JP2022093074A - 非磁性部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高比抵抗と高強度を両立できる非磁性部材を提供する。【解決手段】本発明は、交番磁界中で用いられる非磁性部材であって、マトリックス中に強化粒子が分散したチタン基複合材を備える。そのマトリックスは、その全体に対する質量割合で、Al当量が5.5~11となるα相安定化元素とMo当量が6~17となるβ相安定化元素とを含むと共にβ相安定化元素にはFeが含まれるチタン合金からなる。強化粒子は、Cの一部が欠損したTiCy(0<y<1)からなる。チタン合金は、体心立方格子構造組織(bcc組織)中に、六方最密格子構造組織(hcp組織)が島状に分布した複合組織となり得る。hcp組織は、例えば、複合組織全体に対して30~80体積%ある。本発明の非磁性部材は高比抵抗と高強度を両立できるため、種々の電磁用部材に用いることができ、その渦電流損の低減も図れる。【選択図】図1A
Description
本発明は、交番磁界中で用いられる非磁性部材等に関する。
電磁気を利用した機器(単に「電磁機器という。)は、電動機(モータの他、ジェネレータも含む。)、アクチュエータなど種々あり、交番磁界を利用していることが多い。このような電磁機器は、省エネルギー化を図るために、交番磁界中で使用したときの高周波損失の低減が求められる。特に、(超)高回転する電動機等では、その回転数(交番磁界の周波数)の2乗に比例して大きくなる渦電流損を低減することが強く求められる。例えば、モータのロータコアやステータコア等は、交番磁界に直交する方向に生じる渦電流を抑制するため、絶縁層で被覆された電磁鋼板を積層して構成されることが多い。
しかし、交番磁界中で使用される部材(「電磁用部材」という。)には、そのような構成を採用し難いものもある。この場合、電気抵抗率(単に「比抵抗」という。)の高い材質で電磁用部材を構成して、渦電流損を低減する必要がある。
なお、磁気回路中に配設される電磁用部材は磁性材とは限らず、非磁性材の場合もある。また、電磁用部材は、電気的特性(例えば比抵抗)や磁気的特性(例えば透磁率)だけではなく、所定の機械的特性(剛性、強度、延性等)を満たすことも要求され得る。このような電磁用部材に関連する記載が下記の特許文献にある。
特許文献1、2には、非磁性材からなる電磁用部材(「非磁性部材」という。)の一例として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる保護管(スリーブ)に関する記載がある。保護管は、モータのロータシャフト(回転軸)の外周側に設けた円筒状の永久磁石の外周側に被嵌される。保護管により、高回転時に大きな遠心力が作用する永久磁石の損壊が防止される。しかし、回転数をさらに増加させる場合、CFRPからなる保護管では、機械的特性が必ずしも十分ではない。
特許文献3には、チタン基複合材からなる非磁性部材が提案されている。そのチタン基複合材は、Ti-6%Al-4%V等からなるマトリックス中に、Cの一部が欠損したTiCy(0<y<1)からなる強化粒子を分散させてなる。この非磁性部材は、高比抵抗、高強度および高剛性である。
ちなみに、特許文献4~8にもチタン合金またはチタン基複合材に関する記載があるが、電磁用部材やその比抵抗等に関する具体的な記載はない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来よりも高特性な非磁性部材等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、従来と異なるチタン合金をマトリックスとすることにより、特性をより向上させたチタン基複合材を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《非磁性部材》
(1)本発明は、交番磁界中で用いられる非磁性部材であって、マトリックス中に強化粒子が分散したチタン基複合材を備え、該マトリックスは、その全体に対する質量割合で、Al当量が5.5~11となるα相安定化元素とMo当量が6~17となるβ相安定化元素とを含むと共に該β相安定化元素にはFeが含まれるチタン合金からなり、該強化粒子は、TiCy(0<y<1)からなる非磁性部材である。
(1)本発明は、交番磁界中で用いられる非磁性部材であって、マトリックス中に強化粒子が分散したチタン基複合材を備え、該マトリックスは、その全体に対する質量割合で、Al当量が5.5~11となるα相安定化元素とMo当量が6~17となるβ相安定化元素とを含むと共に該β相安定化元素にはFeが含まれるチタン合金からなり、該強化粒子は、TiCy(0<y<1)からなる非磁性部材である。
(2)本発明の非磁性部材(電磁用部材)は、高比抵抗、高強度または高剛性を発現するチタン基複合材を備える。このため、高周波数(例えば高回転数)域の交番磁界中で使用されるときでも、非磁性部材に発生する渦電流損の低減が図られる。また、高速運動(回転、往復動等)により大きな力(遠心力、慣性力等)が作用し得るときでも、非磁性部材の薄肉化、軽量化または小型化等が可能となる。
