JP2022093509A - X線撮影システム - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2においては、無機繊維からなる保持シール材の面圧を推定する方法として、当該保持シールの厚さ方向における繊維配向度指数を測定し、繊維配向度指数が所定値以下の場合に保持シール材を良品と判定することが開示されている。
を把握する必要がある。ところが、CTにより三次元画像を再構成するためには、大量の二次元画像を撮影したり、複雑な再構成処理を行ったりする必要があるため、検査に時間がかかるという問題がある。しかも、ワークを三次元的に回転させる必要があるため、大型な部品や大きな材料などは検査することがそもそも現実的に難しい場合がある。また、分解能を確保しようとすると、画像の拡大率を大きく確保する必要があり、一度に検査可能な面積が非常に小さくなる。
された検査対象物の再構成画像を基に、当該検査対象物の良否判定を行う際に用いられる評価指標を推定するためのX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体である前記検査対象物及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記検査対象物の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するものであり、
制御部と、
前記モアレ画像に基づいて生成された前記再構成画像における信号強度に係る情報と、前記検査対象物を構成する材料の品質情報との、材料の名前若しくは種類ごとの相関を表す第一データベースを備えており、
前記制御部は、入力される前記材料の名前若しくは種類に関する情報及び形体情報と、前記第一データベースとに基づいて、前記再構成画像から、前記検査対象物の注目箇所における品質情報を前記評価指標として推定することを特徴とする。
評価指標の推定を始めとする各種処理は、X線タルボ撮影装置1に接続された制御装置20によって行われる。
本実施形態における被写体Hは、複合素材(複合材料とも言う。)によって構成されており、例えば宇宙・航空機関係、自動車、船舶、つり竿の他、電気・電子・家電部品、パラボラアンテナ、浴槽、床材、屋根材等を始め、様々な製品等の構成部材として用いられるものである。
このような複合素材としては、例えば炭素繊維やガラス繊維を強化繊維として用いたCFRP(Carbon-Fiber-Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)、CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics:炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)、
GFRP(Glass-Fiber-Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)に代表さ
れるFRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)や、セラミックス繊
維を強化材とするCMC(Ceramic Matrix Composites:セラミック基複合材料)等が知
られている。また、広義には、例えば合板のように複数種類の木材からなる複合素材が含まれるものとしてもよい。その他にも、例えば、MMC(Metal Matrix Composites:金
属基複合材料)コンクリート、鉄筋コンクリート等のように、繊維を含まずに構成された複合材料も含まれるものとしてもよい。
また、材料の形体情報も同様に、形体に応じて機械強度が異なり、形体ごとのデータがシステム内(後述する記憶部23)に記憶・蓄積されている。評価指標の推定を初めとする各種処理を実行する場合は、材料の形体情報を特定する必要がある。
なお、機械強度とは、例えば弾性率 、降伏強さ、塑性、引張強さ、伸び、破壊エネル
ギー、硬度等を指す。
また、形体情報としては、主として、厚み情報(厚み寸法)、CADデータ、三次元測定器による計測データ等の3D(三次元)データが挙げられる。その他の形体情報としては、例えば、材料における凹凸の位置、網状であるか、層状であるか等の情報が含まれていてもよい。
そして、評価指標の推定を初めとする各種処理を実行の際に材料の名前及び形体情報を特定する場合は、後述する入力部24からの入力か、後述する外部データ入力部25を通じた外部装置からの入力によって行われる。
本実施形態においては、X線タルボ撮影装置1として、線源格子(マルチ格子やマルチスリット、G0格子等ともいう。)12を備えるタルボ・ロー干渉計を用いたものが採用されている。なお、線源格子12を備えず、第1格子(G1格子ともいう。)14と第2格子(G2格子ともいう。)15のみを備えるタルボ干渉計を用いたX線タルボ撮影装置を採用することもできる。
