン6.71g(16.8mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3mmol)、トリフェニルホスフィン35.9g(0.137mol)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3mmol)、亜鉛53.7g(0.821mol)の混合物中に窒素下で加えた。
反応系を撹拌下に加熱し(最終的には79℃まで加温)、3時間反応させた。反応途中で系中の粘度上昇が観察された。重合反応溶液をDMAc730mLで希釈し、30分撹拌し、セライトを濾過助剤に用い、濾過した。
前記濾液をエバポレーターで濃縮し、濾液に臭化リチウム43.8g(0.505mol)を加え、内温110℃で7時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン4Lに注ぎ、凝固した。凝固物を濾集、風乾後、ミキサーで粉砕し、1N塩酸1,500mLで攪拌しながら洗浄を行った。濾過後、生成物を洗浄液のpHが5以上となるまでイオン交換水で洗浄後、80℃で一晩乾燥し、目的のポリアリーレン系ブロックコポリマーa23.0gを得た。この脱保護後のポリアリーレン系ブロックコポリマーの重量平均分子量は192,000、イオン交換容量(IEC)は2.0であった。得られたポリアリーレン系ブロックコポリマーaを、0.1g/gとなるように、N-メチル-2-ピロリドン/メタノール=30/70(質量%)有機溶媒に溶解して高分子電解質溶液Eを得た。高分子電解質溶液Eの粘度は1,200mPa・sであった。
Figure 2022094934000013
[高分子電解質溶液F]ポリエーテルスルホン系ブロックコポリマーからなる高分子電解質溶液F
合成例7で得られたブロックコポリマー前駆体b4’を0.23g計量し、臭化リチウム一水和物0.16gとNMP8mLとの混合溶液に加え、120℃で24時間反応させた。反応混合物を、6mol/L塩酸80mL中に注ぎ込み、1時間撹拌した。析出した固体を濾過により分離した。分離した固体を乾燥し、灰白色の前記一般式(G9)で示されるセグメントと下記化学式(G11)で表されるセグメントからなるブロックコポリマーb4を得た。得られたポリエーテルスルホン系ブロックコポリマーの重量平均分子量は191,000、イオン交換容量(IEC)は2.0であった。得られたポリエーテルスルホン系ブロックコポリマーb4を、0.1g/gとなるように、N-メチル-2-ピロリドン/メタノール=30/70(質量%)有機溶媒に溶解して高分子電解質溶液Fを得た。高分子電解質溶液Fの粘度は1,300mPa・sであった。
Figure 2022094934000014
[ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)多孔質基材P1]
“ポアフロン”(登録商標)WP-010-80(住友電工ファインポリマー(株)製)を横方向(TDに相当)に15倍、縦方向(MDに相当)に2倍延伸し、その後、365℃で熱処理を実施し、膜厚8μm、空隙率85%のePTFE多孔質基材P1を作製した。SEM観察の結果、縦方向(MD)に略平行な平均直径0.85μm、平均長さ25μmの筋状構造が形成され、横方向(TD)に略平行な平均直径0.15μmのフィブリルを有する構造であった。基材面積1mmあたりの筋状構造の数は550本であった。
[ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)多孔質基材P2]
“ポアフロン”(登録商標)HP-045-30(住友電工ファインポリマー(株)製)を縦横方向に3倍同時2軸延伸することにより、膜厚8μm、空隙率89%のePTFE多孔質基材P2を作製した。SEM観察の結果、平均直径0.3μmのフィブリルが無規則な蜘蛛の巣状を形成する構造であり、筋状構造は有していなかった。
[親水化ePTFE多孔質基材P2’]
露点-80℃のグローブボックス内において、ePTFE多孔質基材P2を金属ナトリウム-ナフタレン錯体/テトラヒドロフラン(THF)1%溶液30g、THF70gからなる溶液に浸漬し、3秒経過後に引き上げ、すぐにTHFで十分洗浄し、膜厚8μm、空隙率88%の親水化ePTFE多孔質基材P2’を作製した。
[ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)多孔質基材P3]
“ポアフロン”(登録商標)WP-010-80(住友電工ファインポリマー(株)製)を横方向(TDに相当)に20倍、縦方向(MDに相当)に1.5倍延伸し、その後、365℃における熱処理を実施し、膜厚8μm、空隙率84%のePTFE多孔質基材P3を作製した。SEM観察の結果、縦方向(MD)に略平行な平均直径0.81μm、平均長さ24μmの筋状構造が形成され、横方向(TD)に略平行な平均直径0.14μmのフィブリルを有する構造であった。基材面積1mmあたりの筋状構造の数は540本であった。
<電解質膜の製造>
[実施例1]
100gの高分子電解質溶液Aに、ノニオン性フッ素系界面活性剤としてポリオキシエチレンエーテル系界面活性剤“フタージェント”(登録商標)208G(ネオス(株)製)0.26gを溶解し、高分子電解質と界面活性剤の質量比(以下、「界面活性剤/電解質」と表記)が0.02の電解質-界面活性剤混合溶液を調製した。ナイフコーターを用い、この電解質-界面活性剤混合溶液をガラス基板上に流延塗布し、塗布された膜状物上にePTFE多孔質基材P1を貼り合わせた。室温にて1時間保持し、ePTFE多孔質基材P1に電解質-界面活性剤混合溶液Aを十分含浸させた後、100℃にて4時間乾燥した。乾燥後、前記ePTFE基材のガラス基板側とは反対側の面上に、前記の電解質-界面活性剤混合溶液を流延塗布し、室温にて1時間保持した後、100℃にて4時間乾燥した。得られた、高分子電解質をePTFE多孔質基材に含浸した複合体をガラス基板から剥離して後、10質量%硫酸水溶液に80℃で24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、電解質膜(膜厚9μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3μm)を有する。