なお、本発明に係るチタン基複合材が優れた特性を発現する理由は必ずしも定かではないが、現状、次のように考えられる。マトリックスを構成するチタン合金は、高Al当量のα相安定化元素と高Mo当量のβ相安定化元素とが相乗的に作用して、比抵抗と強度をより高次元で両立するようになったと考えられる。特に、磁性元素であるFeが、Tiに固溶することにより、非磁性なチタン合金の比抵抗が顕著に向上したと考えられる。
また、マトリックス中に分散(または析出)している強化粒子(TiCy:0<y<1)は、機械的特性(強度、剛性等)の向上に寄与するのみならず、比抵抗の向上にも寄与していると考えられる。これは、Cの一部が欠損したTiCy粒子は、電子散乱または平均自由行程の短縮が生じ易くなり、導電性粒子であるTiC粒子(y=1/比抵抗:0.52μΩm程度)よりも比抵抗がかなり大きくなったためと考えられる。
《製造方法》
本発明は、上述した非磁性部材やチタン基複合材の製造方法としても把握できる。例えば、チタン合金源粉末とTiCy源粉末を含む混合粉末から焼結体を得る焼結工程を備え、その焼結体からチタン基複合材や非磁性部材が得られる製造方法でもよい。
本発明は、上述した非磁性部材やチタン基複合材の製造方法としても把握できる。例えば、チタン合金源粉末とTiCy源粉末を含む混合粉末から焼結体を得る焼結工程を備え、その焼結体からチタン基複合材や非磁性部材が得られる製造方法でもよい。
焼結体を非磁性部材に応じた所望形状にする加工工程をさらに備えてもよい。チタン基複合材または非磁性部材は、必ずしも、特段の熱処理(例えば溶体化処理や時効処理)が施されなくても、優れた特性を発現し得る。なお、本発明に係るチタン基複合材は、焼結材に限らず溶製材でもよい。
《その他》
(1)本明細書でいうα相安定化元素は、純チタンの同素変態温度(約885℃)を上昇させ、α相域を拡大させる合金元素である。β相安定化元素は、その同素変態温度を下降させ、β相域を拡大させる合金元素である。換言すると、α相安定化元素は、Al当量の算出式に現れる元素であり、β相安定化元素はMo当量の算出式に現れる元素である。同素変態温度または当量に影響する合金元素である限り、一般的に中性的元素(全率固溶型元素)とされる合金元素(Sn、Zr等)でも、本明細書ではα相安定化元素またはβ相安定化元素として扱う。勿論、本発明に係るチタン合金は、同素変態温度または当量に影響しない中性的元素(同素変態温度に影響しない合金元素)をさらに含んでもよい。
(1)本明細書でいうα相安定化元素は、純チタンの同素変態温度(約885℃)を上昇させ、α相域を拡大させる合金元素である。β相安定化元素は、その同素変態温度を下降させ、β相域を拡大させる合金元素である。換言すると、α相安定化元素は、Al当量の算出式に現れる元素であり、β相安定化元素はMo当量の算出式に現れる元素である。同素変態温度または当量に影響する合金元素である限り、一般的に中性的元素(全率固溶型元素)とされる合金元素(Sn、Zr等)でも、本明細書ではα相安定化元素またはβ相安定化元素として扱う。勿論、本発明に係るチタン合金は、同素変態温度または当量に影響しない中性的元素(同素変態温度に影響しない合金元素)をさらに含んでもよい。
本明細書でいう「非磁性」(透磁率)の程度は、電磁機器の磁気回路を短絡させない範囲であればよい。なお、本明細書では、非磁性なチタン基複合材を有すると共に交番磁界中で使用される電磁用部材を、非磁性部材と称している。この非磁性部材は、その全体がチタン基複合材でなくてもよいし、またその全体が必ずしも非磁性でなくてもよい。要するに本発明の非磁性部材は、少なくとも一部の部位がチタン基複合材からなればよい。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また本明細書でいう「x~yμΩm」はxμΩm~yμΩmを意味する。他の単位系(MPa、GPa等)についても同様である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、非磁性部材のみならず、その製造方法等にも該当する。また方法的な構成要素でも物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《マトリックス》
(1)組成
マトリックスを構成するチタン合金は、Al当量が5.5~11、6.5~10さらには7.5~9となるα相安定化元素と、Mo当量6~17、8~16さらには10~15となるβ相安定化元素とを含むとよい。Al当量が過小では比抵抗が不十分となり、それが過大では伸びが小さくなる。Mo当量が過小では強度が不十分となり、それが過大では伸びが小さくなる。
(1)組成
マトリックスを構成するチタン合金は、Al当量が5.5~11、6.5~10さらには7.5~9となるα相安定化元素と、Mo当量6~17、8~16さらには10~15となるβ相安定化元素とを含むとよい。Al当量が過小では比抵抗が不十分となり、それが過大では伸びが小さくなる。Mo当量が過小では強度が不十分となり、それが過大では伸びが小さくなる。
ここで、Al当量([Al」eq)とMo当量([Mo」eq)は次のように算出される(出典:軽金属 第55巻 第2号(2005)、PP.97~102)。
[Al」eq=[Al]+[Zr]/6+[Sn]/3+10[O]+16.4[N]+11.7[C]
[Mo」eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.5+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]