本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1は、X線発生装置11と、上記した線源格子12と、被写体台13と、上記した第1格子14と、上記した第2格子15と、X線検出器16と、支柱17と、基台部18と、を備えている。
像を得る方法である。
なお、本実施形態の線源格子12、第1格子14、第2格子15においては、一次元格子が採用されているが、繊維配向についての詳細な評価精度が不要な場合は二次元格子が採用されてもよい。
X線検出器16としては、FPD(Flat Panel Detector)を用いることができる。F
PDには、検出されたX線を光電変換素子を介して電気信号に変換する間接変換型、検出されたX線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
間接変換型は、CsIやGd2O2S等のシンチレータプレートの下に、光電変換素子がTFT(薄膜トランジスタ)とともに2次元状に配置されて各画素を構成する。X線検出器16に入射したX線がシンチレータプレートに吸収されると、シンチレータプレートが発光する。この発光した光により、各光電変換素子に電荷が蓄積され、蓄積された電荷は画像信号として読み出される。
直接変換型は、アモルファスセレンの熱蒸着により、100~1000(μm)の膜圧
のアモルファスセレン膜がガラス上に形成され、2次元状に配置されたTFTのアレイ上にアモルファスセレン膜と電極が蒸着される。アモルファスセレン膜がX線を吸収するとき、電子正孔対の形で物質内に電圧が遊離され、電極間の電圧信号がTFTにより読み取られる。
なお、CCD(Charge Coupled Device)、X線カメラ等の撮影手段をX線検出器16
として用いてもよい。
)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターで構成されている。なお、コントローラー19を、本実施形態のような汎用のコンピューターではなく、専用の制御装置として構成することも可能である。また、コントローラー19には、図示はしないが、操作部を含む入力手段や出力手段、記憶手段、通信手段等の適宜の手段や装置が設けられている。
出力手段には、X線タルボ撮影装置1の各種操作を行うために必要な情報や、生成された再構成画像を表示する表示部(図示省略)が含まれている。
、X線源11aに管電圧や管電流、照射時間等を設定することができるようになっている。また、例えば、コントローラー19が、X線検出器16と外部の画像処理装置2等との信号やデータの送受信を中継するように構成することも可能である。
つまり、本実施形態におけるコントローラー19は、被写体Hの再構成画像の生成に必要な複数のモアレ画像Mo(フーリエ変換法の場合は1枚のモアレ画像)を取得するための一連の撮影を行わせる制御部として機能している。
本実施形態においては、評価指標の推定を始めとする各種処理を実行する制御装置20として、汎用のコンピューター装置(制御PC)が採用されている。ただし、これに限られるものではなく、制御装置20の機能の一部をネットワーク上に設け、通信によりデータを授受することで各処理を実行できるようにしてもよい。
制御装置20は、図4に示すように、CPU21(Central Processing Unit)や、R
AM22(Random Access Memory)、記憶部23、入力部24、外部データ入力部25、表示部26、通信部27等を備えて構成されている。
される。記憶部23には、上記した各種プログラムが記憶されている他、後述する評価指標の推定を始めとする各種処理を実行するために必要な第一データベース23a及び第二データベース23bを有している。
第一データベース23aは、X線タルボ撮影装置1によって取得した被写体Hの再構成画像に係るデータベースである。
第二データベース23bは、被写体Hである検査対象物を構成する材料(複合素材)に係るデータベースである。
なお、これら第一データベース23a及び第二データベース23bは、制御装置20の記憶部23に記憶されるだけでなく、ネットワーク上に設けられていてもよい。
検査対象物の再構成画像における信号強度とは、再構成画像(小角散乱画像又は微分位相画像)の各画素における信号値の大小を指している。
検査対象物を構成する材料の品質情報とは、材料(すなわち、複合素材)の品質に係り、材料に生じたクラックの密度(クラック密度)、材料を構成する繊維の配向(繊維配向度)、材料を構成する繊維の密度(繊維密度)、材料の密度(材料密度)、材料に生じたボイドの密度(ボイド密度)、材料に生じた剥離の密度(剥離密度)、材料に生じた化学変化量、材料を覆うコーティングの被覆密度等の各種情報を指す。