なお、補足的に説明すると、電解質-界面活性剤混合溶液の含浸・乾燥によって多孔質基材の厚み方向での収縮が生じたことで、電解質膜の総厚みとしては9μmの厚みとなった(他の実施例、比較例においても同様である)。
[実施例2]
界面活性剤/電解質を0.10とした電解質-界面活性剤混合溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚9μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3μm)を有する。
[実施例3]
界面活性剤/電解質を0.01とした電解質-界面活性剤混合溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚9μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3μm)を有する。
[実施例4]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Bを使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚9μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3μm)を有する。
[実施例5]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Cを使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚9μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3μm)を有する。
[実施例6]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Dを使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3.5μm)を有する。
[実施例7]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Eを使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3.5μm)を有する。
[実施例8]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Fを使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3.5μm)を有する。
[実施例9]
ノニオン性フッ素系界面活性剤をポリオキシエチレンエーテル系界面活性剤“フタージェント”(登録商標)FTX-218(ネオス(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3.5μm)を有する。
[実施例10]
ノニオン性フッ素系界面活性剤を低金属含有グレードポリオキシエチレンエーテル系界面活性剤“フタージェント”(登録商標)DFX-18(ネオス(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3.5μm)を有する。
[実施例11]
ノニオン性フッ素系界面活性剤を含フッ素基親水性基/親油性基含有オリゴマー系界面活性剤“フタージェント”(登録商標)710FS(ネオス(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3.5μm)を有する。
[実施例12]
ePTFE多孔質基材P1の代わりにePTFE多孔質基材P3を使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚9μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3μm)を有する。
[比較例1]
ナイフコーターを用い、100gの高分子電解質溶液Aをガラス基板上に流延塗布した後、100℃にて4時間乾燥し、フィルム状の重合体を得た。10質量%硫酸水溶液に80℃で24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、電解質膜(膜厚10μm)を得た。
[比較例2]
ノニオン性フッ素系界面活性剤を用いなかった以外は実施例1と同様にして電解質膜の作製を試みたが、高分子電解質溶液Aが多孔質基材に浸透せず電解質膜を得ることができなかった。
[比較例3]
ePTFE多孔質基材P1の代わりにePTFE多孔質基材P2を使用した以外は、実施例1と同様にして電解質膜(膜厚8μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ2.5μm)を有する。
[比較例4]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Bを使用した以外は、比較例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。
[比較例5]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Cを使用した以外は、比較例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。