+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe]
ただし、本発明では、特に断らない限り、Al当量をα相安定化元素の主要元素であるAl、Zr、およびSnに基づいて規定する([Al」eq=[Al]+[Zr]/6+[Sn]/3)。
[Al」eq=[Al]+[Zr]/6+[Sn]/3+10[O]+16.4[N]+11.7[C]
[Mo」eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.5+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]
+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe]
ただし、本発明では、特に断らない限り、Al当量をα相安定化元素の主要元素であるAl、Zr、およびSnに基づいて規定する([Al」eq=[Al]+[Zr]/6+[Sn]/3)。
本明細書でいう組成割合(濃度)は、特に断らない限り、対象全体に対する質量割合(質量%)であり、単に「%」で示す。上述の算出式中に示す[]は、マトリックスまたはチタン合金の全体に対する各合金元素の質量割合(%)を示す。
α相安定化元素は、例えば、Alの他、Zr、Sn(中性的元素)等でもよい。代表的なAlなら、例えば、チタン合金全体(100質量%)に対して5~11%、6~10%さらには7~9%含まれてもよい。
β相安定化元素は、例えば、Mo、V、Fe、Mn等である。代表的なMoなら、例えば、チタン合金全体に対して1~7%さらには1.5~6%、Vなら4~8%さらには5~7%含まれてもよい。またチタン合金全体に対して、比抵抗の向上に寄与するFeが1~5%さらには1.5~4%含まれてもよい。
さらにマトリックス中には、被削性を向上させる元素(S等)、固溶強化または析出強化させる元素等が含まれてもよい。
チタン合金には、技術的・経済的に除去困難または不可避な不純物(例えば、O、N等)が含まれる。例えば、酸素(O)は、チタン合金全体に対して、0.1~0.7%さらには0.2~0.5%程度含まれてもよい。
(2)組織
マトリックスの金属組織(単に「組織」という。)は、製造過程や熱処理の影響を受けて変化し得る。組織は、例えば、溶製材か焼結材によっても異なるし、焼結材でも熱処理の有無やその熱処理条件によっても異なる。もっとも、マトリックスを構成するチタン合金は、Al当量とMo当量が共に十分大きいため、具体的な形態は別にして、α相とβ相が混在した金属組織になり易い。
マトリックスの金属組織(単に「組織」という。)は、製造過程や熱処理の影響を受けて変化し得る。組織は、例えば、溶製材か焼結材によっても異なるし、焼結材でも熱処理の有無やその熱処理条件によっても異なる。もっとも、マトリックスを構成するチタン合金は、Al当量とMo当量が共に十分大きいため、具体的な形態は別にして、α相とβ相が混在した金属組織になり易い。
一例として、焼結材からなるチタン合金では、体心立方格子構造(body centered cubic lattice)の組織(「bcc組織」という。)中に、六方最密格子構造(hexagonal close-packed lattice)の組織(「hcp組織」という。)が島状に分布した複合組織が得られる(図1A参照)。
bcc組織は主にβ相からなり、hcp組織は主にα相からなる。より具体的にいうと、bcc組織は、基元素であるTiと、β相安定化元素(Mo、Fe、V等)の一種以上から主になる。hcp組織は、基元素であるTiと、α相安定化元素(Al等)の一種以上から主になる。 なお、bcc組織にα相安定化元素の一種以上が含まれてもよい。同様に、hcp組織にβ相安定化元素の一種以上が含まれてもよい。
hcp組織は、例えば、複合組織全体に対して30~80体積%、35~75体積%さらには40~65体積%を占め得る。ちなみに、そのhcp組織は、例えば、針状または粒状の超微細組織の集合体となっている。各超微細組織は、例えば、最大長が2μm以下さらには1μm以下、アスペクト比(最大長/最小長)が3~20さらには5~10である。なお、各組織(相)の体積割合、サイズ、アスペクト比は、二次元の光学顕微鏡写真(像)を解析ソフト:ImageJ(オープンソースプログラム)で分析(計算)して求まる。
上述の複合組織は、従来のチタン合金に観られない組織である。但し、チタン合金の組織とチタン合金の特性(比抵抗や強度等)との相関は、現状、明らかではない。
チタン合金中には、bcc組織、hcp組織および強化粒子(TiCy)とは異なる組織や析出物が存在してもよい。例えば、bcc組織中にTi-Al-Cからなる微細な析出物が存在してもよい。これにより、マトリックス(チタン合金)ひいてはチタン基複合材の強度がさらに向上し得る。
《強化粒子》
強化粒子であるTiCy(0<y<1)は、yが0.4~0.9、0.45~0.6さらには0.5~0.55でもよい。yが過小ではチタン基複合材の強度の向上等が少なくなる。yが過大ではチタン基複合材の比抵抗の増大が少なくなる。なお、yは、チタン基複合材のX線回折パターンに基づいて算出される。その詳細は後述する。