また、品質情報には、検査対象物を構成する材料の厚み情報(厚み寸法)に比例して再構成画像における信号強度が変動する種類の品質情報として、クラック密度、材料密度、ボイド密度、剥離密度、化学変化量、被覆密度が含まれている。
また、図6に示すように、検査対象物の再構成画像における信号強度と、クラック密度等の材料の品質情報との相関関係は、検査対象物を構成する材料の種類だけでなく、検査対象物の厚みに応じて異なる。そのため、評価指数の推定を行う場合は、検査対象物を構成する材料の厚み情報が必要となる。なお、このような、厚み情報に対応する信号強度と品質情報との相関関係に係るデータは記憶部23に記憶・蓄積されており、同種の材料で構成された他の検査対象物の良否判定を行う場合に、その蓄積データが使用される。
また、検査対象物の再構成画像における撮影時の検査対象物に対する格子配列方向の角度に応じた信号強度の変化と、検査対象物を構成する材料の繊維配向度と、の相関を表すものを第二相関データ32と称する。
さらに、検査対象物の再構成画像における信号強度と、検査対象物を構成する材料の繊維密度と、の相関を表すものを第三相関データ33と称する。
複数の格子12,14,15は一次元格子とされているか、もしくは、各格子12,14,15の形状に異方性を持たせる必要がある。そのため、第一データベース23aにおいて、再構成画像における信号強度に係る情報には、再構成画像における信号強度の変化の角度依存性に係る情報が含まれている。
材料の品質情報は、上記したクラック密度等の各種情報を指す。
クラックやボイド等のような材料に生じた各種症状や材料を構成する繊維の配向、繊維密度が、検査対象物を構成する材料に対して影響する。すなわち、クラック等の各種症状や繊維配向、繊維密度は、材料の機械強度と相関関係があり、第二データベース23bにおける、品質情報に対応する機械強度に係る情報とは、クラック等の各種症状の大小や繊維配向度、繊維密度に応じた材料の機械強度の強弱を指す。
象物を構成する材料の機械強度との相関データがあり、以下では、第二データベース23bにおける他の相関データと称する。
また、検査対象物を構成する材料の繊維配向度と、検査対象物を構成する材料の機械強度と、の相関を表すものを第五相関データ35と称する。
さらに、検査対象物を構成する材料の繊維密度と、検査対象物を構成する材料の機械強度と、の相関を表すものを第六相関データ36と称する。
また、入力部24からは、検査対象物を構成する材料(複合素材)の名前や形体情報、検査対象物に対して行われた各種試験の結果を表す試験データなどを入力することもできる。入力された情報は記憶部23に記憶され、CPU21によって、検査対象物の注目箇所における評価指標を推定したり、検査対象物の注目箇所における機械強度を推定したりする際に用いられる。すなわち、入力部24は、X線撮影システムにおける入力手段として機能する。
当該外部データ入力部25としては、例えば、外部装置との有線又は無線によるデータ送受信を可能とするUSB(Universal Serial Bus)ポートやBluetooth(登録商標)、外部装置に相当する記録媒体からデータを読み込むドライブなど、様々なものを採用することができる。すなわち、X線撮影システム外から、X線撮影システム内へのデータ入力を可能するものであればよく、このような外部データ入力部25は、X線撮影システムにおける入力手段として機能する。また、特に、外部データ入力部25を通じて入力されるデータは、板状部材の厚さなどを除き、手入力が困難なものである場合が多く、例えば材料の形体情報としてCADデータ等を採用することができる。
また、この表示部26には、コントローラー19の表示部と同様に、生成された再構成画像を表示できる他、検査対象物の良否判定を行った結果を表示したり、良否判定の結果が不合格だった場合にNGとなった箇所を表示したりすることができる。
ネットワーク上の外部装置には、X線タルボ撮影装置1のコントローラー19が含まれており、通信部27を介して、コントローラー19と制御装置20とが通信可能に接続されている。
記憶部23に記憶されたプログラムには、評価指標推定プログラム、画像生成プログラム、強調表示プログラム、材料強度推定プログラム、合否判定プログラム、不合格箇所表示プログラム、信号強度区別プログラム、検査対象範囲指定プログラム等が含まれている。
なお、注目箇所とは、検査対象物のうち検査を特に行いたい箇所を指しており、放射線技師や検査員等のユーザーによって任意に選択されてもよいし、後述する検査対象範囲指定プログラムを実行することによって選択されてもよい。
また、検査が行われる注目箇所の範囲は、X線タルボ撮影装置1によって撮影可能な範囲(上記のX線照射範囲を指す。)によって規定される。