[比較例6]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Dを使用した以外は、比較例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。
[比較例7]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Eを使用した以外は、比較例1と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。
[比較例8]
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Fを使用した以外は、比較例1と同様にして複合電解質膜(膜厚10μm)を得た。
[比較例9]
ePTFE多孔質基材P1の代わりに親水化ePTFE多孔質基材P2’を使用した以外は、比較例2と同様にして電解質膜(膜厚10μm)を得た。この電解質膜は、複合層の両面に単独層(1層あたりの厚みがそれぞれ3.5μm)を有する。
[比較例10]
ノニオン性フッ素系界面活性剤を非フッ素系界面活性剤“トリトン”(登録商標)X-100に変更した以外は、実施例1と同様にして電解質膜の作製を試みたが、高分子電解質溶液Aが多孔質基材に浸透せず電解質膜を得ることができなかった。
[評価]
実施例1~12、比較例1、比較例3~9で製造した電解質膜について、イオン交換容量(IEC)、複合層中の高分子電解質の充填率、寸法変化率λxy、プロトン電導度、筋状構造の平均長さ、同平均直径、同平均直径に対する平均長さの比率、膜面積1mm当たりの筋状構造体本数、ヘイズ値、拡散透過率および乾湿サイクル耐久性を評価した。また電解質膜を構成するイオン性基含有高分子膜について、相分離構造の有無を評価し、多孔質基材について、フッ素原子含有量、酸素原子含有量、空隙率を評価した。これらの評価結果を表1、表2に示す。また、乾湿サイクル耐久性に関して、30,000サイクルを超えても水素透過電流が初期電流の10倍を越えなかった場合は、30,000サイクルで評価を打ち切った。
Figure 2022094934000015
注1)高分子電解質A:ブロックコポリマーb1、高分子電解質B:ブロックコポリマーb2、高分子電解質C:ブロックコポリマーb3、高分子電解質D:ランダムコポリマーa、高分子電解質E:ポリアリーレン系ブロックコポリマーa、高分子電解質F:ポリエーテルスルホン系ブロックコポリマーb4
注2)多孔質基材P1:膜厚8μm、空隙率85%のポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、多孔質基材P2:膜厚8μm、空隙率89%のポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、多孔質基材P2’:膜厚8μm、空隙率88%の親水化ePTFE、多孔質基材P3:膜厚8μm、空隙率84%のポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、。
Figure 2022094934000016
1a~1f 高分子電解質層表面のデジタルマイクロスコープで観察される筋状バンドル

Claims (17)

  1. 多孔質基材と、高分子電解質とを含む電解質膜であって、前記多孔質基材は筋状構造を有している電解質膜。
  2. 前記筋状構造の少なくとも一つは、10μm以上の長さを有する請求項1に記載の電解質膜。
  3. 幅が0.5μm以上である前記筋状構造が、多孔質基材において、面積1mmあたり100本以上2000本以下存在する請求項1または2に記載の電解質膜。
  4. 前記筋状構造の平均長さが10μm以上200μm以下である請求項1~3のいずれかに記載の電解質膜。
  5. 前記筋状構造の平均幅が0.4μm以上7.0μm以下である請求項1~4のいずれかに記載の電解質膜。
  6. 前記筋状構造の平均長さを平均幅で除した値が、5~100であるである請求項1~5のいずれかに記載の電解質膜。
  7. 前記筋状構造は、そのうちの複数個の筋状構造において、多孔質基材表面に平行な任意の一方向に向かって略平行に配列されている、請求項1~6のいずれかに記載の電解質膜。
  8. 前記多孔質基材がフッ素樹脂を含んでいる、請求項1~7のいずれかに記載の電解質膜。
  9. 当該多孔質基材の総質量を100質量%としたとき、多孔質基材に含まれるフッ素原子の総質量が50質量%以上である、請求項8に記載の電解質膜。
  10. 前記高分子電解質がイオン性基を有する炭化水素系ポリマーである、請求項1~9のいずれかに記載の電解質膜。
  11. 前記炭化水素系ポリマーが主鎖に芳香環を有する芳香族炭化水素系ポリマーである、請求項10に記載の電解質膜。
  12. さらに、ノニオン性フッ素系界面活性剤を含む、請求項1~11のいずれかに記載の電解質膜。
  13. 前記ノニオン性フッ素系界面活性剤が、フッ化アルキル基、フッ化アルケニル基またはフッ化アリール基を含むフッ素含有基と、非イオン性の親媒基とを有する化合物である、請求項12に記載の電解質膜。
  14. 厚み方向に光線を透過させた際のヘイズ値が20%以上45%以下である請求項1~13のいずれかに記載の電解質膜。
  15. 請求項1~14のいずれかに記載の電解質膜の両面に触媒層が積層された、触媒層付電解質膜。
  16. 請求項1~14のいずれかに記載の電解質膜を含む、膜電極複合体。
  17. 請求項1~14のいずれかに記載の電解質膜を含む、固体高分子形燃料電池。
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