強化粒子であるTiCy(0<y<1)は、yが0.4~0.9、0.45~0.6さらには0.5~0.55でもよい。yが過小ではチタン基複合材の強度の向上等が少なくなる。yが過大ではチタン基複合材の比抵抗の増大が少なくなる。なお、yは、チタン基複合材のX線回折パターンに基づいて算出される。その詳細は後述する。
強化粒子は、チタン基複合材全体に対して1~15体積%さらには6~12体積%含まれてもよい。強化粒子が過少ではチタン基複合材の剛性の向上が少なくなり、強化粒子が過多ではチタン基複合材の延性(伸び)が減少して加工性も低下し得る。強化粒子の存在割合は、特に断らない限り、チタン基複合材全体(100体積%)に対する体積割合(体積%)で示す。チタン基複合材中に分散している強化粒子の体積割合は、二次元の光学顕微鏡写真(像)から、既述した組成解析ソフト(ImageJ)により計算で求めた強化粒子の体積率である。
なお、本発明に係るチタン基複合材は、TiCy以外の強化粒子(例えばTiC、TiB等)をさらに含んでもよい。この場合でも、強化粒子の合計量は15体積%以下であると好ましい。
《チタン基複合材》
チタン基複合材は、電気的または機械的に優れた特性を発揮する。例えば、2~5μΩm、2.1μΩm~4μΩmさらには2.2μΩm~3μΩmという比抵抗を発揮する。このような比抵抗は、純Tiの比抵抗(0.4μΩm程度)、代表的なチタン合金(Ti-6%Al-4%V)の比抵抗(1.7μΩm程度)、TiC(y=1)の比抵抗(0.5μΩm程度)、TiB2の比抵抗(0.07μΩm程度)等と比較して遙かに大きい。なお、本明細書でいう比抵抗値は、特に断らない限り、所定サイズの試料(バルク材)について、直流四端子法で測定して求まる(図6参照)。
チタン基複合材は、電気的または機械的に優れた特性を発揮する。例えば、2~5μΩm、2.1μΩm~4μΩmさらには2.2μΩm~3μΩmという比抵抗を発揮する。このような比抵抗は、純Tiの比抵抗(0.4μΩm程度)、代表的なチタン合金(Ti-6%Al-4%V)の比抵抗(1.7μΩm程度)、TiC(y=1)の比抵抗(0.5μΩm程度)、TiB2の比抵抗(0.07μΩm程度)等と比較して遙かに大きい。なお、本明細書でいう比抵抗値は、特に断らない限り、所定サイズの試料(バルク材)について、直流四端子法で測定して求まる(図6参照)。
チタン基複合材は、例えば、引張強度(破断強度)で1200~1800MPaさらには1300~1700MPa、0.2%耐力で1200~1700MPa、1250~1650MPa、さらには1300~1600MPaという高強度を発揮し得る。またチタン基複合材は、例えば、ヤング率で115~140GPaさらには120~135GPaという高剛性も発揮し得る。
さらにチタン基複合材は、例えば、伸びが0.1~2%さらには0.4~1.5%程度あり、非磁性部材へ塑性加工も可能である。
《製造方法》
チタン基複合材(非磁性部材)は、例えば、焼結法、溶製法、(粉末)積層造形法(いわゆる3Dプリンター)等により製造され得る。その一例として、TiCyの分散性や原子比(C/Ti)の制御性(つまりyの制御性)に優れる反応焼結法(単に「焼結法」という。)について、以下に説明する。
チタン基複合材(非磁性部材)は、例えば、焼結法、溶製法、(粉末)積層造形法(いわゆる3Dプリンター)等により製造され得る。その一例として、TiCyの分散性や原子比(C/Ti)の制御性(つまりyの制御性)に優れる反応焼結法(単に「焼結法」という。)について、以下に説明する。
焼結法は、粉末の成形体を加熱して焼結体を得る方法である。成形体または焼結体が非磁性部材の形態に近いと(つまりニアネットシェイプであると)、後加工を削減できる。勿論、焼結体に対して、冷間状態または熱間状態で、鍛造やプレス等の塑性加工がなされてもよい。
(1)粉末
通常、複数種の原料粉末を配合(秤量)した混合粉末を用いて成形、焼結がなされる。混合粉末は、主にマトリックスとなる粉末(チタン合金源粉末)と主に強化粒子となる粉末(TiCy源粉末)とを少なくとも含むとよい。チタン合金源粉末および/またはTiCy源粉末も、単種に限らず複数種でもよい。TiCy源粉末は、例えば、TiC粉末である。なお、チタン合金源粉末が強化粒子の生成に関与したり、TiCy源粉末がマトリックスの生成に関与してもよい。
通常、複数種の原料粉末を配合(秤量)した混合粉末を用いて成形、焼結がなされる。混合粉末は、主にマトリックスとなる粉末(チタン合金源粉末)と主に強化粒子となる粉末(TiCy源粉末)とを少なくとも含むとよい。チタン合金源粉末および/またはTiCy源粉末も、単種に限らず複数種でもよい。TiCy源粉末は、例えば、TiC粉末である。なお、チタン合金源粉末が強化粒子の生成に関与したり、TiCy源粉末がマトリックスの生成に関与してもよい。
原料粉末には、単体粉末の他、合金粉末、化合物粉末等が用いられる。単体粉末として、例えば、Ti源粉末(純Ti粉末)がある。合金粉末として、例えば、Al-V粉末、Ti-Al粉末、Fe-Mo粉末(フェロモリブデン粉末)等がある。化合物粉末として、例えば、TiC粉末がある。
なお、合金元素が同じ同種の粉末でも、その組成割合は様々である。所望の配合組成に応じて、適当な原料粉末が選択されればよい。いずれにしても、単体粉末よりも合金粉末や化合物粉末を用いることで、原料コストの低減、組織の均一化や安定化等が図られる。