また、検査対象物の材料の良否判定を、上記クラック密度を以て行う場合は、第一データベース23aのうち第一相関データ31や、第一データベース23aにおける他の相関データが用いられる(ここでは、第一相関データ31を挙げて説明する。)
そして、被写体Hである検査対象物をX線タルボ撮影装置1によって実際に撮影して得られた再構成画像(小角散乱画像又は微分位相画像であり、ここでは小角散乱画像)から、その検査対象物のクラック密度が判明することになる。すなわち、図5、図6に示すように、タルボ画像(小角散乱画像)の信号密度が撮影により判明するので、そこからクラック密度を導き出すことができる。
検査対象物を構成する材料の注目箇所における、厚み情報に応じたクラック密度が判明すれば、そのデータを、X線タルボ撮影装置1で撮影して得られた再構成画像から推定される検査対象物の評価指標として取り扱うことができる。すなわち、検査対象物を構成する材料の良否判定を行うための評価指標として用いることができる。
より具体的に説明すると、例えば図6に示すように、厚み情報が10mm、20mm、30mmとされた蓄積データが記憶部23に記憶され、その上で、新規の検査対象物の良否判定を行う場合には、記憶されている複数のデータ間の中間値を採用する。つまり、新規の検査対象物を構成する材料の厚み情報が15mmの場合は、厚み情報が10mmとされた蓄積データと、20mmとされた蓄積データとの間の数値が、評価指標の推定を行う
際に用いられる。このようにすれば、新規の厚み情報の入力を受けた場合であっても、得られた再構成画像から評価指標の推定を行うことができる。
すなわち、CPU21が、入力される材料の名前及び形体情報と、第一データベース23aにおける第二相関データ32(及び/又は第三相関データ33)とに基づいて、評価指標推定プログラムを実行することで、検査対象物の良否判定を行う際に用いられる評価指標(繊維配向度や繊維密度)を推定することができるようになっている。
そして、被写体Hである検査対象物をX線タルボ撮影装置1によって実際に撮影して得られた再構成画像(小角散乱画像又は微分位相画像であり、ここでは小角散乱画像)から、その検査対象物の繊維配向度が判明することになる。第三相関データ33を用いて推定すれば繊維密度が判明し、第二相関データ32と第三相関データ33の双方を用いれば、評価指標として、繊維配向度と繊維密度の双方が判明することになる。
より詳細に説明すると、X線タルボ撮影装置1は、検査対象物のモアレ画像を取得する場合に、検査対象物をX線照射軸Caの軸周りに回転させて撮影し、かつ、回転角度に対する信号強度を記憶する。そのため、第一データベースにおける第二相関データ32及び第三相関データ33において、再構成画像における信号強度に係る情報には、再構成画像における信号強度の変化の角度依存性に係る情報が含まれている。つまり、検査対象物をX線照射軸Caの軸周りに回転させた際の信号強度の変化がどれだけ撮影角度(軸周りの回転角度)に依存しているか、という情報が含まれている。
図7の左側に示す画像1及び画像2は、検査対象物を異なる複数の角度で撮影して得られた再構成画像(小角散乱画像)であり、CPU21によって、両画像の差分を取ることによって、図7の中ほどに示す画像(A,B方向の繊維配向比率の面内分布)を生成することができる。すなわち、検査対象物を構成する繊維が、異なる複数の角度に配向していることを画像として示すことができる。
なお、記憶部23には、複数の角度で撮影して得られた再構成画像をデータとして演算(差分処理)し、面内分布表示画像を生成する画像生成プログラムが記憶されている。画像生成プログラムは、評価指標推定プログラムと連動しており、繊維配向度及び/又は繊維密度である品質情報を以て良否判定を行う場合にCPU21によって実行される。
Aの繊維が多い箇所と、角度Bの繊維が多い箇所とが色分けされて強調表示されている。また、双方の箇所の境界が更に他の色もしくは無色で強調表示されている。
信号の振り分け基準はユーザーによって予め設定されており、例えば、信号強度の数値が基準とされている。
なお、記憶部23には、信号の振り分け基準に従って、再構成画像における信号強度の分布を簡素化して表示することにより、繊維配向度の比率の面内における境界を強調して抽出する強調表示プログラムが記憶されている。強調表示プログラムは、画像生成プログラムと連動しており、繊維配向度及び/又は繊維密度である品質情報を以て良否判定を行う場合にCPU21によって実行される。
なお、検査対象物の良否判定を行う場合は、良否判定のための、クラック密度や繊維配向度等の品質情報の基準値を検査者の使用目的に応じて任意に設定できるようにしておく。つまり、CPU21は、評価指数推定プログラムを実行して得られた品質情報を、その基準値に基づいて良否判定できるものとし、記憶部23には、そのためのプログラムやデータが記憶されているものとする。