混合される各粉末(特にTi源粉末)は、例えば、篩い分けにより50μm以下さらには40μm以下に分級されていると、チタン基複合材の均一化が図れて好ましい。各粉末の平均粒径(メジアン径:D50)は、例えば、1~20μmさらには3~15μmであるとよい。混合粉末の調製は、V型混合機、ボールミル、振動ミル等を用いてなされる(混合工程)。
(2)成形工程
混合粉末は、金型成形、CIP(Cold Isostatic Pressing/冷間等方圧加工法)成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing/ゴム等方圧加工法)成形等されて、所望形状の成形体となる。成形体の形状は、最終的な部材(非磁性部材)に近い形状でもよいし、焼結工程後に加工を施すときはビレット状(中間素材形状)等でもよい。成形圧力は適宜調整され得るが、例えば、200~1200MPaさらには300~800MPaとするとよい。
混合粉末は、金型成形、CIP(Cold Isostatic Pressing/冷間等方圧加工法)成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing/ゴム等方圧加工法)成形等されて、所望形状の成形体となる。成形体の形状は、最終的な部材(非磁性部材)に近い形状でもよいし、焼結工程後に加工を施すときはビレット状(中間素材形状)等でもよい。成形圧力は適宜調整され得るが、例えば、200~1200MPaさらには300~800MPaとするとよい。
(3)焼結工程
成形体は、真空中や不活性ガス中で加熱することにより、焼結体となる。焼結温度は、例えば、1150℃~1400℃さらには1200~1350℃とするとよい。焼結時間は、例えば、3~25時間さらには10~20時間とするとよい。適切な焼結温度と焼結時間により、高特性なチタン基複合材を効率的に得ることができる。なお、HIP(Hot Isostatic Pressing/熱間等方圧加工法)成形により、上述した成形工程と焼結工程が同時になされてもよい。
成形体は、真空中や不活性ガス中で加熱することにより、焼結体となる。焼結温度は、例えば、1150℃~1400℃さらには1200~1350℃とするとよい。焼結時間は、例えば、3~25時間さらには10~20時間とするとよい。適切な焼結温度と焼結時間により、高特性なチタン基複合材を効率的に得ることができる。なお、HIP(Hot Isostatic Pressing/熱間等方圧加工法)成形により、上述した成形工程と焼結工程が同時になされてもよい。
(4)冷却工程
焼結工程後の冷却は、例えば、0.1~10℃/sで、炉冷や強制冷却(不活性ガスの導入等)されるとよい。冷却速度の制御により、チタン基複合材(特にマトリックス)の組織、強化粒子の組成・体積率等が調整されてもよい。
焼結工程後の冷却は、例えば、0.1~10℃/sで、炉冷や強制冷却(不活性ガスの導入等)されるとよい。冷却速度の制御により、チタン基複合材(特にマトリックス)の組織、強化粒子の組成・体積率等が調整されてもよい。
(5)加工工程
焼結体は、そのまま非磁性部材とされてもよいし、塑性加工、切削加工等されて非磁性部材とされてもよい。塑性加工は、冷間加工でも熱間加工でもよい。熱間加工によれば、割れ等を抑止して、歩留まりよく非磁性部材を得ることができる。熱間加工後の冷却は、炉冷でもよいが、空冷でも十分である。
焼結体は、そのまま非磁性部材とされてもよいし、塑性加工、切削加工等されて非磁性部材とされてもよい。塑性加工は、冷間加工でも熱間加工でもよい。熱間加工によれば、割れ等を抑止して、歩留まりよく非磁性部材を得ることができる。熱間加工後の冷却は、炉冷でもよいが、空冷でも十分である。
なお、こうして得られたチタン基複合材は、溶体化処理や時効処理等の熱処理を施すまでもなく、所望の組織や特性を発現し得る。このような非熱処理型チタン基複合材は、非磁性部材の製造コストの低減に寄与する。
《非磁性部材/電動装置》
本発明の非磁性部材は、高比抵抗、高強度、低透磁率であるため、交番磁界中で使用される電磁用部材として好適である。その具体的な用途を問わないが、例えば、電動機(電磁機器、電動装置)に組み込まれる永久磁石(界磁源)の保護部材(保護管、保護ケース)等に用いることができる(既述した特開2020-43746号公報参照)。なお、そのような電動機の一例として、高回転を要求される遠心式の圧縮機がある。このような圧縮機は、例えば、エンジンの過給器や燃料電池のエアコンプレッサに用いられる。
本発明の非磁性部材は、高比抵抗、高強度、低透磁率であるため、交番磁界中で使用される電磁用部材として好適である。その具体的な用途を問わないが、例えば、電動機(電磁機器、電動装置)に組み込まれる永久磁石(界磁源)の保護部材(保護管、保護ケース)等に用いることができる(既述した特開2020-43746号公報参照)。なお、そのような電動機の一例として、高回転を要求される遠心式の圧縮機がある。このような圧縮機は、例えば、エンジンの過給器や燃料電池のエアコンプレッサに用いられる。
種々の試料(焼結チタン基複合材)を製作し、それらの電気的特性(比抵抗)と機械的特性(引張強度、0.2%耐力、ヤング率、伸び)を評価した。このような具体例を挙げつつ、以下に本発明をさらに詳しく説明する。
《試料の製作》
(1)原料粉末
主にマトリックスを生成する(純)Ti粉末および各種の合金粉末(チタン合金源粉末)と、主に強化粒子を生成する化合物粉末(強化粒子源粉末)を用意した。
(1)原料粉末
主にマトリックスを生成する(純)Ti粉末および各種の合金粉末(チタン合金源粉末)と、主に強化粒子を生成する化合物粉末(強化粒子源粉末)を用意した。
Ti粉末(Ti源粉末)には、市販の水素化脱水素粉末(トーホーテック株式会社製)を篩い(#350,平均粒径75μm)で分級したものを用いた。
合金粉末(合金元素源粉末)には、以下の粉末の一種または複数種を用いた。
(a) Al-40%V粉末(平均粒径:9μm/キンセイマテック株式会社製)
(b) Ti-36%Al粉末(平均粒径:9μm/大同特殊鋼株式会社製)
(c) Fe-60%Mo粉末(平均粒径:45μm/太陽鉱工株式会社製)
(a) Al-40%V粉末(平均粒径:9μm/キンセイマテック株式会社製)
(b) Ti-36%Al粉末(平均粒径:9μm/大同特殊鋼株式会社製)
(c) Fe-60%Mo粉末(平均粒径:45μm/太陽鉱工株式会社製)
化合物粉末には、以下の粉末のいずれかを用いた。
(a)TiC粉末 (平均粒径:3μm/日本新金属株式会社製)
(b)SiC粉末 (平均粒径:3μm/信濃電気製錬株式会社製)
(a)TiC粉末 (平均粒径:3μm/日本新金属株式会社製)
(b)SiC粉末 (平均粒径:3μm/信濃電気製錬株式会社製)
本実施例で示す組成は、特に断らない限り、各原料粉末または混合粉末の全体に対する質量割合(質量%)であり、単に「%」で示す。各粉末の平均粒径はレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(MT3300EX/日機装株式会社製)で求めた。なお、各粉末には、粒子表面に不可避に吸着または結合した酸素(不純物)が僅かに含まれ得る。
(2)混合工程
先ず、表1に示すマトリックス組成(マトリックス全体を100質量%としたときの質量割合)となるように、Ti粉末と各合金粉末を秤量して配合した。こうして得られたマトリックス粉末に、化合物粉末(TiCy源粉末/TiC粉末)を表1に示す体積割合で加えた。化合物粉末の体積割合は混合粉末全体を100体積%とした。例えば、試料2なら、マトリックス粉末と化合物粉末との体積比を19:1とした。このように配合した粉末をV型混合器で1時間混合して、各試料毎の混合粉末を得た。なお、化合物粉末として、試料C4のみSiC粉末を用いて、それ以外の試料では全てTiC粉末を用いた。
先ず、表1に示すマトリックス組成(マトリックス全体を100質量%としたときの質量割合)となるように、Ti粉末と各合金粉末を秤量して配合した。こうして得られたマトリックス粉末に、化合物粉末(TiCy源粉末/TiC粉末)を表1に示す体積割合で加えた。化合物粉末の体積割合は混合粉末全体を100体積%とした。例えば、試料2なら、マトリックス粉末と化合物粉末との体積比を19:1とした。このように配合した粉末をV型混合器で1時間混合して、各試料毎の混合粉末を得た。なお、化合物粉末として、試料C4のみSiC粉末を用いて、それ以外の試料では全てTiC粉末を用いた。
(3)成形工程
各混合粉末を塩化ビニールチューブ(PVC)に入れてCIP成形して、丸棒状の成形体(φ16mm×150mm程度)を得た。このときの成形圧力は4t/cm2(392MPa)とした。
各混合粉末を塩化ビニールチューブ(PVC)に入れてCIP成形して、丸棒状の成形体(φ16mm×150mm程度)を得た。このときの成形圧力は4t/cm2(392MPa)とした。
(4)焼結工程
各成形体を真空中(1×10-5torr)で加熱(1300℃×16時間)して焼結させた。焼結温度に至るまでの昇温速度:約5℃/min、焼結時間経過後の冷却速度:10℃/sとした。
各成形体を真空中(1×10-5torr)で加熱(1300℃×16時間)して焼結させた。焼結温度に至るまでの昇温速度:約5℃/min、焼結時間経過後の冷却速度:10℃/sとした。
(5)加工工程
さらに、各試料に係る焼結体を大気雰囲気中で熱間加工(鍛造)した。加熱温度:1200℃、加工率:56%とした。ここでいう加工率は断面減少率(Aw/Ao)で算出した。Awは加工後の断面積、Aoは加工前の断面積である。
さらに、各試料に係る焼結体を大気雰囲気中で熱間加工(鍛造)した。加熱温度:1200℃、加工率:56%とした。ここでいう加工率は断面減少率(Aw/Ao)で算出した。Awは加工後の断面積、Aoは加工前の断面積である。
なお、熱間加工後の焼結体(加工品)は大気雰囲気中で空冷して降温させ、その空冷後に熱処理は一切行わなかった。こうして得られた各供試材(ビレット)を用いて、種々の測定・観察を行った。
《測定》
(1)電気的特性(比抵抗)
各試料の比抵抗は、図6に示すようにして求めた。具体的にいうと、先ず、各供試材から製作した角柱体(3.014mm(t)×3.014mm(w)×20mm)に、次のようにして電極を形成した。各角柱体の中央部分(電圧電極間(L):10mm)をマスキングテープでマスクする。マスクした両端部分とさらにその両外側部分との4箇所(図6参照)に、端子線(銀線:φ0.20mm)を巻き付ける。各端子線を巻き付けた部分と、角柱体の両端面とに銀ペースト(藤倉化成株式会社製 ドータイト D-550)をそれぞれ塗布する。塗布後の角柱体を、大気中で100℃×12時間加熱して乾燥させる。こうして、電流電極と電圧電極を備えた試験片を用意した。
(1)電気的特性(比抵抗)