また、検査対象物の材料が繊維を含んで構成されたものでない場合、もしくは、繊維を含んでいても繊維配向度や繊維密度以外の品質情報(上記したクラック密度等。)を以て良否判定を行う場合は、第二データベース23bのうち第四相関データ34や、第二データベース23bにおける他の相関データが用いられる(ここでは、第四相関データ34を挙げて説明する。)。
そして、第二データベース23b(ここでは、第四相関データ34)は、検査対象物を構成する材料の品質情報(ここでは、クラック密度)と、当該品質情報に対応する機械強度に係る情報と、の相関を表すので、評価指標推定プログラムが実行されることによって導き出されたクラック密度から、このクラック密度に対応する機械強度が判明することになる。すなわち、X線タルボ撮影装置1によって実際に撮影された検査対象物を構成する材料の機械強度を導き出すことができる。結果的には、被写体Hである検査対象物をX線タルボ撮影装置1によって実際に撮影して得られた再構成画像(小角散乱画像又は微分位相画像であり、ここでは小角散乱画像)から、その検査対象物の機械強度が判明することになる。
すなわち、CPU21が、入力される材料の名前及び形体情報と、第二データベース23bにおける第五相関データ35(及び/又は第六相関データ36)とに基づいて、材料強度推定プログラムを実行することで、検査対象物の良否判定を行う際に用いられる評価指標(繊維配向度や繊維密度に対応する機械強度)を推定することができるようになっている。第六相関データ36を用いて推定すれば繊維密度に対応する機械強度が判明し、第五相関データ35と第六相関データ36の双方を用いれば、評価指標として、繊維配向度と繊維密度の双方の組み合わせに対応する機械強度が判明することになる。
このような合否判定プログラムは、記憶部23に記憶されており、材料強度推定プログラムによって材料の機械強度が推定された後に、CPU21によって実行される。合否判定の結果、合格だった場合は、機械強度がどの程度であったかが、表示部26に定量的に表示される。
不合格だった場合は、機械強度がどの程度であったかが、表示部26に定量的に表示されると共に、不合格箇所表示プログラムによって、表示部26に表示された再構成画像上に不合格箇所を表示する(後述する。)。
また、検査対象物の良否判定を行うにあたり、各種製品の構成部材(部品)として判定するのか、材料を判定するのかによって、良否の基準が異なる場合があるため、図5(a)に示すように、「部品」と「材料」とで、判定基準が異なるように設定されている。
さらに、検査対象物の良否判定を行うにあたり、様々な種類の品質情報を組み合わせて判定を行う場合は、図5(b)に示すように、判定基準が多次元的に認識されるようにな
っている。
このような不合格箇所表示プログラムは、記憶部23に記憶されており、合否判定プログラムによって機械強度における合否判定がなされ、不合格となった場合に、CPU21によって実行される。そして、不合格箇所は、表示部26に表示された再構成画像上に表示される。
また、不合格箇所を表示部26に表示された再構成画像上に表示する場合は、例えば、再構成画像上の不合格箇所の色を他の箇所とは異なるものとしたり、不合格箇所の輪郭を強調したり、矢印で指したり、円で囲んだりすることで、不合格箇所がどこかを容易に判別できるようにする。
なお、不合格箇所の表示は、制御装置20の表示部26に表示された再構成画像上だけでなく、X線タルボ撮影装置1におけるコントローラー19の表示部に表示された再構成画像上に表示されてもよいし、制御装置20と通信可能に接続された外部装置における表示部に表示された再構成画像上に表示されてもよい。
また、不合格箇所は、画像生成プログラムが実行されることによって再構成画像から生成された繊維配向度又は繊維密度の面内分布表示画像や、強調表示プログラムによって強調表示された画像の上に重ねて表示することも可能となっている。
このような信号強度区別プログラムは、記憶部23に記憶されており、評価指標推定プログラムによって検査対象物を構成する材料の品質情報が評価指標として推定された場合に、CPU21によって実行される。
より具体的に説明すると、微分位相画像や小角散乱画像の信号値は、撮影方向に対する検査対象物の面の角度に応じて大きくなる。また、一次元格子若しくは二次元格子においては、格子配列方向に垂直な方向の端面形状は信号値が大きくなる。このようなことを踏まえ、検査対象物の撮影前において、検査対象物を構成する材料の形体情報(例えばCADデータ)があれば、正常な状態での撮影画像がどのような状態になるかを概略として予想することが可能となる。そのため、撮影後においては、生成された再構成画像と、材料の形体情報から推測される正常状態の信号を比較することで、設計本来の意図した形状による信号の影響を判定から除外することができる。また、合格品の既知の撮影サンプルが使用できる場合は、合格品の撮影データにおいて、信号が出ている箇所を除外することもできる。