各試料の比抵抗は、図6に示すようにして求めた。具体的にいうと、先ず、各供試材から製作した角柱体(3.014mm(t)×3.014mm(w)×20mm)に、次のようにして電極を形成した。各角柱体の中央部分(電圧電極間(L):10mm)をマスキングテープでマスクする。マスクした両端部分とさらにその両外側部分との4箇所(図6参照)に、端子線(銀線:φ0.20mm)を巻き付ける。各端子線を巻き付けた部分と、角柱体の両端面とに銀ペースト(藤倉化成株式会社製 ドータイト D-550)をそれぞれ塗布する。塗布後の角柱体を、大気中で100℃×12時間加熱して乾燥させる。こうして、電流電極と電圧電極を備えた試験片を用意した。
各試験片について室温域で直流四端子法により測定された電圧値(V)および電流値(I)と、試験片(角柱体)の断面形状(S=t×w)とにより、各試料に係る比抵抗(電気抵抗率)を算出した(図6の式(1)参照)。こうして得られた各試料に係る比抵抗(測定値)を表1に併せて示した。
(2)機械的特性(ヤング率、引張強度、伸び)
供試材から製作した丸棒引張試験片(平行部径:φ2.4mm、ゲージ長さ:14mm)を用いて、オートグラフ(株式会社島津製作所製 AUTOGRAPH AG-1 50kN)により引張試験を行った。
供試材から製作した丸棒引張試験片(平行部径:φ2.4mm、ゲージ長さ:14mm)を用いて、オートグラフ(株式会社島津製作所製 AUTOGRAPH AG-1 50kN)により引張試験を行った。
引張試験は、室温大気中で、ひずみ速度:5×10-4/sとして行った。この引張試験でロードセルとビデオ伸び計から得られた荷重-ストローク線図から算出された応力-ひずみ関係に基づいて、各試料に係る各機械的特性を求めた(JIS Z 2241:2011 参照)。それらの結果を表1に併せて示した。なお、引張強度は、破断時の荷重と試験片の初期形状とに基づいて算出した。伸びは、破断時における試験片のひずみである。
《観察》
(1)引張試験前の供試材の組織をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察した。その一例として、試料1、5、C1およびC3に係る観察像(SEM像)を図1A、図2、図3および図4にそれぞれ示した。なお、図1A中の島状組織を拡大して図1Bに示した。図1Aと図1Bを併せて単に「図1」という。
(1)引張試験前の供試材の組織をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察した。その一例として、試料1、5、C1およびC3に係る観察像(SEM像)を図1A、図2、図3および図4にそれぞれ示した。なお、図1A中の島状組織を拡大して図1Bに示した。図1Aと図1Bを併せて単に「図1」という。
(2)各試料について、引張試験前の組織を観察したSEM像をImageJで画像解析して、島状組織の存在割合を求めた。その結果を表1に併せて示した。また、組織中に分散している強化粒子の体積割合もその画像解析から求めたところ、その体積割合は配合時(混合粉末時)の予想体積割合とほぼ同じであった。
(3)X線回折
引張試験前の組織をX線回折解析(XRD/Cu-Kα)した。試料1について、得られた回折パターン(高角度側:2θ=70°~80°)を図5に示した。なお、図5には、代表的なチタン合金(Ti-6%Al-4%V)の回折パターンも併せて示した。
引張試験前の組織をX線回折解析(XRD/Cu-Kα)した。試料1について、得られた回折パターン(高角度側:2θ=70°~80°)を図5に示した。なお、図5には、代表的なチタン合金(Ti-6%Al-4%V)の回折パターンも併せて示した。
XRDの結果から、島状組織は六方最密格子構造のhcp組織であり、それを包囲するベース組織は体心立方格子構造のbcc組織であることがわかった。
《評価》
(1)特性
表1から明らかなように、Al当量およびMo当量が共に所定範囲にあると共にFeを含むマトリックス中に、強化粒子が分散してなる試料1~7のチタン基複合材は、高比抵抗かつ高強度であった。
(1)特性
表1から明らかなように、Al当量およびMo当量が共に所定範囲にあると共にFeを含むマトリックス中に、強化粒子が分散してなる試料1~7のチタン基複合材は、高比抵抗かつ高強度であった。
一方、Mo当量が小さい試料C1、C2、Moが大きい試料C3または強化粒子がSiCである試料C4は、いずれも強度が不十分であった。
(2)組織
図1または図2から明らかなように、試料1~7では、5~30μm程度の強化粒子がマトリックス中にほぼ均一的に分散したチタン基複合材が得られた。そのマトリックス中に原料粉末の粒界は識別されず、各相の結晶粒は約20μm程度であり、原料粉末の粒子よりも小さくなっていた。
図1または図2から明らかなように、試料1~7では、5~30μm程度の強化粒子がマトリックス中にほぼ均一的に分散したチタン基複合材が得られた。そのマトリックス中に原料粉末の粒界は識別されず、各相の結晶粒は約20μm程度であり、原料粉末の粒子よりも小さくなっていた。
また図1、図2または表1から明らかなように、マトリックスは、島状のhcp組織(単に「島状組織」という。)がbcc組織で囲繞された複合組織からなることもわかった。その島状組織は、針状または繊維状の(超)微細組織の集合体からなることも図1Bからわかった。さらに、その図1のSEM像から、各微細組織は、最大長が2μm以下、アスペクト比が5以上であることもわかった。