このような検査対象範囲指定プログラムは、記憶部23に記憶されており、検査対象物の撮影前にCPU21によって実行される。指定された検査対象範囲に係る情報は、X線タルボ撮影装置1に送信され、送信された検査対象範囲に係る情報に基づいて撮影を行うことができるようになっている。
検査対象範囲は、例えば、欠陥が発生することが経験上予測される箇所や、強度不足が重大な問題を引き起こす箇所(例えば上記したような航空用エンジンのタービンにおける取付根元部分で使用中の応力が集中する箇所など)等であり、欠陥が発生しにくい箇所や強度不足が重大な問題を引き起こしにくい箇所は、撮影や検査を省略できるようにする。
の流れについて説明する。
材料の種類ごとのデータが記憶部23に記憶・蓄積されているため、入力データに基づいて、検査対象物を構成する材料の種類を特定することができる。
材料の形体ごとのデータが記憶部23に記憶・蓄積されているため、入力データに基づいて、検査対象物を構成する材料の形体情報を特定することができる。
検査対象範囲の指定は、ユーザーによって入力部24から任意に行われてもよいし、検査対象範囲指定プログラムを実行することによって行われてもよい。
検査対象物の材料が繊維を含んで構成されたものであり、繊維配向度及び/又は繊維密度である品質情報について、特に詳細な判定基準を設けて良否判定を行う場合は、撮影時、X線タルボ撮影装置1は、検査対象物をX線照射軸Caの軸周りに回転させて撮影し、かつ、被写体に対する撮影時の格子の、回転角度に対する信号強度を記憶するようにする。
X線タルボ撮影装置1による撮影後、再構成画像と、材料の形体情報から推測される正常状態の信号を比較することで、設計本来の意図した形状による信号の影響を判定から除外する。
検査対象物の材料が繊維を含んで構成されたものであり、繊維配向度及び/又は繊維密
度である品質情報を以て良否判定を行う場合は、第一データベース23aのうち第二相関データ32及び/又は第三相関データ33が用いられ、繊維配向度及び/又は繊維密度を評価指標として推定する。
検査対象物の材料が繊維を含んで構成されたものであり、繊維配向度及び/又は繊維密度である品質情報を以て良否判定を行う場合は、第二データベース23bのうち第五相関データ35及び/又は第六相関データ36が用いられ、繊維配向度及び/又は繊維密度に基づいた機械強度を評価指標として推定する。
合否判定の結果、合格だった場合は、機械強度がどの程度であったかが、表示部26に表示される。合否判定の結果は、注目箇所ごとに判定した結果でもよいし、複数の注目箇所における合否判定の結果に基づいて導き出された検査対象物全体としての判定結果でもよい。
続いて、機械強度における合否判定の判定結果に基づいて、材料の不合格箇所を、再構成画像上に表示する(ステップS10)。
合否判定の結果、合格であれば検査対象物は良品とされる。以上のような流れで、検査対象物の良否判定を行うことができる。
すなわち、材料の名前及び形体情報が入力されることによって検査対象物を構成する材料の種類と形体情報が特定され、モアレ画像Moに基づいて生成された再構成画像における信号強度に係る情報と、検査対象物を構成する材料の品質情報と、の相関を表す第一データベース23aに基づいて、再構成画像における信号強度に係る情報から、撮影された検査対象物の品質情報を導き出すことができる。そのため、例えばコンピューター断層撮影(いわゆるCT:Computed Tomography)などの三次元的な画像再構成手段を用いるこ
となく、少ないデータ量で短時間に検査対象物の大きな面積での検査を行うことが可能となる。さらに、コンピューター断層撮影のように、検査対象物を多方向に(三次元的に)回転させる必要がないので、検査対象物が大型であっても対応することができる。
名前及び形体情報と、第二データベース23bとに基づいて、検査対象物の注目箇所における機械強度を評価指標として推定するので、例えばコンピューター断層撮影などの三次元的な画像再構成手段を用い、時間をかけて詳細な構造解析を行うことなく、簡便に、検査対象物を構成する材料の機械強度を推定することができる。さらに、材料の品質情報と機械強度の双方を評価指標とすることができるので、評価指標としての精度を高めると同時に、材料に関する知識の浅い評価者でも良否判定を行うことができる。
さらに、CPU21は、機械強度における合否判定の判定結果に基づいて、材料の不合格箇所を、再構成画像上に表示するので、発生した不合格箇所の位置が判りやすく、不合格箇所の発生原因等を解析する際の効率が向上する。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
本変形例における制御装置20は、機械学習機能を有している。そして、X線タルボ撮影装置1によって得られる再構成画像と、撮影後に検査対象物に対して実際に行われる各種試験によって得られる試験データと、検査対象物を構成する材料及び形体情報と、良否判定の結果を教師データとし、機械学習を行った良否判定AIにより、第一データベース23a及び第二データベース23bを用いずに検査対象物の良否判定を行う。
なお、記憶部23には、機械学習を行うための機械学習プログラムが記憶されており、機械学習プログラムは、機械学習を行う場合にCPU21によって実行される。
実際に外的な負荷が掛けられるような機械強度試験や、耐熱条件下や耐振条件下での機械強度試験が行われる。また、これらの試験は、計算機上で物性情報を元に仮想的に機械強度を評価する、強度シミュレーションで代用される場合もある。すなわち、図示しない機械強度試験装置や計算機による仮想試験環境が用いられて、検査対象物の機械強度試験又は強度シミュレーションが行われる。
そして、このような機械強度試験や強度シミュレーションの結果と、その良否判定の結果として、教師データを得ることができる。
以上のような流れで、検査対象物の良否判定について、機械学習を行うことができる。
図10には、機械学習結果を使った良否判定の流れが示されている。ステップS11からステップS14までは、図9に示す機械学習の流れと同じく、検査対象の材料名もしくは種類の情報と形状情報を入力した後、注目箇所の撮影を行って得たモアレ画像Moを使い、微分位相画像や、小角散乱画像等の再構成画像を生成する(ステップS11~ステップS14)。
その後、機械学習を行ったAIによる良否判定(ステップS19)により、検査対象物の良否判定を行う。
る。また、第一データベース23a及び第二データベース23bを照合することなく、検査を行うことができるので、検査を高速化することが可能となる。
本変形例における制御装置20は、機械学習機能を有している。そして、複数種類の評価指標の組み合わせを機械学習機能によって結び付けて検査対象物の良否判定を行う。
すなわち、良否判定を行うにあたって、クラック密度等の品質情報や機械強度だけでなく、その他の情報も加味されることになり、複合評価が可能となる。
さらに、複数種類の評価指標のうち単体評価で不合格があったとしても、その他の評価指標で合格であった場合には検査対象物として良品であるようにするなどして、判定に柔軟性を持たせ、これにより、歩留まりの改善を図ることも可能となる。
11 X線発生装置
11a X線源
112 ろ過フィルター
113 照射野絞り
114 照射野ランプ
12 線源格子
120 第1のカバーユニット
12a 固定部材
13 被写体台
130 第2のカバーユニット
14 第1格子
15 第2格子
16 X線検出器
17 支柱
17a 緩衝部材
18 基台部
19 コントローラー
2 画像処理装置
20 制御装置
21 CPU(制御部)
22 RAM
23 記憶部
23a 第一データベース
23b 第二データベース
24 入力部
25 外部データ入力部
26 表示部
27 通信部
31 第一相関データ
32 第二相関データ
33 第三相関データ
34 第四相関データ
35 第五相関データ
36 第六相関データ
H 被写体(検査対象物)
S スリット
d 周期
Mo モアレ画像
Ca 照射軸
Claims (12)
- X線タルボ撮影装置によって撮影された検査対象物の再構成画像を基に、当該検査対象物の良否判定を行う際に用いられる評価指標を推定するためのX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体である前記検査対象物及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記検査対象物の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するものであり、
制御部と、
前記モアレ画像に基づいて生成された前記再構成画像における信号強度に係る情報と、前記検査対象物を構成する材料の品質情報との、材料の名前若しくは種類ごとの相関を表す第一データベースを備えており、
前記制御部は、入力される前記材料の名前若しくは種類に関する情報及び形体情報と、前記第一データベースとに基づいて、前記再構成画像から、前記検査対象物の注目箇所における品質情報を前記評価指標として推定することを特徴とするX線撮影システム。 - 前記材料の品質情報と、当該品質情報に対応する機械強度に係る情報との、材料の名前若しくは種類ごとの相関を表す第二データベースを備えており、