(3)XRD
図5から次のことがわかった。2θ=76.8°付近と2θ=78°付近にある(211)αと(201)αの各ピークを観ると、試料1のピーク値はTi-6%Al-4%Vのピーク値よりも低角側にシフト(ずれ量を太矢印で示した。)していた。これは、試料1に係るα相の格子面間隔が膨脹していることを示唆している。また同様に、(211)βについても、僅かながら、ピーク値の低角側へのシフトが観られた。これらから、試料1では、α+β相からなるマトリックス中に侵入型元素が固溶して、マトリックスの格子面間隔が拡大していることが推察される。なお、試料2~7についても、試料1と同様な傾向であることは確認している。
図5から次のことがわかった。2θ=76.8°付近と2θ=78°付近にある(211)αと(201)αの各ピークを観ると、試料1のピーク値はTi-6%Al-4%Vのピーク値よりも低角側にシフト(ずれ量を太矢印で示した。)していた。これは、試料1に係るα相の格子面間隔が膨脹していることを示唆している。また同様に、(211)βについても、僅かながら、ピーク値の低角側へのシフトが観られた。これらから、試料1では、α+β相からなるマトリックス中に侵入型元素が固溶して、マトリックスの格子面間隔が拡大していることが推察される。なお、試料2~7についても、試料1と同様な傾向であることは確認している。
(4)TiCyの原子比(C/Ti)
図5に示したように、TiC粉末を用いた試料1では、2θ=73°付近にTiCyのピークが認められた。その回折パターンからBraggの式とTiCyをfcc構造と仮定して、TiCyの格子定数(a)を求めた。具体的には、立方晶の場合、面間隔dと回折ピーク(h,k,l)の間で、1/d2=h2+k2+l2/a2が成立する。
図5に示したように、TiC粉末を用いた試料1では、2θ=73°付近にTiCyのピークが認められた。その回折パターンからBraggの式とTiCyをfcc構造と仮定して、TiCyの格子定数(a)を求めた。具体的には、立方晶の場合、面間隔dと回折ピーク(h,k,l)の間で、1/d2=h2+k2+l2/a2が成立する。
Braggの法則(λ = 2dsinθ)を適用すると、格子定数:a = λ/2sinθ √(h2+k2+l2)として求まる。さらに、その格子定数からRamqvistの関係により原子比(つまりy)が求まる。その結果、平均値としてy=0.54であることが確認できた。試料2~7についても試料1と同様に原子比を算出したところ、いずれもy=0.54であった。図5に示したXRDの回折パターン結果と併せて考えると、TiCがTiC0.54となる際に欠損したC(侵入型元素)が、α+β相からなるマトリックス中に固溶して、マトリックスの格子面間隔を拡大させたと考えられる。
格子定数と原子比の関係は、L.Ramqvist et al,Journal of PhysiCs and Chemistry of Solidsvol.30.7(1969).1849-1860.に詳述されている。本実施例では、その参考文献の記載に沿って原子比(y)を特定した。
以上のことから、Al当量およびMo当量が共に所定範囲にあると共にFeを含むチタン合金からなるマトリックス中に、Cの一部が欠損したTiCy(0<y<1)からなる強化粒子が分散したチタン基複合材は、チタン合金とTiCyが相乗的に作用して、高比抵抗かつ高強度を示すことが明らかとなった。このようなチタン基複合材は、非磁性な電磁用部材(非磁性部材)に適しているといえる。
Claims (10)
- 交番磁界中で用いられる非磁性部材であって、
マトリックス中に強化粒子が分散したチタン基複合材を備え、
該マトリックスは、その全体に対する質量割合で、Al当量が5.5~11となるα相安定化元素とMo当量が6~17となるβ相安定化元素とを含むと共に該β相安定化元素にはFeが含まれるチタン合金からなり、
該強化粒子は、TiCy(0<y<1)からなる非磁性部材。 - 前記yは、0.4~0.9である請求項1に記載の非磁性部材。
- 前記Feは、前記チタン合金全体に対して1~5%含まれる請求項1または2に記載の非磁性部材。
- 前記チタン合金は、体心立方格子構造組織(「bcc組織」という。)中に、六方最密格子構造組織(「hcp組織」という。)が島状に分布した複合組織からなる請求項1~3のいずれかに記載の非磁性部材。
- 前記hcp組織は、前記複合組織全体に対して30~80体積%ある請求項4に記載の非磁性部材。
- 前記強化粒子は、前記チタン基複合材全体に対して1~15体積%含まれる請求項1~5のいずれかに記載の非磁性部材。
- 前記チタン基複合材は、比抵抗が2μΩm以上である請求項1~6のいずれかに記載の非磁性部材。
- 前記チタン基複合材は、0.2%耐力が1200MPa以上である請求項1~7のいずれかに記載の非磁性部材。
- 請求項1~8のいずれかに記載の非磁性部材の製造方法であって、
チタン合金源粉末とTiCy源粉末を含む混合粉末から焼結体を得る焼結工程を備え、
該焼結体から前記チタン基複合材が得られる非磁性部材の製造方法。 - 前記焼結体は、少なくとも溶体化処理がなされない請求項9に記載の非磁性部材の製造方法。
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