前記制御部は、前記材料の名前若しくは種類に関する情報及び形体情報と、前記第二データベースとに基づいて、前記検査対象物の注目箇所における機械強度を前記評価指標として推定することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影システム。 - 前記制御部は、
ユーザーが設定した前記機械強度の判定基準に基づいて、前記材料の、前記機械強度における合否判定を自動で行い、
前記機械強度における合否判定の判定結果に基づいて、前記材料の不合格箇所を、前記再構成画像上に表示することを特徴とする請求項2に記載のX線撮影システム。 - 前記材料の形体情報には、厚み情報とされており、
前記材料の品質情報には、前記材料の厚み情報に比例して前記再構成画像における信号強度が変動する種類の品質情報が含まれており、
前記第一データベースは、前記材料の厚み情報に対応しており、
新規の厚み情報の入力を受けた場合に、前記制御部は、前記第一データベースに記憶されている前記材料の厚み情報を利用し、前記新規の厚み情報に対応する評価指標を推定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のX線撮影システム。 - 前記X線タルボ撮影装置は、前記検査対象物のモアレ画像を取得する場合に、前記検査対象物をX線照射軸の軸周りに回転させて撮影し、かつ、前記検査対象物に対する前記格子の、回転角度に対する信号強度を記憶するものであり、
前記検査対象物は、当該検査対象物の強度を向上させる繊維を含んで構成され、
前記第一データベースにおいて、前記再構成画像における信号強度に係る情報には、前記再構成画像における信号強度の変化の角度依存性に係る情報が含まれ、前記品質情報には、前記繊維の配向度及び/又は繊維密度に係る品質情報が含まれており、
前記制御部は、前記検査対象物の注目箇所における評価指標として、前記検査対象物の注目箇所における繊維配向度及び繊維密度を推定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のX線撮影システム。 - 前記制御部は、複数の角度で撮影されて得られた前記再構成画像を演算処理にて合成することにより、着目する複数の前記繊維配向度の比率における面内分布及び/又は前記繊
維密度の面内分布を抽出することを特徴とする請求項5に記載のX線撮影システム。 - 前記制御部は、ユーザーが設定した信号の振り分け基準に従い、前記再構成画像における信号強度の分布を簡素化して表示することにより、前記繊維配向度の比率及び/又は前記繊維密度の面内における傾向若しくは分布の境界を強調して抽出することを特徴とする請求項6に記載のX線撮影システム。
- 前記第二データベースにおいて、前記材料の品質情報には、前記繊維配向度及び/又は繊維密度に係る情報が含まれ、前記品質情報に対応する機械強度に係る情報には、前記繊維配向度及び/又は繊維密度に対応する機械強度に係る情報が含まれており、
前記制御部は、前記検査対象物の注目箇所における機械強度として、前記繊維配向度及び/又は繊維密度に基づいた機械強度を推定することを特徴とする請求項2又は3を引用する請求項5~7のいずれか一項に記載のX線撮影システム。 - 前記制御部は、機械学習機能を有しており、
前記制御部は、
前記X線タルボ撮影装置によって得られる前記再構成画像と、撮影後に前記検査対象物に対して実際に行われる各種試験によって得られる試験データと、前記検査対象物を構成する材料の名前及び種類と、形体情報に対する良否判定結果と、
前記再構成画像と前記試験データと前記材料の名前及び種類と前記形体情報に対する強度推定若しくは検証結果を教師データとし、前記機械学習機能によって結び付けることで、前記第一データベース及び前記第二データベースを用いずに前記検査対象物の良否判定若しくは強度の推定を行うことを特徴とする請求項2~8のいずれか一項に記載のX線撮影システム。 - 前記制御部は、機械学習機能を有しており、複数種類の前記評価指標の組み合わせを前記機械学習機能によって結び付けて前記検査対象物の良否判定を行うことを特徴とする請求項2~8のいずれか一項に記載のX線撮影システム。
- 前記制御部は、前記再構成画像と、入力される前記材料の形体情報とに基づいて、前記検査対象物の前記品質情報に起因する信号強度と、前記検査対象物の形体に起因する信号強度と、を区別することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のX線撮影システム。
- 前記制御部は、前記検査対象物自体又は当該検査対象物を構成する材料について、検査対象範囲を予め指定することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のX線撮影システム。
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